説明

乗客コンベアの案内装置

【課題】視覚障害者などをはじめとした多様な利用者に対して乗客コンベアの踏段の移動方向を伝達することができる乗客コンベアの案内装置を提供する。
【解決手段】乗客コンベアの乗り口及び降り口に設けられた乗り口乗降板13及び降り口乗降板13と、乗り口乗降板13の下方に踏段6の移動方向Xに沿って配設された複数の乗り口用スピーカ36と、降り口乗降板13の下方に踏段6の移動方向Xに沿って配設された複数の降り口用スピーカ36と、乗り口用スピーカ36を踏段6の移動方向X後側から前側へ時間的な所定間隔をあけて順次作動させるとともに降り口用スピーカ36を踏段6の移動方向X後側から前側へ時間的な所定間隔をあけて順次作動させる制御部とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏段の移動方向を示す乗客コンベアの案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者、障害者などをはじめとした多様な利用者の多彩なニーズに応え、すべての利用者がより円滑に利用できるよう、公共交通機関旅客施設の移動円滑化整備ガイドラインが策定された。これに伴い、乗客コンベアでは、移動方向を利用者に知らしめる方向表示装置が欄干の乗降部分に設置されたり、あるいは、乗り口において行き先を音声案内する案内装置が設置されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、方向表示装置によって乗客コンベアの踏段の移動方向を表示するものの場合、視覚障害者は利用しようとする乗客コンベアの踏段の移動方向を認識することが難しい。
【0004】
また、駅のホームなどに設置されている乗客コンベアでは、電車の走行音、電車の案内放送などの雑音が大きいため、乗客コンベアの案内装置から発せられる音声案内が利用者に伝わりにくいことがある。特に、音声案内では、案内の内容を知る上で重要な語句が聞き取れなければ、他の語句が聞き取れたとしても利用者に必要な情報が伝達されない。
【0005】
そこで、視覚障害者は、案内装置からの音声案内を聞き取れない場合、乗降口に進入して手摺ベルトに触ることによって乗客コンベアの踏段の移動方向を認識することがあるが、このような移動方向の確認方法は大事故を引き起こすおそれがある。例えば、視覚障害者が下降移動する乗客コンベアの降り口に近づき手摺ベルトを触っていると、上階側から下階側へ運ばれてきた利用者が降り口で滞留してしまい、場合によっては将棋倒し状態で人が折り重なって倒れる大事故に発展する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭63−26678号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、視覚障害者などをはじめとした多様な利用者に対して乗客コンベアの踏段の移動方向を伝達することができる乗客コンベアの案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る乗客コンベアの案内装置は、乗客コンベアの乗り口及び降り口に設けられた乗り口乗降板とび降り口乗降板と、前記乗り口乗降板の下方に踏段の移動方向に沿って配設された複数の乗り口用スピーカと、前記降り口乗降板の下方に踏段の移動方向に沿って配設された複数の降り口用スピーカと、前記乗り口用スピーカを踏段の移動方向後側から前側へ時間的に所定間隔をあけて順次鳴動させるとともに、前記降り口用スピーカを踏段の移動方向後側から前側へ時間的に所定間隔をあけて順次鳴動させる制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る乗客コンベアの案内装置では、乗り口乗降板及び降り口乗降板の下方に踏段の移動方向に沿って配設された複数の乗り口用スピーカ及び降り口用スピーカが、踏段の移動方向後側から前側へ所定間隔をあけて順次作動するため、音源が乗客コンベアの踏段の移動方向と同じ方向に移動することとなり、この音源の移動方向より乗客コンベアの踏段の移動方向を認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る案内装置が適用された乗客コンベアを示す側面図である。
