説明

乗客コンベア

【課題】本発明は、部品の着脱作業を伴わずに乗降床に溜まった塵埃の撤去作業が行える乗客コンベアを提供することにある。
【解決手段】本発明は、乗降床8,9に、複数の塵埃除去用突起14と、これら塵埃除去用突起14の間に前記乗降床に形成した滑り止め用凹溝よりも深く形成され前記乗降床の床面側に開口する塵埃溜め15とを有する塵埃除去手段13を設けたのである。
本発明によれば、塵埃溜めに15溜まった塵埃は、乗降床側から真空掃除機等で吸引することで、部品を着脱することなく容易に撤去することができる。また、塵埃溜め15内に固まった塵埃は、針金等で固まりを崩してから吸引することで容易に撤去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は隣接踏板間に段差が生じるエスカレーターや隣接踏板間に段差を生じない電動道路等の乗客コンベアに係り、特に、乗客の履物に付着した塵埃を乗降床部において落下させるようにした乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、乗客の履物に付着した塵埃を乗降床部において落下させるようにした乗客コンベアは、例えば特許文献1等で既に提案されている。
【0003】
即ち、特許文献1に開示の乗客コンベアは、乗降床の床面より低い位置に泥受けを設け、この泥受けを複数の穴を有し前記乗降床の床面と略面一の表面板で覆ったものである。このように構成された表面板上を乗客が歩行することで、乗客の履物に付着した泥等の塵埃は表面板の複数の穴から下方の泥受けに落下するので、踏板側での塵埃の落下を少なくするものである。
【0004】
【特許文献1】実開昭62‐19768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の乗客コンベアは、踏板側への乗客による塵埃等の搬送量が減少するので、踏板の塵埃による汚損を防止することができる。しかしながら、表面板の下方の泥受けに溜まった塵埃を撤去するのに、乗降床あるいは泥受けに固定した表面板の固定を解いてから表面板を取り外し、その後に撤去しなければならず、表面板の着脱作業が伴うので、塵埃の撤去作業が厄介であった。
【0006】
本発明の目的は、部品の着脱作業を伴わずに乗降床に溜まった塵埃の撤去作業が行える乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、乗降床に、複数の塵埃除去用突起と、これら塵埃除去用突起の間に前記乗降床に形成した滑り止め用凹溝よりも深く形成され前記乗降床の床面側に開口する塵埃溜めとを有する塵埃除去手段を設けたのである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乗降床に、複数の塵埃除去用突起と塵埃溜めとを設けただけなので、塵埃ために溜まった塵埃は、塵埃除去用突起側から真空掃除機等で吸引することで、部品を着脱することなく容易に撤去することができる。また、塵埃溜め内に固まった塵埃は、針金等で固まりを崩してから吸引することで容易に撤去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明による乗客コンベアの一実施の形態を、図1〜図4に示すエスカレーターに基づいて説明する。
【0010】
エスカレーター1は、建築物の上階床2と下階床3とに跨って設置された枠体4と、無端状に連結され前記枠体4内を循環移動する複数の踏板5と、前記枠体4の前記踏板5の移動方向両側に立設された欄干パネル6と、この欄干パネルの周縁に案内されて前記踏板4と同期して移動する移動手摺7と、無端状に連結されて移動する踏板5の移動方向両端部の前記枠体4に設置された乗降床8及び9とを備えている。
【0011】
前記踏板5は、その乗客搭載面に踏板移動方向に沿った複数のクリートを有し、このクリートは、例えば厚さが2.6mmで、高さが11mm、間隔が通常ハイヒールの踵が挟み込まれないように5.8mmで形成されている。
【0012】
前記乗降床8,9は、例えばステンレス薄鋼板によって形成された乗客歩行部10と、この乗客歩行部10の踏板5側に傾斜した傾斜下端に連結され前記踏板5のクリートと被接触で噛合う櫛歯11とを有している。そして、前記乗客歩行部10と櫛歯11とは、前記枠体4に着脱自在に支持される補強部材12A〜12Cによって補強されており、前記乗客歩行部10には歩行中の乗客が滑って転倒しないように、表面から0.7mm程度凹ませた複数の滑り止め用凹溝(図示せず)が形成されている。
【0013】
そして、上記のように形成された乗降床8,9の踏板5側とは反対側寄りである反踏板側寄り、云い代えれば乗降床8,9への乗客乗り込み側に、乗客が歩行する通路幅に亘って塵埃除去手段13を設けている。
【0014】
この塵埃除去手段13は、前記乗降床8,9の補強部材12B,12Cに支持されており、複数の塵埃除去用突起14と、これら塵埃除去用突起14の間に形成され前記乗降床8,9の床面側に開口する塵埃溜め15とを有する。そして、この塵埃溜め15の深さは、前記乗降床8,9に形成した滑り止め用凹溝よりも深く形成されている。
【0015】
