説明

中立面モデル作成装置、中立面モデル作成方法、中立面モデル作成プログラム

【課題】薄板の形状モデルにおけるフィレット部の中立面モデルを作成する。
【解決手段】記憶手段から形状モデルのデータを読み出し、該形状モデルを構成する各面から特定できるフィレット面候補を出力手段にて表示すると共に、入力手段にて、前記形状モデルにおけるフィレット面の指定をユーザから受け付けて、該指定を受けた部位をフィレット面とし、該当面のデータを記憶手段に格納する手段と、前記指定を受けたフィレット面と接線連続する所定面のデータを、前記形状モデルのデータから取得し、その面形状の内部方向の法線方向にオフセットしたオフセット面を作成し、このオフセット面を前記指定を受けたフィレット面まで延長することで、前記指定を受けたフィレット面と前記所定面とで構成されたフィレット部の中立面モデルとし記憶手段に格納する手段とから中立面モデル作成装置100を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中立面モデル作成装置、中立面モデル作成方法、中立面モデル作成プログラムに関するものであり、具体的には、薄板の形状モデルにおけるフィレット部の中立面モデルを作成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
計算機を用いた数値解析により、物理現象を数値的に模擬するCAE(Computer Aided Engineering)に関する技術がある。特に、薄板構造のソリッドモデルから解析用のシェルモデルを作成する技術として、例えば、厚みを有する物品の形状を表す形状データに基づいて中立面モデルを生成する方法であって、前記形状データの定義する形状の少なくとも一部の表面を複数の表面要素に分割する工程と、前記表面要素を構成する各節点に対し該各節点を物品内部に向かって移動させる移動ベクトルを設定する工程と、該設定された前記各移動ベクトルに基づき前記各節点を移動させる工程と、移動した前記各節点と他の表面要素との接触を判定する工程と、接触したと判定された節点を固定する工程と、固定された点に基づき中立面をモデル化する工程を含むことを特徴とする中立面モデルの生成方法(特許文献1参照)が提案されている。
【0003】
また、3次元形状モデラで作成した形状モデルに対し、数値解析用の解析用シェルモデルを作成する解析用シェルモデル作成装置において、形状モデルから薄板部を認識するための基準板厚寸法を入力する基準板厚入力手段と、形状モデルを構成する任意の2面の面間距離が、上記基準板厚入力手段により入力された基準板厚寸法以下の2面をペア面として認識するペア面認識手段と、このペア面認識手段により認識されたペア面を、表側面,裏側面及びリブ面として認識する表裏リブ属性認識手段と、この表裏リブ属性認識手段によって認識された表側面もしくは裏側面のいずれか一方の面群とリブ面を、それぞれ形状の内部方向の法線方向にオフセットしたオフセット面を作成するオフセット面作成手段と、このオフセット面作成手段により表裏いずれかの面から作成したオフセット面と、リブ面から作成したオフセット面を縫合する縫合面作成手段と、この縫合面作成手段により縫合したオフセット面を中間サーフェスモデルとして登録する中間サーフェスモデル作成手段とを備えたことを特徴とする解析用シェルモデル作成装置(特許文献2参照)なども提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−207777号公報
【特許文献2】特開2004−287701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来技術(例えば、特許文献1)においては、形状モデルとしてではなく、メッシュデータとして中立面メッシュモデルを作成するため、例えば、中立面に関して形状変更を行う場合、元のメッシュデータから形状モデルを再生成する必要がある。また、他の従来技術(例えば、特許文献2)においては、中立面の形状変更に際しての形状モデルからの再生成といった手間は必要ないが、オフセット面を縫合することで中立面モデルを作成しているため、フィレット部(三次元モデルのコーナーにおける所定半径の丸みや、リブの根元における面取り部位)に関して中立面モデルを作成できないという課題が残されている。
【0006】
