説明

乗客コンベアのパネル固定構造

【課題】スカートガード等の側壁部と欄干パネルとを固定するネジなどの固定部材が乗客コンベア利用者から見えないようにして意匠上の美観を高め、及び、弛んだ固定部材に乗客コンベア利用者の荷物等が引っ掛かることを防止する。
【解決手段】乗客コンベアのパネル固定構造において、無端状に連結されて循環移動する複数のステップの移動方向側方に配置された側壁部3と、トラスに設けられたパネル受け部16と、側壁部3とパネル受け部16との間に挟まれて配置され、固定部材17により固定される欄干パネル12と、固定部材17をステップ側から見えないように被覆する目地部材22と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアのパネル固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータ等の乗客コンベアにおいては、無端状に連結されて循環移動する複数のステップの移動方向側方に、スカートガードと欄干パネルとが配置されている。欄干パネルには、傾斜した形状のものと垂直形状のものとがあり、傾斜した形状の欄干パネルの下部はスカートガードの上部に直接固定されている。垂直形状の欄干パネルは、欄干パネルとスカートガードとの間の隙間を塞ぐ内レッジを介してスカートガードの上部に固定されている。欄干パネルとスカートガードとの固定は、例えば、下記特許文献1の図9、下記特許文献2の図4に記載されたように、ネジを用いて行なわれている。欄干パネルが傾斜した形状である場合にも、欄干パネルとスカートガードとはパネル押えを介してネジ止めされている。
【特許文献1】特開2001−261273号公報
【特許文献2】特開平10−17254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の図9又は特許文献2の図4に記載されたパネルの固定構造においては、欄干パネルを固定したネジの頭部がエスカレータ利用者から見えるので、意匠上の美観が損なわれていた。
【0004】
また、ネジが弛んだ場合、弛んだネジの頭部にエスカレータ利用者の荷物・スカート・ズボン等が引っ掛かる場合があった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、その目的は、スカートガード等の側壁部と欄干パネルとを固定するネジなどの固定部材が乗客コンベア利用者から見えないようにして意匠上の美観を高め、及び、弛んだ固定部材に乗客コンベア利用者の荷物・スカート・ズボン等が引っ掛かることを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、乗客コンベアのパネル固定構造において、
無端状に連結されて循環移動する複数のステップの移動方向側方に配置された側壁部と、トラスに取付けられ、前記側壁部を挟んだ前記ステップの反対側に配置されたパネル受け部と、下端側が前記側壁部と前記パネル受け部との間に挟まれて配置され、固定部材により前記側壁部と前記パネル受け部とに固定された欄干パネルと、前記固定部材を前記ステップ側から見えないように被覆する目地部材と、を備えることである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、欄干パネルを固定する固定部材が乗客コンベア利用者から見えないため、意匠上の美観を向上させることができ、また、固定部材が弛んだ場合でも乗客コンベア利用者の荷物・スカート・ズボン等が弛んだ固定部材に引っ掛かることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0009】
図1は、乗客コンベアであるエスカレータの全体構成を示す側面図である。エスカレータは、建物の下階と上階との間に亘って据え付けられたトラス1と、無端状に連結されてトラス1内を循環移動する複数のステップ2と、これらのステップ2の移動方向両側に配置された側壁部3及び欄干4とを備えている。
【0010】
側壁部3は、図2及び図3に示すように、ステップ2の移動方向に沿って延出した板状部材であるスカートガード5と、スカートガード5の上端部に着脱可能に連結されたアルミニウム製の目地部材6と、目地部材6に着脱可能に連結された固定板7とを備えている。目地部材6と固定板7とは、ともにステップ2の移動方向に沿って延出した長尺状に形成されている。スカートガード5への目地部材6の連結は、目地部材6に形成された嵌合溝8aにスカートガード5の上端部を圧入することにより行なわれている。目地部材6への固定板7の連結は、目地部材6に形成された嵌合溝8bに固定板7の長手方向の一端を圧入することにより行なわれている。
【0011】
欄干4は、複数本のポール9と、プレート10と、手摺デッキ11と、欄干パネル12とを備えている。
【0012】
ポール9は、下端部をトラス1に固定されて略垂直に立設され、ステップ2の循環移動方向に沿って配列されている。プレート10は、ステップ2の移動方向に沿って延出する長尺状に形成され、各ポール9の上端部に連結されている。手摺デッキ11は、ステップ2の移動方向に沿って延出する長尺状に形成され、プレート10に重ね合わせた状態で固定されている。手摺デッキ11の外周部にはステップ2の移動方向に沿って延出した手摺レール13がボルト14により固定され、手摺レール13には無端状の手摺ベルト15が取付けられている。手摺ベルト15は、ステップ2と同期してステップ2と同じ方向に循環移動する。
【0013】
