説明

主磁極の製造方法及び主磁極、並びに垂直磁気ヘッド

【課題】主磁極のライトコア幅の狭小化を図る。
【解決手段】ハードマスク(Au)20と、Ta膜18とを熱処理(アニール処理)して、AuをTa中に拡散させることにより、Ta膜のエッチング耐性を高くする。これにより、アルミナ層16にパターンを形成するRIEの際に、Ta膜18がエッチング(サイドエッチング)されるのを抑制することができる。このようにすることで、アルミナ層16に形成するパターンがハードマスク(Au)20に形成された開口パターン20aよりも広がるのを抑制することができ、ひいては主磁極414のライトコア幅の狭小化を図ることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主磁極の製造方法及び主磁極、並びに垂直磁気ヘッドに関し、特に垂直磁気記録方式で磁気記憶媒体に情報を記録する記録素子に含まれる主磁極及びその製造方法、並びに当該主磁極を具備する垂直磁気ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報記録装置(例えば、HDD(ハードディスクドライブ))に対し、大容量化、高記録密度化の要請が高まってきている。高記録密度化のためには磁気記憶媒体(磁気ディスク)のビット長を小さくすれば良いが、従来の面内記録方式では熱揺らぎが大きいため限界がある。このため、最近では、磁気記録媒体を垂直方向に磁化して情報を記録する垂直記録方式に関する研究開発が盛んに行われている。
【0003】
このような垂直記録方式のHDDにおいて高記録密度化を図るためには、磁気ディスク上のトラックをなるべく狭くする(狭トラック化する)必要がある。しかるに、狭トラック化した場合、隣接トラックへのはみ出し記録、すなわちサイドイレーズが発生するおそれがある。このため、最近では、サイドイレーズ対策として、記録ヘッドが有する主磁極の形状を逆台形(又は略三角形)とする方法が提案されている。また、この主磁極を製造する方法の一つとして、ダマシンプロセスを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
図8(a)〜図9(d)には、ダマシンプロセスを用いた主磁極の形成方法が示されている。この形成方法によると、図8(a)に示すように、アルミナ(Al23)層112、ルテニウム(Ru)層114、アルミナ層116の順に積層された上に、密着層かつCMPストッパとして用いられるタンタル(Ta)膜118を成膜後、アルミナドライエッチング用のハードマスク(金(Au))120を成膜する。また、ハードマスク120上にレジスト122を塗布した後、レジスト122に対して露光処理を行って、パターン122aを形成する。
【0005】
次いで、図8(b)に示すように、レジスト122をマスクとして、ハードマスク(Au)120を物理的異方性エッチング(イオンミリング)し、開口パターン120aを形成する。
【0006】
次いで、図8(c)に示すように、Ta膜118を、エッチング(RIE(Reactive Ion Etching))し、開口パターン118aを形成する。次いで、図8(d)に示すように、レジスト122を剥離する。
【0007】
次いで、図9(a)に示すように、ハードマスク(Au)120をエッチングマスクとして、アルミナ層116のドライエッチングを行う。次いで、図9(b)に示すように、ライトコア幅調整用のアルミナ124の成膜及び磁極めっき用のめっきベース(Ru)126の成膜を行い、更にこれに続けて磁極材料128のめっきを行う。
【0008】
そして、図9(c)に示すように、Ta膜118をCMPストッパとして、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて上層側から研磨し、全体を平坦にする。更に、図9(d)に示すように、トレーリングシールドギャップ用のアルミナ130を成膜することにより、主磁極414が製造される。
【0009】
【特許文献1】特開2008−204566号公報
【特許文献2】特開2008−217846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、密着層かつCMPストッパとして用いられるタンタル(Ta)116は、ハードマスク(Au)に比べてエッチング耐性が低い。このため、図9(a)において点線で囲んだ部分(符号SE)に示すように、アルミナ(Al23)層116のドライエッチングを行う際には、タンタル(Ta)膜118の開口パターン118aのエッジ部分までエッチングされてしまう(これを、「サイドエッチング」とも呼ぶ)。これにより、アルミナ層116は、ハードマスク(Au)120(開口パターン120a)で規定されているよりも広い範囲でエッチングされ、ひいては、主磁極のコア幅(ライトコア幅)が、ハードマスクで規定された幅よりも大きくなってしまうおそれがある。
