説明

乗客コンベアの欄干装置

【課題】内側デッキの踏段の進行方向に対する微調整を円滑に行うことができる。
【解決手段】この発明に係る乗客コンベアの欄干装置は、長穴9に沿って取付金具10を移動してパネル保持部材2に対する内側デッキ17の踏段の進行方向の位置を調整する乗客コンベアの欄干装置において、取付金具10は、パネル保持部材2の上面19と離間しているとともに上縁部が内側デッキ固定ネジ16により締結された締結部14と、この締結部14の両側に設けられているとともに上面19と接触したガイド部15,15とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、欄干パネルを保持したパネル保持部材に対する内側デッキの踏段の進行方向の位置が調整される乗客コンベアの欄干装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、欄干パネルを保持したパネル保持部材に、内側デッキの上縁側を断面L字状の取付金具、固定ネジを用いて固定した乗客コンベアの欄干装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このものの場合、取付金具は、踏段の進行方向に沿って長穴が形成されており、この長穴でネジを用いてパネル保持部材に固定されている。取付金具の長穴は、内側デッキ自体や乗客コンベアの各部品の製作誤差により生じた、内側デッキの踏段の進行方向の誤差を微調整するものである。
パネル保持部材に固定された取付金具は、長片部がパネル保持部材の側面に当接している。取付金具の短片部の下面は、パネル保持部材の上面との間で離間しており、固定ネジの先端部が短片部を貫通して取付金具に内側デッキの上縁部が強固に固定するようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−347650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この乗客コンベアの欄干装置の場合、内側デッキの踏段の進行方向の微調整を行うために、ネジを緩めると、取付金具の短片部の下面がパネル保持部材の上面と離間しているので、パネル保持部材の上面に対して取付金具の短片部が傾いてしまい、内側デッキの位置調整に手間が掛かるという問題点があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決することを課題とするものであって、内側デッキの踏段の進行方向に対する微調整を円滑に行うことができる乗客コンベアの欄干装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る乗客コンベアの欄干装置は、パネル保持部材と、このパネル保持部材により下端部が固定された欄干パネルと、踏段側に設けられた内側デッキと、この内側デッキの上縁部を前記パネル保持部材に固定した内側デッキ固定手段とを備え、この内側デッキ固定手段は、断面L字状で前記踏段の進行方向に沿って延びた長穴を有する取付金具と、この取付金具に前記内側デッキの前記上縁部を締結した締結手段とを含み、
前記長穴に沿って前記取付金具を移動して前記パネル保持部材に対する前記内側デッキの前記踏段の前記進行方向の位置を調整する乗客コンベアの欄干装置において、
前記取付金具は、前記パネル保持部材の上面と離間しているとともに前記上縁部が前記締結手段により締結された締結部と、この締結部の少なくとも片側に設けられているとともに前記上面と接触したガイド部とを有している。
【0007】
また、この発明に係る乗客コンベアの欄干装置は、パネル保持部材と、このパネル保持部材により下端部が固定された欄干パネルと、踏段側に設けられた内側デッキと、この内側デッキの上縁部を前記パネル保持部材に固定した内側デッキ固定手段とを備え、この内側デッキ固定手段は、断面L字状で前記踏段の進行方向に沿って延びた長穴を有する取付金具と、この取付金具に前記内側デッキの前記上縁部を締結した締結手段とを含み、
前記長穴に沿って前記取付金具を移動して前記パネル保持部材に対する前記内側デッキの前記踏段の前記進行方向の位置を調整する乗客コンベアの欄干装置において、
前記取付金具は、前記パネル保持部材の上面と面接触しているとともに前記内側デッキの前記上縁部が前記締結手段により締結されたガイド・締結部を有している。
【発明の効果】
【0008】
この発明による乗客コンベアの欄干装置によれば、取付金具のガイド部は、パネル保持部材の上面と接触したガイド部と接触しているので、ガイド部は上面に沿って移動し、内側デッキの踏段の進行方向に対する微調整は円滑に行われる。
【0009】
