説明

主磁極の周りに設けられたシールドを有する垂直磁気記録用磁気ヘッド

【課題】2つのサイドシールドにおける磁気的欠陥の発生を抑制すると共に、2つのサイドシールドの形状を容易に決定する。
【解決手段】磁気ヘッドは、主磁極12と、媒体対向面において主磁極12の端面の周りを囲むように配置された端面を有するシールドを備えている。シールドは、下部シールド13Aと2つのサイドシールド13B,13Cと上部シールドを含んでいる。磁気ヘッドの製造方法では、下部シールド13Aの上面上に、フォトリソグラフィによって形状が決定され後に除去される型を形成する。次に、シード層を形成することなくめっきを行って、下部シールド13Aの上面上に2つのサイドシールド13B,13Cを形成する。次に、型を除去した後、第1のギャップ層27、主磁極12、第2のギャップ層、上部シールドを順に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式によって記録媒体に情報を記録するために用いられる垂直磁気記録用磁気ヘッドに関し、特に、主磁極の周りに設けられたシールドを有する垂直磁気記録用磁気ヘッドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置における記録方式には、信号磁化の向きを記録媒体の面内方向(長手方向)とする長手磁気記録方式と、信号磁化の向きを記録媒体の面に対して垂直な方向とする垂直磁気記録方式とがある。垂直磁気記録方式は、長手磁気記録方式に比べて、記録媒体の熱揺らぎの影響を受けにくく、高い線記録密度を実現することが可能であると言われている。
【0003】
一般的に、垂直磁気記録用の磁気ヘッドとしては、長手磁気記録用の磁気ヘッドと同様に、読み出し用の磁気抵抗効果素子(以下、MR(Magnetoresistive)素子とも記す。)を有する再生ヘッドと、書き込み用の誘導型電磁変換素子を有する記録ヘッドとを、基板上に積層した構造のものが用いられる。記録ヘッドは、記録媒体の面に対して垂直な方向の磁界を発生する主磁極を備えている。主磁極は、例えば、一端部が記録媒体に対向する媒体対向面に配置されたトラック幅規定部と、このトラック幅規定部の他端部に連結され、トラック幅規定部よりも大きな幅を有する幅広部とを有している。トラック幅規定部は、ほぼ一定の幅を有している。垂直磁気記録方式の記録ヘッドには、高記録密度化のために、トラック幅の縮小と、記録特性、例えば重ね書きの性能を表わすオーバーライト特性の向上が求められる。
【0004】
ところで、ハードディスク装置等の磁気ディスク装置に用いられる磁気ヘッドは、一般的に、スライダに設けられる。スライダは、上記媒体対向面を有している。この媒体対向面は、空気流入端と空気流出端とを有している。そして、空気流入端から媒体対向面と記録媒体との間に流入する空気流によって、スライダは記録媒体の表面からわずかに浮上するようになっている。このスライダにおいて、一般的に、磁気ヘッドは媒体対向面における空気流出端近傍に配置される。磁気ディスク装置において、磁気ヘッドの位置決めは、例えばロータリーアクチュエータによって行なわれる。この場合、磁気ヘッドは、ロータリーアクチュエータの回転中心を中心とした円軌道に沿って記録媒体上を移動する。このような磁気ディスク装置では、磁気ヘッドのトラック横断方向の位置に応じて、スキューと呼ばれる、円形のトラックの接線に対する磁気ヘッドの傾きが生じる。
【0005】
特に、長手磁気記録方式に比べて記録媒体への書き込み能力が高い垂直磁気記録方式の磁気ディスク装置では、上述のスキューが生じると、あるトラックへの信号の記録時に、記録対象のトラックに隣接する1以上のトラックに記録された信号が消去されたり減衰したりする現象(以下、隣接トラック消去と言う。)が生じる場合がある。高記録密度化のためには、隣接トラック消去の発生を抑制する必要がある。
【0006】
上述のようなスキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制する技術としては、例えば、特許文献1や、特許文献2に記載されているように、媒体対向面における主磁極の端面の幅を、基板の上面に近づくに従って小さくする技術が知られている。
【0007】
スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制する他の技術としては、特許文献1に記載されているように、主磁極のトラック幅方向の両側に2つのサイドシールドを設ける技術が有効である。また、特許文献2に記載されているように、媒体対向面において主磁極の端面の周りを囲むように配置された端面を有するシールド(以下、ラップアラウンドシールドと言う。)を設ける技術も有効である。ラップアラウンドシールドは、主磁極に対して空気流入端側に配置された下部シールドと、主磁極に対して空気流出端側に配置された上部シールドと、主磁極のトラック幅方向の両側に配置された2つのサイドシールドとを含んでいる。これらの技術によれば、主磁極の端面より発生されてトラック幅方向に広がる磁束を取り込むことができることから、隣接トラック消去の発生を抑制することができる。
【0008】
また、特許文献3には、主磁極の形状を以下のような形状とする技術が開示されている。この技術による主磁極は、媒体対向面から所定の距離だけ離れた位置から媒体対向面までの第1の領域において互いに反対側に配置された第1および第2の側面と、第1の領域以外の第2の領域に配置された第3および第4の側面と、第1の領域と第2の領域との境界位置に配置され、第1の側面と第3の側面とを接続する第5の側面と、第1の領域と第2の領域との境界位置に配置され、第2の側面と第4の側面とを接続する第6の側面とを有している。トラック幅方向についての第1の側面と第2の側面の間隔は、基板の上面に近づくに従って小さくなっている。第1の領域と第2の領域との境界位置において、最も基板の上面に近い位置におけるトラック幅方向についての第3の側面と第4の側面の間隔は、最も基板の上面に近い位置におけるトラック幅方向についての第1の側面と第2の側面の間隔よりも大きい。第5の側面の幅と第6の側面の幅は、いずれも、基板の上面に近づくに従って大きくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−207419号公報
【特許文献2】米国特許第6,954,340B2号明細書
【特許文献3】特開2009−243350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、主磁極と2つのサイドシールドの形成方法について考える。主磁極と2つのサイドシールドの形成方法には、大きく分けて、主磁極の形成後に2つのサイドシールドを形成する方法と、2つのサイドシールドの形成後に主磁極を形成する方法とがある。
【0011】
主磁極の形成後に2つのサイドシールドを形成する方法としては、例えば、以下のような方法がある。この方法では、まず、主磁極と、主磁極を収容する非磁性層とを形成する。次に、非磁性層の一部をエッチングして、非磁性層に、2つのサイドシールドを収容するための2つの溝部を形成する。次に、例えばめっき法によって、2つの溝部内に収容されるように2つのサイドシールドを形成する。めっき法によって2つのサイドシールドを形成する場合には、めっきを行う前に、シード層を形成する。以下、この方法を、第1の方法と言う。
【0012】
2つのサイドシールドの形成後に主磁極を形成する方法としては、例えば、特許文献1に記載されている方法がある。この方法では、まず、例えばめっき法によって、後に2つのサイドシールドとなるシールド層を形成する。次に、このシールド層の一部をエッチングして、シールド層を貫通するトレンチを形成する。これにより、シールド層は2つのサイドシールドになる。次に、トレンチ内に収容されるように主磁極を形成する。以下、この方法を第2の方法と言う。
【0013】
第1の方法において、めっき法によって2つのサイドシールドを形成する場合には、以下のような問題が発生する。この場合、シード層は、2つの溝部の底部および壁面に沿って形成される。めっき膜は、シード層の表面から成長する。このめっき膜中には、溝部の底部に沿ったシード層の部分から成長しためっき膜の部分と、溝部の壁面に沿ったシード層の部分から成長しためっき膜の部分とが合わさることによって2つの部分の繋ぎ目が形成される。この繋ぎ目は、大きな結晶粒界である。この繋ぎ目には不純物が偏析しやすい。そのため、繋ぎ目は、めっき膜中の他の部分に比べて磁気的特性が劣った磁気的欠陥になりやすい。めっき膜すなわちサイドシールド内において、上記の磁気的欠陥の近傍では、磁束が乱れたり磁化の方向が固定されたりしやすく、それに起因して、サイドシールドにおいて局所的に大きな磁界が発生し、その結果、隣接トラック消去が発生するおそれがある。
【0014】
また、第1の方法では、エッチングによって形成された溝部の底部上に、エッチングの際の反応生成物や被エッチング材料に起因したエッチング残渣が残る場合がある。このエッチング残渣の上にシード層を形成すると、エッチング残渣の上の部分においてシード層に突起が発生する。めっき膜すなわちサイドシールド内において、上記のシード層の突起の近傍では、前述の繋ぎ目による磁気的欠陥と同様に、磁束が乱れたり磁化の方向が固定されたりしやすい。従って、めっき膜内の上記のシード層の突起の近傍の部分も、磁気的欠陥と言える。そして、この磁気的欠陥に起因して、サイドシールドにおいて局所的に大きな磁界が発生し、その結果、隣接トラック消去が発生するおそれがある。
【0015】
また、第1の方法では、エッチングによって、2つのサイドシールドを収容するための2つの溝部を形成する。これにより、2つのサイドシールドの形状が決定される。一般的に、エッチングを用いて層をパターニングする場合には、フォトリソグラフィのみを用いて層をパターニングする場合に比べて、多くの工程および時間を要する。そのため、第1の方法では、2つのサイドシールドの形状を決定するために多くの工程と時間が必要になり、磁気ヘッドの製造コストが高くなるという問題がある。
【0016】
第2の方法では、エッチングによって2つのサイドシールドの形状を決定する。従って、第2の方法でも、2つのサイドシールドの形状を決定するために多くの工程と時間が必要になり、磁気ヘッドの製造コストが高くなるという問題点がある。
【0017】
一方、媒体対向面における端面の幅が基板の上面に近づくに従って小さくなる形状の主磁極に関しては、以下のような問題点がある。従来の主磁極の形成方法では、上記の形状の主磁極を形成すると、主磁極の側面の大部分が、主磁極の全周にわたって、基板の上面に垂直な方向に対して傾いた面となる。このような形状の主磁極では、主磁極の側面全体が基板の上面に対して垂直な場合に比べて、磁束の流れる方向に対して垂直な主磁極の断面積が小さくなる。この形状の主磁極では、特にトラック幅規定部と幅広部との境界の近傍の部分において多くの磁束を通過させることができなくなり、その結果、オーバーライト特性等の記録特性が低下してしまう。
【0018】
上記の問題点に対しては、前述の特許文献3に開示された技術が有効である。この技術によれば、トラック幅規定部と幅広部との境界の近傍の部分において、磁束の流れる方向に対して垂直な主磁極の断面積が大きくなるため、多くの磁束を通過させることができる。これにより、オーバーライト特性等の記録特性を向上させることができる。
【0019】
しかし、ラップアラウンドシールドと上記の形状の主磁極とを有する磁気ヘッドを製造する場合、従来の製造方法では、2つのサイドシールドと主磁極の形状を決定するために多くの工程と時間が必要になり、磁気ヘッドの製造コストが高くなるという問題点がある。
【0020】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、主磁極の周りに設けられたシールドを有する垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法であって、シールドのうちの2つのサイドシールドにおける磁気的欠陥の発生を抑制できると共に、2つのサイドシールドの形状を容易に決定できるようにした垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法を提供することにある。
【0021】
本発明の第2の目的は、隣接トラック消去の発生の抑制と記録特性の向上を両立できる主磁極と、主磁極の周りに設けられたシールドとを有する垂直磁気記録用磁気ヘッドであって、シールドのうちの2つのサイドシールドにおける磁気的欠陥の発生を抑制できると共に、主磁極と2つのサイドシールドの形状を容易に決定できるようにした垂直磁気記録用磁気ヘッドおよびその製造方法を提供することにある。
【0022】
本発明の第3の目的は、主磁極の周りに設けられたシールドを有する垂直磁気記録用磁気ヘッドであって、シールドのうちの2つのサイドシールドにおける磁気的欠陥の発生を抑制できると共に、主磁極と2つのサイドシールドの形状を容易に決定でき、且つ主磁極から2つのサイドシールドへの磁束の漏れを抑制することができるようにした垂直磁気記録用磁気ヘッドおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の製造方法によって製造される垂直磁気記録用磁気ヘッドは、
記録媒体に対向する媒体対向面と、
記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生するコイルと、
媒体対向面に配置された端面を有し、コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
磁性材料よりなり、媒体対向面において主磁極の端面の周りを囲むように配置された端面を有するシールドと、
非磁性材料よりなり、主磁極とシールドとの間に設けられたギャップ部とを備えている。
【0024】
シールドは、下部シールドと、第1および第2のサイドシールドと、上部シールドとを含んでいる。下部シールドは、媒体対向面において主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された端面と、上面とを有している。第1および第2のサイドシールドは、媒体対向面において主磁極の端面に対してトラック幅方向の両側に配置された2つの端面を有している。上部シールドは、媒体対向面において主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された端面を有している。ギャップ部は、主磁極と下部シールドとの間ならびに主磁極と第1および第2のサイドシールドとの間に配置された第1のギャップ層と、主磁極と上部シールドとの間に配置された第2のギャップ層とを含んでいる。
【0025】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法は、
下部シールドを形成する工程と、
下部シールドの上面上であって、後に第1および第2のサイドシールドが形成される領域を除く領域に、フォトリソグラフィによって形状が決定され後に除去される型を形成する工程と、
型の形成後、シード層を形成することなくめっきを行って、下部シールドの上面上に第1および第2のサイドシールドを形成する工程と、
第1および第2のサイドシールドの形成後、型を除去する工程と、
型の除去後、第1のギャップ層を形成する工程と、
第1のギャップ層の形成後、主磁極を形成する工程と、
主磁極の形成後、第2のギャップ層を形成する工程と、
第2のギャップ層の形成後、上部シールドを形成する工程と、
コイルを形成する工程とを備えている。
【0026】
本発明の磁気ヘッドの製造方法において、主磁極は、下部シールドの上面からより遠い上面と、主磁極の上面とは反対側の下端と、第1ないし第6の側面とを有していてもよい。主磁極の端面のトラック幅方向の幅は、主磁極の下端に近づくに従って小さくなっている。第1および第2の側面は、媒体対向面から50〜500nmの範囲内の距離だけ離れた位置から媒体対向面までの第1の領域において互いに反対側に配置されている。第3および第4の側面は、第1の領域以外の第2の領域に配置されている。第5の側面は、第1の領域と第2の領域との境界位置に配置され、第1の側面と第3の側面とを接続している。第6の側面は、第1の領域と第2の領域との境界位置に配置され、第2の側面と第4の側面とを接続している。
【0027】
トラック幅方向についての第1の側面と第2の側面の間隔は、主磁極の下端に近づくに従って小さくなっている。第1の領域と第2の領域との境界位置において、最も主磁極の下端に近い位置におけるトラック幅方向についての第3の側面と第4の側面の間隔は、最も主磁極の下端に近い位置におけるトラック幅方向についての第1の側面と第2の側面の間隔よりも大きい。第5の側面の幅と第6の側面の幅は、いずれも、主磁極の下端に近づくに従って大きくなっている。第1のサイドシールドは、それぞれ主磁極の第1および第3の側面に対向する2つの壁面を有している。第2のサイドシールドは、それぞれ主磁極の第2および第4の側面に対向する2つの壁面を有している。
【0028】
本発明の磁気ヘッドの製造方法において、下部シールドを形成する工程は、第1層を形成する工程と、第1層の上ならびに第1層の周囲に第2層を形成する工程とを含み、第1および第2のサイドシールドを形成する工程は、第2層をシード層として用いてめっきを行って第1および第2のサイドシールドを形成してもよい。この場合、磁気ヘッドの製造方法は、更に、型を除去する工程と第1のギャップ層を形成する工程との間において、エッチングによって、第2層のうち第1層の上に位置する部分以外の部分を除去するエッチング工程を備えていてもよい。そして、エッチング工程において、第1および第2のサイドシールドの各々の一部がエッチングされて、主磁極の第3の側面に対向する第1のサイドシールドの壁面と、主磁極の第4の側面に対向する第2のサイドシールドの壁面とが形成されてもよい。
