説明

乗客コンベア減速機の軸受抜き雇装置

【課題】回転軸がケースに挿入された状態でも軸受を回転軸から容易に取り外すことができる乗客コンベア減速機の軸受抜き雇装置の提供。
【解決手段】分割可能に形成されると共に、ケース2Bの内部に挿入され、内周面11dで低速軸5の外周を嵌合するように低速軸5に装着してインナー9cと円錐コロ9bに当接する円環状のブロック11と、このブロック11を一体的に保持するスパナ13と、ケース2Bと円錐コロ9bとの間の隙間からケース2B内に挿入され、内周面12dがブロック11の外周面11cに係合する抜き雇12と、ブロック11、抜き雇12、インナー9c、及び円錐コロ9bを低速軸5から一体的に抜き取る螺子棒14及び油圧ラム17とを備え、ブロック11は外周面11cに形成された雄螺子11c1を有し、抜き雇12は、内周面12dに形成され、雄螺子11c1に螺合する雌螺子12d1を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状に連結された踏段を循環移動させるモータの回転速度を減速させる減速機に適用され、軸受を減速機から抜き取る乗客コンベア減速機の軸受抜き雇装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図14は従来の乗客コンベア減速機の軸受抜き雇装置が備えられる従来の減速機を含む駆動機の構成を示す図、図15は図14に示す従来の減速機の構成を示す図、図16は一般的な減速機の構成を示す図である。
【0003】
乗客コンベアは、一般的に無端状に連結された踏段と、踏段の両側方にそれぞれ配設された欄干と、これらの欄干にそれぞれ無端状に設けられ、踏段と共に循環移動するハンドレールと、踏段及びハンドレールを循環移動させるために駆動する駆動機とを備えている。図14に示すように、この駆動機1は、動力を出力するモータ3と、このモータ3の回転速度を減速させる減速機2と、この減速機2に取り付けられたブレーキ4とから少なくとも構成されている。
【0004】
また、従来より減速機2は、例えば図15に示すようにモータ3の回転速度を減速して出力する歯車6,7,8と、これらの歯車6,7,8と嵌合し、歯車6,7,8の出力によって回転する回転軸、例えば低速側の低速軸5と、この低速軸5を内部に挿入するケース2Aと、このケース2Aに設けられ、低速軸5を回転可能に支持する軸受9,10とを備えている。なお、図15に示す低速軸5は、水平方向に沿って配設されている。
【0005】
上述のケース2Aは、上下半分に分割可能に形成された上ケース2a及び下ケース2bを有しており、軸受9,10を上下方向から挟み込むようにして低速軸5の部分を内包している。また、歯車6はケース2Aの外側に配置されており、軸受9はケース2Aの両側のうち歯車6に近い側に配置されると共に、軸受10はケース2Aの両側のうち軸受9と反対側、すなわち低速軸5の先端部分側に配置されている。そして、歯車7,8は、ケース2A内の軸受9,10間に低速軸5に沿って配設されている。
【0006】
また、軸受9は、ケース2Aに取り付けられたアウター9aと、このアウター9aよりも内側に設けられ、低速軸5にそれぞれ当接するインナー9cと、アウター9aとインナー9cとの間に回転可能に介装されたコロ、例えば円錐コロ9bとを有している。同様に、軸受10は、ケース2Aに取り付けられたアウター10aと、このアウター10aよりも内側に設けられ、低速軸5にそれぞれ当接するインナー10cと、アウター10aとインナー10cとの間に回転可能に介装されたコロ、例えば円錐コロ10bとを有している。なお、ケース2Aの上ケース2aと下ケース2bは、図示しない螺子等によって取り外し可能に結合されている。
【0007】
このように構成された減速機2を含む駆動機1を備えた乗客コンベアは、モータ3が駆動することによって歯車6,7,8が回転し、これら歯車6,7,8に嵌合された低速軸5が軸受9,10に軸支されてモータ3の回転速度よりも低速で回転することにより、踏段の走行速度を調整して乗客を安全に運ぶようになっている。
【0008】
