中継装置及び中継方法
【課題】MIMO方式の通信が行われる通信システムにおいて、送信装置から中継装置を経由せずに受信装置へ届く直接波と、送信装置から中継装置を経由して受信装置へ届く中継波との合成波の信号分離が、容易になるようにすること。
【解決手段】 MIMO方式の通信システムにおいて、送信装置から受信した信号を、受信装置に中継する中継装置であって、
前記送信装置から前記中継装置を経由せずに前記受信装置へ届く直接波の受信レベルと、前記送信装置から前記中継装置を経由して前記受信装置へ届く中継波の受信レベルとの差分を、前記送信装置、当該中継装置及び前記受信装置の位置関係から決定する電力差決定部と、
前記差分が小さくなるように、前記中継装置の増幅利得を決定する利得決定部と、
前記送信装置から受信した信号を、前記決定された増幅利得で増幅し、前記受信装置に送信する送信部と
を有する中継装置。
【解決手段】 MIMO方式の通信システムにおいて、送信装置から受信した信号を、受信装置に中継する中継装置であって、
前記送信装置から前記中継装置を経由せずに前記受信装置へ届く直接波の受信レベルと、前記送信装置から前記中継装置を経由して前記受信装置へ届く中継波の受信レベルとの差分を、前記送信装置、当該中継装置及び前記受信装置の位置関係から決定する電力差決定部と、
前記差分が小さくなるように、前記中継装置の増幅利得を決定する利得決定部と、
前記送信装置から受信した信号を、前記決定された増幅利得で増幅し、前記受信装置に送信する送信部と
を有する中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継装置及び中継方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信におけるスループットを向上させる技術として、MIMO(Multiple Input Multiple Output)方式又はマルチアンテナ方式がある。MIMO方式は、複数のアンテナから同時に同じ周波数で信号を送信することで、スループットを向上させる。
【0003】
図1はMIMO方式の概要を示す。n個のストリーム1−nは、送信装置のn個のアンテナから別々に送信され、様々な無線伝搬路を経て受信装置のn個のアンテナで受信される。受信装置は、空間における信号伝搬経路の相違を活用することで、受信したn個の信号をn個のストリーム1−nに分離し、送信された情報1−nを復元することができる。
【0004】
このように、MIMO方式は、複数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナ間の無線伝搬経路の複雑さを活用する技術である。したがって、例えば伝搬経路途中の障害物に起因して様々な伝搬経路が存在する環境の場合(マルチパス環境の場合)、MIMO方式における受信装置の信号分離は容易になる。ただし、障害物による電波の散乱に起因して、受信電力は低くなってしまう傾向がある(図2)。これに対して、例えば見通し環境のような場合、無線伝搬経路同士の相違は小さくなるので、受信装置における信号分離は困難になってしまう。ただし、見通し環境の場合、受信電力はそれほど低くならない(図3)。
【0005】
したがって、見通し環境の場合、MIMO方式によりスループットを向上させることは困難である。この問題に対処するため、送信装置と受信装置の間に中継装置を設けることが考えられる。受信装置は、送信装置から直接届く直接波と、送信装置から中継装置を経て届く中継波とを受信し、それらの合成波を信号分離する。このように中継装置を用いて、無線伝搬経路を意図的に複雑にすることで、見通し環境であっても受信装置における信号分離を容易にできる。MIMO方式を用いた従来の中継方法については、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−148482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、中継装置を設けることで、受信装置が直接波と中継波とを受信したとしても、依然としてMIMO方式の受信装置における信号分離が困難になってしまう場合がある。
【0008】