そこで本発明の目的は、薄板の形状モデルにおけるフィレット部の中立面モデルを作成する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の中立面モデル作成装置は、3次元形状モデラで作成した形状モデルに対して、数値解析用の解析用シェルモデルにおけるフィレット部の中立面を作成する装置であって、記憶手段から形状モデルのデータを読み出し、該形状モデルを構成する各面から特定できるフィレット面候補を出力手段にて表示すると共に、入力手段にて、前記形状モデルにおけるフィレット面の指定をユーザから受け付けて、該指定を受けた部位をフィレット面とし、該当面のデータを記憶手段に格納する手段と、前記指定を受けたフィレット面と接線連続する所定面のデータを、前記形状モデルのデータから取得し、その面形状の内部方向の法線方向にオフセットしたオフセット面を作成し、このオフセット面を前記指定を受けたフィレット面まで延長することで、前記指定を受けたフィレット面と前記所定面とで構成されたフィレット部の中立面モデルとし記憶手段に格納する手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の中立面モデル作成方法は、3次元形状モデラで作成した形状モデルに対して、数値解析用の解析用シェルモデルにおけるフィレット部の中立面を作成する情報処理装置が、記憶手段から形状モデルのデータを読み出し、該形状モデルを構成する各面から特定できるフィレット面候補を出力手段にて表示すると共に、入力手段にて、前記形状モデルにおけるフィレット面の指定をユーザから受け付けて、該指定を受けた部位をフィレット面とし、該当面のデータを記憶手段に格納する処理と、前記指定を受けたフィレット面と接線連続する所定面のデータを、前記形状モデルのデータから取得し、その面形状の内部方向の法線方向にオフセットしたオフセット面を作成し、このオフセット面を前記指定を受けたフィレット面まで延長することで、前記指定を受けたフィレット面と前記所定面とで構成されたフィレット部の中立面モデルとし記憶手段に格納する処理と、実行することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の中立面モデル作成プログラムは、3次元形状モデラで作成した形状モデルに対して、数値解析用の解析用シェルモデルにおけるフィレット部の中立面を作成する情報処理装置に、記憶手段から形状モデルのデータを読み出し、該形状モデルを構成する各面から特定できるフィレット面候補を出力手段にて表示すると共に、入力手段にて、前記形状モデルにおけるフィレット面の指定をユーザから受け付けて、該指定を受けた部位をフィレット面とし、該当面のデータを記憶手段に格納する処理と、前記指定を受けたフィレット面と接線連続する所定面のデータを、前記形状モデルのデータから取得し、その面形状の内部方向の法線方向にオフセットしたオフセット面を作成し、このオフセット面を前記指定を受けたフィレット面まで延長することで、前記指定を受けたフィレット面と前記所定面とで構成されたフィレット部の中立面モデルとし記憶手段に格納する処理と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、薄板の形状モデルにおけるフィレット部の中立面モデルを作成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の中立面モデル作成装置の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態の中立面モデル作成方法のメインフロー例を示す図である。
【図3】本実施形態における、(a)形状モデル指定画面および、(b)板厚値指定画面の構成例を示す図である。
【図4】本実施形態における中立面モデル作成方法の処理手順例1を示すフロー図である。
【図5】本実施形態におけるフィレット形状指定画面の構成例を示図である。
【図6】本実施形態における中立面モデル作成方法の処理手順例2を示すフロー図である。
【図7】本実施形態におけるフィレット認識例を示す図である。
【図8】本実施形態におけるフィレット修正例を示す図である。
【図9】本実施形態における中立面モデル作成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
−−−装置構成−−−
