説明

中間転写ベルト

【課題】溶着による接合部を有する場合においても、転写バイアス電圧を良好に印加できる、中間転写ベルトを提供する。
【解決手段】帯状の基材における両端部を溶着により接合した接合部75を有するベルト本体71と、ベルト本体71の外面70aの周方向に沿って設けられる電極部79とを有し、画像形成装置に用いられる中間転写ベルト70である。電極部79は、ベルト本体71の全周に亘って設けられる第一の電極層76と、第一の電極層76における接合部75との交差部分に対してベルト本体71の幅方向において異なる位置であり、且つ接合部75とは交差しない位置に少なくとも一部が設けられる第二の電極層77と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体上に形成したトナー像を中間転写媒体として、中間転写ベルトに転写し、中間転写ベルト上で4色の色重ねを行った後、トナー像を用紙に一括転写する画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。中間転写ベルトは、ベルト本体の表面に導電層、半導電層、及び電極層を順次積層することで構成されている。中間転写ベルトは、電極層に電極ローラが接触することで導電層に対して転写バイアス電圧が印加されるようになっている。また、ベルト本体は、フィルム等から構成される基材を溶着部材を介して接合することでベルト状に形成されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3856132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、溶着による接合部を有した中間転写ベルトは、上記導電層、半導電層、及び電極層を形成する際の乾燥処理時の熱によって溶着部材が変形してしまう。すると、溶着部材との交差部分において電極層と電極ローラとの接触具合が変化し、転写バイアス電圧を安定して印加することができなくなるといった問題が生じる。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、溶着による接合部を有する場合においても、転写バイアス電圧を良好に印加できる、中間転写ベルトを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の中間転写ベルトは、画像形成装置に用いられる中間転写ベルトにおいて、帯状の基材における両端部を溶着により接合した接合部を有するベルト本体と、前記ベルト本体の外面の周方向に沿って設けられる電極部と、を有し、前記電極部は、前記ベルト本体の全周に亘って設けられる第一の電極層と、前記第一の電極層における前記接合部との交差部分に対して前記ベルト本体の幅方向において異なる位置であり、且つ前記接合部とは交差しない位置に少なくとも一部が設けられる第二の電極層と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の中間転写ベルトによれば、例えば製造過程中の熱により接合部が変形して前記接合部上を通過する第一の電極層に対して電極ローラが接触不良を生じる場合であっても、代わりに第二の電極層に対して電極ローラを接触させることで転写バイアス電圧を良好に印加することができる。したがって、溶着による接合部に起因する転写バイアス電圧の印加不良の発生を防止できる。
【0008】
また、上記中間転写ベルトにおいては、前記第一の電極層が前記ベルト本体の一方の側部に沿って設けられ、前記第二の電極層が前記ベルト本体の他方の側部に沿って設けられているのが好ましい。
この構成によれば、ベルト本体の幅方向において第一の電極層と第二の電極層とを最も離間した状態に配置することができる。
【0009】
また、上記中間転写ベルトにおいては、前記接合部は、前記ベルト本体の幅方向に交差する方向に延在するのが好ましい。
この構成によれば、接合部がベルト本体の幅方向に対して斜めに形成されるので、接合部の両端の位置がベルト本体の周方向においてずれた状態となる。よって、接合部と交差しない領域に第二の電極層を確実に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】プリンタの概略構成を示す模式的断面図である。
【図2】中間転写ベルトの平面構造を示す図である。
【図3】搬送ベルトの製造工程を説明するための図である。
【図4】図3に続く搬送ベルトの製造工程を説明するための図である。
