中継装置、中継方法及びその中継装置を用いた光通信システム
【課題】 伝送距離を経済的に延ばすことができる光通信システムを構成する。
【解決手段】 本発明の中継装置30は、上段側のPON回線1に接続される光信号と電気信号との相互変換を行う第1送受信部31と、下段側のPON回線2に接続される光信号と電気信号との相互変換を行う第2送受信部38と、第1送受信部31が受信した下りフレームを第2送受信部38に中継し、第2送受信部38が受信した上りフレームを第1送受信部31に中継する中継処理部32,33,35,37と、制御部34とを備える。制御部34は、第1送受信部31が局側装置10に送信する上りフレームの送信については、局側装置10が行う上り多重アクセス制御に従い、第2送受信部38が宅側装置20から受信する上りフレームの受信については、独自に上り多重アクセス制御を行う。
【解決手段】 本発明の中継装置30は、上段側のPON回線1に接続される光信号と電気信号との相互変換を行う第1送受信部31と、下段側のPON回線2に接続される光信号と電気信号との相互変換を行う第2送受信部38と、第1送受信部31が受信した下りフレームを第2送受信部38に中継し、第2送受信部38が受信した上りフレームを第1送受信部31に中継する中継処理部32,33,35,37と、制御部34とを備える。制御部34は、第1送受信部31が局側装置10に送信する上りフレームの送信については、局側装置10が行う上り多重アクセス制御に従い、第2送受信部38が宅側装置20から受信する上りフレームの受信については、独自に上り多重アクセス制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PON(Passive Optical Network)システムを構成する局側装置と宅側装置の間の伝送距離を延ばすための中継装置と中継方法、及び、その中継装置を用いた光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
PONシステムは、P2MP(Point to Multi Point)の接続形態における光分岐を無電力で行う光通信システムであり、局側装置と、これに接続された光ファイバから光カプラを介して複数の光ファイバに分岐した一芯の光ファイバ網と、分岐した光ファイバの終端にそれぞれ接続された宅側装置とを備えている。
このPONシステムにおいては、半導体レーザ等の光源を直接或いは外部変調したNRZ(Non-Return to Zero)光信号を伝送し、情報を送受信する。
【0003】
局側装置が送信する下り光信号は各宅側装置に放送形式で伝送され、各宅側装置は自分宛の信号のみを受信処理する。逆に、宅側装置からの上り光信号は、衝突を防止すべく局側装置によって時分割多重方式で管理されており、局側装置は各宅側装置からの上り光信号をバースト的に受信する。
かかるPONシステムでは、分岐数や伝送距離が大きくなるほど通信品質が悪化するので、32分岐以内でかつ20km以内の伝送距離で運用するのが通常である。
【0004】
そこで、局側装置と宅側装置の間の伝送距離をできるだけ延ばすため、8個のG−EPONを相対向する1対の中継装置によって10Gに多重する、PON多重中継装置が提案されている(特許文献1参照)。
また、伝送距離の延長を図る別の中継装置として、G−EPONの光信号を電気信号に再生同期して中継する中継装置も既に知られている(特許文献2参照)。
【0005】
更に、PONシステムの宅側装置の消費電力を削減するため、局側装置からのスリープ指令を契機として、所定のスリープ時間だけ宅側装置が通信を停止させる間欠起動方式のスリープ制御も既に知られている(非特許文献1参照)。
このスリープ制御では、スリープ時間の情報を含むスリープ指令を局側装置が特定の宅側装置に送信し、所定のスリープ条件を満たしている場合に、宅側装置が指定されたスリープ時間だけスリープ状態に遷移するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−017264号公報
【特許文献2】特開2007−221688号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「低消費電力10G−EPON装置向け制御インタフェースに関する一検討」(坂本健ほか5名) 信学技報 vol.110, no.20, pp.7-12, 2010年4月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の中継装置では、8個のG−EPONを10Gの中継装置に集約する方式であるから、G−EPONの数だけ局側装置が必要であり、また、その局側装置の数だけ上位網とのインタフェースが必要である。
従って、局側装置と宅側装置の間の伝送距離を延ばすことはできるが、システム全体としては不経済であるという欠点がある。
【0009】
上記特許文献2に記載の中継装置は、PON光信号を光電変換した電気信号を物理層レベルで再生同期するものであり、中継時に伝送レートが増える訳ではない。従って、通常のPONシステムと同様に、分岐数を増やした場合に帯域が減少するという欠点がある。
また、分岐数を多くすると、制御メッセージで消費される帯域が増え、ユーザデータが使用できる全体の帯域が減少するので、ユーザ当りの帯域が減少するし、上り方向では、バーストオーバーヘッド分の無効帯域が増加するので更に帯域が減少する。
【0010】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、伝送距離を経済的に延ばすことができる光通信システムを構成可能な中継装置を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、ユーザ当たりの帯域を確保しつつ分岐数を増加できる光通信システムを構成可能な中継装置を提供することを第2の目的とする。
【0011】
一方、後述の通り、本発明の中継装置を使用すれば、上段PONと下段PONとを備えた多段接続の光通信システムを構成できる。
しかし、かかる多段接続の光通信システムの局側装置と中継装置のそれぞれに、前記した従来の間欠起動方式のスリープ制御を独自に行わせると、上段PONと下段PONとのスリープ制御が別個独立に稼働し、トラフィックの再開に時間がかかる場合があるという新たな問題が生じる。
【0012】
その理由は、局側装置が配下の中継装置に対するスリープ制御を独自に行い、各中継装置が配下の宅側装置に対するスリープ制御を独自に行うと、中継装置と宅側装置が同時にスリープすることはまれであり、宅側装置がウェイクアップすると同時に中継装置がスリープしたりすることが発生する可能性があり、通信システム全体で見た場合のスリープ期間が、中継装置のスリープ時間と宅側装置のスリープ期間の論理和となる場合があるからである。
【0013】
本発明は、かかる問題点に鑑み、上段PONと下段PONを有する光通信システムにおいてスリープ制御を行う場合に、トラフィックの再開遅延を防止できる中継装置を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1) 本発明の中継装置は、上段側の第1PON回線に対する光信号の送受信と、その光信号と電気信号との相互変換を行う第1送受信部と、下段側の第2PON回線に対する光信号の送受信と、その光信号と電気信号との相互変換を行う第2送受信部と、前記第1送受信部が受信した下りフレームを前記第2送受信部に中継し、前記第2送受信部が受信した上りフレームを前記第1送受信部に中継する中継処理部と、前記第1送受信部が局側装置に送信する前記上りフレームの送信については、前記局側装置が行う上り多重アクセス制御に従い、前記第2送受信部が宅側装置から受信する前記上りフレームの受信については、独自に上り多重アクセス制御を行う制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明の中継装置によれば、制御部が、局側装置に送信する上りフレームの送信については、局側装置が行う上り多重アクセス制御に従い、宅側装置から受信する上りフレームの受信については、独自に上り多重アクセス制御を行うので、例えば図1に示すような、1つの局側装置を頂点として複数の中継装置を接続する上段PONと、その中継装置の配下に更に複数の宅側装置を接続する下段PONとを備えた、多段接続の光通信システムを構成できる。
【0016】
従って、中継装置の介在によって単に伝送距離が延びるだけでなく、1つの局側装置に対して中継装置を介して多数の宅側装置を収容することができ、光通信システム全体のコストを抑えることができる。
このため、伝送距離を経済的に延ばすことができる光通信システムを構成することができ、前記第1の目的が達成される。
【0017】
(2) 本発明の中継装置において、前記第1送受信部は前記第2送受信部よりも高い伝送レートで上りの前記光信号を送信可能であり、前記中継処理部は、前記両送受信部間の上りの前記伝送レートの差を吸収するための上りバッファを有することが好ましい。
この場合、上段PONの上りの伝送レート(例えば10G)が下段PONの上りの伝送レート(例えば1G)よりも高い光通信システムを構成することができ、上段PONの分岐数を増大してもユーザ当たりの上りの帯域を有効に確保できる。
このため、ユーザ当たりの帯域を確保しつつ分岐数を増加できる光通信システムを構成することができ、前記第2の目的が達成される。
【0018】
(3) 本発明の中継装置において、前記第1送受信部は前記第2送受信部よりも高い伝送レートで下りの前記光信号を受信可能であり、前記中継処理部は、前記両送受信部間の下りの前記伝送レートの差を吸収するための上りバッファを有することが好ましい。
この場合、上段PONの下りの伝送レート(例えば10G)が下段PONの下りの伝送レート(例えば1G)よりも高い光通信システムを構成することができ、上段PONの分岐数を増大してもユーザ当たりの下りの帯域を有効に確保できる。
このため、ユーザ当たりの帯域を確保しつつ分岐数を増加できる光通信システムを構成することができ、前記第2の目的が達成される。
【0019】
(4) 本発明の中継装置において、前記中継処理部は、前記第1PON回線の論理リンクと前記第2PON回線の論理リンクとを1対多で対応させる中継が可能であることが好ましい。
この場合、第1PON回線の論理リンクの数が宅側装置の数ではなく中継装置の数に依存することになるので、中継装置の配下の宅側装置の数が多くなった場合でも、制御メッセージのオーバーヘッドやバーストオーバーヘッドが変わらず、ユーザ当りの帯域の無用な低下を防ぐことができる。
【0020】
(5) また、この場合の局側装置に対する登録及び離脱シーケンスとして、前記制御部は、前記第2PON回線の前記論理リンクのいずれかが開設された場合に前記第1PON回線の前記論理リンクの開設を前記局側装置に要求し、前記第2PON回線の前記論理リンクのすべてが切断された場合に前記第1PON回線の前記論理リンクの切断を前記局側装置に要求することが好ましい。
【0021】
中継装置の制御部が、上記のような手順で第1PON回線の論理リンクの開設と切断を局側装置に要求するようにすれば、中継装置の配下で稼働する宅側装置がない場合には、その中継装置は局側装置に登録されない。
このため、局側装置と中継装置との間で無駄な制御メッセージが発生することにより、上段PONのユーザ帯域の無用な低下を防止することができる。
【0022】
(6) また、本発明の中継装置において、前記中継処理部は、前記中継処理部は、前記第1PON回線の論理リンクと前記第2PON回線の論理リンクとを1対1で対応させる中継が可能なものであってもよい。
この場合、局側装置が宅側装置に1対1で対応した論理リンクを管理することができるので、宅側装置ごとのきめ細かいQoS制御や、宅側装置間のよりよい公平性を実現することができる。
【0023】
(7) また、この場合の局側装置に対する登録及び離脱シーケンスとして、前記制御部は、前記第2PON回線の前記論理リンクを開設する度に前記第1PON回線の前記論理リンクの開設を前記局側装置に要求し、前記第2PON回線の前記論理リンクを切断する度に前記第1PON回線の前記論理リンクの切断を前記局側装置に要求するようにすればよい。
このようにすれば、PON回線間における論理リンクの1対1対応を確保しつつ、中継装置の配下の宅側装置を局側装置に対して適切に登録及び離脱させることができる。
【0024】
(8) また、この場合、前記中継処理部が、前記局側装置からのループバック開設要求を前記宅側装置に中継するとともに、前記宅側装置からのループバック開設応答を前記局側装置に中継し、前記局側装置からのループバック試験フレームを前記宅側装置に中継するとともに、前記宅側装置からのループバック試験フレームを前記局側装置に中継することが好ましい。
【0025】
このようにすれば、局側装置が、上段PONと下段PONを連結させてOAMループバック試験を実施できるようになるので、中継装置内のバッファなどに関連する障害も検出することができ、光通信システムの保守性をより向上させることができる。
【0026】
(9) 本発明の中継装置において、前記中継処理部は、前記第1PON回線の前記論理リンクと前記第2PON回線の前記論理リンクとの対応づけを、同じサービスクラスの前記論理リンクについて行うことにしてもよい。
この場合、サービスクラスに対応づけられた複数の論理リンクが一つの宅側装置に構成されていても、PON回線間の論理リンクの1対多又は1対1の対応づけを行うことができる。
このようにすれば、局側装置、中継装置、および宅側装置を通して論理リンクとサービスクラスの対応が一致するので、サービスクラス毎のきめ細かいQoS制御を確実に実施することができる。
【0027】
(10) 本発明の中継装置において、前記制御部は、前記両PON回線間の所定の対応関係に従って、前記局側装置から取得した第1スリープ指示から、前記宅側装置のための第2スリープ指示を生成することが好ましい。
この場合、上段PONの第1スリープ指示が、中継装置によって下段PONの第2スリープ指示に変換されて宅側装置に伝送されるので、上段PONの局側装置が下段PONの宅側装置のスリープ動作を集中的に制御できるようになる。
【0028】
このため、上段PONと下段PONとを有する多段接続の光通信システムにおいて、上段PONと下段PONとでスリープ制御を別個に行う場合に比べて、システム全体のスリープ期間が長期化することがなく、トラフィックの再開遅延を防止することができ、前記第3の目的が達成される。
【0029】
(11) 本発明の中継装置において、前記所定の対応関係が、前記第1PON回線の論理リンクと前記第2PON回線の論理リンクとを1対多で対応させる関係である場合には、前記制御部は、1つの前記第1スリープ指示から、前記第2PON回線のすべての論理リンクに対する複数の前記第2スリープ指示を生成すればよい。
【0030】
この場合であって、複数の前記第2スリープ指示に対応する第2スリープ応答に肯定と否定の両方があった場合、肯定と応答した宅側装置の下り受信機能をスリープさせるとともに、否定と応答した宅側装置への下り送信を継続するためには、中継装置は肯定と応答した宅側装置への下りフレームをスリープ期間一時的にバッファリングし、スリープ期間が終了した後送信しなければならない。このため、宅側装置個別にバッファリングする機構が必要であり、中継装置の製作コストが高くなる。一方、宅側装置のスリープ動作を上り送信機能に限定すれば、下りフレームをスリープ期間にバッファリングする必要はなくなる。
このため、上段PONの局側装置が、下段PONの宅側装置の上り送信機能のスリープ動作を集中的に制御できるようになる。
【0031】
(12) また、前記制御部は、複数の前記第2スリープ指示に対応する第2スリープ応答がすべて肯定的である場合に、前記第1送受信部又は前記中継処理部の一部のうちの少なくとも1つの上り送信機能を休止させる、自装置のスリープ動作を行うことが好ましい。
このようにすれば、中継装置の配下のすべての宅側装置が上り送信をスリープしていることを条件として、中継装置の上り送信をスリープさせることができ、中継装置についても省電力化を図ることができる。
【0032】
(13) 一方、前記所定の対応関係が、前記第1PON回線の論理リンクと前記第2PON回線の論理リンクとを1対1で対応させる関係である場合には、前記制御部は、1つの前記第1スリープ指示から、1つの前記第2スリープ指示を生成し、前記第2スリープ指示に対応する1つの第2スリープ応答から、これと同じ許否内容である、前記第1スリープ応答に対応する1つの第1スリープ応答を生成すればよい。
【0033】
この場合、上段PONの局側装置が、下段PONの宅側装置からスリープ指示に対する許否内容を得られるので、宅側装置の上り送信機能と下り受信機能の双方を局側装置がスリープ制御することができる。
このため、上段PONの局側装置が、下段PONの宅側装置の上り送信機能と下り送信機能のスリープ動作を集中的に制御できるようになる。
【0034】
また、この場合、局側装置からのスリープ指示に1対1対応で連動して、中継装置が配下の宅側装置へのスリープ指示を行うので、宅側装置のスリープ期間中に、局側装置から当該宅側装置宛の下りフレームを中継装置が受信しない。
このため、スリープ期間中の下りトラフィックをバッファリングするためのメモリを中継装置に設ける必要がなく、中継装置の製作コストを低減できるという利点もある。
【0035】
(14) また、前記制御部は、複数の前記第2スリープ指示に基づいて行われるスリープ期間が重複する期間に、前記第1送受信部又は前記中継処理部の一部のうちの少なくとも1つの上り送信機能及び/又は下り受信機能を休止させる、自装置のスリープ動作を行うことが好ましい。
このようにすれば、中継装置の配下の宅側装置のスリープ期間が重複していることを条件として、中継装置の上り送信と下り受信をスリープさせることができ、中継装置についても省電力化を図ることができる。
【0036】
(15) 本発明の光通信システムは、前記局側装置と、前記局側装置とP2MP形態で接続された上述の(1)〜(14)のいずれかに記載の複数の中継装置と、前記中継装置とP2MP形態で接続された複数の前記宅側装置と、を備えていることを特徴とする。
このように、本発明の光通信システムは、上述の(1)〜(14)に記載した本発明の中継装置を備えるので、当該中継装置と同様の作用効果を奏する。
【0037】
(16) 本発明方法は、第1PON回線から受信した下りフレームを第2PON回線に中継し、前記第2PON回線から受信した上りフレームを前記第1PON回線に中継する方法であって、前記第1PON回線を用いて局側装置に送信する前記上りフレームの送信については、前記局側装置が行う上り多重アクセス制御に従い、前記第2PON回線を用いて宅側装置から受信する前記上りフレームの受信については、独自に上り多重アクセス制御を行うことを特徴とする。
【0038】
上記の通り、本発明方法は、上述の(1)に記載した本発明の中継装置が行う中継方法である。従って、本発明方法は、上述の(1)に記載した本発明の中継装置と同様の作用効果を奏する。
【0039】
(17) 本発明方法において、前記両PON回線間の所定の対応関係に従って、前記局側装置から取得した第1スリープ指示から、前記宅側装置のための第2スリープ指示を生成することが好ましい。
上記中継方法は、上述の(10)に記載した本発明の中継装置が行う中継方法である。従って、上記中継方法は、上述の(10)に記載した本発明の中継装置と同様の作用効果を奏する。
【0040】
(18) なお、本発明の中継装置は、上述の(1)に記載した構成を、必ずしも必須とするものではなく、以下の構成の中継装置であってもよい。
上段側の第1PON回線に対する光信号の送受信と、その光信号と電気信号との相互変換を行う第1送受信部と、
下段側の第2PON回線に対する光信号の送受信と、その光信号と電気信号との相互変換を行う第2送受信部と、
前記第1送受信部が受信した下りフレームを前記第2送受信部に中継し、前記第2送受信部が受信した上りフレームを前記第1送受信部に中継する中継処理部と、
前記両PON回線間の所定の対応関係に従って、前記局側装置から取得した第1スリープ指示から、前記宅側装置のための第2スリープ指示を生成する制御部と、
を備えていることを特徴とする中継装置。
【0041】
かかる構成の中継装置であっても、制御部が、上述の(10)に記載した制御を実行するので、前記第3の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0042】
以上の通り、本発明によれば、伝送距離を経済的に延ばすことができる光通信システムを構成することができる。また、本発明によれば、ユーザ当たりの帯域を確保しつつ、分岐数を増加できる光通信システムを構成することができる。
更に、本発明によれば、上段PONと下段PONを有する光通信システムにおいてスリープ制御を行う場合に、トラフィックの再開遅延を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光通信システムの接続形態を示す図である。
【図2】局側装置の構成を示すブロック図である。
【図3】宅側装置の構成を示すブロック図である。
【図4】中継装置の構成を示すブロック図である。
【図5】局側装置への登録シーケンスを示す図である。
【図6】上り多重アクセス制御のシーケンスを示す図である。
【図7】局側装置からの離脱シーケンスを示す図である。
【図8】第2実施形態の場合の局側装置への登録シーケンスを示す図である。
【図9】図8の続きのシーケンスを示す図である。
【図10】第2実施形態の場合の局側装置からの離脱シーケンスを示す図である。
【図11】第2実施形態の場合のOAMループバック試験のシーケンスを示す図である。
【図12】中継装置を含む第3実施形態の光通信システムにおける、スリープ制御シーケンスを示す図である。
【図13】中継装置を含む第4実施形態の光通信システムにおける、スリープ制御シーケンスを示す図である。
【図14】図13の続きのシーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
<第1実施形態>
〔光通信システムの接続形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る光通信システムの接続形態を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の光通信システムでは、1つの局側装置10と多数の宅側装置20が、それらの間の複数の中継装置30を仲立ちとして、上下2段のPON回線1,2で接続された接続形態(トポロジ)となっている。
