説明

乗客コンベアのデッキボード

【課題】エスカレータや動く歩道等の乗客コンベアの屋外環境設備のデッキボードにおいて、雨樋を設けることにより雨水等が乗客コンベア内に侵入し機器異常を発生させることを防止でき、また、雨樋を外装受けデッキと一体構造とすることで、取付作業性を向上させ、容易に取り付けることができる乗客コンベアのデッキボード。
【解決手段】乗客コンベアのデッキボードAは、隣接部Bとの接続に介在する外装受けデッキ5を備えた乗客コンベアのデッキボードAにおいて、前記外装受けデッキ5と隣接部Bとの間隙に雨樋6を設けたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータや動く歩道等の乗客コンベアにおけるデッキボードの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアの欄干は、図6に示すように、コンベアの移動方向と同期移動する移動手摺101とその下部に構成されるデッキボード10Aとを備えており、該デッキボード10Aは、主として、移動手摺101の下部に位置する手摺デッキ102、該手摺デッキ102のコンベアとは逆側の外方において、横方向に連設される主デッキ103、主デッキ103を支持する欄干柱104、及び、主デッキ103の横方向に連設される外装受けデッキ105から構成される。この外装受けデッキ105の外方は、建物などの壁面に固定されるか、又は、乗客コンベアが複数列設置されている場合の隣接する乗客コンベアの外装受けデッキと連結固定される。前記手摺デッキ102、主デッキ103及び外装受けデッキ105は、それぞれ一定の長さで乗客コンベアの長さ方向に継ぎ足されながら連続して乗客コンベアの欄干のデッキボード10Aを形成する。屋外設置の乗客コンベアでは、手摺デッキ102、主デッキ103及び外装受けデッキ105の継ぎ目部分108より雨水等が乗客コンベア内に侵入し、この雨水等の侵入により機器異常を起こすおそれがあり、そのため継ぎ目部分108に透明形コーキング剤による防水施工がなされている。
【0003】
また、下記特許文献1に示すように、移動手摺に雨滴が付着するのを防止するために移動手摺の上部にカバーを設置する提案がなされている。
【0004】
しかしながら、上記の提案は利用者に移動手摺を把持することに不快感を覚えさせず、移動手摺を常に把持させることを目的とする安全対策であり、乗客コンベアの内部に雨水等が侵入する防水対策としては不十分である。
【0005】
また、コーキング剤による防水施工については、多量の雨等が降った場合には、コーキング剤による防水施工だけでは機能が十分でない状況が発生し、多量の雨水等が乗客コンベア内に侵入して錆等の発生原因となっていた。すなわち、継ぎ目部分108からの漏水は防止できても、主デッキ103上を雨水が流れ出し、雨水等が外装受けデッキ105にまで及び、外装受けデッキ105と、建物などの壁面との隙間、又は、隣接する乗客コンベアの外装受けデッキとの隙間から乗客コンベアの内部に侵入するという事態が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平7−2372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、エスカレータや動く歩道等の乗客コンベアの屋外環境設備のデッキボードにおいて、雨樋を設けることにより雨水等が乗客コンベア内に侵入して機器異常を発生させるのを防止でき、また、雨樋を外装受けデッキと一体構造とすることで、取付作業性を向上させ、容易に取り付けることができる乗客コンベアのデッキボードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る乗客コンベアのデッキボードは、隣接部との接続に介在する外装受けデッキを備えた乗客コンベアのデッキボードにおいて、前記外装受けデッキと隣接部との間隙に雨樋を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記の構成に加えて、前記外装受けデッキが、その端部に隣接部への取付用の垂下板を有し、該垂下板は標準仕様の垂下板より長尺の垂下板であり、雨樋が垂直壁と底壁とからなる断面L字型をなし、垂下板の内面側に雨樋の垂直壁を重ね合わせて取着部材をもって取り付け、雨樋の底壁を隣接部に水密的に取着可能とした構成としてもよい。
