説明

乗客コンベアの監視装置

【課題】乗客が乗客コンベアの踏段に乗降する際の状況や様子を十分に把握することができる乗客コンベアの監視装置の提供。
【解決手段】複数の踏段3と移動手摺5を駆動する駆動装置6と、安全スイッチが動作したときに走行中の各踏段3と移動手摺5を停止させる安全装置と、駆動装置6へ運転開始信号を送信して踏段3及び移動手摺5の動作を制御する制御装置8とを備えた乗客コンベア20に備えられ、乗客コンベア20の上方に位置する建屋天井9に配置され、乗客コンベア20の状況を監視するカメラ装置10を備えた乗客コンベア20の監視装置において、カメラ装置10は、乗客コンベア20の状況を画像として撮影するカメラと、カメラに撮影された画像を連続的に記録可能な記録装置12と、制御装置8から運転開始信号が送信されたときにカメラの撮影を開始させる撮影開始手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアの状況を監視するカメラ装置を備えた乗客コンベアの監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に乗客コンベアは、無端状に連結され、上階乗降口と下階乗降口との間を循環する複数の踏段と、これらの踏段に同期して走行する移動手摺と、各踏段と移動手摺を駆動する駆動装置と、この駆動装置へ運転開始信号を送信して踏段及び移動手摺の動作を制御する制御装置とを備えている。また、上階乗降口あるいは下階乗降口には、乗客が踏段に乗降する際に、隣接する踏段間の隙間等に乗客の靴や荷物等が挟み込まれたことを検出する各種の安全装置が設けられている。そして、乗客コンベアにはこれらの安全装置が動作した場合に、その動作原因を把握するのに役立つカメラ装置が備えられている。このカメラ装置は、主に乗客コンベアの上方に位置する建屋天井、あるいは交差して隣接する乗客コンベアの底部と移動手摺との間の狭角部に配置されており、乗客コンベアの状況を監視している。
【0003】
このようなカメラ装置を備えた乗客コンベアの監視装置の従来技術の1つとして、乗客コンベアを被写体とした静止画を撮像する画像撮像手段と、この画像撮像手段の動作を制御する撮像制御手段とを備え、この撮像制御手段が、乗客コンベアに設けられた安全装置が動作したタイミングで画像撮像手段にシャッタオン信号を送信する乗客コンベアの監視システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−18167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示された従来技術の乗客コンベアの監視システムでは、この撮像制御手段によって乗客コンベアに設けられた安全装置が動作したタイミングで画像撮像手段にシャッタオン信号が送信されることにより、画像撮像手段が乗客コンベアを被写体とした静止画を撮像する。例えば、乗客が踏段に乗降する際に乗客の靴や荷物等が隣接する踏段間に挟み込まれた場合には、乗降口に設けられている安全装置が動作して乗客コンベアの運転が停止すると共に、画像撮像手段によって安全装置が動作した瞬間の乗客コンベアの状況が撮影される。撮影された静止画には乗客の靴や荷物等が挟み込まれた状況が映し出されることになるが、安全装置が動作した瞬間の静止画だけではどのようにして乗客の靴や荷物等が挟みこまれたのか、その状況に至るまでの様子を十分に知ることができず、安全装置が動作した原因や状況を把握することが必ずしも容易ではない。また、安全装置が動作しない場合には、画像撮像手段によって乗客コンベアの状況が撮像されることがないので、乗客が乗客コンベアを利用する際に何らかの異常、例えば乗客が踏段に乗降する際に乗降口で躓くことがあってもその状況を十分に把握することができないことが懸念されている。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、乗客が乗客コンベアの踏段に乗降する際の状況や様子を十分に把握することができる乗客コンベアの監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