【0011】
なお、半導体分野においては、ハードマスクで規定された開口よりも狭いパターンを作成する方法として、特開平10−92791号公報や特開2004−319805号公報に開示の技術が提案されている。これらは、ハードマスクの開口部に側壁を形成して下層の絶縁層をエッチングするものであり、図8、図9の如き主磁極の製造に適用することも可能である。しかしながら、この技術を適用しても、上述したタンタル(Ta)のエッチング耐性による影響が改善されるわけではなく、また側壁自体のエッチング耐性も保障できないことから、依然として主磁極の形状や寸法等に影響が出ることが懸念される。
【0012】
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ライトコア幅の狭小化が可能な主磁極の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、高記録密度での情報の記録が可能な主磁極及び垂直磁気ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書に記載の主磁極の製造方法は、第1の材料から成る第1のパターン形成部材と前記第1の材料よりもエッチング耐性の高い第2の材料から成る第2のパターン形成部材とを基材上に順次成膜する工程と、前記第2のパターン形成部材に開口パターンを形成する工程と、前記第2のパターン形成部材に形成された開口パターンを用いて、当該開口パターンと同一形状の開口パターンを前記第1のパターン形成部材に形成する工程と、前記第2のパターン形成部材及び前記第1のパターン形成部材を熱処理して、前記第2の材料を前記第1の材料中に拡散させる工程と、前記第1、第2のパターン形成部材に形成された開口パターンを用いて、化学的異方性エッチングにより前記基材にパターンを形成する工程と、前記基材に形成されたパターンに主磁極形成部材を成膜して、主磁極を形成する工程と、を含んでいる。
【0014】
これによれば、開口パターンが形成された第1、第2のパターン形成部材を熱処理して、第2のパターン形成部材を構成する第2の材料を第1のパターン形成部材を構成する第1の材料中に拡散させることにより、第1のパターン形成部材のエッチング耐性を高くすることができる。したがって、基材にパターンを形成する化学的異方性エッチングの際に、第1のパターン形成部材がエッチングされるのを抑制することができる。これにより、基材に形成するパターンの広がりを抑制することができ、ひいてはライトコア幅の狭小化を図ることが可能となる。
【0015】
本明細書に記載の主磁極の製造方法は、第1の材料から成る第1のパターン形成部材と前記第1の材料よりもエッチング耐性の高い第2の材料から成る第2のパターン形成部材とを基材上に順次成膜する工程と、前記第2のパターン形成部材に開口パターンを形成する工程と、前記第2のパターン形成部材に形成された開口パターンを用いて、当該開口パターンと同一形状の開口パターンを前記第1のパターン形成部材に形成する工程と、前記第2のパターン形成部材に形成された開口パターンのエッジ部分に、前記第1の材料から成る一定の厚さの壁状部材を設ける工程と、前記第1、第2のパターン形成部材及び前記壁状部材を熱処理して前記第2の材料を前記第1の材料中に拡散させる工程と、前記第1、第2のパターン形成部材及び前記壁状部材により規定される開口パターンを用いて、化学的異方性エッチングにより前記基材にパターンを形成する工程と、前記基材に形成されたパターンに主磁極形成部材を成膜して、主磁極を形成する工程と、を含んでいる。
【0016】
これによれば、開口パターンが形成された第1、第2のパターン形成部材及び開口パターンのエッジ部分に設けられた壁状部材を熱処理して、第2のパターン形成部材を構成する第2の材料を第1のパターン形成部材及び壁状部材を構成する第1の材料中に拡散させることにより、第1のパターン形成部材及び壁状部材のエッチング耐性を高くすることができる。したがって、基材にパターンを形成する化学的異方性エッチングの際に、第1のパターン形成部材及び壁状部材がエッチングされるのを抑制することができるので、基材に形成するパターンの広がりを抑制することができる。また、壁状部材が開口パターンのエッジ部分に設けられることから、開口パターンの開口部分を狭めることができるので、基材に形成するパターンの広がりをより抑制することが可能である。このように、本明細書に記載の主磁極の製造方法によれば、基材に形成されるパターンの狭小化を図ることができ、ひいては、主磁極のライトコア幅の狭小化を図ることが可能となる。