【0045】
すなわち、1つの局側装置10とその配下の複数の中継装置30とが光ファイバにてP2MP形態で接続されており、各中継装置30とその配下の複数の宅側装置20とが光ファイバにてP2MP形態で接続されている。
より具体的には、局側装置10に接続された一芯の光ファイバ51は、受動光分岐ノードである光カプラ52を介して複数の一芯の光ファイバ53に分岐しており、この分岐した各光ファイバ53の終端に、それぞれ中継装置30が接続されている。
【0046】
また、中継装置30の下段側に接続された一芯の光ファイバ54は、受動光分岐ノードである光カプラ55を介して複数の一芯の光ファイバ56に分岐しており、この分岐した各光ファイバ56の終端に、それぞれ宅側装置20が接続されている。
従って、光ファイバ網51〜53よりなる上段側のPON回線1は、1つのOLT10に対応して1つだけ存在し、光ファイバ網54〜56よりなる下位側のPON回線2は、複数の中継装置30に対応して当該中継装置30と同数だけ存在する。
【0047】
なお、以下において、局側装置10とPON回線1と複数の中継装置30とからなる上段側のPONを、「PON1」又は「上段PON」などと呼ぶことがあり、中継装置30とPON回線2と複数の宅側装置20からなる下段側のPONを、「PON2j」(j=1,2……n:nは中継装置30の最大数)又は「下段PON」などと呼ぶことがある。
また、以下において、「局側装置」を「OLT」と略記し、「宅側装置」を「ONU」と略記する場合がある。
【0048】
更に、本実施形態では、局側装置10と中継装置30の間の上段側のPON1は、伝送レートが10G(正確には10.3125Gbps)の10G−EPONよりなり、各中継装置30と宅側装置20の間の下段側のPON2jは、伝送レートが1G(正確には1.25Gbps)のG−EPONよりなる。
【0049】
〔局側装置の構成〕
図2は、局側装置10の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、OLT10は、上位側(図2の左側)から下位側に向かって順に、上位網IF(インタフェース)部11、制御部12、受信処理部13、LLID(Logical Link ID)の解決テーブル14、送信処理部15、PON送受信部16を備えている。また、OLT10は、上りバッファ17及び下りバッファ18を備えている。
【0050】
PON送受信部16は、PON回線1から入力される1.27μm帯の光信号を電気信号に変換して、その電気信号を受信処理部13に出力するとともに、送信処理部15から入力される電気信号を1.577μm帯の光信号に変換して、PON回線1に出力する。
【0051】
受信処理部13は、PON送受信部16から入力される電気信号からフレームを再構成し、フレーム種別が制御フレーム又はOAMループバック試験フレームであれば、それを制御部12へ出力する。
また、受信処理部13は、フレーム種別がユーザフレームであれば、それを上りバッファ17へ出力するとともに、送信元MACアドレスとLLIDの対応を学習し、その対応をLLID解決テーブル14に記録する。なお、OAMループバック状態にあるLLIDは制御部12から通知されている。
【0052】
上位網IF部11は、上りバッファ17にフレームがあれば、それを取り出して上位網へ出力するとともに、上位網からフレームが入力されると、そのフレームを下りバッファ18へ出力する。
送信処理部15は、制御部12から入力されるフレームを、電気信号としてPON送受信部16に出力するとともに、下りバッファ18にフレームがあれば、制御部12からのフレームの合間にそれを下りバッファ18から取り出し、電気信号としてPON送受信部16に出力する。
【0053】
このとき、送信処理部15は、ユーザフレームのLLIDとして、宛先MACアドレスを元にLLID解決テーブル14を参照して求めた値を付与する。
制御部12は、ONU20を運営管理するMPCPフレーム及びOAMフレーム等の制御フレームを生成し、この制御フレームを、送信処理部15を介してONU20へ送信するとともに、ONU20から送られるMPCPフレームやOAMフレーム等の制御フレームを、受信処理部13を介して受信し、その制御フレームの内容に対応する処理を行う。
【0054】
また、制御部12は、OAMループバック試験中であるLLIDについては、受信処理部13に通知する。なお、第1実施形態では、OLT10の制御部12が行うMPCPフレームを用いたPON1での上り多重アクセス制御において、中継装置30がONU20の機能を果たす。
本実施形態では、上段のPON1が10G−EPONであるから、OLT10が送受信する光信号は10.3125Gbpsで伝送され、符号化前の電気信号のレートは10Gbpsとなる。
【0055】
〔宅側装置の構成〕
図3は、宅側装置20の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、ONU20は、上位側(図3の左側)から下位側に向かって順に、PON送受信部21、送信処理部22、受信処理部23、制御部24及び下位網IF(インタフェース)部25を備えている。
また、ONU20は、2種類の上りバッファ26,27、下りバッファ28及びループ用バッファ29を備えている。第1の上りバッファ26は制御フレーム用であり、第2の上りバッファ27はユーザフレーム用である。
【0056】
PON送受信部21は、PON回線2から入力される1.49μm帯の光信号を電気信号に変換して、その電気信号を受信処理部23に出力するとともに、送信処理部22から入力される電気信号を1.3μm帯の光信号に変換して、PON回線2に出力する。
なお、ONU20のPON送受信部21から出力される光信号は、送信処理部22から入力されるバーストイネーブル信号がオフの期間は発光しないバースト信号となる。
【0057】
受信処理部23は、PON送受信部21から入力される電気信号からフレームを再構成し、LLIDが自分宛でないフレームとブロードキャストのLLIDでないフレームを廃棄する。
また、受信処理部23は、廃棄されなかったフレームについてはフレーム種別を調べ、それが制御フレームであれば制御部24へ出力し、ユーザフレームであれば下りバッファ28へ出力する。
【0058】
ただし、ONU20がOAMループバック状態のときは、受信処理部23はユーザフレームをループ用バッファ29へ出力する。なお、OAMループバック状態にあるLLIDは制御部24から通知されている。
【0059】
下位網IF部25は、下りバッファ28にフレームがあれば、それを取り出して下位網のメディアに応じた信号に変換して出力する。また、下位網IF部25は、下位網から信号を受信すると、その信号を内部信号へ変換した後でフレームを再構成し、第2上りバッファ27へ出力する。
【0060】
送信処理部22は、制御部24からの送信指示に従い、自ら生成したレポートフレームや、第1上りバッファ26、第2上りバッファ27及びループ用バッファ29から取り出したフレームを、電気信号として指示された期間にPON送受信部21に送出する。このとき、送信処理部22はバーストイネーブル信号を有効にする。
制御部24からの送信指示には、フレームの対象(レポートフレームか否か)、送信開始時刻及び送信期間が含まれる。
【0061】
送信処理部22は、指示された対象がレポートフレームの場合は、レポートフレームを送信し、指示された対象がレポートフレームでない場合は、第1上りバッファ26、第2上りバッファ26又はループ用バッファ29のフレームを送信する。
上記各バッファ26,27,29からのフレームの取り出しは、既にレポートした分を優先して行われ、また、第1上りバッファ26、第2上りバッファ27、ループ用バッファ29の順に優先される。
【0062】
送信処理部22は、制御部24からレポートフレームの生成を指示された場合、上記各バッファ26,27,29に保存されている情報量を参照してレポートフレームを生成する。このとき、送信処理部22は、引数として与えられたグラント長に対応したフレーム群については、レポートに含めない。
【0063】
また、送信処理部22は、フレームを電気信号に変換する際に、登録要求フレームに対してはブロードキャストのLLIDを付与し、その他のフレーム対しては当該ONU20のLLIDを付与する。
制御部24は、OLT10から送られるMPCPフレームやOAMフレームを、受信処理部23を介して受信し、それらの制御フレームに対応する処理を行うとともに、その応答或いは自ら生成するMPCPフレームやOAMフレームを、送信処理部22を介してOLT10へ送信する。
【0064】
また、制御部24は、OAMループバック状態が変化すれば、その状態変化を受信処理部23に通知する。
本実施形態では、下段側のPON2jがG−EPONあるから、ONU20が送受信する光信号は1.25Gbpsで伝送され、符号化前の電気信号のレートは1Gbpsとなる。
【0065】
〔中継装置の構成〕
図4は、中継装置30の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、中継装置30は、上位側(図4の左側)から下位側に向かって順に、第1PON送受信部31、第1送信処理部32、第1受信処理部33、制御部34、第2受信処理部35、LLID解決テーブル36、第2送信処理部37及び第2PON送受信部38を備えている。
また、中継装置30は、2種類の上りバッファ39,40、下りバッファ41及びループ用バッファ42を備えている。第1上りバッファ39は制御フレーム用であり、第2上りバッファ40はユーザフレーム用である。
【0066】
第1PON送受信部31は、PON回線1から入力される1.577μm帯の光信号を電気信号に変換して、第1受信処理部33に出力するとともに、第1送信処理部32から入力される電気信号を1.27μm帯の光信号に変換して、PON回線1に出力する。
なお、中継装置30の第1PON送受信部31から出力される光信号は、第1送信処理部32から入力されるバーストイネーブル信号がオフの期間は発光しないバースト信号となる。
【0067】
第1受信処理部33は、第1PON送受信部31から入力される電気信号からフレームを再構成し、LLIDが自分宛でないフレームとブロードキャストのLLIDでないフレームを廃棄する。
また、第1受信処理部33は、廃棄されなかったフレームについてはフレーム種別を調べ、それが制御フレームであれば制御部34へ出力し、ユーザフレームであれば下りバッファ41へ出力する。
【0068】
ただし、中継装置30がPON回線1からOAMループバック状態に設定されている場合は、第1受信処理部33はユーザフレームをループ用バッファ42へ出力する。なお、OAMループバック状態の有効/無効は、制御部34から通知されている。
【0069】
第1送信処理部32は、制御部34からの送信指示に従い、自ら生成したレポートフレームや、第1上りバッファ39、第2上りバッファ40及びループ用バッファ42から取り出したフレームを、電気信号として指示された期間に第1PON送受信部31に送出する。このとき、第1送信処理部32はバーストイネーブル信号を有効にする。
制御部34からの送信指示には、フレームの対象(レポートフレームか否か)、送信開始時刻、送信期間が含まれる。
【0070】
第1送信処理部32は、指示された対象がレポートフレームの場合は、レポートフレームを送信し、指示された対象がレポートフレームでない場合は、第1上りバッファ39、第2上りバッファ40又はループ用バッファ42のフレームを送信する。
上記各バッファ39,40,42からのフレームの取り出しは、既にレポートした分を優先して行われ、また、第1上りバッファ39、第2上りバッファ40、ループ用バッファ42の順に優先される。
【0071】
第1送信処理部32は、制御部34からレポートフレームの生成を指示された場合、上記各バッファ39,40,42に保存されている情報量を参照してレポートフレームを生成する。このとき、第1送信処理部32は、引数として与えられたグラント長に対応したフレーム群については、レポートに含めない。
また、第1送信処理部32は、フレームを電気信号に変換する際に、登録要求フレームに対してはブロードキャストのLLIDを付与し、その他のフレーム対しては当該ONU20のLLIDを付与する。
【0072】
制御部34は、OLT10から送られるMPCPフレームやOAMフレームを、第1受信処理部33を介して受信し、それらの制御フレームに対応する処理を行うとともに、その応答或いは自ら生成するMPCPフレームやOAMフレームを、第1送信処理部32を介してOLT10へ送信する。
すなわち、制御部34は、第1PON送受信部31から送信する上りフレームの送信タイミングについては、OLT10が行う上り多重アクセス制御に従う。
【0073】
また、制御部34は、OAMループバック状態が変化すれば、その状態変化を第1受信処理部33に通知する。
本実施形態では、上段側のPON1が10G−EPONであるから、中継装置30がPON回線1に送受信する光信号は10.3125Gbpsで伝送され、符号化前の電気信号のレートは10Gbpsとなる。また、下段側のPON2jがG−EPONであるから、中継装置30がPON回線2に送受信する光信号は1.25Gbpsで伝送され、符号化前の電気信号のレートは1Gbpsとなる。
【0074】
第2PON送受信部38は、PON回線2から入力される1.31μm帯の光信号を電気信号に変換して、その電気信号を第2受信処理部35に出力するとともに、第2送信処理部37から入力される電気信号を1.49μm帯の光信号に変換して、PON回線2に出力する。
【0075】
第2受信処理部35は、第2PON送受信部38から入力される電気信号からフレームを再構成し、フレーム種別が制御フレーム又はOAMループバックフレームであれば、それを制御部34へ出力する。
また、第2受信処理部35は、フレーム種別がユーザフレームであれば、それを第2上りバッファ40へ出力するとともに、送信元MACアドレスとLLIDの対応を学習し、その対応をLLID解決テーブル36に記録する。なお、OAMループバック状態にあるLLIDは制御部34から通知されている。
【0076】
第2送信処理部37は、制御部34から入力されるフレームを、電気信号として第2PON送受信部38に出力するとともに、下りバッファ41にフレームがあれば、制御部34からのフレームの合間にそれを下りバッファ41から取り出し、電気信号として第2PON送受信部38に出力する。
このとき、第2送信処理部37は、ユーザフレームのLLIDとして、宛先MACアドレスを元にLLID解決テーブル36を参照して求めた値を付与する。
【0077】
このように、本実施形態では、中継装置30が、ONU20から送出されたユーザフレームのLLIDと、その送信元MACアドレス(ONU20のMACアドレス)との対応関係をLLID解決テーブル36によって個別に把握し、この解決テーブル36に基づいて配下のONU20のLLIDを管理しているので、PON回線1で用いる論理リンクとPON回線2jで用いる論理リンクとが1対多で対応している。
【0078】
制御部34は、ONU20を運営管理するMPCPフレーム及びOAMフレーム等の制御フレームを生成し、第2送信処理部37を介してONU20へ送信するとともに、ONU20から送られるMPCPフレームやOAMフレーム等の制御フレームを、第2受信処理部35を介して受信し、その制御フレームの内容に対応する処理を行う。
すなわち、制御部34は、第2PON送受信部38が受信する上りフレームの受信タイミングについては、OLT10とは別個に独自で上り多重アクセス制御を行う。
【0079】
また、制御部34は、PON回線2においてOAMループバック試験状態にあるLLIDについては、第2受信処理部35に通知する。
また、制御部34は、PON1とPON2jのMPCPリンクを個別に確立することができるが、上段PONと下段PONのMPCPリンクの登録シーケンスや離脱シーケンスについては、上段PONと下段PONの間で関連させて実行する。これらのシーケンスの詳細は、次の図5及び図6にて説明する。
【0080】
図4の中継装置30において、第1PON送受信部31と第2PON送受信部38の間の「第1受信処理部33」、「下りバッファ41」及び「第2送信処理部37」は、第1PON送受信部31が受信した下りフレームを第2PON送受信部38に中継する下りの「中継処理部」を構成する。
第2PON送受信部38と第1PON送受信部31の間の「第2受信処理部35」、「上りバッファ40」及び「第1送信処理部32」は、第2PON送受信部38が受信した上りフレームを第1PON送受信部31に中継する上りの「中継処理部」を構成する。
【0081】
前述のとおり、本実施形態では、上段のPON1が10G−EPONであり、かつ、下段のPON2jがG−EPONとなっており、中継装置30の上段側と下段側とで両者の伝送レートが異なる。
そこで、本実施形態の中継装置30では、より高速のPON1とより低速のPON2jとの伝送レートの差を、上記中継処理部を構成する第2上りバッファ40と下りバッファ41とで吸収している。
【0082】
〔登録シーケンス〕
図5は、第1実施形態の光通信システムにおける、ONU20と中継装置30のOLT10への登録シーケンスを示す図である。
より具体的には、図5では、中継装置30をOLT10に登録させるために両者の間でやり取りされるMPCPメッセージと、ONU20を中継装置30に登録させるために両者の間でやり取りされるMPCPメッセージとの関連を表している。
【0083】
なお、図5以後の各図のシーケンスでは、ONU20については2つ登場するが、OLT10と中継装置30については、それぞれ1つずつ登場する。
そこで、図5以後の各図のシーケンスでは、「OLT10」と「中継装置30」については、図面の参照符号を省略して「OLT」及び「中継装置」と表記し、ONU20については、「ONU1」及び「ONU2」と表記して区別している。
【0084】
図5に示すように、OLTと中継装置は、下流のPONに対してそれぞれディスカバリゲートを定期的に発行する。ここで、中継装置の配下のPON2jには、稼動しているONUがないとする。
新たに稼動を開始したONU1は、中継装置からディスカバリゲートを受けると、その送信許可期間においてレジスタ要求を返す。中継装置は、ONU1からレジスタ要求を受けると、レジスタを返すとともに、そのONU1にノーマルゲートを送る。
【0085】
ONU1は、ノーマルゲートで送信許可された期間にレジスタ確認を返す。中継装置はONU1からレジスタ確認を受けると、当該ONU1の登録を完了させる。
中継装置は、配下のいずれかのONUが登録された時点以降に、OLTからディスカバリゲートを受けると、その送信許可期間においてOLTにレジスタ要求を返す。
OLTは、中継装置からレジスタ要求を受けると、レジスタを返すとともにその中継装置にノーマルゲートを送る。
【0086】
中継装置は、ノーマルゲートで送信許可された期間にレジスタ確認を返す。OLTは、中継装置からレジスタ確認を受けると、当該中継装置の登録を完了させる。
図5の後半部分に示すように、上記のようにして中継装置の登録が完了した後で、新たにONU2が稼動を開始すると、ONU1の場合と同様のシーケンスがONU2について実行され、中継装置にONU2が登録される。
【0087】
ここで、ONU2の登録シーケンスは、OLTと中継装置との間のMPCPリンクには影響を与えない。また、ONU1及びONU2がOLTと通信するユーザフレームは、OLTと中継装置の間において、同一の論理リンクを通過する。
【0088】
中継装置は、ONU1,2の登録が完了すると、そのONU1,2との間の論理リンクを介してOAMリンクを確立し、さらにOAMループバック試験を実施する。
そして、OAMループバック試験が成功すると、本論理リンクと上段PON間のユーザフレームの疎通を解禁する。
【0089】
また、OLTは、中継装置の登録が完了すると、その中継装置との間の論理リンクを介してOAMリンクを確立し、さらにOAMループバック試験を実施する。
そして、OAMループバック試験が成功すると、本論理リンクと上位網間のユーザフレームの疎通を解禁する。なお、第1実施形態では、これらのOAMループバック試験は互いに独立している。
【0090】
〔上り多重アクセス制御のシーケンス〕
図6は、第1実施形態の光通信システムにおける、PON回線1,2での上り多重アクセス制御を示すシーケンス図である。
より具体的には、図6では、中継装置、ONU1及びONU2のユーザフレームの疎通が解禁された以降に行われる、各PON回線1,2で上りバースト信号が衝突しないように時分割多重した、上り方向の多重アクセス制御を示している。
【0091】
図6に示すように、中継装置は、各ONU1,2からのレポート用バーストとユーザフレーム用バーストとが衝突しないよう、自装置で受信すべきタイミングをスケジューリングし、その結果をノーマルゲートメッセージにて各ONU1,2に通知する。
このノーマルゲートメッセージには2つのグラントが含まれている。このうち、最初のグラントは、レポート強制フラグを有効としたものとする。2つ目のグラントのグラント長は、各ONU1,2から受領したレポートメッセージを参考として、或いは、網運用者(通信事業者)のポリシーに基づいて決定される。
【0092】
各ONU1,2は、グラントで示された期間に、レポートメッセージあるいはデータフレーム(複数)を送出する。ここで、データフレームには、OAMメッセージ等のONU1,2が生成したフレームや下位網から受信したユーザフレームが含まれる。
【0093】
図6の左半部に示すように、OLTは、配下の中継装置に対してノーマルゲートメッセージを送信し、上段PONについて独自に上り多重アクセス制御を行う。
そして、中継装置は、OLTからのノーマルゲートの指示に従って、OLTに対して上りバースト信号を送出する。
【0094】
〔離脱シーケンス〕
図7は、第1実施形態の光通信システムにおける、ONU20及び中継装置30のOLT10からの離脱シーケンスを示す図である。
より具体的には、図7は、中継装置をOLTから登録解除させるために両者の間でやり取りされるMPCPメッセージと、ONUを中継装置から登録解除させるために両者の間でやり取りされるMPCPメッセージとの関連を表している。