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態の中立面モデル作成装置100のハードウェア構成図である。図1に示す中立面モデル作成装置100(以下、装置100)は、3次元形状モデラで作成した形状モデルに対して、数値解析用の解析用シェルモデルにおけるフィレット部の中立面を作成する装置であり、薄板の形状モデルにおけるフィレット部の中立面モデルを作成可能とするコンピュータである。こうした装置100のハードウェア構成は以下の如くとなる。前記装置100は、ハードディスクドライブなど適宜な不揮発性記憶装置で構成される記憶手段101、RAMなど揮発性記憶装置で構成されるメモリ103、前記記憶手段101に保持されるプログラム102をメモリ103に読み出すなどして実行し装置自体の統括制御を行なうとともに各種判定、演算及び制御処理を行なうCPUなどの演算手段104、ユーザからのキー入力や音声入力を受け付ける入力手段105、処理データの表示を行うディスプレイ等の出力手段106を備える。なお、記憶手段101内には、本実施形態の中立面モデル作成装置として必要な機能を実装する為のプログラム102と、形状モデルデータ125が当初少なくとも記憶されている。また、記憶手段101に格納されるデータとしては、形状モデルデータ125の他にも、ペア面データ126、表裏・リブデータ127、フィレットデータ128、中立面モデルデータ129が含まれる。
【0013】
続いて、本実施形態の前記装置100が備える機能について説明する。上述したように、以下に説明する機能は、例えば中立面モデル作成装置100が備えるプログラム102をそれぞれ実行することで実装される機能と言える。
【0014】
前記装置100は、記憶手段101から形状モデルデータ125を読み出し、該形状モデルを構成する各面について、該当面の側端を構成する線分のデータを前記形状モデルデータ125から取得し、前記線分の長さと、所定のフィレット半径に円周率を乗じて得た乗算値とを比較し、前記線分の長さが前記乗算値より短い場合、前記線分における両端と中点のそれぞれから、前記側端の形状における法線方向に、前記所定のフィレット半径分だけ直線を伸ばし、各直線が交差する場合には、前記該当面をフィレット面候補として特定するフィレット認識部115を備える。
【0015】
なお、前記フィレット認識部115は、入力手段105にてフィレット半径についてユーザから指定を受け、記憶手段101から形状モデルデータ125を読み出し、該形状モデルを構成する各面について、該当面の側端を構成する線分のデータを前記形状モデルデータ125から取得し、前記線分の長さと、前記指定を受けたフィレット半径に円周率を乗じて得た乗算値とを比較し、前記線分の長さが前記乗算値より短い場合、前記線分における両端と中点のそれぞれから、前記側端の形状における法線方向に、前記指定を受けたフィレット半径分だけ直線を伸ばし、各直線が交差する場合には、前記該当面をフィレット面候補として特定する、としてもよい。
【0016】
また、前記装置100は、前記線分と連結し前記該当面の他の側端を構成する2つの線のデータを前記形状モデルデータ125から取得し、該当各線を介して前記該当面に隣接する2つの所定面のデータを前記形状モデルデータ125から取得し、ここでデータを取得した前記所定面が前記該当面と接線連続である場合、前記該当面のデータをフィレット面として記憶手段101に格納する機能を備える。この機能は、本実施形態における前記フィレット認識部115となる。
【0017】
また、前記装置100は、前記フィレット面と接線連続する前記所定面のデータを、前記形状モデルデータ125から取得し、その面形状の内部方向の法線方向にオフセットしたオフセット面を作成し、このオフセット面を前記フィレット面まで延長することで、前記フィレット面と前記所定面とで構成されたフィレット部の中立面モデルとし記憶手段101に格納する中立面モデル作成部118を備える。この中立面モデル作成部118は、意匠面指定部117(後述)で指定した意匠面をオフセットし、フィレットデータ128を利用してリブ面を延長することで、中立面モデルを作成する。中立面モデル作成部118の処理方法は後述する。中立面モデル作成部118は作成した中立面モデルを中立面モデルデータ129に登録する。
【0018】
なお、前記装置100は、前記フィレット面と前記形状モデルデータ125を記憶手段101から読み出して、出力手段106にて、前記形状モデルにおける前記フィレット面を表示すると共に、入力手段105にて、前記形状モデルにおけるフィレット面の指定をユーザから受け付けて、該指定を受けた部位をフィレット面とし、該当面のデータを記憶手段101に格納するフィレット認識修正部116を備えるとすれば好適である。このフィレット認識修正部116は、フィレット認識部115で認識したフィレット部に修正の必要がある場合にユーザからの修正指示を入力手段105にて受け付け、修正したデータを記憶手段101のフィレットデータ128に登録する。
