説明

中間転写ベルト及びそれを備えた画像形成装置

【課題】 ポリウレタン樹脂に代わる樹脂を用いた斜行防止部材を採用することにより、シームレスの中間転写ベルトを用いた画像形成装置において、中間転写ベルトの蛇行や斜行を防止して良好な画像を記録媒体に転写できるようにし、かつ、長期使用においてもビート摩耗による機内汚染を起さない中間転写ベルトを提供することを目的とする。
【解決手段】 電子写真方式の画像形成装置に用いられる中間転写ベルト61であって、トナー像を担持する無端状のベルト本体40と、ベルト本体40の裏面に設けられた斜行防止部材71とを備え、斜行防止部材71は、ポリカーボネート系ポリウレタンを含有する樹脂層73を備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子写真方式により画像形成を行う画像形成装置に用いられる中間転写ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置には、現像剤像担持体の表面に担持された現像剤像を中間転写ベルトに一次転写した後、中間転写ベルトから記録媒体へ二次転写する中間転写方式を採用しているものがある。
【0003】
このような画像形成装置では、駆動ローラと従動ローラとに架け渡した無端状(シームレス)の中間転写ベルトに作製した現像剤像を、中間転写ベルトを挟んで駆動ローラに圧接する転写ローラとの間を通過させる際に、転写電圧を印加することによって記録媒体に現像剤像を二次転写させる。
【0004】
無端状の中間転写ベルトを用いた場合、駆動系ローラの組立精度や部品精度などの問題もあり、回転中にローラ軸の一方向に移動してしまう蛇行や斜行という現象が起こることが多い。そこで、これを防止するため、中間転写ベルトの裏面に斜行防止部材(ビートと呼ばれる)を設ける方式がとられている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−304865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、斜行防止部材(ビート)は、シームレスではない細長い帯状シート状である。このビートの材質が、ウレタン等のゴム系部材のみの場合、シームレスな中間転写ベルト本体裏面への貼付時に、伸縮によりビートの継ぎ目間隔が安定せずに、重なったり、間が空きすぎたりする問題を有している。そこで、弾性率が高く、伸縮の少ないポリエチレンテレフタレート(PET)シート等を基材にウレタンゴム部材を組み合わせた積層構造にしている。なお、ビート全体をPETシートのみにすると、剛性が高過ぎて、中間転写ベルトがスムーズに回転できず安定走行ができなくなってしまう。
【0007】
ところが、上記ビートは、主にPETシートからなるビート用基材にポリウレタン樹脂を直接接着して使用していることから、中間転写ベルトの走行量が増えると、摩擦などによりポリウレタン樹脂が削れるため、削れカスが機内に飛散し、画像形成その他に影響を与える不具合が発生していた。
【0008】
特許文献1によれば、従動ローラ39の両端部39aにはそれぞれ、ガイド部材4が設けられている。ガイド部材4は、ウレタンなどの弾性部材からなり、蛇行防止ガイド6より剛性が低くなるように設計することで、蛇行防止ガイドが直線状に配設されていなくても、それに影響されることなく、無端ベルトの蛇行を効果的に防止することができるベルト搬送装置および画像形成装置が開示されているが、蛇行防止ガイド(ビート)そのものの削れおよびビートの構造については言及されていない。
【0009】
そこで、本発明においては、ポリウレタン樹脂に代わる樹脂を用いた斜行防止部材を採用することにより、シームレスの中間転写ベルトを用いた画像形成装置において、中間転写ベルトの蛇行や斜行を防止して良好な画像を記録媒体に転写できるようにし、かつ、長期使用においてもビート摩耗による機内汚染を起さない中間転写ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる中間転写ベルトであって、トナー像を担持する無端状のベルト本体と、前記ベルト本体の裏面に設けられた斜行防止部材とを備え、前記斜行防止部材は、ポリカーボネート系ポリウレタンを含有する樹脂層を備えたことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、ポリカーボネート系ポリウレタンを含有する樹脂層は、通常のポリウレタンからなる樹脂層に比べて強度的に強く耐摩耗性に優れる。その結果、ビート削れを起こすことなく、それに起因する機内汚れも防止できる。それに伴い、転写不良などの画像欠陥も抑えることができる。
【0012】