【0095】
ここで、中継装置の配下のPONには、ONU1とONU2以外に稼動しているONUがないとする。
新たに稼動を停止するONU1は、図7で図示しないゲートメッセージが示す送信許可期間において、デレジスタ要求を中継装置に送る。
中継装置は、ONU1からデレジスタ要求を受けると、デレジスタを返すとともに当該ONU1の登録を解除する。
【0096】
その後、ONU2が稼動を停止する場合には、ONU1の場合と同様のシーケンスが実行され、中継装置はONU2の登録を解除する。
ここで、中継装置の配下に登録されているONUがなくなったので、中継装置は、図7で図示しないゲートメッセージが示す送信許可期間において、デレジスタ要求をOLTに送る。OLTは、中継装置からデレジスタ要求を受けると、デレジスタを返すとともに当該中継装置の登録を解除する。
【0097】
〔第1実施形態の効果〕
以上の通り、第1実施形態の中継装置30によれば、制御部34が、自装置から送信する上りフレームの送信については、OLT10が行う上り多重アクセス制御に従い、自装置が受信する上りフレームの受信については、独自に上り多重アクセス制御を行うので、図1に示すような、1つのOLT10を頂点として複数の中継装置30を接続する上段PONと、その中継装置30の配下に更に複数のONU20を接続する下段PONとを備えた、多段接続の光通信システムを構成できる。
【0098】
このため、PON固有の伝送距離が上段PON(PON1)の分と下段PON(PON2j)の分を加算した値になるので、OLT10とONU20の間の距離を長くすることができる。
また、PON固有の分岐数については、上段PONの分と下段PONの分とを乗算できるので、光通信システム全体の分岐数を多くすることできる。
【0099】
また、下段PONが多くなった場合でも、OLT10が1つあれば足るので、光通信システム全体のコストを抑えることができる。この場合、OLT10の上位網とのインタフェースも1つあればよいので、上位網を含めた光通信システム全体のコストを抑えることができる。
更に、1つの下段PON当たりに中継装置が1台あればよいので、この点からも、光通信システム全体のコストを抑えることができる。
更に、中継装置30は上段PONへ加入して通信を行うための制御と、下段PONにONU20を加入させて通信を行うための制御を共通の制御部34で逐次的に行うことが出来るので、例えば制御を実行するためのCPUは一つあればよく、中継装置30のコストを抑えることができる。
【0100】
第1実施形態の中継装置30によれば、上りバッファ40及び下りバッファ41によって上段PONと下段PONの伝送レートの差を吸収することで、上段PONを10G−EONとしかつ下段PONを1G−EPONにしているので、上段PONの分岐数nを大きくした場合でも、ユーザ当りの帯域を確保することができる。
【0101】
また、第1実施形態の中継装置30によれば、OLT10が行う上り多重アクセス制御に用いる上段PONの論理リンクが、制御部34が行う上り多重アクセス制御に用いる下段PONの論理リンクと一対多で対応しているので、上段PONにおける論理リンクの数は、ONU20の数ではなく中継装置30の数に依存する。
このため、中継装置30の配下のONU20の数が多くなった場合でも、制御メッセージのオーバーヘッドやバーストオーバーヘッドが変わらず、ユーザ当りの帯域の無用な低下を防ぐことができる。
【0102】
更に、第1実施形態の中継装置30によれば、制御部34が、下段PONの論理リンクを開設した後に上段PONの論理リンクの開設をOLT10に要求するので、中継装置30の配下で稼動するONU20がない場合には、その中継装置30がOLT10に登録されない。
このため、ONU20が登録されていない中継装置30とOLT10との間で無駄な制御メッセージが発生することがなく、上段PONのユーザ帯域の無用な低下を防止することができる。
【0103】
なお、上述の第1実施形態では、OLT10、ONU20及び中継装置30において、ユーザフレーム用のキュー(バッファ)は上り下りでそれぞれ1つとしたが、優先度やQoSクラスに応じてそのキューを複数設けてもよい。
また、上述の第1実施形態では、OLT10及び中継装置30のLLID解決テーブル14,36を用いてMACアドレスとLLIDを対応づけているが、例えば、ユーザフレームのVLANタグ値(VID)とLLIDを対応づけてもよい。この場合、テーブル要素の登録は学習ベースではなく、網の管理者あるいは管理装置からプロビジョニングするのが好適である。
【0104】
<第2実施形態>
〔第2実施形態の装置構成等〕
本発明の第2実施形態に係る光通信システム、OLT10及びONU20の構成は、それぞれ、第1実施形態の場合(図1〜図3参照)と同様である。
一方、第2実施形態で用いる中継装置30は、上段のPON1に対して複数の「論理ONU」として振舞う。この論理ONUは、下段のPON2j(j=1,2……n)のONU20と1対1で対応するように設けられる。
【0105】
中継装置30の基本的な構成要素は、第1実施形態の場合(図4)と同様である。もっとも、第2実施形態では、上りのユーザフレームのための第2上りバッファ40については、上段PONの論理ONUごとに設けられている。
そして、第2実施形態の中継装置30は、上りのユーザフレームを中継する際に、中継先のPON1において使用するLLIDを、中継元のPON2jにおいて使用されたLLIDから一意に決定する。また、第2実施形態では、図4のループ用バッファ42は不要であるが、その理由は、図11の説明のところで後述する。
【0106】
〔登録シーケンス〕
図8及び図9は、第2実施形態の光通信システムにおける、ONUと中継装置内の論理ONUの登録シーケンスを示す図である。なお、図9は図8の続きである。
より具体的には、図8及び図9では、中継装置内の論理ONUをOLTに登録させるために両者の間でやり取りされるMPCPメッセージと、ONUを中継装置に登録させるために両者の間でやり取りされるMPCPメッセージとの関連を表している。
【0107】
図8に示すように、OLTと中継装置は、それぞれ下流のPONに対してディスカバリゲートを定期的に発行する。
新たに稼動を開始したONU1は、中継装置からディスカバリゲートを受けると、その送信許可期間においてレジスタ要求を返す。中継装置は、ONU1からレジスタ要求を受けると、レジスタ(ここで開設するLLIDを「X」とする。)を返すとともに、ONU1にノーマルゲートを送る。
【0108】
ONU1は、ノーマルゲートで送信許可された期間にレジスタ確認を返す。中継装置は、ONU1からレジスタ確認を受けると、当該ONU1の登録を完了させる。
中継装置は、ONU1の登録完了後に、OLTからディスカバリゲートを受けると、その送信許可期間においてレジスタ要求を返す。
このとき、レジスタ要求の送信元MACアドレスを下段PONのONU毎に変えることとし、OLTに対して新しい「論理ONU」として認識させる。
【0109】
すなわち、OLTは、中継装置からレジスタ要求を受けると、レジスタ(LLID=A)を返すとともに、中継装置にノーマルゲートを送る。中継装置は、ノーマルゲートで送信許可された期間にレジスタ確認を返す。
また、中継装置は、下段PONにおけるONU1との間のLLID(=X)と上段PONにおけるLLID(=A)との対応を、前記したLLID解決テーブル36(図4参照)に記憶する。
【0110】
なお、第2実施形態の場合には、上記のように、ディスカバリの際に上下段の論理リンクを1対1で対応させるので、第1実施形態の場合のように、中継装置の第2受信処理部35(図4参照)が、受信したユーザフレームの送信元MACアドレスとLLIDの対応を学習して、解決テーブル36に記録する必要はない。
【0111】
また、中継装置の第2送信処理部37は、ユーザフレームのLLIDをPON回線1で用いられたLLIDを元に、解決テーブル36を参照することによって求める。
OLTは、中継装置からレジスタ確認を受けると、ONU1のための論理ONU(LLID=A)の登録を完了させる。
【0112】
その後、新たにONU2が稼動を開始すると、ONU1の場合と同様のシーケンスが実行され、LLID=YのONU2が中継装置に登録される。
更に、図9に示すように、上段のPON1においても、ONU1の場合と同様のシーケンスが実行され、ONU2のための新しい論理ONU(LLID=B)がOLTに登録される。このとき、中継装置は、上段のPON1と下段のPON2jとのLLIDの1対1の対応関係を、解決テーブル36に記憶する。
【0113】
中継装置は、配下のONU1,2の登録が完了すると、そのONU1,2との間の論理リンクを介してOAMリンクを確立する。
ただし、第2実施形態では、中継装置は、そのONU1,2へのOAMループバック試験を実施しない。OLTがその試験を実施するからである。また、OLTは、中継装置内の論理ONUの登録が完了すると、その中継装置内の論理ONUとの間の論理リンクを介して、OAMリンクを確立する。第2実施形態においてOLTが実施するOAMループバック試験は、図11において説明する。
【0114】
〔離脱シーケンス〕
図10は、第2実施形態の光通信システムにおける、ONUと中継装置内の論理ONUの離脱シーケンスを示す図である。
より具体的には、図10では、中継装置内の論理ONUをOLTから登録解除させるために両者の間でやり取りされるMPCPメッセージと、ONUを中継装置から登録解除させるために両者の間でやり取りされるMPCPメッセージの関連を表している。
【0115】
図10に示すように、新たに稼動を停止するONU1は、図10で図示しないゲートメッセージが示す送信許可期間において、デレジスタ要求を中継装置に送る。
中継装置は、ONU1からデレジスタ要求を受けると、デレジスタを返すとともに当該ONU1の登録を解除する。
【0116】
そして、中継装置は、図10で図示しないゲートメッセージが示す送信許可期間において、LLID=Aの論理リンクを介してデレジスタ要求をOLTに送る。
OLTは、LLID=Aの論理リンクからデレジスタ要求を受けると、対応するデレジスタを返すとともに、LLID=Aの論理ONUの登録を解除する。
【0117】
その後、ONU2が稼動を停止する場合にも、ONU1の場合と同様のシーケンスが実行され、中継装置は、ONU2の登録を解除する。
更に、上段のPON1においても同様のシーケンスが実行され、OLTは、LLID=Bの論理ONUの登録を解除する。
【0118】
〔ループバック試験のシーケンス〕
図11は、第2実施形態の光通信システムにおける、OAMループバック試験シーケンスを示す図である。
より具体的には、図11では、上段PONにおけるOAMループバック試験と下段PONにおけるOAMループバック試験との関連を表している。
【0119】
図11のシーケンスの開始時においては、LLID=Aの論理リンクとその上でのOAMリンクがOLTに確立されているとする。
この場合、OLTは、LLID=AにOAMループバックの開設を要求するループバックコントロールOAMメッセージ(以下、「ループバック開設要求」という。)を送る。
中継装置1は、上段PONから上記メッセージを受けると、下段PONのONU1にループバック開設要求を送る。
【0120】
ONU1は、下段PONから上記メッセージを受けると、ループ用バッファ29を経由する「OAMループバックパス」を設定し、OAMループバックパスの開設を通知するループバックコントロールOAMメッセージ(以下、「ループバック開設応答」という。)を、中継装置に返す。
中継装置は、下段PONから上記メッセージを受けると、上段PONのOLTにループバック開設応答を返すとともに、上段PONにおけるLLID=Aの論理リンクと下段PONにおけるLLID=Xの論理リンクの間のユーザフレームの疎通を解禁する。
【0121】
OLTは、上記メッセージを受けると、LLID=Aの論理リンクに対してOAMループバック試験を実施する。
具体的には、OLTの制御部12は、受信処理部13にLLID=AがOAMループバック試験状態にあることを通知してから、OAMループバック試験フレーム(LLID=A)を送信処理部15に送る。そして、OLTの制御部12は、受信処理部13を経由して返ってきたOAMループバック試験フレームをチェックし、試験の良否を判定する。
【0122】
その試験が完了したあと、OLTは、LLID=AにOAMループバックの解除を要求するループバックコントロールOAMメッセージ(以下、「ループバック解除要求」)を送る。中継装置は、上段PONから上記メッセージを受けると、下段PONのLLID=Xにループバック解除要求を送る。
ONU1は、PONから上記メッセージを受けるとループ用バッファ29を経由するOAMループバックパスを解除し、OAMループバックパスの解除を通知するループバックコントロールOAMメッセージ(以下、「ループバック解除応答」)を返す。
【0123】
中継装置は、下段PONから上記メッセージを受けると、上段PONのOLTにループバック解除応答を返す。
OLTの制御部12は、上記メッセージを受けると、受信処理部13にLLID=AのOAMループバック試験状態の解除を通知するとともに、LLID=Aと上位網との間のユーザフレームの疎通を解禁する。
【0124】
〔第2実施形態の効果〕
第2実施形態の中継装置30によれば、第1実施形態の場合と比べて、更に次の効果を奏する。
すなわち、第2実施形態では、中継装置30が、PON回線2の論理リンクを開設する度にPON回線1の論理リンクの開設をOLT10に要求し(図8及び図9の登録シーケンス)、PON回線2の論理リンクを切断する度にPON回線1の論理リンクの開設をOLT10に要求する(図10の離脱シーケンス)。
【0125】
このため、OLT10がONU20に1対1で対応した論理リンクを管理することができ、第1実施形態の場合に比べて、ONU20ごとのきめ細かいQoS制御や、ONU20間のよりよい公平性を実現することができる。
【0126】
また、第2実施形態の中継装置30によれば、上述の通り、上段PONと下段PONを連結させたOAMループバック試験を実施することができるので(図11のOAMループバック試験のシーケンス)、中継装置30の上りバッファ40や下りバッファ41に関連する障害を検出することが可能となり、光通信システムの保守性をより向上させることができる。
【0127】
<その他の変形例>
本発明の権利範囲は、上述の実施形態(変形例を含む。)ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲及びその構成と均等な範囲内のすべての変更が含まれる。
上述の実施形態では、上段PON(PON1)が上り下り双方の伝送レートが10Gである対称10G−EPONであり、下段PONがG−EPONになっているが、上段PON(PON1)が対称10G−EPONであり、下段PONが下りの伝送レートが10Gであり上りの伝送レートが1Gである非対称10G−EPONであってもよい(変形例1)。また、上段PON(PON1)が非対称10G−EPONであり、下段PONがG−EPONであってもよい(変形例2)。
【0128】
例えば、上記変形例1の場合には、中継装置30の上りバッファ40により、第1PON送受信部31と第2PON送受信部38との間の上りの伝送レートの差を吸収すればよい。
また、上記変形例2の場合には、中継装置30の下りバッファ41により、第1PON送受信部31と第2PON送受信部38との間の下りの伝送レートの差を吸収すればよい。
【0129】
上述の実施形態では、一つのONU20には下段PONの一つの論理リンクを対応づけており、複数のサービスクラスを想定する場合であっても、一つの論理リンク内にサービスクラスに対応づけられた複数のキューを構成することを前提とした。しかし、一つのONU20に対してもサービスクラスに対応づけられた複数の論理リンクを構成するようにしてもよい。
【0130】
このような一つのONU20に複数の論理リンクを想定した場合は、上述の第1実施形態においては、同じサービスクラスに属する論理リンクについて、それぞれ、PON回線1の論理リンクとPON回線2の論理リンクとを1対多で対応させることにすればよい。
同様に、上述の第2実施形態においては、同じサービスクラスに属する論理リンクについて、それぞれ、PON回線1の論理リンクとPON回線2の論理リンクとを1対1で対応させることにすればよい。
【0131】
また、上述の実施形態の中継装置30において、上段PON(PON1)の特定波長を装置内で分離して、光信号のまま下段PONに合波する別経路を設けてもよい。このとき、光アンプ等により光パワーを増幅させてもよい。特定波長は、OTDR試験や映像信号の放送などに使用できる。
【0132】
また、上述の実施形態では、下段PONをG−EPONとしたが、10G−EPONを併用したデュアルレートPONを下段PONに採用してもよい。この場合、G−EPONのONU20と10G−PONのONU20が同一の下段PONに共存するので、中継装置30は、登録されたONU20のタイプに応じて使用レートを決定することになる。
更に、上段PONとして10G−EPONの送受信手段に加えて、G−EPONの送受信手段を中継装置30に設け、あるいは10G−EPONの送受信手段がG−EPONの送受信機能も備え、設定により一方を動作させるにようにしてもよい。
【0133】
下段PONのデュアルレート対応と併せて、中継装置30は、本発明の動作に加えて、G−EPONの中継装置として、或いは10G−EPONの中継装置として動作することになり、中継装置としての適用領域が拡大する。
また、上述の実施形態では、中継装置30は上段PON(PON1)に対する制御フレームの処理と、下段PONに対する制御フレームの処理を一つの制御部24が実行している。
【0134】
更に、上述の実施形態では、登録、離脱及びOAMループバック試験に関して、上段PON(PON1)と下段PONの制御メッセージを関連させる例を示したが、その他に、ONU20の「スリープ制御」、「暗号鍵の通知や更新」、「ONU管理」などにおいても、制御メッセージを関連させてもよい。
【0135】
例えば、上述の第1実施形態においてスリープ制御を行う場合には、中継装置30がOLT10からスリープ指示を受けると、その中継装置30は、送信データがないことを条件として、配下のONU20にスリープ指示を送信し、すべてのONU20から肯定的なスリープ応答が得られた場合に、自装置のスリープ応答をOLT10に返すようにすればよい。
この場合、ONU20の下段PONへの送信動作をスリープさせることができ、ONU20の省電力化を図ることができる。さらに、すべてのONU20がスリープする場合は、中継装置30の上段PONへの送信動作をスリープさせることができ、中継装置30の省電力化を図ることができる。
【0136】
また、上述の第2実施形態においてスリープ制御を行う場合には、中継装置30は、OLT10からのスリープ指示を対応する論理リンクに中継し、ONU20からのスリープ応答の許否結果をそのままOLT10に報告することとし、配下のONU20のスリープ時間の重複時間で自身のスリープ動作を行うようにすればよい。
この場合、ONU20の下段PONへの送信動作だけでなく、下段PONからの受信動作もスリープさせることができ、ONU20の省電力効果をより向上することができる。さらに、すべてのONU20のスリープが重複した期間においては、中継装置30の上段PONへの送信動作だけでなく、上段PONからの受信動作もスリープさせることができ、中継装置30の省電力効果をより向上することができる。
【0137】
また、上述の実施形態において、中継装置30は複数の下段PONを備えてもよい。この場合、LLID解決テーブル36は下段PONとそのPONにおけるLLIDを一体として解決するようにすればよい。
【0138】
<第3実施形態>
〔第3実施形態の装置構成等〕
本発明の第3実施形態に係る光通信システム、OLT10、ONU20及び中継装置30の構成は、それぞれ、第1実施形態の場合(図1〜図4参照)と同様である。
また、登録シーケンス、多重アクセスシーケンス及び離脱シーケンスについても、それぞれ、第1実施形態の場合(図5〜図6参照)と同様である。
【0139】
もっとも、第3実施形態では、ONU20のPON送受信部21(図3参照)が、上り送信機能を停止する「スリープ機能」を有する。PON送受信部21は、制御部24から入力されるスリープ信号が有効であれば、自身のレーザダイオードと送信回路の電源を遮断して送信機能を停止し、消費電力を低減させる。
同様に、ONU20の送信処理部22(図3参照)も「スリープ機能」を有する。送信処理部22は、制御部24から入力されるスリープ信号が有効であれば、自身の処理を停止し、消費電力を低減させる。
【0140】
また、第3実施形態では、中継装置30の第1PON送受信部31と第1送信処理部32(図4参照)も、それぞれ、ONU20のPON送受信部21と送信処理部22と同様の「スリープ機能」を有する。
このように、第3実施形態では、ONU20と中継装置30が、上り送信機能のみを所定時間だけ停止するスリープ機能を有する。
【0141】
〔OLTとONUが実行するスリープ制御〕
第3実施形態のOLT10とONU20は、次の「スリープ制御」を実行可能である。このスリープ制御は、中継装置30を介在しない通常のPONの場合と同様である。
OLT10の制御部12は、ONU20から受信したレポートメッセージを参照し、所定期間を過ぎても帯域要求がないか、帯域要求があっても所定水準以下であった場合に、そのONU20に対して、制御フレームの一種として「スリープ指示」を送信する。
【0142】
ONU20制御部24は、OLT10からスリープ指示を受け取ると、OLT10へ送信すべきデータの有無を所定水準に照らして確認し、制御フレームの一種である「スリープ応答」として、データがある場合は「Nack」を返す。
また、ONU20の制御部24は、データがない場合には、「Ack」を返すとともに、所定のスリープ期間だけ送信スリープ信号を有効にする。
【0143】
OLT10の制御部12は、ONU20からスリープ応答を受け取ると、それがNackである場合は通常の動作を継続する。
また、OLT10の制御部12は、スリープ応答がAckである場合は、そのONU20に対して所定のスリープ期間だけノーマルゲートの送信を停止し、このスリープ期間中は、レポートメッセージやOAMメッセージを受信しなくても、MPCPリンクやOAMリンクを維持する。
【0144】