本実施の形態によれば、乗降床8,9に塵埃除去用突起14と床面側に開口する塵埃溜め15とを有する塵埃除去手段13を設けたので、乗客がこの塵埃除去手段13上を歩行することで、塵埃除去用突起14が乗客の履物底部に付着した塵埃を落下させ、落下した塵埃を塵埃溜め15内に溜めることができる。その結果、乗客の履物底部に付着した塵埃の殆どを乗降床8,9部において除去することができるので、踏板5側への塵埃の落下量は減少し、また、履物底部から落下した塵埃が乗降床8,9の下側の機械室内に落下することもなくなる。
【0016】
そして、塵埃溜め15内に溜まった塵埃は、塵埃溜め15が乗降床面側に開口していることから、真空掃除機等で乗降床面側から吸引することで塵埃除去手段13を乗降床8,9から取り外すことなく、簡単に撤去することができる。また、塵埃溜め15内に固まった塵埃は、針金等で固まりを崩してから真空掃除機等で吸引することで容易に撤去することができる。
【0017】
このように本実施の形態によれば、塵埃除去手段13である部品の乗降床8,9からの着脱作業を伴わずに乗降床の塵埃溜め15内に溜まった塵埃の撤去作業を行うことができる。
【0018】
ところで上記実施の形態において、塵埃除去手段13の塵埃除去用突起14は、点状の突起でもよく、また、乗客進行方向と直交する方向に並設された複数の桟で構成してもよい。いずれにしても点状の突起の間隔や桟の間隔は、前記踏板5のクリートの間隔と同程度の間隔としてハイヒールの踵が落ち込まないようにする必要がある。そして、前記塵埃除去用突起14を並設された複数の桟で構成する場合には、塵埃除去手段13自体を踏板5のクリート部と同じ構成部品を利用してもよく、踏板5のクリート部と同じ構成部品を利用することで、塵埃除去手段13のための専用の設計や製造を省略することができる。さらに、塵埃除去手段13として専用の部品を設計製造する場合には、塵埃除去用突起14を硬質ゴムで形成しても、刷毛状に形成してもよい。
【0019】
尚、前記塵埃除去手段13は、乗客が跨いで歩行したのでは塵埃除去効果が期待できないので、少なくとも乗客の片足が必ず前記塵埃除去手段13上に踏み込まれるように、前記塵埃除去手段13の乗客進行方向長さを確保する必要がある。
【0020】
以上の説明は乗客コンベアとしてエスカレーターを一例に説明したが、踏板に段差を生じない電動道路に対しても本発明を適用できることは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による乗客コンベアの乗降床の一部を示す拡大断面図。
【図2】図1に示す断面を有する乗降床を有する乗客コンベアの乗降部を示す一部縦断側面図。
【図3】図2の平面図。
【図4】本発明の乗客コンベアを示す概略側面図。
【符号の説明】
【0022】
1…エスカレーター、4…枠体、5…踏板、7…移動手摺、8,9…乗降床、10…乗客歩行部、11…櫛歯、12A〜12C…補強部材、13…塵埃除去手段、14…塵埃除去用突起、15…塵埃溜め。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結されて循環移動する踏板群の移動方向両端部に設置された乗降床を備えた乗客コンベアにおいて、前記乗降床に、床面側に開口し前記乗降床に形成した滑り止め用凹溝よりも深く形成した塵埃溜めを有する塵埃除去手段を設けたことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
無端状に連結されて循環移動する踏板群の移動方向両端部に設置された乗降床を備えた乗客コンベアにおいて、前記乗降床に、複数の塵埃除去用突起と、これら塵埃除去用突起の間に前記乗降床に形成した滑り止め用凹溝よりも深く形成され前記乗降床の床面側に開口する塵埃溜めとを有する塵埃除去手段を設けたことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項3】
前記塵埃除去用突起は、乗客進行方向と直交する方向に並設された複数の桟で構成されていることを特徴とする請求項2記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記複数の桟の間隔は、前記踏板に形成したクリートと同じ間隔に形成されていることを特徴とする請求項3記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記塵埃除去用突起は、前記塵埃溜めと一体に形成されており、前記乗降床に対して着脱可能に固定されていることを特徴とする請求項2記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記塵埃除去用突起は、前記乗降床の反踏板側寄りに設けられていることを特徴とする請求項2,3,4又は5記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−223729(P2007−223729A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46718(P2006−46718)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(391024951)東日本トランスポ−テック株式会社 (24)
【Fターム(参考)】