ここで、低速軸5を回転可能に支持する軸受9,10は、低速軸5が回転することによって劣化したり、あるいは低速軸5の荷重によって負荷がかかるので、軸受9,10が故障して音や振動が発生することがある。この場合には、軸受9,10を新しいものに交換する必要がある。
【0009】
そこで、軸受9,10を新しいものと交換する際には、従来より上ケース2aと下ケース2aを結合する螺子を外して上ケース2aを下ケース2bから取り外し、低速軸5をケース2Aから取り出すことにより、図示しない工具等の装置で軸受9,10を低速軸5から取り外すことが行われていた。また、軸受9,10を低速軸5から取り外す装置の従来技術の1つとして、上下に分割可能に形成された半円筒顎と、この半円筒顎の各々の端面に外周方向にそれぞれ形成された半円弧顎部と、これらの半円弧顎部の背側面に垂立面接して複数ボルトによって締結された背当て板とを備えた軸受保持具を用いることも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
具体的には、この特許文献1に開示された従来技術の軸受保持具は、半円筒顎の開口部の内孔入口端部に内孔の中心方向に内突起する半円周堤がそれぞれ設けられており、その奥の上、下半内孔部に例えば円錐コロ9bの外周テーパーに迎合するテーパー内孔が形成されている。従って、上述の軸受保持具を用いて軸受9を低速軸5から取り外すときには、上下半円筒顎内に円錐コロ9bを挟み込んで上下半円筒顎の半円周堤をこの円錐コロ9bに係止し、さらにプーリ抜き雇の爪先を上下半円弧顎部に係止することにより、プーリ抜き雇を低速軸5の軸線方向へ移動させて軸受9を軸受保持具と共に低速軸5から抜き出すようにしている。なお、同様にして軸受保持具によって軸受10も低速軸5から取り外すことができる。
【0011】
ここで、近年では図16に示すように、低騒音化を目的として上述の減速機2と異なる減速機22が一般的に駆動機1に備えられるようになっており、この減速機22は、上述した従来の減速機2と基本構成は同じであるが、ケース2Aの代わりにケース2Bを備えている。このケース2Bは、ケース2Aの上ケース2a及び下ケース2bのように分割可能ではなく、上部、及び側部のうち軸受9,10がそれぞれ設けられた部分に開口を有して一体的に形成されたケース本体2cと、このケース本体2cの上部の開口に蓋をする上蓋2dと、ケース本体2cの側部のうち軸受9,10がそれぞれ設けられた部分の開口に蓋をする側蓋2e,2fとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平2−38525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、一般的な減速機22の低速軸5から軸受9,10を取り外すときには、上述したようにケース本体2cが一体的に形成されていることによって低速軸5をケース本体2cから容易に取り出すことができないので、低速軸5がケース本体2cに挿入された状態で軸受9,10を低速軸5から取り外す作業を行う必要がある。そこで、ケース本体2cは上部に開口を有しているので、ケース2Bの上蓋2dをケース本体2cから取り外し、このケース本体2cの開口から工具等の装置を用いて軸受9,10を低速軸5から取り外すことが考えられる。
【0014】
しかし、ケース本体2c内において軸受9,10間には、歯車7,8が低速軸5に沿って配設されているので、軸受9,10の取り外し作業を行うスペースがあまりなく、軸受9,10の取り外し作業を行うことが非常に難しくなっている。また、ケース本体2c内のスペースに余裕がないので、軸受9,10の取り外し作業を行い易くするために低速軸5を軸線方向へスライドさせることも難しくなっている。
【0015】
さらに、特許文献1に開示された従来技術の軸受保持具を用いて軸受9,10を低速軸5から取り外す場合には、軸受9,10の外周部に十分なスペースが必要となるので、軸受9,10がケース本体2cに収容された状態、すなわち低速軸5がケース本体2cに挿入された状態では、上下半円筒顎内に円錐コロ9b,10bを挟み込んで軸受保持具を装着すること自体が困難となっている。従って、低速軸5がケース本体2cに挿入された状態で軸受9,10を低速軸5から取り外すことができない場合には、減速機22一式を新しいものに交換しなければならず、軸受9,10の交換作業に要する費用がかさむことが懸念されている。