そして、OLT10の制御部12は、スリープ期間(例えば、スリープ指示などで設定)が終了すると、通常の動作を再開する。
なお、第3実施形態でのスリープ動作は、上記の通り、上り送信に限定される。このため、下り方向のユーザフレームは、通常通りに通信される。
【0145】
〔中継装置がある場合のスリープ制御〕
図12は、中継装置30を含む第3実施形態の光通信システムにおける、スリープ制御シーケンスを示す図である。
より具体的には、図12では、上段PONでやり取りされるスリープ指示及びスリープ応答のメッセージと、下段PONにおいてやり取りされるスリープ指示及びスリープ応答のメッセージとの関連を表している。
【0146】
図12のスリープ制御のシーケンスにおいて、OLT10とONU20が行うスリープ動作については、上述の通り、通常のPONの場合と同様である。
図12に示すように、中継装置の制御部34は、OLTからスリープ指示を受けると、OLTへ送信すべきデータの有無を所定水準に照らして確認し、自装置に上りデータがある場合は、OLTにNackを返して通常動作を継続する(図12の左半部における最も下側の「スリープ応答(Nack)」参照)。
【0147】
また、中継装置の制御部34は、OLTからスリープ指示を受け取った時に、自装置に上りデータがない場合は、配下のすべてのONU(図例ではONU1とONU2)に、スリープ指示を送る(図12の右半部における各「スリープ指示」参照)。
中継装置の制御部34は、配下のONUのうち、Nackのスリープ応答を返すONU1,2が1つでもあった場合には、Nackのスリープ応答をOLTに返す(図12の左半部における上から2番目の「スリープ応答(Nack)」参照)。
【0148】
すなわち、中継装置の制御部34は、下段PONの配下のすべてのONU1,2のスリープ応答がAckであった場合に限り、OLTにAckのスリープ応答を返す(図12の左半部における最初の「スリープ応答(Ack)」参照)。
この場合、中継装置の制御部34は、自装置についても所定のスリープ期間だけスリープ信号を有効にし、上り送信機能をスリープさせ、スリープ応答がAckであったONU1,2に対して、所定のスリープ期間だけノーマルゲートの送信を停止する。
【0149】
なお、中継装置の制御部34は、上記スリープ応答がAckであったONU1,2のスリープ期間中において、ONU1,2からレポートメッセージやOAMメッセージを受信しなくても、当該ONU1,2とのMPCPリンクやOAMリンクを維持する。
ここで、中継装置と各ONU1,2のスリープ期間は、スリープ指示に記すパラメータで与えてもよいし、別途OAMメッセージなどで設定してもよい。
【0150】
また、中継装置と各ONU1,2のスリープ期間は、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。例えば、中継装置と各ONU1,2との間のRTT(Round Trip Time )を考慮して、各ONU1,2のスリープ期間を、中継装置のスリープ期間よりもRTT分だけ長くしてもよい。
【0151】
〔第3実施形態の効果〕
第3実施形態の中継装置30によれば、第1実施形態の場合と比べて、更に次の効果を奏する。
なお、以下において、OLT10が上段PONに下り送信するスリープ指示を「第1スリープ指示」といい、中継装置30が下段PONに下り送信するスリープ指示を「第2スリープ指示」という場合がある。また、ONU20が下段PONに上り送信するスリープ応答を「第2スリープ応答」といい、中継装置30が上段PONに上り送信するスリープ応答を「第1スリープ応答」という場合がある。
【0152】
第3実施形態の中継装置30では、制御部34が、PON回線1,2間の対応関係(第3実施形態では、論理リンクが1対多で対応すること)に従って、OLT10から取得した1つの第1スリープ指示から、ONU20に送信する第2スリープ指示を生成する。
従って、上段PONの1つの第1スリープ指示が、中継装置30によって下段PONの1又は複数の第2スリープ指示に変換されて、マルチキャスト的に各ONU20に伝送される。
【0153】
このため、上段PONのOLT10が、下段PONのONU20の上り送信のスリープ動作を集中的に制御できるようになり、ONU20がウェイクアップした途端に中継装置30が上り送信をスリープしたりすることがなくなるので、上りトラフィックの再開遅延を防止することができる。
【0154】
また、第3実施形態の中継装置30によれば、制御部34が、ONU20が送信する第2スリープ応答がすべて肯定的である場合に、OLT10に対してAckの第1スリープ応答を送信するとともに、第1PON送受信部31又は第1送信処理部32のうちの少なくとも1つの送信機能を休止させる、自装置のスリープ動作を行う。
従って、中継装置30の配下のすべてのONU20が上り送信をスリープしていることを条件として、中継装置30の上り送信をスリープさせることができ、中継装置30の省電力化を図ることができる。
【0155】
<第4実施形態>
〔第4実施形態の装置構成等〕
本発明の第4実施形態に係る光通信システム、OLT10、ONU20及び中継装置30は、第2実施形態と基本的に同様である。
【0156】
すなわち、第4実施形態においても、光通信システム、OLT10及びONU20の構成は、それぞれ、第1実施形態の場合(図1〜図3参照)と同様であるが、中継装置30は、上段のPON1に対して複数の「論理ONU」として振舞い、かかる論理ONUは、下段のPON2j(j=1,2……n)のONU20と1対1で対応するように設けられている。
【0157】
また、第4実施形態では、上位網において、フレームにONU10を識別するためのVLAN(Virtual LAN )タグを付加するように運用されており、図2に示すOLT10の下りバッファ18は、VLANごとに構成されている。以下、このVLANごとのOLT10の下りバッファ18を、「FIFO群18」という。
OLT10の送信処理部15は、FIFO群18の空でないFIFOからラウンドロビンでフレームを取り出す。
【0158】
また、OLT10の送信処理部15及び受信処理部13は、LLID解決テーブルテーブル14を参照して、VLANID(VLANの識別子)とLLIDの対応を解決する。受信処理部13は、解決したVLANIDを受信フレームに付加或いは上書きし、上りバッファ17に送る。
更に、図4に示す中継装置30の下りバッファ41では、保存されているデータ量が論理リンクごとにカウントされている。
【0159】
第4実施形態では、ONU20のPON送受信部21(図3参照)が、送受信双方の機能を停止する「スリープ機能」を有する。PON送受信部21は、制御部24から入力されるスリープ信号が有効であれば、自身のレーザダイオードと送信回路及びフォトダイオードと受信回路の電源を遮断して送受信双方の機能を停止し、消費電力を低減させる。
同様に、ONU20の送信処理部22及び受信処理部23(図3参照)もそれぞれ「スリープ機能」を有する。これらの処理部22,23は、制御部24から入力されるスリープ信号が有効であれば、自身の処理を停止し、消費電力を低減させる。
【0160】
また、第4実施形態では、中継装置30の第1PON送受信部31、第1送信処理部32及び第1受信処理部33(図4参照)も、それぞれ、ONU20のPON送受信部21、送信処理部22及び受信処理部23と同様の「スリープ機能」を有する。
このように、第4実施形態では、ONU20と中継装置30が、上り送信機能と下り受信機能の双方を所定時間だけ停止するスリープ機能を有する。
【0161】
〔OLTとONUが実行するスリープ制御〕
第4実施形態のOLT10とONU20は、次の「スリープ制御」を実行可能である。このスリープ制御は、中継装置30を介在しない従来PONの場合と同様である。
OLT10の制御部12は、ONU20との論理リンクを順に調べ、所定期間だけ帯域要求がないか、帯域要求があっても所定水準以下であり、かつ、FIFO群18の当該論理リンクに対応したFIFOが空であるか、所定水準以下であった場合に、送信処理部15へそのFIFOのスケジュールを禁止するように指示するとともに、その論理リンクに対して、制御フレームの一種として「スリープ指示」を送信する。
【0162】
ONU20の制御部24は、OLT10からスリープ指示を受け取ると、OLT10へ送信すべきデータの有無を所定水準に照らして確認し、制御フレームの一種である「スリープ応答」として、データがある場合は「Nack」を返す。
また、ONU20の制御部24は、データがない場合には、「Ack」を返すとともに、所定のスリープ期間だけスリープ信号を有効にする。
【0163】
OLT10の制御部12は、ONU20からスリープ応答を受け取ると、それがNackである場合は、送信処理部15へ前記FIFOのスケジュールを再開するように指示するとともに、通常の動作を継続する。
また、OLT10の制御部12は、スリープ応答がAckである場合は、そのONU20に対して所定のスリープ期間だけノーマルゲートの送信を停止し、このスリープ期間中は、レポートメッセージやOAMメッセージを受信しなくても、MPCPリンクやOAMリンクを維持する。
【0164】
そして、OLT10の制御部12は、スリープ期間(例えば、スリープ指示などで設定)が終了すると、送信処理部15へそのFIFOのスケジュールを再開するように指示するとともに、通常の動作を再開する。
なお、第4実施形態のスリープ動作は、上記の通り、上り送信だけでなく下り受信にも適用されるが、この点で、スリープ動作が上り送信に限定される前述の第3実施形態の場合と異なる。
【0165】
〔中継装置がある場合のスリープ制御〕
図13及び図14は、中継装置30を含む第4実施形態の光通信システムにおける、スリープ制御シーケンスを示す図である。なお、図14は図13の続きである。
より具体的には、図13及び図14では、上段PONでやり取りされるスリープ指示及びスリープ応答のメッセージと、下段PONにおいてやり取りされるスリープ指示及びスリープ応答のメッセージとの関連を表している。
【0166】
図13及び図14のスリープ制御のシーケンスにおいて、OLT10とONU20が行うスリープ動作については、上述の通り、通常のPONの場合と同様である。
図13に示すように、中継装置の制御部34は、例えば、LLID=Aの論理リンクに対するスリープ指示をOLTから受け取ると、ONU1へ送信すべきデータの有無と、OLTへ送信すべきデータの有無を所定水準に照らして確認し、データがない場合は、PON回線1のLLID=Aの論理リンクを、PON回線2のLLID=Xの論理リンクに変換して、スリープ指示を送信する。
【0167】
また、中継装置の制御部34は、LLID=Xの論理リンクからのスリープ応答がAckである場合は、LLID=Aの論理リンクを通して、Ackのスリープ応答をOLTに返すとともに、LLID=Xの論理リンクに対して、所定のスリープ期間(以下、「スリープ期間Tx」とする。)だけノーマルゲートの送信を停止する。
このスリープ期間中は、中継装置の制御部34は、レポートメッセージやOAMメッセージを受信しなくても、MPCPリンクやOAMリンクを維持する。
【0168】
図13の例では、中継装置の制御部34は、上段PONから受け取ったLLID=Bの論理リンクに対するスリープ指示を、LLID=Bに対応する下段PONの論理リンク(LLID=Y)に変換してスリープ指示を送信し、LLID=Yの論理リンクからAckのスリープ応答を受信している。
この場合、中継装置の制御部34は、ONU1の場合と同様に、LLID=Bの論理リンクを通して、Ackのスリープ応答をOLTに返すとともに、LLID=Yの論理リンクに対して、所定のスリープ期間(以下、「スリープ期間Ty」とする。)だけノーマルゲートの送信を停止する。
【0169】
そして、中継装置の制御部34は、下段側のPON回線2において、開設されているすべての論理リンクに渡って重複するスリープ時間が所定時間以上である場合に、その時間内において自装置のスリープ信号を有効にする。
図13の例では、中継装置の制御部34は、ONU1についてのスリープ期間Txと、ONU2についてのスリープ期間Tyとが重複する時間だけ、自装置のスリープ信号を有効にする。
【0170】
一方、図14に示すように、中継装置の制御部34は、LLID=X(LLID=Yでもよい。)の論理リンクからNackのスリープ応答を受け取った場合は、対応するLLID=A(LLID=Bでもよい。)の論理リンクを通して、Nackのスリープ応答をOLTに返す。
また、中継装置の制御部34は、例えば、LLID=B(LLID=Aでもよい。)の論理リンクに対するスリープ指示を受け取った時に、ONU2へ送信すべきデータ、或いは、OLTへ送信すべきデータがあった場合には、Nackのスリープ応答をOLTに送信し、通常動作を継続する。
【0171】
なお、第3実施形態の場合と同様に、各ONU1,2のスリープ期間は、スリープ指示に記すパラメータとして与えてもよいし、別途OAMメッセージ等で設定してもよい。
また、中継装置の制御部34は、下段側のPON回線2へのスリープ指示を、第1受信処理部33と下りバッファ41とを経由させてもよい。この場合、下りバッファ41に保存されているフレームをスリープ指示が追い超すことがないので、OLTからスリープ指示を受け取った場合に、ONUへ送信すべきデータの有無をチェックしなくても、常にデータがないと判定できる。
【0172】
〔第4実施形態の効果〕
第4実施形態の中継装置30によれば、第2実施形態の場合と比べて、更に次の効果を奏する。
すなわち、第4実施形態の中継装置30では、制御部34が、PON回線1,2間の対応関係(第4実施形態では、論理リンクが1対1で対応すること)に従って、OLT10から取得した1つの第1スリープ指示に基づいて、ONU20に送信する1つの第2スリープ指示を生成する。
【0173】
また、制御部34が、上記対応関係に従って、ONU20から取得した、第2スリープ指示に対応する1つの第2スリープ応答に基づいて、第1スリープ指示に対応する1つの第1スリープ応答を生成する。
従って、上段PONの1つの第1スリープ指示が、中継装置30によって下段PONの1つの第2スリープ指示に変換されて特定のONU20に伝送され、下段PONの1つの第2スリープ応答が、中継装置30によって上段PONの1つの第1スリープ応答に変換されて、OLT10に伝送される。
【0174】
このため、第4実施形態では、上段PONのOLT10が、下段PONのONU20の上り送信と下り受信のスリープ動作を集中的に制御できるようになり、ONU20と中継装置30との間のPON回線1において、送信動作のみならず、受信動作もスリープさせることができる。
従って、ONU20がウェイクアップした途端に中継装置30が上り送信と下り受信をスリープしたりすることがなく、上り下りのトラフィックの再開遅延を防止することができる。
【0175】
また、中継装置30は、OLT10からの第1スリープ指示に1対1で連動して、ONU20への第2スリープ指示を行うので、ONU20のスリープ期間中に、OLT10から当該ONU20宛の下りユーザフレームを受信することはない。
従って、スリープ期間中の下りトラフィックをバッファリングするためのメモリを中継装置30に設ける必要なく、中継装置30の製作コストを低減して経済化を図れるという利点もある。
【0176】
更に、第4実施形態では、中継装置30が、配下のONU20のスリープ期間Tx,Tyが重複する期間に、自身の上り送信機能と下り受信機能を休止させるスリープ動作を行うことができるので、中継装置30についても省電力化を図ることができる。
【0177】
<その他の変形例>
第4実施形態におけるスリープ動作は送受信双方の機能を停止するものとしたが、送信機能あるいは受信機能の一方の機能を停止するものであってもよい。同様に、第3および第4実施形態において、必ずしも例示したスリープ対象すべてを停止させる必要はなく、いずれかの対象が停止すればよい。
【0178】
また、第3および第4実施形態において、OLT10の制御部12あるいは中継装置30の制御部34は、配下の中継装置30あるいはONU20がスリープしている間、スリープしている相手へのノーマルゲートの送信を停止するとしたが、ノーマルゲートの送信を継続してもよい。そして、そのノーマルゲートに対応して、何らかのフレーム(応答)を受信した場合、OLT10あるいは中継装置30はその応答を発した相手に対するスリープ動作を解除してもよい。
【符号の説明】
【0179】
10 局側装置(OLT)
20 宅側装置(ONU)
30 中継装置
31 第1PON送受信部(第1送受信部)
32 第1送信処理部(中継処理部)
33 第1受信処理部(中継処理部)
34 制御部
35 第2受信処理部(中継処理部)
36 LLID解決テーブル
37 第2送信処理部(中継処理部)
38 第2PON送受信部(第2送受信部)
39 第1上りバッファ(制御フレーム用)
40 第2上りバッファ(ユーザフレーム用)
41 下りバッファ
42 ループ用バッファ
【技術分野】
【0001】
本発明は、PON(Passive Optical Network)システムを構成する局側装置と宅側装置の間の伝送距離を延ばすための中継装置と中継方法、及び、その中継装置を用いた光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
PONシステムは、P2MP(Point to Multi Point)の接続形態における光分岐を無電力で行う光通信システムであり、局側装置と、これに接続された光ファイバから光カプラを介して複数の光ファイバに分岐した一芯の光ファイバ網と、分岐した光ファイバの終端にそれぞれ接続された宅側装置とを備えている。
このPONシステムにおいては、半導体レーザ等の光源を直接或いは外部変調したNRZ(Non-Return to Zero)光信号を伝送し、情報を送受信する。
【0003】
局側装置が送信する下り光信号は各宅側装置に放送形式で伝送され、各宅側装置は自分宛の信号のみを受信処理する。逆に、宅側装置からの上り光信号は、衝突を防止すべく局側装置によって時分割多重方式で管理されており、局側装置は各宅側装置からの上り光信号をバースト的に受信する。
かかるPONシステムでは、分岐数や伝送距離が大きくなるほど通信品質が悪化するので、32分岐以内でかつ20km以内の伝送距離で運用するのが通常である。
【0004】
そこで、局側装置と宅側装置の間の伝送距離をできるだけ延ばすため、8個のG−EPONを相対向する1対の中継装置によって10Gに多重する、PON多重中継装置が提案されている(特許文献1参照)。
また、伝送距離の延長を図る別の中継装置として、G−EPONの光信号を電気信号に再生同期して中継する中継装置も既に知られている(特許文献2参照)。
【0005】
更に、PONシステムの宅側装置の消費電力を削減するため、局側装置からのスリープ指令を契機として、所定のスリープ時間だけ宅側装置が通信を停止させる間欠起動方式のスリープ制御も既に知られている(非特許文献1参照)。
このスリープ制御では、スリープ時間の情報を含むスリープ指令を局側装置が特定の宅側装置に送信し、所定のスリープ条件を満たしている場合に、宅側装置が指定されたスリープ時間だけスリープ状態に遷移するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−017264号公報
【特許文献2】特開2007−221688号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「低消費電力10G−EPON装置向け制御インタフェースに関する一検討」(坂本健ほか5名) 信学技報 vol.110, no.20, pp.7-12, 2010年4月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の中継装置では、8個のG−EPONを10Gの中継装置に集約する方式であるから、G−EPONの数だけ局側装置が必要であり、また、その局側装置の数だけ上位網とのインタフェースが必要である。
従って、局側装置と宅側装置の間の伝送距離を延ばすことはできるが、システム全体としては不経済であるという欠点がある。
【0009】
上記特許文献2に記載の中継装置は、PON光信号を光電変換した電気信号を物理層レベルで再生同期するものであり、中継時に伝送レートが増える訳ではない。従って、通常のPONシステムと同様に、分岐数を増やした場合に帯域が減少するという欠点がある。
また、分岐数を多くすると、制御メッセージで消費される帯域が増え、ユーザデータが使用できる全体の帯域が減少するので、ユーザ当りの帯域が減少するし、上り方向では、バーストオーバーヘッド分の無効帯域が増加するので更に帯域が減少する。
【0010】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、伝送距離を経済的に延ばすことができる光通信システムを構成可能な中継装置を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、ユーザ当たりの帯域を確保しつつ分岐数を増加できる光通信システムを構成可能な中継装置を提供することを第2の目的とする。
【0011】
一方、後述の通り、本発明の中継装置を使用すれば、上段PONと下段PONとを備えた多段接続の光通信システムを構成できる。
しかし、かかる多段接続の光通信システムの局側装置と中継装置のそれぞれに、前記した従来の間欠起動方式のスリープ制御を独自に行わせると、上段PONと下段PONとのスリープ制御が別個独立に稼働し、トラフィックの再開に時間がかかる場合があるという新たな問題が生じる。
【0012】
その理由は、局側装置が配下の中継装置に対するスリープ制御を独自に行い、各中継装置が配下の宅側装置に対するスリープ制御を独自に行うと、中継装置と宅側装置が同時にスリープすることはまれであり、宅側装置がウェイクアップすると同時に中継装置がスリープしたりすることが発生する可能性があり、通信システム全体で見た場合のスリープ期間が、中継装置のスリープ時間と宅側装置のスリープ期間の論理和となる場合があるからである。
【0013】