樹脂層は、ポリカーボネート系ポリウレタンのみから構成することはもちろん、耐摩耗性が維持できる範囲で通常のポリウレタンのように他の樹脂を配合することができる。なお、複数の樹脂を配合する場合、良好な耐摩耗性を維持するためには、ポリカーボネート系ポリウレタンを主成分とするのが好ましい。
【0013】
また、従来、斜行防止部材の基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が用いられていた。ところが、PETからなる基材にポリカーボネート系ポリウレタンを含有する樹脂層を接着する場合には、両者の接着性が不安定になりやすく、両層の接着強度が不足する場合があることがわかった。
【0014】
そこで、ポリカーボネート系ポリウレタンを含有する樹脂層に適した基材について種々検討した結果、基材を構成する材料の溶解性パラメータ値と、樹脂層を構成する樹脂材料の溶解性パラメータ値とが近いほど基材と樹脂層との接着性が良好になることを見いだした。具体的には、斜行防止部材が、基材に、前記樹脂層が積層された積層構造を有し、基材を構成する材料の溶解性パラメータ値が、ポリカーボネート系ポリウレタンの溶解性パラメータ値と同等の9〜10であることが望ましい。
【0015】
これにより、基材と樹脂層との良好な接着性を確保して一体化可能となる。すなわち、樹脂層を基材に直接溶融接着すること可能となり、ベルト本体への貼り付け作業が簡単な斜行防止部材を得ることができる。基材を構成する具体的な材料としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を挙げることができる。
【0016】
PBTからなる基材の厚さは、0.02mm〜0.5mmであることを特徴とする。基材シートの厚さが0.02mm未満であれば、斜行防止部材自体の強度不足となる場合がある。また基体シートの厚さが0.5mmを超えると、斜行防止部材の剛性が大きくなり過ぎるため、中間転写ベルト裏面への貼付作業が困難になる場合がある。よって、斜行防止部材の基材シートの厚さは、0.02mm〜0.5mmであることが好ましい。
【0017】
ベルト本体は、基体に弾性体層が配された積層構造を有し、基体がポリブチレンテレフタレートから構成され、基体と基材とが溶融接着された構成とするのが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、両面テープなどを用いる接着方法ではなく、加熱装置などで接着が可能となり、部品点数を削減することができる。また、斜行防止部材をポリカーボネート系ポリウレタンを含有する樹脂層のみから構成し、基体をポリブチレンテレフタレートから構成することも可能であり、この場合においても、基体と基材との溶融接着が可能となる。
【0019】
上述した中間転写ベルトを搭載した画像形成装置は、ビート削れが発生せず、それに起因する機内汚れも防止できる。それに伴い、転写不良などの画像欠陥も抑えることができる。良好な画像を記録媒体に転写することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上記載のごとく、本発明においては、中間転写ベルトの斜行防止部材として、ポリカーボネート系ポリウレタンを含有する樹脂層を用いたため、ビート削れが発生せず、それに起因する機内汚れも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の正面断面図
【図2】本発明に係る中間転写ベルトの実施形態を示す部分断面図
【図3】中間転写ベルトと駆動ローラとを含む断面図
【図4】基材の厚さと、斜行安定性及び不具合との関係を示す図
【図5】中間転写ベルトの別の形態を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、この発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
【0023】
図1に示すように、画像形成装置10は、画像読取ユニット100、画像形成ユニット200、給紙ユニット300、及び制御部400を備えている。
【0024】
画像読取ユニット100は、画像形成装置10の上部に配置され、自動原稿搬送装置(ADF:Automatic Document Feeder)90、及び画像読取部20を備えている。画像読取部20は、第1原稿台21、第2原稿台22、第1ミラーベース23、第2ミラーベース24、レンズ25、及び固体撮像素子(CCD:Charge Coupled Device)26を備えている。
【0025】
ADF90には、原稿積載トレイ91から第2原稿台22を経由して原稿排出トレイ92へ至る原稿搬送路93が形成されている。ADF90は、原稿搬送路93に原稿を1枚ずつ搬送する。ADF90は、第1原稿台21の上面を開閉自在に被覆するように、背面側を支点に回動自在にされている。前面側が上方に移動するようにADF90を回動させて第1原稿台21の上面を露出させることにより、ADF90を用いずに手動操作によって第1原稿台21に原稿を載置することができる。
