説明

中継装置およびコネクタ

【課題】バス型のネットワークにおいて、接続するノード数を増加させることができる中継装置およびその中継装置を備えたコネクタを提供する。
【解決手段】中継装置としてのASC1に、ビット歪み補正回路15と、リンギングパルス吸収回路16と、を備えて、ビット歪み補正回路15でビット単位にビット歪みを補正し、リンギングパルス吸収回路16で通信フレーム終端のリンギングパルスの吸収除去を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載LANを構築する際に用いられるアクティブスターカプラなどの中継装置およびその中継装置を備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
次世代車載用のLANとして、高速性と信頼性の両面の優位性を保証できるFlexRay(登録商標)規格が制定されている。FlexRayは、自動車産業分野の中でもステアリング・バイ・ワイヤやブレーキ・バイ・ワイヤなど高い信頼性の要求される車内通信に使われることが求められている通信プロトコルである。FlexRayはタイムトリガ型通信システムを採用しているので、通信のバスの中に予め必要な時間のタイムスロットを定義したバス・システムを設計することでこの問題を避けることができ、高い信頼性を維持することが可能となる(例えば特許文献1〜3を参照)。
【0003】
FlexRayは、図10に示したようなスター型のネットワークや、図11に示したようなバス型のネットワークとすることができる。図10におけるASCはバスドライバを内蔵して中継・分岐を行うアクティブスターカプラ(中継装置)、図11におけるPSCはバスドライバを内蔵しないで中継・分岐を行うパッシブスターカプラ(中継装置)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−94748号公報
【特許文献2】特開2008−277873号公報
【特許文献3】特表2008−537430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、車載LANには接続される機器数、即ちノード数が増加することが多くなっている。上述した2つのネットワーク形態のうち、スター型は、ポイントツーポイントで接続されるため、遅延や波形の劣化には強いがノード数が増加するにしたがってネットワークを構成するワイヤーハーネスの配索の省線化が困難になるという問題がある。
【0006】
ここで、従来のCAN(Controller Area Network)の置き換えとしてFlexRayを用いると、バス型のネットワークで多数のノードを接続する必要が生じる。このような場合は、図12に示したようにPSC間にASCを挿入することで、ノード数を拡張することができる。
【0007】
しかしながら、図12の形態の場合、ノード間を伝送する際に中継される回数が増えるが、従来のASCにはバスドライバと電圧軸方向(振幅方向)の波形整形程度の機能しか持っていないため、ノード間を伝送される信号にビット幅歪みやリンギングパルスの影響が大きくなり、ビット幅歪みで1ビット期間が変動することによるビット誤りや、リンギングパルスの影響で通信フレーム終端の位置がずれて通信フレームが延びるといった時間軸方向の波形異常という問題が発生していた。そのため、図12の形態をとったとしても、それほど多くのノードを接続することができないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、バス型のネットワークにおいて、接続するノード数を増加させることができる中継装置およびその中継装置を備えたコネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、入力信号を受信し、前記入力信号に対して所定の処理を施して出力信号として送信する中継装置において、前記入力信号をビット単位にビット幅歪み補正処理を施すビット幅歪み補正部と、前記ビット幅歪み補正部においてビット幅歪みが補正された信号に対して入力信号の終端部のリンギングパルス除去処理を施すリンギングパルス除去部と、を備えていることを特徴とする中継装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記入力信号が、データの先頭を示す信号を含み、前記ビット幅歪み補正部が、前記データの先頭を示す信号を検出し、検出された前記データの先頭を示す信号を基準として前記入力信号の前記入力データをビット単位にサンプリングするサンプリング信号を生成することを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記ビット幅歪み補正部が、前記入力信号の1ビット期間の中央でサンプリングすることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の発明において、前記入力信号が、データの終端を示す信号を含み、リンギングパルス除去部が、前記データの終端を示す信号を検出した場合は、当該データの終端を示す信号以降の信号レベルを予め定めたレベルに固定することを特徴とするものである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、相手方コネクタとの接続部が設けられているコネクタにおいて、請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の中継装置を備えていることを特徴とするコネクタである。