本発明は、かかる問題点に鑑み、上段PONと下段PONを有する光通信システムにおいてスリープ制御を行う場合に、トラフィックの再開遅延を防止できる中継装置を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1) 本発明の中継装置は、上段側の第1PON回線に対する光信号の送受信と、その光信号と電気信号との相互変換を行う第1送受信部と、下段側の第2PON回線に対する光信号の送受信と、その光信号と電気信号との相互変換を行う第2送受信部と、前記第1送受信部が受信した下りフレームを前記第2送受信部に中継し、前記第2送受信部が受信した上りフレームを前記第1送受信部に中継する中継処理部と、前記第1送受信部が局側装置に送信する前記上りフレームの送信については、前記局側装置が行う上り多重アクセス制御に従い、前記第2送受信部が宅側装置から受信する前記上りフレームの受信については、独自に上り多重アクセス制御を行う制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明の中継装置によれば、制御部が、局側装置に送信する上りフレームの送信については、局側装置が行う上り多重アクセス制御に従い、宅側装置から受信する上りフレームの受信については、独自に上り多重アクセス制御を行うので、例えば図1に示すような、1つの局側装置を頂点として複数の中継装置を接続する上段PONと、その中継装置の配下に更に複数の宅側装置を接続する下段PONとを備えた、多段接続の光通信システムを構成できる。
【0016】
従って、中継装置の介在によって単に伝送距離が延びるだけでなく、1つの局側装置に対して中継装置を介して多数の宅側装置を収容することができ、光通信システム全体のコストを抑えることができる。
このため、伝送距離を経済的に延ばすことができる光通信システムを構成することができ、前記第1の目的が達成される。
【0017】
(2) 本発明の中継装置において、前記第1送受信部は前記第2送受信部よりも高い伝送レートで上りの前記光信号を送信可能であり、前記中継処理部は、前記両送受信部間の上りの前記伝送レートの差を吸収するための上りバッファを有することが好ましい。
この場合、上段PONの上りの伝送レート(例えば10G)が下段PONの上りの伝送レート(例えば1G)よりも高い光通信システムを構成することができ、上段PONの分岐数を増大してもユーザ当たりの上りの帯域を有効に確保できる。
このため、ユーザ当たりの帯域を確保しつつ分岐数を増加できる光通信システムを構成することができ、前記第2の目的が達成される。
【0018】
(3) 本発明の中継装置において、前記第1送受信部は前記第2送受信部よりも高い伝送レートで下りの前記光信号を受信可能であり、前記中継処理部は、前記両送受信部間の下りの前記伝送レートの差を吸収するための上りバッファを有することが好ましい。
この場合、上段PONの下りの伝送レート(例えば10G)が下段PONの下りの伝送レート(例えば1G)よりも高い光通信システムを構成することができ、上段PONの分岐数を増大してもユーザ当たりの下りの帯域を有効に確保できる。
このため、ユーザ当たりの帯域を確保しつつ分岐数を増加できる光通信システムを構成することができ、前記第2の目的が達成される。
【0019】
(4) 本発明の中継装置において、前記中継処理部は、前記第1PON回線の論理リンクと前記第2PON回線の論理リンクとを1対多で対応させる中継が可能であることが好ましい。
この場合、第1PON回線の論理リンクの数が宅側装置の数ではなく中継装置の数に依存することになるので、中継装置の配下の宅側装置の数が多くなった場合でも、制御メッセージのオーバーヘッドやバーストオーバーヘッドが変わらず、ユーザ当りの帯域の無用な低下を防ぐことができる。
【0020】
(5) また、この場合の局側装置に対する登録及び離脱シーケンスとして、前記制御部は、前記第2PON回線の前記論理リンクのいずれかが開設された場合に前記第1PON回線の前記論理リンクの開設を前記局側装置に要求し、前記第2PON回線の前記論理リンクのすべてが切断された場合に前記第1PON回線の前記論理リンクの切断を前記局側装置に要求することが好ましい。
【0021】
中継装置の制御部が、上記のような手順で第1PON回線の論理リンクの開設と切断を局側装置に要求するようにすれば、中継装置の配下で稼働する宅側装置がない場合には、その中継装置は局側装置に登録されない。
このため、局側装置と中継装置との間で無駄な制御メッセージが発生することにより、上段PONのユーザ帯域の無用な低下を防止することができる。
【0022】
(6) また、本発明の中継装置において、前記中継処理部は、前記中継処理部は、前記第1PON回線の論理リンクと前記第2PON回線の論理リンクとを1対1で対応させる中継が可能なものであってもよい。
この場合、局側装置が宅側装置に1対1で対応した論理リンクを管理することができるので、宅側装置ごとのきめ細かいQoS制御や、宅側装置間のよりよい公平性を実現することができる。
【0023】
(7) また、この場合の局側装置に対する登録及び離脱シーケンスとして、前記制御部は、前記第2PON回線の前記論理リンクを開設する度に前記第1PON回線の前記論理リンクの開設を前記局側装置に要求し、前記第2PON回線の前記論理リンクを切断する度に前記第1PON回線の前記論理リンクの切断を前記局側装置に要求するようにすればよい。
このようにすれば、PON回線間における論理リンクの1対1対応を確保しつつ、中継装置の配下の宅側装置を局側装置に対して適切に登録及び離脱させることができる。
【0024】
(8) また、この場合、前記中継処理部が、前記局側装置からのループバック開設要求を前記宅側装置に中継するとともに、前記宅側装置からのループバック開設応答を前記局側装置に中継し、前記局側装置からのループバック試験フレームを前記宅側装置に中継するとともに、前記宅側装置からのループバック試験フレームを前記局側装置に中継することが好ましい。
【0025】
このようにすれば、局側装置が、上段PONと下段PONを連結させてOAMループバック試験を実施できるようになるので、中継装置内のバッファなどに関連する障害も検出することができ、光通信システムの保守性をより向上させることができる。
【0026】
(9) 本発明の中継装置において、前記中継処理部は、前記第1PON回線の前記論理リンクと前記第2PON回線の前記論理リンクとの対応づけを、同じサービスクラスの前記論理リンクについて行うことにしてもよい。
この場合、サービスクラスに対応づけられた複数の論理リンクが一つの宅側装置に構成されていても、PON回線間の論理リンクの1対多又は1対1の対応づけを行うことができる。
このようにすれば、局側装置、中継装置、および宅側装置を通して論理リンクとサービスクラスの対応が一致するので、サービスクラス毎のきめ細かいQoS制御を確実に実施することができる。
【0027】
(10) 本発明の中継装置において、前記制御部は、前記両PON回線間の所定の対応関係に従って、前記局側装置から取得した第1スリープ指示から、前記宅側装置のための第2スリープ指示を生成することが好ましい。
この場合、上段PONの第1スリープ指示が、中継装置によって下段PONの第2スリープ指示に変換されて宅側装置に伝送されるので、上段PONの局側装置が下段PONの宅側装置のスリープ動作を集中的に制御できるようになる。
【0028】
このため、上段PONと下段PONとを有する多段接続の光通信システムにおいて、上段PONと下段PONとでスリープ制御を別個に行う場合に比べて、システム全体のスリープ期間が長期化することがなく、トラフィックの再開遅延を防止することができ、前記第3の目的が達成される。
【0029】
(11) 本発明の中継装置において、前記所定の対応関係が、前記第1PON回線の論理リンクと前記第2PON回線の論理リンクとを1対多で対応させる関係である場合には、前記制御部は、1つの前記第1スリープ指示から、前記第2PON回線のすべての論理リンクに対する複数の前記第2スリープ指示を生成すればよい。
【0030】
この場合であって、複数の前記第2スリープ指示に対応する第2スリープ応答に肯定と否定の両方があった場合、肯定と応答した宅側装置の下り受信機能をスリープさせるとともに、否定と応答した宅側装置への下り送信を継続するためには、中継装置は肯定と応答した宅側装置への下りフレームをスリープ期間一時的にバッファリングし、スリープ期間が終了した後送信しなければならない。このため、宅側装置個別にバッファリングする機構が必要であり、中継装置の製作コストが高くなる。一方、宅側装置のスリープ動作を上り送信機能に限定すれば、下りフレームをスリープ期間にバッファリングする必要はなくなる。
このため、上段PONの局側装置が、下段PONの宅側装置の上り送信機能のスリープ動作を集中的に制御できるようになる。
【0031】
(12) また、前記制御部は、複数の前記第2スリープ指示に対応する第2スリープ応答がすべて肯定的である場合に、前記第1送受信部又は前記中継処理部の一部のうちの少なくとも1つの上り送信機能を休止させる、自装置のスリープ動作を行うことが好ましい。
このようにすれば、中継装置の配下のすべての宅側装置が上り送信をスリープしていることを条件として、中継装置の上り送信をスリープさせることができ、中継装置についても省電力化を図ることができる。
【0032】
(13) 一方、前記所定の対応関係が、前記第1PON回線の論理リンクと前記第2PON回線の論理リンクとを1対1で対応させる関係である場合には、前記制御部は、1つの前記第1スリープ指示から、1つの前記第2スリープ指示を生成し、前記第2スリープ指示に対応する1つの第2スリープ応答から、これと同じ許否内容である、前記第1スリープ応答に対応する1つの第1スリープ応答を生成すればよい。
【0033】
この場合、上段PONの局側装置が、下段PONの宅側装置からスリープ指示に対する許否内容を得られるので、宅側装置の上り送信機能と下り受信機能の双方を局側装置がスリープ制御することができる。
このため、上段PONの局側装置が、下段PONの宅側装置の上り送信機能と下り送信機能のスリープ動作を集中的に制御できるようになる。
【0034】
また、この場合、局側装置からのスリープ指示に1対1対応で連動して、中継装置が配下の宅側装置へのスリープ指示を行うので、宅側装置のスリープ期間中に、局側装置から当該宅側装置宛の下りフレームを中継装置が受信しない。
このため、スリープ期間中の下りトラフィックをバッファリングするためのメモリを中継装置に設ける必要がなく、中継装置の製作コストを低減できるという利点もある。
【0035】
(14) また、前記制御部は、複数の前記第2スリープ指示に基づいて行われるスリープ期間が重複する期間に、前記第1送受信部又は前記中継処理部の一部のうちの少なくとも1つの上り送信機能及び/又は下り受信機能を休止させる、自装置のスリープ動作を行うことが好ましい。
このようにすれば、中継装置の配下の宅側装置のスリープ期間が重複していることを条件として、中継装置の上り送信と下り受信をスリープさせることができ、中継装置についても省電力化を図ることができる。
【0036】
(15) 本発明の光通信システムは、前記局側装置と、前記局側装置とP2MP形態で接続された上述の(1)〜(14)のいずれかに記載の複数の中継装置と、前記中継装置とP2MP形態で接続された複数の前記宅側装置と、を備えていることを特徴とする。
このように、本発明の光通信システムは、上述の(1)〜(14)に記載した本発明の中継装置を備えるので、当該中継装置と同様の作用効果を奏する。
【0037】
(16) 本発明方法は、第1PON回線から受信した下りフレームを第2PON回線に中継し、前記第2PON回線から受信した上りフレームを前記第1PON回線に中継する方法であって、前記第1PON回線を用いて局側装置に送信する前記上りフレームの送信については、前記局側装置が行う上り多重アクセス制御に従い、前記第2PON回線を用いて宅側装置から受信する前記上りフレームの受信については、独自に上り多重アクセス制御を行うことを特徴とする。
【0038】
上記の通り、本発明方法は、上述の(1)に記載した本発明の中継装置が行う中継方法である。従って、本発明方法は、上述の(1)に記載した本発明の中継装置と同様の作用効果を奏する。
【0039】
(17) 本発明方法において、前記両PON回線間の所定の対応関係に従って、前記局側装置から取得した第1スリープ指示から、前記宅側装置のための第2スリープ指示を生成することが好ましい。
上記中継方法は、上述の(10)に記載した本発明の中継装置が行う中継方法である。従って、上記中継方法は、上述の(10)に記載した本発明の中継装置と同様の作用効果を奏する。
【0040】
(18) なお、本発明の中継装置は、上述の(1)に記載した構成を、必ずしも必須とするものではなく、以下の構成の中継装置であってもよい。
上段側の第1PON回線に対する光信号の送受信と、その光信号と電気信号との相互変換を行う第1送受信部と、
下段側の第2PON回線に対する光信号の送受信と、その光信号と電気信号との相互変換を行う第2送受信部と、
前記第1送受信部が受信した下りフレームを前記第2送受信部に中継し、前記第2送受信部が受信した上りフレームを前記第1送受信部に中継する中継処理部と、
前記両PON回線間の所定の対応関係に従って、前記局側装置から取得した第1スリープ指示から、前記宅側装置のための第2スリープ指示を生成する制御部と、
を備えていることを特徴とする中継装置。
【0041】
かかる構成の中継装置であっても、制御部が、上述の(10)に記載した制御を実行するので、前記第3の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0042】
以上の通り、本発明によれば、伝送距離を経済的に延ばすことができる光通信システムを構成することができる。また、本発明によれば、ユーザ当たりの帯域を確保しつつ、分岐数を増加できる光通信システムを構成することができる。
更に、本発明によれば、上段PONと下段PONを有する光通信システムにおいてスリープ制御を行う場合に、トラフィックの再開遅延を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光通信システムの接続形態を示す図である。
【図2】局側装置の構成を示すブロック図である。
【図3】宅側装置の構成を示すブロック図である。
【図4】中継装置の構成を示すブロック図である。
【図5】局側装置への登録シーケンスを示す図である。
【図6】上り多重アクセス制御のシーケンスを示す図である。
【図7】局側装置からの離脱シーケンスを示す図である。
【図8】第2実施形態の場合の局側装置への登録シーケンスを示す図である。
【図9】図8の続きのシーケンスを示す図である。
【図10】第2実施形態の場合の局側装置からの離脱シーケンスを示す図である。
【図11】第2実施形態の場合のOAMループバック試験のシーケンスを示す図である。
【図12】中継装置を含む第3実施形態の光通信システムにおける、スリープ制御シーケンスを示す図である。
【図13】中継装置を含む第4実施形態の光通信システムにおける、スリープ制御シーケンスを示す図である。
【図14】図13の続きのシーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
<第1実施形態>
〔光通信システムの接続形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る光通信システムの接続形態を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の光通信システムでは、1つの局側装置10と多数の宅側装置20が、それらの間の複数の中継装置30を仲立ちとして、上下2段のPON回線1,2で接続された接続形態(トポロジ)となっている。
【0045】
すなわち、1つの局側装置10とその配下の複数の中継装置30とが光ファイバにてP2MP形態で接続されており、各中継装置30とその配下の複数の宅側装置20とが光ファイバにてP2MP形態で接続されている。
より具体的には、局側装置10に接続された一芯の光ファイバ51は、受動光分岐ノードである光カプラ52を介して複数の一芯の光ファイバ53に分岐しており、この分岐した各光ファイバ53の終端に、それぞれ中継装置30が接続されている。
【0046】
また、中継装置30の下段側に接続された一芯の光ファイバ54は、受動光分岐ノードである光カプラ55を介して複数の一芯の光ファイバ56に分岐しており、この分岐した各光ファイバ56の終端に、それぞれ宅側装置20が接続されている。
従って、光ファイバ網51〜53よりなる上段側のPON回線1は、1つのOLT10に対応して1つだけ存在し、光ファイバ網54〜56よりなる下位側のPON回線2は、複数の中継装置30に対応して当該中継装置30と同数だけ存在する。
【0047】
なお、以下において、局側装置10とPON回線1と複数の中継装置30とからなる上段側のPONを、「PON1」又は「上段PON」などと呼ぶことがあり、中継装置30とPON回線2と複数の宅側装置20からなる下段側のPONを、「PON2j」(j=1,2……n:nは中継装置30の最大数)又は「下段PON」などと呼ぶことがある。
また、以下において、「局側装置」を「OLT」と略記し、「宅側装置」を「ONU」と略記する場合がある。
【0048】
更に、本実施形態では、局側装置10と中継装置30の間の上段側のPON1は、伝送レートが10G(正確には10.3125Gbps)の10G−EPONよりなり、各中継装置30と宅側装置20の間の下段側のPON2jは、伝送レートが1G(正確には1.25Gbps)のG−EPONよりなる。
【0049】
〔局側装置の構成〕
図2は、局側装置10の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、OLT10は、上位側(図2の左側)から下位側に向かって順に、上位網IF(インタフェース)部11、制御部12、受信処理部13、LLID(Logical Link ID)の解決テーブル14、送信処理部15、PON送受信部16を備えている。また、OLT10は、上りバッファ17及び下りバッファ18を備えている。
【0050】
PON送受信部16は、PON回線1から入力される1.27μm帯の光信号を電気信号に変換して、その電気信号を受信処理部13に出力するとともに、送信処理部15から入力される電気信号を1.577μm帯の光信号に変換して、PON回線1に出力する。
【0051】
受信処理部13は、PON送受信部16から入力される電気信号からフレームを再構成し、フレーム種別が制御フレーム又はOAMループバック試験フレームであれば、それを制御部12へ出力する。
また、受信処理部13は、フレーム種別がユーザフレームであれば、それを上りバッファ17へ出力するとともに、送信元MACアドレスとLLIDの対応を学習し、その対応をLLID解決テーブル14に記録する。なお、OAMループバック状態にあるLLIDは制御部12から通知されている。
【0052】
上位網IF部11は、上りバッファ17にフレームがあれば、それを取り出して上位網へ出力するとともに、上位網からフレームが入力されると、そのフレームを下りバッファ18へ出力する。
送信処理部15は、制御部12から入力されるフレームを、電気信号としてPON送受信部16に出力するとともに、下りバッファ18にフレームがあれば、制御部12からのフレームの合間にそれを下りバッファ18から取り出し、電気信号としてPON送受信部16に出力する。
【0053】
このとき、送信処理部15は、ユーザフレームのLLIDとして、宛先MACアドレスを元にLLID解決テーブル14を参照して求めた値を付与する。
制御部12は、ONU20を運営管理するMPCPフレーム及びOAMフレーム等の制御フレームを生成し、この制御フレームを、送信処理部15を介してONU20へ送信するとともに、ONU20から送られるMPCPフレームやOAMフレーム等の制御フレームを、受信処理部13を介して受信し、その制御フレームの内容に対応する処理を行う。
【0054】
また、制御部12は、OAMループバック試験中であるLLIDについては、受信処理部13に通知する。なお、第1実施形態では、OLT10の制御部12が行うMPCPフレームを用いたPON1での上り多重アクセス制御において、中継装置30がONU20の機能を果たす。
本実施形態では、上段のPON1が10G−EPONであるから、OLT10が送受信する光信号は10.3125Gbpsで伝送され、符号化前の電気信号のレートは10Gbpsとなる。
【0055】
〔宅側装置の構成〕
図3は、宅側装置20の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、ONU20は、上位側(図3の左側)から下位側に向かって順に、PON送受信部21、送信処理部22、受信処理部23、制御部24及び下位網IF(インタフェース)部25を備えている。
また、ONU20は、2種類の上りバッファ26,27、下りバッファ28及びループ用バッファ29を備えている。第1の上りバッファ26は制御フレーム用であり、第2の上りバッファ27はユーザフレーム用である。
【0056】
PON送受信部21は、PON回線2から入力される1.49μm帯の光信号を電気信号に変換して、その電気信号を受信処理部23に出力するとともに、送信処理部22から入力される電気信号を1.3μm帯の光信号に変換して、PON回線2に出力する。
なお、ONU20のPON送受信部21から出力される光信号は、送信処理部22から入力されるバーストイネーブル信号がオフの期間は発光しないバースト信号となる。
【0057】
受信処理部23は、PON送受信部21から入力される電気信号からフレームを再構成し、LLIDが自分宛でないフレームとブロードキャストのLLIDでないフレームを廃棄する。
また、受信処理部23は、廃棄されなかったフレームについてはフレーム種別を調べ、それが制御フレームであれば制御部24へ出力し、ユーザフレームであれば下りバッファ28へ出力する。
【0058】
ただし、ONU20がOAMループバック状態のときは、受信処理部23はユーザフレームをループ用バッファ29へ出力する。なお、OAMループバック状態にあるLLIDは制御部24から通知されている。
【0059】
下位網IF部25は、下りバッファ28にフレームがあれば、それを取り出して下位網のメディアに応じた信号に変換して出力する。また、下位網IF部25は、下位網から信号を受信すると、その信号を内部信号へ変換した後でフレームを再構成し、第2上りバッファ27へ出力する。
【0060】