【0029】
また、本発明の磁気ヘッドの製造方法において、型を形成する工程は、
ポジ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングすることによって、下部シールドの上面上であって、後に第1および第2のサイドシールドが形成される領域に、第1のレジスト層を形成する工程と、
第1のレジスト層を覆うように、分離膜を形成する工程と、
ネガ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングすることによって、分離膜の上に、後に型となる第2のレジスト層を形成する工程と、
下部シールドの上面上に第2のレジスト層が残って型となるように、第1のレジスト層と分離膜を除去する工程とを含んでいてもよい。
【0030】
また、本発明の磁気ヘッドの製造方法において、主磁極を形成する工程は、
後に主磁極となる磁性層を形成する工程と、
第1および第2のサイドシールド、第1のギャップ層および磁性層を覆うように、非磁性材料よりなる非磁性層を形成する工程と、
第1および第2のサイドシールドおよび磁性層が露出するまで非磁性層を研磨する工程とを含んでいてもよい。
【0031】
主磁極を形成する工程が上記の複数の工程を含む場合、研磨前の非磁性層は、第1および第2のサイドシールドおよび磁性層の上方に位置する凸面部分と、第1および第2のサイドシールドの周辺に位置して凸面部分よりも低い周辺部分とを含む上面を有していてもよい。この場合、主磁極を形成する工程は、更に、研磨前の非磁性層の上に研磨停止層を形成する工程と、研磨停止層の上に、後に研磨される被研磨層を形成する工程とを含み、非磁性層を研磨する工程は、研磨停止層のうち、非磁性層の上面の周辺部分の上方に位置する部分が露出するまで、被研磨層、研磨停止層および非磁性層を研磨してもよい。
【0032】
また、研磨後の非磁性層は、媒体対向面から離れた位置で、第1および第2のサイドシールドと主磁極との間に配置された第1および第2の部分を有していてもよい。
【0033】
また、主磁極は、下部シールドの上面からより遠い上面と、主磁極の上面とは反対側の下端と、第1および第2の側部とを有していてもよい。第1のサイドシールドは、主磁極の第1の側部に対向する第1の側壁を有し、第2のサイドシールドは、主磁極の第2の側部に対向する第2の側壁を有していてもよい。第1の側部は、媒体対向面から所定の距離だけ離れた第1の位置において、第1の角が形成されるように屈曲していてもよい。第2の側部は、媒体対向面から前記所定の距離だけ離れた第2の位置において、第2の角が形成されるように屈曲していてもよい。そして、第1の位置を始点として、媒体対向面から離れるに従って、トラック幅方向についての第1の側部と第1の側壁の間隔が徐々に大きくなっていてもよい。また、第2の位置を始点として、媒体対向面から離れるに従って、トラック幅方向についての第2の側部と第2の側壁の間隔が徐々に大きくなっていてもよい。前記非磁性層の第1の部分は、第1の位置に対して媒体対向面から遠い位置において第1の側部と第1の側壁との間に配置され、前記非磁性層の第2の部分は、第2の位置に対して媒体対向面から遠い位置において第2の側部と第2の側壁との間に配置されていてもよい。
【0034】
また、本発明の磁気ヘッドの製造方法において、主磁極は、媒体対向面に配置された第1の端縁とその反対側の第2の端縁とを有する第1の部分と、第1の部分よりも媒体対向面から遠い位置に配置され、第2の端縁において第1の部分に接続された第2の部分とを含む上面を有していてもよい。第1の部分における任意の位置の下部シールドの上面からの距離は、任意の位置が媒体対向面に近づくに従って小さくなっている。この場合、主磁極を形成する工程は、後に主磁極となる磁性層を形成する工程と、主磁極の上面における第1の部分が形成されるように、磁性層の一部をエッチングする工程を備えていてもよい。
【0035】
本発明の第1および第2の垂直磁気記録用磁気ヘッドは、
記録媒体に対向する媒体対向面と、
記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生するコイルと、
媒体対向面に配置された端面を有し、コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
磁性材料よりなり、媒体対向面において主磁極の端面の周りを囲むように配置された端面を有するシールドと、
非磁性材料よりなり、主磁極とシールドとの間に設けられたギャップ部とを備えている。
【0036】
シールドは、下部シールドと、第1および第2のサイドシールドと、上部シールドとを含んでいる。下部シールドは、媒体対向面において主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された端面と、上面とを有している。第1および第2のサイドシールドは、媒体対向面において主磁極の端面に対してトラック幅方向の両側に配置された2つの端面を有している。上部シールドは、媒体対向面において主磁極の端面に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された端面を有している。ギャップ部は、主磁極と下部シールドの間ならびに主磁極と第1および第2のサイドシールドとの間に配置された第1のギャップ層と、主磁極と上部シールドとの間に配置された第2のギャップ層とを含んでいる。
【0037】
本発明の第1の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、主磁極は、下部シールドの上面からより遠い上面と、主磁極の上面とは反対側の下端と、第1ないし第6の側面とを有している。主磁極の端面のトラック幅方向の幅は、主磁極の下端に近づくに従って小さくなっている。第1および第2の側面は、媒体対向面から50〜500nmの範囲内の距離だけ離れた位置から媒体対向面までの第1の領域において互いに反対側に配置されている。第3および第4の側面は、第1の領域以外の第2の領域に配置されている。第5の側面は、第1の領域と第2の領域との境界位置に配置され、第1の側面と第3の側面とを接続している。第6の側面は、第1の領域と第2の領域との境界位置に配置され、第2の側面と第4の側面とを接続している。
【0038】
トラック幅方向についての第1の側面と第2の側面の間隔は、主磁極の下端に近づくに従って小さくなっている。第1の領域と第2の領域との境界位置において、最も主磁極の下端に近い位置におけるトラック幅方向についての第3の側面と第4の側面の間隔は、最も主磁極の下端に近い位置におけるトラック幅方向についての第1の側面と第2の側面の間隔よりも大きい。第5の側面の幅と第6の側面の幅は、いずれも、主磁極の下端に近づくに従って大きくなっている。第1のサイドシールドは、それぞれ主磁極の第1および第3の側面に対向する2つの壁面を有している。第2のサイドシールドは、それぞれ主磁極の第2および第4の側面に対向する2つの壁面を有している。
【0039】
また、本発明の第1の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、主磁極の上面は、媒体対向面に配置された第1の端縁とその反対側の第2の端縁とを有する第1の部分と、第1の部分よりも媒体対向面から遠い位置に配置され、第2の端縁において第1の部分に接続された第2の部分とを含んでいる。第1の部分における任意の位置の下部シールドの上面からの距離は、任意の位置が媒体対向面に近づくに従って小さくなっている。
【0040】
本発明の第2の垂直磁気記録用磁気ヘッドにおいて、主磁極は、下部シールドの上面からより遠い上面と、主磁極の上面とは反対側の下端と、第1および第2の側部とを有している。第1のサイドシールドは、主磁極の第1の側部に対向する第1の側壁を有している。第2のサイドシールドは、主磁極の第2の側部に対向する第2の側壁を有している。第1の側部は、媒体対向面から所定の距離だけ離れた第1の位置において、第1の角が形成されるように屈曲している。第2の側部は、媒体対向面から前記所定の距離だけ離れた第2の位置において、第2の角が形成されるように屈曲している。第1の位置を始点として、媒体対向面から離れるに従って、トラック幅方向についての第1の側部と第1の側壁の間隔が徐々に大きくなっている。また、第2の位置を始点として、媒体対向面から離れるに従って、トラック幅方向についての第2の側部と第2の側壁の間隔が徐々に大きくなっている。
【0041】
本発明の第2の垂直磁気記録用磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなる非磁性層を備え、非磁性層は、第1の位置に対して媒体対向面から遠い位置において第1の側部と第1の側壁との間に配置された第1の部分と、第2の位置に対して媒体対向面から遠い位置において第2の側部と第2の側壁との間に配置された第2の部分とを有していてもよい。
【発明の効果】
【0042】
本発明の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法では、下部シールドの上面上であって、後に第1および第2のサイドシールドが形成される領域を除く領域に、フォトリソグラフィによって形状が決定され後に除去される型を形成した後、シード層を形成することなくめっきを行って、下部シールドの上面上に第1および第2のサイドシールドを形成する。本発明によれば、エッチングされていない下部シールドの上面上に第1および第2のサイドシールドを形成することから、第1および第2のサイドシールドにおける磁気的欠陥の発生を抑制することができるという効果を奏する。また、本発明では、フォトリソグラフィによって形状が決定された型によって、第1および第2のサイドシールドの形状が決定されることから、第1および第2のサイドシールドの形状を容易に決定することができるという効果を奏する。
【0043】
本発明の第1の磁気ヘッドでは、主磁極は、下部シールドの上面からより遠い上面と、主磁極の上面とは反対側の下端と、前述のように規定された第1ないし第6の側面とを有している。第1のサイドシールドは、それぞれ主磁極の第1および第3の側面に対向する2つ壁面を有し、第2のサイドシールドは、それぞれ主磁極の第2および第4の側面に対向する2つの壁面を有している。本発明の第1の磁気ヘッドは、型の形成後、シード層を形成することなくめっきを行って、下部シールドの上面上に第1および第2のサイドシールドを形成し、その後、第1のギャップ層および主磁極を形成するという、本発明の磁気ヘッドの製造方法によって製造することができる。従って、本発明によれば、隣接トラック消去の発生の抑制と記録特性の向上を両立できる主磁極と、主磁極の周りに設けられたシールドとを有し、シールドのうちの2つのサイドシールドにおける磁気的欠陥の発生を抑制できると共に、主磁極と2つのサイドシールドの形状を容易に決定することの可能な垂直磁気記録用磁気ヘッドを実現することができるという効果を奏する。
【0044】
本発明の第1の磁気ヘッドは、特に、以下のような本発明の磁気ヘッドの製造方法の一態様によって製造することができる。この一態様では、下部シールドを形成する工程は、第1層を形成する工程と、第1層の上ならびに第1層の周囲に第2層を形成する工程とを含み、第1および第2のサイドシールドを形成する工程は、第2層をシード層として用いてめっきを行って第1および第2のサイドシールドを形成する。一態様は、更に、型を除去する工程と第1のギャップ層を形成する工程との間において、エッチングによって、第2層のうち第1層の上に位置する部分以外の部分を除去するエッチング工程を備えている。そして、エッチング工程において、第1および第2のサイドシールドの各々の一部がエッチングされて、主磁極の第3の側面に対向する第1のサイドシールドの壁面と、主磁極の第4の側面に対向する第2のサイドシールドの壁面とが形成される。この磁気ヘッドの製造方法の一態様によれば、隣接トラック消去の発生の抑制と記録特性の向上を両立できる主磁極と、主磁極の周りに設けられたシールドとを有し、シールドのうちの2つのサイドシールドにおける磁気的欠陥の発生を抑制できると共に、主磁極と2つのサイドシールドの形状を容易に決定することの可能な垂直磁気記録用磁気ヘッドを実現することができるという効果を奏する。
【0045】
本発明の第2の磁気ヘッドでは、第1のサイドシールドの第1の側部は、第1の位置において、第1の角が形成されるように屈曲し、第2のサイドシールドの第2の側部は、第2の位置において、第2の角が形成されるように屈曲している。そして、第1の位置を始点として、媒体対向面から離れるに従って、トラック幅方向についての第1の側部と第1の側壁の間隔が徐々に大きくなっている。また、第2の位置を始点として、媒体対向面から離れるに従って、トラック幅方向についての第2の側部と第2の側壁の間隔が徐々に大きくなっている。これにより、主磁極から第1および第2のサイドシールドへの磁束の漏れを抑制することができ、その結果、磁気ヘッドの記録特性を向上させることができる。本発明の第2の磁気ヘッドは、型の形成後、シード層を形成することなくめっきを行って、下部シールドの上面上に第1および第2のサイドシールドを形成し、その後、第1のギャップ層および主磁極を形成するという、本発明の磁気ヘッドの製造方法によって製造することができる。従って、本発明によれば、主磁極と、主磁極の周りに設けられたシールドとを有し、シールドのうちの2つのサイドシールドにおける磁気的欠陥の発生を抑制できると共に、主磁極と2つのサイドシールドの形状を容易に決定することが可能で、且つ主磁極から2つのサイドシールドへの磁束の漏れを抑制することが可能な垂直磁気記録用磁気ヘッドを実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極、2つのサイドシールドおよび下部シールドの媒体対向面の近傍の部分を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態における主磁極の媒体対向面の近傍の部分を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態における主磁極および2つのサイドシールドの媒体対向面の近傍の部分を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態における主磁極および2つのサイドシールドの媒体対向面に配置された端面を示す正面図である。
【図5】図3の5−5線で示す位置における主磁極および2つのサイドシールドの断面を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る磁気ヘッドの構成を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法における一工程を示す説明図である。
【図9】図8に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図10】図9に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図11】図10に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図12】図11に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図13】図12に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図14】図13に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図15】図14に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図16】図15に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図17】図16に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図18】図17に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図19】図18に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図20】図19に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図21】図20に示した工程に続く工程を示す斜視図である。
【図22】図21に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図23】図22に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図24】図23に示した工程の変形例を示す断面図である。
【図25】図23に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図26】本発明の一実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法における2つのサイドシールドとなるめっき膜の成長方向を示す斜視図である。
【図27】比較例の磁気ヘッドの製造方法における一工程を示す断面図である。
【図28】図27に示した工程に続く工程を示す断面図である。