【図2】前記乗客コンベアにおける上階側乗降板を示す平面図である。
【図3】図2の要部拡大平面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】前記乗客コンベアにおける下階側乗降板を示す平面図である。
【図6】図5のB−B断面図である。
【図7】前記案内装置の全体構成を示すブロック図である。
【図8】前記案内装置の制御を示すフロー図である。
【図9】前記案内装置の動作を示すタイミング図である。
【図10】前記案内装置の他の動作を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
乗客コンベア1は、上階床2と下階床3の間にわたって配置された主枠4と、主枠4内において、踏段チェーン5を介して無端状に連結された多数の踏段6と、主枠4の幅方向両側に立設された欄干20と、欄干20の周縁を移動する移動手摺22とを備える。
【0013】
主枠4の長手方向一端部に設けられた上階側機械室7内には、駆動スプロケット8に駆動チェーン9を介して連結された駆動装置10が配設され、主枠4の長手方向他端部に設けられた下階側機械室11内には、従動スプロケット12が配設されている。
【0014】
駆動スプロケット8と従動スプロケット12との間には踏段チェーン5が掛け渡されており、駆動装置10が駆動チェーン9を介して駆動スプロケット8を回転させることで、踏段6は上階床2と下階床3との間を循環移動する。本実施形態では、例えば、踏段6は、図1において矢符Aで示すように、下階床3から上階床2へ乗客コンベア1の往路部(上面側)を移動し、駆動スプロケット8において反転し上階床2から下階床3へ復路部(下面側)を移動し、往路部と復路部との間を順次循環する。
【0015】
上階側機械室7及び下階側機械室11は、踏段6が反転する踏段6の移動端部となり、それぞれの上面開口を上階床2及び下階床3と同一高さに設定された上階側乗降板13及び下階側乗降板14が閉塞している。例えば、踏段6が下階床3から上階床2へ乗客コンベア1の往路部(上面側)を移動する上昇移動をしている場合、下階側機械室11の上面開口を閉塞する下階側乗降板14が乗り口乗降板としてその上面が乗り口となり、上階側機械室7の上面開口を閉塞する上階側乗降板13が降り口乗降板としてその上面が降り口となる。また、駆動装置10が駆動スプロケット8の回転方向を上昇移動の場合から反転させ、踏段6が上階床2から下階床3へ乗客コンベア1の往路部(上面側)を移動する下降運転の場合、下階側機械室11の上面開口を閉塞する下階側乗降板14が降り口乗降板としてその上面が降り口となり、上階側機械室7の上面開口を閉塞する上階側乗降板13が乗り口乗降板としてその上面が乗り口となる。
【0016】
上階側機械室7内には、乗客コンベア1全体の制御を司る制御部15と、音合成部80とが配設されており、制御部15が、駆動装置10内に搭載された電動機16を制御することで踏段6の移動方向を切り換え可能に踏段6を所定速度で移動させるとともに、音合成部80において発生させた音信号に基づいて後述するスピーカ36,37を作動させる。
【0017】
図2に示すように、上階側乗降板13は、踏段6の移動方向Xに並列に複数枚(例えば、本実施形態では4枚)の分割乗降板13aが配列されてなり、各分割乗降板13aの下方には上階側機械室7内に上階側スピーカ36が配設されている。つまり、踏段6の移動方向Xに沿って上階床2から踏段6までの間に複数(本実施形態では4つ)の上階側スピーカ36a,36b,36c,36dが配設されている。
【0018】
詳細には、上階側乗降板13を構成する分割乗降板13aは、図3、図4に示すように、上面に滑り止め用の凸部34が縦横に所定間隔をあけて規則的に多数設けられた板体30と、この板体30の下面を支持するフレーム32とからなり、スピーカ支持体38を介して上階側スピーカ36を分割乗降板13aの下方に配設するための取付孔40が板体30及びフレーム32の幅方向中央部に設けられている。
【0019】
フレーム32に設けられた取付孔40bは、板体30に設けられた取付孔40aの内方において取付孔40aより小さく穿設されており、板体30に設けられた取付孔40aの内方に位置するフレーム32の上面には下方に凹んだ段部41が取付孔40bの周縁部に形成されている。
