説明

乗客コンベア

【課題】本発明は、欄干パネルによって手荷物の移動方向を変更させることでその反力が作用しても欄干の支持が安定して行える乗客コンベアを提供することにある。
【解決手段】本発明は、欄干パネル11,20を移動手摺7よりも外側に位置させると共に、欄干パネル11,20と手摺枠12との間を塞ぐ傾斜部材16を設けた欄干6の終端部に、前記傾斜部材16に連なる傾斜部(17)を形成すると共に、この傾斜部(7)に欄干パネル11,20よりも内側に位置する平坦部18を形成し、この平坦部18と欄干パネル11,20との間を塞ぐ傾斜部(19)を形成したのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエスカレーターや電動道路等の乗客コンベアに係り、特に、左右の欄干に左右の移動手摺の間隔よりも広い間隔の凹部を形成した乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
左右の移動手摺の間隔よりも広い間隔の凹部を欄干に形成した乗客コンベアは、例えば特許文献1に示すように、既に提案されている。
【0003】
【特許文献1】W02003/048021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の乗客コンベアにおいては、欄干に凹部を形成しているために、乗客は手荷物などがこの凹部内にある状態で移動できるので、手荷物によって踏段上の乗り位置を占有することがなくなる。また、欄干の終端部では凹部に連なって傾斜部材が手摺枠まで設けられているので、凹部に位置する手荷物はその傾斜部材によって案内されるので、欄干の終端部に激突させることなく欄干外に誘導することが出来る。
【0005】
しかしながら、上記構成の欄干によれば、欄干終端を通過する瞬間に手荷物が内側に誘導されるので、欄干終端部には手荷物の移動方向変更による反力が作用し、欄干終端部を外側に押し広げようとする。この反力が繰り返し欄干終端部に作用すると、オーバーハング状態にある欄干終端部の支持が次第に緩んでくる虞がある。
【0006】
本発明の目的は、欄干パネルによって手荷物の移動方向を変更させることでその反力が作用しても欄干の支持が安定して行える乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、欄干パネルを移動手摺よりも外側に位置させると共に、欄干パネルと手摺枠との間を塞ぐ傾斜部材を設けた欄干の移動手摺が反転する反転部において、前記傾斜部材に、欄干パネルよりも内側に位置する平坦部を形成すると共に、この平坦部と欄干パネルとの間を塞ぐ傾斜部を形成したのである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、欄干の反転部において欄干パネルよりも内側に位置する平坦部を形成し、この平坦部に連なって欄干パネルに至る傾斜部を設けたので、乗客の手荷物は欄干の終端部に至る前の欄干支持部に近い傾斜部によって移動方向を変更される。その結果、手荷物の移動方向変更による反力が作用しても、その反力の作用点が欄干支持部に近いので、欄干の支持が安定して行える乗客コンベアを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明による乗客コンベアの一実施の形態を、図1〜図4に示すエスカレーターに基づいて説明する。
【0010】
一般に、エスカレーター1は、上階床2と下階床3とに跨って支持された枠体4と、踏板を有し無端状に連結された複数の踏段5と、これら踏段5の移動方向両側の前記枠体4上に立設された欄干6と、この欄干6の周縁に案内されて移動する移動手摺7と、前記踏段5への乗り降りを行う上部乗降床8及び下部乗降床9とを有している。
【0011】
前記欄干6は、枠体4に固定されて立設された複数の支柱10と、これら支柱10に支持された欄干パネル11と、前記支柱10の上端部に固定され前記移動手摺7の移動を案内する手摺枠12と、手摺枠12の外側に設けられた外デッキカバー13と、前記欄干パネル11の下部を覆う内デッキカバー14と、内デッキカバー14の下方に垂直に連なり前記踏段5と枠体4側を仕切るスカートガード15とを有している。
【0012】
さらに、前記欄干6は、欄干パネル11が移動手摺7よりも外側(反踏段5側)に位置させている。その結果、手摺枠12に対して欄干パネル11が外側に変位するが、この変位によって手摺枠12と欄干パネル11との間に生じた段差部に、傾斜部材16を設置している。この傾斜部材16は、欄干パネル11と同じ材質で形成しても異種材料で形成してもよいが、摩擦抵抗が小さい材料で形成することが望ましい。
【0013】
このように欄干パネル11を変位させることで、傾斜部材16−欄干パネル11−内デッキカバー14とで、移動手摺7よりも外側に張り出す凹部が形成される。