【0010】
さらに、前記の構成に加えて、複数配列された乗客コンベアにおいて、各コンベアの外装受けデッキが、その端部に隣接部への取付用の標準仕様の垂下板より長尺の垂下板を有しており、雨樋が2つの垂直壁と1つの底壁とからなる上方が開口した角筒型をなし、隣接する外装受けデッキの垂下板を重ね合わせ、この重ね合わせ部を雨樋内に位置させ、かつ、この重ね合わせ部に雨樋の一方の垂直壁を重ね合わせて取着部材をもって取り付けた構成としてもよい。
【0011】
さらにまた、前記の構成に加えて、複数配列された乗客コンベアにおいて、一方のコンベアの外装受けデッキが、その端部に隣接部への取付用の標準仕様の垂下板を有しており、他方のコンベアの外装受けデッキが、その端部に隣接部への取付用の前記標準仕様の垂下板より長尺の垂下板を有しており、雨樋が2つの垂直壁と1つの底壁とからなる上方が開口した角筒型をなし、隣接する外装受けデッキの垂下板を重ね合わせ、この重ね合わせ部を雨樋内に位置させ、かつ、雨樋の一方の垂直壁を長尺の垂下板に重ね合わせて取着部材をもって取り付けた構成としてもよい。
【0012】
また、前記の構成に加えて、垂下板に対する雨樋の取付が、垂下板と垂直壁とを重ね合わせて両者を横方向から貫通して締結する取着部材によって取付固定された構成としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
エスカレータや動く歩道等の乗客コンベアの屋外環境設備のデッキボードにおいて、雨樋を設けることにより雨水等が乗客コンベア内に侵入し機器異常を発生させることを防止できる。また、雨樋は外装受けデッキと一体構造とすることで、取付作業性も向上し、容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1に係る乗客コンベアのデッキボードの部分概略図であって、図中の(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図2】図1(b)の要部拡大図である。
【図3】本発明の実施例2に係る乗客コンベアのデッキボードの部分概略図であって、図中の(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図4】図3(b)の要部拡大図である。
【図5】本発明の実施例3に係る乗客コンベアのデッキボードの要部拡大図である。
【図6】従来技術の乗客コンベアのデッキボードの部分概略図であって、図中の(a)は平面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る乗客コンベアのデッキボードの実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0016】
図1、2は、本発明の第1の実施形態のデッキボードの雨樋に関する。乗客コンベアの欄干は、コンベアの移動方向と同期移動する移動手摺1とその下部に構成されるデッキボードAとを備えており、該デッキボードAは、主として手摺デッキ、主デッキ、欄干柱及び外装受けデッキとから構成される。各図において、1は移動手摺、2は移動手摺1の下部に位置する手摺デッキである。該手摺デッキ2のコンベアとは逆側の外方において、横方向に主デッキ3が連設されている。該主デッキ3は欄干柱4により支持され、主デッキ3の横方向に外装受けデッキ5が連設されている。
【0017】
前記外装受けデッキ5の外方は、従来例であれば、建物などの壁面に固定されるか、又は、乗客コンベアが複数列設置されている場合の隣接する乗客コンベアの外装受けデッキと連結固定される。本実施例は、外装受けデッキ5の外方が、建物などの壁面に固定される場合に関しての雨樋設置例である。前記手摺デッキ2、主デッキ3及び外装受けデッキ5は、それぞれ一定の長さで乗客コンベアの長さ方向に継ぎ足されながら連続して乗客コンベアの欄干のデッキボードAを形成している。また、手摺デッキ2、主デッキ3及び外装受けデッキ5の継ぎ目部分8には、雨水等が乗客コンベア内に侵入するのを防止するために透明形コーキング剤による防水施工がなされている。
【0018】