【0016】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、回転軸がケースに挿入された状態でも軸受を回転軸から容易に取り外すことができる乗客コンベア減速機の軸受抜き雇装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明の乗客コンベアの軸受抜き雇装置は、無端状に連結された踏段を循環移動させるモータの回転速度を減速して出力する歯車と、この歯車と嵌合し、前記歯車の出力によって回転する回転軸と、この回転軸を内部に挿入するケースと、このケースに設けられ、前記回転軸を回転可能に支持する軸受とを備え、この軸受は、前記ケースに取り付けられたアウターと、このアウターよりも内側に設けられ、前記回転軸に当接するインナーと、前記アウターと前記インナーとの間に回転可能に介装されたコロとを有する乗客コンベアの減速機に適用され、前記軸受を前記回転軸及び前記ケースから抜き取る乗客コンベア減速機の軸受抜き雇装置において、分割可能に形成されると共に、前記ケースの内部に挿入され、内周面で前記回転軸の外周を嵌合するように前記回転軸に装着して前記インナーと前記コロに当接する円環状のブロックと、この円環状のブロックを一体的に保持する保持手段と、前記アウターが前記ケースから取り外されて形成される前記ケースと前記コロとの間の隙間から前記ケース内に挿入され、内周面が前記ブロックの外周面に係合する抜き雇と、前記ブロック、前記抜き雇、前記インナー、及び前記コロを前記回転軸から一体的に抜き取る抜取手段とを備え、前記ブロックは前記外周面に形成された雄螺子を有し、前記抜き雇は、前記内周面に形成され、前記ブロックの前記雄螺子に螺合する雌螺子を有することを特徴としている。
【0018】
このように構成した本発明は、分割可能に形成された円環状のブロックをケースの内部に挿入し、内周面で回転軸の外周を嵌合するように回転軸に装着してインナーとコロに当接した状態で、保持手段によってブロックを一体的に保持することにより、各ブロックがインナーとコロを押えながら固定される。一方、アウターをケースから取り外すことにより、ケースとコロとの間に間隙が生じる。そこで、抜き雇をこの隙間からケース内に挿入し、抜き雇の内周面に形成された雌螺子をブロックの外周面に形成された雄螺子に螺合することにより、ブロック、抜き雇、インナー、及びコロを一体的に固定することができる。そして、固定されたブロック、抜き雇、インナー、及びコロを抜取手段によって回転軸から一体的に抜き取ることにより、回転軸がケースの内部に挿入された状態であってもインナー及びコロを回転軸及びケースから簡単に取り外すことができる。このように、回転軸がケースに挿入された状態でも軸受を回転軸から容易に取り外すことができる。
【0019】
また、本発明に係る乗客コンベア減速機の軸受抜き雇装置は、前記発明において、前記保持手段は、前記ブロックを挟持するスパナから成り、前記抜き雇は、外側面に形成された雌螺子孔部を有し、前記抜取手段は、前記抜き雇の前記雌螺子孔部に螺合して前記回転軸と平行に配置される螺子棒と、この螺子棒を変位させる油圧ラムとを有することを特徴としている。
【0020】
このように構成した本発明は、各ブロックをインナーとコロに固定する際に保持手段としてスパナを用いることにより、作業者にとって使い勝手が良くなり、作業効率を向上させることができる。また、各ブロックを挟持した状態からスパナを容易に取り外すことができるので、高い利便性を確保することができる。さらに、ブロック、抜き雇、インナー、及びコロが一体的に固定された状態で抜取手段の螺子棒を抜き雇の雌螺子孔部に螺合することにより、油圧ラムを抜き雇に迅速に装着することができる。