説明

乗客コンベアのリニューアル方法

【課題】乗客コンベアの構成機器を新たな機器へ簡単に交換できる乗客コンベアのリニューアル方法を提供する。
【解決手段】乗客コンベアのリニューアル方法において、駆動装置40と、前記駆動装置によって回転され踏段を循環移動させる駆動輪とを枠体32に配設して既設のトラス10より幅狭の交換ユニットを形成する工程と、前記交換ユニットに車輪を取り付ける工程と、既設のトラスが備えるガイドレールに前記車輪を沿わせて前記交換ユニットを所定の据え付け位置まで運搬する工程と、前記交換ユニットを既設のトラス内に固定する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアのリニューアル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアは一般的に耐用年数が定められており、耐用年数に達した乗客コンベアはリニューアルが行われる。また、耐用年数に達していない場合であっても、乗客コンベアの各部の機能を向上させるためなどによりリニューアルが行われる場合がある。
【0003】
リニューアルが行われるに際してはいくつか方法がある。例えば、既設の乗客コンベアを全て撤去し新しい乗客コンベアを設置する全撤去方式、既設の乗客コンベアで使用されていた機器を全て撤去しトラスとトラスに付着するガイドレールのみ残す準撤去方式、あるいは、制御装置のみを交換する制御リニューアル等である。
【0004】
準撤去方式を採用する際に工期の短縮を目的として、既設のトラスの中に新たなトラスを取り付けるリニューアル方法が採用されることがある(以下、特許文献1、2参照)。
【0005】
上記した既設のトラスの中に新たなトラスを取り付けるリニューアル方法では、新たなトラスを既設のトラス内に設置するために揚重機を使用することを前提としている。そのため、リニューアルの対象となっている乗客コンベアが設置されている場所によっては、揚重機を使用して新設のトラスを吊り上げることが困難なことも十分考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−314085
【特許文献2】特開2006−199434
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題を考慮してなされたもので、乗客コンベアが設置されている場所の如何を問わず乗客コンベアの構成機器を新たな機器へ簡単に交換できる乗客コンベアのリニューアル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の乗客コンベアのリニューアル方法は、駆動装置と、前記駆動装置によって回転され踏段を循環移動させる駆動輪とを基台に配設して既設のトラスより幅狭の交換ユニットを形成する工程と、前記交換ユニットに車輪を取り付ける工程と、既設のトラスが備えるガイドレールに前記車輪を沿って前記交換ユニットを所定の据え付け位置まで運搬する工程と、前記交換ユニットを既設のトラス内に固定する工程とを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる乗客コンベアのリニューアル方法を示す図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】交換ユニットの取付位置を示す既設のトラスの平面図である。
【図4】既設のトラスに交換ユニットを取り付けた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
本実施形態では、図1に示すように、既設の乗客コンベアのうちトラス10とガイドレール12とを残して、その他の機器を撤去する。そして、乗客コンベアの上階側に揚重機Kを設置する。この揚重機Kは、交換ユニット30をトラス10の所定位置に据え付ける際に用いられる。
【0012】
交換ユニット30は、乗客コンベアの幅方向の長さがトラス10より幅狭に設けられた枠体32と、枠体32の内部に配設される駆動装置40および駆動輪50とを備える。
【0013】
なお、本実施形態では、交換ユニット30内に駆動装置40と駆動輪50とを取り付ける場合について説明するが、駆動装置40および駆動輪50とともに交換ユニット30内に駆動装置40等を制御する制御装置を取り付けてもよい。
【0014】
駆動装置40は、モータ42と、減速機44と、マシンベッド46とを備え、モータ42から出力された駆動力を減速機44で増大させて駆動チェーン52を介して駆動輪50に伝達する。
【0015】
また、駆動輪50は、踏段(不図示)を連結する無端状のコンベアチェン(不図示)が巻きかけられた駆動スプロケット54を備える。駆動輪50は、駆動チェーン52を介して駆動装置40の減速機44から出力された駆動力を受けて、駆動スプロケット54が無端状のコンベアチェーンを循環移動させるものである。
【0016】
マシンベッド46は、枠体32の底面に固定される板状の部材であり、その上面にモータ42及び減速機44が搭載される。これにより、交換ユニット30は、枠体32の内部に駆動装置40及び駆動輪50が配設されている。また、交換ユニット30の枠体32には、その前後左右4箇所に車輪34が取り付けられている。左右位置に取り付けられた車輪34の距離(つまり、幅寸法)は、既設の乗客コンベアのうち撤去せずに残したガイドレール12と同じ幅寸法に設定されている(図2参照)。
【0017】
上記したような交換ユニット30は、予め工場において組み立てられた後、トラス10とガイドレール12とが残された既設の乗客コンベアに運ばれる。
【0018】
そして、交換ユニット30の枠体32に設けられた車輪34が既設の乗客コンベアに残されたガイドレール12上に載置されるように交換ユニット30を下階側のトラス10内部に配置する。トラス10の下階側に配置された交換ユニット30には、揚重機Kからのワイヤが取り付けられる。
【0019】
交換ユニット30に取り付けられたワイヤを揚重機Kが巻き取ることで、ガイドレール12上を車輪34が転がってトラス10の上階側に設けられた設置位置まで交換ユニット30を引き上げる。
【0020】
トラス10の上階側の底部には、車輪34が嵌り込む車輪固定穴14を設けた固定板16が配設されている。車輪34をガイドレール12に沿わせて揚重機Kによって下階側から上階側へ引き上げられた交換ユニット30は、固定板16に設けられた車輪固定穴14に車輪34が嵌り込むことで、図4に示すようにトラス10の所定位置に位置決めされ据え付けられる。
【0021】
以上のように、本実施形態のような乗客コンベアのリニューアル方法であると、車輪34をガイドレール12に沿わせて交換ユニット30を運搬するため、駆動装置40や駆動輪50といった重量物が配設された交換ユニット30を比較的小さな力で所定の設置位置まで引き揚げることができる。そのため、乗客コンベアが設置されている場所の如何を問わず駆動装置40や駆動輪50などの乗客コンベアの構成機器を新たな機器へ簡単に交換できる。
【0022】
また、本実施形態では、車輪固定穴14を備えた固定板16をトラス10に配設し、車輪34が嵌り込むことで交換ユニット30を所定位置に据える蹴ることができるため位置決めが容易となる。
【符号の説明】
【0023】
10…トラス
12…ガイドレール
14…車輪固定穴
16…固定板
30…交換ユニット
32…枠体
34…車輪
40…駆動装置
42…モータ
44…減速機
46…マシンベッド
50…駆動輪…
52…駆動チェーン
54…駆動スプロケット
K…揚重機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアのリニューアル方法において、
駆動装置と、前記駆動装置によって回転され踏段を循環移動させる駆動輪とを枠体に配設して既設のトラスより幅狭の交換ユニットを形成する工程と、
前記交換ユニットに車輪を取り付ける工程と、
既設のトラスが備えるガイドレールに前記車輪を沿わせて前記交換ユニットを所定の据え付け位置まで運搬する工程と、
前記交換ユニットを既設のトラス内に固定する工程と、
を備えることを特徴とする乗客コンベアのリニューアル方法。
【請求項2】
既設のトラスの所定位置に前記車輪を固定する位置固定部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアのリニューアル方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−251800(P2011−251800A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125938(P2010−125938)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】