【0017】
本明細書に記載の主磁極は、本明細書に記載の主磁極の製造方法により製造された主磁極である。
【0018】
これによれば、ライトコア幅が狭小化されているので、高記録密度での情報の記録が可能となる。
【0019】
本明細書に記載の垂直磁気ヘッドは、本明細書に記載の主磁極を具備する垂直磁気ヘッドである。
【0020】
これによれば、高記録密度での情報記録が可能な主磁極を具備するので、高記録密度での情報の記録、及びその情報の再生が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本明細書に記載の主磁極の製造方法は、ライトコア幅の狭小化を図ることができるという効果を奏する。また、本明細書に記載の主磁極及び垂直磁気ヘッドは、高記録密度での情報の記録ができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
≪第1の実施形態≫
以下、本発明の垂直記録ヘッド、及び垂直記録ヘッドが備える主磁極、及びその製造方法の第1の実施形態について、図1〜図4に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1(a)は、ヘッドスライダ34に設けられた垂直磁気ヘッドとしての磁気ヘッド40の模式図である。本第1の実施形態では、磁気ヘッド40として、垂直磁気記録方式の磁気ヘッドが用いられており、磁気ディスク220の回転(図1(a)の矢印D方向への回転)により、磁気ディスク220のトラックの長手方向に沿って、磁気ディスク220に対して矢印D方向とは逆方向(矢印E方向)に相対移動する。
【0024】
この磁気ヘッド40は、記録ヘッド41と、上部磁気シールド42と、下部磁気シールド43と、磁気シールド42,43の間に設けられた再生用センサヘッド(MR素子)44と、を備える。
【0025】
記録ヘッド41は、主磁極414と、リターンヨーク411と、情報記録用のコイル413とを有する。コイル413に電流が供給されると、主磁極414から出た磁束は、磁気ディスク220を構成する硬磁性層をまっすぐ通り抜けて、硬磁性層の下方に存在する軟磁性層に到達し、軟磁性層及びリターンヨーク411を経由して主磁極414に戻る。
【0026】
図1(b)は、図1(a)の磁気ヘッド40の底面図である。この図1(b)に示すように、主磁極414の磁気ディスク220と対向する面の形状は、略二等辺三角形状となっている。ただし、これに限られるものではなく、主磁極414の磁気ディスク220と対向する面の形状は、台形状であっても良い。
【0027】
次に、本第1の実施形態における主磁極414の製造方法について、図2〜図4(e)に基づいて説明する。本実施形態では、主磁極414を製造する方法として、ダマシンプロセスが用いられている。
【0028】
図2には、主磁極414の製造手順がフローチャートにて示され、図3(a)〜図4(e)には、図2の各工程が模式的に示されている。まず、図2のステップS10では、成膜処理及びパターニング処理を行う。具体的には、図3(a)に示すように、アルミナ(Al23)層12、ルテニウム(Ru)層14、基材としてのアルミナ(Al23)層16の順に積層された上から、密着層かつCMPストッパとして用いられる第1のパターン形成部材としてのタンタル(Ta)膜18を成膜後、第2のパターン形成部材としてのアルミナドライエッチング用のハードマスク(金(Au))20を成膜する。また、ハードマスク20上にレジスト22を塗布した後、露光装置を用いて露光処理を行いレジスト22にパターン22aを形成する。なお、レジスト22に形成されるパターン22aは、図1(a)の主磁極414を、図1(a)の紙面右側から見た形状と同一形状、同一寸法を有しているものとする。
【0029】
次いで、ステップS12(図2参照)では、図3(b)に示すように、レジスト22をマスクとしてハードマスク(Au)20を物理的異方性エッチング(イオンミリング)し、パターン22aと同一形状の開口パターン20aを形成する。
【0030】
次いで、ステップS14(図2参照)では、図3(c)に示すように、レジスト22をマスクとして、Ta膜18を、フッ素系ガス(CF4,CHF3等)を用いてエッチング(RIE(Reactive Ion Etching))し、パターン22aと同一形状の開口パターン18aを形成する。