そして、本実施例に係るデッキボードAには、外装受けデッキ5との隣接部である外壁Bとの間隙に単列用雨樋6が設けられている。すなわち、前記外装受けデッキ5は、その端部に標準仕様として形成されている外壁Bへの取付用の垂下板より長尺の垂下板5aを有している。一方、単列用雨樋6は垂直壁6aと底壁6bとからなる断面L字型をなしており、垂下板5aの内面側5a’に単列用雨樋6の垂直壁6aを重ね合わせて取着部材Pをもって取り付け、単列用雨樋6の底壁6bを外壁Bに水密的に取着可能としている。また、垂下板5aに対する単列用雨樋6の取付は、垂下板5aと垂直壁6aとを重ね合わせて両者を横方向から貫通して締結する取着部材Pによって取付固定されている。
【0019】
以上のように、本実施例における乗客コンベアのデッキボードAは、外装受けデッキ5の下部に単列用雨樋6が取り付けられており、これにより多量の水が乗客コンベア内に侵入することが軽減できる。また、外装受けデッキ5と単列用雨樋6は一体成形品が理想であるが、デッキボードAが乗客コンベアの傾斜部から水平部に移行する湾曲部分においては30°曲げの技術が必要であり、乗客コンベアの往路と復路とのUターンの湾曲部分においては180°曲げの技術が必要であるため、単列用雨樋6をリベット等の取着部材Pによる締結方式にて分割構造とすることで、単品加工性を向上させ、また、リベット等により一体品となっていることで、現地での固定作業が容易にできるものである。
【実施例2】
【0020】
図3、4は、本発明の第2の実施形態のデッキボードの雨樋に関する。本実施例は、外装受けデッキ5の外方が、乗客コンベアが複数列設置されている場合の隣接する乗客コンベアの外装受けデッキと連結固定される場合に関しての雨樋設置例である。したがって、実施例1において説明した技術内容と重複する部分は、実施例1の説明を援用すると共に、図における引用符号も実施例1と同一のものを使用する。
【0021】
本実施例に係る乗客コンベアのデッキボード2Aには、複数配列された乗客コンベアにおいて、外装受けデッキ5と隣接部である他の乗客コンベアの外装受けデッキ5との間隙に並列用雨樋7が設けられている。すなわち、前記外装受けデッキ5は、その端部に標準仕様として形成されている外壁Bへの取付用の垂下板より長尺の垂下板5aを有している。一方並列用雨樋7は、2つの垂直壁7a、7a’と1つの底壁7bとからなる上方が開口した角筒型をなしている。そして、隣接する外装受けデッキ5、5の垂下板5a、5aを重ね合わせ、この重ね合わせ部を並列用雨樋7内に位置させ、かつ、この重ね合わせ部に並列用雨樋7の一方の垂直壁7aを重ね合わせて取着部材Pをもって取り付けられている。また、垂下板5aに対する並列用雨樋7の取付は、垂下板5aと垂直壁7aとを重ね合わせて両者を横方向から貫通して締結する取着部材Pによって取付固定されている。
【0022】
以上のように、本実施例における乗客コンベアのデッキボード2Aは、実施例1における作用効果に加え、乗客コンベアが並列設置の場合において、並列用雨樋7をコの字型とし、左右の外装受けデッキ5と並列用雨樋7との3ピースを一体構造としたので、現地での分品点数を削減することができ、取付作業を容易にすることができる。
【実施例3】
【0023】
図5は、本発明の第3の実施形態のデッキボードの雨樋に関する。本実施例は、外装受けデッキ5の外方が、乗客コンベアが複数列設置されている場合の隣接する乗客コンベアの外装受けデッキと連結固定される場合に関しての雨樋設置の変更例である。したがって、実施例1及び実施例2において説明した技術内容と重複する部分は、実施例1及び実施例2の説明を援用すると共に、図における引用符号も実施例1及び実施例2と同一のものを使用する。
【0024】