図4はそのような問題点を説明するための図である。左側には送信装置、中継装置及び受信装置が模式的に示されている。受信装置は、送信装置から直接届く直接波と、中継装置を経て届く中継波とを受信し、合成する。一般に、中継波は、直接波に対して何らかの位相差を有する。説明の便宜上、直接波及び中継波の位相差をφとする。したがって、直接波と中継波の合成は、ベクトル加算により行われる。このため、例えば、中継波の振幅が非常に小さかった場合、合成波は、近似的に直接波になる(右上の図)。合成波が、近似的に直接波になった場合、受信装置は、事実上、直接波のみを用いて信号分離することになり、これは見通し環境の場合と同様に信号分離が困難になってしまう。逆に、直接波の振幅が非常に小さかった場合、合成波は、近似的に中継波になる(右下の図)。合成波が、近似的に中継波になった場合、受信装置は、事実上、中継波のみを用いて信号分離することになり、見通し環境の場合と同様に信号分離が困難になってしまう。このように、従来の方式の場合、MIMO方式を使用する際に中継装置を用いたとしても、信号分離が困難な状況が生じてしまうという問題点がある。
【0009】
本発明の課題は、MIMO方式の通信が行われる通信システムにおいて、送信装置から中継装置を経由せずに受信装置へ届く直接波と、送信装置から中継装置を経由して受信装置へ届く中継波との合成波の信号分離が、容易になるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態による中継装置は、
MIMO方式の通信システムにおいて、送信装置から受信した信号を、受信装置に中継する中継装置であって、
前記送信装置から前記中継装置を経由せずに前記受信装置へ届く直接波の受信レベルと、前記送信装置から前記中継装置を経由して前記受信装置へ届く中継波の受信レベルとの差分を、前記送信装置、当該中継装置及び前記受信装置の位置関係から決定する電力差決定部と、
前記差分が小さくなるように、前記中継装置の増幅利得を決定する利得決定部と、
前記送信装置から受信した信号を、前記決定された増幅利得で増幅し、前記受信装置に送信する送信部と
を有する中継装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一形態によれば、MIMO方式の通信が行われる通信システムにおいて、送信装置から中継装置を経由せずに受信装置へ届く直接波と、送信装置から中継装置を経由して受信装置へ届く中継波との合成波の信号分離が、容易になるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】MIMO方式による信号伝送の概念図。
【図2】見通し環境でない無線伝搬環境を示す図。
【図3】見通し環境を示す図。
【図4】問題点を説明するための図。
【図5】発明原理を説明するための図。
【図6】一実施例による中継装置が送信装置及び受信装置の間に設けられている様子を示す図。
【図7】パッシブな中継装置の一例を示す図。
【図8】アクティブな中継装置の一例を示す図。
【図9】アクティブな中継装置の別の例を示す図。
【図10】中継装置における増幅利得を決定する方法を示すフローチャート。
【図11】送信装置、中継装置及び受信装置の地理的な位置関係を模試的に示す図。
【図12】直接波及び中継波の受信電力の推定値を示す図。
【図13】受信電力の差分から増幅利得を決定する様子を示す図。
【図14】見通し外環境における直接波及び中継波の受信電力の推定値を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の観点から本発明の実施例を説明する。
【0014】
1.発明原理
2.中継装置
3.増幅利得決定方法
【実施例1】
【0015】
<1.発明原理>
図5は、発明原理を説明するための図である。図4を参照しながら説明したように、直接波及び中継波の電力レベルが著しく異なっていた場合、受信装置における合成波の信号分離は困難になってしまう。本発明では、受信装置が、直接波と中継波を同程度の強さで受信できるように、中継装置が適切なレベルに増幅した中継波を受信装置に送信する。中継装置における増幅利得は、送信装置、中継装置及び受信装置の地理的な位置関係により決定することができる。図5右側に示されているように、直接波と中継波が同程度に強く受信装置で受信される場合、合成波は、直接波とも中継波とも異なる位相を有し、受信装置における信号分離が容易になる。
【0016】
<2.中継装置>
図6は、本実施例による中継装置が、送信装置及び受信装置の間に設けられている様子を示す。送信装置及び受信装置は、MIMO方式により信号を送受信する。中継装置は、送信装置からの電波を受信装置に中継することが可能な適切な如何なる装置でもよい。
【0017】
図7に示すように、例えば、中継装置は、単に電波を反射する電波反射板のような受動的な(パッシブな)中継装置でもよい。電波反射板又はリフレクタの場合、中継する際の増幅利得は、主に、リフレクタの寸法(具体的には、面積)によって決定される。したがって、送信装置、中継装置及び受信装置の地理的な位置関係により、必要な増幅利得をもたらすように面積を決定することで、所望の増幅利得を有する中継装置を実現できる。