そして、油圧ラムによって螺子棒を変位させることにより、回転軸を破損させることなくインナー及びコロを回転軸及びケースから円滑に抜き取ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の乗客コンベア減速機の軸受抜き雇装置は、分割可能に形成されると共に、ケースの内部に挿入され、内周面で回転軸の外周を嵌合するように回転軸に装着してインナーとコロに当接する円環状のブロックと、この円環状のブロックを一体的に保持する保持手段と、アウターがケースから取り外されて形成されるケースとコロとの間の隙間からケース内に挿入され、内周面がブロックの外周面に係合する抜き雇と、ブロック、抜き雇、インナー、及びコロを回転軸から一体的に抜き取る抜取手段とを備えている。そして、ブロックは外周面に形成された雄螺子を有し、抜き雇は、内周面に形成され、ブロックの雄螺子に螺合する雌螺子を有している。従って、ブロックをケースの内部に挿入して回転軸に装着し、保持手段によってブロックを軸受のインナーと軸受のコロに当接させた状態で抜き雇の雌螺子をブロックの雄螺子に螺合することにより、ブロック、抜き雇、インナー、及びコロを一体的に固定することができる。これにより、抜取手段によってブロック、抜き雇、インナー、及びコロを回転軸及びケースから容易に抜き取ることができる。このように、回転軸がケースに挿入された状態でも軸受を回転軸から容易に取り外すことができるので、従来よりも軸受の交換作業にかかる費用を抑えることができ、経済性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る乗客コンベア減速機の軸受抜き雇装置の一実施形態に備えられるブロックを示す底面図である。
【図2】図1に示すA−A断面図である。
【図3】図1に示すC−C断面図である。
【図4】本実施形態に備えられる抜き雇を示す平面図である。
【図5】図4に示すD−D断面図である。
【図6】本実施形態に備えられるスパナを示す図である。
【図7】本実施形態の使用状態を説明する図であり、本実施形態が適用される減速機からケースの上蓋及び側蓋を取り外した状態を示す図である。
【図8】本実施形態の使用状態を説明する図であり、図7に示す減速機から軸受のアウター及び歯車を取り外した状態を示す図である。
【図9】本実施形態の使用状態を説明する図であり、図1に示すブロックを図8に示す減速機の低速軸に装着した状態を示す図である。
【図10】本実施形態の使用状態を説明する図であり、図6に示すスパナが図9に示すブロックを保持した状態を示す図である。
【図11】本実施形態の使用状態を説明する図であり、図2に示す抜き雇の雌螺子を図10に示すブロックの雄螺子に螺合した状態を示す図である。
【図12】本実施形態の使用状態を説明する図であり、図11に示すスパナをブロックから取り外すと共に、本実施形態に備えられる抜取手段を抜き雇に取り付けた状態を示す図である。
【図13】図12に示す減速機から軸受、ブロック、抜き雇、及び抜取手段を取り外した状態を示す図である。
【図14】従来の乗客コンベア減速機の軸受抜き雇装置が備えられる従来の減速機を含む駆動機の構成を示す図である。
【図15】図14に示す従来の減速機の構成を示す図である。
【図16】一般的な減速機の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る乗客コンベア減速機の軸受抜き雇装置を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0024】
本発明に係る乗客コンベア減速機の軸受抜き雇装置の一実施形態は、例えば前述した図16に示す一般的な減速機22に適用される。従って、図16に示す減速機22と重複する部分には同一符号を付す。
【0025】
本実施形態が適用される減速機22は、図16に示すようにモータ3の回転速度を減速して出力する歯車6,7,8と、これらの歯車6,7,8と嵌合し、歯車6,7,8の出力によって回転する回転軸、例えば低速側の低速軸5と、この低速軸5を内部に挿入するケース2Bと、このケース2Bに設けられ、低速軸5を回転可能に支持する軸受9,10とを備えている。なお、図16に示す低速軸5は、水平方向に沿って配設されている。