【図29】図28に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図30】図29に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【図31】図30に示した工程に続く工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1ないし図7を参照して、本発明の一実施の形態に係る磁気ヘッドの構成について説明する。本実施の形態に係る磁気ヘッドは、垂直磁気記録用の磁気ヘッドである。図1は本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける主磁極、2つのサイドシールドおよび下部シールドの媒体対向面の近傍の部分を示す斜視図である。図2は、本実施の形態における主磁極の媒体対向面の近傍の部分を示す斜視図である。図3は、本実施の形態における主磁極および2つのサイドシールドの媒体対向面の近傍の部分を示す平面図である。図4は、本実施の形態における主磁極および2つのサイドシールドの媒体対向面に配置された端面を示す正面図である。図5は、図3の5−5線で示す位置における主磁極および2つのサイドシールドの断面を示す断面図である。図6は本実施の形態に係る磁気ヘッドの構成を示す断面図である。図7は本実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。図1ないし図5において記号TWで示す矢印は、トラック幅方向を表している。図6は媒体対向面および基板の上面に垂直な断面を示している。また、図6において記号Tで示す矢印は、記録媒体の進行方向を表している。
【0048】
図6および図7に示したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al23・TiC)等のセラミック材料よりなる基板1と、この基板1の上に配置されたアルミナ(Al23)等の絶縁材料よりなる絶縁層2と、この絶縁層2の上に配置された磁性材料よりなる下部再生シールド層3と、この下部再生シールド層3の上に配置された絶縁膜である下部再生シールドギャップ膜4と、この下部再生シールドギャップ膜4の上に配置された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子5と、このMR素子5の上に配置された絶縁膜である上部再生シールドギャップ膜6と、この上部再生シールドギャップ膜6の上に配置された磁性材料よりなる上部再生シールド層7とを備えている。
【0049】
MR素子5の一端部は、記録媒体に対向する媒体対向面30に配置されている。MR素子5には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。
【0050】
下部再生シールド層3から上部再生シールド層7までの部分は、再生ヘッドを構成する。磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、上部再生シールド層7の上に配置された非磁性層8と、非磁性層8の上に配置された記録ヘッドとを備えている。非磁性層8は、例えばアルミナによって形成されている。記録ヘッドは、第1のコイル11と、第2のコイル18と、主磁極12と、シールド13と、ギャップ部とを備えている。
【0051】
第1のコイル11と第2のコイル18は、いずれも平面渦巻き形状をなしている。また、第1のコイル11と第2のコイル18は、直列または並列に接続されている。図6において、符号11aは、第1のコイル11のうち、第2のコイル18に接続される接続部を示し、符号18aは、第2のコイル18のうち、第1のコイル11に接続される接続部を示している。磁気ヘッドは、更に、それぞれ導電材料よりなり、接続部11aの上に順に積層された接続層51,52,53,54を備えている。接続部18aは、接続層54の上に配置されている。
【0052】
第1のコイル11および第2のコイル18は、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。主磁極12は、媒体対向面30に配置された端面を有し、コイル11,18によって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。
【0053】
シールド13は、媒体対向面30において主磁極12の端面の周りを囲むように配置された端面を有している。シールド13は、磁性材料によって形成されている。シールド13の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0054】
磁気ヘッドは、更に、主磁極12およびシールド13に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置された第1のリターンヨーク層21と、主磁極12およびシールド13に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置された第2のリターンヨーク層29と、媒体対向面30から離れた位置において主磁極12の上に配置された上部ヨーク層16とを備えている。第1および第2のリターンヨーク層21,29ならびに上部ヨーク層16は、いずれも磁性材料によって形成されている。これらの材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0055】
磁気ヘッドは、更に、主磁極12と第1のリターンヨーク層21とを磁気的に連結する連結層61,62と、上部ヨーク層16と第2のリターンヨーク層29とを磁気的に連結する連結層63,64と、シールド13と第2のリターンヨーク層29とを磁気的に連結する連結層65,66とを備えている。連結層61〜66は、いずれも磁性材料によって形成されている。これらの材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0056】
第1のリターンヨーク層21は、非磁性層8の上に配置されている。第1のリターンヨーク層21は、媒体対向面30において主磁極12の端面およびシールド13の端面に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置された端面を有している。磁気ヘッドは、更に、第1のリターンヨーク層21の周囲において非磁性層8の上に配置された絶縁材料よりなる図示しない絶縁層と、第1のリターンヨーク層21の上面の一部の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層22とを備えている。第1のリターンヨーク層21の周囲に配置された絶縁層と、絶縁層22は、例えばアルミナによって形成されている。第1のコイル11は、絶縁層22の上に配置されている。
【0057】
連結層61は、媒体対向面30から離れた位置において、第1のリターンヨーク層21の上に配置されている。コイル11は、連結層61を中心として巻回されている。
【0058】
磁気ヘッドは、更に、コイル11の巻線間および周囲ならびに連結層61の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層23と、絶縁層23および連結層61の周囲に配置された絶縁層24とを備えている。コイル11、連結層61および絶縁層23,24の上面は平坦化されている。絶縁層23は、例えばフォトレジストによって形成されている。絶縁層24は、例えばアルミナによって形成されている。コイル11は、銅等の導電材料によって形成されている。連結層62は、連結層61の上に配置されている。接続層51は、コイル11の接続部11aの上に配置されている。
【0059】
磁気ヘッドは、更に、接続層51および連結層62の周囲においてコイル11および絶縁層23,24の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層25を備えている。接続層51、連結層62および絶縁層25の上面は平坦化されている。絶縁層25は、例えばアルミナによって形成されている。
【0060】
シールド13は、磁気的に連結された下部シールド13A、第1のサイドシールド13B、第2のサイドシールド13Cおよび上部シールド13Dを有している。第1および第2のサイドシールド13B,13Cは、主磁極12のトラック幅方向TWの両側に配置されている。下部シールド13Aは、第1および第2のサイドシールド13B,13Cに対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置されている。上部シールド13Dは、第1および第2のサイドシールド13B,13Cに対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置されている。
【0061】
下部シールド13Aは、媒体対向面30において主磁極12の端面に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置された端面と、基板1の上面からより遠い上面とを有している。第1および第2のサイドシールド13B,13Cは、媒体対向面30において主磁極12の端面に対してトラック幅方向TWの両側に配置された2つの端面を有している。上部シールド13Dは、媒体対向面30において主磁極12の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置された端面を有している。図2に示したように、主磁極12は、下部シールド13Aの上面からより遠い上面12Tと、主磁極12の上面12Tとは反対側の下端12Lと、第1の側部SP1と、第2の側部SP2とを有している。第1のサイドシールド13Bは、主磁極12の第1の側部SP1に対向する第1の側壁SW1を有している。第2のサイドシールド13Cは、主磁極12の第2の側部SP2に対向する第2の側壁SW2を有している。
【0062】
ギャップ部は、非磁性材料よりなり、主磁極12とシールド13との間に設けられている。ギャップ部は、主磁極12と下部シールド13Aおよびサイドシールド13B,13Cとの間に配置された第1のギャップ層27と、主磁極12と上部シールド13Dとの間に配置された第2のギャップ層14とを含んでいる。
【0063】
下部シールド13Aは、絶縁層25の上に配置されている。第1および第2のサイドシールド13B,13Cは、下部シールド13Aの上に配置され、下部シールド13Aの上面に接している。第1のギャップ層27は、第1および第2のサイドシールド13B,13Cの側壁SW1,SW2、下部シールド13Aの上面および絶縁層25の上面に沿って配置されている。第1のギャップ層27は、非磁性材料によって形成されている。第1のギャップ層27を構成する非磁性材料は、絶縁材料でもよいし、非磁性金属材料でもよい。第1のギャップ層27を構成する絶縁材料としては、例えばアルミナが用いられる。第1のギャップ層27を構成する非磁性金属材料としては、例えばRuが用いられる。第1のギャップ層27の厚みは、例えば40〜100nmの範囲内である。
【0064】
磁気ヘッドは、更に、第1のギャップ層27の表面に沿って配置されたシード層28を備えている。シード層28は、金属材料によって形成されている。シード層28を構成する金属材料は、非磁性金属材料でもよいし、金属磁性材料でもよい。シード層28を構成する非磁性金属材料としては、例えばRuが用いられる。シード層28を構成する金属磁性材料としては、例えば、NiFe、CoNiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。シード層28は、主磁極12をめっき法で形成する際に電極およびシード層として用いられる。シード層28の厚みは、例えば40〜60nmの範囲内である。第1のギャップ層27およびシード層28には、接続層51の上面を露出させる開口部と、連結層62の上面を露出させる開口部とが形成されている。接続層52は、接続層51の上に配置されている。
【0065】
主磁極12は、下部シールド13Aおよび絶縁層25の上面と主磁極12との間に第1のギャップ層27およびシード層28が介在するように、下部シールド13Aおよび絶縁層25の上に配置されている。また、図1および図4に示したように、主磁極12と第1および第2のサイドシールド13B,13Cとの間にも、第1のギャップ層27およびシード層28が介在している。
【0066】
主磁極12の下端12Lは、連結層62の上面に接している。主磁極12は、金属磁性材料によって形成されている。主磁極12の材料としては、例えば、NiFe、CoNiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
【0067】
主磁極12の下端12Lは、媒体対向面30に配置された第1の端縁とその反対側の第2の端縁とを有する第1の部分12L1と、この第1の部分12L1よりも媒体対向面30から遠い位置に配置され、第2の端縁において第1の部分12L1に接続された第2の部分12L2とを含んでいる。第1の部分12L1の少なくとも一部における任意の位置の基板1の上面からの距離は、この任意の位置が媒体対向面30に近づくに従って大きくなっている。図2には、第1の部分12L1の全体における任意の位置の基板1の上面からの距離が、この任意の位置が媒体対向面30に近づくに従って大きくなる例を示している。第1の部分12L1は、図2に示したように、2つの面が交わってできるエッジでもよいし、2つの面を連結する面でもよい。第2の部分12L2は、実質的に媒体対向面30に垂直な方向に延在する面になっている。第1の部分12L1は、第1のギャップ層27およびシード層28を介して、下部シールド13Aに対向している。下部シールド13Aのうち、第1の部分12L1の少なくとも一部に対向する部分の厚み(基板1の上面に垂直な方向の寸法)は、媒体対向面30に近づくに従って大きくなっている。
【0068】
主磁極12の上面12Tは、媒体対向面30に配置された第1の端縁とその反対側の第2の端縁とを有する第1の部分12T1と、この第1の部分12T1よりも媒体対向面30から遠い位置に配置され、第2の端縁において第1の部分12T1に接続された第2の部分12T2とを含んでいる。第1の部分12T1における任意の位置の基板1の上面からの距離は、この任意の位置が媒体対向面30に近づくに従って小さくなっている。第2の部分12T2は、実質的に媒体対向面30に垂直な方向に延在している。
【0069】
磁気ヘッドは、更に、主磁極12、下部シールド13A、サイドシールド13B,13Cおよび接続層52の周囲に配置された非磁性材料よりなる非磁性層26を備えている。本実施の形態では、特に、非磁性層26は、アルミナ等の非磁性絶縁材料よりなる。
【0070】
磁気ヘッドは、更に、主磁極12の上面12Tのうち第2の部分12T2の一部の上に配置された非磁性金属材料よりなる非磁性金属層58と、この非磁性金属層58の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層59とを備えている。非磁性金属層58は、例えばRu、NiCrまたはNiCuによって形成されている。絶縁層59は、例えばアルミナによって形成されている。
【0071】
第2のギャップ層14は、主磁極12の上面12Tのうちの第1の部分12T1と、非磁性金属層58および絶縁層59を覆うように配置されている。第2のギャップ層14は、非磁性材料によって形成されている。第2のギャップ層14の材料は、アルミナ等の非磁性絶縁材料でもよいし、Ru、NiCu、Ta、W、NiB、NiP等の非磁性導電材料でもよい。
【0072】
上部シールド13Dは、サイドシールド13B,13Cおよび第2のギャップ層14の上に配置され、サイドシールド13B,13Cおよび第2のギャップ層14の上面に接している。媒体対向面30において、上部シールド13Dの端面の一部は、主磁極12の端面に対して、第2のギャップ層14の厚みによる所定の間隔を開けて配置されている。第2のギャップ層14の厚みは、5〜60nmの範囲内であることが好ましく、例えば30〜60nmの範囲内である。主磁極12の端面は、第2のギャップ層14に隣接する辺を有し、この辺はトラック幅を規定している。
【0073】
上部ヨーク層16は、媒体対向面30から離れた位置において主磁極12の上に配置されている。接続層53は接続層52の上に配置されている。磁気ヘッドは、更に、上部シールド13D、上部ヨーク層16および接続層53の周囲に配置された非磁性層46を備えている。非磁性層46は、例えば無機絶縁材料によって形成されている。この無機絶縁材料としては、例えばアルミナまたはシリコン酸化物が用いられる。上部シールド13D、上部ヨーク層16、接続層53および非磁性層46の上面は平坦化されている。
【0074】
連結層65は、上部シールド13Dの上に配置され、上部シールド13Dの上面に接している。連結層65は、媒体対向面30により近い端面を有し、この端面は媒体対向面30から離れた位置に配置されている。連結層63は上部ヨーク層16の上に配置されている。接続層54は接続層53の上に配置されている。
【0075】
磁気ヘッドは、更に、接続層54および連結層63,65の周囲に配置された非磁性層47を備えている。非磁性層47の一部は、連結層65の媒体対向面30により近い端面を覆っている。非磁性層47は、例えば無機絶縁材料によって形成されている。この無機絶縁材料としては、例えばアルミナまたはシリコン酸化物が用いられる。接続層54、連結層63,65および非磁性層47の上面は平坦化されている。
【0076】
磁気ヘッドは、更に、非磁性層47の上面の一部の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層17を備えている。絶縁層17は、例えばアルミナによって形成されている。第2のコイル18は、絶縁層17の上に配置されている。
【0077】