無端状に連結され、上階乗降口と下階乗降口との間を循環する複数の踏段と、これらの踏段に同期して走行する移動手摺と、前記各踏段と前記移動手摺を駆動する駆動装置と、安全スイッチが動作したときに走行中の前記各踏段と前記移動手摺を停止させる安全装置と、前記駆動装置へ運転開始信号を送信して前記踏段及び前記移動手摺の動作を制御する制御装置とを備えた乗客コンベアに備えられ、前記乗客コンベアの上方に位置する建屋天井、あるいは交差して隣接する前記乗客コンベアの底部と前記移動手摺との間の狭角部に配置され、前記乗客コンベアの状況を監視するカメラ装置を備えた乗客コンベアの監視装置において、前記カメラ装置は、前記乗客コンベアの状況を画像として撮影するカメラと、このカメラに撮影された前記画像を連続的に記録可能な記録装置と、前記制御装置によって前記運転開始信号が送信されたときに前記カメラの撮影を開始させる撮影開始手段とを有していることを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明は、制御装置によって乗客コンベアの運転開始信号が駆動装置へ送信された場合には、駆動装置は各踏段と移動手摺を駆動して上階乗降口と下階乗降口との間を走行させる。このとき、カメラが制御装置の撮影開始手段によって乗客コンベアの状況を連続的に撮影し、その後も乗客コンベアの状況を撮影し続ける。従って、例えば乗客が踏段に乗降する際に乗客の靴や荷物等が隣接する踏段間に挟み込まれ、安全装置が動作したときには、カメラによって乗客コンベアの状況が既に撮影されており、その画像が連続的に記録装置に記録されているので、記録された画像から安全装置が動作する前後の状況を含めて乗客が踏段に乗降する一連の動作及び様子を容易に知ることができる。また、本発明は、撮影開始手段が制御手段によって運転開始信号が送信されたときにカメラの撮影を開始させることにより、安全装置が動作していない場合においても乗客コンベアの状況をカメラで撮影し、撮影した画像を連続的に記録装置に記録しているので、乗客が乗客コンベアを利用する際に何らかの異常、例えば乗客が踏段に乗降する際に乗降口で躓くことがあっても記録された画像からその状況を十分に把握することができる。このように本発明は、乗客が乗客コンベアの踏段に乗降する際の状況や様子を十分に把握することができる。
【0009】
また、本発明に係る乗客コンベアの監視装置は、前記発明において、前記乗客コンベアは、前記制御装置に接続され、上昇運転と下降運転を相互に切替える運転切替スイッチを備え、前記カメラ装置は、前記運転切替スイッチによって上昇運転から下降運転に切替えられたときに前記カメラが前記上階乗降口の方を向くように制御し、前記運転切替スイッチによって下降運転から上昇運転に切替えられたときに前記カメラが前記下階乗降口の方を向くように制御する方向制御手段を有することを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明は、方向制御手段によってカメラが乗客コンベアの踏段の運転方向を切替える運転切替スイッチに連動して動作するので、運転切替スイッチによって乗客コンベアの踏段の運転方向が切替えられても、複数台のカメラを設けることなく乗客コンベアの踏段の運転方向に自動的に対応することができる。このように、一台のカメラで上階乗降口及び下階乗降口において乗客が踏段に乗降する際の状況や様子を十分に知ることができる。
【0011】
また、本発明に係る乗客コンベアの監視装置は、前記発明において、前記カメラ装置は、前記カメラを水平方向から所定の角度傾斜した状態で保持する保持手段と、前記カメラを前記方向制御手段によって制御された方向へ回動させる回動手段を有することを特徴としている。このように構成すると、カメラが設けられる乗客コンベアの傾斜に合わせて予め保持手段によってカメラが水平方向から所定の角度傾斜した状態で建屋天井あるいは狭角部に保持されるので、回動手段が方向制御手段によって制御された方向へカメラを回動させることにより、カメラが乗客コンベアの踏段と移動手摺の運転方向に対応して上階乗降口あるいは下階乗降口に位置する対象を容易に捉えることができる。
【0012】
