説明

乗客コンベア

【課題】本発明は、枠体の製作性の向上は勿論のこと、軽量化しても欄干部材の剛性を高めることができる乗客コンベアを提供することにある。
【解決手段】本発明は、枠体4を構成する左右の側枠体11A,11Bを、鋼板を断面コ字状に折り曲げて上弦部を構成する上辺部11aと、下弦部を構成する下辺部11bと、これら上辺部と下辺部との間位置する側面部11cを形成すると共に、前記側面部に三角形状の穴13をあけて前記上弦部と下弦部との間に縦面部14と斜面部15とを有するトラス形状を形成し、このトラス形状の縦面部に型材による補強部材16を重ね合わせて固定し、かつ、左右の側枠体の縦面部に固定した補強部材16を横桁12A,12Bで連結したのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエスカレーターや電動道路等の乗客コンベアに係り、特に、その枠体の構成を工夫した乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から乗客コンベアの枠体の軽量化と、溶接作業を低減して製作性を向上させるために、鋼板を断面コ字状に折り曲げて上弦部を構成する上辺部と、下弦部を構成する下辺部と、これら上辺部と下辺部の間に側面部を形成し、この側面部に複数の三角形状の穴を打ち抜いてトラス形状の側枠体を構成したものが、特許文献1に示すように、既に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭50−30498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の側枠体においては、左右一対の側面部の高さ方向の中間部と下端部に夫々横桁を連結して枠体を構成している。しかしながら、鋼板を薄板化してさらなる軽量化を図ろうとすると、側面部の高さ方向の中間部に連結した横桁よりも上方に位置する鋼板は薄板化により横方向の剛性が低下しているので、そこに欄干部材を立設させる場合、乗客による欄干部材への寄り掛かりや引張力によって、鋼板を含む欄干部材が容易に変形したり横揺れを生じさせたりする新たな問題が発生する虞がある。
【0005】
本発明の目的は、枠体の製作性の向上は勿論のこと、軽量化しても欄干部材の剛性を高めることができる乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、枠体を構成する左右の側枠体を、鋼板を断面コ字状に折り曲げて上弦部を構成する上辺部と、下弦部を構成する下辺部と、これら上辺部と下辺部との間位置する側面部を形成すると共に、前記側面部に三角形状の穴をあけて前記上弦部と下弦部との間に縦面部と斜面部とを有するトラス形状を形成し、このトラス形状の縦面部に型材による補強部材を重ね合わせて固定し、かつ、左右の側枠体の縦面部に固定した補強部材を横桁で連結したのである。
【0007】
このように、鋼板で形成した側枠体の縦面部に重ね合わせて補強部材を固定し、これを横桁で連結したので、鋼板を薄くしても、その剛性は補強部材で補強されるので、側枠体の上部に欄干部材を立設しても、欄干部材が容易に変形したり横揺れしたりすることを防止することができる。さらに、側枠体自体を溶接を用いずに形成できると共に、側枠体の縦面部と補強部材とをボルト・ナットやリベット結合など溶接を用いずに固定することで、側枠体は溶接作業を省略あるいは低減できるので、枠体の製作性の向上を維持することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、枠体の製作性の向上は勿論のこと、軽量化しても欄干部材の剛性を高めることができる乗客コンベアを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明による乗客コンベアの一実施の形態としてエスカレーターを示す概略側面図。
【図2】図1のA−A線に沿う縦断拡大図。
【図3】図2のB−B線に沿う側面図。
【図4】図2の側枠体の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による乗客コンベアを図1〜図3に示すエスカレーターに基づいて説明する。
【0011】
本実施の形態によるエスカレーター1は、建築構造物の上階床2と下階床3との間に跨って設置された枠体4と、この枠体4の長手方向両端部に設けた乗降床5A,5Bと、これら乗降床5A,5B間を踏段チェーン6によって無端状に連結されて循環移動し乗客が乗り込む踏板を有する踏段7と、前記踏段チェーン6を駆動機9と、前記枠体4の踏段7の幅方向両端に対応する位置に踏段移動方向に沿って立設された欄干部材10とを備えている。