【0026】
第1原稿台21及び第2原稿台22は、ともに硬質ガラス板によって構成されている。
【0027】
第1ミラーベース23及び第2ミラーベース24は、第1原稿台21及び第2原稿台22の下方において水平方向に移動自在にされている。第2ミラーベース24の移動速度は、第1ミラーベース23の移動速度の1/2にされている。第1ミラーベース23は、光源及び第1ミラーを搭載している。第2ミラーベース24は、第2ミラー及び第3ミラーを搭載している。
【0028】
ADF90によって搬送される原稿の画像を読み取る際に、第1ミラーベース23は、第2原稿台22の下方に停止している。光源の光は、第2原稿台22上を通過する原稿の画像面に向けて照射され、原稿の画像面における反射光が第1ミラーによって第2ミラーベース24に向けて反射される。
【0029】
第1原稿台21に載置された原稿の画像を読み取る際には、第1ミラーベース23及び第2ミラーベース24は、第1原稿台21の下方を水平方向に移動する。光源の光は、第1原稿台21上に載置された原稿の画像面に向けて照射され、原稿の画像面における反射光が第1ミラーによって第2ミラーベース24に向けて反射される。
【0030】
ADF90を用いるか否かに拘らず、原稿の画像面における反射光は、光路長を一定にして、第2ミラー及び第3ミラーによってレンズ25を経由してCCD26に入射する。
【0031】
CCD26は、原稿の画像面における反射光の光量に応じた電気信号を出力する。この電気信号は、制御部400に画像データとして入力される。このようにして、画像読取部20は、原稿の画像を読み取って画像データを取得する。制御部400は、必要に応じて画像データを画像形成ユニット200へ出力する。
【0032】
画像形成ユニット200は、画像読取ユニット100の下に配置され、露光ユニット3、4個の画像形成部31,32,33,34、中間転写ベルトユニット6、二次転写ローラ66、定着装置7、排紙トレイ67、及び用紙搬送路68,69を備えている。
【0033】
中間転写ベルトユニット6は、中間転写ベルト61、駆動ローラ62、従動ローラ63、及びテンションローラを有している。中間転写ベルト61は、駆動ローラ(支持ローラ)62と従動ローラ(支持ローラ)63との間に張架されてループ状の移動経路を形成している。
【0034】
画像形成ユニット200は、ブラック、並びに、カラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン、マゼンタ及びイエローの4色の各色相に対応した画像データを用いて、画像形成部31,32、33,34において画像形成処理を行う。画像形成部31〜34は、中間転写ベルト61の移動経路に沿って一列に配置されている。画像形成部32〜34は、画像形成部31と実質的に同様に構成されている。
【0035】
ブラックの画像形成部31は、感光体ドラム1、帯電装置2、現像装置4、一次転写ローラ5、及びクリーニングユニット64を備えている。
【0036】
帯電装置2は、感光体ドラム1の表面を所定の電位に均一に帯電させる。
【0037】
露光ユニット3は、図示しない半導体レーザ、ポリゴンミラー、第1fθレンズ及び第2fθレンズを備えており、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データによって変調されたレーザビームのそれぞれを、画像形成部31〜34のそれぞれの感光体ドラム1に照射する。4個の感光体ドラム1のそれぞれの周面には、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データによる静電潜像が形成される。
【0038】
現像装置4は、静電潜像が形成された感光体ドラム1の周面に、画像形成部31〜34のそれぞれの色相のトナー(現像剤)を供給し、静電潜像を現像剤像に顕像化する。
【0039】
クリーニングユニット64は、現像及び画像転写の後における感光体ドラム1の表面に残留したトナーを回収する。
【0040】
中間転写ベルト61の外周面は、4個の感光体ドラム1に順に対向する。中間転写ベルト61を挟んで各感光体ドラム1に対向する位置のそれぞれに、一次転写ローラ5が配置されている。中間転写ベルト61と感光体ドラム1とが互いに対向する位置のそれぞれが、一次転写位置である。
【0041】
一次転写ローラ5には、感光体ドラム1の周面に担持された現像剤像を中間転写ベルト61上に転写するために、トナーの帯電極性(マイナス)と逆極性(プラス)の一次転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム1のそれぞれに形成された各色相の現像剤像は中間転写ベルト61の外周面に順次重ねて転写(一次転写)され、中間転写ベルト61の外周面にフルカラーの現像剤像が形成される。