【0031】
次いで、ステップS16(図2参照)では、図3(d)に示すように、レジスト22を剥離する。
【0032】
次いで、ステップS18(図2参照)では、ハードマスク(Au)20及びTa膜18を熱処理(アニール処理)する。この熱処理(アニール処理)は、300℃〜350℃の温度範囲で1分〜5分程度行うことが望ましい。このアニール処理により、図4(a)において矢印にて示すように、ハードマスク20の材料である金(Au)が、Ta膜18の材料であるタンタル(Ta)内に拡散するようになっている。
【0033】
次いで、ステップS20(図2参照)では、図4(b)に示すように、ハードマスク(Au)20をエッチングマスクとして、アルミナ(Al23)層16をドライエッチング(塩素系ガス(BCl3等)を用いたRIE(Reactive Ion Etching))する。この場合、アルミナ(Al23)層16との界面に位置するTa膜18には、上記アニール処理によりAuが拡散し、混入しているので、アルミナ(Al23)層16のドライエッチング(RIE)に対して高いエッチング耐性を有している。すなわち、選択比(=エッチングする膜(アルミナ層16)のエッチング速度/アニール処理後のTa膜18のエッチング速度)が非常に高くなっている。これにより、上述したサイドエッチングの発生を抑制することが可能である。
【0034】
次いで、ステップS22(図2参照)では、図4(c)に示すように、ライトコア幅調整用のアルミナ24の成膜及び磁極めっき用のめっきベース(Ru)26の成膜を行い、更にこれに続けて主磁極形成部材としての磁極材料28のめっきを行う。
【0035】
そして、ステップS24(図2参照)では、図4(d)に示すように、Ta膜18をCMPストッパとして用い、上層側からCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨して全体を平坦にする。
【0036】
更に、ステップS26(図2参照)では、図4(e)に示すように、Ta膜18の上層側からトレーリングシールドギャップ用のアルミナ(Al23)30を成膜する。
【0037】
本第1の実施形態では、以上のような製造工程を経ることで、主磁極414が製造されるようになっている。
【0038】
以上、詳細に説明したように、本第1の実施形態によると、ハードマスク(Au)20と、Ta膜18とを熱処理(アニール処理)して、AuをTa中に拡散させることにより、Ta膜18のエッチング耐性を高くするので、アルミナ層16にパターンを形成するRIEの際に、Ta膜18がエッチング(サイドエッチング)されるのを抑制することができる。これにより、従来のように(図9(a)参照)、アルミナ層16に形成するパターンがハードマスク(Au)20に形成された開口パターン20aよりも広がるのを抑制することができ、ひいては主磁極414のライトコア幅の狭小化を図ることが可能である。また、本第1の実施形態では、はじめからAuとTaの合金を用いず、AuとTaの膜を形成後、主磁極414の製造工程の途中で熱処理(アニール処理)によりAuをTa中に拡散させることとしているので、物理的異方性エッチング(イオンミリング)(図3(b)参照)によってTa膜18やその下のアルミナ層16がイオンミリングされるのを抑制することができる。これにより、主磁極414の製造を設計値どおり、精度良く行うことができる。
【0039】
また、本第1の実施形態の記録ヘッド41によると、主磁極414のライトコア幅の狭小化により、高記録密度での情報の記録が可能である。
【0040】
≪第2の実施形態≫
次に、本発明の第2の実施形態について、図5、図6(a)〜図7(c)に基づいて説明する。
【0041】
図5には、本第2の実施形態に係る主磁極の製造手順がフローチャートにて示されている。この図5から分かるように、ステップS10〜S16は、上述した第1の実施形態と同一の処理を実行する(ここまでの処理により、図3(d)と同一の構造物が製造される)。しかしながら、これ以降の処理は、第1の実施形態とは異なっている。
【0042】
ステップS16の終了後、ステップS17aでは、図6(a)に示すように、図3(d)の構造物の上面に壁状部材形成層77をスパッタリングする。この壁状部材形成層77の材料としては、Ta膜18と同様、タンタル(Ta)を用いることができる。
【0043】
