説明

乗客コンベア

【課題】 移動手摺の外側への利用者の身体の乗り出す行為に対して騒音を抑制しつつ警告アナウンスを発する乗客コンベアを得ること。
【解決手段】乗客コンベア1は、アナウンス信号を生成する音源32と、人間には聞き取ることができない周波数20kHz以上の超音波帯域に属する搬送波を利用して、音源32が生成したアナウンス信号の音響放射特性を制御する音響放射制御器34と、音響放射特性(指向性)が制御されたアナウンス信号を増幅する増幅器36と、音響放射特性が制御して増幅された可聴音信号が入力して指向性を有する警告アナウンスを放射するスピーカー38とを備え、該スピーカー38は、欄干7の外側の側面方向から手摺9の外側に向かって警告アナウンスを放射する、。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の乗客コンベアは、下記特許文献1に記載のように、移動手摺と建物の天井との交差部分にデルタガードを配設してなるエスカレータにおいて、前記移動手摺の外側への利用者の身体の乗り出しを検知する検知手段と、この検知手段の出力により利用者に前記デルタガードとの衝突を警告するために送風するブロワーとを備えたものがある。
【0003】
かかる乗客コンベアでは、移動手摺の外側への利用者の身体の乗り出しを検知する検知手段と、この検知手段の出力により利用者にデルタガードとの衝突を警告するために送風するブロワーとを備えているので、利用者の移動手摺の外側への乗り出しを利用者に警告し、デルタガードとの衝突を未然に防止できる。
【0004】
【特許文献1】特開平6-278982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記乗客コンベアは、検知手段により移動手摺の外側への利用者の身体の乗り出し検知してブロワーを動作させる。このため、検知手段を必要とするので、装置が複雑となると共に、移動手摺の外側への利用者の身体の乗り出しを検知しても、ブロワーに利用者が近づかないと、利用者が警告を感知しないので、移動手摺の外側への利用者の身体の乗り出す行為自体を有効に防止できないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、移動手摺の外側への利用者の身体の乗り出す行為に対して騒音を抑制しつつ警告アナウンスを発する乗客コンベアを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る乗客コンベアは、無端状に連結されて一対の乗降床の間を循環移動する踏み段と、前記踏み段の移動方向に沿って該踏み段の両側に対向して立設された欄干と、該欄干の端部に摺動係合する手摺と、を備えた乗客コンベアにおいて、可聴音信号を生成する音源と、超音波帯域に属する搬送波を利用して前記可聴音信号の音響放射特性を制御する音響放射制御器と、前記音響放射制御器によって前記音響放射特性が制御された可聴音信号が入力されて可聴音を放射するスピーカーとを備え、該スピーカーは、前記対向の反対側の前記欄干の側面方向から前記手摺の外側に向かって前記可聴音を放射する、ことを特徴とするものである。
乗客コンベアによれば、乗客が踏み段の通常の位置に立っていると、スピーカーから発生する警告アナウンスは指向性を有するため、乗客には聞こえないか聞き取りにくい。一方、乗客が欄干から顔などを乗り出す危険な状態になると、スピーカーから発生した指向性を有する警告アナウンスが乗客に聞こえる。したがって、乗客が欄干から顔などを乗り出す危険な状態であることを検知するセンサを必要とせず、身を乗り出すという危険行為を行っている乗客のみに有効に、警告アナウンスなどを与えることができる。よって、天井と手摺とにより形成される三角部に挟まれることを、より未然に防止すると共に、通常の乗客に対して聞こえにくいので、騒音となることがない。
また、スピーカーは、対向の反対側の欄干の側面方向から最短距離の手摺の外側に向かって可聴音を放射することが好ましい。乗客に聞こえる可聴音の減衰が抑制されるからである。
【0008】
第2の発明に係る乗客コンベアは、乗客コンベアの動作に連動してスピーカーから可聴音を放射する運転スイッチを、備えることが好ましい。
これにより、乗客コンベアが運転しているときに限りスピーカーから音が発生されるので、省エネルギーに寄与することになる。
【0009】
第3の発明に係る乗客コンベアにおけるスピーカーは、乗り場付近の欄干の側面方向から手摺に向かって放射する、ことが好ましい。