【0020】
スピーカ支持体38は、上面に開口する箱状の支持体本体44と、支持体本体44の上端部より外方に延出したツバ部46とを備えている。支持体本体44の内部には上階側スピーカ36の軸方向L1が斜め上方を向いた状態で取り付けられており、支持体本体44の内壁面の一部が上階側スピーカ36の軸方向L1に沿って延びる案内面54をなしている。
【0021】
また、支持体本体44の内部には上階側スピーカ36の取付位置より下方に空間Sが設けられ、空間Sの下端位置において支持体本体44を貫通し、空間Sと上階側機械室7とを連通する貫通孔50が設けられている。これにより、支持体本体44内部に侵入した塵、埃、雨水などが上階側スピーカ36に付着することなく外部に排出され、上階側スピーカ36の音質劣化を防止している。
【0022】
スピーカ支持体38は、上階側スピーカ36の軸方向L1を踏段6の移動方向Xにおける上階床2側(図2及び図4における右側)に向けて、板体30及びフレーム32に設けられた取付孔40a,40bに支持体本体44を挿入し、ツバ部46をフレーム32の上面に形成された段部41に係止させる。これにより、上階側スピーカ36の軸方向L1を踏段6の移動方向Xにおける上階床2側に向かって斜め上方に傾斜させた状態で、上階側スピーカ36が分割乗降板13aの下方に配置される。この時、段部41に係止したツバ部46の上面はフレーム32の上面と同一の平面内に位置する。
【0023】
また、板体30に設けられた取付孔40aの内方におけるフレーム32の上面には、取付孔40aを閉塞するスピーカ保護板48が載置され、ネジ51などによってツバ部46及びスピーカ保護板48が一体にフレーム32に固定されている。
【0024】
スピーカ保護板48の上面には、板体30の上面に形成された凸部34と同一形状及び同一の規則性に従って凸部34が多数形成されている。これにより、スピーカ保護板48は、上記のようにツバ部46とともにフレーム32にネジ止めされると、板体30の上面との間に段差なく凸部34が規則的に設けられた分割乗降板13aを構成する。
【0025】
スピーカ保護板48に形成された凸部34のうち、分割乗降板13aの下方に配置された上階側スピーカ36より踏段6の移動方向Xにおける上階床2側に位置する凸部34の側面には、踏段6の移動方向Xにおける上階床2側に向けて開口する開口部52が設けられており、この開口部52を介して支持体本体44の内部が外部と連通する。つまり、踏段6が下降移動をしている場合、乗り口乗降板となる分割乗降板13aに形成された凸部34の踏段6の移動方向X後側の側面に開口部52が形成されていることとなる。
【0026】
また、図5に示すように、下階側乗降板14は、上記した上階側乗降板13と同様、踏段6の移動方向Xに並列に複数枚(例えば、本実施形態では4枚)の分割乗降板14aが配列されてなり、各分割乗降板14aの下方には下階側機械室11内に下階側スピーカ37が配設されている。つまり、踏段6の移動方向Xに沿って上階床2から踏段6までの間に複数(本実施形態では4つ)の下階側スピーカ37a,37b,37c,37dが配設されている。
【0027】
下階側スピーカ37は、上階側スピーカ36と同様のスピーカ支持体38を介して分割乗降板14aの下方に配置されている。ここでは、下階側スピーカ37及びスピーカ支持体38に関し、上階側スピーカ36を分割乗降板13aの下方に配置する構成と共通する構成については、図6において同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0028】
下階側スピーカ37は、図6に示すように、分割乗降板14aの幅方向中央部に設けられた取付孔40a,40bに支持体本体44を挿入することで、下階側スピーカ37の軸方向L2を踏段6の移動方向の下階床3側(図5における左側)に向けて斜め上方に傾斜させた状態で、分割乗降板14aの下方に配置されている。
【0029】
また、分割乗降板14aの取付孔40aを閉塞するスピーカ保護板48の上面に形成された凸部34のうち、下階側スピーカ37より踏段6の移動方向Xの下階床3側に位置する凸部34の側面には、踏段6の移動方向の下階床3側に向けて開口する開口部53が設けられており、この開口部53を介して支持体本体44の内部と連通する。つまり、踏段6が上昇移動をしている場合、乗り口乗降板となる分割乗降板14aに形成された凸部34の踏段6の移動方向X後側の側面に開口部53が形成されていることとなる。
