説明

乗客コンベアの手摺駆動装置

【課題】乗客コンベアのリニューアルの際にも既存のトラスに簡便に設置することが可能な手摺駆動装置を提供する。
【解決手段】乗客コンベアのトラス6に設置され、欄干パネル20に沿って移動する手摺ベルト22に駆動力を与える乗客コンベアの手摺駆動装置50において、トラス6を構成する上梁6aに取り付けられるベース52と、手摺駆動モータ54と、手摺駆動モータ54からの動力を手摺ベルト22に伝達する手摺駆動部70とを備え、欄干パネル20と手摺駆動モータ54と手摺駆動部70とがベース52に取り付けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、乗客コンベアの手摺駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道といった乗客コンベアは、乗客及び自重を支える躯体としてのトラスと、このトラス内で一方の乗降口と他方の乗降口との間を循環移動して乗客を運搬する多数の踏段と、これら複数の踏段の両端部に立設された欄干パネルと、欄干パネルの外周に沿って移動する手摺ベルトと、手摺ベルトを駆動する手摺駆動装置とを備え、多数の踏段を循環移動させて乗客を搬送するとともに、手摺ベルトを踏段と同期させて欄干パネルの外周を循環移動させるようになっている。
【0003】
このような乗客コンベアの手摺駆動装置としては、例えば、チェーンの送り動作による動力を手摺ベルトに伝達する手摺駆動部を有し、トラスを構成する上梁に取り付けられる駆動ユニットと、チェーンが掛け渡されるアイドラプーリを有し、トラスを構成する下梁に取り付けられるアイドラユニットとを備え、駆動ユニットとアイドラユニットとが、両者の相対位置を調整する連結手段によって連結されたものが提案されている(例えば、下記特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−190865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような手摺駆動装置では、既存トラスを残したままで手摺駆動装置をはじめとする乗客コンベアの構成部品のみを交換する乗客コンベアをリニューアルを行う場合に、駆動ユニット及びアイドラユニットの位置を合わせる作業や、既設トラス内に設置された乗客コンベアの駆動装置により回転する手摺駆動輪と手摺駆動部とをチェーンで連結する作業など必要となり、作業の煩雑化を招いていた。
【0006】
本発明は、上記の点を考慮してなされたものであり、乗客コンベアのリニューアルの際にも既存のトラスに簡便に設置することが可能な手摺駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る乗客コンベアの手摺駆動装置は、乗客コンベアのトラスに設置され、欄干パネルに沿って移動する手摺ベルトに駆動力を与える乗客コンベアの手摺駆動装置において、前記トラスを構成する上梁に取り付けられるベースと、モータと、前記モータからの動力を前記手摺ベルトに伝達する手摺駆動部とを備え、前記欄干パネルと前記モータと前記手摺駆動部とが前記ベースに取り付けられたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る手摺駆動装置を備えた乗客コンベアの全体構成を示す模式図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図1のB−B断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る手摺駆動装置の制御構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の変更例に係る手摺駆動装置を備えた乗客コンベアの全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態に係る乗客コンベアの手摺駆動装置50は、図1に例示するような建物の上下階に跨って傾斜して設置され、多数の踏段2を上下階の乗降板3,4上に設けられた乗降口との間で循環移動させることで、踏段2上に搭乗した乗客を上階と下階とにわたって搬送する乗客コンベア(エスカレータ)1に適用されるものである。多数の踏段2は、無端状の踏段チェーン5によって連結されており、建物の床下に設置されたトラス6内に配置されている。
【0011】
上階側のトラス6内に設けられた機械室10には、回転軸に連結されたスプロケット7と、駆動モータ及び減速機を備えた駆動装置8とが配置され、トラス6の内部の下階側には、回転軸に連結されたスプロケット9が配置されている。
【0012】
上階側のスプロケット7と下階側のスプロケット9との間には、踏段チェーン5が巻き掛けられており、スプロケット7,9の回転に伴って、踏段チェーン5とこれに連結された多数の踏段2がスプロケット7,9の間を循環移動する。
【0013】
トラス6の上部の左右両側に配置された上梁6aには、踏段2の移動方向に沿って一対の欄干パネル20が立設されており、欄干パネル20の外周部に無端状の手摺ベルト22が取り付けられている。手摺ベルト22は、手摺駆動装置50により欄干パネル20の外周部に沿って踏段2と同期し、かつ、踏段2に平行して走行される。
【0014】
手摺駆動装置50は、図1及び図2に示すように、トラス6の上部を構成する上梁6aに取り付けられるベース52と、手摺ベルト22を走行させる動力源となる手摺駆動モータ54と、手摺駆動モータ54からの動力を手摺ベルト22に伝達する手摺駆動部70とを備える。