【図5】中間転写ベルト側断面構造を示す図である。
【図6】イエロー現像装置の周辺構成を示す図である。
【図7】変形例に係る接合部の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、中間転写ベルトを画像形成装置としてのレーザビームプリンタ(以下、「プリンタ」と称す。)に搭載した場合を例に挙げて説明する。
【0012】
図1は、プリンタの概略構成を示す模式的断面図である。なお、図1には、矢印にて上下方向を示している。
図1に示すように、かかるプリンタ10は、潜像を担持し図示矢印方向に回転する感光体20を有し、その回転方向に沿って帯電ユニット30、露光ユニット40、現像ユニット50、一次転写ユニット60および中間転写ベルト70、クリーニングユニット74が順に配設されている。また、プリンタ10は、図1の下部に、紙などの記録媒体P1を給紙する給紙トレイ92を有し、該給紙トレイ92からの記録媒体P1の搬送方向下流に、二次転写ユニット80、定着ユニット90が順次配設されている。
【0013】
感光体20は、円筒状の導電性基材と、その外周面に形成された感光層とを有し、その軸線まわりに図1中矢印方向に回転可能となっている。帯電ユニット30は、コロナ帯電などにより感光体20の表面を一様に帯電するための装置である。
露光ユニット40は、図示しないパーソナルコンピュータなどのホストコンピュータから画像情報を受けこれに応じて、一様に帯電された感光体20に、レーザを照射することによって、静電的な潜像を担持させる装置である。
【0014】
現像ユニット50は、ブラック現像装置51と、マゼンタ現像装置52と、シアン現像装置53と、イエロー現像装置54、すなわち、4つの現像装置を有し、これらの現像装置を感光体20上の潜像に対応して選択的に用いて、前記潜像を感光体20上においてトナー像として可視化する装置である。ブラック現像装置51はブラックトナー、マゼンタ現像装置52はマゼンタトナー、シアン現像装置53はシアントナー、イエロー現像装置54はイエロートナーを用いてそれぞれ現像を行う。
【0015】
現像ユニット50は、前述の4つの現像装置51、52、53、54を選択的に感光体20に対向することができるように、回転可能となっている。具体的には、この現像ユニット50では、軸50aを中心として回転可能な保持体の4つの保持部55a、55b、55c、55dにそれぞれ4つの現像装置51、52、53、54が保持されており、前記保持体の回転により、各現像装置51、52、53、54が相対位置関係を維持したまま、感光体20に選択的に対向するようになっている。なお、各現像装置の詳細な構成については後述する。
【0016】
一次転写ユニット60は、感光体20に形成されたトナー像を中間転写ベルト70に転写するための装置である。中間転写ベルト70は、図1に示す矢印方向に、感光体20とほぼ同じ周速度にて回転駆動される。中間転写ベルト70上には、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローのうちの少なくとも1色のトナー像が担持され、例えばフルカラー画像の形成時に、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローの4色のトナー像が順次重ねて転写されて、フルカラーのトナー像が形成される。
【0017】
二次転写ユニット80は、中間転写ベルト70上に形成された単色やフルカラーなどのトナー像を、紙、フィルム、布等の記録媒体P1に転写するための装置である。
定着ユニット90は、前記トナー像の転写を受けた記録媒体P1を加熱および加圧することにより、前記トナー像を記録媒体P1に融着させて永久像として定着させるための装置である。
クリーニングユニット74は、一次転写ユニット60と帯電ユニット30との間で感光体20の表面に当接するゴム製のクリーニングブレード78を有し、一次転写ユニット60によって中間転写ベルト70上にトナー像が転写された後に、感光体20上に残存するトナーをクリーニングブレード78により掻き落として除去するための装置である。
【0018】
ここで、中間転写ベルト70の構成について説明する。
図2は中間転写ベルト70の平面構造を示す図である。
【0019】