【0030】
上記のような乗客コンベア1における案内装置70は、図7に示すように、制御部15内に設けられた音出力制御部72と、音合成部80と、上階側スピーカ36と、下階側スピーカ37とを備え、音出力制御部72が、音合成部80より生成され音信号を所定の上階側スピーカ36及び下階側スピーカ37に切り換えて入力することで、鳴動させる上階側スピーカ36及び下階側スピーカ37を制御する。
【0031】
詳細には、音出力制御部72は、主制御部74と、タイミング信号発生部76と、上階側乗降板13の下方に配設された4つの上階側スピーカ36及び下階側乗降板14の下方に配設された4つの下階側スピーカ37のそれぞれに対応して設けられた複数(本実施形態では8つ)のスピーカ切換スイッチ78とを備える。
【0032】
主制御部74は、踏段6の移動方向を検出して上階側乗降板13及び下階側乗降板14のいずれが乗り口乗降板であるかを判断するとともに、上階側スピーカ36及び下階側スピーカ37のいずれが乗り口用スピーカであるかを判断する。また、主制御部74は、踏段6の移動が検出された場合にはタイミング信号発生部76にタイミング信号を発生させる。
【0033】
タイミング信号発生部76は、主制御部74からの指令にしたがって時間幅Tsのハイレベル信号と時間幅Tiのローレベル信号とを繰り返すパルス状のタイミング信号を発生し、このタイミング信号を主制御部74及び音合成部80に入力する。
【0034】
タイミング信号発生部76からタイミング信号の入力を受けた主制御部74は、タイミング信号に基づいてスピーカ切換スイッチ78の開閉を制御し、例えば、ハイレベル信号が入力されている間、所定のスピーカ切換スイッチ78を連続して閉状態とし、ローレベル信号が入力されている間、全てのスピーカ切換スイッチ78を連続して開状態とする。
【0035】
なお、スピーカ切換スイッチ78が、有接点リレーであると接点寿命があり接点不良を起こす前に交換する必要があるため、半導体リレーであることが好ましく、これにより、スピーカ切換スイッチ78を交換する必要が無くなりメンテナンス性に優れる。
【0036】
音合成部80は、タイミング信号発生部76と接続された音信号発生部82と、音信号発生部82が生成した音信号を増幅する増幅部84とを備える。
【0037】
音信号発生部82は、タイミング信号発生部76から入力されるタイミング信号に基づいて、上階側スピーカ36及び下階側スピーカ37から出力する音に対応した音信号を生成するものであって、例えば、タイミング信号発生部76からハイレベル信号が入力されている間、スピーカ切換スイッチ78の開状態と同期して「ピン・ポン」という音に対応する音信号をメモリ(不図示)から呼び出して増幅部84に入力する。
【0038】
増幅部84は、上階側乗降板13及び下階側乗降板14の下方に配設された4つの上階側スピーカ36及び4つの下階側スピーカ37の全てを駆動させることができる出力を有しており、音出力制御部72が有するスピーカ切換スイッチ78を介して4つの上階側スピーカ36及び4つの下階側スピーカ37に接続されている。
【0039】
次に、案内装置70の動作について、図8に示すフロー図を参照して説明する。
【0040】
まず、ステップS1において、音出力制御部72の主制御部74が踏段6の移動方向を検出して、上階側乗降板13及び下階側乗降板14のいずれが乗り口乗降板であるかを判断するとともに、上階側スピーカ36及び下階側スピーカ37のいずれが乗り口用スピーカであるかを判断する。踏段6が下階から上階へ移動する上昇移動の場合、下階側乗降板14及び上階側乗降板13を乗り口乗降板及び降り口乗降板と判断し、下階側スピーカ37及び上階側スピーカ36を乗り口用スピーカ及び降り口用スピーカと判断してステップS2に進み、踏段6が上階から下階へ移動する下降移動の場合、上階側乗降板13及び下階側乗降板14を乗り口乗降板及び降り口乗降板と判断し、上階側スピーカ36及び下階側スピーカ37を乗り口用スピーカ及び降り口用スピーカと判断してステップS3に進む。
【0041】