また、本発明に係る乗客コンベアの監視装置は、前記発明において、前記回動手段は、前記カメラを軸線周りに回動させるモータから成り、前記保持手段は、上端が前記建屋天井、あるいは前記狭角部に固定されると共に、下端に前記モータが取り付けられ、下端が水平方向から所定の角度傾斜して形成されるカメラ保持ベースから成ることを特徴としている。このように構成すると、カメラ保持ベースの下端が水平方向から所定の角度傾斜して形成されているので、カメラをモータを介してカメラ保持ベースの下端に取り付けるだけで容易にカメラを所定の角度傾斜して保持することができる。また、この状態でモータが軸線周りにカメラを回動させることにより、カメラを方向制御手段によって制御された方向へ確実に向けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の乗客コンベアの監視装置は、無端状に連結され、上階乗降口と下階乗降口との間を循環する複数の踏段と、これらの踏段に同期して走行する移動手摺と、各踏段と移動手摺を駆動する駆動装置と、安全スイッチが動作したときに走行中の各踏段と移動手摺を停止させる安全装置と、駆動装置へ運転開始信号を送信して踏段及び移動手摺の動作を制御する制御装置とを備えた乗客コンベアに備えられ、乗客コンベアの上方に位置する建屋天井、あるいは交差して隣接する乗客コンベアの底部と移動手摺との間の狭角部に配置され、乗客コンベアの状況を監視するカメラ装置を備えている。そして、本発明は、このカメラ装置が、乗客コンベアの状況を画像として撮影するカメラと、このカメラに撮影された画像を連続的に記録可能な記録装置と、制御装置によって運転開始信号が送信されたときにカメラの撮影を開始させる撮影開始手段とを有することにより、例えば乗客が踏段に乗降する際に乗客の靴や荷物等が隣接する踏段間に挟み込まれ、安全装置が動作した場合には、撮影開始手段によって乗客コンベアの運転開始時からカメラが乗客コンベアの状況を撮影し続け、撮影された画像が連続的に記録装置に記録されるので、記録された画像から安全装置が動作する前後の状況を含めて乗客が踏段に乗降する一連の動作及び様子を容易に知ることができる。また、本発明は、安全装置が動作していない場合においても撮影開始手段によって乗客コンベアの運転開始時から乗客コンベアの状況をカメラで撮影し、撮影された画像を連続的に記録装置に記録しているので、乗客が乗客コンベアを利用する際に何らかの異常、例えば乗客が踏段に乗降する際に乗降口で躓くことがあっても記録された画像からその状況を十分に把握することができる。このように本発明は、乗客が乗客コンベアの踏段に乗降する際の状況や様子を十分に把握することができ、従来よりも乗客コンベアを利用する際に生じる異常に迅速に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る監視装置が適用される乗客コンベアの構成を示す図である。
【図2】本発明に係る乗客コンベアの監視装置の一実施形態の構成を示す図である。
【図3】図2に示す本実施形態の動作を説明する図であり、踏段が上昇運転を行っているときの図である。
【図4】図2に示す本実施形態の動作を説明する図であり、踏段が下降運転を行っているときの図である。
【図5】図2に示す本実施形態に備えられるカメラ装置の動作を説明する図であり、踏段が上昇運転を行っているときの図である。
【図6】図2に示す本実施形態に備えられるカメラ装置の動作を説明する図であり、踏段が下降運転を行っているときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る乗客コンベアの監視装置を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0016】
本発明に係る監視装置の一実施形態は、例えば図1に示すように乗客コンベア20に設けられる。この乗客コンベア20は、無端状に連結され、上階乗降口2と下階乗降口1との間を循環する複数の踏段3と、これらの踏段3の両側に立設された欄干4と、欄干4の上側に配設され、踏段3に同期して走行する移動手摺5とを備えている。また、上記乗客コンベア20は、各踏段3と移動手摺5を駆動する駆動装置6と、図示されていないが安全スイッチが動作したときに走行中の各踏段3と移動手摺5を停止させる安全装置と、駆動装置6へ運転開始信号を送信して踏段3及び移動手摺5の動作を制御する制御装置8とを備えている。さらに、乗客コンベア20は、制御装置8に接続され、上昇運転と下降運転を相互に切替える運転切替スイッチ7を備えている。なお、本実施形態に係る乗客コンベア20では、運転切替スイッチ7は上階乗降口2及び下階乗降口1のそれぞれに設けられており、また安全装置は図示されていないが上階乗降口2及び下階乗降口1の近傍にそれぞれ設けられている。
【0017】