次いで、ステップS17bでは、フッ素系ガス(CF4,CHF3等)を用いて壁状部材形成層77を化学的異方性エッチング(RIE)処理し、開口パターン20a,18aのエッジ部分に存在している(接触している)部分以外の部分を除去する。なお、このステップS17b後に残存した壁状部材形成層77の一部を、壁状部材(又はサイドウォール)77’と呼ぶものとする。
【0044】
次いで、ステップS18(図5参照)のアニール処理では、第1の実施形態と同様、300℃〜350℃の温度範囲で1分〜5分程度の熱処理を行うが、本第2の実施形態では、図6(c)において矢印にて示すように、ハードマスク20の材料であるAuは、Ta膜18の材料であるTaに拡散するとともに、壁状部材77’の材料であるTaにも拡散するようになっている。
【0045】
次いで、ステップS20では、第1の実施形態と同様、図6(d)に示すように、アルミナ(Al23)層16を塩素系ガス(BCl3等)を用いてエッチングする。この場合、Ta膜18及び壁状部材77’には、上記のように拡散によりAuが混入しているため、アルミナ(Al23)層16のドライエッチングに対して高いエッチング耐性を有している(すなわち、高選択比となっている)。このため、上述したサイドエッチング(図9(a)参照)が抑制されるようになっている。
【0046】
その後は、第1の実施形態と同様、ステップS22(図5参照)にて、図7(a)に示すように、ライトコア幅調整用のアルミナ24の成膜及び磁極めっき用のめっきベース(Ru)26の成膜、磁極材料28のめっきを行い、ステップS24にて、図7(b)に示すように、Ta膜18をCMPストッパとしてCMP法を用いて上層側から研磨し、全体を平坦にし、更に、ステップS26にて、図7(c)に示すように、トレーリングシールドギャップ用のアルミナ(Al23)30を成膜することにより、主磁極414の製造が完了する。
【0047】
以上、詳細に説明したように、本第2の実施形態によると、ハードマスク(Au)20と、Ta膜18及び壁状部材77’とを熱処理(アニール処理)して、AuをTa中に拡散させることにより、Ta膜18のエッチング耐性及び壁状部材77’のエッチング耐性を高くするので、アルミナ層16にパターンを形成するRIEの際に、Ta膜18及び壁状部材77’がエッチング(サイドエッチング)されるのを抑制することができる。これにより、従来のように(図9(a)参照)、アルミナ層16に形成するパターンがハードマスク(Au)20に形成された開口パターン20aよりも広がるのを抑制することができ、ひいては主磁極414のライトコア幅の狭小化を図ることが可能である。また、本第2の実施形態では、はじめからAuとTaの合金を用いず、AuとTaの膜を形成後、主磁極414の製造工程の途中で熱処理(アニール処理)によりAuをTa中に拡散させることとしているので、物理的異方性エッチング(イオンミリング)によってTa膜18やその下のアルミナ層16がイオンミリングされるのを抑制することができる。また、図5のステップS17b(図6(b))における磁壁部材形成層77のRIE処理も容易に行うことが可能である。
【0048】
また、本第2の実施形態によると、開口パターン20a,18aのエッジ部分に壁状部材77’が設けられるので、アルミナ層16に形成されるパターン16aの幅を第1の実施形態よりも狭小化することができ、ひいては主磁極414のライトコア幅を、第1の実施形態よりも狭小化することができる。
【0049】
また、本第2の実施形態の記録ヘッド41によると、主磁極414のライトコア幅の狭小化により、高記録密度での情報の記録が可能である。
【0050】
また、本第2の実施形態では、壁状部材形成材料77を成膜する工程、及び壁状部材形成材料77の一部を残して除去する工程を経て、壁状部材77’を開口パターンのエッジ部分にのみ設けることとしているので、一定の厚さの壁状部材77’を開口パターンのエッジ部分に簡易に設けることが可能である。ただし、これに限らず、壁状部材77’を上記とは別の方法を用いて設けることとしても良い。
【0051】
なお、上記各実施形態では、TaとAuを用い、これらをアニール処理することによりTaのエッチング耐性を高くし、選択比(アルミナ層16のエッチング速度/アニール処理後のTaのエッチング速度)を高くする場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、熱処理(アニール処理)により上記と同様のエッチング耐性、選択比とすることが可能な材料の組み合わせであれば、その他種々の材料を採用することが可能である。
【0052】
