説明

乗客コンベアの揚重装置

【課題】省スペース化を図り、かつ揚重機との連結作業を容易に行うことのできる乗客コンベアの揚重装置の提供。
【解決手段】強度部材であるトラス2の長尺方向の両端部2a、2bに位置する受梁3の幅方向の両端部にそれぞれ設けられる吊り雇4は、索状体7が取付けられる開閉自在のフック部8と、このフック部8が固定されるとともにこのフック部8を含めてトラス2の垂直投影面内に固定される台座部9から成り、台座部9は、受梁3に予め設けられるジャッキボルト10により、フック部8の取付方向がトラス2の中心方向に向くように受梁3へ締結固定され、かつフック部8は、このフック部8の取付方向に直交する方向に開閉するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアの揚重装置に係り、揚重機により懸吊体を介して強度部材であるトラスを揚重して据付ける乗客コンベアの揚重装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗客コンベアを建屋に設置する際の揚重方法として、建屋上部等に設置された揚重機を用い、乗客コンベアに設けられた吊り雇に前記揚重機に備えられる懸吊体の端部を取付け、揚重するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−250964号公報(段落番号0008、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述した従来のものでは、乗客コンベアに設けられた吊り雇は、前記乗客コンベア側方向端部より張り出していることから、前記乗客コンベアの揚重経路および設置位置にあって、前記乗客コンベア側面との隙間が狭い場合、例えば前記乗客コンベアの側面が建屋壁となる場合、前記建屋壁と前記吊り雇が干渉する懸念があった。
【0004】
また、前記吊り雇と揚重機を連結する際、一般的には索状体を介するが、前記吊り雇のフック部が閉環状である為、シャックル等の連結用具を使用せねばならず、取付け、取外しが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、省スペース化を図り、かつ揚重機との連結作業を容易に行うことのできる乗客コンベアの揚重装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、強度部材であるトラスの長尺方向の両端部に位置する受梁の幅方向の両端部にそれぞれ設けられる吊り雇と、前記トラスを揚重する揚重機と、前記吊り雇にその一端側が取付けられるとともにその他端側が前記揚重機に備えられる懸吊体の端部に取付けられる索状体とを有して成る乗客コンベアの揚重装置において、前記吊り雇は、前記索状体が取付けられる開閉自在のフック部と、このフック部が固定されるとともにこのフック部を含めて前記トラスの垂直投影面内に固定される台座部とを備えた構成としている。
【0007】
このように構成した本発明の請求項1に係る発明は、前記吊り雇は、前記トラスの垂直投影面内に固定される前記フック部および前記台座部から成ることから、前記トラスの揚重時に、前記トラス幅方向のスペースが限られている場合でも、前記吊り雇が揚重の妨げとなることがない。また、前記索状体は開閉自在の前記フック部に取付けられることから、前記索状体の連結を容易に行なうことができる。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記台座部は、前記受梁に予め設けられるジャッキボルトにより、前記フック部の取付方向が前記トラスの中心方向に向くように前記受梁へ締結固定される構成としている。
【0009】
このように構成した本発明の請求項2に係る発明は、乗客コンベアの水平度を確保するために予め設けられるジャッキボルトを流用してフック部を固定するため、構造変更が不要であるとともに部品点数の低減を図ることができる。また、前記フック部は、その取付方向が前記トラスの中心方向に向くように前記台座部に固定されることから、前記トラスを揚重した際に前記索状体に作用する荷重の方向を前記トラスの中心方向とすることができ、したがって、バランス良く揚重を行うことができる。
【0010】
さらに、本発明の請求項3に係る発明は、前記フック部は、このフック部の取付方向に直交する方向に開閉する構成にしてある。
【0011】
このように構成した本発明の請求項3に係る発明は、前記フック部が、このフック部の取付方向に直行する方向に開閉するように構成されるため、前記索状体の負荷が掛かる方向には開閉せず、したがって、前記索状体の外れを防止することができ、安全に揚重作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、吊り雇を構成するフック部および台座部をトラスの垂直投影面内に配設することにより、前記トラスの揚重時に、前記トラス幅方向のスペースが限られている場合でも、前記吊り雇が揚重の妨げとならないととともに、索状体は開閉自在の前記フック部に取付けられることから、前記索状体の連結を容易に行なうことができ、したがって、トラス揚重作業の作業性を向上することができる。
【0013】
また、受梁に予め設けられるジャッキボルトを流用して前記フック部を固定するため、構造変更が不要であるとともに部品点数の低減を図ることができ、したがって、比較的安価な装置とすることができる。さらに、前記フック部は、その取付方向が前記トラスの中心方向に向くように前記台座部に固定されることから、前記トラスを揚重した際に前記索状体に作用する荷重の方向を前記トラスの中心方向とすることができ、したがって、バランス良く揚重を行うことができる。