連結層66は連結層65の上に配置されている。連結層66は、媒体対向面30により近い端面を有し、この端面は媒体対向面30から離れた位置に配置されている。連結層64は連結層63の上に配置されている。第2のコイル18は、連結層64を中心として巻回されている。第2のコイル18の接続部18aは、接続層54の上に配置されている。
【0078】
磁気ヘッドは、更に、コイル18の巻線間および周囲ならびに連結層64の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層19と、絶縁層19および連結層64,66の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層41とを備えている。絶縁層41の一部は、連結層66の媒体対向面30により近い端面を覆っている。コイル18、連結層64,66および絶縁層19,41の上面は平坦化されている。磁気ヘッドは、更に、コイル18および絶縁層19を覆うように配置された絶縁層20を備えている。絶縁層19は、例えばフォトレジストによって形成されている。絶縁層20,41は、例えばアルミナによって形成されている。コイル18は、銅等の導電材料によって形成されている。
【0079】
第2のリターンヨーク層29は、連結層66と連結層64とを連結するように配置されている。第2のリターンヨーク層29は、媒体対向面30により近い端面を有し、この端面は媒体対向面30から離れた位置に配置されている。
【0080】
磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、第2のリターンヨーク層29を覆うように配置された保護層42を備えている。保護層42は、例えば、アルミナ等の無機絶縁材料によって形成されている。
【0081】
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面30と再生ヘッドと記録ヘッドとを備えている。再生ヘッドと記録ヘッドは、基板1の上に積層されている。再生ヘッドは記録媒体の進行方向Tの後側(スライダにおける空気流入端側)に配置され、記録ヘッドは記録媒体の進行方向Tの前側(スライダにおける空気流出端側)に配置されている。
【0082】
再生ヘッドは、再生素子としてのMR素子5と、媒体対向面30側の一部がMR素子5を挟んで対向するように配置された、MR素子5をシールドするための下部再生シールド層3および上部再生シールド層7と、MR素子5と下部再生シールド層3との間に配置された下部再生シールドギャップ膜4と、MR素子5と上部再生シールド層7との間に配置された上部再生シールドギャップ膜6とを備えている。
【0083】
記録ヘッドは、第1のコイル11と、第2のコイル18と、主磁極12と、シールド13と、ギャップ部と、上部ヨーク層16と、第1のリターンヨーク層21と、第2のリターンヨーク層29とを備えている。
【0084】
第1のリターンヨーク層21は、媒体対向面30から離れた位置において、連結層61,62を介して主磁極12に接続されている。第2のリターンヨーク層29は、媒体対向面30から離れた位置において、上部ヨーク層16および連結層63,64を介して主磁極12に接続されている。第1のコイル11の一部は、主磁極12、第1のリターンヨーク層21および連結層61,62によって囲まれた空間を通過している。第2のコイル18の一部は、主磁極12、上部ヨーク層16、第2のリターンヨーク層29および連結層63,64,65,66によって囲まれた空間を通過している。
【0085】
シールド13は、主磁極12のトラック幅方向TWの両側に配置された第1および第2のサイドシールド13B,13Cと、第1および第2のサイドシールド13B,13Cに対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置された下部シールド13Aと、第1および第2のサイドシールド13B,13Cに対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置された上部シールド13Dとを有している。第1および第2のサイドシールド13B,13Cは、媒体対向面30の近傍において、主磁極12のトラック幅方向TWの中心に対して対称な位置に配置されている。
【0086】
下部シールド13Aは、媒体対向面30において主磁極12の端面の端面に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置された端面と、基板1の上面からより遠い上面とを有している。また、図1に示したように、下部シールド13Aは、第1層13A1と、第1層13A1の上に配置された第2層13A2とを有している。第1および第2のサイドシールド13B,13Cは、媒体対向面30において主磁極12の端面に対してトラック幅方向TWの両側に配置された2つの端面を有している。上部シールド13Dは、媒体対向面30において主磁極12の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置された端面を有している。媒体対向面30において、上部シールド13Dの端面の一部は、主磁極12の端面に対して、第2のギャップ層14の厚みによる所定の間隔を開けて配置されている。主磁極12の端面は、第2のギャップ層14に隣接する辺を有し、この辺はトラック幅を規定している。
【0087】
次に、主磁極12の形状について詳しく説明する。図2に示したように、主磁極12は、媒体対向面30に配置された端面とその反対側の端部とを有するトラック幅規定部12Aと、トラック幅規定部12Aの端部に接続された幅広部12Bとを含んでいる。また、主磁極12は、下部シールド13Aの上面からより遠い上面12Tと、主磁極12の上面12Tとは反対側の下端12Lと、第1および第2の側部SP1,SP2とを有している。第1の側部SP1は、第1の側面S1、第3の側面S3および第5の側面S5を含んでいる。第2の側部SP2は、第2の側面S2、第4の側面S4および第6の側面S6を含んでいる。幅広部12Bにおける上面12Tのトラック幅方向TWの幅は、トラック幅規定部12Aにおける上面12Tのトラック幅方向TWの幅よりも大きい。トラック幅規定部12Aにおける上面12Tのトラック幅方向TWの幅は、媒体対向面30からの距離によらずにほぼ一定である。幅広部12Bにおける上面12Tのトラック幅方向TWの幅は、例えば、トラック幅規定部12Aとの境界位置ではトラック幅規定部12Aにおける上面12Tのトラック幅方向TWの幅と等しく、媒体対向面30から離れるに従って、徐々に大きくなった後、一定の大きさになっている。ここで、媒体対向面30に垂直な方向についてのトラック幅規定部12Aの長さをネックハイトと呼ぶ。ネックハイトは、例えば0〜0.3μmの範囲内である。ネックハイトが0の場合は、トラック幅規定部12Aがなく、幅広部12Bの端面が媒体対向面30に配置される。
【0088】
図4に示したように、媒体対向面30に配置された主磁極12の端面すなわちトラック幅規定部12Aの端面は、第2のギャップ層14に隣接する第1の辺A1と、第1の辺A1の一端部に接続された第2の辺A2と、第1の辺A1の他端部に接続された第3の辺A3とを有している。第1の辺A1はトラック幅を規定する。主磁極12の端面すなわちトラック幅規定部12Aの端面のトラック幅方向TWの幅は、主磁極12の下端12Lに近づくに従って小さくなっている。また、第2の辺A2と第3の辺A3がそれぞれ基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度は、例えば7°〜17°の範囲内であり、10°〜15°の範囲内であることが好ましい。第1の辺A1の長さは、例えば0.05〜0.20μmの範囲内である。
【0089】
媒体対向面30に配置されたシード層28の端面は、第2のギャップ層14に隣接する2つの辺を有している。シード層28が金属磁性材料によって構成されている場合には、トラック幅は、第1の辺A1の長さと、シード層28の端面の上記2つの辺の長さとを合わせた長さと等しい。シード層28が非磁性金属材料によって構成されている場合には、トラック幅は、第1の辺A1の長さと等しい。
【0090】
本実施の形態において、スロートハイトは、媒体対向面30から見て主磁極12と上部シールド13Dとの間隔が大きくなり始める位置から媒体対向面30までの距離となる。本実施の形態では、スロートハイトは、非磁性金属層58の下面における媒体対向面30に最も近い端縁と媒体対向面30との間の距離と等しい。スロートハイトは、例えば0.05〜0.3μmの範囲内である。
【0091】
図2に示したように、主磁極12の下端12Lは、媒体対向面30に配置された第1の端縁とその反対側の第2の端縁とを有する第1の部分12L1と、この第1の部分12L1よりも媒体対向面30から遠い位置に配置され、第2の端縁において第1の部分12L1に接続された第2の部分12L2とを含んでいる。第1の部分12L1の少なくとも一部における任意の位置の基板1の上面からの距離は、この任意の位置が媒体対向面30に近づくに従って大きくなっている。第2の部分12L2は、実質的に媒体対向面30に垂直な方向に延在している。第1の部分12L1の少なくとも一部が媒体対向面30に垂直な方向に対してなす角度は、例えば12°〜45°の範囲内である。
【0092】
図1および図2に示したように、主磁極12の上面12Tは、媒体対向面30に配置された第1の端縁とその反対側の第2の端縁とを有する第1の部分12T1と、この第1の部分12T1よりも媒体対向面30から遠い位置に配置され、第2の端縁において第1の部分12T1に接続された第2の部分12T2とを含んでいる。第1の部分12T1における任意の位置の基板1の上面からの距離は、この任意の位置が媒体対向面30に近づくに従って小さくなっている。第2の部分12T2は、実質的に媒体対向面30に垂直な方向に延在している。第1の部分12T1が媒体対向面30に垂直な方向に対してなす角度は、例えば12°〜45°の範囲内である。なお、第1の部分12T1は、媒体対向面30に垂直な方向に対してなす角度が互いに異なる2つの平面部分を有していてもよい。
【0093】
なお、図2には、第1の部分12T1と第2の部分12T2との境界位置と媒体対向面30との間の距離と、第1の部分12L1と第2の部分12L2との境界位置と媒体対向面30との間の距離が、いずれも、トラック幅規定部12Aと幅広部12Bとの境界位置と媒体対向面30との間の距離すなわちネックハイトと等しい例を示している。しかし、第1の部分12T1と第2の部分12T2との境界位置と媒体対向面30との間の距離と、第1の部分12L1と第2の部分12L2との境界位置と媒体対向面30との間の距離は、それぞれ、ネックハイトよりも小さくてもよいし、大きくてもよい。
【0094】
また、図2に示したように、第1および第2の側面S1,S2は、媒体対向面30から所定の距離だけ離れた位置から媒体対向面30までの第1の領域R1において互いに反対側に配置されている。第3および第4の側面S3,S4は、第1の領域R1以外の第2の領域R2に配置されている。上記の所定の距離は、50〜500nmの範囲内であり、100〜200nmの範囲内であることが好ましい。第5の側面S5は、第1の領域R1と第2の領域R2との境界位置に配置され、第1の側面S1と第3の側面S3とを接続している。第6の側面S6は、第1の領域R1と第2の領域R2との境界位置に配置され、第2の側面S2と第4の側面S4とを接続している。
【0095】
トラック幅方向TWについての第1の側面S1と第2の側面S2の間隔は、主磁極12の下端12Lに近づくに従って小さくなっている。第1の領域R1と第2の領域R2との境界位置において、最も主磁極12の下端12Lに近い位置におけるトラック幅方向TWについての第3の側面S3と第4の側面S4の間隔は、最も主磁極12の下端12Lに近い位置におけるトラック幅方向TWについての第1の側面S1と第2の側面S2の間隔よりも大きい。第5の側面S5の幅と第6の側面S6の幅は、いずれも、主磁極12の下端12Lに近づくに従って大きくなっている。
【0096】
第1の側面S1の基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度θ1と、第2の側面S2の基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度θ2は、例えば7°〜17°の範囲内であり、10°〜15°の範囲内であることが好ましい。
【0097】
トラック幅方向TWについての第3の側面S3と第4の側面S4の間隔は、基板1の上面からの距離に関わらずに一定であってもよいし、基板1の上面に近づくに従って小さくなってもよいし、基板1の上面に近づくに従って大きくなってもよい。
【0098】
トラック幅方向TWについての第3の側面S3と第4の側面S4の間隔が、基板1の上面からの距離に関わらずに一定である場合には、第3の面S3の基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度と第4の側面S4の基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度は、いずれも0°である。
【0099】
トラック幅方向TWについての第3の側面S3と第4の側面S4の間隔が、基板1の上面に近づくに従って小さくなる場合には、第3の面S3の基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度は、第1の側面S1の基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度θ1よりも小さく、第4の側面S4の基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度は、第2の側面S2の基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度θ2よりも小さい。ここで、トラック幅方向TWについての側面S3,S4の間隔が基板1の上面に近づくに従って小さくなる場合には、側面S3,S4の各々が基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度を正の値で表し、トラック幅方向TWについての側面S3,S4の間隔が基板1の上面に近づくに従って大きく場合には、側面S3,S4の各々が基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度を負の値で表す。この場合、側面S3,S4の各々が基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度は、例えば−7°〜7°の範囲内であり、−7°〜0°の範囲内であることが好ましい。
【0100】
なお、図2には、第1の領域R1と第2の領域R2との境界位置と媒体対向面30との間の距離が、トラック幅規定部12Aと幅広部12Bとの境界位置と媒体対向面30との間の距離すなわちネックハイトと等しい例を示している。しかし、第1の領域R1と第2の領域R2との境界位置と媒体対向面30との間の距離は、ネックハイトよりも小さくてもよいし、大きくてもよい。また、本実施の形態では、ネックハイトが0の場合であっても、媒体対向面30から所定の距離だけ離れた位置に、第1の領域R1と第2の領域R2との境界が存在する。
【0101】
図1ないし図3に示したように、主磁極12の第1の側部SP1は、媒体対向面30から所定の距離SH(図3参照)だけ離れた第1の位置P1において、第1の角C1が形成されるように屈曲している。主磁極12の第2の側部SP2は、媒体対向面30から上記の距離SHだけ離れた第2の位置P2において、第2の角C2が形成されるように屈曲している。距離SHは、0.1〜0.5μmの範囲内であることが好ましく、0.1〜0.3μmの範囲内であることがより好ましい。
【0102】
第1のサイドシールド13Bの第1の側壁SW1は、主磁極12の第1の側面S1に対向する壁面13B1と、主磁極12の第3の側面S3に対向する壁面とを有している。第2のサイドシールド13Cの第2の側壁SW2は、主磁極12の第2の側面S2に対向する壁面13C1と、主磁極12の第4の側面S4に対向する壁面とを有している。壁面13B1,13C1は、互いに向き合っている。主磁極12の第3の側面S3に対向する第1のサイドシールド13Bの壁面と、主磁極12の第4の側面S4に対向する第2のサイドシールド13Cの壁面については、後で説明する。
【0103】
図1および図3に示したように、第1の位置P1を始点として、媒体対向面30から離れるに従って、トラック幅方向TWについての第1の側部SP1と第1の側壁SW1の間隔SWG1が徐々に大きくなっている。同様に、第2の位置P2を始点として、媒体対向面30から離れるに従って、トラック幅方向TWについての第2の側部SP2と第2の側壁SW2の間隔SWG2が徐々に大きくなっている。
【0104】
非磁性層26は、媒体対向面30から離れた位置で、サイドシールド13B,13Cと、主磁極12の幅広部12Bとの間に配置された第1および第2の部分26B,26Cを有している。第1の部分26Bは、第1の位置P1に対して媒体対向面30から遠い位置において第1の側部SP1と第1の側壁SW1との間に配置されている。第2の部分26Cは、第2の位置P2に対して媒体対向面30から遠い位置において第2の側部SP2と第2の側壁SW2との間に配置されている。位置P1,P2に対して媒体対向面30に近い位置では、第1の側部SP1と第1の側壁SW1との間、および第2の側部SP2と第2の側壁SW2との間には、第1のギャップ層27およびシード層28は存在しているが、非磁性層26は存在していない。位置P1に対して媒体対向面30から遠い位置では、第1の側部SP1と第1の側壁SW1との間に、第1のギャップ層27、シード層28および第1の部分26Bが存在している。位置P2に対して媒体対向面30から遠い位置では、第2の側部SP2と第2の側壁SW2との間に、第1のギャップ層27、シード層28および第2の部分26Cが存在している。媒体対向面30から離れるに従って、トラック幅方向TWについての第1および第2の部分26B,26Cの幅が徐々に大きくなっている。これにより、前述のように、それぞれ位置P1,P2を始点として、媒体対向面30から離れるに従って、間隔SWG1,SWG2が徐々に大きくなっている。2つの部分26B,26Cは、サイドシールド13B,13Cと主磁極12の幅広部12Bとを磁気的に分離する機能を有する。