【0018】
図8に示すように、中継装置は、増幅機能等を有する能動的な(アクティブな)中継装置でもよい。図示の中継装置は、送信装置からの信号を受信機81で受信し、増幅器82で増幅し、送信機83から受信装置へ送信する。増幅器における増幅利得は、送信装置、中継装置及び受信装置の地理的な位置関係により決定することができる。具体的には、電力差決定部84により、受信装置における直接波及び中継波の受信レベルの差分を決定し、この差分を小さくするような増幅利得が、利得決定部85により決定される。図7に示す受動的な中継装置よりも装置構成が複雑になるが、増幅利得を可変に制御できる等の点で有利である。
【0019】
図9に示すように、中継装置は、増幅機能に加えて信号再生器等を有する能動的な中継装置でもよい。図示の中継装置は、送信装置からの信号を受信機91で受信し、信号再生器92により信号を再生する。これにより、ノイズが除去された受信信号を生成でき、この受信信号を増幅器93で増幅し、送信機94から受信装置へ送信する。増幅器における増幅利得は、送信装置、中継装置及び受信装置の地理的な位置関係により決定することができる。具体的には、電力差決定部95により、受信装置における直接波及び中継波の受信レベルの差分を決定し、この差分を小さくするような増幅利得が、利得決定部96により決定される。図8に示す中継装置よりも装置構成がさらに複雑になるが、ノイズが除去された信号を中継できる等の点で有利である。
【0020】
<3.増幅利得決定方法>
図10は、中継装置における増幅利得を決定する方法を示す。送信装置、中継装置及び受信装置の地理的な位置関係は既知である。
【0021】
ステップS101において、受信装置が受信する直接波及び中継波の受信レベルを推定する。この場合における中継装置の増幅利得は、何らかの初期値である。受信レベルは、当該技術分野における適切な如何なる方法で推定されてもよい。一例として、距離減衰モデルを用いて受信レベルを推定することができる。あるいは、受信レベルを実際に測定してもよい。
【0022】
図11は、送信装置、中継装置及び受信装置の位置関係を示す。図12は、図11に示される位置関係において、受信装置が受信する直接波及び中継波の受信レベルの推定値を示す。受信レベルは、当該技術分野で既知の適切な如何なる量で表現されてもよい。例えば、受信レベルは、希望波受信電力RSCP、電界強度RSSI、パスロス、SIR、SINR、S/N、Ec/N0等で表現されてもよい。説明の便宜上、受信レベルは受信電力であるとする。図12では、送信装置、中継装置及び受信装置間の環境は、見通し環境であることを想定しているが、このことは本発明に必須ではない。後述するように、見通し外の環境でもよい。概して、直接波及び中継波の受信電力は距離が遠ざかるにつれて低くなっている。中継装置及び受信装置間の距離r2は、送信装置及び受信装置間の距離r1より長いので、中継波は直接波よりも受信電力が低くなっている。
【0023】
図10のステップS102において、所望の距離における直接波及び中継波の受信電力の差分を求めることで、増幅利得を決定する。この様子を図13を参照しながら説明する。受信装置の場所(スポット的に補償したい場所)における直接波の受信電力をPDとし、その場所における中継波の受信電力をPIとする。そして、これらの受信電力の差分(PD−PI)が、中継装置における増幅利得として決定される。
【0024】
図10のステップS103において、送信装置からの信号が、中継装置において増幅され、受信装置に中継される。中継装置における増幅利得は、ステップS102において決定された値である。このように適切に増幅された中継波は、図13の破線で示すように減衰し、受信装置における受信電力が、PDに等しくなる。受信装置は、直接波と同程度のレベルの中継波を受信するので、受信装置は直接波と中継波の合成波を適切に信号分離することができる。
【0025】
ステップS101において、直接波及び中継波の受信電力を推定する際、見通し環境であることを想定していたが、見通し外の環境でもよい。見通し外の環境の場合、図14に示されるように、シャドーイングのようなフェージングに起因して、受信電力は激しく変動する。この場合、ある程度長い距離にわたって受信電力を平均化し、平均化された受信電力間の差分から、増幅利得を決定することが好ましい。
【0026】