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように請求項1に記載の発明によれば、入力信号をビット単位にビット幅歪み補正処理を施すビット幅歪み補正部と、ビット幅歪み補正部においてビット幅歪みが補正された信号に対して入力信号の終端部のリンギングパルス除去処理を施すリンギングパルス除去部と、を備えているので、電圧軸方向だけでなく時間軸方向の波形整形も可能となるため、中継装置におけるビット幅歪みや通信フレーム終端のリンギングパルスの影響を少なくすることができ、接続するノード数を増加させることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、入力信号が、データの先頭を示す信号を含み、ビット幅歪み補正部が、データの先頭を示す信号を検出し、検出されたデータの先頭を示す信号を基準として入力信号の入力データをビット単位にサンプリングするサンプリング信号を生成するので、データの先頭を示す信号を検出すれば、入力データをビット単位に一定間隔でサンプリングすることができ、少ない遅延でビット幅歪みを補正することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、ビット幅歪み補正部が、入力信号の1ビット期間の中央でサンプリングするので、ビット幅歪みの影響が最も少なくなる位置でサンプリングすることができるために、ビット幅歪みによる影響を最小限にすることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、入力信号が、データの終端を示す信号を含み、リンギングパルス除去部が、データの終端を示す信号を検出した場合は、当該データの終端を示す信号以降の信号レベルを予め定めたレベルに固定するので、データの終端以後のリンギングパルスの影響によるフレームの延びを防止することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、相手方コネクタとの接続部が設けられているコネクタに請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の中継装置を備えているので、ワイヤーハーネス同士を接続するコネクタに中継装置の機能を持たせることができ、さらにビット幅歪みやリンギングパルスの影響を少なくして、接続するノード数を増加させることができるコネクタとすることができる。また、コネクタに中継装置の機能を持たせることで、中継装置の搭載位置の制限が緩和されるため、ワイヤーハーネスの配索の自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態にかかる中継装置を含むネットワークの構成図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる中継装置のブロック図である。
【図3】図2に示されたビット幅歪み補正回路のブロック図である。
【図4】図2に示されたリンギングパルス吸収回路のブロック図である。
【図5】FlexRayの通信フレームを示す説明図である。
【図6】図2に示されたビット幅歪み補正回路の動作を示したタイミングチャートである。
【図7】25nsサンプリング信号による入力信号のサンプリングを示す波形図である。
【図8】図2に示されたリンギングパルス吸収回路の動作を示したタイミングチャートである。
【図9】図1に示された中継装置を内蔵した中間コネクタを示す斜視図である。
【図10】FlexRayのスター型のネットワーク構成を示した説明図である。
【図11】FlexRayのバス型のネットワーク構成を示した説明図である。