本実施例に係る乗客コンベアのデッキボード3A、3A’には、外装受けデッキ9と隣接部である他の乗客コンベアの外装受けデッキ5との間隙に並列用雨樋7が設けられている。すなわち、一方のコンベアのデッキボード3A’における外装受けデッキ9が、その端部に隣接部への取付用の標準仕様の垂下板9aを有しており、他方のコンベアの外装受けデッキ5が、その端部に隣接部への取付用の前記標準仕様の垂下板9aより長尺な垂下板5aを有している。前記デッキボード3A’は、従来例におけるデッキボード10Aと同一構成である。また、並列用雨樋7は2つの垂直壁7a、7a’と1つの底壁7bとからなる上方が開口した角筒型をなしている。そして、隣接する外装受けデッキ9、5の各垂下板9a、5aを重ね合わせ、この重ね合わせ部を並列用雨樋7内に位置させ、かつ、並列用雨樋7の一方の垂直壁7aを長尺の垂下板5aに重ね合わせて取着部材Pをもって取り付けられている。また、垂下板5aに対する並列用雨樋7の取付は、垂下板5aと垂直壁7aとを重ね合わせて両者を横方向から貫通して締結する取着部材Pによって取付固定されている。
【0025】
以上のように、本実施例における乗客コンベアのデッキボード3A、3A’は、実施例1及び実施例2における作用効果に加え、デッキボード3A’に関する外装受けデッキ9は標準品とし、デッキボード3Aに関する外装受けデッキ5を特殊寸法品として、標準品を併用することが可能となる。
【符号の説明】
【0026】
A……デッキボード
2A…デッキボード
3A…デッキボード
3A’…デッキボード
B……外壁
P……取着部材
1……移動手摺
2……手摺デッキ
3……主デッキ
4……欄干柱
5……外装受けデッキ(特殊品)
5a…長尺の垂下板
6……単列用雨樋
6a…単列用雨樋の垂直壁
6b…単列用雨樋の底壁
7……並列用雨樋
7a…並列用雨樋の垂直壁
7a’…並列用雨樋の垂直壁
7b…並列用雨樋の底壁
8……継ぎ目部分
9……外装受けデッキ(標準品)
9a…標準仕様の垂下板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接部との接続に介在する外装受けデッキを備えた乗客コンベアのデッキボードにおいて、前記外装受けデッキと隣接部との間隙に雨樋を設けたことを特徴とする乗客コンベアのデッキボード。
【請求項2】
外装受けデッキが、その端部に隣接部への取付用の垂下板を有し、該垂下板は標準仕様の垂下板より長尺な垂下板であり、雨樋が垂直壁と底壁とからなる断面L字型をなし、垂下板の内面側に雨樋の垂直壁を重ね合わせて取着部材をもって取り付け、雨樋の底壁を隣接部に水密的に取着可能としたことを特徴とする請求項1に記載の雨樋を設けた乗客コンベアのデッキボード。
【請求項3】
複数配列された乗客コンベアにおいて、各コンベアの外装受けデッキが、その端部に隣接部への取付用の標準仕様の垂下板より長尺な垂下板を有しており、雨樋が2つの垂直壁と1つの底壁とからなる上方が開口した角筒型をなし、隣接する外装受けデッキの垂下板を重ね合わせ、この重ね合わせ部を雨樋内に位置させ、かつ、この重ね合わせ部に雨樋の一方の垂直壁を重ね合わせて取着部材をもって取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の雨樋を設けた乗客コンベアのデッキボード。
【請求項4】
複数配列された乗客コンベアにおいて、一方のコンベアの外装受けデッキが、その端部に隣接部への取付用の標準仕様の垂下板を有しており、他方のコンベアの外装受けデッキが、その端部に隣接部への取付用の前記標準仕様の垂下板より長尺な垂下板を有しており、雨樋が2つの垂直壁と1つの底壁とからなる上方が開口した角筒型をなし、隣接する外装受けデッキの垂下板を重ね合わせ、この重ね合わせ部を雨樋内に位置させ、かつ、雨樋の一方の垂直壁を長尺な垂下板に重ね合わせて取着部材をもって取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の雨樋を設けた乗客コンベアのデッキボード。
【請求項5】
垂下板に対する雨樋の取付が、垂下板と垂直壁とを重ね合わせて両者を横方向から貫通して締結する取着部材によって取付固定されたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の乗客コンベアのデッキボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−131986(P2011−131986A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292817(P2009−292817)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】