説明

中間転写ユニットの梱包体

【課題】 組み立て作業においては容易に伸ばして長さ調節して締結ができ、且つ輸送中の衝撃等の荷重では延びて締結状態が緩むことがない中間転写ユニットの梱包体を提供する。
【解決手段】 トナー像を保持する中間転写ベルト10が少なくとも2本のローラに掛け渡されて移動する中間転写ユニット1と、中間転写ユニット1のローラ軸13、14と係合する係合部21、22をそれぞれ備える第1、第2の保護部材2a、2bと、第1、第2の保護部材の係合部をローラ軸に係合させた状態で第1、第2の保護部材の周囲を掛け渡して締結してローラ軸と係合部との係合状態を保持するように作用させる低伸縮性樹脂材料のバンド部材5とを備え、上記のバンド部材を用いて中間転写ユニットに第1、第2の保護部材を取り付けた状態で固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中間転写ユニットの梱包体に係り、画像形成装置本体に組み込まれた状態で、画像形成装置本体の機構部品との間で位置決めされる中間転写ユニットを輸送、保管する際の梱包体に関し、輸送中等に振動、衝撃が加わった時でも製品である中間転写ユニットが歪むことが防止できる梱包体である。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタ等の画像形成装置において、感光ドラム上に形成されたトナー像を中間転写ベルトに転写(1次転写)した後、この中間転写ベルトから記録媒体に転写(2次転写)するようにした、いわゆる中間転写方式を採用するものが知られている。
【0003】
ここで、このような中間転写方式の画像形成装置においては、中間転写ベルトとこれを駆動する駆動ローラ等を一体的にユニット化して組み立て性やメンテナンス性の向上を図った中間転写ユニットが広く利用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、中間転写ユニットのように、画像形成装置本体に組み込まれた状態で、画像形成装置本体の機構部品との間で位置決めされるような部品では、画像形成装置本体に倣って取り付けられることが最も重要であり、それ自体の剛性を高くすることができない場合がある。
【0005】
このため、中間転写ユニットを輸送させる場合などにおいては、振動・衝撃が加わったときでも、この中間転写ユニットが歪むことを防止するため、この中間転写ユニットをプラスチックなどの剛性を有する保護部材で補強し、その補強したものを段ボールパッドなどで固定して段ボール箱などに入れるようにしている。
【0006】
ここで、保護部材には、中間転写ユニットのローラ軸などと係合する係合穴が設けられており、この係合穴に中間転写ユニットのローラ軸を挿入して係合させて、両者を保持している。
【0007】
しかし、製品の小型化などから中間転写ユニットのローラ軸が短くなり、両者の係合の長さが短くなった場合、組み立てラインや輸送中等に両者の係合がはずれ、中間転写ユニットが落下して、中間転写ユニットの転写ベルトにキズをつけてしまうという問題が発生する。
【0008】
この対応策として、中間転写ユニットに保護部材を取り付けた後、強度の高いポリプロピレンのバンドとプラスチック製のストッパとを用い、その周囲に上記のバンドを掛け渡すと共に上記のストッパによりこれらを締結して固定させることが行われている。
【特許文献1】特開2007−86384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したポリプロピレンのバンドとプラスチック製のストッパを用いて、中間転写ユニットを保護部材とともに締結する方法では、ポリプロピレンのバンドは、その強度は高く、伸びも小さいため、緩みなく締結作業ができれば、非常に有効な手段である。
【0010】
しかし、ポリプロピレンのバンドをプラスチック製のストッパで緩みを小さく抑えて締結することは非常に困難である。例えば、中間転写ベルトを掛け渡した2つのローラの近傍でそれぞれバンドにより固定しようとすると、最初の箇所で力を入れすぎると、反対側のローラ部分の保護部材とローラ軸との係合がはずれ、製品である中間転写ユニットが脱落する危険性がある。また、締結作業の時間もかなり多くなり、コスト面での問題も内在している。
【0011】
一方、ポリプロピレンを熱溶着により締結することも考えられる。熱溶着方式を用いれば緩みを小さく抑えて締結することはできる。しかし、中間転写ユニットの転写ベルトの間近の作業では、転写ベルトへのキズや熱による影響など問題点も多く採用はできない。