【0026】
また、歯車6はケース2Bの外側に配置されており、軸受9はケース2Bの両側のうち歯車6に近い側に配置されると共に、軸受10はケース2Bの両側のうち軸受9と反対側、すなわち低速軸5の先端部分側に配置されている。そして、歯車7,8は、ケース2B内の軸受9,10間に低速軸5に沿って配設されている。
【0027】
また、軸受9は、ケース2Bに取り付けられたアウター9aと、このアウター9aよりも内側に設けられ、低速軸5に当接するインナー9cと、アウター9aとインナー9cとの間に回転可能に介装されたコロ、例えば円錐コロ9bとを有している。同様に、軸受10は、ケース2Bに取り付けられたアウター10aと、このアウター10aよりも内側に設けられ、低速軸5に当接するインナー10cと、アウター10aとインナー10cとの間に回転可能に介装されたコロ、例えば円錐コロ10bとを有している。なお、アウター9a,10aは、強固に固定される必要はなく、それぞれ取り外し可能になっている。
【0028】
上述のケース2Bは、例えば上部、及び側部のうち軸受9,10がそれぞれ設けられた部分に開口を有して一体的に形成されたケース本体2cと、このケース本体2cの上部の開口に蓋をする上蓋2dと、ケース本体2cの側部のうち軸受9,10がそれぞれ設けられた部分の開口に蓋をする側蓋2e,2fとを有し、低速軸5の部分を内包している。
【0029】
本実施形態は、図1〜6に示すように分割可能に形成されると共に、ケース2Bの内部に挿入され、内周面11dで低速軸5の外周を嵌合するように低速軸5に装着してインナー9c,10cと円錐コロ9b,10bに当接する円環状のブロック11と、この円環状のブロック11を一体的に保持する後述の保持手段と、アウター9a,10aがケース2Bから取り外されて形成されるケース2Bと円錐コロ9b,10bとの間の隙間からケース2B内に挿入され、内周面12dがブロック11の外周面11cに係合する抜き雇12と、ブロック11、抜き雇12、インナー9c,10c、及び円錐コロ9b,10bを低速軸5から一体的に抜き取る後述の抜取手段とを備えている。
【0030】
具体的には、ブロック11は、例えば図1に示すように半分割可能に形成された分割体11A,11Bとから成り、これらの分割体11A,11Bの上面11aには、図1、図3に示すように合わさったときの幅寸法がBとなるように形成された凸部11gが設けられている。一方、ブロック11の下面11bには、内周面11dを低速軸5に嵌合させたときに内側が円錐コロ9b,10bに係合するように周縁を形成するつば11fが設けられている。また、ブロック11の下面11bの中央部分には、内周面11dを低速軸5に嵌合させたときにインナー9c,10cに嵌合する凹部11hが設けられている。さらにブロック11は、外周面11cに形成された雄螺子11c1を有している。
【0031】
また、抜き雇12は、例えば図4、図5に示すように低速軸5を挿通する中空の円環状に形成されており、抜き雇12の上面12aには、アウター9a,10aがケース2Bから取り外されて形成されるケース2Bと円錐コロ9b,10bとの間の隙間の各間隔よりも厚さが小さく設定され、周縁を形成するつば12fが設けられている。さらに、抜き雇12は、例えば内周面12dのうちつば12fの先端側に形成され、ブロック11の雄螺子11c1に螺合する雌螺子12d1と、外側面のうち下面12bに形成され、等間隔で穿設された4つの雌螺子孔部12eとを有している。なお、つば12fの大きさは、抜き雇12の雌螺子12d1をブロック11の雄螺子11c1に螺合したときに内側にインナー9c,10cと円錐コロ9b,10bを内包するように設定されている。また、4つの雌螺子孔部12eは、それぞれ貫通するように設けられている。
【0032】
保持手段は、例えば図6に示すようにブロック11A,11Bを挟持するスパナ13から成り、このスパナ13の開口は、ブロック11の凸部11gに嵌合するように大きさがB寸法に設定されている。さらに、上述の抜取手段は、例えば図12に示すように抜き雇12の雌螺子孔部12eに螺合して低速軸5と平行に配置される4本の螺子棒14と、この螺子棒14を変位させる油圧ラム17とを有している。この油圧ラム17は、例えば油圧ラム17と低速軸5との間に介装され、油圧ラム17の力を受けるプッシャー16と、一体に装着され、4本の螺子棒14をそれぞれ挿通するプレート15と、4本の螺子棒14に螺合して締結する4つのナット17aとを含んでいる。