送信処理部22は、制御部24からの送信指示に従い、自ら生成したレポートフレームや、第1上りバッファ26、第2上りバッファ27及びループ用バッファ29から取り出したフレームを、電気信号として指示された期間にPON送受信部21に送出する。このとき、送信処理部22はバーストイネーブル信号を有効にする。
制御部24からの送信指示には、フレームの対象(レポートフレームか否か)、送信開始時刻及び送信期間が含まれる。
【0061】
送信処理部22は、指示された対象がレポートフレームの場合は、レポートフレームを送信し、指示された対象がレポートフレームでない場合は、第1上りバッファ26、第2上りバッファ26又はループ用バッファ29のフレームを送信する。
上記各バッファ26,27,29からのフレームの取り出しは、既にレポートした分を優先して行われ、また、第1上りバッファ26、第2上りバッファ27、ループ用バッファ29の順に優先される。
【0062】
送信処理部22は、制御部24からレポートフレームの生成を指示された場合、上記各バッファ26,27,29に保存されている情報量を参照してレポートフレームを生成する。このとき、送信処理部22は、引数として与えられたグラント長に対応したフレーム群については、レポートに含めない。
【0063】
また、送信処理部22は、フレームを電気信号に変換する際に、登録要求フレームに対してはブロードキャストのLLIDを付与し、その他のフレーム対しては当該ONU20のLLIDを付与する。
制御部24は、OLT10から送られるMPCPフレームやOAMフレームを、受信処理部23を介して受信し、それらの制御フレームに対応する処理を行うとともに、その応答或いは自ら生成するMPCPフレームやOAMフレームを、送信処理部22を介してOLT10へ送信する。
【0064】
また、制御部24は、OAMループバック状態が変化すれば、その状態変化を受信処理部23に通知する。
本実施形態では、下段側のPON2jがG−EPONあるから、ONU20が送受信する光信号は1.25Gbpsで伝送され、符号化前の電気信号のレートは1Gbpsとなる。
【0065】
〔中継装置の構成〕
図4は、中継装置30の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、中継装置30は、上位側(図4の左側)から下位側に向かって順に、第1PON送受信部31、第1送信処理部32、第1受信処理部33、制御部34、第2受信処理部35、LLID解決テーブル36、第2送信処理部37及び第2PON送受信部38を備えている。
また、中継装置30は、2種類の上りバッファ39,40、下りバッファ41及びループ用バッファ42を備えている。第1上りバッファ39は制御フレーム用であり、第2上りバッファ40はユーザフレーム用である。
【0066】
第1PON送受信部31は、PON回線1から入力される1.577μm帯の光信号を電気信号に変換して、第1受信処理部33に出力するとともに、第1送信処理部32から入力される電気信号を1.27μm帯の光信号に変換して、PON回線1に出力する。
なお、中継装置30の第1PON送受信部31から出力される光信号は、第1送信処理部32から入力されるバーストイネーブル信号がオフの期間は発光しないバースト信号となる。
【0067】
第1受信処理部33は、第1PON送受信部31から入力される電気信号からフレームを再構成し、LLIDが自分宛でないフレームとブロードキャストのLLIDでないフレームを廃棄する。
また、第1受信処理部33は、廃棄されなかったフレームについてはフレーム種別を調べ、それが制御フレームであれば制御部34へ出力し、ユーザフレームであれば下りバッファ41へ出力する。
【0068】
ただし、中継装置30がPON回線1からOAMループバック状態に設定されている場合は、第1受信処理部33はユーザフレームをループ用バッファ42へ出力する。なお、OAMループバック状態の有効/無効は、制御部34から通知されている。
【0069】
第1送信処理部32は、制御部34からの送信指示に従い、自ら生成したレポートフレームや、第1上りバッファ39、第2上りバッファ40及びループ用バッファ42から取り出したフレームを、電気信号として指示された期間に第1PON送受信部31に送出する。このとき、第1送信処理部32はバーストイネーブル信号を有効にする。
制御部34からの送信指示には、フレームの対象(レポートフレームか否か)、送信開始時刻、送信期間が含まれる。
【0070】
第1送信処理部32は、指示された対象がレポートフレームの場合は、レポートフレームを送信し、指示された対象がレポートフレームでない場合は、第1上りバッファ39、第2上りバッファ40又はループ用バッファ42のフレームを送信する。
上記各バッファ39,40,42からのフレームの取り出しは、既にレポートした分を優先して行われ、また、第1上りバッファ39、第2上りバッファ40、ループ用バッファ42の順に優先される。
【0071】
第1送信処理部32は、制御部34からレポートフレームの生成を指示された場合、上記各バッファ39,40,42に保存されている情報量を参照してレポートフレームを生成する。このとき、第1送信処理部32は、引数として与えられたグラント長に対応したフレーム群については、レポートに含めない。
また、第1送信処理部32は、フレームを電気信号に変換する際に、登録要求フレームに対してはブロードキャストのLLIDを付与し、その他のフレーム対しては当該ONU20のLLIDを付与する。
【0072】
制御部34は、OLT10から送られるMPCPフレームやOAMフレームを、第1受信処理部33を介して受信し、それらの制御フレームに対応する処理を行うとともに、その応答或いは自ら生成するMPCPフレームやOAMフレームを、第1送信処理部32を介してOLT10へ送信する。
すなわち、制御部34は、第1PON送受信部31から送信する上りフレームの送信タイミングについては、OLT10が行う上り多重アクセス制御に従う。
【0073】
また、制御部34は、OAMループバック状態が変化すれば、その状態変化を第1受信処理部33に通知する。
本実施形態では、上段側のPON1が10G−EPONであるから、中継装置30がPON回線1に送受信する光信号は10.3125Gbpsで伝送され、符号化前の電気信号のレートは10Gbpsとなる。また、下段側のPON2jがG−EPONであるから、中継装置30がPON回線2に送受信する光信号は1.25Gbpsで伝送され、符号化前の電気信号のレートは1Gbpsとなる。
【0074】
第2PON送受信部38は、PON回線2から入力される1.31μm帯の光信号を電気信号に変換して、その電気信号を第2受信処理部35に出力するとともに、第2送信処理部37から入力される電気信号を1.49μm帯の光信号に変換して、PON回線2に出力する。
【0075】
第2受信処理部35は、第2PON送受信部38から入力される電気信号からフレームを再構成し、フレーム種別が制御フレーム又はOAMループバックフレームであれば、それを制御部34へ出力する。
また、第2受信処理部35は、フレーム種別がユーザフレームであれば、それを第2上りバッファ40へ出力するとともに、送信元MACアドレスとLLIDの対応を学習し、その対応をLLID解決テーブル36に記録する。なお、OAMループバック状態にあるLLIDは制御部34から通知されている。
【0076】
第2送信処理部37は、制御部34から入力されるフレームを、電気信号として第2PON送受信部38に出力するとともに、下りバッファ41にフレームがあれば、制御部34からのフレームの合間にそれを下りバッファ41から取り出し、電気信号として第2PON送受信部38に出力する。
このとき、第2送信処理部37は、ユーザフレームのLLIDとして、宛先MACアドレスを元にLLID解決テーブル36を参照して求めた値を付与する。
【0077】
このように、本実施形態では、中継装置30が、ONU20から送出されたユーザフレームのLLIDと、その送信元MACアドレス(ONU20のMACアドレス)との対応関係をLLID解決テーブル36によって個別に把握し、この解決テーブル36に基づいて配下のONU20のLLIDを管理しているので、PON回線1で用いる論理リンクとPON回線2jで用いる論理リンクとが1対多で対応している。
【0078】
制御部34は、ONU20を運営管理するMPCPフレーム及びOAMフレーム等の制御フレームを生成し、第2送信処理部37を介してONU20へ送信するとともに、ONU20から送られるMPCPフレームやOAMフレーム等の制御フレームを、第2受信処理部35を介して受信し、その制御フレームの内容に対応する処理を行う。
すなわち、制御部34は、第2PON送受信部38が受信する上りフレームの受信タイミングについては、OLT10とは別個に独自で上り多重アクセス制御を行う。
【0079】
また、制御部34は、PON回線2においてOAMループバック試験状態にあるLLIDについては、第2受信処理部35に通知する。
また、制御部34は、PON1とPON2jのMPCPリンクを個別に確立することができるが、上段PONと下段PONのMPCPリンクの登録シーケンスや離脱シーケンスについては、上段PONと下段PONの間で関連させて実行する。これらのシーケンスの詳細は、次の図5及び図6にて説明する。
【0080】
図4の中継装置30において、第1PON送受信部31と第2PON送受信部38の間の「第1受信処理部33」、「下りバッファ41」及び「第2送信処理部37」は、第1PON送受信部31が受信した下りフレームを第2PON送受信部38に中継する下りの「中継処理部」を構成する。
第2PON送受信部38と第1PON送受信部31の間の「第2受信処理部35」、「上りバッファ40」及び「第1送信処理部32」は、第2PON送受信部38が受信した上りフレームを第1PON送受信部31に中継する上りの「中継処理部」を構成する。
【0081】
前述のとおり、本実施形態では、上段のPON1が10G−EPONであり、かつ、下段のPON2jがG−EPONとなっており、中継装置30の上段側と下段側とで両者の伝送レートが異なる。
そこで、本実施形態の中継装置30では、より高速のPON1とより低速のPON2jとの伝送レートの差を、上記中継処理部を構成する第2上りバッファ40と下りバッファ41とで吸収している。
【0082】
〔登録シーケンス〕
図5は、第1実施形態の光通信システムにおける、ONU20と中継装置30のOLT10への登録シーケンスを示す図である。
より具体的には、図5では、中継装置30をOLT10に登録させるために両者の間でやり取りされるMPCPメッセージと、ONU20を中継装置30に登録させるために両者の間でやり取りされるMPCPメッセージとの関連を表している。
【0083】
なお、図5以後の各図のシーケンスでは、ONU20については2つ登場するが、OLT10と中継装置30については、それぞれ1つずつ登場する。
そこで、図5以後の各図のシーケンスでは、「OLT10」と「中継装置30」については、図面の参照符号を省略して「OLT」及び「中継装置」と表記し、ONU20については、「ONU1」及び「ONU2」と表記して区別している。
【0084】
図5に示すように、OLTと中継装置は、下流のPONに対してそれぞれディスカバリゲートを定期的に発行する。ここで、中継装置の配下のPON2jには、稼動しているONUがないとする。
新たに稼動を開始したONU1は、中継装置からディスカバリゲートを受けると、その送信許可期間においてレジスタ要求を返す。中継装置は、ONU1からレジスタ要求を受けると、レジスタを返すとともに、そのONU1にノーマルゲートを送る。
【0085】
ONU1は、ノーマルゲートで送信許可された期間にレジスタ確認を返す。中継装置はONU1からレジスタ確認を受けると、当該ONU1の登録を完了させる。
中継装置は、配下のいずれかのONUが登録された時点以降に、OLTからディスカバリゲートを受けると、その送信許可期間においてOLTにレジスタ要求を返す。
OLTは、中継装置からレジスタ要求を受けると、レジスタを返すとともにその中継装置にノーマルゲートを送る。
【0086】
中継装置は、ノーマルゲートで送信許可された期間にレジスタ確認を返す。OLTは、中継装置からレジスタ確認を受けると、当該中継装置の登録を完了させる。
図5の後半部分に示すように、上記のようにして中継装置の登録が完了した後で、新たにONU2が稼動を開始すると、ONU1の場合と同様のシーケンスがONU2について実行され、中継装置にONU2が登録される。
【0087】
ここで、ONU2の登録シーケンスは、OLTと中継装置との間のMPCPリンクには影響を与えない。また、ONU1及びONU2がOLTと通信するユーザフレームは、OLTと中継装置の間において、同一の論理リンクを通過する。
【0088】
中継装置は、ONU1,2の登録が完了すると、そのONU1,2との間の論理リンクを介してOAMリンクを確立し、さらにOAMループバック試験を実施する。
そして、OAMループバック試験が成功すると、本論理リンクと上段PON間のユーザフレームの疎通を解禁する。
【0089】
また、OLTは、中継装置の登録が完了すると、その中継装置との間の論理リンクを介してOAMリンクを確立し、さらにOAMループバック試験を実施する。
そして、OAMループバック試験が成功すると、本論理リンクと上位網間のユーザフレームの疎通を解禁する。なお、第1実施形態では、これらのOAMループバック試験は互いに独立している。
【0090】
〔上り多重アクセス制御のシーケンス〕
図6は、第1実施形態の光通信システムにおける、PON回線1,2での上り多重アクセス制御を示すシーケンス図である。
より具体的には、図6では、中継装置、ONU1及びONU2のユーザフレームの疎通が解禁された以降に行われる、各PON回線1,2で上りバースト信号が衝突しないように時分割多重した、上り方向の多重アクセス制御を示している。
【0091】
図6に示すように、中継装置は、各ONU1,2からのレポート用バーストとユーザフレーム用バーストとが衝突しないよう、自装置で受信すべきタイミングをスケジューリングし、その結果をノーマルゲートメッセージにて各ONU1,2に通知する。
このノーマルゲートメッセージには2つのグラントが含まれている。このうち、最初のグラントは、レポート強制フラグを有効としたものとする。2つ目のグラントのグラント長は、各ONU1,2から受領したレポートメッセージを参考として、或いは、網運用者(通信事業者)のポリシーに基づいて決定される。
【0092】
各ONU1,2は、グラントで示された期間に、レポートメッセージあるいはデータフレーム(複数)を送出する。ここで、データフレームには、OAMメッセージ等のONU1,2が生成したフレームや下位網から受信したユーザフレームが含まれる。
【0093】
図6の左半部に示すように、OLTは、配下の中継装置に対してノーマルゲートメッセージを送信し、上段PONについて独自に上り多重アクセス制御を行う。
そして、中継装置は、OLTからのノーマルゲートの指示に従って、OLTに対して上りバースト信号を送出する。
【0094】
〔離脱シーケンス〕
図7は、第1実施形態の光通信システムにおける、ONU20及び中継装置30のOLT10からの離脱シーケンスを示す図である。
より具体的には、図7は、中継装置をOLTから登録解除させるために両者の間でやり取りされるMPCPメッセージと、ONUを中継装置から登録解除させるために両者の間でやり取りされるMPCPメッセージとの関連を表している。
【0095】
ここで、中継装置の配下のPONには、ONU1とONU2以外に稼動しているONUがないとする。
新たに稼動を停止するONU1は、図7で図示しないゲートメッセージが示す送信許可期間において、デレジスタ要求を中継装置に送る。
中継装置は、ONU1からデレジスタ要求を受けると、デレジスタを返すとともに当該ONU1の登録を解除する。
【0096】
その後、ONU2が稼動を停止する場合には、ONU1の場合と同様のシーケンスが実行され、中継装置はONU2の登録を解除する。
ここで、中継装置の配下に登録されているONUがなくなったので、中継装置は、図7で図示しないゲートメッセージが示す送信許可期間において、デレジスタ要求をOLTに送る。OLTは、中継装置からデレジスタ要求を受けると、デレジスタを返すとともに当該中継装置の登録を解除する。
【0097】
〔第1実施形態の効果〕
以上の通り、第1実施形態の中継装置30によれば、制御部34が、自装置から送信する上りフレームの送信については、OLT10が行う上り多重アクセス制御に従い、自装置が受信する上りフレームの受信については、独自に上り多重アクセス制御を行うので、図1に示すような、1つのOLT10を頂点として複数の中継装置30を接続する上段PONと、その中継装置30の配下に更に複数のONU20を接続する下段PONとを備えた、多段接続の光通信システムを構成できる。
【0098】
このため、PON固有の伝送距離が上段PON(PON1)の分と下段PON(PON2j)の分を加算した値になるので、OLT10とONU20の間の距離を長くすることができる。
また、PON固有の分岐数については、上段PONの分と下段PONの分とを乗算できるので、光通信システム全体の分岐数を多くすることできる。
【0099】
また、下段PONが多くなった場合でも、OLT10が1つあれば足るので、光通信システム全体のコストを抑えることができる。この場合、OLT10の上位網とのインタフェースも1つあればよいので、上位網を含めた光通信システム全体のコストを抑えることができる。
更に、1つの下段PON当たりに中継装置が1台あればよいので、この点からも、光通信システム全体のコストを抑えることができる。
更に、中継装置30は上段PONへ加入して通信を行うための制御と、下段PONにONU20を加入させて通信を行うための制御を共通の制御部34で逐次的に行うことが出来るので、例えば制御を実行するためのCPUは一つあればよく、中継装置30のコストを抑えることができる。
【0100】
第1実施形態の中継装置30によれば、上りバッファ40及び下りバッファ41によって上段PONと下段PONの伝送レートの差を吸収することで、上段PONを10G−EONとしかつ下段PONを1G−EPONにしているので、上段PONの分岐数nを大きくした場合でも、ユーザ当りの帯域を確保することができる。
【0101】
また、第1実施形態の中継装置30によれば、OLT10が行う上り多重アクセス制御に用いる上段PONの論理リンクが、制御部34が行う上り多重アクセス制御に用いる下段PONの論理リンクと一対多で対応しているので、上段PONにおける論理リンクの数は、ONU20の数ではなく中継装置30の数に依存する。
このため、中継装置30の配下のONU20の数が多くなった場合でも、制御メッセージのオーバーヘッドやバーストオーバーヘッドが変わらず、ユーザ当りの帯域の無用な低下を防ぐことができる。
【0102】
更に、第1実施形態の中継装置30によれば、制御部34が、下段PONの論理リンクを開設した後に上段PONの論理リンクの開設をOLT10に要求するので、中継装置30の配下で稼動するONU20がない場合には、その中継装置30がOLT10に登録されない。
このため、ONU20が登録されていない中継装置30とOLT10との間で無駄な制御メッセージが発生することがなく、上段PONのユーザ帯域の無用な低下を防止することができる。
【0103】
なお、上述の第1実施形態では、OLT10、ONU20及び中継装置30において、ユーザフレーム用のキュー(バッファ)は上り下りでそれぞれ1つとしたが、優先度やQoSクラスに応じてそのキューを複数設けてもよい。
また、上述の第1実施形態では、OLT10及び中継装置30のLLID解決テーブル14,36を用いてMACアドレスとLLIDを対応づけているが、例えば、ユーザフレームのVLANタグ値(VID)とLLIDを対応づけてもよい。この場合、テーブル要素の登録は学習ベースではなく、網の管理者あるいは管理装置からプロビジョニングするのが好適である。
【0104】
<第2実施形態>
〔第2実施形態の装置構成等〕
本発明の第2実施形態に係る光通信システム、OLT10及びONU20の構成は、それぞれ、第1実施形態の場合(図1〜図3参照)と同様である。
一方、第2実施形態で用いる中継装置30は、上段のPON1に対して複数の「論理ONU」として振舞う。この論理ONUは、下段のPON2j(j=1,2……n)のONU20と1対1で対応するように設けられる。
【0105】
中継装置30の基本的な構成要素は、第1実施形態の場合(図4)と同様である。もっとも、第2実施形態では、上りのユーザフレームのための第2上りバッファ40については、上段PONの論理ONUごとに設けられている。
そして、第2実施形態の中継装置30は、上りのユーザフレームを中継する際に、中継先のPON1において使用するLLIDを、中継元のPON2jにおいて使用されたLLIDから一意に決定する。また、第2実施形態では、図4のループ用バッファ42は不要であるが、その理由は、図11の説明のところで後述する。
【0106】
〔登録シーケンス〕
図8及び図9は、第2実施形態の光通信システムにおける、ONUと中継装置内の論理ONUの登録シーケンスを示す図である。なお、図9は図8の続きである。
より具体的には、図8及び図9では、中継装置内の論理ONUをOLTに登録させるために両者の間でやり取りされるMPCPメッセージと、ONUを中継装置に登録させるために両者の間でやり取りされるMPCPメッセージとの関連を表している。
【0107】
図8に示すように、OLTと中継装置は、それぞれ下流のPONに対してディスカバリゲートを定期的に発行する。
新たに稼動を開始したONU1は、中継装置からディスカバリゲートを受けると、その送信許可期間においてレジスタ要求を返す。中継装置は、ONU1からレジスタ要求を受けると、レジスタ(ここで開設するLLIDを「X」とする。)を返すとともに、ONU1にノーマルゲートを送る。
【0108】
ONU1は、ノーマルゲートで送信許可された期間にレジスタ確認を返す。中継装置は、ONU1からレジスタ確認を受けると、当該ONU1の登録を完了させる。
中継装置は、ONU1の登録完了後に、OLTからディスカバリゲートを受けると、その送信許可期間においてレジスタ要求を返す。
このとき、レジスタ要求の送信元MACアドレスを下段PONのONU毎に変えることとし、OLTに対して新しい「論理ONU」として認識させる。
【0109】
すなわち、OLTは、中継装置からレジスタ要求を受けると、レジスタ(LLID=A)を返すとともに、中継装置にノーマルゲートを送る。中継装置は、ノーマルゲートで送信許可された期間にレジスタ確認を返す。