【0014】
一方、欄干6の終端部においては、移動手摺7が方向転換する反転部に続く水平区間の手摺枠12に沿って、前記傾斜部材16に連なる第1の傾斜部17が設けられ、そして移動手摺7が方向転換する反転部の手摺枠12の内側には、前記欄干パネ11ルよりも内側(踏段5側)に位置する平坦部18が設けられ、さらに、この平坦部18と前記第1の傾斜部17との段差を埋める第2の傾斜部19が設けられている。そして、第1の傾斜部17と第2の傾斜部19とで囲まれた部分には、前記欄干パネル11と面一となるように端部欄干パネル20が支柱10に支持されている。
【0015】
ところで、少なくとも、第1の傾斜部17と平坦部18と第2の傾斜部19とは、同一材料により一体的に形成されている。しかし、これらの製造上や強度上あるいは材料の歩留まりを考慮すると、第1の傾斜部17と平坦部18と第2の傾斜部19に加え、端部欄干パネル20も一体的に形成することが望ましい。
【0016】
欄干6の終端部を以上のように形成することで、傾斜部材16−欄干パネル11−内デッキカバー14とで形成された凹部内を移動してきた乗客の手荷物は、移動手摺7の方向転換部に至る前で、第2の傾斜部19によって矢印P方向に移動方向を変更させられる。このとき、第2の傾斜部19に手荷物の移動方向変更による反力が作用するが、近傍には支柱10等の強度部材が配置されているので、その反力を十分に受けることが出来、欄干を安定に支持することが出来る。
【0017】
また、第1の傾斜部17と第2の傾斜部19とを、平坦部18及び/又は端部欄干パネル20と一体的に形成することで、手荷物による移動方向変更時の反力の影響を受け易い欄干終端部における第1の傾斜部17と第2の傾斜部19とを安定に支持することができる。
【0018】
さらに、第1の傾斜部17と平坦部18と第2の傾斜部19と端部欄干パネル20とを一体的に形成することで、欄干への取付け部品点数を減少させることが出来、欄干の組立作業を容易にすることが出来る。
【0019】
ところで以上説明の実施の形態は、乗客コンベアとして、エスカレーターを説明したが、エスカレーターに限らず、踏板に段差が生じない電動道路にも適用できるのは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による乗客コンベアの一実施の形態を示すエスカレーターの概略側面図。
【図2】図1のエスカレーターの上階床側の欄干終端部を示す拡大図。
【図3】図2のA−A線に沿う拡大縦断面図。
【図4】図のB−B線に沿う拡大横断面図。
【符号の説明】
【0021】
1…エスカレーター、2…上階床、3…下階床、4…枠体、5…踏段、6…欄干、7…移動手摺、8…上部乗降床、9…下部乗降床、10…支柱、11…欄干パネル、12…手摺枠、13…外デッキカバー、14…内デッキカバー、15…スカートガード、16…傾斜部材、17…第1の傾斜部、18…平坦部、19…第2の傾斜部、20…終端欄干パネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結された複数の踏段の進行方向両側に立設された欄干を有し、この欄干が支柱と、この支柱に支持された欄干パネルと、前記支柱の先端部に支持された手摺枠と、
この手摺枠に案内されて移動する移動手摺とを備え、前記欄干パネルを前記移動手摺よりも外側に位置させると共に、前記欄干パネルと前記手摺枠との間を塞ぐ傾斜部材を設けた乗客コンベアにおいて、前記欄干の前記移動手摺が反転する反転部に位置する傾斜部材に前記欄干パネルよりも内側に位置する平坦部を一体形成すると共に、この平坦部に前記欄干パネルとの間を塞ぐ傾斜部を設けたことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
無端状に連結された複数の踏段の進行方向両側に立設された欄干を有し、この欄干が支柱と、この支柱に支持された欄干パネルと、前記支柱の先端部に支持された手摺枠と、
この手摺枠に案内されて移動する移動手摺とを備え、前記欄干パネルを前記移動手摺よりも外側に位置させると共に、前記欄干パネルと前記手摺枠との間を塞ぐ傾斜部材を設けた乗客コンベアにおいて、前記欄干の前記移動手摺が反転する反転部とこの反転部に続く水平区間に、前記傾斜部材に連なる第1の傾斜部と、前記欄干パネルよりも内側に位置する平坦部と、この平坦部と前記欄干パネルとの間を塞ぐ第2の傾斜部とを形成したことを特徴とする乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−297051(P2008−297051A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143616(P2007−143616)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】