中間転写ベルト70は、図2に示されるように、帯状の基材における両端部を溶着することで接合した接合部75を有するベルト本体71と、ベルト本体71の外面70aの周方向に沿って設けられる電極部79とを有している。中間転写ベルト70は、電極部79に接触される電極ローラ81、82を通して転写バイアス電圧が印加されるようになっている。なお、中間転写ベルト70は、後述するように積層構造を有している(図5参照)。
【0020】
本実施形態においては、接合部75はベルト本体71の幅(中間転写ベルト70の回転方向と直交する方向における長さ)方向に交差するように延在している。すなわち、ベルト本体71には、中間転写ベルト70の周方向に対して、斜めに接合部75が形成されたものとなっている。
【0021】
電極部79は、ベルト本体71の全周に亘って設けられる第一の電極層76と、第一の電極層76における接合部75との交差部分に対してベルト本体71の幅方向において異なる位置であり、且つ接合部75とは交差しない位置に少なくとも一部が設けられる第二の電極層77とを含んでいる。
【0022】
接合部75は、上述のように搬送ベルト23の周方向に対して斜めに形成されるため、接合部75の両端の位置がベルト本体71の周方向においてずれた状態となっている。これに対し、本実施形態では、第一の電極層76がベルト本体71の一方の側部に形成されており、第二の電極層77がベルト本体71の他方の側部に形成されている。すなわち、第一の電極層76及び第二の電極層77がベルト本体71の両端部に配置されることで、互いが最も離間した状態となっている。これにより、第二の電極層77は、確実に接合部75と交差しない位置に形成されたものとなっている。
【0023】
ここで、ベルト本体71の形成方法について図3、4を参照しつつ説明する。
まず、図3に示すように、ベルト本体71を構成する基材73の両端部73a、73bを対向させ、両端部73a、73bの先端に隙間を設けた状態で配置する。なお、両端部73a、73bは、平面視した状態で基材73の幅方向に対して斜めになっている(図2参照)。
【0024】
続いて、上記基材73の外面70a側を第一の溶着部材75aを用いて溶着する。第一の溶着部材75aは、基材73と同様、PETから構成されている。具体的に本実施形態では、第一の溶着部材75aを基材73の両端部73a、73bに跨るようにして配置する。そして、第一の溶着部材75aの上から不図示の超音波加振装置に接続された超音波ホーン61を適当な圧力で基材73に押し付け、基材73と第一の溶着部材75aとを振動させることで摩擦熱を生じさせる。これにより図3(b)に示されるように、第一の溶着部材75aと基材73の両端部73a、73bとが融解、融合することで第一の溶着部材75aを介して基材73の両端部73a、73bが接合される。すなわち、第一の溶着部材75aと基材73との境界部分は、それぞれが一体化した状態となる。
【0025】
続いて、図3(c)に示されるように、第一の溶着部材75aの上面を約10μm程度研磨することで第一の溶着部材75aと基材73とを面一にする。これにより基材73の外面70a側における溶着工程が終了となる。
【0026】
続いて、図4(a)に示されるように、基材73の内面70bを上方に向けて配置する。そして、第一の溶着部材75aと同様、PETからなる第二の溶着部材75bを基材73の両端部73a、73bに跨るようにして配置し、第二の溶着部材75bの上から不図示の超音波加振装置に接続された超音波ホーン61を適当な圧力で基材73に押し付け、基材73と第二の溶着部材75bとを振動させることで摩擦熱を生じさせる。これにより図4(b)に示されるように、第ニの溶着部材75bと基材73の両端部73a、73bとが融解、融合することで第ニの溶着部材75bを介して基材73の両端部が接続される。すなわち、第ニの溶着部材75bと基材73との境界部分は、それぞれが一体化した状態となる。また、第二の溶着部材75bは第一の溶着部材75aと一体化する。
【0027】
続いて、図4(c)に示されるように、第ニの溶着部材75bの上面を約10μm程度研磨することで第ニの溶着部材75bと基材73とを面一にする。これにより両端部73a、73bが接合部75を介して接合されてなるベルト本体71を形成することができる。
【0028】