以上本発明は特定の実施例を参照しながら説明されてきたが、それらは単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。例えば、本発明は、MIMO方式を使用する適切な如何なる移動通信システムに適用されてもよい。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。実施例又は項目の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の項目に記載された事項が必要に応じて組み合わせて使用されてよいし、ある項目に記載された事項が、別の実施例又は項目に記載された事項に(矛盾しない限り)適用されてよい。説明の便宜上、本発明の実施例に係る装置は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウェアで、ソフトウェアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が本発明に包含される。
【符号の説明】
【0027】
81 受信機
82 増幅器
83 送信機
84 電力差決定部
85 利得決定部
91 受信機
92 信号再生器
93 増幅器
94 送信機
95 電力差決定部
96 利得決定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継装置及び中継方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信におけるスループットを向上させる技術として、MIMO(Multiple Input Multiple Output)方式又はマルチアンテナ方式がある。MIMO方式は、複数のアンテナから同時に同じ周波数で信号を送信することで、スループットを向上させる。
【0003】
図1はMIMO方式の概要を示す。n個のストリーム1−nは、送信装置のn個のアンテナから別々に送信され、様々な無線伝搬路を経て受信装置のn個のアンテナで受信される。受信装置は、空間における信号伝搬経路の相違を活用することで、受信したn個の信号をn個のストリーム1−nに分離し、送信された情報1−nを復元することができる。
【0004】
このように、MIMO方式は、複数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナ間の無線伝搬経路の複雑さを活用する技術である。したがって、例えば伝搬経路途中の障害物に起因して様々な伝搬経路が存在する環境の場合(マルチパス環境の場合)、MIMO方式における受信装置の信号分離は容易になる。ただし、障害物による電波の散乱に起因して、受信電力は低くなってしまう傾向がある(図2)。これに対して、例えば見通し環境のような場合、無線伝搬経路同士の相違は小さくなるので、受信装置における信号分離は困難になってしまう。ただし、見通し環境の場合、受信電力はそれほど低くならない(図3)。
【0005】
したがって、見通し環境の場合、MIMO方式によりスループットを向上させることは困難である。この問題に対処するため、送信装置と受信装置の間に中継装置を設けることが考えられる。受信装置は、送信装置から直接届く直接波と、送信装置から中継装置を経て届く中継波とを受信し、それらの合成波を信号分離する。このように中継装置を用いて、無線伝搬経路を意図的に複雑にすることで、見通し環境であっても受信装置における信号分離を容易にできる。MIMO方式を用いた従来の中継方法については、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−148482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、中継装置を設けることで、受信装置が直接波と中継波とを受信したとしても、依然としてMIMO方式の受信装置における信号分離が困難になってしまう場合がある。
【0008】
図4はそのような問題点を説明するための図である。左側には送信装置、中継装置及び受信装置が模式的に示されている。受信装置は、送信装置から直接届く直接波と、中継装置を経て届く中継波とを受信し、合成する。一般に、中継波は、直接波に対して何らかの位相差を有する。説明の便宜上、直接波及び中継波の位相差をφとする。したがって、直接波と中継波の合成は、ベクトル加算により行われる。このため、例えば、中継波の振幅が非常に小さかった場合、合成波は、近似的に直接波になる(右上の図)。合成波が、近似的に直接波になった場合、受信装置は、事実上、直接波のみを用いて信号分離することになり、これは見通し環境の場合と同様に信号分離が困難になってしまう。逆に、直接波の振幅が非常に小さかった場合、合成波は、近似的に中継波になる(右下の図)。合成波が、近似的に中継波になった場合、受信装置は、事実上、中継波のみを用いて信号分離することになり、見通し環境の場合と同様に信号分離が困難になってしまう。このように、従来の方式の場合、MIMO方式を使用する際に中継装置を用いたとしても、信号分離が困難な状況が生じてしまうという問題点がある。