欄干パネル12は、欄干4におけるステップ2の両側に設けられている。この欄干パネル12は傾斜した形状のものであり、ステップ2を挟んで位置する一対の欄干パネル12の間隔が、上端側より下端側が狭くなるように傾斜している。欄干パネル12の固定構造については後述する。なお、この実施の形態では、傾斜した形状の欄干パネル12を例に挙げて示しているが、欄干パネルの構造としては、一対の欄干パネルの間隔が上端側と下端側とで等しい垂直形状の欄干パネルであってもよい。
【0014】
トラス1には、側壁部3を挟んだステップ2の反対側に配置されたパネル受け部16が取付けられている。トラス1へのパネル受け部16の取付けは、パネル受け部16に形成された長穴16aにボルト16bを挿通して締め付けることにより行なわれている。なお、長穴16aは、側壁部3及び側壁部3の上部に固定された欄干パネル12に対して直交する向きに長く形成されており、パネル受け部16のトラス1に対する固定位置を、側壁部3や欄干パネル12に対して接離する方向に位置調節することが可能とされている。
【0015】
欄干パネル12は、下端部が固定部材であるネジ17により固定され、上端部が押圧ボルト18と手摺デッキ11とに挟まれて保持されている。なお、押圧ボルト18はプレート10に取付けられ、欄干パネル12に対して接離する方向に位置調節可能に設けられている。ネジ17による欄干パネル12の下端部の固定は、欄干パネル12の下端部を側壁部3の一部である固定板7とパネル受け部16の一部であるパネル受けアングル16cとにより挟持し、固定板7に形成された固定穴19と、欄干パネル12に形成された固定穴20とにネジ17を挿通し、このネジ17をパネル受けアングル16cに形成された固定穴であるネジ穴21に螺合させることにより行なわれている。
【0016】
なお、パネル受けアングル16cに形成されたネジ穴21、及び、固定板7に形成された固定穴19は、エスカレータを据付ける現地において、欄干パネル12に予め形成されている固定穴20の位置に合わせて現地加工され又は工場製造の仮組時に穴加工されている。
【0017】
側壁部3と欄干パネル12とが固定された固定部には、ネジ17をステップ2側から見えないように被覆する目地部材22が取付けられている。目地部材22は、樹脂・ゴム等の材料で形成され、可撓性を有し、表面の摩擦係数が小さく形成されている。この目地部材22には、固定板7の先端側を挟持する一対の突起23、23aと、ネジ17の頭部側を覆う被覆部24とが形成されている。なお、突起23は、固定板7と欄干パネル12との間に挟まれる被挟持部23とされている。被覆部24は捲り上げることが可能となる肉厚に形成され、被覆部24を捲り上げることによりネジ17の頭部を露出させることができ、ネジ17を締めたり緩めたりすることが可能となっている。
【0018】
また、目地部材22には、ステップ2側を向いた外周側に外周面がR形状となったR形状部25が形成され、このR形状部25が、欄干パネル12に形成されてステップ2側に向けて凸条となった角部26を覆う位置に位置している。
【0019】
欄干パネル12におけるパネル受け部16側を向いた面、言い換えると、欄干パネル12におけるステップ2側から見える面の裏側の面(欄干パネル12の裏面)には、フック27が取付けられている。このフック27は、欄干パネル12の据付や調整を行う場合に、トラス1に設けられた突起部であるパネル受けアングル16cに引っ掛け可能に設けられている。つまり、欄干パネル12をエスカレータに据付けたり、欄干パネル12を調整する場合に、それらの作業を、フック27をパネル受けアングル16cに引っ掛けた状態で行なうことができる。なお、欄干パネル12へのフック27の取付け構造は、図4(a)に示すような接着でもよく、又は、図4(b)に示すような溶接でもよく、又は、図4(c)に示すような固定部材であるネジ28を用いてもよい。
【0020】
このような構成において、側壁部3と欄干パネル12とをネジ17を用いて固定した固定部には、このネジ17をステップ2側から見えないように被覆する目地部材22が取付けられている。したがって、ネジ17がエスカレータ利用者から見えなくなり、エスカレータの意匠上の美観を高めることができる。
【0021】
また、目地部材22には、ネジ17の頭部側を覆う被覆部24が形成されているため、ネジ17が弛んだ場合でもそのネジ17にエスカレータ利用者の荷物・スカート・ズボン等が引っ掛かることを防止することができ、荷物・スカート・ズボン等がネジ17に引っ掛かることにより発生する事故を防止することができる。
【0022】
さらに、目地部材22には、摩擦係数が低い樹脂・ゴムを用いることで、エスカレータ利用者の荷物・スカート・ズボン等が目地部材22に引っ掛かることを防止することができ、荷物・スカート・ズボン等が目地部材22に引っ掛かることにより発生する事故を防止することができる。
【0023】
しかも、この被覆部24を捲り上げることによりネジ17の頭を露出させることができる。このため、ネジ17を締めたり緩めたりする作業を容易に行なうことができ、欄干パネル12の据付作業や、欄干パネル12の調整作業を効率よく行なうことができる。
【0024】
さらに、目地部材22の外周側にR形状部25が形成され、このR形状部25が欄干パネル12の角部26を覆っている。このため、エスカレータ利用者が欄干パネル12の角部26にぶつかって怪我をするという事故の発生を防止することができる。
【0025】
また、目地部材22に被挟持部23が形成され、この被挟持部23が固定板7と欄干パネル12との間に挟まれている。このため、ステップ2や側壁部3側の振動が欄干パネル12に伝わることを抑制することができ、ステップ2側の振動が原因となる手摺ベルト15での微振動の発生や欄干4での異音の発生を抑制することができ、これらの微振動や異音が原因となる不快感をエスカレータ利用者に与えることを防止することができる。さらに、被挟持部23を設けることにより防水性能を高めることができ、特に、屋外に設置されたエスカレータ等においてトラス1内の機械部分への雨水の浸入を防止することができる。