【0012】
また、弾力性のあるゴム系の弾性材料からなるバンドを用いた場合、作業性は非常に優れているが、輸送中に衝撃が加わった時などは、このバンドが伸びてしまい、保護部材が外れてしまう虞がある。
【0013】
この発明は、中間転写ユニットに保護部材を取り付けた状態で、これらをバンド部材により適切に締結することができ、輸送中の衝撃等の荷重では締結状態が緩むことがない中間転写ユニットの梱包体を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明においては、上記のような課題を解決するために、トナー像を保持する無端ベルト状の像保持部材が少なくとも2本のローラに掛け渡されて移動する中間転写ユニットと、前記中間転写ユニットの前記ローラの直交する方向に配置され前記ローラのローラ軸と係合する係合部をそれぞれ備える第1、第2の剛性保護部材と、前記第1、第2の剛性保護部材の係合部を前記ローラ軸に係合させた状態で前記第1、第2の剛性保護部材の周囲を掛け渡して締結して前記ローラ軸と係合部との係合状態を保持するように作用させる低伸縮性樹脂材料のバンド部材とを備え、前記バンド部材を用いて中間転写ユニットに第1、第2の剛性保護部材を取り付けた状態で固定した。
【0015】
ここで、この発明における中間転写ユニット梱包体においては、前記第1または第2の剛性保護部材に係止用突起を設け、前記バンド部材の両端部に前記係止用突起に係止される係止孔を設けることができる。
【0016】
また、この発明における中間転写ユニット梱包体において、前記第1及び第2の剛性保護部材に、前記バンド部材が案内される凹部を設けることが好ましい。
【0017】
さらに、この発明における記載の中間転写ユニットの梱包体において、前記バンド部材としては、JIS K6922−2に準拠して測定した引張応力が9Mpa以上15MPa以下の樹脂ベルトを用いることが好ましい。
【0018】
また、前記樹脂ベルトとしては、低密度ポリエチレンで構成されて、その厚みは0.2mm〜1.0mmの範囲のものを用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明は、上記のように低伸縮性樹脂材料のバンド部材を用いることで、組み立て作業においては、バンド部材を容易に伸ばして長さ調節を行って締結することができる。そして、輸送中に衝撃荷重が加わった場合にも伸びて締結が緩むことがなく製品の脱落を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
【0021】
図1及び図2は、この発明に用いられる中間転写ユニット1を示す斜視図である。図1に示すように、中間転写ユニット1は、画像形成装置(図示せず)内に設けられた各感光体(図示せず)に形成されたトナー像が順々に転写されて保持する無端の中間転写ベルト10を備える。
【0022】
この中間転写ユニット1は、中間転写ベルト10を駆動する駆動ローラ等を一体的にユニット化されており、中間転写ベルト10は、少なくとも2本のローラに掛け渡されている。中間転写ベルト10に転写されたトナー像は画像形成装置の転写部で記録用紙に転写され、トナー像が転写された記録用紙は定着ユニットで定着された後、画像形成装置から排紙される。
【0023】
図1に示すように、中間転写ベルト10の一端(図中右側)にはガイド板11が設けられ、他端(図中左側)にはカバー12が設けられ、このカバー12内に回収ローラ15とそれに当接するブラシ16が配置されている(図2参照)。
【0024】
この中間転写ベルト10の左右両側に位置するローラの各ローラ軸13、14は中間転写ユニット1から外側に所定の長さで延出している。このローラ軸13、14が、図3に示す保護部材2に設けられた係合穴(係合部)21、22に係合する。
【0025】
図3はこの発明に用いられる中間転写ユニット1の保護部材2を示す斜視図である。この保護部材2は、輸送中に振動・衝撃が加わったときでも中間転写ユニット1が歪むことを防止するもので、プラスチックなどの剛性を有する部材で構成されている。この実施形態では、プラスチックで保護部材2を形成し、中間転写ユニット1のローラ軸13、14と直交する端面、すなわち、中間転写ユニット1の側面側に第1、第2の保護部材2a、2bを取り付けて中間転写ユニット1を保護する。