これにより、乗客コンベアの乗り場付近の外側デッキから上方に向かって警告アナウンスを発するスピーカーを設けることにより、乗り場側から外側デッキへ侵入する行為に対しても、効果的な警告アナウンスを与えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、乗客コンベアの手摺の外側へ乗客の身体を乗り出す行為などに対してのみスピーカーから警告アナウンスを発生することにより、騒音を抑制しつつ適切に乗客に警告できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
本発明の一実施の形態を図1及び図2によって説明する。図1は本発明の一実施の形態による乗客コンベアを示す全体構成図、図2は図1に示す乗客コンベアの矢視II−IIの断面図である。
図1及び図2において、乗客コンベア1は、無端状に連結されて一対の乗降床の間を循環移動する多数の踏み段3と、踏み段3の移動方向に沿って該踏み段3の両側に対向して立設された欄干7と、該欄干7の端部に摺動係合する手摺9と、を備えている。
【0012】
乗客コンベア1は、乗り込み口が床22に連結固定されると共に、降り口が天井24に連結固定されており、内側デッキ11が欄干7の下部内側に固定され、欄干7の下部外側には外側デッキ13が固定されており、外側デッキ13の内側には、上向きにスピーカー30が固定されている。外側デッキ13には、スピーカー38から可聴音を放射するために、放音用孔13eが多数設けられており、スピーカー38から可聴音が外側デッキ13の上方から手摺9の外側に向かって発するように形成されている。
スピーカー38は、対向の反対側の欄干7の側面方向から最短距離の手摺9の外側に向かって可聴音を放射することが好ましい。乗客に聞こえる可聴音の減衰が抑制されるからである。そして、天井24と乗客コンベア1とにより形成される三角形の空間の手摺9側上方に板状のデルタカード20が設けられている。
【0013】
図2おいて、超指向性スピーカー装置30は、アナウンス信号(可聴音信号)を生成する音源32と、人間には聞き取ることができない周波数20kHz以上の超音波帯域に属する搬送波を利用して、音源32が生成したアナウンス信号の音響放射特性を制御する音響放射制御器34と、音響放射特性(指向性)が制御されたアナウンス信号を増幅する増幅器36と、音響放射特性が制御して増幅されたアナウンス信号を入力して指向性を有する可聴音を放射するスピーカー38とを備え、スピーカー38は、対向する反対側の欄干7側面方向から手摺9の外側に向かって指向性を有する可聴音を放射するように形成されている。
そして、スピーカー38は音源中心に対する音圧レベルが50%に低下する位置で規定される拡がり角度が45度以下である指向性を有していることが好ましい。ここで、スピーカー38から発生される可聴音は、例えば「危険ですから欄干から身を載りださないで下さい。」と言った内容を乗客Mに警告アナウンスを発生する。
【0014】
音源32は、乗客コンベア1の運転スイッチ50のオン・オフ、即ち、乗客コンベア1の動作に伴い、運転スイッチ50がオンし、乗客コンベア1の停止に伴い、運転スイッチ50がオフするように形成されている。
【0015】
上記のように構成された乗客コンベアの動作を図1及び図2によって説明する。まず、乗客コンベア1を運転するために、運転スイッチ50をオンにすると、踏み段3が動作して、音源32がアナウンス信号(可聴音信号)を生成し、音響放射制御器34が超音波の搬送波を利用して、音源32が生成したアナウンス信号の音響放射特性を制御し、増幅器36は音響放射特性(指向性)が制御されたアナウンス信号を増幅し、スピーカー38は音響放射特性が制御して増幅された可聴音信号を入力して指向性を有する警告アナウンスを放射する。この警告アナウンスは、対向の反対側の欄干7の側面方向から手摺9に向かって放射する。
【0016】
ここで、乗客Mが踏み段3の位置に立っていると、スピーカー38から発生する警告アナウンスが指向性を有するため、乗客Mには聞こえないか聞き取りにくい。一方、図1に示すように、乗客Mが欄干から顔などを乗り出すと、スピーカー38から発生した指向性を有する警告アナウンスが乗客Mに聞こえる。
【0017】