【0019】
この場合、前記中立面モデル作成部118は、前記指定を受けたフィレット面と接線連続する前記所定面のデータを、前記形状モデルデータ125から取得し、その面形状の内部方向の法線方向にオフセットしたオフセット面を作成し、このオフセット面を前記指定を受けたフィレット面まで延長することで、前記指定を受けたフィレット面と前記所定面とで構成されたフィレット部の中立面モデルとし記憶手段101に格納することとなる。
【0020】
なお、上述の機能の他、前記装置100は、次のような機能を備えている。なお、以下の機能は特開2004−287701号公報に示されている機能部と同様のものとなる。前記装置100は、形状モデル入力部110を備える。形状モデル入力部110は、ユーザからの形状モデルの入力を入力手段105にて受け付け、形状モデルデータ125として記憶手段101に登録する機能である。
【0021】
また、前記装置100は、板厚入力部111を備える。この板厚入力部111は、形状モデルから薄板部として認識するための基準の板厚寸法のユーザ指定を入力手段105にて受け付けて、この板厚寸法を記憶手段101に格納する機能となる。基準の板厚寸法といは、形状モデルの中で薄肉部と判断するための基準となる板厚寸法である。例えば、形状モデルの中に、板厚が2mm,3mm,5mmと定義された箇所があり、ユーザがこの部分を薄板部と判定するようにしたい場合には、ユーザはこれらの最大値の5mmを基準の板厚寸法として設定する必要がある。
【0022】
また、前記装置100は、ペア面探索部112を備える。このペア面探索部112は、前記形状モデルデータ125を構成する任意の2面のうち、その面間距離が前記基準板厚寸法以下の2面をペア面として認識し、ペア面データ126として記憶手段101に登録する機能となる。
【0023】
また、前記装置100は、表裏・リブ認識部113を備える。この表裏・リブ認識部113は、形状モデルデータ125及びペア面データ126から表側面、裏側面及びリブ面を認識し、表裏・リブデータ127として記憶手段101に登録する機能となる。表裏・リブ認識部113による表裏リブ面の認識方法として、特開2004−287701号公報の図5、図8に記載の方法がある。
【0024】
また、前記装置100は、意匠面指定部117を備える。この意匠面指定部117は、前記表裏・リブ認識部113で認識した表・裏面のいずれかを意匠面とするかの指定を、入力手段105にてユーザから受け付ける機能となる。
【0025】
−−−処理手順例−−−
以下、本実施形態における中立面モデル作成方法の実際手順について図に基づき説明する。以下で説明する中立面モデル作成方法に対応する各種動作は、前記装置100がメモリ103等に読み出して実行するプログラム102によって実現される。そして、このプログラム102は、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0026】
図2は、本実施形態の中立面モデル作成方法のメインフロー例を示す図である。この場合まず、ユーザからの起動指示等に対応して、前記装置100の形状モデル入力部110は、ディスプレイ装置等の出力手段106に、図3(a)に示すような形状モデルの指定画面300のデータ(勿論、記憶手段101に予め保持しているデータとなる)を表示し、形状モデルのユーザ指定を受け付ける(s10)。
【0027】
この時のユーザは、中立面モデルの作成対象である薄板の形状モデルの名称を、前記画面300での入力フィールド201に入力し、実行ボタン202を押下することになる。 一方、前記装置100の形状モデル入力部110は、前記ユーザが指定した形状モデルの名称をキーに、記憶手段101に予め保持しているファイル中より該当データを特定し、これを記憶手段101の形状モデルデータ125に登録する。なお、前記画面300におおいて、ユーザがキャンセルボタン203を押下した場合、前記装置100の形状モデル入力部110は、ユーザ指定の形状モデルの登録をキャンセルする。
【0028】
続いて、前記装置100の板厚入力部111は、出力手段106に、図3(b)に示す板厚指定画面350のデータ(これも記憶手段101にて予め保持)を表示し、ユーザからの板厚指定を受け付ける(s11)。この時、ユーザは前記画面350における板厚値の入力フィールド301に板厚値を入力することになる。
【0029】
ユーザが前記画面350の実行ボタン302を押下した場合、前記装置100の板厚入力部111は、前記入力フィールド301に入力された板厚値のデータ、すなわち形状モデルから薄板部として認識するための基準の板厚寸法データを、ペア面探索部112に渡す。