【0042】
但し、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色相の一部のみの画像データが入力された場合は、4個の感光体ドラム1のうち、入力された画像データの色相に対応する一部のみにおいて静電潜像及び現像剤像の形成が行われる。例えば、モノクロ印刷モード時には、ブラックの色相に対応した画像形成部31の感光体ドラム1のみにおいて静電潜像の形成及び現像剤像の形成が行われ、中間転写ベルト61の外周面にはブラックの現像剤像のみが転写(一次転写)される。
【0043】
画像形成部31〜34の全てにおいて画像形成処理が行われるフルカラー画像形成時には、4個の一次転写ローラ5が中間転写ベルト61を全ての感光体ドラム1に圧接させる。一方、画像形成部31のみにおいて画像形成処理が行われるモノクロ画像形成時には、画像形成部31のみにおいて一次転写ローラ5が中間転写ベルト61を感光体ドラム1に圧接させる。
【0044】
各一次転写ローラ5は、直径8〜10mmの金属(例えば、ステンレス)を素材とする軸の表面を導電性の弾性材によって被覆して構成されており、導電性の弾性材によって中間転写ベルト61に均一に高電圧を印加する。弾性材として、EPDM(エチレン・プロピレン共重合ゴム)、又は発泡ウレタン等が用いられる。
【0045】
二次転写ローラ66は、中間転写ベルト61を挟んで駆動ローラ62に所定のニップ圧で圧接している。二次転写ローラ66はこの発明の転写ローラに相当する。二次転写ローラ6は、導電性樹脂であって硬質材料で構成されている。二次転写ローラ66は、中間転写ベルト61の外周面に担持された現像剤像を、記録媒体の一例である用紙に転写(二次転写)するためのものである。
【0046】
一次転写位置のそれぞれにおいて中間転写ベルト61の外周面に転写された現像剤像は、中間転写ベルト61の回転によって、中間転写ベルト61と二次転写ローラ66との対向位置である二次転写位置へ搬送される。
【0047】
給紙ユニット300の給紙トレイ81には、用紙が収容されている。用紙搬送路68には、複数の搬送ローラ12A,12Bが配置されている。用紙搬送路68は、給紙トレイ81に収容されている用紙を、二次転写位置及び定着装置7を経由して排紙トレイ67へ送るために、略垂直方向に配置されている。
【0048】
用紙搬送路69には、複数の搬送ローラ12C,12Dが配置されている。用紙搬送路69は、用紙の搬送方向において、定着装置7の下流側から二次転写位置の上流側まで配置されている。用紙搬送路69には、定着装置7を通過した後で排紙トレイ67へ排出される用紙が、それまでの後端を前にして搬送される。これによって、用紙は表裏を反転した状態で、二次転写位置へ再送される。
【0049】
給紙ユニット300は、画像形成ユニット200の下に配置され、給紙カセット81の他に、手差しトレイ82を備えている。給紙カセット81及び手差しトレイ82のそれぞれには、用紙が収容される。
【0050】
給紙ユニット300は、給紙カセット81又は手差しトレイ82の何れかから1枚ずつ用紙を給紙する。給紙カセット81に収容された用紙は、ピックアップローラ11Aによって給紙され、用紙搬送路68を経由して二次転写位置へ搬送される。手差しトレイ82に収容された用紙は、ピックアップローラ11Bによって給紙され、用紙搬送路68を経由して二次転写位置へ搬送される。
【0051】
用紙搬送方向において二次転写位置の上流側に、レジストローラ13が配置されている。給紙カセット81又は手差しトレイ82から給紙された用紙は、レジストローラ13が停止した状態で先端をレジストローラ13に突き当てられる。レジストローラ13の回転軸は、用紙の搬送方向に直交する方向に配置されている。用紙の先端が、停止した状態のレジストローラ13に突き当てられることで、用紙が斜行している場合は斜行が補正される。
【0052】
レジストローラ13は、用紙の先端を、中間転写ベルト61の表面に形成された現像剤像の先端と合わせるタイミングで回転を開始し、二次転写位置へ用紙を供給する。
【0053】
この実施形態では、中間転写ベルト61の移動方向において二次転写位置の上流側近傍に、二次転写前帯電装置14、及び対向ローラ15が配置されている。二次転写前帯電装置14は、中間転写ベルト61の外周面側に配置され、対向ローラ15は、中間転写ベルト61を挟んで二次転写前帯電装置14に対向するように配置されている。二次転写前帯電装置14は、中間転写ベルト61の外周面に担持された現像剤像に、トナーの帯電極性(マイナス)と同極性(マイナス)の電荷を付与する。
【0054】