【0033】
次に、本実施形態に備えられる保持手段、抜き雇、及び抜取手段を用いてまず、軸受9を低速軸5から取り外す動作を図7〜13に基づいて説明し、その後軸受10を低速軸5から取り外す動作を同様に説明する。
【0034】
図7は本実施形態の使用状態を説明する図であり、本実施形態が適用される減速機からケースの上蓋及び側蓋を取り外した状態を示す図、図8は本実施形態の使用状態を説明する図であり、図7に示す減速機から軸受のアウター及び歯車を取り外した状態を示す図、図9は本実施形態の使用状態を説明する図であり、図1に示すブロックを図8に示す減速機の低速軸に装着した状態を示す図、図10は本実施形態の使用状態を説明する図であり、図6に示すスパナが図9に示すブロックを保持した状態を示す図、図11は本実施形態の使用状態を説明する図であり、図2に示す抜き雇の雌螺子を図10に示すブロックの雄螺子に螺合した状態を示す図、図12は本実施形態の使用状態を説明する図であり、図11に示すスパナをブロックから取り外すと共に、本実施形態に備えられる抜取手段を抜き雇に取り付けた状態を示す図、図13は図12に示す減速機から軸受、ブロック、抜き雇、及び抜取手段を取り外した状態を示す図である。
【0035】
本実施形態は、図7に示すようにケース2Bのケース本体2cから上蓋2d及び側蓋2eを取り外し、図示しないペンチやかぎ爪状の工具を用いて図8に示すようにアウター9aをケース本体2cから取り外す。そして、図9に示すようにブロック11の分割体11A,11Bをケース本体2cの上部の開口から内部へ挿入し、低速軸5の両側方から挟み込むように内周面11dで低速軸5の外周を嵌合してブロック11の凹部11hをインナー9cに当接させると共に、ブロック11のつば11fの内側を円錐コロ9bに係合させる。
【0036】
次に、図10に示すように、スパナ13をケース本体2cの上部の開口から内部へ挿入し、スパナ13の開口をブロック11の凸部11gに嵌合して分割体11A,11Bを保持する。この状態で、図11に示すように、抜き雇12の内側にインナー9cと円錐コロ9bを内包すると共に、抜き雇12のつば12fをケース本体2cと円錐コロ9bとの間の隙間からケース本体2c内に挿入し、抜き雇12の内周面12dに形成された雌螺子12d1をブロック11の外周面11cに形成された雄螺子11c1に螺合する。これにより、ブロック11、抜き雇12、インナー9c、及び円錐コロ9bが一体となって固定されるので、スパナ13を分割体11A,11Bから取り外す。
【0037】
次に、図12に示すように4本の螺子棒14を抜き雇12の4つの雌螺子孔部12eにそれぞれ螺合し、油圧ラム17と一体となったプレート15に4本の螺子棒14を挿通すると共に、油圧ラム17と低速軸5との間にプッシャー16を介装させる。そして、4本の螺子棒14の先端から4つのナット17aを各螺子棒14に締結して油圧ラム17を固定し、油圧ラム17を作動してプッシャー16を伸長させることにより、図13に示すように一体に固定されたブロック11、抜き雇12、インナー9c、及び円錐コロ9bを低速軸5の軸線方向へ移動させて低速軸5から抜き取り、軸受9を低速軸5から取り外す。
【0038】
同様に、図7に示すようにケース2Bのケース本体2cから上蓋2d及び側蓋2fを取り外し、図示しないペンチやかぎ爪状の工具を用いて図8に示すようにアウター10aをケース本体2cから取り外す。そして、図9に示すようにブロック11の分割体11A,11Bをケース本体2cの上部の開口から内部へ挿入し、低速軸5の両側方から挟み込むように内周面11dで低速軸5の外周を嵌合してブロック11の凹部11hをインナー10cに当接させると共に、ブロック11のつば11fの内側を円錐コロ10bに係合させる。
【0039】