図5は図2におけるA−A´線矢視による中間転写ベルト70の側断面構造を示す図である。図5に示すように、中間転写ベルト70は、上述のように製造されたベルト本体71の外面70a上にアルミ等の導電層15が設けられ、その表面に半導電層(塗料)16が形成された3層構造を有している。また、ベルト本体71の一方の側部には、第一の電極層76が設けられている。第一の電極層76は、その一部が半導電層16の表面まで延びるように形成されている。ベルト本体71の一方の側部には、一部半導電層16が塗布されない部分が全周に亘って帯状に形成され、露出した導電層15の表面に上記第一の電極層76が形成されている。この第一の電極層76に対し、第一の電極ローラ81が接触することで導電層15に対して転写バイアス電圧を印加できるようになっている。
【0029】
また、図示は省略するものの、ベルト本体71の他方の側部には、一部半導電層16が塗布されない部分が帯状に形成され、露出した導電層15の表面に第二の電極層77が設けられている。この第二の電極層77に対し、第二の電極ローラ82が接触することで導電層15に対して転写バイアス電圧を印加することができるようになっている。
【0030】
(現像装置)
次に、現像ユニット50の現像装置51、52、53、54について説明するが、これらは、ほぼ同一の構成であるため、以下、図6に基づき、イエロー現像装置54を代表的に説明する。
【0031】
図6に示すイエロー現像装置54は、イエロートナーであるトナーTを収容するハウジング540と、トナー担持体たる現像ローラ510と、この現像ローラ510にトナーTを供給するトナー供給ローラ550と、現像ローラ510に担持されたトナーTの層厚を規制するとともに、トナーTを規制時の摩擦によって帯電させる規制ブレード560とを有している。
【0032】
すなわち、イエロー現像装置54は、潜像を担持した感光体20に摩擦帯電により帯電されるため、キャリアが不要とされるトナーTを供給し、感光体20上に形成された潜像を可視画像化することが可能となっている。
【0033】
ハウジング540は、その内部空間として形成された収容部530内にトナーTを収容する。ハウジング540では、収容部530の下部に形成された開口およびその近傍において、トナー供給ローラ550および現像ローラ510が互いに圧接回転可能に支持されている。また、ハウジング540には、規制ブレード560が取り付けられていて、これが現像ローラ510に圧接されている。さらに、ハウジング540には、前記開口におけるハウジング540と現像ローラ510との間からのトナーの漏れを防止するためのシール部材520が取り付けられている。
【0034】
現像ローラ510は、外周部にトナーTを保持(担持)して、該保持されたトナーTを感光体20へ付与する、すなわち、保持されたトナーTを感光体20と対向する現像位置に搬送するものである。また、現像ローラ510は、軸線まわりに回転可能な円柱状物であり、本実施形態では、感光体20の回転方向と逆の方向に回転する。
【0035】
イエロー現像装置54は、現像時に、現像ローラ510と感光体20とが微小間隙をもって、非接触状態で対向する。そして、現像ローラ510と感光体20との間に交番電界を印加することにより、トナーTを現像ローラ510上から感光体20へ飛翔させて、感光体20上の潜像についての現像が行われる。
【0036】
トナー供給ローラ550は、収容部530に収容されたトナーTを現像ローラ510に供給する。このトナー供給ローラ550は、ポリウレタンフォーム等からなり、弾性変形された状態で現像ローラ510に圧接している。本実施形態では、トナー供給ローラ550は、現像ローラ510の回転方向と逆の方向に回転する。なお、トナー供給ローラ550は、収容部530に収容されたトナーTを現像ローラ510に供給する機能を有するだけでなく、現像後に現像ローラ510に残存しているトナーTを現像ローラ510から剥ぎ取る機能をも有している。
【0037】
規制ブレード560は、現像ローラ510に担持されたトナーTの層厚を規制するとともに、その規制時における摩擦帯電により、現像ローラ510に担持されたトナーTに電荷を付与する。この規制ブレード560は、現像ローラ510の回転方向にて現像位置の上流側のシール部材としても機能している。この規制ブレード560は、現像ローラ510の軸方向に沿って当接される当接部材としてのゴム部560aと、このゴム部560aを支持する支持部材としてのゴム支持部560bとを有している。ゴム部560aは、シリコンゴム、ウレタンゴム等を主材料として構成され、ゴム支持部560bは、ゴム部560aを現像ローラ510側に付勢する機能も有するため、リン青銅、ステンレス等のバネ性(弾性)を有するシート状の薄板が用いられる。ゴム支持部560bは、その一端がブレード支持板金562に固定されている。ブレード支持板金562は、ハウジング540に取り付けられ、シール部材520もハウジング540に取り付けられる。さらに現像ローラ510が取り付けられた状態で、ゴム部560aは、ゴム支持部560bの撓みによる弾性力によって、現像ローラ510に押しつけられている。