【0009】
本発明の課題は、MIMO方式の通信が行われる通信システムにおいて、送信装置から中継装置を経由せずに受信装置へ届く直接波と、送信装置から中継装置を経由して受信装置へ届く中継波との合成波の信号分離が、容易になるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態による中継装置は、
MIMO方式の通信システムにおいて、送信装置から受信した信号を、受信装置に中継する中継装置であって、
前記送信装置から前記中継装置を経由せずに前記受信装置へ届く直接波の受信レベルと、前記送信装置から前記中継装置を経由して前記受信装置へ届く中継波の受信レベルとの差分を、前記送信装置、当該中継装置及び前記受信装置の位置関係から決定する電力差決定部と、
前記差分が小さくなるように、前記中継装置の増幅利得を決定する利得決定部と、
前記送信装置から受信した信号を、前記決定された増幅利得で増幅し、前記受信装置に送信する送信部と
を有する中継装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一形態によれば、MIMO方式の通信が行われる通信システムにおいて、送信装置から中継装置を経由せずに受信装置へ届く直接波と、送信装置から中継装置を経由して受信装置へ届く中継波との合成波の信号分離が、容易になるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】MIMO方式による信号伝送の概念図。
【図2】見通し環境でない無線伝搬環境を示す図。
【図3】見通し環境を示す図。
【図4】問題点を説明するための図。
【図5】発明原理を説明するための図。
【図6】一実施例による中継装置が送信装置及び受信装置の間に設けられている様子を示す図。
【図7】パッシブな中継装置の一例を示す図。
【図8】アクティブな中継装置の一例を示す図。
【図9】アクティブな中継装置の別の例を示す図。
【図10】中継装置における増幅利得を決定する方法を示すフローチャート。
【図11】送信装置、中継装置及び受信装置の地理的な位置関係を模試的に示す図。
【図12】直接波及び中継波の受信電力の推定値を示す図。
【図13】受信電力の差分から増幅利得を決定する様子を示す図。
【図14】見通し外環境における直接波及び中継波の受信電力の推定値を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の観点から本発明の実施例を説明する。
【0014】
1.発明原理
2.中継装置
3.増幅利得決定方法
【実施例1】
【0015】
<1.発明原理>
図5は、発明原理を説明するための図である。図4を参照しながら説明したように、直接波及び中継波の電力レベルが著しく異なっていた場合、受信装置における合成波の信号分離は困難になってしまう。本発明では、受信装置が、直接波と中継波を同程度の強さで受信できるように、中継装置が適切なレベルに増幅した中継波を受信装置に送信する。中継装置における増幅利得は、送信装置、中継装置及び受信装置の地理的な位置関係により決定することができる。図5右側に示されているように、直接波と中継波が同程度に強く受信装置で受信される場合、合成波は、直接波とも中継波とも異なる位相を有し、受信装置における信号分離が容易になる。
【0016】
<2.中継装置>
図6は、本実施例による中継装置が、送信装置及び受信装置の間に設けられている様子を示す。送信装置及び受信装置は、MIMO方式により信号を送受信する。中継装置は、送信装置からの電波を受信装置に中継することが可能な適切な如何なる装置でもよい。
【0017】
図7に示すように、例えば、中継装置は、単に電波を反射する電波反射板のような受動的な(パッシブな)中継装置でもよい。電波反射板又はリフレクタの場合、中継する際の増幅利得は、主に、リフレクタの寸法(具体的には、面積)によって決定される。したがって、送信装置、中継装置及び受信装置の地理的な位置関係により、必要な増幅利得をもたらすように面積を決定することで、所望の増幅利得を有する中継装置を実現できる。
【0018】
図8に示すように、中継装置は、増幅機能等を有する能動的な(アクティブな)中継装置でもよい。図示の中継装置は、送信装置からの信号を受信機81で受信し、増幅器82で増幅し、送信機83から受信装置へ送信する。増幅器における増幅利得は、送信装置、中継装置及び受信装置の地理的な位置関係により決定することができる。具体的には、電力差決定部84により、受信装置における直接波及び中継波の受信レベルの差分を決定し、この差分を小さくするような増幅利得が、利得決定部85により決定される。図7に示す受動的な中継装置よりも装置構成が複雑になるが、増幅利得を可変に制御できる等の点で有利である。