【図12】FlexRayのバス型ネットワークの拡張構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の一実施形態を図1ないし図9を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態にかかる中継装置としてのASC1を備えたFlexRayネットワークの構成を示した図である。図1に示したように、FlexRayネットワークは、車載機器などのノード2と、PSC3およびASC1を有している。各ノード2は通信線路との接続口にバスドライバBDを備えている(図1ではノードAとノードBのみバスドライバBDを表示し、他のノード2については省略する)。ここで、ノードAを送信ノード、ノードBを受信ノードとすると、ノードAから送信されたデータはPSC3、PSC3、ASC1、PSC3、PSC3と中継されてノードBが受信する。
【0021】
ASC1は、バスドライバBDと、制御回路12と、を備えている。制御回路12は、図2に示すように、クロック回路13と、ノイズ除去回路14と、ビット幅歪み補正回路15と、リンギングパルス吸収回路16と、入力Chセレクタ17と、出力Chセレクタ18と、を備えている。また、ASC1はCh1とCh2の2つのチャネル(入出力)を有し、通信時にはデータの伝送方向によって各チャネルは入力または出力のいずれかに決まる。例えばCh1を図1の左側、Ch2を図1の右側とすると、左側から右側へデータが伝送される場合は、Ch1が入力、Ch2が出力となり、右側から左側へデータが伝送される場合は、Ch2が入力、Ch1が出力となる。
【0022】
クロック回路13は、40MS/s(40メガサンプル毎秒)のクロック信号を生成し、ノイズ除去回路14、ビット幅歪み補正回路15、リンギングパルス吸収回路16へ供給する。本実施形態では、50ns(ナノ秒)周期のクロック信号を生成し、その立上りと立下りの双方のエッジでサンプリングすることで40MS/sのクロック信号として使用している。
【0023】
ノイズ除去回路14は、外部からの放射ノイズや伝導ノイズに対応するためのデジタルフィルタ回路を内蔵し、外部からの放射ノイズや伝導ノイズによる影響で発生するインパルスノイズによる誤サンプリングを防止するために、3サンプリング2回一致の多数決処理によりインパルスノイズを除去する。
【0024】
ビット幅歪み補正部としてのビット幅歪み補正回路15は、図3に示すように、25nsサンプリング信号生成部21と、BSS検出部22と、送信データサンプリング信号生成部23と、送信信号生成部24と、を備え、入力信号をビット単位にビット幅歪み補正処理を施す。
【0025】
25nsサンプリング信号生成部21は、入力信号(入力データ)をクロック回路13から供給される40MS/sのクロック信号によってサンプリング(即ち、25ns周期でサンプリング)し、そのサンプリングされた入力信号を送信信号生成部24へ出力する。
【0026】
BSS検出部22は、FlexRayの通信フレームに含まれるデータの先頭を示す信号としてのBSS(Byte Start Sequence)を検出し、検出したことを示す信号(BSS検出信号)を送信データサンプリング信号生成部23に出力する。
【0027】
送信データサンプリング信号生成部23は、BSS検出部22が出力したBSS検出信号を基準として、後述する送信データサンプリング信号を生成して送信信号生成部24に出力する。
【0028】
送信信号生成部24は、25nsサンプリング信号生成部21でサンプリングされた入力信号を、送信データサンプリング信号生成部23で生成された送信データサンプリング信号でさらにサンプリングし、そのサンプリングされた信号をビット幅歪み補正回路15の出力信号とする。
【0029】
リンギングパルス除去部としてのリンギングパルス吸収回路16は、図4に示すように、25nsサンプリング信号生成部31と、FES検出部32と、リンギングパルス除去部33と、を備え、ビット幅歪み補正回路15においてビット幅歪みが補正された信号に対して入力信号の終端部のリンギングパルス除去処理を施す。
【0030】
25nsサンプリング信号生成部31は、入力信号(入力データ)をクロック回路13から供給される40MS/sのクロック信号によってサンプリングし、そのサンプリングされた入力信号をリンギングパルス除去部33へ出力する。
【0031】
FES検出部32は、FlexRayの通信フレームに含まれるデータの終端を示す信号としてのFES(Frame End Sequence)を検出し、検出したことを示す信号(FES検出信号)をリンギングパルス除去部33に出力する。
【0032】
リンギングパルス除去部33は、25nsサンプリング信号生成部31でサンプリングされた入力信号に対して、FES検出部32でFES検出信号が検出された場合はフレーム終端部のリンギングパルスを吸収除去し、その除去された信号をリンギングパルス吸収回路16の出力信号とする。
【0033】
入力Chセレクタ17は、Ch1ASC端子とCh2ASC端子とが接続され、Ch1ASC端子とCh2ASC端子のうちどちらが入力かを検出して、入力信号RxDとしてノイズ除去回路14へ出力するとともに、通信フレームの後述するTSSを検出し後述するRxEN信号を生成してノイズ除去回路14、ビット幅歪み補正回路15およびリンギングパルス吸収回路16に出力する。また、出力Chセレクタ18へ、Ch1ASC端子とCh2ASC端子のうちどちらが入力であるかの情報を出力する。