【0105】
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの作用および効果について説明する。この磁気ヘッドでは、記録ヘッドによって記録媒体に情報を記録し、再生ヘッドによって、記録媒体に記録されている情報を再生する。記録ヘッドにおいて、コイル11,18は、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。コイル11によって発生された磁界に対応する磁束は、連結層61,62および主磁極12を通過する。コイル18によって発生された磁界に対応する磁束は、連結層64,63、上部ヨーク層16および主磁極12を通過する。従って、主磁極12は、コイル11によって発生された磁界に対応する磁束とコイル18によって発生された磁界に対応する磁束とを通過させる。
【0106】
なお、コイル11,18は、直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよい。いずれにしても、主磁極12において、コイル11によって発生された磁界に対応する磁束とコイル18によって発生された磁界に対応する磁束が同じ方向に流れるように、コイル11,18は接続される。
【0107】
主磁極12は、上述のようにコイル11,18によって発生された磁界に対応する磁束を通過させて、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。
【0108】
シールド13は、磁気ヘッドの外部から磁気ヘッドに印加された外乱磁界を取り込む。これにより、外乱磁界が主磁極12に集中して取り込まれることによって記録媒体に対して誤った記録が行なわれることを防止することができる。また、シールド13は、主磁極12の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを阻止する機能を有している。また、シールド13、第1のリターンヨーク層21および第2のリターンヨーク層29は、主磁極12の端面より発生されて、記録媒体を磁化した磁束を還流させる機能を有している。
【0109】
シールド13は、下部シールド13A、第1のサイドシールド13B、第2のサイドシールド13Cおよび上部シールド13Dを有している。下部シールド13Aは、媒体対向面30において主磁極12の端面に対して記録媒体の進行方向Tの後側に配置された端面を有している。第1および第2のサイドシールド13B,13Cは、媒体対向面30において主磁極12の端面に対してトラック幅方向TWの両側に配置された2つの端面を有している。上部シールド13Dは、媒体対向面30において主磁極12の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側に配置された端面を有している。従って、本実施の形態によれば、主磁極12の端面に対して記録媒体の進行方向Tの前側および後側ならびにトラック幅方向TWの両側において、主磁極12の端面より発生されて記録媒体の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体に達することを抑制することができる。これにより、本実施の形態によれば、隣接トラック消去の発生を抑制することができる。
【0110】
また、本実施の形態では、図4に示したように、媒体対向面30に配置された主磁極12の端面のトラック幅方向の幅は、基板1の上面に近づくに従って小さくなっている。これにより、本実施の形態によれば、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。
【0111】
また、本実施の形態では、主磁極12の下端12Lは、媒体対向面30に配置された第1の端縁とその反対側の第2の端縁とを有する第1の部分12L1と、この第1の部分12L1よりも媒体対向面30から遠い位置に配置され、第2の端縁において第1の部分12L1に接続された第2の部分12L2とを含んでいる。主磁極12の上面12Tは、媒体対向面30に配置された第1の端縁とその反対側の第2の端縁とを有する第1の部分12T1と、この第1の部分12T1よりも媒体対向面30から遠い位置に配置され、第2の端縁において第1の部分12T1に接続された第2の部分12T2とを含んでいる。第1の部分12L1の少なくとも一部における任意の位置の基板1の上面からの距離は、この任意の位置が媒体対向面30に近づくに従って大きくなっていると共に、第1の部分12T1における任意の位置の基板1の上面からの距離は、この任意の位置が媒体対向面30に近づくに従って小さくなっている。これにより、本実施の形態によれば、スキューに起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができ、且つ主磁極12によって多くの磁束を媒体対向面30まで導くことにより記録特性(オーバーライト特性)を向上させることができる。
【0112】
また、本実施の形態では、主磁極12は、第1ないし第6の側面S1〜S6を有している。第1および第2の側面S1,S2は、媒体対向面30から所定の距離だけ離れた位置から媒体対向面30までの第1の領域R1において互いに反対側に配置されている。第3および第4の側面S3,S4は、第1の領域R1以外の第2の領域R2に配置されている。第5の側面S5は、第1の領域R1と第2の領域R2との境界位置に配置され、第1の側面S1と第3の側面S3とを接続している。第6の側面S6は、第1の領域R1と第2の領域R2との境界位置に配置され、第2の側面S2と第4の側面S4とを接続している。トラック幅方向TWについての第1の側面S1と第2の側面S2の間隔は、主磁極12の下端12Lに近づくに従って小さくなっている。第1の領域R1と第2の領域R2との境界位置において、最も主磁極12の下端12Lに近い位置におけるトラック幅方向TWについての第3の側面S3と第4の側面S4の間隔は、最も主磁極12の下端12Lに近い位置におけるトラック幅方向TWについての第1の側面S1と第2の側面S2の間隔よりも大きい。第5の側面S5の幅と第6の側面S6の幅は、いずれも、主磁極12の下端12Lに近づくに従って大きくなっている。
【0113】
ここで、本実施の形態に対する比較例の磁気ヘッドとして、以下のような形状の主磁極を有する磁気ヘッドについて考える。この比較例における主磁極では、トラック幅方向についての第3の側面S3と第4の側面S4との間の距離は基板1の上面に近づくに従って小さくなり、且つ第3および第4の面S3,S4の基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度は、それぞれ角度θ1,θ2と等しい。この比較例における主磁極では、特にトラック幅規定部12Aと幅広部12Bとの境界の近傍の部分において多くの磁束を通過させることができなくなり、その結果、オーバーライト特性等の記録特性が低下してしまう。
【0114】
これに対し、本実施の形態における主磁極12では、比較例に比べて、トラック幅規定部12Aと幅広部12Bとの境界の近傍の部分において、磁束の流れる方向に対して垂直な主磁極12の断面積が大きくなる。そのため、本実施の形態における主磁極12では、比較例に比べて、トラック幅規定部12Aと幅広部12Bとの境界の近傍の部分において多くの磁束を通過させることができる。これにより、本実施の形態によれば、比較例に比べて、オーバーライト特性等の記録特性を向上させることができる。
【0115】
このように、本実施の形態における主磁極12によれば、隣接トラック消去の発生の抑制と記録特性の向上を両立することができる。
【0116】
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法について説明する。本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法では、まず、図6および図7に示したように、基板1の上に、絶縁層2、下部再生シールド層3、下部再生シールドギャップ膜4を順に形成する。次に、下部再生シールドギャップ膜4の上にMR素子5と、このMR素子5に接続される図示しないリードとを形成する。次に、MR素子5およびリードを、上部再生シールドギャップ膜6で覆う。次に、上部再生シールドギャップ膜6の上に上部再生シールド層7、非磁性層8を順に形成する。
【0117】
次に、例えばフレームめっき法によって、非磁性層8の上に第1のリターンヨーク層21を形成する。次に、積層体の上面全体の上に図示しない絶縁層を形成する。次に、例えば化学機械研磨(以下、CMPと記す。)によって、第1のリターンヨーク層21が露出するまで、絶縁層を研磨して、第1のリターンヨーク層21およびその周囲の絶縁層の上面を平坦化する。
【0118】
次に、第1のリターンヨーク層21およびその周囲の絶縁層の上面のうち、後にコイル11が配置される領域の上に絶縁層22を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、絶縁層22の上にコイル11を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、第1のリターンヨーク層21の上に連結層61を形成する。なお、連結層61を形成した後に、コイル11を形成してもよい。
【0119】
次に、コイル11の巻線間および周囲ならびに連結層61の周囲に絶縁層23を形成する。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層24を形成する。次に、例えばCMPによって、コイル11および連結層61が露出するまで絶縁層24を研磨して、コイル11、連結層61および絶縁層23,24の上面を平坦化する。
【0120】
次に、例えばフレームめっき法によって、連結層61の上に連結層62を形成し、コイル11の接続部11aの上に接続層51を形成する。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層25を形成する。次に、例えばCMPによって、接続層51および連結層62が露出するまで絶縁層25を研磨して、接続層51、連結層62および絶縁層25の上面を平坦化する。
【0121】
次に、図8ないし図25を参照して、上記の工程の後、上部シールド13D、上部ヨーク層16、接続層53および非磁性層46の形成までの一連の工程について説明する。図8ないし図25は、磁気ヘッドの製造過程における積層体を示している。図8ないし図20および図22における(a)は、それぞれ、積層体の一部の上面を示している。図8ないし図20および図22における(b)、図23および図25における(a)は、それぞれ、積層体における媒体対向面30が形成される予定の位置における断面を示している。図8および図22における(c)、図23および図25における(b)および図24は、それぞれ、媒体対向面30および基板1の上面に垂直な断面を表している。図15ないし図20における(c)は、それぞれ、媒体対向面30が形成される予定の位置に平行な断面を表している。図21は、積層体における媒体対向面30が形成される予定の位置の近傍の部分を示している。なお、図8ないし図25では、絶縁層25よりも基板1側の部分を省略している。また、図8ないし図25において、記号“ABS”は、媒体対向面30が形成される予定の位置を表している。
【0122】
図8は、接続層51、連結層62および絶縁層25の上面を平坦化した後の工程を示している。図8(c)は、図8(a)において、8C−8C線で示す位置における積層体の断面を示している。この工程では、まず、例えばフレームめっき法によって、後に下部シールド13Aの第1層13A1となる磁性層を形成する。次に、例えばイオンビームエッチングによって、磁性層の上面に、後に形成される主磁極12の下端12Lにおける第1の部分12L1に対向する部分が形成されるように、磁性層の一部をテーパーエッチングする。これにより、磁性層は第1層13A1となる。次に、例えばスパッタ法またはイオンビームデポジション法によって、第1層13A1の上ならびに第1層13A1の周囲すなわち絶縁層25上に、下部シールド13Aの第2層13A2を形成する。第2層13A2は、後に、めっき法によって下部シールド13Aの上面上にサイドシールド13B,13Cとなる磁性層を形成する際のシード層となる。また、後に、第2層13A2のうち、第1層13A1の上に位置する部分以外の部分は、エッチングによって除去される。下部シールド13Aは、第1層13A1と、エッチング後の第2層13A2によって構成される。以下の説明では、便宜上、第2層13A2のエッチング前においても、第1層13A1と第2層13A2の積層部分を下部シールド13Aと呼ぶ。
【0123】
次に、図9ないし図13に示した一連の工程によって、下部シールド13Aの上面上であって、後にサイドシールド13B,13Cが形成される領域を除く領域に、フォトリソグラフィによって形状が決定され後に除去される型を形成する。
【0124】
図9は、図8に示した工程に続く工程を示している。この工程では、ポジ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングすることによって、下部シールド13Aの上面上であって、後にサイドシールド13B,13Cが形成される領域に、第1のレジスト層31を形成する。第1のレジスト層31は、後に形成される第1のサイドシールド13Bの形状に対応した形状を有する部分31aと、後に形成される第2のサイドシールド13Cの形状に対応した形状を有する部分31bとを有している。より詳しく説明すると、この工程では、まず、積層体の上面全体の上にポジ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層を形成する。このフォトレジスト層は、その上面が後に形成される第1および第2のサイドシールド13B,13Cの上面よりも上方に配置されるように形成される。次に、フォトマスクを用いて、フォトレジスト層を選択的に露光する。このフォトマスクは、露光用の光を通過させる透光部と、露光用の光を遮断する遮光部とを有している。フォトマスクの遮光部は、後に形成される第1および第2のサイドシールド13B,13Cの平面形状に対応した形状を有する部分を含んでいる。次に、露光後のフォトレジスト層を現像する。露光後は、フォトレジスト層のうち、フォトマスクの透光部を通過した光が照射された部分は現像液に対して可溶性となり、他の部分は現像液に対して不溶性のままである。現像後に残ったフォトレジスト層が第1のレジスト層31となる。
【0125】
第1のレジスト層31の部分31a,31bは、後に形成されるサイドシールド13B,13Cの壁面13B1,13C1に対応する壁面31a1,31b1を有している。この工程では、壁面31a1,31b1が、それぞれ基板1の上面に垂直な方向に対して傾き、下部シールド13Aの上面に近づくに従って壁面31a1,31b1間の距離が小さくなるように、フォトレジスト層をパターニングする。このようなパターニングは、例えば、感度の低い下層と感度の高い上層からなるフォトレジスト層を用いることで実現することができる。壁面31a1,31b1の間には、後に型の一部が収容される空間が形成されている。
【0126】
図10は、次の工程を示す。この工程では、第1のレジスト層31を覆うように、非磁性材料よりなる分離膜32を形成する。分離膜32は、ポジ型のフォトレジストよりなる第1のレジスト層31と、後に形成されるネガ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層とが混合されることを防止するためのものである。分離膜32の厚みは、例えば5〜20nmの範囲内である。分離膜32の材料としては、例えばアルミナまたは合成樹脂が用いられる。分離膜32の材料としてアルミナを用いる場合には、例えばイオンビームデポジション法によって、分離膜32を形成する。
【0127】
図11は、次の工程を示す。この工程では、ネガ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングすることによって、分離膜32の上に、後に型33となる第2のレジスト層33Pを形成する。第2のレジスト層33P(型33)は、後に形成される第1のサイドシールド13Bの形状に対応した形状の開口部33aと、後に形成される第2のサイドシールド13Cの形状に対応した形状の開口部33bとを有している。より詳しく説明すると、この工程では、まず、積層体の上面全体の上にネガ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層を形成する。このフォトレジスト層は、その上面が分離膜32のうち第1のレジスト層31の上に配置された部分の上面よりも上方に配置されるように形成される。次に、フォトマスクを用いて、フォトレジスト層を選択的に露光する。このフォトマスクは、第1のレジスト層31を形成する際に用いたフォトマスクと同様に、露光用の光を通過させる透光部と、露光用の光を遮断する遮光部とを有している。フォトマスクの遮光部は、後に形成される第1および第2のサイドシールド13B,13Cの平面形状に対応した形状を有する部分を含んでいる。次に、露光後のフォトレジスト層を現像する。露光後は、フォトレジスト層のうち、フォトマスクの透光部を通過した光が照射された部分は現像液に対して不溶性となり、他の部分は現像液に対して可溶性のままである。現像後に残ったフォトレジスト層が第2のレジスト層33Pとなる。