【0019】
図9に示すように、中継装置は、増幅機能に加えて信号再生器等を有する能動的な中継装置でもよい。図示の中継装置は、送信装置からの信号を受信機91で受信し、信号再生器92により信号を再生する。これにより、ノイズが除去された受信信号を生成でき、この受信信号を増幅器93で増幅し、送信機94から受信装置へ送信する。増幅器における増幅利得は、送信装置、中継装置及び受信装置の地理的な位置関係により決定することができる。具体的には、電力差決定部95により、受信装置における直接波及び中継波の受信レベルの差分を決定し、この差分を小さくするような増幅利得が、利得決定部96により決定される。図8に示す中継装置よりも装置構成がさらに複雑になるが、ノイズが除去された信号を中継できる等の点で有利である。
【0020】
<3.増幅利得決定方法>
図10は、中継装置における増幅利得を決定する方法を示す。送信装置、中継装置及び受信装置の地理的な位置関係は既知である。
【0021】
ステップS101において、受信装置が受信する直接波及び中継波の受信レベルを推定する。この場合における中継装置の増幅利得は、何らかの初期値である。受信レベルは、当該技術分野における適切な如何なる方法で推定されてもよい。一例として、距離減衰モデルを用いて受信レベルを推定することができる。あるいは、受信レベルを実際に測定してもよい。
【0022】
図11は、送信装置、中継装置及び受信装置の位置関係を示す。図12は、図11に示される位置関係において、受信装置が受信する直接波及び中継波の受信レベルの推定値を示す。受信レベルは、当該技術分野で既知の適切な如何なる量で表現されてもよい。例えば、受信レベルは、希望波受信電力RSCP、電界強度RSSI、パスロス、SIR、SINR、S/N、Ec/N0等で表現されてもよい。説明の便宜上、受信レベルは受信電力であるとする。図12では、送信装置、中継装置及び受信装置間の環境は、見通し環境であることを想定しているが、このことは本発明に必須ではない。後述するように、見通し外の環境でもよい。概して、直接波及び中継波の受信電力は距離が遠ざかるにつれて低くなっている。中継装置及び受信装置間の距離r2は、送信装置及び受信装置間の距離r1より長いので、中継波は直接波よりも受信電力が低くなっている。
【0023】
図10のステップS102において、所望の距離における直接波及び中継波の受信電力の差分を求めることで、増幅利得を決定する。この様子を図13を参照しながら説明する。受信装置の場所(スポット的に補償したい場所)における直接波の受信電力をPDとし、その場所における中継波の受信電力をPIとする。そして、これらの受信電力の差分(PD−PI)が、中継装置における増幅利得として決定される。
【0024】
図10のステップS103において、送信装置からの信号が、中継装置において増幅され、受信装置に中継される。中継装置における増幅利得は、ステップS102において決定された値である。このように適切に増幅された中継波は、図13の破線で示すように減衰し、受信装置における受信電力が、PDに等しくなる。受信装置は、直接波と同程度のレベルの中継波を受信するので、受信装置は直接波と中継波の合成波を適切に信号分離することができる。
【0025】
ステップS101において、直接波及び中継波の受信電力を推定する際、見通し環境であることを想定していたが、見通し外の環境でもよい。見通し外の環境の場合、図14に示されるように、シャドーイングのようなフェージングに起因して、受信電力は激しく変動する。この場合、ある程度長い距離にわたって受信電力を平均化し、平均化された受信電力間の差分から、増幅利得を決定することが好ましい。
【0026】
以上本発明は特定の実施例を参照しながら説明されてきたが、それらは単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。例えば、本発明は、MIMO方式を使用する適切な如何なる移動通信システムに適用されてもよい。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。実施例又は項目の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の項目に記載された事項が必要に応じて組み合わせて使用されてよいし、ある項目に記載された事項が、別の実施例又は項目に記載された事項に(矛盾しない限り)適用されてよい。説明の便宜上、本発明の実施例に係る装置は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウェアで、ソフトウェアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が本発明に包含される。