【0038】
また、本実施形態では、規制ブレード560の現像ローラ510側とは逆側には、ブレード裏部材570が設けられ、ゴム支持部560bとハウジング540との間にトナーTが入り込むことを防止するとともに、ゴム部560aを現像ローラ510へ押圧して、ゴム部560aを現像ローラ510に押しつけている。
本実施形態では、規制ブレード560の自由端部、すなわち、ブレード支持板金562に支持されている側とは逆側の端部は、その端縁で現像ローラ510に接触せずに、端縁から若干離れた部位で現像ローラ510に接触している。また、規制ブレード560は、その先端が現像ローラ510の回転方向の上流側に向くように配置されている。
【0039】
(プリンタの動作)
続いて、上記プリンタ10の動作を説明する。まず、図示しないホストコンピュータからの指令により、感光体20、現像ユニット50の各現像装置51、52、53、54に対応して設けられた上記現像ローラ510、および中間転写ベルト70が回転を開始する。そして、感光体20は、回転することによって帯電ユニット30により順次帯電される。
【0040】
このとき、プリンタ10は、中間転写ベルト70における第一の電極層76に対して第一の電極ローラ81を接触させる、或いは中間転写ベルト70における第ニの電極層77に対して第ニの電極ローラ82を接触させる。これにより、中間転写ベルト70には転写バイアス電圧が印加されるようになっている。
【0041】
ところで、ベルト本体71の外面70aに形成される導電層15、半導電層16、第一の電極層76、及び第二の電極層77は、塗布及び乾燥工程を順次行うことで積層されている。そのため、乾燥処理時の熱によって接合部75を構成している第一の溶着部材75a及び第二の溶着部材75bが変形してしまう。これにより、第一の電極層76は、接合部75との交差部分において盛り上がった状態又は凹んだ状態となる。すると、第一の電極層76と第一の電極ローラ81との接触具合が変化し、第一の電極層76を介して導電層15に対して転写バイアス電圧を安定して印加できなくなる可能性がある。
【0042】
そこで、本実施形態においては、プリンタ10は、第一の電極ローラ81の下方に接合部75が接近した場合、第二の電極ローラ82を第二の電極層77に接触させるようにしている。ここで、第二の電極層77は、図2に示したように第一の電極層76における接合部75との交差部分に対向する位置であって、且つ接合部75とは交差しない位置に形成されている。よって、プリンタ10は、第一の電極ローラ81と第一の電極層76との接触不良が生じる領域(接合部75との交差部分)では、第二の電極ローラ82を第二の電極層77に代わりに接触させることで導電層15に対して良好に転写バイアス電圧を印加することができる。
【0043】
感光体20上の帯電された領域は、感光体20の回転に伴って露光ユニット40と対向する露光位置に至り、露光ユニット40によって、第1色目、例えばイエローYの画像情報に応じた潜像が前記領域に形成される。
感光体20上に形成された潜像は、感光体20の回転に伴って現像位置に至り、イエロー現像装置54によってイエロートナーで現像される。これにより、感光体20上にイエロートナー像が形成される。なお、現像ユニット50は、イエロー現像装置54が、現像位置にて感光体20と対向している(図1参照)。
【0044】
感光体20上に形成されたイエロートナー像は、感光体20の回転に伴って一次転写位置に至り、一次転写ユニット60によって、中間転写ベルト70に転写される。具体的には、一次転写ユニット60には、トナーの帯電極性とは逆の極性の一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加されているため、該一時転写電圧によって感光体20上に形成されたイエロートナー像が中間転写ベルト70に吸着される。なお、この間、二次転写ユニット80は、中間転写ベルト70から離間している。
【0045】
前述の処理と同様の処理が、第2色目、第3色目および第4色目について繰り返して実行されることにより、各画像信号に対応した各色のトナー像が、中間転写ベルト70に重なり合って転写される。なお、上述のように中間転写ベルト70に転写バイアス電圧が安定して印加されるため、第2色目、第3色目および第4色目に関する各色のトナー像も濃度ムラの発生が防止されたものとなる。これにより、中間転写ベルト70上には、フルカラートナー像が形成される。