【0030】
板厚入力部111から板厚値のデータを渡された前記装置100のペア面探索部112は、図4に示す処理フローを実行し、ペア面探索を行うことになる(s12)。図4のフローにおいて、前記装置100のペア面探索部112は、前記ステップs10で得ている形状モデルデータ125と、板厚入力部111の処理で得ている前記板厚値とを、例えば記憶手段101からメモリ103に読み込む(401)。
【0031】
前記装置100のペア面探索部112は、前記形状モデルデータ125を構成するすべての面から、任意の面Aと面Bの2面を取り出し、この面Aと面Bのなす角度が所定の角度αより小さいか判断する(402)。面Aと面Bのなす角度が前記角度αより小さい場合(402:YES)、前記装置100のペア面探索部112は、面Aと面Bとは平行に近い面でありペア面の候補としてメモリ103に情報を記憶し、次の処理に進む。
【0032】
この時、前記装置100のペア面探索部112は、この面Aと面Bの面間距離を計算すし(403)、該面間距離が前記板厚入力部111で得ている板厚値以下であれば(404:YES)、この面Aと面Bをペア面と特定し、記憶手段101のペア面データ126に情報を登録する(405)。面間距離の計算手法は一般的な幾何計算を採用すればよい。
【0033】
前記装置100のペア面探索部112は、上記のステップ402〜405の処理を、前記面Aと前記形状モデルデータ125が含むその他の全ての面とについて繰り返す(406:NO〜405)。また同様に、前記装置100のペア面探索部112は、上記のステップ402〜405の処理を、前記面Bと前記形状モデルデータ125が含むその他の全ての面とについて繰り返す(407:NO〜406)。
【0034】
以上の処理により、前記装置100のペア面探索部112は、前記形状モデルデータ125が含むすべての面同士のなす角度と面間距離を計測し、ステップ405にてペア面の情報を記憶手段101のペア面データ126に登録することとなる。
【0035】
ここで、図2のフローに戻る。前記ステップs12に続き、前記装置100の表裏・リブ認識部113は、ペア面探索部112により認識されたペア面データ126と、前記形状モデルデータ125に対して面をノードとし、隣接している面に対するノード同士をエッジにより結んだ隣接グラフを作成し、2つ以上のペア属性のエッジを含むループを探索し、ループ内のノードの数が4つ以下の場合をリブでない面とし、ペア面データ126を、表側面,裏側面及びリブ面に分類して、それぞれを表側面データ,裏側面データ,リブ面データとして登録する処理を実行する(s13)。この処理については、特開2004−287701号公報に記載の「表裏リブ属性認識手段」が行う処理と同様となる。よってここでは詳述しない。
【0036】
次に、前記装置100のフィレット形状指定部114は、出力手段106に、図5に示す画面500を表示させ、フィレット半径の値のユーザ指定を受け付ける(s14)。図5に、このフィレット半径の指定を受け付ける画面500を例示している。ユーザは、当該画面500において、フィレット半径の入力フィールド501にフィレット半径の値を入力することとなる。ユーザが入力したフィレット半径が、例えば「5mm」であれば、5mm以下のフィレット半径を有するフィレットがフィレット認識の対象となる。
【0037】
前記画面500においてユーザが実行ボタン502を押下すると、前記装置100のフィレット形状指定部114は、前記入力フィールド501に入力されたフィレット半径の値をフィレット認識部115に渡す。前記フィレット半径は、フィレット認識部115にて形状モデルデータ125に含まれるフィレット面の認識に利用する。
【0038】
前記フィレット半径の値を渡されたフィレット認識部115は、図6のフローに示すフィレット認識処理を実行する(s15)。図6は、フィレット認識部115が実行する処理フローの例である。この場合、前記装置100のフィレット認識部115は、前記形状モデルデータ125と、前記フィレット形状指定部114から渡されたフィレット半径αの値とをメモリ103に読み込む(601)。
【0039】
次に前記装置100のフィレット認識部115は、前記形状モデルデータ125を構成するすべての面から、任意の面Aのデータを取り出し、この面Aの側端を構成する線分Cのデータを取り出すと共に、この線分Cの長さを算定する(602)。線分Cの長さを算定する手法としては、例えば線分Cの形状を示す数式と、線分Cの端部の座標値などの値(いずれも形状モデルデータ125が含む)に基づいて、全線分の座標値間の距離を合算する手法などが想定できる(勿論、一般的な線分長さの算定手法のいずれでも採用してよい)。