上述した各実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1(a)は、第1の実施形態に係る磁気ヘッドの模式図であり、図1(b)は、図1(a)の底面図である。
【図2】第1の実施形態に係る主磁極の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態に係る主磁極の製造方法を模式的に示す図(その1)である。
【図4】第1の実施形態に係る主磁極の製造方法を模式的に示す図(その2)である。
【図5】第2の実施形態に係る主磁極の製造方法を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施形態に係る主磁極の製造方法を模式的に示す図(その1)である。
【図7】第2の実施形態に係る主磁極の製造方法を模式的に示す図(その2)である。
【図8】従来技術に係る主磁極の製造方法を模式的に示す図(その1)である。
【図9】従来技術に係る主磁極の製造方法を模式的に示す図(その2)である。
【符号の説明】
【0054】
16 基材(アルミナ層)
16a パターン
18 Ta膜(第1のパターン形成部材)
18a 開口パターン
20 ハードマスク(第2のパターン形成部材)
20a 開口パターン
28 磁極材料(主磁極形成部材)
40 磁気ヘッド(垂直磁気ヘッド)
77’ 壁状部材
414 主磁極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の材料から成る第1のパターン形成部材と前記第1の材料よりもエッチング耐性の高い第2の材料から成る第2のパターン形成部材とを基材上に順次成膜する工程と、
前記第2のパターン形成部材に開口パターンを形成する工程と、
前記第2のパターン形成部材に形成された開口パターンを用いて、当該開口パターンと同一形状の開口パターンを前記第1のパターン形成部材に形成する工程と、
前記第2のパターン形成部材及び前記第1のパターン形成部材を熱処理して、前記第2の材料を前記第1の材料中に拡散させる工程と、
前記第1、第2のパターン形成部材に形成された開口パターンを用いて、化学的異方性エッチングにより前記基材にパターンを形成する工程と、
前記基材に形成されたパターンに主磁極形成部材を成膜して、主磁極を形成する工程と、を含む主磁極の製造方法。
【請求項2】
第1の材料から成る第1のパターン形成部材と前記第1の材料よりもエッチング耐性の高い第2の材料から成る第2のパターン形成部材とを基材上に順次成膜する工程と、
前記第2のパターン形成部材に開口パターンを形成する工程と、
前記第2のパターン形成部材に形成された開口パターンを用いて、当該開口パターンと同一形状の開口パターンを前記第1のパターン形成部材に形成する工程と、
前記第2のパターン形成部材に形成された開口パターンのエッジ部分に、前記第1の材料から成る一定の厚さの壁状部材を設ける工程と、
前記第1、第2のパターン形成部材及び前記壁状部材を熱処理して前記第2の材料を前記第1の材料中に拡散させる工程と、
前記第1、第2のパターン形成部材及び前記壁状部材により規定される開口パターンを用いて、化学的異方性エッチングにより前記基材にパターンを形成する工程と、
前記基材に形成されたパターンに主磁極形成部材を成膜して、主磁極を形成する工程と、を含む主磁極の製造方法。
【請求項3】
前記壁状部材を設ける工程は、
前記第1の材料を前記第2のパターン形成部材の前記開口パターンを含む領域に成膜する工程と、
前記成膜する工程で成膜された第1の材料のうち、前記開口パターンのエッジ部分に存在する部分以外を除去する工程と、を含むことを特徴とする請求項2に記載の主磁極の製造方法。
【請求項4】
前記第1の材料は、Taであり、前記第2の材料は、Auであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の主磁極の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の主磁極の製造方法により製造された主磁極。
【請求項6】
請求項5に記載の主磁極を具備する垂直磁気ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−92565(P2010−92565A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264134(P2008−264134)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】