給紙ユニット300から給紙された用紙が二次転写位置を通過する際に、駆動ローラ62に、トナーの帯電極性(マイナス)と同極性(マイナス)の高電圧の転写電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト61の外周面から用紙の表面に、現像剤像が二次転写(転写処理)される。
【0055】
現像剤像が用紙に転写された後の中間転写ベルト61上に残留した現像剤は、中間転写ベルト用クリーニング装置65によって回収される。現像剤像が転写された用紙は、定着装置7に導かれ、加熱ローラ71と加圧ローラ72との間を通過することで加熱及び加圧される。これによって、現像剤像が、用紙の表面に堅牢に定着する。現像剤像が定着した用紙は、現像剤像が定着した面を下にして排紙トレイ67上へ排出される。
【0056】
図2は、本発明に係る中間転写ベルト61の断面構成を示した図である。中間転写ベルト61は、基本的に無端状のベルト本体40と、ベルト本体40の裏面に取り付けられた斜行防止部材(ビート)71とを備えている。ベルト本体40は、基体41の表面側に、弾性樹脂からなる弾性体層42と表面層43とがこの順に積層された3層構造にて構成されている。
【0057】
基体41は、ポリイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルサルフィン(PPS)、ポリカーボネート(PET)などの樹脂が用いられる。
【0058】
ベルト本体40の硬度は、弾性体層42の厚さによって調整される。弾性体層42の厚さは、ベルト本体40の硬度がJIS K6253に規定するデュロメータA硬度で40度以上60度以下の範囲内に入るように調整され、通常は厚さ300μmのウレタンゴムで構成されている。
【0059】
ウレタンゴムは適度な弾性を有するので、二次転写に必要なニップ圧を中間転写ベルト61と二次転写ローラ66との間に生じさせることができる。また、ウレタンゴムは基体41として用いられるポリカーボネート樹脂との接着性が高く、中間転写ベルト61自体の耐久性を高めることができる。さらに、ウレタンゴムは安価なので、低コスト化を図ることができる。
【0060】
また、表面層43をフッ素樹脂で構成することで、中間転写ベルト用クリーニング装置65のクリーニングブレードや用紙との摩擦による中間転写ベルト61の劣化、厚さの減少を抑制することができるので、転写性能を常に安定させることができる。なお、この表面層43の厚さは約10μmである。
【0061】
斜行防止部材(ビート)71は、PBT樹脂(旭硝子株式会社製、バロックスフィルムFR1)からなる帯状の基材72と、ポリカーボネート系ポリウレタンからなる樹脂層73と、両面テープからなる接着剤層74(住友スリーエム株式会社製、442JS)とにより構成されている。基材72は、前述の理由から、厚さ0.02mm〜0.5mmであることが好ましい。
【0062】
樹脂層73を構成するポリカーボネート系ポリウレタンは、ポリオールとポリイソシアネートとを共重合させて得られるポリウレタンであって、前記ポリオールがポリカーボネート系ポリオールを主成分とするものである。ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、ポリヘキサンジオールカーボネート、ポリノナンジオールカーボネート等が用いられる。各原料の配合量としては、ポリオール100重量部に対して、ポリイソシアネート30重量部〜180重量部である。
【0063】
このようなポリカーボネート系ポリウレタンとして、具体的には、日本ポリウレタン工業社製ミラクトランXN−2001、XN−2002、XN−2004等を用いることができる。
【0064】
また、樹脂層73の厚さは0.3mmであり、PBT樹脂からなる基材72に加熱により直接溶融接着されている。得られた斜行防止部材71の基材72と、樹脂層73との接着性は良好であり、中間転写ベルト61に貼付して使用したときにおいても層間剥離等の問題は発生しなかった。
【0065】
一方、基材72を構成する樹脂としてPETを使用した場合には、基材72と樹脂層73との接着性が不安定となり、両層の間に別途、適当な接着剤を介在させる等の対応が必要となった。
【0066】
この理由としては、PBT樹脂の溶解性パラメータが9〜10であり、ポリカーボネート系ポリウレタンの溶解性パラメータと同等であること、また、従来のPET樹脂の溶解性パラメータが10〜11であり、ポリウレタン樹脂の溶解性パラメータは10〜11であることから、両層のなじみやすさ、すなわち、両層を構成する材料の溶解性パラメータが溶融接着の可否に大きく影響しているものと考えられる。
【0067】
なお、本実施形態では、中間転写ベルトの基体41と、斜行防止部材の基材72との間に両面テープ74を用いて貼付けているが、熱を加えることで溶融接着できる基体/基材の組み合わせ(例えば、PBT/PBT)であれば、両面テープは使用しなくてすむ。
【0068】