【0015】
ベース52は、トラス6の長手方向(つまり、手摺ベルト22の移動方向)に沿ってトラス6のほぼ全長にわたって上梁6aの上面に設けられた板状の部材で、ボルト留めや溶接などにより上梁6aに固定されている。
【0016】
ベース52は、トラス6の長手方向に複数(本実施形態では、例えば3つ)に分割されており、各ベース52の上面から支持梁56が立設されている(図1参照)。図3に示すように、支持梁56の上端部にはブラケット58を介して欄干パネル20が取り付けられ、ブラケット58の上面に欄干パネル20の上方を走行する手摺ベルト22を案内する手摺レール24が取り付けられている。支持梁56の下部にはブラケット60を介して欄干パネル20の下方を走行する手摺ベルト22を案内する手摺レール24が取り付けられている。
【0017】
また、図2及び図4に示すように、トラス6の長手方向に分割されたベース52のうち、トラス6の上梁6aにおける上階側の水平部分に設けられたベース52aには、支持梁56を避けた位置に手摺駆動モータ54と手摺駆動部70とを取り付けた支持板62が立設されている。
【0018】
手摺駆動モータ54は、その回転軸には駆動チェーン68を巻き掛けるスプロケット66が固定されている。手摺駆動モータ54は機械室10内に配設された制御部26が有するインバータ回路により回転数の制御が可能に設けられている(図1、図5参照)。
【0019】
手摺駆動部70は、図2及び図4に示すように、支持板62に取り付けられる板状のフレーム72と、手摺ベルト22の移動方向に対して平行に、かつ、一直線上に並ぶようにフレーム72に複数(本実施形態では4つ)配設された駆動ローラ74と、駆動ローラ74毎に一対ずつ設けられた複数の押圧ローラ76とを備える。
【0020】
駆動ローラ74は手摺ベルト22の内面と接して手摺ベルト22を摩擦駆動するものであって、駆動ローラ74に連結されたシャフト75がフレーム72に配設された軸受により水平方向の軸回りに回転可能に支持されている。各駆動ローラ74のシャフト75に同軸状に固定されスプロケット78には、駆動チェーン68が巻き掛けられており、駆動チェーン68を介して手摺駆動モータ54からの動力が伝達されることで駆動ローラ74が回転駆動される。
【0021】
駆動ローラ74毎に設けられた複数の押圧ローラ76は、フレーム72にブラケットを介してそれぞれ回転自在に、かつ、手摺ベルト22の移動方向に対して直角の方向(本実施形態では上下方向)に移動可能に支持されているとともに、バネ機構80により手摺ベルト22を挟んで対向する駆動ローラ74に圧接する方向に弾性的に付勢されている。
【0022】
そして、駆動ローラ74及び押圧ローラ76により手摺ベルト22の両面を挟み、押圧ローラ76がバネ機構80により手摺ベルト22に向けて付勢され手摺ベルト22と駆動ローラ74との摩擦力を高めた状態で駆動ローラ74を駆動することにより、手摺ベルト22が摩擦駆動により循環移動される。
【0023】
また、手摺駆動部70には、複数の押圧ローラ76の少なくとも1つの押圧ローラ76の回転数から手摺ベルト22の移動速度を検出するベルト速度検出部84が設けられている(図5参照)。
【0024】
なお、本実施形態では、手摺駆動モータ54に設けられたスプロケット66と手摺駆動部70に設けられたスプロケット78とともに駆動チェーン68が掛け渡されるアイドラプーリ82が支持板62に配設されており、駆動チェーン68の張力をアイドラプーリ82が調整する。
【0025】
このような構成の手摺駆動装置50は、手摺駆動モータ54により発生した動力が駆動チェーン68を介して駆動ローラ74に伝達されることで、駆動ローラ74と押圧ローラ76との間で手摺ベルト22に駆動ローラ74の送り出し方向への駆動力を付与するものであり、機械室10内に配設された制御部26が手摺駆動モータ54の回転を制御して、手摺ベルト22の移動速度を制御する。
【0026】
具体的には、図6に示すように、制御部26は、手摺ベルト22の移動速度を検出するベルト速度検出部84と接続され手摺ベルト22の移動速度(ベルト移動速度)が入力されるとともに、踏段2の移動速度を検出する踏段速度検出部86と接続され、踏段2の移動速度(踏段移動速度)が入力される。
【0027】
そして、制御部26は、ベルト速度検出部84において検出されるベルト移動速度と、踏段速度検出部86において検出される踏段移動速度とを比較して、ベルト移動速度が踏段移動速度に等しくなるように手摺駆動モータ54の回転数を調整する。これにより、手摺ベルト22が、手摺駆動装置50により欄干パネル20の外周部に沿って踏段2と同期して走行される。
【0028】
次に、以上のように構成される本実施形態の手摺駆動装置50の設置方法について説明する。なお、ここでは、乗客コンベア1のリニューアル時に既存のトラス6を残したまま手摺駆動装置50を交換する場合を例に挙げて、手摺駆動装置50の設置方法を説明するが、手摺駆動装置50は、乗客コンベアの新設時においても以下と同様の方法で設置すればよい。
【0029】
手摺駆動装置50は、予め工場でトラス6の長手方向に分割されたベース52毎に、欄干パネル20及び手摺レール24を設けるためのブラケット58,60を取り付けた支持梁56と、手摺駆動部70及び手摺駆動モータ54を取り付けた支持板62を位置調整しながら取り付け、トラス6の長手方向に分割された状態で工場から現場へ搬送される。
【0030】