【0026】
第1、第2の保護部材2a、2bには、中間転写ユニット1のローラ軸13、14と係合する係合穴21、22がそれぞれ設けられている。この実施形態においては、中間転写ユニット1のローラ軸13はコンパクト設計のためローラ軸14に比べて短くなっている。このため、係合穴21が設けられているボス部21aは、係合穴22が設けられているボス部22aより小さくその穴の深さも浅くなっている。
【0027】
図4に示すように、中間転写ユニット1のローラ軸13、14を第1、第2の保護部材2a、2bの係合穴21a、22aに挿入して係合させて、両者を保持する。
【0028】
そして、この実施形態においては、組み立てラインや輸送中等に両者の係合がはずれ、製品が落下することを防止するために、図6に示すように、中間転写ユニット1に保護部材2a、2bを取り付けた後、中間転写ユニット1を保護部材2a、2bとともにその周囲に低伸縮性樹脂材料からなるバンド部材5を掛け渡して締結して固定する。
【0029】
第1及び第2の保護部材2a、2bには、バンド部材5が案内される凹部23が設けられている。この凹部23の幅は、バンド部材5の幅より少し広く、深さはバンド部材5の厚みと同程度に形成されている。この実施形態においては、バンド部材5として、幅16mm、厚さが0.2〜1.0mmのものを用いるので、凹部23の幅は、16mmより少し広く形成され、深さは1mm程度にしている。
【0030】
さらに、この実施形態においては、第1の保護部材2aにL字状に突出した係止用突起24が設けられている。
【0031】
また、上記のバンド部材5は、低伸縮性樹脂材料で構成され、組み立て作業においては少し伸ばして長さを調節ができ、輸送中に衝撃荷重が加わった場合には、伸びて締結が緩むことがない程度の材料を使用して梱包の作業性向上と締結品質の向上を図っている。
【0032】
この実施形態においては、上記のような特性を有するバンド部材5として、低密度ポリエチレンで構成された樹脂バンドを用いている。ここで、低密度ポリエチレン構成された樹脂バンドとしては、JIS K6922−2に準拠して測定した引張応力が9Mpa以上15MPa以下のものを用いた。
【0033】
また、バンド部材5の厚みは0.2mm〜1.0mmの範囲のものを用いればよい。ここで、厚みが0.5mm、幅16mmの低密度ポリエチレンシートを2枚重ねて強度テストしたデータでは、作用時間30〜50msec、衝撃値2.5kgの衝撃による伸びは殆どなかった。また、静荷重3.5kgで30分放置した場合、4mm(約1%)伸びた。また、長さ700mmのベルトを30mm伸ばした後の残留変形量は4mm(約0.6%)であり、作業性、輸送品質に優れていることが確認できた。
【0034】
また、上記のバンド部材5においては、図5に示すように、その両端部に保護部材2aに設けた係止用突起24に係止される係止孔51が設けられている。
【0035】
ここで、この係止孔51、51間の距離Lは、組み立て作業時に伸ばした状態でバンド部材51が取り付けられるように、中間転写ユニット1に保護部材2a、2bを取り付けたときの合計の横幅Wと高さH(図4参照)の2倍以下になるようにその長さが調整されている。
【0036】
そして、この係止孔51を上記した係止用突起24に引っかけると、係止用突起24がL字状に形成されているので、係止用突起24から意識的に係止孔51を外す方向にバンド部材51を引っ張らない限り、両者は外れない。
【0037】
そして、この実施形態においては、図6に示すように、中間転写ユニット1の両側に保護部材2a、2bを取り付けた後、係止用突起24にバンド部材5の一端の係止孔51を引っかけ、凹部23に沿って中間転写ユニット1を保護部材2a、2bと一緒にしてその周囲にバンド部材5を掛け渡し、引っ張りながら他端の係止孔51を係止用突起24に引っかけることにより、締結固定させている。
【0038】
このように、低伸縮性樹脂材料のバンド部材5を用いることで、組み立て作業においては、バンド部材5を容易に伸ばして長さ調節ができ、輸送中に衝撃荷重が加わった場合には伸びて締結が緩むことがなく製品の脱落を防止することができる。
【0039】
また、第1及び第2の保護部材2a、2bに、バンド部材5が案内される凹部23を設けることで、組み立て作業時のバンド部材5の周囲に掛け渡すときの案内になると共に、バンド部材5を締結した後は、凹部23によりバンド部材5のずれを防止することができる。