ステップS2では、乗り口乗降板である下階側乗降板14の下方に配設された4個の下階側スピーカ(乗り口用スピーカ)37を下階床3側、つまり、踏段6の移動方向Xの後側(図5における左側)に配置された下階側スピーカ37aから踏段6の移動方向Xの前側(図5における右側)に配置された下階側スピーカ37dまで、所定間隔をあけて下階側スピーカ37a,37b,37c,37dの順序で順次鳴動させ、ステップS4に進む。
【0042】
具体的には、主制御部74はタイミング信号発生部76にタイミング信号を発生させる。タイミング信号発生部76は発生させたタイミング信号を主制御部74及び音信号発生部82に入力する。
【0043】
音信号発生部82はタイミング信号のハイレベル信号が入力されている間、音信号をメモリ(不図示)から呼び出して増幅部84に入力する。
【0044】
そして、主制御部74は、図9に示すように、タイミング信号のハイレベル信号の1パルスが入力されるごとに、下階側スピーカ37aに接続されたスピーカ切換スイッチ78eから下階側スピーカ37dに接続されたスピーカ切換スイッチ78hまで順次1つずつ閉状態とする。これにより、音信号発生部82が音信号を発生しているタイミングで、下階側スピーカ37aから下階側スピーカ37dまでのスピーカが、増幅部84を介して音信号発生部82に順次接続され、時間幅Tiの間隔をあけてタイミング信号のハイレベル信号の時間幅Tsに相当する時間ずつ下階側スピーカ37a,37b,37c,37dを順序で順次鳴動する。
【0045】
ステップS4では、主制御部74が、図9に示すように、タイミング信号のハイレベル信号の1パルスが入力されるごとに、上階側スピーカ36dに接続されたスピーカ切換スイッチ78dから上階側スピーカ36aに接続されたスピーカ切換スイッチ78aまで順次1つずつ閉状態としてステップS6に進む。これにより、降り口乗降板である上階側乗降板13の下方に配設された4個の上階側スピーカ(降り口用スピーカ)36が、踏段6の移動方向Xの後側(図2における左側)に配置された上階側スピーカ36dから踏段6の移動方向Xの前側(図2における右側)に配置された上階側スピーカ36aまで、所定間隔をあけて上階側スピーカ36d,36c,36b,36aの順序で順次鳴動する。
【0046】
ステップS3では、図10に示すように、タイミング信号のハイレベル信号の1パルスが入力されるごとに、主制御部74が、上階側スピーカ36aに接続されたスピーカ切換スイッチ78aから上階側スピーカ36dに接続されたスピーカ切換スイッチ78dまで順次1つずつ閉状態としてステップS6に進む。これにより、乗り口乗降板である上階側乗降板13の下方に配設された4個の下階側スピーカ(乗り口用スピーカ)36が、踏段6の移動方向Xの後側(図2における右側)に配置された上階側スピーカ36aから踏段6の移動方向Xの前側(図2における左側)に配置された上階側スピーカ36dまで、所定間隔をあけて上階側スピーカ36a,36b,36c,36dの順序で順次鳴動する。
【0047】
ステップS5では、図10に示すように、タイミング信号のハイレベル信号の1パルスが入力されるごとに、主制御部74が、下階側スピーカ37dに接続されたスピーカ切換スイッチ78hから下階側スピーカ37aに接続されたスピーカ切換スイッチ78eまで順次1つずつ閉状態としてステップS6に進む。これにより、降り口乗降板である下階側乗降板14の下方に配設された4個の下階側スピーカ(降り口用スピーカ)37が、踏段6の移動方向Xの後側(図5における右側)に配置された下階側スピーカ37dから踏段6の移動方向Xの前側(図5における左側)に配置された下階側スピーカ37aまで、所定間隔をあけて下階側スピーカ37d,37c,37b,37aの順序で順次鳴動する。
【0048】
ステップS6では、主制御部74は、踏段6が上昇移動又は下降移動して乗客コンベア1が動作しているか否か判断する。乗客コンベア1が動作している場合、ステップS1に戻り、乗客コンベア1が停止している場合、案内装置70の制御を終了する。
【0049】
以上のように、本実施形態では、乗り口乗降板13,14及び降り口乗降板14,13の下方に踏段6の移動方向Xに沿って配設された複数の乗り口用スピーカ36,37及び降り口用スピーカ37,36が、踏段6の移動方向Xの後側から前側へ所定間隔Tiをあけて順次作動するため、音源が乗客コンベア1の踏段6の移動方向と同じ方向に移動することとなり、この音源の移動方向より乗客コンベアの踏段の移動方向を認識することができる。また、音源の移動方向より乗客コンベア1の踏段6の移動方向を認識するものであるため、たとえ、スピーカ36,37から発せられる音の一部を聞き漏らしたとしても、踏段6の移動方向を容易に認識することができる。