本発明に係る乗客コンベア20の監視装置の一実施形態は、図2〜6に示すように乗客コンベア20の状況を監視するカメラ装置10を備えており、このカメラ装置10は、例えば乗客コンベア20の上方に位置する建屋天井9に配置されている。本実施形態では、カメラ装置10は、乗客コンベア20の状況を画像として撮影するカメラ10aと、このカメラ10aに撮影された画像を連続的に記録可能な記録装置12と、制御装置8によって運転開始信号が送信されたときにカメラ10aの撮影を開始させる撮影開始手段とを有している。また、本実施形態では、カメラ装置10は、カメラ10aで撮影した乗客コンベア20の状況の画像を記録装置12へ送信すると共に、カメラ10の動作を制御する制御装置11を有しており、上述の撮影開始手段はこの制御装置11の内部に含まれている。なお、記録装置12は、例えばハードディスクレコーダ等の各種の録画装置が用いられる。
【0018】
カメラ装置10は、運転切替スイッチ7によって上昇運転から下降運転に切替えられたときにカメラ10aが上階乗降口2の方を向くように制御し、運転切替スイッチ7によって下降運転から上昇運転に切替えられたときにカメラ10aが下階乗降口1の方を向くように制御する方向制御手段を制御装置11の内部に有している。さらに、カメラ装置10は、図5、6に示すようにカメラ10aを水平方向から所定の角度傾斜した状態で保持する保持手段と、カメラ10aを方向制御手段によって制御された方向へ回動させる回動手段を有している。
【0019】
具体的には、回動手段は、カメラ10aを軸線周りに回動させるモータ10bから成り、保持手段は、上端が建屋天井9に固定されると共に、下端にモータ10bが取り付けられ、下端が水平方向から所定の角度傾斜、すなわち鉛直方向からθ(0°<θ<90°)の勾配を持たせて形成されるカメラ保持ベース10cから成っている。そして、カメラ10aは、取り外し可能なカバー10dで覆われている。なお、このカバー10dは、カメラ10aがカバー10dで覆われていても内側から乗客コンベア20の状況を撮影できるように半透明のフィルムから成っている。また、カメラ保持ベース10cの下端の傾斜角度θは、予め乗客コンベア20の大きさ等によって設定されている。
【0020】
次に、本実施形態に備えられるカメラ装置の動作を図3〜6に基づいて説明する。
【0021】
図3は図2に示す本実施形態の動作を説明する図であり、踏段が上昇運転を行っているときの図、図4は図2に示す本実施形態の動作を説明する図であり、踏段が下降運転を行っているときの図、図5は図2に示す本実施形態に備えられるカメラ装置の動作を説明する図であり、踏段が上昇運転を行っているときの図、図6は図2に示す本実施形態に備えられるカメラ装置の動作を説明する図であり、踏段が下降運転を行っているときの図である。
【0022】
図3、5に示すように、本実施形態が設けられる乗客コンベア20の制御装置8が踏段3及び移動手摺5の上昇運転を開始する運転開始信号を駆動装置6へ送信すると、駆動装置6が踏段3と移動手摺5を駆動して矢印13aに示すように上昇運転させる。このとき、制御装置8は踏段3及び移動手摺5の上昇運転が開始される旨の信号をカメラ装置10の制御装置11へ送信する。カメラ装置10の制御装置11が踏段3及び移動手摺5の上昇運転が開始される旨の信号を受信すると、カメラ装置10の制御装置11の内部に備えられている撮影開始手段がカメラ10aの撮影を開始するようにカメラ10aを制御し、カメラ10aが下階乗降口1における乗客コンベア20の状況を撮影する。そして、カメラ装置10の記録装置12がカメラ10aによって撮影された乗客コンベア20の状況の画像を連続的に記録する。
【0023】
ここで、カメラ10aが図5に示すように乗客コンベア20の下階乗降口1の方向を向いておらず、図6に示すように上階乗降口2の方向を向いている場合には、カメラ10aの撮影が開始される前に制御装置11の方向制御手段がモータ10bを下階乗降口1の方向へ回動するように制御する。これにより、図6から図5に示すようにモータ10bが軸線周りに180度回動するので、カメラ10aが水平方向から傾いた状態で上階乗降口2から下階乗降口1の方向へ向き、カメラ10aの撮影範囲14aに乗客コンベア20の下階乗降口1が入るようになる。
【0024】
次に、図4、6に示すように運転切替スイッチ7によって乗客コンベア20の踏段3及び移動手摺5が上昇運転から下降運転に切替えられると、乗客コンベア20の制御装置8が踏段3及び移動手摺5の下降運転を開始する運転開始信号を駆動装置6へ送信する。そして、駆動装置6が下降運転を開始する運転開始信号を受信すると、駆動装置6が踏段3と移動手摺5を駆動して矢印13bに示すように下降運転させる。
【0025】