【0040】
続いて前記装置100のフィレット認識部115は、前記ステップ602で算定した線分Cの長さと、前記フィレット半径αに円周率を乗算して得た乗算値とを比較し(603)、線分Cの長さが前記乗算値より短い場合(603:YES)、前記面Aをフィレット対象と特定し、次のステップに進む。他方、線分Cの長さが前記乗算値より長い場合(603:NO)、前記面Aをフィレット対象とせず、ステップ610に進む。
【0041】
前記装置100のフィレット認識部115は、前記ステップ603:YES、に続いて、線分Cの両端と中点の、前記側端の形状における法線方向を算定し(604)、前記線分Cの両端と中点から、前記法線方向に、フィレット半径αだけ延伸して直線を作成する(605)。
【0042】
また、前記装置100のフィレット認識部115は、前記ステップ605で作成した各直線が交差するか判定し(606)、各直線が交差する場合(606:YES)、前記面Aをフィレットの候補と特定してステップ607に進む。他方、各直線が交差しない場合(606:NO)、前記装置100のフィレット認識部115は、前記面Aをフィレットの候補とせず、処理をステップ610に進める。
【0043】
続いて、前記装置100のフィレット認識部115は、前記線分Cと連結し前記面Aの他の側端を構成する2線(線D、線E)のデータを前記形状モデルデータ125から取得する(607)。
【0044】
前記装置100のフィレット認識部115は、前記線Dおよび線Eを介して前記面Aに隣接する2つの所定面のデータを前記形状モデルデータ125から取り出し、前記面Aと前記所定面とが接線連続である場合(608:YES)、ステップ609に進む。他方、前記面Aと前記所定面とが接線連続でない場合(608:NO)、前記装置100のフィレット認識部115は、ステップ610に進む。
【0045】
次に、前記装置100のフィレット認識部115は、前記面Aをフィレット面として、記憶手段101のフィレットデータ128に登録する(609)。前記装置100のフィレット認識部115は、上記のステップ602〜609の処理を、前記形状モデルデータ125を構成するすべての面について繰り返す(610:NO〜609)。
【0046】
例えば、図7に示す形状モデルに対する前記フィレット認識部115の処理について例示する。ここで、前記フィレット形状指定部114で得ているフィレット半径をRとして説明する。前記フィレット認識部115は、図7における面701がフィレットであるか認識する場合、面701の側端を構成する線分の長さを算定する。面701の側端を構成する線分704は、長さが円周率×Rであり、前記ステップ603における、線分長さが円周率×R以下、の条件に当てはまるから、この面701がフィレット候補となる。
【0047】
前記フィレット認識部115は、前記ステップ604で、線分704の両端と中点の法線方向を求め、ステップ605で法線方向にRだけ伸ばした直線705を作成する。また、前記フィレット認識部115は、ステップ606において、直線705が交差するため次のステップ607に進む。ステップ607について説明する。前記フィレット認識部115は、前記面701の他の側端を構成し、前記直線705に隣接する線が、線706と線707である。線706と線707で面701と隣接する面702と面703に対して、面701と接線連続であるため、前記フィレット認識部115は、ステップ609に進み面701をフィレットデータ128に登録する。
【0048】
次に図8を用いて、フィレット認識修正部116での処理(s16)について説明する。前記フィレット形状指定部114で得ている前記フィレット半径を「R」としたときに、図8に示す形状モデルにおける面801は、上述のようにフィレットデータ128として登録されている。一方、面802は、フィレット半径が前記「R」より大きいため、フィレットデータ128に登録されていない。
【0049】
この時、ユーザは、前記面802をフィレットデータ128として登録したいとする。
【0050】