【0128】
図12は、次の工程を示す。この工程では、例えばウェットエッチングによって、分離膜32のうち、第2のレジスト層33Pによって覆われていない部分を除去する。
【0129】
図13は、次の工程を示す。この工程では、第1および第2のレジスト層31,33Pを露光した後、第2のレジスト層33Pの開口部33a,33bから、第1のレジスト層31を除去する。具体的には、まず、積層体の上面全体を露光する。露光後は、ポジ型のフォトレジストよりなる第1のレジスト層31は現像液に対して可溶性になり、ネガ型のフォトレジストよりなる第2のレジスト層33Pは現像液に対して不溶性のままである。次に、例えばアルカリ性の現像液を用いて、第1のレジスト層31を除去する。また、この工程では、第1のレジスト層31を除去する際または第1のレジスト層31を除去した後に、分離膜32のうち、第2のレジスト層33Pの開口部33a,33bの壁面に沿った部分を除去する。この工程により、第2のレジスト層33Pは型33となる。この工程において、図13(b)に示したように、分離膜32のうち型33の細い部分の下に存在していた部分は除去されてもよい。この場合でも、分離膜32のうち型33の太い部分の下に存在している部分は除去されないため、型33が剥離することはない。
【0130】
図14は、次の工程を示す。この工程では、第1のレジスト層31を除去した後に、シード層を形成することなくめっきを行って、下部シールド13Aの上面上に、第1のサイドシールド13Bと第2のサイドシールド13Cとを形成する。サイドシールド13B,13Cを形成する際、下部シールド13Aの第2層13A2がシード層および電極として用いられる。サイドシールド13B,13Cは、それぞれ、型33の開口部33a,33b内に形成される。図13(b)に示した工程において、分離膜32のうち型33の細い部分の下に存在していた部分が除去された場合には、図14(b)に示したように、型33の細い部分の下の位置でサイドシールド13B,13Cが繋がってもよい。
【0131】
図15は、次の工程を示す。図15(c)は、図15(a)において、15C−15C線で示す位置における積層体の断面を示している。この工程では、型33と分離膜32を除去する。
【0132】
図16は、次の工程を示す。図16(c)は、図16(a)において、16C−16C線で示す位置における積層体の断面を示している。この工程では、下部シールド13Aおよびサイドシールド13B,13Cの上に、マスク34を形成する。このマスク34は、フォトレジスト層をパターニングして形成される。図16に示したように、マスク34は、サイドシールド13B,13Cの各上面のうち、媒体対向面30が形成される予定の位置ABSからより遠い端縁の近傍の一部を覆っていない。
【0133】
図17は、次の工程を示す。図17(c)は、図17(a)における17C−17C線で示す位置における積層体の断面を表している。この工程では、マスク34とサイドシールド13B,13Cをエッチングマスクとして用いて、エッチングによって、第2層13A2のうち第1層13A1の上に位置する部分以外の部分を除去する。このエッチングは、例えば、イオンビームの進行方向が基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度が45°〜75°の範囲内となり、且つイオンビームの進行方向のうちの基板1の上面に平行な成分の方向が回転または揺動するように、イオンビームエッチングを用いて行われる。このエッチングによって、第1層13A1と、その上に配置された第2層13A2よりなる下部シールド13Aが完成する。次に、マスク34を除去する。
【0134】
この工程において、サイドシールド13B,13Cの各々の一部がエッチングされて、図17(c)に示したように、後に形成される主磁極12の第3の側面S3に対向する第1のサイドシールド13Bの壁面13B2と、主磁極12の第4の側面S4に対向する第2のサイドシールド13Cの壁面13C2とが形成される。図17(b)は、主磁極12の第1の側面S1に対向する第1のサイドシールド13Bの壁面13B1と、主磁極12の第2の側面S2に対向する第2のサイドシールド13Cの壁面13C1とを示している。図17(b)および(c)に示したように、壁面13B2が基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度は、壁面13B1が基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度よりも小さい。また、壁面13C2が基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度は、壁面13C1が基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度よりも小さい。
【0135】
図18は、次の工程を示す。図18(c)は、図18(a)における18C−18C線で示す位置における積層体の断面を表している。この工程では、積層体の上面全体の上に、第1のギャップ層27を形成する。第1のギャップ層27の材料としてアルミナを用いる場合には、例えば原子層堆積法(ALD)によって、第1のギャップ層27を形成する。第1のギャップ層27の材料としてRuを用いる場合には、例えば化学的気相成長法(CVD)によって、第1のギャップ層27を形成する。
【0136】
図19は、次の工程を示す。図19(c)は、図19(a)における19C−19C線で示す位置における積層体の断面を表している。この工程では、まず、例えばスパッタ法またはイオンビームデポジション法によって、積層体の上面全体の上にシード層28を形成する。次に、第1のギャップ層27およびシード層28を選択的にエッチングして、第1のギャップ層27およびシード層28に、連結層62の上面を露出させる開口部と、接続層51の上面を露出させる開口部とを形成する。次に、積層体の上面全体の上にフォトレジスト層を形成し、これをフォトリソグラフィによってパターニングして、第3のレジスト層35を形成する。第3のレジスト層35は、その上面がシード層28のうちサイドシールド13B,13Cの上に配置された部分の上面よりも上方に配置されるように形成される。第3のレジスト層35は、後に形成される主磁極12の形状に対応した形状の開口部35aと、接続層52の形状に対応した形状の開口部を有している。
【0137】
次に、シード層28を電極およびシード層として用いて、めっき法によって、第3のレジスト層35の開口部35a内に、後に主磁極12となる磁性層12Pを形成する。また、例えばめっき法によって、接続層51の上に接続層52を形成する。磁性層12Pおよび接続層52は、その上面がシード層28のうちサイドシールド13B,13Cの上に配置された部分の上面よりも上方に配置されるように形成される。図19(a)に示したように、磁性層12Pは、上方から見たときに、磁性層12Pのトラック幅方向の両側の2つの側部12P1,12P2が、それぞれサイドシールド13B,13Cの側壁SW1,SW2と交差する形状に形成される。これにより、後に、主磁極12の側部SP1,SP2に角C1,C2が形成されることになる。
【0138】
図20は、次の工程を示す。図20(c)は、図20(a)における20C−20C線で示す位置における積層体の断面を表している。この工程では、第3のレジスト層35を除去する。
【0139】
図21は、次の工程を示す。なお、図21では、シード層28の図示を省略している。この工程では、まず、サイドシールド13B,13C、第1のギャップ層27および磁性層12Pを覆うように、非磁性材料よりなる研磨前の非磁性層26を形成する。研磨前の非磁性層26の厚みは、例えば0.3〜0.5μmの範囲内である。研磨前の非磁性層26は、例えば、全体を原子層堆積法によって形成してもよい。あるいは、研磨前の非磁性層26を第1層と第2層とで構成し、原子層堆積法によって第1層を形成した後にスパッタ法によって第2層を形成してもよい。研磨前の非磁性層26は、サイドシールド13B,13Cおよび磁性層12Pの上方に位置する凸面部分26T1と、サイドシールド13B,13Cの周辺に位置して凸面部分26T1よりも低い周辺部分26T2とを含む上面を有している。
【0140】
次に、例えばスパッタ法によって、研磨前の非磁性層26の上に、非磁性金属材料よりなる研磨停止層36を形成する。研磨停止層36のうち、非磁性層26の上面の周辺部分26T2の上方に位置する部分の上面の高さは、後に形成される主磁極12の上面12Tにおける第2の部分12T2の高さを規定する。研磨停止層36の材料としては、例えばRuが用いられる。次に、例えばスパッタ法によって、後に研磨される被研磨層37を形成する。被研磨層37の材料としては、例えばアルミナが用いられる。
【0141】
図22は、次の工程を示す。図22(c)は、図22(a)において、22C−22C線で示す位置における積層体の断面を示している。なお、図22(a)では、シード層28の図示を省略している。この工程では、例えばCMPによって、研磨停止層36のうち、非磁性層26の上面の周辺部分26T2の上方に位置する部分が露出するまで、被研磨層37、研磨停止層36および非磁性層26を研磨する。この研磨工程において、研磨停止層36のうち、非磁性層26の上面の周辺部分26T2の上方に位置する部分は、研磨を停止させる研磨ストッパとして機能する。図21において記号“CMP”は、研磨が停止する位置を表している。この研磨工程により、磁性層12P、サイドシールド13B,13C、接続層52、非磁性層26および研磨停止層36の上面が平坦化される。図22(a)に示したように、研磨後の非磁性層26は、2つの部分26B,26Cを有している。
【0142】
図23は、次の工程を示す。この工程では、まず、磁性層12Pおよびサイドシールド13B,13Cの上に、積層されたマスク層58P,59Pを形成する。マスク層58Pは後に非磁性金属層58となるものであり、マスク層59Pは後に絶縁層59となるものである。これらマスク層58P,59Pは、例えば、スパッタ法によって形成された積層膜をエッチングによってパターニングして形成される。マスク層58P,59Pは、磁性層12Pの上面のうち、後に主磁極12の上面12Tの第2の部分12T2となる部分を覆っている。媒体対向面30が形成される予定の位置ABSにより近いマスク層58Pの端縁は、主磁極12の上面12Tの第1の部分12T1と第2の部分12T2の境界の位置を規定する。次に、マスク層58P,59Pを用いて、例えばイオンビームエッチングによって、磁性層12P、サイドシールド13B,13C、非磁性層26および研磨停止層36の一部をエッチングする。これにより、磁性層12Pは主磁極12となる。
【0143】
イオンビームエッチングによって磁性層12P、サイドシールド13B,13C、非磁性層26および研磨停止層36の一部をエッチングする場合には、イオンビームの進行方向が基板1の上面に垂直な方向に対してなす角度が40°〜75°の範囲内となり、且つ基板1の上面に垂直な方向に見たときにイオンビームの進行方向が回転するようにする。このようなイオンビームエッチングを行うことにより、磁性層12Pの上面12Tには、第1の部分12T1、第2の部分12T2および第3の部分12T3が形成される。第2の部分12T2は、マスク層58P,59Pによって覆われている部分であり、実質的に後に形成される媒体対向面30に垂直な方向に延在している。第1の部分12T1と第3の部分12T3は、マスク層58P,59Pによって覆われていない部分である。第3の部分12T3は、第2の部分12T2よりも基板1に近い位置に配置され、実質的に後に形成される媒体対向面30に垂直な方向に延在している。第1の部分12T1は、第2の部分12T2と第3の部分12T3とを連結する。後に形成される媒体対向面30に垂直な方向に対して第1の部分12T1がなす傾斜角度は、例えば12°〜45°の範囲内である。
【0144】
図24は、図23に示した工程の変形例を示している。変形例では、第1の部分12T1は、後に形成される媒体対向面30に垂直な方向に対してなす角度が互いに異なる第1の平面部分S11および第2の平面部分S12を有している。第1の平面部分S11は第3の部分12T3に接続され、第2の平面部分S12は第2の部分12T2に接続されている。後に形成される媒体対向面30に垂直な方向に対して第2の平面部分S12がなす第2の傾斜角度は、後に形成される媒体対向面30に垂直な方向に対して第1の平面部分S11がなす第1の傾斜角度よりも大きい。第1の傾斜角度は、例えば15°〜40°の範囲内である。第2の傾斜角度は、例えば40°〜90°の範囲内である。
【0145】
図25は、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、例えばスパッタ法または化学的気相成長法によって、第2のギャップ層14を形成する。次に、例えばイオンビームエッチングによって、主磁極12の上面12Tの一部、サイドシールド13B,13Cの上面の一部および接続層52の上面が露出するように、第2のギャップ層14、マスク層58P,59Pを選択的にエッチングする。これにより、マスク層58P,59Pは、それぞれ非磁性金属層58、絶縁層59となる。次に、例えばフレームめっき法によって、サイドシールド13B,13Cおよび第2のギャップ層14の上に上部シールド13Dを形成し、主磁極12の上に上部ヨーク層16を形成し、接続層52の上に接続層53を形成する。
【0146】
次に、積層体の上面全体の上に非磁性層46を形成する。次に、例えばCMPによって、上部シールド13D、上部ヨーク層16および接続層53が露出するまで、非磁性層46を研磨して、上部シールド13D、上部ヨーク層16、接続層53および非磁性層46の上面を平坦化する。
【0147】
次に、図6に示したように、例えばフレームめっき法によって、上部シールド13Dの上に連結層65を形成し、上部ヨーク層16の上に連結層63を形成し、接続層53の上に接続層54を形成する。次に、積層体の上面全体の上に非磁性層47を形成する。次に、例えばCMPによって、接続層54および連結層63,65が露出するまで、非磁性層47を研磨する。
【0148】
次に、非磁性層47の上面のうち、コイル18が配置される領域の上に絶縁層17を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、絶縁層17の上にコイル18を形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、連結層63の上に連結層64を形成し、連結層65の上に連結層66を形成する。なお、連結層64,66を形成した後に、コイル18を形成してもよい。
【0149】
次に、コイル18の巻線間および周囲ならびに連結層64の周囲に絶縁層19を形成する。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層41を形成する。次に、例えばCMPによって、コイル18および連結層64,66が露出するまで絶縁層41を研磨して、コイル18、連結層64,66および絶縁層19,41の上面を平坦化する。
【0150】
次に、例えばスパッタ法によって、積層体の上面全体の上に絶縁層20を形成する。次に、絶縁層20を選択的にエッチングすることによって、絶縁層20に、連結層64の上面を露出させる開口部と連結層66の上面を露出させる開口部とを形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、第2のリターンヨーク層29を形成する。
【0151】
次に、積層体の上面全体を覆うように保護層42を形成する。次に、保護層42の上に配線や端子等を形成し、スライダ単位で基板を切断し、媒体対向面30の研磨、浮上用レールの作製等を行って、磁気ヘッドが完成する。
【0152】
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法は、下部シールド13Aを形成する工程と、下部シールド13Aの上面上であって、後にサイドシールド13B,13Cが形成される領域を除く領域に、フォトリソグラフィによって形状が決定され後に除去される型33を形成する工程と、型33の形成後、シード層を形成することなくめっきを行って、下部シールド13Aの上面上にサイドシールド13B,13Cを形成する工程とを備えている。
【0153】
磁気ヘッドの製造方法は、更に、サイドシールド13B,13Cの形成後、型33を除去する工程と、型33の除去後、第1のギャップ層27を形成する工程と、第1のギャップ層27の形成後、主磁極12を形成する工程と、主磁極12の形成後、第2のギャップ層14を形成する工程と、第2のギャップ層14の形成後、上部シールド13Dを形成する工程とを備えている。
【0154】
型33を形成する工程は、ポジ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングすることによって、下部シールド13Aの上面上であって、後にサイドシールド13B,13Cが形成される領域に、第1のレジスト層31を形成する工程と、第1のレジスト層31を覆うように、分離膜32を形成する工程と、ネガ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングすることによって、分離膜32の上に、後に型33となる第2のレジスト層33Pを形成する工程と、下部シールド13Aの上面上に第2のレジスト層33Pが残って型33となるように、第1のレジスト層31と分離膜32を除去する工程とを含んでいる。
【0155】