このとき、乗客コンベア20の制御装置8は踏段3及び移動手摺5の下降運転が開始される旨の信号をカメラ装置10の制御装置11へ送信する。カメラ装置10の制御装置11が踏段3及び移動手摺5の下降運転が開始される旨の信号を受信すると、カメラ10aの撮影が開始される前に制御装置11の方向制御手段がモータ10bを下階乗降口1から上階乗降口2の方向へ回動するように制御する。これにより、図5から図6に示すようにモータ10bが軸線周りに180度回動するので、カメラ10aが水平方向から傾いた状態で下階乗降口1から上階乗降口2の方向へ向き、カメラ10の撮影範囲14bに乗客コンベア20の上階乗降口2が入るようになる。そして、カメラ装置10の制御装置11の撮影開始手段がカメラ10aの撮影を開始するように制御し、カメラ10aが上階乗降口2における乗客コンベア20の状況を撮影する。さらに、カメラ装置10の記録装置12がカメラ10aによって撮影された乗客コンベア20の状況の画像を連続的に記録する。
【0026】
このように構成した本実施形態によれば、図2〜6に示すようにカメラ装置10は、乗客コンベア20の状況を画像として撮影するカメラ10aと、このカメラ10aに撮影された画像を連続的に記録可能な記録装置12と、制御装置8によって運転開始信号が送信されたときにカメラ10aの撮影を開始させる撮影開始手段とを有することにより、例えば乗客が踏段3に乗降する際に乗客の靴や荷物等が隣接する踏段3間に挟み込まれ、安全装置が動作した場合には、上階乗降口2あるいは下階乗降口1における乗客コンベア20の状況が踏段3及び移動手摺5の運転開始時からカメラ10aが撮影されており、撮影された画像が連続的に記録装置12に記録されているので、この画像から安全装置が動作する前後の状況を含めて乗客が踏段3に乗降する一連の動作及び様子を容易に知ることができる。
【0027】
また、本発明は、カメラ装置10の制御装置11が乗客コンベア20の制御装置8から送信された運転が開始される旨の信号を受信したときに撮影開始手段によってカメラ10aの撮影を開始させることにより、安全装置が動作していない場合においても乗客コンベア20の状況をカメラ10aで撮影し、撮影した画像を連続的に記録装置12に記録しているので、乗客が乗客コンベア20を利用する際に何らかの異常、例えば乗客が踏段3に乗降する際に上階乗降口2あるいは下階乗降口1で躓くことがあっても記録された画像からその状況を十分に把握することができる。このように本発明は、乗客が乗客コンベア20の踏段3に乗降する際の状況や様子を十分に把握することができ、乗客コンベア20を利用する際に生じる異常に迅速に対応することができる。
【0028】
また、本実施形態は、カメラ装置10は、運転切替スイッチ7によって上昇運転から下降運転に切替えられたときにカメラ10aが上階乗降口2の方を向くように制御し、運転切替スイッチ7によって下降運転から上昇運転に切替えられたときにカメラ10aが下階乗降口1の方を向くように制御する方向制御手段を有しており、この方向制御手段によってカメラ10aが乗客コンベア20の踏段3の運転方向を切替える運転切替スイッチ7に連動して動作するので、運転切替スイッチ7によって乗客コンベア20の踏段3の運転方向が切替えられても、複数台のカメラを設けることなく乗客コンベア20の踏段3の運転方向に自動的に対応することができる。このように、一台のカメラ10aで上階乗降口2及び下階乗降口1において乗客が踏段3に乗降する際の状況や様子を十分に知ることができ、利便性が良い。
【0029】
また、本実施形態は、カメラ10aを水平方向から所定の角度傾斜した状態、すなわち図5、6で示すようにカメラ保持ベース10cにモータ10bによって鉛直方向から予め設定されたθ(0°<θ<90°)の角度を持たせた状態で保持し、モータ10bを方向制御手段によって制御された方向へ回動させることによってカメラ10aが上階乗降口2あるいは下階乗降口1に向くようにしている。これにより、乗客コンベア20の踏段3と移動手摺5が上昇運転している場合には、図5に示すようにカメラ10aが下階乗降口1の方を向くので、図3に示すように下階乗降口1をカメラ10aの撮影範囲14aに容易に収めることができる。一方、乗客コンベア20の踏段3と移動手摺5が下降運転している場合には、図6に示すようにカメラ10aが上階乗降口2の方を向くので、図4に示すように上階乗降口2をカメラ10aの撮影範囲14aに容易に収めることができる。このように、カメラ10aが乗客コンベア20の踏段3と移動手摺5の運転方向に対応して上階乗降口2あるいは下階乗降口1に位置する対象を容易に捉えることができる。