次に、図10に示すように、スパナ13をケース本体2cの上部の開口から内部へ挿入し、スパナ13の開口をブロック11の凸部11gに嵌合して分割体11A,11Bを保持する。この状態で、図11に示すように、抜き雇12の内側にインナー10cと円錐コロ10bを内包すると共に、抜き雇12のつば12fをケース本体2cと円錐コロ10bとの間の隙間からケース本体2c内に挿入し、抜き雇12の内周面12dに形成された雌螺子12d1をブロック11の外周面11cに形成された雄螺子11c1に螺合する。これにより、ブロック11、抜き雇12、インナー10c、及び円錐コロ10bが一体となって固定されるので、スパナ13を分割体11A,11Bから取り外す。
【0040】
次に、軸受9を低速軸5から取り外したときと同様に、4本の螺子棒14を抜き雇12の4つの雌螺子孔部12eにそれぞれ螺合し、油圧ラム17と一体となったプレート15に4本の螺子棒14を挿通すると共に、油圧ラム17と低速軸5との間にプッシャー16を介装させる。そして、4本の螺子棒14の先端から4つのナット17aを各螺子棒14に締結して油圧ラム17を固定し、油圧ラム17を作動してプッシャー16を伸長させることにより、一体に固定されたブロック11、抜き雇12、インナー10c、及び円錐コロ10bを低速軸5の軸線方向へ移動させて低速軸5から抜き取り、軸受10を低速軸5から取り外す。
【0041】
このように構成した本実施形態によれば、図11に示すようにスパナ13によって分割体11A,11Bをインナー9cと円錐コロ9bに当接させて一体的に保持した状態で、抜き雇12のつば12fをケース本体2cと円錐コロ9bとの間の隙間からケース本体2c内に挿入し、抜き雇12の内周面12dに形成された雌螺子12d1をブロック11の外周面11cに形成された雄螺子11c1に螺合することにより、ブロック11、抜き雇12、インナー9c、及び円錐コロ9bを一体的に固定することができる。そして、図12に示すように固定されたブロック11、抜き雇12、インナー9c、及び円錐コロ9bを油圧ラム17によって低速軸5から一体的に抜き取ることにより、図13に示すように低速軸5がケース2Bの内部に挿入された状態であってもインナー9c及び円錐コロ9bを低速軸5及びケース2Bから簡単に取り外すことができる。
【0042】
同様に、図11に示すようにスパナ13によって分割体11A,11Bをインナー10cと円錐コロ10bに当接させて一体的に保持した状態で、抜き雇12のつば12fをケース本体2cと円錐コロ10bとの間の隙間からケース本体2c内に挿入し、抜き雇12の内周面12dに形成された雌螺子12d1をブロック11の外周面11cに形成された雄螺子11c1に螺合することにより、ブロック11、抜き雇12、インナー10c、及び円錐コロ10bを一体的に固定することができる。そして、固定されたブロック11、抜き雇12、インナー10c、及び円錐コロ10bを油圧ラム17によって低速軸5から一体的に抜き取ることにより、低速軸5がケース2Bの内部に挿入された状態であってもインナー10c及び円錐コロ10bを低速軸5及びケース2Bから簡単に取り外すことができる。このように、低速軸5がケース2Bに挿入された状態でも軸受9,10を低速軸5から容易に取り外すことができるので、軸受9,10の交換作業にかかる費用を抑えることができ、経済性に優れている。
【0043】
また、本実施形態は、ブロック11の分割体11A,11Bをインナー9cと円錐コロ9b、あるいはインナー10cと円錐コロ10bに固定する際に保持手段としてスパナ13を用いることにより、作業者にとって使い勝手が良くなり、作業効率を向上させることができる。また、ブロック11の分割体11A,11Bを挟持した状態からスパナ13を容易に取り外すことができるので、高い利便性を確保することができる。
【0044】
さらに、ブロック11、抜き雇12、インナー9c、及び円錐コロ9b、あるいはブロック11、抜き雇12、インナー10c、及び円錐コロ10bが一体的に固定された状態で螺子棒14を抜き雇12の雌螺子孔部12eに螺合することにより、プレート15と一体となった油圧ラム17をナット17aによって抜き雇12に迅速に装着することができる。そして、油圧ラム17によってプッシャー16を伸長して螺子棒14を変位させることにより、低速軸5を破損させることなくインナー9c及び円錐コロ9b、あるいはインナー10c及び円錐コロ10bを低速軸5及びケース2Bから円滑に抜き取ることができる。