図3は、駆動ローラ62の中間転写ベルト61を含む断面図を示したものである(図1参照)。斜行防止部材(ビート)71は、帯状に形成され、中間転写ベルト61の裏面においてベルト幅方向両端部の全周を覆うように取り付けられる。駆動ローラ62の両端(62a、62b)が斜行防止部材(ビート)71と微小間隔を保って配置されている。したがって、中間転写ベルト61の走行において、駆動ローラ62の軸方向へのズレを発生させない。
【0069】
図4は、基材72の厚さが異なる複数種類の中間転写ベルトを作成したときの、基材72の厚さ(mm)と、中間転写ベルトへの貼り付け作業性及び画像形成装置10に装着したときの走行安定定との関係を示したものである。なお、中間転写ベルト61を実際に装着したときの駆動させるための回転トルク(N・m)も測定した。
【0070】
実験結果から次のことが判明した。基材72の厚さが小さいほど、斜行防止部材71と駆動ローラ62との接触圧が小さくなり、回転トルクも小さくて済んだ。そのため、駆動源として小容量の駆動モータを用いることができる。しかし、基材72の厚さが0.02mm未満であれば、貼り付け作業時に継ぎ目が一致しないことがある。
【0071】
一方、基材72の厚さが0.6mmを超えると、中間転写ベルト61全体として剛性が大きくなり過ぎるため、回転トルクが大きくなり、スムーズな中間転写ベルト61の回転が損なわれることを確認した。
【0072】
以上のことより、基材72の厚さが0.02mm以上0.5mm以下であれば中間転写ベルト61の斜行や蛇行を防止でき、回転に対し影響を与えることがないため、転写性能を常に安定維持させることができる。
【0073】
図5は、中間転写ベルト61の別の実施形態を示す一部拡大断面図であり、中間転写ベルト61の基体41はPBT樹脂で構成されている。斜行防止部材71は、ポリカーボネート系ポリウレタンからなる樹脂層73のみから構成し、これを中間転写ベルト61の基体41に直接溶融接着している。これにより、両面テープなどの部品及び斜行防止部材の製造工程の削減が可能となる。なお、この発明は、モノクロ画像のみを形成可能な電子写真方式の画像形成装置にも適用することができる。
【0074】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 熱交換器
10 画像形成装置
20 画像読取部
31,32,34,34 画像形成部
41 基体
42 弾性体層
43 表面層
61 中間転写ベルト
62 駆動ローラ(支持ローラ)
63 従動ローラ(支持ローラ)
66 二次転写ローラ(転写ローラ)
71 斜行防止部材
72 基材
73 樹脂層
74 接着剤層
99 用紙(記録媒体)
100 画像読取ユニット
200 画像形成ユニット
300 給紙ユニット
400 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式の画像形成装置に用いられる中間転写ベルトであって、トナー像を担持する無端状のベルト本体と、前記ベルト本体の裏面に設けられた斜行防止部材とを備え、前記斜行防止部材は、ポリカーボネート系ポリウレタンを含有する樹脂層を備えたことを特徴とする中間転写ベルト。
【請求項2】
前記斜行防止部材は、基材に、前記樹脂層が積層された積層構造を有し、前記基材を構成する樹脂材料の溶解性パラメータ値が9〜10であることを特徴とする請求項1に記載の中間転写ベルト。
【請求項3】
前記基材が、ポリブチレンテレフタレートからなる請求項1又は2に記載の中間転写ベルト。
【請求項4】
前記基材の厚さは、0.02mm〜0.5mmであることを特徴とする請求項3に記載に中間転写ベルト。
【請求項5】
前記ベルト本体は、基体に弾性体層が積層された積層構造を有し、前記基体がポリブチレンテレフタレートから構成され、前記基体と前記基材とが溶融接着されたことを特徴とする請求項4に記載の中間転写ベルト。
【請求項6】
前記斜行防止部材は、ポリカーボネート系ポリウレタンを含有する樹脂層のみから構成され、前記ベルト本体は、基体に弾性体層が積層された積層構造を有し、前記基体がポリブチレンテレフタレートから構成され、前記斜行防止部材が前記基体に溶融接着されたことを特徴とする請求項1に記載の中間転写ベルト。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の中間転写ベルトを搭載したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−75627(P2011−75627A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224259(P2009−224259)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】