また、この発明による乗客コンベアの欄干装置によれば、取付金具のガイド・締結部は、パネル保持部材の上面と接触しているので、ガイド・締結部は上面に沿って移動し、内側デッキの踏段の進行方向に対する微調整は円滑に行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の各実施の形態について図に基づいて説明するが、各図において、同一または相当部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1の乗客コンベアの欄干装置の全体構成を示す側面図、図2は図1の乗客コンベアの欄干装置の要部分解斜視図である。
この乗客コンベアの欄干装置では、対向した一対の欄干パネル1の下端部を固定するパネル保持部材2は、主枠3に固定されている。欄干パネル1の上部では、運転方向に移動する移動手摺4が設けられている。一対の欄干パネル1の間には、運転方向に移動する踏段5が設けられている。
【0012】
パネル保持部材2は、ベース6に対して垂直に押さえ板7が設けられている。押さえ板7の下端部に面接触した欄干パネル1は、取付ボルト8により押さえ板7に固定されている。
パネル保持部材2の踏段5側では、踏段5の進行方向に沿って長穴9が形成された取付金具10が、長穴9でネジ11を用いて固定されている。
このパネル保持部材2には、踏段5側に設けられた内側デッキ17の上縁部が内側デッキ固定手段により固定されている。
この内側デッキ固定手段は、断面L字形状の取付金具10と、この取付金具10に内側デッキ17の上縁部の切り欠き部18で締結した締結手段である一対の内側デッキ固定ネジ16とを有している。
【0013】
取付金具10は、長片部12がパネル保持部材2の押さえ板7に面接触している。取付金具10の短片部13は、押さえ板7の上面19と離間した締結部14と、締結部14の両側に設けられ押さえ板7の上面19と面接触したガイド部15とから構成されている。
なお、図2において、一対の内側デッキ固定ネジ16の一方のみが内側デッキ17を固定しているが、他方の内側デッキ固定ネジ16は隣接した内側デッキ17(図示せず)を固定している。
【0014】
この実施の形態では、内側デッキ17を踏段5の進行方向に微調整しようとした場合、先ずネジ11を緩め、取付金具10を微調整する方向に内側デッキ17とともに移動させる。内側デッキ17を所定の距離移動させた後は、ネジ11と締め、取付金具10を介して内側デッキ17を所定の位置に固定する。なお、内側デッキ17の調整移動距離は、長穴9の踏段5の移動方向の寸法により決定される。
【0015】
この実施の形態による乗客コンベアの欄干装置によれば、取付金具10は、ガイド部15の下面が取付金具10の移動時も押さえ板7の上面19と常に面接触しており、押さえ板7の上面19に沿って移動するので、押さえ板7の上面19に対して傾斜することなく内側デッキ17の位置調整が円滑に行われ、位置の調整作業効率が向上する。
また、取付金具10は、締結部14の両側に設けられた一対のガイド部15の下面が押さえ板7の上面19と常に面接触しているので、取付金具10には偏ることなく安定した振動等による荷重が加わることになり、それだけネジ11の緩みは抑制される。
【0016】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2の乗客コンベアの欄干装置の要部分解斜視図である。
この実施の形態では、取付金具10のガイド部20の折曲角度が長片部12に対して、図4に示すように角度αが90°以上折曲されており、ガイド部20の先端が押さえ板7の上面19に線接触している。
この他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0017】
取付金具10は、本来、ガイド部20の折曲角度が長片部12に対して90°折曲し、ガイド部15の下面の全面が押さえ板7の上面19に面接触するのが望ましい。
しかしながら、実際には、図5に示すように、ガイド部20の根元部では曲率半径Rの曲面部が形成されており、この曲面部が押さえ板7の角度90°のコーナ部と干渉し、ガイド部15の下面の全面が押さえ板7の上面19に面接触することが困難である。
従って、ガイド部15の下面と押さえ板7の上面19との間で空隙が生じてしまうことが起こり得る。
【0018】
これに対して、この実施の形態の乗客コンベアの欄干装置によれば、ガイド部20を、90°以上折曲するという簡単な作業で、ガイド部20の先端は押さえ板7の上面19に確実に線接触し、ネジ11を緩めたときに、押さえ板7の上面19に対して取付金具10の短片部13が傾いてしまうことはない。
従って、この実施の形態でも、取付金具10は、ガイド部15が取付金具10の移動時も押さえ板7の上面19と常に線接触しており、押さえ板7の上面19に対して傾斜することなく内側デッキ17の位置調整が円滑に行われ、位置の調整作業効率が向上する。
【0019】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3の乗客コンベアの欄干装置の要部分解斜視図である。