一方、記録媒体P1は、給紙トレイ92から、給紙ローラ94、レジローラ96によって二次転写ユニット80へ搬送される。
【0046】
中間転写ベルト70上に形成されたフルカラートナー像は、中間転写ベルト70の回転に伴って二次転写ユニット80が配置された二次転写位置に至り、二次転写ユニット80によって記録媒体P1に転写される。具体的には、二次転写ユニット80は、中間転写ベルト70に押圧されるとともに二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加されているので、該二次転写電圧によって中間転写ベルト70上に形成されたフルカラートナー像が、中間転写ベルト70および二次転写ユニット80の間に介在する記録媒体P1に吸着されて転写される。
【0047】
記録媒体P1に転写されたフルカラートナー像は、定着ユニット90によって加熱および加圧されて記録媒体P1に融着される。
一方、感光体20は、一次転写位置を経過した後に、クリーニングユニット74のクリーニングブレード78によって、その表面に付着しているトナーが掻き落とされ、次の潜像を形成するための帯電に備える。掻き落とされたトナーは、クリーニングユニット74内の残存トナー回収部(図示しない)に回収される。
以上述べたように本実施形態に係るプリンタ10によれば、上述のように転写バイアス電圧を良好に印加可能な中間転写ベルト70を備えることで、記録媒体P1に対して高品質の画像を転写可能な信頼性の高いものとなる。
【0048】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、接合部75が中間転写ベルト70の回転方向に対して、斜めになるようにベルト本体71に形成された場合について説明したが、図7に示すように接合部85を略蛇行形状としてもよい。具体的に接合部85は、第一の電極層76側に設けられ、ベルト本体71の幅方向に延びる第一の直線部85aと、該第一の直線部85aと平行に延び、且つ中間転写ベルト70の回転方向にずれた位置であって第二の電極層77側に設けられる第二の直線部85bと、これら第一、第二の直線部85a,85bの一方端(中間転写ベルト70の中央部側)を接続する接続部85cと、を備えている。このようにすれば、図7に示されるように、第一の電極層76における接合部85との交差部分に対してベルト本体71の幅方向において異なる領域であって接合部85とは交差しない領域に第ニの電極層77を簡便かつ確実に形成できる。
【符号の説明】
【0049】
10…プリンタ(画像形成装置)、70…中間転写ベルト、70a…外面、71…ベルト本体、73…基材、73a,73b…端部、75…接合部、76…第一の電極層、77…第二の電極層、79…電極部、85…接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に用いられる中間転写ベルトにおいて、
帯状の基材における両端部を溶着により接合した接合部を有するベルト本体と、
前記ベルト本体の外面の周方向に沿って設けられる電極部と、を有し、
前記電極部は、前記ベルト本体の全周に亘って設けられる第一の電極層と、前記第一の電極層における前記接合部との交差部分に対して前記ベルト本体の幅方向において異なる位置であり、且つ前記接合部とは交差しない位置に少なくとも一部が設けられる第二の電極層と、を含むことを特徴とする中間転写ベルト。
【請求項2】
前記第一の電極層が前記ベルト本体の一方の側部に沿って設けられ、前記第二の電極層が前記ベルト本体の他方の側部に沿って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の中間転写ベルト。
【請求項3】
前記接合部は、前記ベルト本体の幅方向に交差する方向に延在することを特徴とする請求項1又は2に記載の中間転写ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−169756(P2010−169756A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10068(P2009−10068)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】