【0034】
出力Chセレクタ18は、Ch1ASC端子とCh2ASC端子とが接続され、入力ChセレクタからのCh1ASC端子とCh2ASC端子のうちどちらが入力であるかの情報に基づいて、入力でない方を出力に設定する。
【0035】
なお、RxEN信号は、入力Chセレクタ17で生成せずに、Ch1ASC端子とCh2ASC端子とが接続されたRxEN信号生成回路を別途設けてもよいし、バスドライバBDがRxEN信号生成機能を持ってもよい。また、本実施形態ではASC1の有するチャネルを2つとしたが、3チャネル以上であってもよい。
【0036】
次に、FlexRayの通信フレームの構造について図5を参照して説明する。図5に示したように通信フレーム(スタティックフレーム)は、TSS、FSS、BSS、送信データ、FESで構成されている。TSS(Transmission Start Sequence)は、アイドル状態を終了し送信開始を示すデータであり、連続した“Lo”レベルで構成されている。FSS(Frame Start Sequence)は、TSSが終了し、フレームの先頭を示すデータであり、1ビットの“Hi”レベルで構成されている。BSSは、フレームデータ内のバイト単位の区切りを示すデータであり、1ビットの“Hi”と1ビットの“Lo”即ち、“10”の2ビットデータで構成されている。FESは、フレームの最後を示すデータであり、1ビットの“Lo”と1ビットの“Hi”即ち、“01”の2ビットデータで構成されている。
【0037】
上述したように送信データはバイト単位でBSSが挿入されており、BSS+1バイトの送信データの合計10ビットで1バイトシーケンスが構成されている。また、1ビット分のビット幅Bは200ns(5Mbps)とされている。また、通信フレームはアイドル状態と呼ばれる有効なデータが送信されていない期間に挟まれており、このアイドル状態は“Hi”レベルに設定されるが、バスドライバBDから外部への出力時には“Hi”レベルと“Lo”レベルの中間レベルとなる。
【0038】
次に、ビット幅歪み補正回路15におけるビット幅歪み補正機能の動作について図6に示したタイミングチャートを参照して説明する。図6に示されたタイミングチャートは、ビット幅歪み補正回路15の入力信号から出力信号までをビット幅歪み補正回路15内の各ブロックが生成する信号を含めて示した図である。
【0039】
図6の入力信号(RxD)は、ビット幅歪み補正回路15の入力信号である。フレームアクティブ検出信号(RxEN)は、RxDにおいてTSSが検出されると“Lo”レベル、アイドル状態が検出されると“Hi”レベルに変化する信号であり、このRxENが“Lo”の期間が有効な通信フレーム(スタティックフレーム)の期間であると認識する。クロック40MS/sは、クロック回路13が生成したクロック信号である。
【0040】
25nsサンプリング信号は、25nsサンプリング信号生成部21において、RxDをクロック40MS/sによってサンプリングした信号である。このようにサンプリングすることで、図7に示すように1ビット期間(200ns)で8回サンプリングすることができる。
【0041】
BSS検出は、BSS検出部22が出力するBSS検出信号である。BSS検出は、BSSの“Hi”レベルから“Lo”レベルへの切り替え(立下り)を検出することでパルス信号が1回出力される。送信データサンプリング信号は、BSS検出を基準として40MS/sクロックで5サンプル期間後に1パルス出力し、それから8サンプル間隔(つまり1ビット期間の間隔)で合計10パルス出力する。このようにすることで、この送信データサンプリング信号が、1ビット期間の中央(8回サンプリングされるうちの5回目)に位置させることができる。
【0042】
出力信号(TxD)は、25nsサンプリング信号を送信データサンプリング信号で再サンプリングした信号である。つまり、25nsサンプリング信号に対して送信データサンプリング信号をストローブ信号として使用しTxDを生成している(図7のビットサンプリング点)。即ち、送信データサンプリング信号でビット単位にサンプリングしている。このビット単位とは、1ビットごとにシリアルに入力されるデータに対して、1ビットサンプリングしてTxDとして出力したら次のビットをサンプリングして出力するという動作を意味し、一括してデータを受信して再度TxDとして一括して生成するよりも、ビットの先頭から送信データサンプリング信号の生成位置程度の1ビット期間よりも短い時間の遅延(図6のD)で出力されるので、低遅延でビット歪み補正をすることができる。
【0043】