この場合、フィレット認識修正部116は、フィレットデータ128と前記形状モデルデータ125を記憶手段101から読み出して、出力手段106にて、前記形状モデルにおける前記フィレット面801を表示すると共に、入力手段105にて、前記形状モデルにおける面802のフィレット面としての指定をユーザから受け付ける。面802の指定を受けつけるにあたってフィレット認識修正部116は、例えば、該当面へのクリック動作を受けることとする。フィレット認識修正部116は、フィレット面としてユーザに選択された面802のデータを、記憶手段101のフィレットデータ128に登録する。
【0051】
一方、ユーザが、面801をフィレットデータ128から解除したいとする。その場合、フィレット認識修正部116は、入力手段105にてユーザからの面801の解除指定を受け付ける。この解除指定は、フィレット認識修正部116が、例えば該当面801への所定回数のクリック動作を受けることで実行されるものとできる。ユーザに解除指定された面801のデータについては、フィレット認識修正部116が記憶手段101のフィレットデータ128から削除する。
【0052】
次に、図9を用いて中立面モデル作成部118の処理(s18)について説明する。なお、表裏・リブ認識部113において、面905は「表」として、面903と面906は「裏」として、面902と面907は「リブ」として認識され、表裏・リブデータ127に登録されている。また、面901と面904がフィレット認識部115およびフィレット認識修正部116によりフィレットデータ128として登録されている。また、面902と面907、面903と面905、面906と面905は、それぞれペアとして、ペア面探索部112にて探索され、ペア面データ126に登録されている。また、意匠面指定部117で、意匠面を「表」としてユーザ指定を受け付けている場合(s17)について説明する。
【0053】
この場合、前記中立面モデル作成部118は、前記「表」と認識されている面905をオフセットして、面909を作成する。また前記中立面モデル作成部118は、リブ面である面902と面907についてオフセット処理をおこなう。面902と面907は、ペア面であり、前記中立面モデル作成部118は、片方の面902のみをオフセットをして、面908を作成することとなる。
【0054】
なお、こうしたオフセット面の作成手法については、特開2004−287701号公報の図10及び図11に示す手法を採用できる。中立面モデル作成部118が行う、この手法について概説すると、表側面若しくは裏側面のいずれか一方のオフセット対象面を、面の接続関係を保持しながら、ソリッド(形状モデルデータ125が示す物体)の内側方向の法線方向にオフセットした面を作成する。形状データであるCADデータは、ソリッドの中の情報を持っているため、このCADデータによってソリッドの内側方向を決めることができる。ここで、オフセット量は、ペアとなる面の面間距離の1/2とする。なお、テーパ面のように面間距離が徐々に変化する場合には、面間距離の平均値の1/2とする。テーパ面については、面間距離の最大値の1/2としたり、最小値の1/2としてもよいものである。このようにしてオフセット面を得ることができる。
【0055】
続いて、前記中立面モデル作成部118は、リブ面(面902と面907)からオフセットした面908を、意匠面(面905)をオフセットして作成した面909に延長して、面910を作成する。
【0056】
次に、中立面モデル作成部118は、フィレット部分の中立面を作成する。面901と面904はフィレット部である。面901に隣接する面902、面904に隣接する面905がオフセット対象の面である。この場合、中立面モデル作成部118は、面905および面902をそれぞれオフセットして作成した、面909と面908を、フィレット面である面901と面904まで延長して、面911と面912を作成する。こうして中立面モデル作成部118は、この面911と面912により、フィレット部分においても中立面モデルを作成することとなった。中立面モデル作成部118は、これら面909、面910、面911、面912のデータを、記憶手段101の中立面モデルデータ129に登録し、処理を終了する。
【0057】
以上、本発明を実施するための最良の形態などについて具体的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0058】
こうした本実施形態によれば、薄板の形状モデルにおけるフィレット部の中立面モデルを作成可能となる。
【0059】
本明細書の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。すなわち、前記中立面モデル作成装置において、入力手段にてフィレット半径についてユーザから指定を受け、記憶手段から形状モデルのデータを読み出し、該形状モデルを構成する各面について前記フィレット半径の条件に合致する該当面をフィレット面候補として特定する手段を備えるとしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