【0040】
また、前記ボス部21a、22aの端面は中間転写ユニット1に保護部材2a、2bを取り付けた際に中間転写ユニット1の軸の根元またはその近傍と当接するように構成している。この実施形態では、ボス部21aと中間転写ユニット1が当接する近傍をバンド部材5で締結するように構成し、バンド部材5で締結した際の変形等を防いでいる。
【0041】
また、この実施形態においては、突出長さが短いローラ軸13の方だけにバンド部材5を掛け渡して締結する構成にしているが、突出長さが長いローラ軸14の方の近傍にもバンド部材5を掛け渡して締結し、2箇所をバンド部材5で締結するように構成しても良い。
【0042】
なお、上記の実施形態では、バンド部材5として、低密度ポリエチレンで構成された樹脂バンドを用いたが、これに限らず、低伸縮性の樹脂材料であれば良く、同様の引っ張り応力のナイロンなどで構成された樹脂バンドも用いることもできる。
【0043】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の実施形態に用いられる中間転写ユニットを示す斜視図である。
【図2】上記の実施形態に用いられる中間転写ユニットを示す斜視図である。
【図3】上記の実施形態に用いられる中間転写ユニットの保護部材を示す斜視図である。
【図4】上記の実施形態において、中間転写ユニットに保護部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】上記の実施形態に用いられるバンド部材を示す平面図である。
【図6】上記の実施形態における中間転写ユニットの梱包体の状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 中間転写ユニット
2a 第1の保護部材
2b 第2の保護部材
5 バンド部材
51 係止孔
10 中間転写ベルト
12 カバー
13、14 ローラ軸
15 回収ローラ
16 ブラシ
21、22 係合穴(係合部)
21a、22a ボス部
23 凹部
24 係止用突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を保持する無端ベルト状の像保持部材が少なくとも2本のローラに掛け渡されて移動する中間転写ユニットと、前記中間転写ユニットの前記ローラの直交する方向に配置され前記ローラのローラ軸と係合する係合部をそれぞれ備える第1、第2の剛性保護部材と、前記第1、第2の剛性保護部材の係合部を前記ローラ軸に係合させた状態で前記第1、第2の剛性保護部材の周囲を掛け渡して締結して前記ローラ軸と係合部との係合状態を保持するように作用させる低伸縮性樹脂材料のバンド部材とを備え、前記バンド部材を用いて中間転写ユニットに第1、第2の剛性保護部材を取り付けた状態で固定したことを特徴とする中間転写ユニットの梱包体。
【請求項2】
請求項1に記載の中間転写ユニット梱包体において、前記第1又は第2の剛性保護部材に係止用突起が設けられ、前記バンド部材の両端部に前記係止用突起に係止される係止孔が設けられていることを特徴とする中間転写ユニットの梱包体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の中間転写ユニット梱包体において、前記第1及び第2の剛性保護部材に、前記バンド部材が案内される凹部が設けられていることを特徴とする中間転写ユニットの梱包体。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の中間転写ユニットの梱包体において、前記バンド部材は、JIS K6922−2に準拠して測定した引張応力が9Mpa以上15MPa以下の樹脂ベルトで形成したことを特徴とする中間転写ユニットの梱包体。
【請求項5】
請求項4に記載の中間転写ユニットの梱包体において、前記樹脂ベルトは、低密度ポリエチレンで構成されて、その厚みは0.2mm〜1.0mmの範囲であることを特徴とする中間転写ユニットの梱包体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−152023(P2010−152023A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328969(P2008−328969)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】