【0030】
また、本実施形態は、カメラ保持ベース10cの上端が建屋天井9に固定されると共に、下端が水平方向から所定の角度傾斜、すなわち鉛直方向から予め設定されたθ(0°<θ<90°)の角度を持たせて形成されている。そして、カメラ保持ベース10cの下端の傾斜面にモータ10bを介してカメラ10aを取り付け、このカメラ10aがカメラ保持ベース10cの下端の傾斜面に対して平行に回動するようにしているので、モータ10bを回動させるだけでカメラ10aを方向制御手段によって制御された方向へ確実に向けることができる。このように本発明は、カメラ保持ベース10cとモータ10bによってカメラ10aを複数用いることなく上階乗降口2及び下階乗降口1における乗客コンベアの状況を容易に把握することができ、コストを抑えることができる。
【0031】
なお、本実施形態では、カメラ装置10が乗客コンベア20の上方に位置する建屋天井9に配置された場合について説明したが、この場合に限らずカメラ装置10は、交差して隣接する乗客コンベア20の底部と移動手摺5との間の狭角部に配置されても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 下階乗降口
2 上階乗降口
3 踏段
4 欄干
5 移動手摺
6 駆動装置
7 運転切替スイッチ
8,11 制御装置
9 建屋天井
10 カメラ装置
10a カメラ
10b モータ
10c カメラ保持ベース
10d カメラカバー
12 記録装置
20 乗客コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結され、上階乗降口と下階乗降口との間を循環する複数の踏段と、これらの踏段に同期して走行する移動手摺と、前記各踏段と前記移動手摺を駆動する駆動装置と、安全スイッチが動作したときに走行中の前記各踏段と前記移動手摺を停止させる安全装置と、前記駆動装置へ運転開始信号を送信して前記踏段及び前記移動手摺の動作を制御する制御装置とを備えた乗客コンベアに備えられ、前記乗客コンベアの上方に位置する建屋天井、あるいは交差して隣接する前記乗客コンベアの底部と前記移動手摺との間の狭角部に配置され、前記乗客コンベアの状況を監視するカメラ装置を備えた乗客コンベアの監視装置において、
前記カメラ装置は、前記乗客コンベアの状況を画像として撮影するカメラと、このカメラに撮影された前記画像を連続的に記録可能な記録装置と、前記制御装置によって前記運転開始信号が送信されたときに前記カメラの撮影を開始させる撮影開始手段とを有していることを特徴とする乗客コンベアの監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乗客コンベアの監視装置において、
前記乗客コンベアは、前記制御装置に接続され、上昇運転と下降運転を相互に切替える運転切替スイッチを備え、
前記カメラ装置は、前記運転切替スイッチによって上昇運転から下降運転に切替えられたときに前記カメラが前記上階乗降口の方を向くように制御し、前記運転切替スイッチによって下降運転から上昇運転に切替えられたときに前記カメラが前記下階乗降口の方を向くように制御する方向制御手段を有することを特徴とする乗客コンベアの監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載の乗客コンベアの監視装置において、
前記カメラ装置は、前記カメラを水平方向から所定の角度傾斜した状態で保持する保持手段と、前記カメラを前記方向制御手段によって制御された方向へ回動させる回動手段を有することを特徴とする乗客コンベアの監視装置。
【請求項4】
請求項3に記載の乗客コンベアの監視装置において、
前記回動手段は、前記カメラを軸線周りに回動させるモータから成り、
前記保持手段は、上端が前記建屋天井、あるいは前記狭角部に固定されると共に、下端に前記モータが取り付けられ、下端が水平方向から所定の角度傾斜して形成されるカメラ保持ベースから成ることを特徴とする乗客コンベアの監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−17168(P2012−17168A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154950(P2010−154950)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】