現場では、トラス6に設置されていた既存の用品のうち、手摺駆動装置50を取り付けて動作させる際に邪魔となる不要用品のみをトラス6を取り外した後に、工場において支持梁56及び支持板62を取り付けたベース52をトラス6の上梁6aの上面にボルト留めや溶接などによって固定することで、取り付け工事を終了する。
【0031】
本実施形態の手摺駆動装置50では、手摺ベルト22を移動させるために必要な用品、つまり、外周部において手摺ベルト22が走行する欄干パネル20と、手摺ベルト22を移動させる手摺駆動部70と、手摺駆動部70の動力源となる手摺駆動モータ54とが、トラス6の上梁6aに固定されるベース52に取り付けられている。
【0032】
そのため、予め工場内で手摺ベルト22を移動させるために必要な各用品の相対的な位置を所望位置に定めてからベース52に取り付けることができ、現場にて各用品の位置を合わせる芯出し工程を行う必要がなく工期を短縮することができる。
【0033】
また、本実施形態の手摺駆動装置50では、手摺ベルト22を移動させる手摺駆動部70の駆動源として、乗客コンベア1の踏段2を循環移動させるための駆動装置8とは別個の手摺駆動モータ54を備えているため、既設のトラス6の内部に設けられた駆動装置8との連結作業の必要が無く、現場での作業工数を削減することができる。
【0034】
また、本実施形態の手摺駆動装置50は、ベース52をトラス6の上梁6aに取り付けて既設のトラス6に配設するため、既設のトラス6内部に設けられた用品が邪魔となりにくいため、不要用品の取り外し作業を減らすことができ、現場での作業工数を削減することができる。
【0035】
また、本実施形態の手摺駆動装置50では、ベース52が手摺ベルト22の移動方向に分割されているため、個々の外形寸法を小さく、かつ、軽量にすることができ、作業現場において必要な作業スペースを抑えることができるとともに、搬入時に大掛かりな重機が不要となり必要な時間及び費用を大幅に削減することができる。
【0036】
また、本実施形態の手摺駆動装置50は、ベルト速度検出部84において検出される手摺ベルト22のベルト移動速度が踏段2の踏段移動速度に等しくなるように制御部26が手摺駆動モータ54の回転数を制御するため、手摺ベルト22の移動を踏段2に同期させることができる。
【0037】
なお、上記した本実施形態では、ベース52を手摺ベルト22の移動方向に分割した場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図6に示すように、手摺ベルト22の移動方向に分割されることなく、トラス6のほぼ全長にわたって一続きのベース52を設け、このベース52に支持梁56及び支持板62を取り付けることで手摺駆動装置50を構成してもよい。
【0038】
以上、本発明を適用した乗客コンベアの手摺駆動装置の具体例として上記した実施形態を例示して具体的に説明したが、本発明の技術的範囲は、実施形態の説明で開示した技術事項に限定されるものではなく、以上の開示内容を基に一般的な技術常識も鑑みて当然に導かれる変形例、応用例も含まれるものである。
【符号の説明】
【0039】
1…乗客コンベア
2…踏段
3,4…乗降板
5…踏段チェーン
6…トラス
6a…上梁
7…スプロケット
8…駆動装置
9…スプロケット
10…機械室
20…欄干パネル
22…手摺ベルト
24…手摺レール
26…制御部
50…手摺駆動装置
52…ベース
54…手摺駆動モータ
56…支持梁
58…ブラケット
60…ブラケット
62…支持板
66…スプロケット
68…駆動チェーン
70…手摺駆動部
72…フレーム
74…駆動ローラ
75…シャフト
76…押圧ローラ
78…スプロケット
80…バネ機構
82…アイドラプーリ
84…ベルト速度検出部
86…踏段速度検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアのトラスに設置され、欄干パネルに沿って移動する手摺ベルトに駆動力を与える乗客コンベアの手摺駆動装置において、
前記トラスを構成する上梁に取り付けられるベースと、モータと、前記モータからの動力を前記手摺ベルトに伝達する手摺駆動部とを備え、
前記欄干パネルと前記モータと前記手摺駆動部とが前記ベースに取り付けられたことを特徴とする乗客コンベアの手摺駆動装置。
【請求項2】
前記ベースが、前記手摺ベルトの移動方向に分割されたことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの手摺駆動装置。
【請求項3】
前記手摺ベルトを案内するベルトレールを支持する支持梁が前記ベースに取り付けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の乗客コンベアの手摺駆動装置。
【請求項4】
前記手摺ベルトの移動速度を検出する速度検出部と、前記速度検出部において検出される移動速度が乗客コンベアに設けられた踏段の移動速度に等しくなるように前記モータの回転速度を制御する制御部とを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の乗客コンベアの手摺駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−188266(P2012−188266A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54506(P2011−54506)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】