上記乗客コンベア1は、無端状に連結されて一対の乗降床の間を循環移動する踏み段3と、踏み段3の移動方向に沿って該踏み段3の両側に対向して立設された欄干7と、該欄干7の端部に摺動係合する手摺9と、を備えた乗客コンベア1において、アナウンス信号(可聴音信号)を生成する音源32と、人間には聞き取ることができない周波数20kHz以上の超音波帯域に属する搬送波を利用して、音源32が生成したアナウンス信号の音響放射特性を制御する音響放射制御器34と、音響放射特性(指向性)が制御されたアナウンス信号を増幅する増幅器36と、音響放射特性が制御して増幅された可聴音信号が入力して指向性を有する警告アナウンスを放射するスピーカー38とを備え、該スピーカー38は、欄干7の外側の側面方向から手摺9の外側に向かって警告アナウンスを放射する、ものである。
【0018】
上記乗客コンベアによれば、乗客Mが踏み段3の通常の位置に立っていると、スピーカー38から発生する警告アナウンスは指向性を有するため、乗客Mには聞こえないか聞き取りにくい。一方、図1に示すように、乗客Mが欄干7から顔などを乗り出す危険な状態になると、スピーカー38から発生した指向性を有する警告アナウンスが乗客Mに聞こえる。したがって、乗客Mが欄干7から顔などを乗り出す危険な状態ことを検知するセンサを必要とせず、身を乗り出すという危険行為を行っている乗客Mのみに有効に警告アナウンスを与えることができる。よって、天井7のデルタガード20に衝突することを未然に防止すると共に、通常の乗客Mに対して騒音となることがない。
【0019】
また、乗客コンベア1が動作していると、スピーカー38から警告アナウンスを放射する運転スイッチ50を、備えることが好ましい。これにより、乗客コンベア1が運転しているときに限りスピーカー38から警告アナウンスが発生されるので、省エネルギーに寄与することになる。
【0020】
実施形態2.
本発明の他の実施の形態を図3によって説明する。図3は、本発明の他の実施の形態による乗客コンベアを示す全体構成図で、図3中、図1と同一符合は、同一部分を示し説明を省略する。
図3において、乗客コンベア1の乗り場付近の外側デッキ13の内部又は下方から上方に向かって警告アナウンスを発するスピーカー138を設けることにより、乗り場側から外側デッキ13へ侵入する行為に対しても、効果的な警告アナウンスを与えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、乗客コンベアに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態による乗客コンベアを示す全体構成図である。
【図2】図1に示す乗客コンベアの矢視II−IIの断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態による乗客コンベアを示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0023】
1 乗客コンベア、3 踏み段、7 欄干、9 手摺、32 音源、34 音響放射制御器、38,138 スピーカー、50 運転スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結されて一対の乗降床の間を循環移動する踏み段と、前記踏み段の移動方向に沿って該踏み段の両側に対向して立設された欄干と、該欄干の端部に摺動係合する手摺と、を備えた乗客コンベアにおいて、
可聴音信号を生成する音源と、
超音波帯域に属する搬送波を利用して前記可聴音信号の音響放射特性を制御する音響放射制御器と、
前記音響放射制御器によって前記音響放射特性が制御された可聴音信号が入力されて可聴音を発生するスピーカーと、を備え、
該スピーカーは、前記対向の反対側の前記欄干の側面方向から前記手摺の外側に向かって前記可聴音を放射する、
ことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記乗客コンベアの動作に連動して前記スピーカーから可聴音を放射する運転スイッチを、
備えたことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記スピーカーは、乗り場付近の前記欄干の側面方向から前記手摺に向かって放射する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−1103(P2010−1103A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159352(P2008−159352)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】