100 中立面モデル作成装置
101 記憶手段
102 プログラム
103 メモリ
104 演算手段
105 入力手段
106 出力手段
110 形状モデル入力部
111 板厚入力部
112 ペア面探索部
113 表裏・リブ認識部
114 フィレット形状指定部
115 フィレット認識部
116 フィレット認識修正部
117 意匠面指定部
118 中立面モデル作成部
125 形状モデルデータ
126 ペア面データ
127 表裏・リブデータ
128 フィレットデータ
129 中立面モデルデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元形状モデラで作成した形状モデルに対して、数値解析用の解析用シェルモデルにおけるフィレット部の中立面を作成する装置であって、
記憶手段から形状モデルのデータを読み出し、該形状モデルを構成する各面から特定できるフィレット面候補を出力手段にて表示すると共に、入力手段にて、前記形状モデルにおけるフィレット面の指定をユーザから受け付けて、該指定を受けた部位をフィレット面とし、該当面のデータを記憶手段に格納する手段と、
前記指定を受けたフィレット面と接線連続する所定面のデータを、前記形状モデルのデータから取得し、その面形状の内部方向の法線方向にオフセットしたオフセット面を作成し、このオフセット面を前記指定を受けたフィレット面まで延長することで、前記指定を受けたフィレット面と前記所定面とで構成されたフィレット部の中立面モデルとし記憶手段に格納する手段と、
を備えることを特徴とする中立面モデル作成装置。
【請求項2】
入力手段にてフィレット半径についてユーザから指定を受け、記憶手段から形状モデルのデータを読み出し、該形状モデルを構成する各面について前記フィレット半径の条件に合致する該当面をフィレット面候補として特定する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の中立面モデル作成装置。
【請求項3】
3次元形状モデラで作成した形状モデルに対して、数値解析用の解析用シェルモデルにおけるフィレット部の中立面を作成する情報処理装置が、
記憶手段から形状モデルのデータを読み出し、該形状モデルを構成する各面から特定できるフィレット面候補を出力手段にて表示すると共に、入力手段にて、前記形状モデルにおけるフィレット面の指定をユーザから受け付けて、該指定を受けた部位をフィレット面とし、該当面のデータを記憶手段に格納する処理と、
前記指定を受けたフィレット面と接線連続する所定面のデータを、前記形状モデルのデータから取得し、その面形状の内部方向の法線方向にオフセットしたオフセット面を作成し、このオフセット面を前記指定を受けたフィレット面まで延長することで、前記指定を受けたフィレット面と前記所定面とで構成されたフィレット部の中立面モデルとし記憶手段に格納する処理と、
実行することを特徴とする中立面モデル作成方法。
【請求項4】
3次元形状モデラで作成した形状モデルに対して、数値解析用の解析用シェルモデルにおけるフィレット部の中立面を作成する情報処理装置に、
記憶手段から形状モデルのデータを読み出し、該形状モデルを構成する各面から特定できるフィレット面候補を出力手段にて表示すると共に、入力手段にて、前記形状モデルにおけるフィレット面の指定をユーザから受け付けて、該指定を受けた部位をフィレット面とし、該当面のデータを記憶手段に格納する処理と、
前記指定を受けたフィレット面と接線連続する所定面のデータを、前記形状モデルのデータから取得し、その面形状の内部方向の法線方向にオフセットしたオフセット面を作成し、このオフセット面を前記指定を受けたフィレット面まで延長することで、前記指定を受けたフィレット面と前記所定面とで構成されたフィレット部の中立面モデルとし記憶手段に格納する処理と、
を実行させることを特徴とする中立面モデル作成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−252504(P2012−252504A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124408(P2011−124408)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】