【0026】
エスカレータの仕様によっては、欄干パネル12の板厚が異なる場合がある。欄干パネル12の厚さ寸法が異なる場合には、その厚さ寸法に応じてトラス1に対するパネル受け部16の取付け位置を欄干パネル12に対して接離する方向へ調節することができる。これにより、欄干パネル12の板厚寸法が異なる場合でも、欄干パネル12におけるステップ2側の表面の位置を一定に維持することができ、パネル受け部16と側壁部3とにより挟持して行なう欄干パネル12の固定を良好に行なうことができる。このため、欄干パネル12とパネル受けアングル16cとの間に隙間が生じて欄干パネル12の下端部ががたつくということを防止することができる。
【0027】
欄干パネル12の裏面にはフック27が取付けられ、このフック27は欄干パネル12の据付けや調整を行なう場合にパネル受けアングル16cに引っ掛け可能とされている。このため、フック27をパネル受けアングル16cに引っ掛けた状態で欄干パネル12の据付作業や調整作業を行なうことができ、これらの作業中に欄干パネル12が落下するという事故の発生を防止することができるとともに、これらの作業を効率よく行なうことができる。
【0028】
欄干パネル12へのフック27の取付けは、図4に示すように、接着、溶接、ネジ止め等の様々な方法で行なうことができ、製造コストや欄干4の構造等に応じて適宜選択することができる。
【0029】
パネル受けアングル16cに形成されたネジ穴21、及び、固定板7に形成された固定穴19は、エスカレータを据付ける現地において加工しているため、据付誤差を吸収することができる。なお、固定板7は、目地部材6を介してスカートガード5に連結されているため、スカートガード5から分離した固定板7に対して固定穴19を現地加工することができ、固定板7への固定穴19の現地加工を効率よく行なうことができる。
【0030】
なお、パネル受けアングル16cに形成されたネジ穴21、及び、固定板7に形成された固定穴19をエスカレータ製造時の工場仮組時に穴加工してもよく、その場合には、現地据付時は加工済み穴にネジ17を締付けるだけの作業となり現地据付の効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態のエスカレータの全体構成を示す側面図である。
【図2】欄干パネルの固定部の構造を示す縦断正面図である。
【図3】図2におけるA部の拡大図である。
【図4】フックの取付構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 トラス
2 ステップ
3 側壁部
12 欄干パネル
16 パネル受け部
16c パネル受けアングル(突起部)
17 固定部材
20 固定穴
21 ネジ穴(固定穴)
22 目地部材
23 被挟持部
27 フック
28 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結されて循環移動する複数のステップの移動方向側方に配置された側壁部と、
トラスに取付けられ、前記側壁部を挟んだ前記ステップの反対側に配置されたパネル受け部と、
下端側が前記側壁部と前記パネル受け部との間に挟まれて配置され、固定部材により前記側壁部と前記パネル受け部とに固定された欄干パネルと、
前記固定部材を前記ステップ側から見えないように被覆する目地部材と、
を備えることを特徴とする乗客コンベアのパネル固定構造。
【請求項2】
前記パネル受け部は、前記欄干パネルに対して接離する方向に位置調節可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベアのパネル固定構造。
【請求項3】
前記欄干パネルの前記パネル受け部側を向いた面に設けられ、前記欄干パネルの据付や調整を行う場合に前記トラスに設けられた突起部に引っ掛け可能なフックを備えることを特徴とする請求項1又は2記載の乗客コンベアのパネル固定構造。
【請求項4】
前記フックは、接着され又は溶接され又は固定部材により固定されていることを特徴とする請求項3記載の乗客コンベアのパネル固定構造。
【請求項5】
前記目地部材は、前記側壁部と前記欄干パネルとの間に挟まれる被挟持部を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一に記載の乗客コンベアのパネル固定構造。
【請求項6】
前記パネル受け部に、前記欄干パネルに形成された固定穴の位置に合わせて現地加工された固定穴が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一に記載の乗客コンベアのパネル固定構造。
【請求項7】
前記目地部材の前記ステップ側を向く外周側にR形状部が形成され、前記R形状部が、前記欄干パネルに形成されて前記ステップ側に向けて凸条となった角部を覆う位置に位置していることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一に記載の乗客コンベアのパネル固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−190892(P2009−190892A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36468(P2008−36468)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】