【符号の説明】
【0027】
81 受信機
82 増幅器
83 送信機
84 電力差決定部
85 利得決定部
91 受信機
92 信号再生器
93 増幅器
94 送信機
95 電力差決定部
96 利得決定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MIMO方式の通信システムにおいて、送信装置から受信した信号を、受信装置に中継する中継装置であって、
前記送信装置から前記中継装置を経由せずに前記受信装置へ届く直接波の受信レベルと、前記送信装置から前記中継装置を経由して前記受信装置へ届く中継波の受信レベルとの差分を、前記送信装置、当該中継装置及び前記受信装置の位置関係から決定する電力差決定部と、
前記差分が小さくなるように、前記中継装置の増幅利得を決定する利得決定部と、
前記送信装置から受信した信号を、前記決定された増幅利得で増幅し、前記受信装置に送信する送信部と
を有する中継装置。
【請求項2】
前記電力差決定部が、前記直接波及び前記中継波の受信レベルを、距離減衰モデルにしたがって推定する、請求項1記載の中継装置。
【請求項3】
MIMO方式の通信システムにおいて、送信装置から受信した信号を、受信装置に中継する中継装置における中継方法であって、
前記送信装置から前記中継装置を経由せずに前記受信装置へ届く直接波の受信レベルと、前記送信装置から前記中継装置を経由して前記受信装置へ届く中継波の受信レベルとの差分を、前記送信装置、前記中継装置及び前記受信装置の位置関係から決定する電力差決定ステップと、
前記差分が小さくなるように、前記中継装置の増幅利得を決定する利得決定ステップと、
前記送信装置から受信した信号を、前記決定された増幅利得で増幅し、前記受信装置に送信する送信ステップと
を有する中継方法。
【請求項4】
前記電力差決定ステップにおいて、前記直接波及び前記中継波の受信レベルが、距離減衰モデルにしたがって推定される、請求項3記載の中継方法。
【請求項1】
MIMO方式の通信システムにおいて、送信装置から受信した信号を、受信装置に中継する中継装置であって、
前記送信装置から前記中継装置を経由せずに前記受信装置へ届く直接波の受信レベルと、前記送信装置から前記中継装置を経由して前記受信装置へ届く中継波の受信レベルとの差分を、前記送信装置、当該中継装置及び前記受信装置の位置関係から決定する電力差決定部と、
前記差分が小さくなるように、前記中継装置の増幅利得を決定する利得決定部と、
前記送信装置から受信した信号を、前記決定された増幅利得で増幅し、前記受信装置に送信する送信部と
を有する中継装置。
【請求項2】
前記電力差決定部が、前記直接波及び前記中継波の受信レベルを、距離減衰モデルにしたがって推定する、請求項1記載の中継装置。
【請求項3】
MIMO方式の通信システムにおいて、送信装置から受信した信号を、受信装置に中継する中継装置における中継方法であって、
前記送信装置から前記中継装置を経由せずに前記受信装置へ届く直接波の受信レベルと、前記送信装置から前記中継装置を経由して前記受信装置へ届く中継波の受信レベルとの差分を、前記送信装置、前記中継装置及び前記受信装置の位置関係から決定する電力差決定ステップと、
前記差分が小さくなるように、前記中継装置の増幅利得を決定する利得決定ステップと、
前記送信装置から受信した信号を、前記決定された増幅利得で増幅し、前記受信装置に送信する送信ステップと
を有する中継方法。
【請求項4】
前記電力差決定ステップにおいて、前記直接波及び前記中継波の受信レベルが、距離減衰モデルにしたがって推定される、請求項3記載の中継方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−54797(P2012−54797A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196307(P2010−196307)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 総務省「超高速移動通信システムの実現に向けた要素技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 総務省「超高速移動通信システムの実現に向けた要素技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
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