【0014】
さらにまた、前記フック部が、このフック部の取付方向に直行する方向に開閉するように構成されるため、前記索状体の負荷が掛かる方向には開閉せず、したがって、前記索状体の外れを防止することができ、安全に揚重作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る乗客コンベアの揚重装置の実施形態を図に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明の乗客コンベアの揚重装置の一実施形態を示す斜視図、図2は揚重装置の使用状態を示す側面図、図3は揚重装置の使用状態を示す正面図である。
【0017】
まず、本実施形態の乗客コンベアの揚重装置の構成について説明する。
【0018】
本実施形態の揚重装置は図2に示すように、乗客コンベア1の強度部材であるトラス2の長尺方向の両端部2aおよび2bに位置する受梁3の幅方向の両端部にそれぞれ設けられる吊り雇4と、トラス2を揚重する揚重機5と、吊り雇4にその一端側が取付けられるとともにその他端側が揚重機5に備えられる懸吊体6の端部に取付けられる索状体7とを有している。
【0019】
また、図1および図3に示すように、前述した吊り雇4は、索状体7が取付けられる開閉自在のフック部8と、このフック部8が固定されるとともにこのフック部8を含めてトラス2の垂直投影面内に固定される台座部9とを備えている。
【0020】
さらに、前述した台座部9は、受梁3に予め設けられるジャッキボルト10により、フック部8の取付方向がトラス2の中心方向に向くように受梁3へ締結固定されている。
【0021】
さらにまた、前述したフック部8は、このフック部8の取付方向に直交する方向、すなわち図中、鎖線にて示す方向に開閉する。
【0022】
本実施形態によれば、吊り雇4を構成するフック部8および台座部9をトラス2の垂直投影面内に配設することにより、トラス2の揚重時に、トラス2幅方向のスペースが限られている場合でも、吊り雇4が揚重の妨げとならないととともに、索状体7は開閉自在のフック部8に取付けられることから、索状体7の連結を容易に行なうことができ、したがって、トラス2揚重作業の作業性を向上することができる。
【0023】
また、受梁3に予め設けられるジャッキボルト10を流用してフック部8を固定するため、構造変更が不要であるとともに部品点数の低減を図ることができ、したがって、比較的安価な装置とすることができる。さらに、フック部8は、その取付方向がトラス2の中心方向に向くように台座部9に固定されることから、トラス2を揚重した際に索状体7に作用する荷重の方向をトラス2の中心方向とすることができ、したがって、バランス良く揚重を行うことができる。さらにまた、フック部8は、それぞれトラス2の中心方向に向けて取付けられ、ジャッキボルト10間に、このボルト10に正対しないよう斜めに角度を付けて配設していることから、索状体7がジャッキボルト10に干渉することがなく、円滑に揚重作業を行なうことができる。
【0024】
また、フック部8が、このフック部8の取付方向に直行する方向に開閉するように構成されるため、索状体7の負荷が掛かる方向には開閉せず、したがって、索状体7の外れを防止することができ、安全に揚重作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の乗客コンベアの揚重装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】揚重装置の使用状態を示す側面図である。
【図3】揚重装置の使用状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 乗客コンベア
2 トラス
2a 両端部
2b 両端部
3 受梁
4 吊り雇
5 揚重機
6 懸吊体
7 索状体
8 フック部
9 台座部
10 ジャッキボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強度部材であるトラスの長尺方向の両端部に位置する受梁の幅方向の両端部にそれぞれ設けられる吊り雇と、前記トラスを揚重する揚重機と、前記吊り雇にその一端側が取付けられるとともにその他端側が前記揚重機に備えられる懸吊体の端部に取付けられる索状体とを有して成る乗客コンベアの揚重装置において、
前記吊り雇は、前記索状体が取付けられる開閉自在のフック部と、このフック部が固定されるとともにこのフック部を含めて前記トラスの垂直投影面内に固定される台座部とを備えたことを特徴とする乗客コンベアの揚重装置。
【請求項2】
前記台座部は、前記受梁に予め設けられるジャッキボルトにより、前記フック部の取付方向が前記トラスの中心方向に向くように前記受梁へ締結固定されることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベアの揚重装置。
【請求項3】
前記フック部は、このフック部の取付方向に直交する方向に開閉することを特徴とする請求項1記載の乗客コンベアの揚重装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−76696(P2006−76696A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261175(P2004−261175)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】