このようにしてTxDを生成することで、例えば図6のRxDにビット歪みdがあった場合、つまり、1ビット期間がビット歪みdだけ長くなってしまった場合、25nsサンプリング信号を生成をした時点では、クロック信号とRxDとの位相の関係でビット歪みがd´に拡大するが、送信データサンプリング信号で各ビット期間の中央でストローブするために、このビット歪みd´がTxDに持ち越されずに、正常なビット幅に復帰させることができる。
【0044】
次に、リンギングパルス除去機能の動作について図8に示したタイミングチャートを参照して説明する。図8に示されたタイミングチャートは、リンギングパルス吸収回路16の入力信号と出力信号とを示した図である。
【0045】
図8のASC受信側バス波形は、図1に示したASC1が備えているバスドライバBDにおける外部からの信号受信時の信号波形である。ASC受信データは、バスドライバBDで受信した信号波形を制御回路12に出力する際に二値化した信号波形である。ASC送信データは、リンギングパルス吸収回路16の出力信号波形である。ASC送信側バス波形は、リンギングパルス吸収回路16から信号が出力された信号波形のバスドライバBDにおける外部への送信時の信号波形である。
【0046】
ASC受信側バス波形は、図8に示したようにFESの後でアイドル状態の信号レベルに移行する際にリンギングパルスの影響により波形が乱れてしまう。そのため、ASC受信データには、二値化した際にFESの後に無意味なデータ(“Lo”の部分)が発生してしまい通信フレームの延びが起こってしまう。このような無意味なデータは、ビット幅歪みと同様に時間軸方向の異常波形(ノイズ)であり、インパルスノイズを除去するノイズ除去回路14では、その処理アルゴリズム上除去が不可能である。そこで、リンギングパルス吸収回路16では、FES検出部32でFESを検出した場合は、リンギングパルス除去部33が、FES後の信号レベルを“Hi”レベルに固定する。このようにすることで、前記したリンギングパルスの影響により発生した無意味なデータが無視されるため、リンギングパルスによる通信フレームの延びが無くなる。このリンギングパルス除去部33による“Hi”レベル固定処理は、RxENが“Hi”レベルに変化、つまり、入力側にアイドル状態が検出されるまで継続する。
【0047】
本実施形態によれば、ASC1に、ビット歪み補正回路15と、リンギングパルス吸収回路16と、を備えたので、ビット歪み補正回路15でビット単位にビット歪みを補正し、リンギングパルス吸収回路16で通信フレーム終端のリンギングパルスを吸収除去することができ、ビット幅歪みや通信フレーム終端の延びの対策として時間軸方向の波形整形も可能となるため、ASC1におけるビット幅歪みやリンギングパルスの影響を少なくして、接続するノード数を増加させることができる。
【0048】
また、ビット歪み補正回路15が、BSSを検出し、検出されたBSSを基準とし、1ビット期間の中央に位置するように送信データサンプリング信号を生成して、その送信データサンプリング信号をストローブ信号として入力データをビット単位にサンプリングするので、BSSを検出すれば、入力データをビット単位にビット期間の中央で一定間隔にサンプリングすることができ、少ない遅延でビット幅歪みを補正することができる。上述した実施形態ではビット幅歪みによって1ビット期間が長くなる例を説明したが、逆に1ビット期間が短くなる場合でも1ビット期間の中央でサンプリングすることでビット幅歪みを補正することができる。
【0049】
また、ビット歪み補正回路15では、送信データサンプリング信号1ビット期間ごとにサンプリングすることで送信データを生成しているので、1ビットごとに処理を行うことができ、少ない遅延でビット幅歪みを補正することができる。
【0050】
また、ビット幅歪み補正回路15がBSSを検出を基準として送信データサンプリング信号を生成するので、BSS+1バイトの10ビットごとに基準を取り直すことからサンプリング誤差などが蓄積することを防止できる。
【0051】
また、リンギングパルス吸収回路16が、FESを検出した場合は、FES移行の信号レベルを“Hi”に固定するので、FES以後のリンギングパルスの影響による通信フレームの延びを防止することができる。
【0052】
なお、上述した構成のASC1を中間コネクタに実装してもよい。図9に中間コネクタ40の斜視図を示す。中間コネクタ40は、コネクタハウジング41と、接続端子42と、ワイヤーハーネス43と、を備え、相手方コネクタ50と嵌合する。
【0053】
コネクタハウジング41は、絶縁性の合成樹脂などで扁平な箱状に形成され、一方の側面には芯線と該芯線を被覆した被覆部とを有した複数の電線から構成されたワイヤーハーネス43が取り付けられているとともに、相手方コネクタ50と嵌合する他方の側面は相手側コネクタ50を収容するように凹んでおり、凹みの奥側には接続部としての端子42が設けられている。