この実施の形態では、取付金具30のガイド・締結部21は、下面が押さえ板7の上面19と面接触しているととともに、内側デッキ17の上縁部が内側デッキ固定ネジ16により螺着されている。
このガイド・締結部21の肉厚は、実施の形態1、2の締結部14と比較して厚く、取付金具30に内側デッキ17の上縁部を固定する際に必要とされる固定力が得られるネジ穴が得られる厚さである。
この実施の形態では、実施の形態1,2と同様の効果が得られるとともに、実施の形態1,2の取付金具10と比較して、構造及び製作が簡単であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態1の乗客コンベアの欄干装置の全体構成を示す側面図である。
【図2】図1の乗客コンベアの欄干装置を示す要部分解斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態2の乗客コンベアの欄干装置を示す要部分解斜視図である。
【図4】図3のガイド部の折曲を示す説明図である。
【図5】ガイド部の折曲の一例を示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態3の乗客コンベアの欄干装置を示す要部分解斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 欄干パネル、2 パネル保持部材、5 踏段、9 長穴、10,30 取付金具、14 締結部、15,20 ガイド部、16 内側デッキ固定ネジ(締結手段)、17 内側デッキ、19 上面、21 ガイド・締結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル保持部材と、
このパネル保持部材により下端部が固定された欄干パネルと、
踏段側に設けられた内側デッキと、
この内側デッキの上縁部を前記パネル保持部材に固定した内側デッキ固定手段とを備え、
この内側デッキ固定手段は、断面L字状で前記踏段の進行方向に沿って延びた長穴を有する取付金具と、この取付金具に前記内側デッキの前記上縁部を締結した締結手段とを含み、
前記長穴に沿って前記取付金具を移動して前記パネル保持部材に対する前記内側デッキの前記踏段の前記進行方向の位置を調整する乗客コンベアの欄干装置において、
前記取付金具は、前記パネル保持部材の上面と離間しているとともに前記上縁部が前記締結手段により締結された締結部と、この締結部の少なくとも片側に設けられているとともに前記上面と接触したガイド部とを有していることを特徴とする乗客コンベアの欄干装置。
【請求項2】
前記ガイド部は、下面が前記パネル保持部材の前記上面と面接触していることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの欄干装置。
【請求項3】
前記ガイド部は、先端が前記パネル保持部材の前記上面と線接触していることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの欄干装置。
【請求項4】
パネル保持部材と、
このパネル保持部材により下端部が固定された欄干パネルと、
踏段側に設けられた内側デッキと、
この内側デッキの上縁部を前記パネル保持部材に固定した内側デッキ固定手段とを備え、
この内側デッキ固定手段は、断面L字状で前記踏段の進行方向に沿って延びた長穴を有する取付金具と、この取付金具に前記内側デッキの前記上縁部を締結した締結手段とを含み、
前記長穴に沿って前記取付金具を移動して前記パネル保持部材に対する前記内側デッキの前記踏段の前記進行方向の位置を調整する乗客コンベアの欄干装置において、
前記取付金具は、前記パネル保持部材の上面と接触しているとともに前記内側デッキの前記上縁部が前記締結手段により締結されたガイド・締結部を有していることを特徴とする乗客コンベアの欄干装置。
【請求項5】
前記ガイド・締結部は、下面が前記パネル保持部材の前記上面と面接触していることを特徴とする請求項4に記載の乗客コンベアの欄干装置。
【請求項6】
前記ガイド・締結部は、先端が前記パネル保持部材の前記上面と線接触していることを特徴とする請求項4に記載の乗客コンベアの欄干装置。
【請求項7】
前記締結手段は、ネジであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の乗客コンベアの欄干装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−220934(P2009−220934A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66042(P2008−66042)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】