【0045】
なお、上述した本実施形態では、抜き雇12の4つの雌螺子孔部12eが貫通するように設けられた場合について説明したが、この場合に限らず、各雌螺子孔部12eは、例えば抜き雇12の外側面のうち下面12bに凹部を有するように形成されていても良い。また、抜き雇12は、4つの雌螺子孔部12eを有する場合に限らず、1〜3つ、あるいは5以上の雌螺子孔部12eを有していても良い。
【0046】
また、本実施形態は、回転軸が低速側の低速軸5から成る場合について説明したが、この場合に限らず、回転軸は例えば高速側の高速軸から成っていても良い。
【符号の説明】
【0047】
2,22 減速機
2A,2B ケース
2a 上ケース
2b 下ケース
2c ケース本体
2d 上蓋
2e,2f 側蓋
5 低速軸(回転軸)
6,7,8 歯車
9,10 軸受
9a,10a アウター
9b,10b 円錐コロ(コロ)
9c,10c インナー
11 ブロック
11A,11B 分割体
11a,12a 上面
11b,12b 下面
11c 外周面
11c1 雄螺子
11d,12d 内周面
11f,12f つば
11g 凸部
11h 凹部
12 抜き雇
12d1 雌螺子
12e 雌螺子孔部
13 スパナ(保持手段)
14 螺子棒(抜取手段)
15 プレート
16 プッシャー
17 油圧ラム(抜取手段)
17a ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結された踏段を循環移動させるモータの回転速度を減速して出力する歯車と、この歯車と嵌合し、前記歯車の出力によって回転する回転軸と、この回転軸を内部に挿入するケースと、このケースに設けられ、前記回転軸を回転可能に支持する軸受とを備え、この軸受は、前記ケースに取り付けられたアウターと、このアウターよりも内側に設けられ、前記回転軸に当接するインナーと、前記アウターと前記インナーとの間に回転可能に介装されたコロとを有する乗客コンベアの減速機に適用され、前記軸受を前記回転軸及び前記ケースから抜き取る乗客コンベア減速機の軸受抜き雇装置において、
分割可能に形成されると共に、前記ケースの内部に挿入され、内周面で前記回転軸の外周を嵌合するように前記回転軸に装着して前記インナーと前記コロに当接する円環状のブロックと、
この円環状のブロックを一体的に保持する保持手段と、
前記アウターが前記ケースから取り外されて形成される前記ケースと前記コロとの間の隙間から前記ケース内に挿入され、内周面が前記ブロックの外周面に係合する抜き雇と、
前記ブロック、前記抜き雇、前記インナー、及び前記コロを前記回転軸から一体的に抜き取る抜取手段とを備え、
前記ブロックは前記外周面に形成された雄螺子を有し、
前記抜き雇は、
前記内周面に形成され、前記ブロックの前記雄螺子に螺合する雌螺子を有することを特徴とする乗客コンベア減速機の軸受抜き雇装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乗客コンベア減速機の軸受抜き雇装置において、
前記保持手段は、前記ブロックを挟持するスパナから成り、
前記抜き雇は、外側面に形成された雌螺子孔部を有し、
前記抜取手段は、
前記抜き雇の前記雌螺子孔部に螺合して前記回転軸と平行に配置される螺子棒と、
この螺子棒を変位させる油圧ラムとを有することを特徴とする乗客コンベア減速機の軸受抜き雇装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−188206(P2012−188206A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51995(P2011−51995)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】