本実施の形態では、下部シールド13Aの上面上であって、後にサイドシールド13B,13Cが形成される領域を除く領域に、フォトリソグラフィによって形状が決定され後に除去される型33を形成した後、シード層を形成することなくめっきを行って、下部シールド13Aの上面上にサイドシールド13B,13Cを形成する。本実施の形態によれば、エッチングされていない下部シールド13Aの上面上にサイドシールド13B,13Cを形成することから、サイドシールド13B,13Cにおける磁気的欠陥の発生を抑制することができる。また、本実施の形態では、フォトリソグラフィによって形状が決定された型33によって、サイドシールド13B,13Cの形状が決定されることから、エッチングによってサイドシールド13B,13Cの形状を決定する場合に比べて、少ない工程および時間で、サイドシールド13B,13Cの形状を容易に決定することができる。
【0156】
図26は、サイドシールド13B,13Cとなるめっき膜の成長方向を説明する斜視図である。図26(a)は、サイドシールド13B,13Cの形成後の状態を表している。なお、図26(a)では、型33の図示を省略している。図26(b)は、磁性層12Pの上面を研磨した後の状態を表している。図26において、めっき膜の成長方向を矢印で示している。図26(a)に示したように、サイドシールド13B,13Cとなるめっき膜は、下部シールド13Aの上面から、この上面に垂直な方向に成長する。このように、本実施の形態によれば、成長方向が均一なめっき膜によって、サイドシールド13B,13Cを形成することができる。これにより、本実施の形態によれば、後で詳しく説明するように、サイドシールド13B,13Cにおける磁気的欠陥の発生を抑制することができる。
【0157】
次に、比較例の磁気ヘッドの製造方法と比較しながら、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法の効果について更に詳しく説明する。まず、図27ないし図31を参照して、比較例の磁気ヘッドの製造方法を説明する。図27ないし図31は、比較例の磁気ヘッドの製造過程における積層体を示している。図27、図28、図29ないし図31における(a)は、それぞれ、積層体における媒体対向面30が形成される予定の位置における断面を示している。図29ないし図31における(b)は、それぞれ、積層体における媒体対向面30が形成される予定の位置の近傍の部分を示している。なお、図27ないし図31では、下部シールド13Aよりも基板1側の部分を省略している。
【0158】
図27は、比較例において、下部シールド13Aを形成した後の工程を示している。この工程では、まず、例えばスパッタ法によって、積層体の上面全体の上に収容層126を形成する。収容層126の材料は、例えば、本実施の形態における非磁性層26と同じである。次に、この収容層126を選択的にエッチングして、収容層126に、主磁極12の一部を収容するための溝部126aを形成する。
【0159】
図28は、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、非磁性材料よりなる第1のギャップ層127を形成する。第1のギャップ層127の材料は、例えば、本実施の形態における第1のギャップ層27と同じである。第1のギャップ層127は、溝部126a内にも形成される。図示しないが、この時点では、第1のギャップ層127は、収容層126の上に配置された部分を有している。次に、例えばめっき法によって、後に主磁極12となる磁性層12Pを形成する。この磁性層12Pは、溝部126aを埋め、且つその上面が第1のギャップ層127のうち収容層126の上に配置された部分の上面よりも上方に配置されるように形成される。次に、例えばCMPによって、収容層126が露出するまで磁性層12Pおよび第1のギャップ層127を研磨して、磁性層12Pおよび収容層126の上面を平坦化する。
【0160】
図29は、次の工程を示す。この工程では、収容層126を選択的にエッチングして、収容層126に、第1のサイドシールド13Bを収容する溝部126bと、第2のサイドシールド13Cを収容する溝部126cとを形成する。溝部126b,126cは、収容層126を貫通している。
【0161】
図30は、次の工程を示す。この工程では、積層体の上面全体の上に、シード層128を形成する。シード層128の材料は、例えば、本実施の形態におけるシード層28と同じである。シード層128は、溝部126b,126c内にも形成される。具体的には、溝部126b,126cでは、下部シールド13Aの上面、収容層126の壁面、第1のギャップ層127の表面に沿って、シード層128が形成される。
【0162】
図31は、次の工程を示す。この工程では、めっき法によって、溝部126b内に収容されるように第1のサイドシールド13Bを形成し、溝部126c内に収容されるように第2のサイドシールド13Cを形成する。図31(b)には、サイドシールド13B,13Cとなるめっき膜の成長方向を矢印で示している。次に、図31(b)に示したように、例えばCMPによって、磁性層12Pの上面が露出するまで、シード層128およびサイドシールド13B,13Cを研磨する。その後の工程は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法における図23に示した工程以降の工程と同じである。
【0163】
比較例では、エッチングによって形成された収容層126の溝部126b,126c内にシード層128を形成した後、めっき法によって、溝部126b,126c内にサイドシールド13B,13Cを形成する。このとき、めっき膜は、シード層128の表面から成長する。図31(b)に示したように、このめっき膜中には、溝部126b,126cの底部に沿ったシード層128の部分から上方に成長しためっき膜の部分と、溝部126b,126cの壁面に沿ったシード層128の部分から水平方向に成長しためっき膜の部分とが合わさることによって2つの部分の繋ぎ目131が形成される。この繋ぎ目131は、大きな結晶粒界である。この繋ぎ目131には不純物が偏析しやすい。そのため、繋ぎ目131は、めっき膜中の他の部分に比べて磁気的特性が劣った磁気的欠陥になりやすい。めっき膜すなわちサイドシールド13B,13C内において、上記の磁気的欠陥の近傍では、磁束が乱れたり磁化の方向が固定されたりしやすく、それに起因して、サイドシールド13B,13Cにおいて局所的に大きな磁界が発生し、その結果、隣接トラック消去が発生するおそれがある。
【0164】
また、比較例では、図31(b)に示したように、エッチングによって形成された溝部126b,126cの底部上に、エッチングの際の反応生成物や被エッチング材料に起因したエッチング残渣132が残る場合がある。このエッチング残渣132の上にシード層128を形成すると、エッチング残渣132の上の部分においてシード層128に突起が発生する。めっき膜すなわちサイドシールド13B,13C内において、上記のシード層128の突起の近傍では、前述の繋ぎ目131による磁気的欠陥と同様に、磁束が乱れたり磁化の方向が固定されたりしやすい。従って、めっき膜内の上記のシード層128の突起の近傍の部分も、磁気的欠陥と言える。そして、この磁気的欠陥に起因して、サイドシールド13B,13Cにおいて局所的に大きな磁界が発生し、その結果、隣接トラック消去が発生するおそれがある。
【0165】
これに対し、本実施の形態によれば、前述のように、下部シールド13Aの上面上であって、後にサイドシールド13B,13Cが形成される領域を除く領域に、フォトリソグラフィによって形状が決定され後に除去される型33を形成した後、シード層を形成することなくめっきを行って、下部シールド13Aの上面上にサイドシールド13B,13Cを形成する。そのため、本実施の形態では、サイドシールド13B,13Cとなるめっき膜は、下部シールド13Aの上面から、この上面に垂直な方向に成長する。このように、本実施の形態によれば、成長方向が均一なめっき膜によって、サイドシールド13B,13Cを形成することができる。これにより、本実施の形態によれば、めっき膜中に、比較例における繋ぎ目131が形成されない。また、本実施の形態では、エッチングされていない下部シールド13Aの上面上にサイドシールド13B,13Cを形成することから、比較例におけるエッチング残渣132が発生しない。これらのことから、本実施の形態によれば、サイドシールド13B,13Cにおける磁気的欠陥の発生を抑制することができる。その結果、本実施の形態によれば、サイドシールド13B,13Cにおける磁気的欠陥に起因した隣接トラック消去の発生を抑制することができる。
【0166】
また、本実施の形態では、フォトリソグラフィによって形状が決定された型33によって、サイドシールド13B,13Cの形状が決定されることから、エッチングによってサイドシールド13B,13Cの形状を決定する場合に比べて、少ない工程および時間で、サイドシールド13B,13Cの形状を容易に決定することができる。
【0167】
また、比較例では、エッチングによって収容層126に溝部126aを形成し、溝部126a内に、後に主磁極12となる磁性層12Pを形成する。従って、主磁極12(磁性層12P)の厚みは、溝部126aの深さ、すなわちエッチングによって収容層126に対して形成可能な溝部126aの深さによって制限される。これに対し、本実施の形態では、めっき法によって形成されたサイドシールド13B,13Cの互いに向き合う壁面13B1,13C1の間に、第1のギャップ層27とシード層28を形成した後、後に主磁極12となる磁性層12Pを形成する。そのため、本実施の形態では、主磁極12(磁性層12P)の厚みは、エッチングによって形成可能な溝部の深さによって制限されることがない。従って、本実施の形態によれば、比較例に比べて、主磁極12の厚みを大きくすることができ、その結果、主磁極12によって多くの磁束を媒体対向面30まで導くことにより記録特性(オーバーライト特性)を向上させることができる。
【0168】
また、本実施の形態では、図22に示したように、被研磨層37、研磨停止層36および非磁性層26を研磨する工程の後で、非磁性層26は、サイドシールド13B,13Cと主磁極12の幅広部12Bとの間に配置された2つの部分26B,26Cを有することになる。この2つの部分26B,26Cは、サイドシールド13B,13Cと主磁極12の幅広部12Bとを磁気的に分離する機能を有する。これにより、主磁極12の幅広部12Bからサイドシールド13B,13Cへの磁束の漏れを抑制することができる。その結果、主磁極12によって多くの磁束を媒体対向面30まで導くことにより記録特性(オーバーライト特性)を向上させることができる。
【0169】
本実施の形態では、特に、主磁極12の第1の側部SP1は、第1の位置P1において、第1の角C1が形成されるように屈曲し、主磁極12の第2の側部SP2は、第2の位置P2において、第2の角C2が形成されるように屈曲している。そして、第1の位置P1を始点として、媒体対向面30から離れるに従って、トラック幅方向TWについての第1の側部SP1と第1の側壁SW1の間隔SSWG1が徐々に大きくなり、第2の位置P2を始点として、媒体対向面30から離れるに従って、トラック幅方向TWについての第2の側部SP2と第2の側壁SW2の間隔SWG2が徐々に大きくなっている。部分26Bは、第1の位置P1に対して媒体対向面30から遠い位置において第1の側部SP1と第1の側壁SW1との間に配置され、部分26Cは、第2の位置P2に対して媒体対向面30から遠い位置において第2の側部SP2と第2の側壁SW2との間に配置されている。このような構成により、本実施の形態によれば、主磁極12の側部SP1,SP2と、サイドシールド13B,13Cの側壁SW1,SW2とが、第1のギャップ層27およびシード層28の厚みによる小さな間隔を開けて対向する領域の面積を小さくすることができる。その結果、主磁極12の幅広部12Bからサイドシールド13B,13Cへの磁束の漏れを効果的に抑制することができ、記録特性(オーバーライト特性)を向上させることができる。
【0170】
上記の構成は、サイドシールド13B,13Cを形成した後に主磁極12を形成するという本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法によって実現することができる。従って、本実施の形態によれば、主磁極12の周りに設けられたシールド13を有し、シールド13のうちの2つのサイドシールド13B,13Cにおける磁気的欠陥の発生を抑制できると共に、主磁極12と2つのサイドシールド13B,13Cの形状を容易に決定することが可能で、且つ主磁極12からサイドシールド13B,13Cへの磁束の漏れを抑制することが可能な磁気ヘッドを実現することができる。
【0171】
また、本実施の形態では、ポジ型のフォトレジストを用いて第1のレジスト層31を形成し、分離膜32を形成した後、ネガ型のフォトレジストを用いて型33を形成している。第1のレジスト層31は、壁面31a1,31b1の間に、後に型33の一部が収容される空間を形成する。この空間に収容される型33の一部の形状は、主磁極12のトラック幅規定部12Aの形状に対応する。一般的に、ネガ型のフォトレジストよりもポジ型のフォトレジストの方が解像度の高いパターニングが可能である。そのため、本実施の形態のように、ポジ型のフォトレジストを用いて第1のレジスト層31を形成することにより、上記空間に収容される型33の一部の形状を精度よく規定でき、その結果、主磁極12のトラック幅規定部12Aの形状を精度よく規定することが可能になる。
【0172】
また、本実施の形態における主磁極12は、前述のように規定された第1ないし第6の側面S1〜S6を有している。これにより、隣接トラック消去の発生の抑制と記録特性の向上を両立することができる。本実施の形態に係る磁気ヘッドは、型33の形成後、シード層を形成することなくめっきを行って、下部シールド13Aの上面上に第1および第2のサイドシールド13B,13Cを形成し、その後、第1のギャップ層27および主磁極12を形成するという、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法によって製造することができる。従って、本実施の形態によれば、隣接トラック消去の発生の抑制と記録特性の向上を両立できる主磁極12と、主磁極12の周りに設けられたシールド13とを有し、シールド13のうちの2つのサイドシールド13B,13Cにおける磁気的欠陥の発生を抑制できると共に、主磁極12と2つのサイドシールド13B,13Cの形状を容易に決定することの可能な磁気ヘッドを実現することができる。
【0173】
本実施の形態に係る磁気ヘッドは、特に、以下のような本実施の形態に係る製造方法よって製造することができる。本実施の形態に係る製造方法では、下部シールド13Aを形成する工程は、第1層13A1を形成する工程と、第1層13A1の上ならびに第1層13A1の周囲に第2層13A2を形成する工程とを含み、第1および第2のサイドシールド13B,13Cを形成する工程は、第2層13A2をシード層として用いてめっきを行って第1および第2のサイドシールド13B,13Cを形成する。本実施の形態では、更に、型33を除去する工程と第1のギャップ層27を形成する工程との間において、エッチングによって、第2層13A2のうち第1層13A1の上に位置する部分以外の部分を除去するエッチング工程を備えている。そして、エッチング工程において、第1および第2のサイドシールド13B,13Cの各々の一部がエッチングされて、主磁極12の第3の側面S3に対向する第1のサイドシールド13Bの壁面13B2と、主磁極12の第4の側面S4に対向する第2のサイドシールド13Cの壁面13C2とが形成される。この製造方法によれば、隣接トラック消去の発生の抑制と記録特性の向上を両立できる主磁極12と、主磁極12の周りに設けられたシールド13とを有し、シールド13のうちの2つのサイドシールド13B,13Cにおける磁気的欠陥の発生を抑制できると共に、主磁極12と2つのサイドシールド13B,13Cの形状を容易に決定することの可能な磁気ヘッドを実現することができる。
【0174】
なお、第2層13A2のうち第1層13A1の上に位置する部分以外の部分を除去しないと、以下のような問題が生じる。すなわち、この場合、広い領域に配置された第2層13A2に磁束が漏れ、それに起因して、下部シールド13Aにおいて意図しない磁界の変動が生じ、その結果、隣接トラック消去が発生するおそれがある。そのため、第2層13A2のうち第1層13A1の上に位置する部分以外の部分は除去する必要がある。
【0175】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、型33の形成方法は、実施の形態で用いたポジ型のフォトレジストとネガ型のフォトレジストとを用いた方法に限定されない。型33は、例えば、ポジ型またはネガ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングすることによって形成してもよい。あるいは、図10に示した分離膜32の形成後、フォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングすることによって、型33を収容するための開口部を有するフレームを形成し、このフレームの開口部内に型33を形成してもよい。この場合、型33の材料には、アルミナ等の種々の材料を用いることができる。このように、本発明において、型33は、フォトリソグラフィによって形状が決定され後に除去されるものであればよく、フォトレジストによって形成されたものに限定されない。
【0176】