【0054】
ASC1は、コネクタハウジング41内に収容されており、端子42およびワイヤーハーネス43と電気的に接続されている。つまり、端子42およびワイヤーハーネス43のうちいずれか一方が受信側、他方が送信側となる。
【0055】
相手方コネクタ50は、コネクタハウジング51と、ワイヤーハーネス52と、を備えている。コネクタハウジング52は、絶縁性の合成樹脂などで扁平な箱状に形成され、一方の側面には芯線と該芯線を被覆した被覆部とを有した複数の電線から構成されたワイヤーハーネス52が取り付けられているとともに、中間コネクタ40と嵌合する他方の側面には図示しない被接続手段が設けられ、該被接続手段はワイヤーハーネス52とコネクタハウジング51内で電気的に接続されている。
【0056】
図9に示したように中間コネクタ40にASC1を内蔵することで、ワイヤーハーネス同士を接続する中間コネクタ40にASC1の機能を持たせることができ、さらにビット幅歪みやリンギングパルスの影響を少なくして、接続するノード数を増加させることができる中間コネクタ40とすることができる。また、中間コネクタ40にASC1の機能を持たせることで、ASC1の搭載位置の制限が緩和されるため、ワイヤーハーネスの配索の自由度が向上する。
【0057】
また、上述した実施形態では、送信データサンプリング信号は、1ビット期間8回サンプリングするうちの5回目としていたが4回目でもよい。要するに1ビット期間の中央であればよい。なお、この中央とは、1ビット期間が200nsであった場合に100nsの位置に限るという意味ではなく、100nsに近いビットサンプリング点という意味である。したがって、上述した実施形態の4回目と5回目は中央となる。また、入力信号は1ビット期間に8回サンプリングしていたが、8回に限らないのは言うまでもない。
【0058】
また、上述した実施形態では、通信プロトコルとしてFlexRayの場合を説明したが、それに限らず、バス形式のシリアルデータ転送であって、BSSやFESに相当するデータを含む通信プロトコルであれば適用することができる。
【0059】
また、上述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施の形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 ASC(中継装置)
15 ビット幅歪み補正回路(ビット幅歪み補正部)
16 リンギングパルス吸収回路(リンギングパルス除去部)
40 中間コネクタ(コネクタ)
42 端子(接続部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を受信し、前記入力信号に対して所定の処理を施して出力信号として送信する中継装置において、
前記入力信号をビット単位にビット幅歪み補正処理を施すビット幅歪み補正部と、
前記ビット幅歪み補正部においてビット幅歪みが補正された信号に対して入力信号の終端部のリンギングパルス除去処理を施すリンギングパルス除去部と、
を備えていることを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記入力信号が、データの先頭を示す信号を含み、
前記ビット幅歪み補正部が、前記データの先頭を示す信号を検出し、検出された前記データの先頭を示す信号を基準として前記入力信号の前記入力データをビット単位にサンプリングするサンプリング信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記ビット幅歪み補正部が、前記入力信号の1ビット期間の中央でサンプリングすることを特徴とする請求項2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記入力信号が、データの終端を示す信号を含み、
リンギングパルス除去部が、前記データの終端を示す信号を検出した場合は、当該データの終端を示す信号以降の信号レベルを予め定めたレベルに固定することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の中継装置。
【請求項5】
相手方コネクタとの接続部が設けられているコネクタにおいて、請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の中継装置を備えていることを特徴とするコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−238984(P2012−238984A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105801(P2011−105801)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】