また、中継装置は、下段PONにおけるONU1との間のLLID(=X)と上段PONにおけるLLID(=A)との対応を、前記したLLID解決テーブル36(図4参照)に記憶する。
【0110】
なお、第2実施形態の場合には、上記のように、ディスカバリの際に上下段の論理リンクを1対1で対応させるので、第1実施形態の場合のように、中継装置の第2受信処理部35(図4参照)が、受信したユーザフレームの送信元MACアドレスとLLIDの対応を学習して、解決テーブル36に記録する必要はない。
【0111】
また、中継装置の第2送信処理部37は、ユーザフレームのLLIDをPON回線1で用いられたLLIDを元に、解決テーブル36を参照することによって求める。
OLTは、中継装置からレジスタ確認を受けると、ONU1のための論理ONU(LLID=A)の登録を完了させる。
【0112】
その後、新たにONU2が稼動を開始すると、ONU1の場合と同様のシーケンスが実行され、LLID=YのONU2が中継装置に登録される。
更に、図9に示すように、上段のPON1においても、ONU1の場合と同様のシーケンスが実行され、ONU2のための新しい論理ONU(LLID=B)がOLTに登録される。このとき、中継装置は、上段のPON1と下段のPON2jとのLLIDの1対1の対応関係を、解決テーブル36に記憶する。
【0113】
中継装置は、配下のONU1,2の登録が完了すると、そのONU1,2との間の論理リンクを介してOAMリンクを確立する。
ただし、第2実施形態では、中継装置は、そのONU1,2へのOAMループバック試験を実施しない。OLTがその試験を実施するからである。また、OLTは、中継装置内の論理ONUの登録が完了すると、その中継装置内の論理ONUとの間の論理リンクを介して、OAMリンクを確立する。第2実施形態においてOLTが実施するOAMループバック試験は、図11において説明する。
【0114】
〔離脱シーケンス〕
図10は、第2実施形態の光通信システムにおける、ONUと中継装置内の論理ONUの離脱シーケンスを示す図である。
より具体的には、図10では、中継装置内の論理ONUをOLTから登録解除させるために両者の間でやり取りされるMPCPメッセージと、ONUを中継装置から登録解除させるために両者の間でやり取りされるMPCPメッセージの関連を表している。
【0115】
図10に示すように、新たに稼動を停止するONU1は、図10で図示しないゲートメッセージが示す送信許可期間において、デレジスタ要求を中継装置に送る。
中継装置は、ONU1からデレジスタ要求を受けると、デレジスタを返すとともに当該ONU1の登録を解除する。
【0116】
そして、中継装置は、図10で図示しないゲートメッセージが示す送信許可期間において、LLID=Aの論理リンクを介してデレジスタ要求をOLTに送る。
OLTは、LLID=Aの論理リンクからデレジスタ要求を受けると、対応するデレジスタを返すとともに、LLID=Aの論理ONUの登録を解除する。
【0117】
その後、ONU2が稼動を停止する場合にも、ONU1の場合と同様のシーケンスが実行され、中継装置は、ONU2の登録を解除する。
更に、上段のPON1においても同様のシーケンスが実行され、OLTは、LLID=Bの論理ONUの登録を解除する。
【0118】
〔ループバック試験のシーケンス〕
図11は、第2実施形態の光通信システムにおける、OAMループバック試験シーケンスを示す図である。
より具体的には、図11では、上段PONにおけるOAMループバック試験と下段PONにおけるOAMループバック試験との関連を表している。
【0119】
図11のシーケンスの開始時においては、LLID=Aの論理リンクとその上でのOAMリンクがOLTに確立されているとする。
この場合、OLTは、LLID=AにOAMループバックの開設を要求するループバックコントロールOAMメッセージ(以下、「ループバック開設要求」という。)を送る。
中継装置1は、上段PONから上記メッセージを受けると、下段PONのONU1にループバック開設要求を送る。
【0120】
ONU1は、下段PONから上記メッセージを受けると、ループ用バッファ29を経由する「OAMループバックパス」を設定し、OAMループバックパスの開設を通知するループバックコントロールOAMメッセージ(以下、「ループバック開設応答」という。)を、中継装置に返す。
中継装置は、下段PONから上記メッセージを受けると、上段PONのOLTにループバック開設応答を返すとともに、上段PONにおけるLLID=Aの論理リンクと下段PONにおけるLLID=Xの論理リンクの間のユーザフレームの疎通を解禁する。
【0121】
OLTは、上記メッセージを受けると、LLID=Aの論理リンクに対してOAMループバック試験を実施する。
具体的には、OLTの制御部12は、受信処理部13にLLID=AがOAMループバック試験状態にあることを通知してから、OAMループバック試験フレーム(LLID=A)を送信処理部15に送る。そして、OLTの制御部12は、受信処理部13を経由して返ってきたOAMループバック試験フレームをチェックし、試験の良否を判定する。
【0122】
その試験が完了したあと、OLTは、LLID=AにOAMループバックの解除を要求するループバックコントロールOAMメッセージ(以下、「ループバック解除要求」)を送る。中継装置は、上段PONから上記メッセージを受けると、下段PONのLLID=Xにループバック解除要求を送る。
ONU1は、PONから上記メッセージを受けるとループ用バッファ29を経由するOAMループバックパスを解除し、OAMループバックパスの解除を通知するループバックコントロールOAMメッセージ(以下、「ループバック解除応答」)を返す。
【0123】
中継装置は、下段PONから上記メッセージを受けると、上段PONのOLTにループバック解除応答を返す。
OLTの制御部12は、上記メッセージを受けると、受信処理部13にLLID=AのOAMループバック試験状態の解除を通知するとともに、LLID=Aと上位網との間のユーザフレームの疎通を解禁する。
【0124】
〔第2実施形態の効果〕
第2実施形態の中継装置30によれば、第1実施形態の場合と比べて、更に次の効果を奏する。
すなわち、第2実施形態では、中継装置30が、PON回線2の論理リンクを開設する度にPON回線1の論理リンクの開設をOLT10に要求し(図8及び図9の登録シーケンス)、PON回線2の論理リンクを切断する度にPON回線1の論理リンクの開設をOLT10に要求する(図10の離脱シーケンス)。
【0125】
このため、OLT10がONU20に1対1で対応した論理リンクを管理することができ、第1実施形態の場合に比べて、ONU20ごとのきめ細かいQoS制御や、ONU20間のよりよい公平性を実現することができる。
【0126】
また、第2実施形態の中継装置30によれば、上述の通り、上段PONと下段PONを連結させたOAMループバック試験を実施することができるので(図11のOAMループバック試験のシーケンス)、中継装置30の上りバッファ40や下りバッファ41に関連する障害を検出することが可能となり、光通信システムの保守性をより向上させることができる。
【0127】
<その他の変形例>
本発明の権利範囲は、上述の実施形態(変形例を含む。)ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲及びその構成と均等な範囲内のすべての変更が含まれる。
上述の実施形態では、上段PON(PON1)が上り下り双方の伝送レートが10Gである対称10G−EPONであり、下段PONがG−EPONになっているが、上段PON(PON1)が対称10G−EPONであり、下段PONが下りの伝送レートが10Gであり上りの伝送レートが1Gである非対称10G−EPONであってもよい(変形例1)。また、上段PON(PON1)が非対称10G−EPONであり、下段PONがG−EPONであってもよい(変形例2)。
【0128】
例えば、上記変形例1の場合には、中継装置30の上りバッファ40により、第1PON送受信部31と第2PON送受信部38との間の上りの伝送レートの差を吸収すればよい。
また、上記変形例2の場合には、中継装置30の下りバッファ41により、第1PON送受信部31と第2PON送受信部38との間の下りの伝送レートの差を吸収すればよい。
【0129】
上述の実施形態では、一つのONU20には下段PONの一つの論理リンクを対応づけており、複数のサービスクラスを想定する場合であっても、一つの論理リンク内にサービスクラスに対応づけられた複数のキューを構成することを前提とした。しかし、一つのONU20に対してもサービスクラスに対応づけられた複数の論理リンクを構成するようにしてもよい。
【0130】
このような一つのONU20に複数の論理リンクを想定した場合は、上述の第1実施形態においては、同じサービスクラスに属する論理リンクについて、それぞれ、PON回線1の論理リンクとPON回線2の論理リンクとを1対多で対応させることにすればよい。
同様に、上述の第2実施形態においては、同じサービスクラスに属する論理リンクについて、それぞれ、PON回線1の論理リンクとPON回線2の論理リンクとを1対1で対応させることにすればよい。
【0131】
また、上述の実施形態の中継装置30において、上段PON(PON1)の特定波長を装置内で分離して、光信号のまま下段PONに合波する別経路を設けてもよい。このとき、光アンプ等により光パワーを増幅させてもよい。特定波長は、OTDR試験や映像信号の放送などに使用できる。
【0132】
また、上述の実施形態では、下段PONをG−EPONとしたが、10G−EPONを併用したデュアルレートPONを下段PONに採用してもよい。この場合、G−EPONのONU20と10G−PONのONU20が同一の下段PONに共存するので、中継装置30は、登録されたONU20のタイプに応じて使用レートを決定することになる。
更に、上段PONとして10G−EPONの送受信手段に加えて、G−EPONの送受信手段を中継装置30に設け、あるいは10G−EPONの送受信手段がG−EPONの送受信機能も備え、設定により一方を動作させるにようにしてもよい。
【0133】
下段PONのデュアルレート対応と併せて、中継装置30は、本発明の動作に加えて、G−EPONの中継装置として、或いは10G−EPONの中継装置として動作することになり、中継装置としての適用領域が拡大する。
また、上述の実施形態では、中継装置30は上段PON(PON1)に対する制御フレームの処理と、下段PONに対する制御フレームの処理を一つの制御部24が実行している。
【0134】
更に、上述の実施形態では、登録、離脱及びOAMループバック試験に関して、上段PON(PON1)と下段PONの制御メッセージを関連させる例を示したが、その他に、ONU20の「スリープ制御」、「暗号鍵の通知や更新」、「ONU管理」などにおいても、制御メッセージを関連させてもよい。
【0135】
例えば、上述の第1実施形態においてスリープ制御を行う場合には、中継装置30がOLT10からスリープ指示を受けると、その中継装置30は、送信データがないことを条件として、配下のONU20にスリープ指示を送信し、すべてのONU20から肯定的なスリープ応答が得られた場合に、自装置のスリープ応答をOLT10に返すようにすればよい。
この場合、ONU20の下段PONへの送信動作をスリープさせることができ、ONU20の省電力化を図ることができる。さらに、すべてのONU20がスリープする場合は、中継装置30の上段PONへの送信動作をスリープさせることができ、中継装置30の省電力化を図ることができる。
【0136】
また、上述の第2実施形態においてスリープ制御を行う場合には、中継装置30は、OLT10からのスリープ指示を対応する論理リンクに中継し、ONU20からのスリープ応答の許否結果をそのままOLT10に報告することとし、配下のONU20のスリープ時間の重複時間で自身のスリープ動作を行うようにすればよい。
この場合、ONU20の下段PONへの送信動作だけでなく、下段PONからの受信動作もスリープさせることができ、ONU20の省電力効果をより向上することができる。さらに、すべてのONU20のスリープが重複した期間においては、中継装置30の上段PONへの送信動作だけでなく、上段PONからの受信動作もスリープさせることができ、中継装置30の省電力効果をより向上することができる。
【0137】
また、上述の実施形態において、中継装置30は複数の下段PONを備えてもよい。この場合、LLID解決テーブル36は下段PONとそのPONにおけるLLIDを一体として解決するようにすればよい。
【0138】
<第3実施形態>
〔第3実施形態の装置構成等〕
本発明の第3実施形態に係る光通信システム、OLT10、ONU20及び中継装置30の構成は、それぞれ、第1実施形態の場合(図1〜図4参照)と同様である。
また、登録シーケンス、多重アクセスシーケンス及び離脱シーケンスについても、それぞれ、第1実施形態の場合(図5〜図6参照)と同様である。
【0139】
もっとも、第3実施形態では、ONU20のPON送受信部21(図3参照)が、上り送信機能を停止する「スリープ機能」を有する。PON送受信部21は、制御部24から入力されるスリープ信号が有効であれば、自身のレーザダイオードと送信回路の電源を遮断して送信機能を停止し、消費電力を低減させる。
同様に、ONU20の送信処理部22(図3参照)も「スリープ機能」を有する。送信処理部22は、制御部24から入力されるスリープ信号が有効であれば、自身の処理を停止し、消費電力を低減させる。
【0140】
また、第3実施形態では、中継装置30の第1PON送受信部31と第1送信処理部32(図4参照)も、それぞれ、ONU20のPON送受信部21と送信処理部22と同様の「スリープ機能」を有する。
このように、第3実施形態では、ONU20と中継装置30が、上り送信機能のみを所定時間だけ停止するスリープ機能を有する。
【0141】
〔OLTとONUが実行するスリープ制御〕
第3実施形態のOLT10とONU20は、次の「スリープ制御」を実行可能である。このスリープ制御は、中継装置30を介在しない通常のPONの場合と同様である。
OLT10の制御部12は、ONU20から受信したレポートメッセージを参照し、所定期間を過ぎても帯域要求がないか、帯域要求があっても所定水準以下であった場合に、そのONU20に対して、制御フレームの一種として「スリープ指示」を送信する。
【0142】
ONU20制御部24は、OLT10からスリープ指示を受け取ると、OLT10へ送信すべきデータの有無を所定水準に照らして確認し、制御フレームの一種である「スリープ応答」として、データがある場合は「Nack」を返す。
また、ONU20の制御部24は、データがない場合には、「Ack」を返すとともに、所定のスリープ期間だけ送信スリープ信号を有効にする。
【0143】
OLT10の制御部12は、ONU20からスリープ応答を受け取ると、それがNackである場合は通常の動作を継続する。
また、OLT10の制御部12は、スリープ応答がAckである場合は、そのONU20に対して所定のスリープ期間だけノーマルゲートの送信を停止し、このスリープ期間中は、レポートメッセージやOAMメッセージを受信しなくても、MPCPリンクやOAMリンクを維持する。
【0144】
そして、OLT10の制御部12は、スリープ期間(例えば、スリープ指示などで設定)が終了すると、通常の動作を再開する。
なお、第3実施形態でのスリープ動作は、上記の通り、上り送信に限定される。このため、下り方向のユーザフレームは、通常通りに通信される。
【0145】
〔中継装置がある場合のスリープ制御〕
図12は、中継装置30を含む第3実施形態の光通信システムにおける、スリープ制御シーケンスを示す図である。
より具体的には、図12では、上段PONでやり取りされるスリープ指示及びスリープ応答のメッセージと、下段PONにおいてやり取りされるスリープ指示及びスリープ応答のメッセージとの関連を表している。
【0146】
図12のスリープ制御のシーケンスにおいて、OLT10とONU20が行うスリープ動作については、上述の通り、通常のPONの場合と同様である。
図12に示すように、中継装置の制御部34は、OLTからスリープ指示を受けると、OLTへ送信すべきデータの有無を所定水準に照らして確認し、自装置に上りデータがある場合は、OLTにNackを返して通常動作を継続する(図12の左半部における最も下側の「スリープ応答(Nack)」参照)。
【0147】
また、中継装置の制御部34は、OLTからスリープ指示を受け取った時に、自装置に上りデータがない場合は、配下のすべてのONU(図例ではONU1とONU2)に、スリープ指示を送る(図12の右半部における各「スリープ指示」参照)。
中継装置の制御部34は、配下のONUのうち、Nackのスリープ応答を返すONU1,2が1つでもあった場合には、Nackのスリープ応答をOLTに返す(図12の左半部における上から2番目の「スリープ応答(Nack)」参照)。
【0148】
すなわち、中継装置の制御部34は、下段PONの配下のすべてのONU1,2のスリープ応答がAckであった場合に限り、OLTにAckのスリープ応答を返す(図12の左半部における最初の「スリープ応答(Ack)」参照)。
この場合、中継装置の制御部34は、自装置についても所定のスリープ期間だけスリープ信号を有効にし、上り送信機能をスリープさせ、スリープ応答がAckであったONU1,2に対して、所定のスリープ期間だけノーマルゲートの送信を停止する。
【0149】
なお、中継装置の制御部34は、上記スリープ応答がAckであったONU1,2のスリープ期間中において、ONU1,2からレポートメッセージやOAMメッセージを受信しなくても、当該ONU1,2とのMPCPリンクやOAMリンクを維持する。
ここで、中継装置と各ONU1,2のスリープ期間は、スリープ指示に記すパラメータで与えてもよいし、別途OAMメッセージなどで設定してもよい。
【0150】
また、中継装置と各ONU1,2のスリープ期間は、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。例えば、中継装置と各ONU1,2との間のRTT(Round Trip Time )を考慮して、各ONU1,2のスリープ期間を、中継装置のスリープ期間よりもRTT分だけ長くしてもよい。
【0151】
〔第3実施形態の効果〕
第3実施形態の中継装置30によれば、第1実施形態の場合と比べて、更に次の効果を奏する。
なお、以下において、OLT10が上段PONに下り送信するスリープ指示を「第1スリープ指示」といい、中継装置30が下段PONに下り送信するスリープ指示を「第2スリープ指示」という場合がある。また、ONU20が下段PONに上り送信するスリープ応答を「第2スリープ応答」といい、中継装置30が上段PONに上り送信するスリープ応答を「第1スリープ応答」という場合がある。
【0152】
第3実施形態の中継装置30では、制御部34が、PON回線1,2間の対応関係(第3実施形態では、論理リンクが1対多で対応すること)に従って、OLT10から取得した1つの第1スリープ指示から、ONU20に送信する第2スリープ指示を生成する。
従って、上段PONの1つの第1スリープ指示が、中継装置30によって下段PONの1又は複数の第2スリープ指示に変換されて、マルチキャスト的に各ONU20に伝送される。
【0153】
このため、上段PONのOLT10が、下段PONのONU20の上り送信のスリープ動作を集中的に制御できるようになり、ONU20がウェイクアップした途端に中継装置30が上り送信をスリープしたりすることがなくなるので、上りトラフィックの再開遅延を防止することができる。
【0154】
また、第3実施形態の中継装置30によれば、制御部34が、ONU20が送信する第2スリープ応答がすべて肯定的である場合に、OLT10に対してAckの第1スリープ応答を送信するとともに、第1PON送受信部31又は第1送信処理部32のうちの少なくとも1つの送信機能を休止させる、自装置のスリープ動作を行う。
従って、中継装置30の配下のすべてのONU20が上り送信をスリープしていることを条件として、中継装置30の上り送信をスリープさせることができ、中継装置30の省電力化を図ることができる。
【0155】
<第4実施形態>
〔第4実施形態の装置構成等〕
本発明の第4実施形態に係る光通信システム、OLT10、ONU20及び中継装置30は、第2実施形態と基本的に同様である。
【0156】
すなわち、第4実施形態においても、光通信システム、OLT10及びONU20の構成は、それぞれ、第1実施形態の場合(図1〜図3参照)と同様であるが、中継装置30は、上段のPON1に対して複数の「論理ONU」として振舞い、かかる論理ONUは、下段のPON2j(j=1,2……n)のONU20と1対1で対応するように設けられている。
【0157】
また、第4実施形態では、上位網において、フレームにONU10を識別するためのVLAN(Virtual LAN )タグを付加するように運用されており、図2に示すOLT10の下りバッファ18は、VLANごとに構成されている。以下、このVLANごとのOLT10の下りバッファ18を、「FIFO群18」という。
OLT10の送信処理部15は、FIFO群18の空でないFIFOからラウンドロビンでフレームを取り出す。
【0158】
また、OLT10の送信処理部15及び受信処理部13は、LLID解決テーブルテーブル14を参照して、VLANID(VLANの識別子)とLLIDの対応を解決する。受信処理部13は、解決したVLANIDを受信フレームに付加或いは上書きし、上りバッファ17に送る。
更に、図4に示す中継装置30の下りバッファ41では、保存されているデータ量が論理リンクごとにカウントされている。
【0159】
第4実施形態では、ONU20のPON送受信部21(図3参照)が、送受信双方の機能を停止する「スリープ機能」を有する。PON送受信部21は、制御部24から入力されるスリープ信号が有効であれば、自身のレーザダイオードと送信回路及びフォトダイオードと受信回路の電源を遮断して送受信双方の機能を停止し、消費電力を低減させる。
同様に、ONU20の送信処理部22及び受信処理部23(図3参照)もそれぞれ「スリープ機能」を有する。これらの処理部22,23は、制御部24から入力されるスリープ信号が有効であれば、自身の処理を停止し、消費電力を低減させる。
【0160】