また、実施の形態では、主磁極12の下端12Lが第1の部分12L1と第2の部分12L2とを含み、主磁極12の上面12Tが第1の部分12T1と第2の部分12T2とを含んでいるが、主磁極12の下端12Lおよび上面12Tは、それぞれ、それらの全体が実質的に媒体対向面30に垂直な方向に延びていてもよい。
【0177】
また、実施の形態では、基体側に再生ヘッドを形成し、その上に、記録ヘッドを積層した構造の磁気ヘッドについて説明したが、この積層順序を逆にしてもよい。
【符号の説明】
【0178】
12…主磁極、13…シールド、13A…下部シールド、13B,13C…サイドシールド、13D…上部シールド、14…第2のギャップ層、27…第1のギャップ層、28…シード層、31…第1のレジスト層、32…分離膜、33…型、33P…第2のレジスト層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対向する媒体対向面と、
前記記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生するコイルと、
前記媒体対向面に配置された端面を有し、前記コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって前記情報を前記記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
磁性材料よりなり、前記媒体対向面において前記主磁極の端面の周りを囲むように配置された端面を有するシールドと、
非磁性材料よりなり、前記主磁極と前記シールドとの間に設けられたギャップ部とを備え、
前記シールドは、下部シールドと、第1および第2のサイドシールドと、上部シールドとを含み、
前記下部シールドは、前記媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された端面と、上面とを有し、
前記第1および第2のサイドシールドは、媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対してトラック幅方向の両側に配置された2つの端面を有し、
前記上部シールドは、前記媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された端面を有し、
前記ギャップ部は、前記主磁極と下部シールドとの間ならびに前記主磁極と第1および第2のサイドシールドとの間に配置された第1のギャップ層と、前記主磁極と上部シールドとの間に配置された第2のギャップ層とを含む垂直磁気記録用磁気ヘッドを製造する方法であって、
前記下部シールドを形成する工程と、
前記下部シールドの上面上であって、後に前記第1および第2のサイドシールドが形成される領域を除く領域に、フォトリソグラフィによって形状が決定され後に除去される型を形成する工程と、
前記型の形成後、シード層を形成することなくめっきを行って、前記下部シールドの上面上に前記第1および第2のサイドシールドを形成する工程と、
前記第1および第2のサイドシールドの形成後、前記型を除去する工程と、
前記型の除去後、前記第1のギャップ層を形成する工程と、
前記第1のギャップ層の形成後、前記主磁極を形成する工程と、
前記主磁極の形成後、前記第2のギャップ層を形成する工程と、
前記第2のギャップ層の形成後、前記上部シールドを形成する工程と、
前記コイルを形成する工程とを備えたことを特徴とする垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記主磁極は、前記下部シールドの上面からより遠い上面と、前記主磁極の上面とは反対側の下端と、第1ないし第6の側面とを有し、
前記主磁極の端面のトラック幅方向の幅は、前記主磁極の下端に近づくに従って小さくなり、
前記第1および第2の側面は、前記媒体対向面から50〜500nmの範囲内の距離だけ離れた位置から前記媒体対向面までの第1の領域において互いに反対側に配置され、
前記第3および第4の側面は、前記第1の領域以外の第2の領域に配置され、
前記第5の側面は、前記第1の領域と第2の領域との境界位置に配置され、前記第1の側面と第3の側面とを接続し、
前記第6の側面は、前記第1の領域と第2の領域との境界位置に配置され、前記第2の側面と第4の側面とを接続し、
トラック幅方向についての前記第1の側面と第2の側面の間隔は、前記主磁極の下端に近づくに従って小さくなり、
前記第1の領域と第2の領域との境界位置において、最も主磁極の下端に近い位置におけるトラック幅方向についての前記第3の側面と第4の側面の間隔は、最も主磁極の下端に近い位置におけるトラック幅方向についての前記第1の側面と第2の側面の間隔よりも大きく、
第5の側面の幅と第6の側面の幅は、いずれも、主磁極の下端に近づくに従って大きくなり、
前記第1のサイドシールドは、それぞれ前記主磁極の第1および第3の側面に対向する2つの壁面を有し、
前記第2のサイドシールドは、それぞれ前記主磁極の第2および第4の側面に対向する2つの壁面を有することを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記下部シールドを形成する工程は、第1層を形成する工程と、前記第1層の上ならびに第1層の周囲に第2層を形成する工程とを含み、
前記第1および第2のサイドシールドを形成する工程は、前記第2層をシード層として用いてめっきを行って前記第1および第2のサイドシールドを形成し、
磁気ヘッドの製造方法は、更に、前記型を除去する工程と第1のギャップ層を形成する工程との間において、エッチングによって、前記第2層のうち前記第1層の上に位置する部分以外の部分を除去するエッチング工程を備え、
前記エッチング工程において、前記第1および第2のサイドシールドの各々の一部がエッチングされて、前記主磁極の第3の側面に対向する第1のサイドシールドの壁面と、前記主磁極の第4の側面に対向する第2のサイドシールドの壁面とが形成されることを特徴とする請求項2記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記型を形成する工程は、
ポジ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングすることによって、前記下部シールドの上面上であって、後に前記第1および第2のサイドシールドが形成される領域に、第1のレジスト層を形成する工程と、
前記第1のレジスト層を覆うように、分離膜を形成する工程と、
ネガ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層をフォトリソグラフィによってパターニングすることによって、前記分離膜の上に、後に前記型となる第2のレジスト層を形成する工程と、
前記下部シールドの上面上に前記第2のレジスト層が残って前記型となるように、前記第1のレジスト層と分離膜を除去する工程とを含むことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記主磁極を形成する工程は、
後に前記主磁極となる磁性層を形成する工程と、
前記第1および第2のサイドシールド、第1のギャップ層および磁性層を覆うように、非磁性材料よりなる非磁性層を形成する工程と、
前記第1および第2のサイドシールドおよび磁性層が露出するまで前記非磁性層を研磨する工程とを含むことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【請求項6】
研磨前の前記非磁性層は、前記第1および第2のサイドシールドおよび磁性層の上方に位置する凸面部分と、第1および第2のサイドシールドの周辺に位置して前記凸面部分よりも低い周辺部分とを含む上面を有し、
前記主磁極を形成する工程は、更に、
前記研磨前の非磁性層の上に研磨停止層を形成する工程と、
前記研磨停止層の上に、後に研磨される被研磨層を形成する工程とを含み、
前記非磁性層を研磨する工程は、前記研磨停止層のうち、前記非磁性層の上面の周辺部分の上方に位置する部分が露出するまで、前記被研磨層、研磨停止層および非磁性層を研磨することを特徴とする請求項5記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【請求項7】
研磨後の前記非磁性層は、前記媒体対向面から離れた位置で、前記第1および第2のサイドシールドと前記主磁極との間に配置された第1および第2の部分を有することを特徴とする請求項5記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記主磁極は、前記下部シールドの上面からより遠い上面と、前記主磁極の上面とは反対側の下端と、第1および第2の側部とを有し、
前記第1のサイドシールドは、前記主磁極の第1の側部に対向する第1の側壁を有し、
前記第2のサイドシールドは、前記主磁極の第2の側部に対向する第2の側壁を有し、
前記第1の側部は、前記媒体対向面から所定の距離だけ離れた第1の位置において、第1の角が形成されるように屈曲し、
前記第2の側部は、前記媒体対向面から所定の距離だけ離れた第2の位置において、第2の角が形成されるように屈曲し、
前記第1の位置を始点として、前記媒体対向面から離れるに従って、トラック幅方向についての前記第1の側部と第1の側壁の間隔が徐々に大きくなり、
前記第2の位置を始点として、前記媒体対向面から離れるに従って、トラック幅方向についての前記第2の側部と第2の側壁の間隔が徐々に大きくなり、
前記非磁性層の第1の部分は、前記第1の位置に対して前記媒体対向面から遠い位置において前記第1の側部と第1の側壁との間に配置され、前記非磁性層の第2の部分は、前記第2の位置に対して前記媒体対向面から遠い位置において前記第2の側部と第2の側壁との間に配置されていることを特徴とする請求項7記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記主磁極は、前記媒体対向面に配置された第1の端縁とその反対側の第2の端縁とを有する第1の部分と、前記第1の部分よりも前記媒体対向面から遠い位置に配置され、前記第2の端縁において前記第1の部分に接続された第2の部分とを含む上面を有し、前記第1の部分における任意の位置の前記下部シールドの上面からの距離は、前記任意の位置が前記媒体対向面に近づくに従って小さくなり、
前記主磁極を形成する工程は、
後に前記主磁極となる磁性層を形成する工程と、
前記主磁極の上面における前記第1の部分が形成されるように、前記磁性層の一部をエッチングする工程を備えたことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録用磁気ヘッドの製造方法。
【請求項10】
記録媒体に対向する媒体対向面と、
前記記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生するコイルと、
前記媒体対向面に配置された端面を有し、前記コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって前記情報を前記記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
磁性材料よりなり、前記媒体対向面において前記主磁極の端面の周りを囲むように配置された端面を有するシールドと、
非磁性材料よりなり、前記主磁極と前記シールドとの間に設けられたギャップ部とを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドであって、
前記シールドは、下部シールドと、第1および第2のサイドシールドと、上部シールドとを含み、
前記下部シールドは、前記媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された端面と、上面とを有し、
前記第1および第2のサイドシールドは、媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対してトラック幅方向の両側に配置された2つの端面を有し、
前記上部シールドは、前記媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された端面を有し、
前記ギャップ部は、前記主磁極と下部シールドの間ならびに前記主磁極と第1および第2のサイドシールドとの間に配置された第1のギャップ層と、前記主磁極と上部シールドとの間に配置された第2のギャップ層とを含み、
前記主磁極は、前記下部シールドの上面からより遠い上面と、前記主磁極の上面とは反対側の下端と、第1ないし第6の側面とを有し、
前記主磁極の端面のトラック幅方向の幅は、前記主磁極の下端に近づくに従って小さくなり、
前記第1および第2の側面は、前記媒体対向面から50〜500nmの範囲内の距離だけ離れた位置から前記媒体対向面までの第1の領域において互いに反対側に配置され、
前記第3および第4の側面は、前記第1の領域以外の第2の領域に配置され、
前記第5の側面は、前記第1の領域と第2の領域との境界位置に配置され、前記第1の側面と第3の側面とを接続し、
前記第6の側面は、前記第1の領域と第2の領域との境界位置に配置され、前記第2の側面と第4の側面とを接続し、
トラック幅方向についての前記第1の側面と第2の側面の間隔は、前記主磁極の下端に近づくに従って小さくなり、
前記第1の領域と第2の領域との境界位置において、最も主磁極の下端に近い位置におけるトラック幅方向についての前記第3の側面と第4の側面の間隔は、最も主磁極の下端に近い位置におけるトラック幅方向についての前記第1の側面と第2の側面の間隔よりも大きく、
第5の側面の幅と第6の側面の幅は、いずれも、主磁極の下端に近づくに従って大きくなり、
前記第1のサイドシールドは、それぞれ前記主磁極の第1および第3の側面に対向する2つの壁面を有し、
前記第2のサイドシールドは、それぞれ前記主磁極の第2および第4の側面に対向する2つの壁面を有することを特徴とする垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項11】
前記主磁極の上面は、前記媒体対向面に配置された第1の端縁とその反対側の第2の端縁とを有する第1の部分と、前記第1の部分よりも前記媒体対向面から遠い位置に配置され、前記第2の端縁において前記第1の部分に接続された第2の部分とを含み、前記第1の部分における任意の位置の前記下部シールドの上面からの距離は、前記任意の位置が前記媒体対向面に近づくに従って小さくなることを特徴とする請求項10記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項12】
記録媒体に対向する媒体対向面と、
前記記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生するコイルと、
前記媒体対向面に配置された端面を有し、前記コイルによって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって前記情報を前記記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
磁性材料よりなり、前記媒体対向面において前記主磁極の端面の周りを囲むように配置された端面を有するシールドと、
非磁性材料よりなり、前記主磁極と前記シールドとの間に設けられたギャップ部とを備えた垂直磁気記録用磁気ヘッドであって、
前記シールドは、下部シールドと、第1および第2のサイドシールドと、上部シールドとを含み、
前記下部シールドは、前記媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対して記録媒体の進行方向の後側に配置された端面と、上面とを有し、
前記第1および第2のサイドシールドは、媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対してトラック幅方向の両側に配置された2つの端面を有し、
前記上部シールドは、前記媒体対向面において前記主磁極の前記端面に対して記録媒体の進行方向の前側に配置された端面を有し、
前記ギャップ部は、前記主磁極と下部シールドとの間ならびに前記主磁極と第1および第2のサイドシールドとの間に配置された第1のギャップ層と、前記主磁極と上部シールドとの間に配置された第2のギャップ層とを含み、
前記主磁極は、前記下部シールドの上面からより遠い上面と、前記主磁極の上面とは反対側の下端と、第1および第2の側部とを有し、
前記第1のサイドシールドは、前記主磁極の第1の側部に対向する第1の側壁を有し、
前記第2のサイドシールドは、前記主磁極の第2の側部に対向する第2の側壁を有し、
前記第1の側部は、前記媒体対向面から所定の距離だけ離れた第1の位置において、第1の角が形成されるように屈曲し、
前記第2の側部は、前記媒体対向面から前記所定の距離だけ離れた第2の位置において、第2の角が形成されるように屈曲し、
前記第1の位置を始点として、前記媒体対向面から離れるに従って、トラック幅方向についての前記第1の側部と第1の側壁の間隔が徐々に大きくなり、
前記第2の位置を始点として、前記媒体対向面から離れるに従って、トラック幅方向についての前記第2の側部と第2の側壁の間隔が徐々に大きくなることを特徴とする垂直磁気記録用磁気ヘッド。
【請求項13】
更に、非磁性材料よりなる非磁性層を備え、前記非磁性層は、前記第1の位置に対して前記媒体対向面から遠い位置において前記第1の側部と第1の側壁との間に配置された第1の部分と、前記第2の位置に対して前記媒体対向面から遠い位置において前記第2の側部と第2の側壁との間に配置された第2の部分とを有することを特徴とする請求項12記載の垂直磁気記録用磁気ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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