【0050】
また、本実施形態では、乗り口乗降板13,14の上面に複数の凸部34が形成され、凸部34においては踏段6の移動方向Xの後側の側面に乗り口用スピーカ36,37を収納する支持体本体44内部と連通する開口部52,53が形成されているため、乗客コンベア1の乗り口に近づいて来た者に向けて乗り口用スピーカ36,37から発せられた音を出力することができ、乗り口に近づいて来た者に踏段6の移動方向を伝達し易くなる。
【0051】
なお、上記した本実施形態では、乗り口用スピーカ及び降り口用スピーカを踏段の移動方向X後側から前側へ順次鳴動させるように構成したが、例えば、複数台の乗客コンベアが並列配置されている場合、降り口用スピーカの動作を停止させ降り口用スピーカを鳴動させないように構成してもよい。これにより、乗客コンベアの乗り口と他の乗客コンベアの降り口が近接して配置される場合であっても、乗り口用スピーカ及び降り口用スピーカから発せられた音の混同が生じることがなく、乗客コンベアの踏段の移動方向を伝達することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…乗客コンベア
2…上階床
3…下階床
4…主枠
7…上階側機械室
11…下階側機械室
13…上階側乗降板
13a…分割乗降板
14…下階側乗降板
14a…分割乗降板
15…制御部
16…電動機
36a…上階側スピーカ
36b…下階側スピーカ
38…スピーカ支持体
40…取付孔
44…支持体本体
46…ツバ部
48…スピーカ保護板
50…貫通孔
52…開口部
54…案内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの乗り口及び降り口に設けられた乗り口乗降板及び降り口乗降板と、
前記乗り口乗降板の下方に踏段の移動方向に沿って配設された複数の乗り口用スピーカと、
前記降り口乗降板の下方に踏段の移動方向に沿って配設された複数の降り口用スピーカと、
前記乗り口用スピーカを踏段の移動方向後側から前側へ時間的な所定間隔をあけて順次鳴動させ、前記降り口用スピーカを踏段の移動方向後側から前側へ時間的な所定間隔をあけて順次鳴動させる制御部とを備えることを特徴とする乗客コンベアの案内装置。
【請求項2】
前記乗り口乗降板の上面に複数の凸部が形成され、前記凸部において踏段の移動方向後側の側面に前記乗り口用スピーカを収納する空間と連通する開口部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの案内装置。
【請求項3】
前記制御部は、複数台の乗客コンベアが並列設置されており、降り口用スピーカの鳴動を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の乗客コンベアの案内装置。
【請求項4】
上面に開口する箱状をなし内部に前記乗り口用スピーカ又は前記降り口用スピーカが取り付けられるスピーカ支持体を備え、
前記スピーカ支持体の上端部より外方に延出するツバ部が前記乗り口乗降板又は前記降り口乗降板に設けられた取付孔の周縁部に係止して、前記乗り口用スピーカ又は前記降り口用スピーカが前記乗り口乗降板又は前記降り口乗降板の下方に配設されることを特徴とする請求項1〜3に記載の乗客コンベアの案内装置。
【請求項5】
前記スピーカ支持体は、前記乗り口用スピーカ又は前記降り口用スピーカの取付位置より下方に貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の乗客コンベアの案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−184783(P2010−184783A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30141(P2009−30141)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】