また、第4実施形態では、中継装置30の第1PON送受信部31、第1送信処理部32及び第1受信処理部33(図4参照)も、それぞれ、ONU20のPON送受信部21、送信処理部22及び受信処理部23と同様の「スリープ機能」を有する。
このように、第4実施形態では、ONU20と中継装置30が、上り送信機能と下り受信機能の双方を所定時間だけ停止するスリープ機能を有する。
【0161】
〔OLTとONUが実行するスリープ制御〕
第4実施形態のOLT10とONU20は、次の「スリープ制御」を実行可能である。このスリープ制御は、中継装置30を介在しない従来PONの場合と同様である。
OLT10の制御部12は、ONU20との論理リンクを順に調べ、所定期間だけ帯域要求がないか、帯域要求があっても所定水準以下であり、かつ、FIFO群18の当該論理リンクに対応したFIFOが空であるか、所定水準以下であった場合に、送信処理部15へそのFIFOのスケジュールを禁止するように指示するとともに、その論理リンクに対して、制御フレームの一種として「スリープ指示」を送信する。
【0162】
ONU20の制御部24は、OLT10からスリープ指示を受け取ると、OLT10へ送信すべきデータの有無を所定水準に照らして確認し、制御フレームの一種である「スリープ応答」として、データがある場合は「Nack」を返す。
また、ONU20の制御部24は、データがない場合には、「Ack」を返すとともに、所定のスリープ期間だけスリープ信号を有効にする。
【0163】
OLT10の制御部12は、ONU20からスリープ応答を受け取ると、それがNackである場合は、送信処理部15へ前記FIFOのスケジュールを再開するように指示するとともに、通常の動作を継続する。
また、OLT10の制御部12は、スリープ応答がAckである場合は、そのONU20に対して所定のスリープ期間だけノーマルゲートの送信を停止し、このスリープ期間中は、レポートメッセージやOAMメッセージを受信しなくても、MPCPリンクやOAMリンクを維持する。
【0164】
そして、OLT10の制御部12は、スリープ期間(例えば、スリープ指示などで設定)が終了すると、送信処理部15へそのFIFOのスケジュールを再開するように指示するとともに、通常の動作を再開する。
なお、第4実施形態のスリープ動作は、上記の通り、上り送信だけでなく下り受信にも適用されるが、この点で、スリープ動作が上り送信に限定される前述の第3実施形態の場合と異なる。
【0165】
〔中継装置がある場合のスリープ制御〕
図13及び図14は、中継装置30を含む第4実施形態の光通信システムにおける、スリープ制御シーケンスを示す図である。なお、図14は図13の続きである。
より具体的には、図13及び図14では、上段PONでやり取りされるスリープ指示及びスリープ応答のメッセージと、下段PONにおいてやり取りされるスリープ指示及びスリープ応答のメッセージとの関連を表している。
【0166】
図13及び図14のスリープ制御のシーケンスにおいて、OLT10とONU20が行うスリープ動作については、上述の通り、通常のPONの場合と同様である。
図13に示すように、中継装置の制御部34は、例えば、LLID=Aの論理リンクに対するスリープ指示をOLTから受け取ると、ONU1へ送信すべきデータの有無と、OLTへ送信すべきデータの有無を所定水準に照らして確認し、データがない場合は、PON回線1のLLID=Aの論理リンクを、PON回線2のLLID=Xの論理リンクに変換して、スリープ指示を送信する。
【0167】
また、中継装置の制御部34は、LLID=Xの論理リンクからのスリープ応答がAckである場合は、LLID=Aの論理リンクを通して、Ackのスリープ応答をOLTに返すとともに、LLID=Xの論理リンクに対して、所定のスリープ期間(以下、「スリープ期間Tx」とする。)だけノーマルゲートの送信を停止する。
このスリープ期間中は、中継装置の制御部34は、レポートメッセージやOAMメッセージを受信しなくても、MPCPリンクやOAMリンクを維持する。
【0168】
図13の例では、中継装置の制御部34は、上段PONから受け取ったLLID=Bの論理リンクに対するスリープ指示を、LLID=Bに対応する下段PONの論理リンク(LLID=Y)に変換してスリープ指示を送信し、LLID=Yの論理リンクからAckのスリープ応答を受信している。
この場合、中継装置の制御部34は、ONU1の場合と同様に、LLID=Bの論理リンクを通して、Ackのスリープ応答をOLTに返すとともに、LLID=Yの論理リンクに対して、所定のスリープ期間(以下、「スリープ期間Ty」とする。)だけノーマルゲートの送信を停止する。
【0169】
そして、中継装置の制御部34は、下段側のPON回線2において、開設されているすべての論理リンクに渡って重複するスリープ時間が所定時間以上である場合に、その時間内において自装置のスリープ信号を有効にする。
図13の例では、中継装置の制御部34は、ONU1についてのスリープ期間Txと、ONU2についてのスリープ期間Tyとが重複する時間だけ、自装置のスリープ信号を有効にする。
【0170】
一方、図14に示すように、中継装置の制御部34は、LLID=X(LLID=Yでもよい。)の論理リンクからNackのスリープ応答を受け取った場合は、対応するLLID=A(LLID=Bでもよい。)の論理リンクを通して、Nackのスリープ応答をOLTに返す。
また、中継装置の制御部34は、例えば、LLID=B(LLID=Aでもよい。)の論理リンクに対するスリープ指示を受け取った時に、ONU2へ送信すべきデータ、或いは、OLTへ送信すべきデータがあった場合には、Nackのスリープ応答をOLTに送信し、通常動作を継続する。
【0171】
なお、第3実施形態の場合と同様に、各ONU1,2のスリープ期間は、スリープ指示に記すパラメータとして与えてもよいし、別途OAMメッセージ等で設定してもよい。
また、中継装置の制御部34は、下段側のPON回線2へのスリープ指示を、第1受信処理部33と下りバッファ41とを経由させてもよい。この場合、下りバッファ41に保存されているフレームをスリープ指示が追い超すことがないので、OLTからスリープ指示を受け取った場合に、ONUへ送信すべきデータの有無をチェックしなくても、常にデータがないと判定できる。
【0172】
〔第4実施形態の効果〕
第4実施形態の中継装置30によれば、第2実施形態の場合と比べて、更に次の効果を奏する。
すなわち、第4実施形態の中継装置30では、制御部34が、PON回線1,2間の対応関係(第4実施形態では、論理リンクが1対1で対応すること)に従って、OLT10から取得した1つの第1スリープ指示に基づいて、ONU20に送信する1つの第2スリープ指示を生成する。
【0173】
また、制御部34が、上記対応関係に従って、ONU20から取得した、第2スリープ指示に対応する1つの第2スリープ応答に基づいて、第1スリープ指示に対応する1つの第1スリープ応答を生成する。
従って、上段PONの1つの第1スリープ指示が、中継装置30によって下段PONの1つの第2スリープ指示に変換されて特定のONU20に伝送され、下段PONの1つの第2スリープ応答が、中継装置30によって上段PONの1つの第1スリープ応答に変換されて、OLT10に伝送される。
【0174】
このため、第4実施形態では、上段PONのOLT10が、下段PONのONU20の上り送信と下り受信のスリープ動作を集中的に制御できるようになり、ONU20と中継装置30との間のPON回線1において、送信動作のみならず、受信動作もスリープさせることができる。
従って、ONU20がウェイクアップした途端に中継装置30が上り送信と下り受信をスリープしたりすることがなく、上り下りのトラフィックの再開遅延を防止することができる。
【0175】
また、中継装置30は、OLT10からの第1スリープ指示に1対1で連動して、ONU20への第2スリープ指示を行うので、ONU20のスリープ期間中に、OLT10から当該ONU20宛の下りユーザフレームを受信することはない。
従って、スリープ期間中の下りトラフィックをバッファリングするためのメモリを中継装置30に設ける必要なく、中継装置30の製作コストを低減して経済化を図れるという利点もある。
【0176】
更に、第4実施形態では、中継装置30が、配下のONU20のスリープ期間Tx,Tyが重複する期間に、自身の上り送信機能と下り受信機能を休止させるスリープ動作を行うことができるので、中継装置30についても省電力化を図ることができる。
【0177】
<その他の変形例>
第4実施形態におけるスリープ動作は送受信双方の機能を停止するものとしたが、送信機能あるいは受信機能の一方の機能を停止するものであってもよい。同様に、第3および第4実施形態において、必ずしも例示したスリープ対象すべてを停止させる必要はなく、いずれかの対象が停止すればよい。
【0178】
また、第3および第4実施形態において、OLT10の制御部12あるいは中継装置30の制御部34は、配下の中継装置30あるいはONU20がスリープしている間、スリープしている相手へのノーマルゲートの送信を停止するとしたが、ノーマルゲートの送信を継続してもよい。そして、そのノーマルゲートに対応して、何らかのフレーム(応答)を受信した場合、OLT10あるいは中継装置30はその応答を発した相手に対するスリープ動作を解除してもよい。
【符号の説明】
【0179】
10 局側装置(OLT)
20 宅側装置(ONU)
30 中継装置
31 第1PON送受信部(第1送受信部)
32 第1送信処理部(中継処理部)
33 第1受信処理部(中継処理部)
34 制御部
35 第2受信処理部(中継処理部)
36 LLID解決テーブル
37 第2送信処理部(中継処理部)
38 第2PON送受信部(第2送受信部)
39 第1上りバッファ(制御フレーム用)
40 第2上りバッファ(ユーザフレーム用)
41 下りバッファ
42 ループ用バッファ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上段側の第1PON回線に対する光信号の送受信と、その光信号と電気信号との相互変換を行う第1送受信部と、
下段側の第2PON回線に対する光信号の送受信と、その光信号と電気信号との相互変換を行う第2送受信部と、
前記第1送受信部が受信した下りフレームを前記第2送受信部に中継し、前記第2送受信部が受信した上りフレームを前記第1送受信部に中継する中継処理部と、
前記第1送受信部が局側装置に送信する前記上りフレームの送信については、前記局側装置が行う上り多重アクセス制御に従い、前記第2送受信部が宅側装置から受信する前記上りフレームの受信については、独自に上り多重アクセス制御を行う制御部と、
を備えていることを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記第1送受信部は前記第2送受信部よりも高い伝送レートで上りの前記光信号を送信可能であり、前記中継処理部は、前記両送受信部間の上りの前記伝送レートの差を吸収するための上りバッファを有する請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記第1送受信部は前記第2送受信部よりも高い伝送レートで下りの前記光信号を受信可能であり、前記中継処理部は、前記両送受信部間の下りの前記伝送レートの差を吸収するための下りバッファを有する請求項1又は2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記中継処理部は、前記第1PON回線の論理リンクと前記第2PON回線の論理リンクとを1対多で対応させる中継が可能である請求項1〜3のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2PON回線の前記論理リンクのいずれかが開設された場合に前記第1PON回線の前記論理リンクの開設を前記局側装置に要求し、前記第2PON回線の前記論理リンクのすべてが切断された場合に前記第1PON回線の前記論理リンクの切断を前記局側装置に要求する請求項4に記載の中継装置。
【請求項6】
前記中継処理部は、前記第1PON回線の論理リンクと前記第2PON回線の論理リンクとを1対1で対応させる中継が可能である請求項1〜3のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2PON回線の前記論理リンクを開設する度に前記第1PON回線の前記論理リンクの開設を前記局側装置に要求し、前記第2PON回線の前記論理リンクを切断する度に前記第1PON回線の前記論理リンクの切断を前記局側装置に要求する請求項6に記載の中継装置。
【請求項8】
前記中継処理部は、前記局側装置からのループバック開設要求を前記宅側装置に中継するとともに、前記宅側装置からのループバック開設応答を前記局側装置に中継し、
前記局側装置からのループバック試験フレームを前記宅側装置に中継するとともに、前記宅側装置からのループバック試験フレームを前記局側装置に中継する請求項6又は7に記載の中継装置。
【請求項9】
前記中継処理部は、前記第1PON回線の前記論理リンクと前記第2PON回線の前記論理リンクとの対応づけを、同じサービスクラスの前記論理リンクについて行う請求項4〜8のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記両PON回線間の所定の対応関係に従って、前記局側装置から取得した第1スリープ指示から、前記宅側装置のための第2スリープ指示を生成する請求項1〜9のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項11】
前記所定の対応関係が、前記第1PON回線の論理リンクと前記第2PON回線の論理リンクとを1対多で対応させる関係である場合に、
前記制御部は、1つの前記第1スリープ指示から、前記第2PON回線のすべての論理リンクに対する複数の前記第2スリープ指示を生成する請求項10に記載の中継装置。
【請求項12】
前記制御部は、複数の前記第2スリープ指示に対応する第2スリープ応答がすべて肯定的である場合に、前記第1送受信部又は前記中継処理部の一部のうちの少なくとも1つの上り送信機能を休止させる、自装置のスリープ動作を行う請求項11に記載の中継装置。
【請求項13】
前記所定の対応関係が、前記第1PON回線の論理リンクと前記第2PON回線の論理リンクとを1対1で対応させる関係である場合に、
前記制御部は、1つの前記第1スリープ指示から、1つの前記第2スリープ指示を生成し、前記第2スリープ指示に対応する1つの第2スリープ応答から、これと同じ許否内容である、前記第1スリープ応答に対応する1つの第1スリープ応答を生成する請求項10に記載の中継装置。
【請求項14】
前記制御部は、複数の前記第2スリープ指示に基づいて行われるスリープ期間が重複する期間に、前記第1送受信部又は前記中継処理部の一部のうちの少なくとも1つの上り送機能及び/又は下り受信機能を休止させる、自装置のスリープ動作を行う請求項13に記載の中継装置。
【請求項15】
前記局側装置と、
前記局側装置とP2MP形態で接続された請求項1に記載の複数の中継装置と、
前記中継装置とP2MP形態で接続された複数の前記宅側装置と、
を備えていることを特徴とする光通信システム。
【請求項16】
第1PON回線から受信した下りフレームを第2PON回線に中継し、前記第2PON回線から受信した上りフレームを前記第1PON回線に中継する方法であって、
前記第1PON回線を用いて局側装置に送信する前記上りフレームの送信については、前記局側装置が行う上り多重アクセス制御に従い、
前記第2PON回線を用いて宅側装置から受信する前記上りフレームの受信については、独自に上り多重アクセス制御を行うことを特徴とする中継方法。
【請求項17】
前記両PON回線間の所定の対応関係に従って、前記局側装置から取得した第1スリープ指示に基づいて、前記宅側装置のための第2スリープ指示を生成する請求項16に記載の中継方法。
【請求項1】
上段側の第1PON回線に対する光信号の送受信と、その光信号と電気信号との相互変換を行う第1送受信部と、
下段側の第2PON回線に対する光信号の送受信と、その光信号と電気信号との相互変換を行う第2送受信部と、
前記第1送受信部が受信した下りフレームを前記第2送受信部に中継し、前記第2送受信部が受信した上りフレームを前記第1送受信部に中継する中継処理部と、
前記第1送受信部が局側装置に送信する前記上りフレームの送信については、前記局側装置が行う上り多重アクセス制御に従い、前記第2送受信部が宅側装置から受信する前記上りフレームの受信については、独自に上り多重アクセス制御を行う制御部と、
を備えていることを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記第1送受信部は前記第2送受信部よりも高い伝送レートで上りの前記光信号を送信可能であり、前記中継処理部は、前記両送受信部間の上りの前記伝送レートの差を吸収するための上りバッファを有する請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記第1送受信部は前記第2送受信部よりも高い伝送レートで下りの前記光信号を受信可能であり、前記中継処理部は、前記両送受信部間の下りの前記伝送レートの差を吸収するための下りバッファを有する請求項1又は2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記中継処理部は、前記第1PON回線の論理リンクと前記第2PON回線の論理リンクとを1対多で対応させる中継が可能である請求項1〜3のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2PON回線の前記論理リンクのいずれかが開設された場合に前記第1PON回線の前記論理リンクの開設を前記局側装置に要求し、前記第2PON回線の前記論理リンクのすべてが切断された場合に前記第1PON回線の前記論理リンクの切断を前記局側装置に要求する請求項4に記載の中継装置。
【請求項6】
前記中継処理部は、前記第1PON回線の論理リンクと前記第2PON回線の論理リンクとを1対1で対応させる中継が可能である請求項1〜3のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2PON回線の前記論理リンクを開設する度に前記第1PON回線の前記論理リンクの開設を前記局側装置に要求し、前記第2PON回線の前記論理リンクを切断する度に前記第1PON回線の前記論理リンクの切断を前記局側装置に要求する請求項6に記載の中継装置。
【請求項8】
前記中継処理部は、前記局側装置からのループバック開設要求を前記宅側装置に中継するとともに、前記宅側装置からのループバック開設応答を前記局側装置に中継し、
前記局側装置からのループバック試験フレームを前記宅側装置に中継するとともに、前記宅側装置からのループバック試験フレームを前記局側装置に中継する請求項6又は7に記載の中継装置。
【請求項9】
前記中継処理部は、前記第1PON回線の前記論理リンクと前記第2PON回線の前記論理リンクとの対応づけを、同じサービスクラスの前記論理リンクについて行う請求項4〜8のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記両PON回線間の所定の対応関係に従って、前記局側装置から取得した第1スリープ指示から、前記宅側装置のための第2スリープ指示を生成する請求項1〜9のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項11】
前記所定の対応関係が、前記第1PON回線の論理リンクと前記第2PON回線の論理リンクとを1対多で対応させる関係である場合に、
前記制御部は、1つの前記第1スリープ指示から、前記第2PON回線のすべての論理リンクに対する複数の前記第2スリープ指示を生成する請求項10に記載の中継装置。
【請求項12】
前記制御部は、複数の前記第2スリープ指示に対応する第2スリープ応答がすべて肯定的である場合に、前記第1送受信部又は前記中継処理部の一部のうちの少なくとも1つの上り送信機能を休止させる、自装置のスリープ動作を行う請求項11に記載の中継装置。
【請求項13】
前記所定の対応関係が、前記第1PON回線の論理リンクと前記第2PON回線の論理リンクとを1対1で対応させる関係である場合に、
前記制御部は、1つの前記第1スリープ指示から、1つの前記第2スリープ指示を生成し、前記第2スリープ指示に対応する1つの第2スリープ応答から、これと同じ許否内容である、前記第1スリープ応答に対応する1つの第1スリープ応答を生成する請求項10に記載の中継装置。
【請求項14】
前記制御部は、複数の前記第2スリープ指示に基づいて行われるスリープ期間が重複する期間に、前記第1送受信部又は前記中継処理部の一部のうちの少なくとも1つの上り送機能及び/又は下り受信機能を休止させる、自装置のスリープ動作を行う請求項13に記載の中継装置。
【請求項15】
前記局側装置と、
前記局側装置とP2MP形態で接続された請求項1に記載の複数の中継装置と、
前記中継装置とP2MP形態で接続された複数の前記宅側装置と、
を備えていることを特徴とする光通信システム。
【請求項16】
第1PON回線から受信した下りフレームを第2PON回線に中継し、前記第2PON回線から受信した上りフレームを前記第1PON回線に中継する方法であって、
前記第1PON回線を用いて局側装置に送信する前記上りフレームの送信については、前記局側装置が行う上り多重アクセス制御に従い、
前記第2PON回線を用いて宅側装置から受信する前記上りフレームの受信については、独自に上り多重アクセス制御を行うことを特徴とする中継方法。
【請求項17】
前記両PON回線間の所定の対応関係に従って、前記局側装置から取得した第1スリープ指示に基づいて、前記宅側装置のための第2スリープ指示を生成する請求項16に記載の中継方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−31140(P2013−31140A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173221(P2011−173221)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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