【0012】
前記枠体4は、左右一対の側枠体11A,11Bと、これら側枠体11A,11Bの高さ方向中間部同士及び下部同士を夫々連結する複数の横桁12A,12Bとを有している。そして、これら側枠体11A,11Bは、薄鋼板を断面コ字状に折り曲げて、断面L字状の上弦部を構成する上辺部11aと、断面L字状の下弦部を構成する下辺部11bと、これら上辺部11aと下辺部11bとの間の側面部11cとを形成している。この側面部11cには、向きを変えた三角形状の穴13を交互に、側枠体11A,11Bの長手方向に亘ってプレスによる打ち抜きあるいは溶断によって複数形成している。これによって側枠体11A,11Bの上弦部と下弦部との間に縦面部14と斜面部15とを形成し、側枠体11A,11Bをトラス形状に構成している。
【0013】
前記側面部11cに形成された縦面部14には、上辺部11aと下辺部11bとの間の内法寸法Hに合致する高さ寸法を有する補強部材16が重ね合わされ、ボルト・ナット等の締結手段で、上辺部11a及び側面部11cに固定されている。補強部材16の下端は、両側の側枠体11A,11Bの下辺部11b同士を連結する横桁12Bにボルト・ナットあるいはリベット締結等で固定することで、下辺部11bに固定している。云い代えれば、補強部材16の下端は、横桁12Bなどの別部材を介して下辺部11bに固定されることになる。ここで、別部材は、枠体4の構成部材である横桁12Bを用いたが、横桁12Bを用いずに専用の連結片を用意して連結するようにしても良い。
【0014】
このようにして側枠体11A,11Bに夫々固定された補強部材16の高さ方向の中間部同士を前記横桁12Aで連結するのである。
【0015】
前記補強部材16は、各部材に接触する部分を折り曲げた型材である。そして、本実施の形態においては、前記踏段7に軸支された走行輪7Wが走行するガイドレールGRを支持したり、その他の構成部品であるスカートガードSGや下方に設置する油受OPを支持したりする支持座が形成された支持ブラケットを用いて補強部材16としている。
【0016】
また、前記側面部11cに形成された斜面部15には、側枠体11A,11Bの剛性を向上させるために、必要に応じて型材からなる補強部材17を、補強部材16と同じように重ね合わせて固定する。
【0017】
一方、補強部材16や補強部材17を固定して剛性を確保した側枠体11A,11Bの上部には、ブラケット19A,19Bを介して欄干パネル20A,20Bを立設し、この欄干パネル20A,20Bの周縁に前記踏段と同期して駆動される移動手摺21A,21Bを案内させて欄干部材10を構成している。
【0018】
以上説明したように、本実施の形態においては、軽量化するために鋼板を薄くしてトラス形状の側枠体11A,11Bを形成しても、側枠体11A,11Bは補強部材16や補強部材17で剛性を確保されるので、欄干部材10の重量や乗客による欄干部材10への寄り掛かりや引張りによって側枠体11A,11Bが容易に変形したり揺れたりすることはなくなり、乗客に対して安全な欄干部材10を提供することができる。
【0019】
さらに、側枠体11A,11Bは、鋼板に穴13をあけてトラス形状にしたものであるので、溶接作業は必要なく、したがって、枠体4の製作性が向上することは勿論である。
【0020】
ところで、三角形状の穴13は、側枠体11A,11Bの上弦部及び下弦部を構成するために、上辺部11aと下辺部11bとから離して形成され、各角部は円弧状に形成している。
【0021】
このように各角部を円弧状とした三角形状の穴13とした上で、前記補強部材16や補強部材17を、縦面部14や斜面部15に対して、前記円弧状を含む断面L字状の上弦部の一辺と前記円弧状を含む断面L字状の下弦部の一辺でボルト・ナットやリベット締結して固定することで、ボルト穴やリベット穴が広域な場所にあけられることになるので、補強部材16,17の固定部の機械的強度の低下を防止することができ、剛性を向上させることができる。即ち、穴13の角部を円弧状としない場合には、補強部材16,17を固定するためのボルト穴やリベット穴が、図3の2点鎖線で示すように、隣接する穴13の角部が対向する狭域な場所にあけられることになる。その結果、これら締結用のボルト穴やリベット穴が、穴13に接近することになって、側面部11cの機械的強度を低下させ、補強部材16,17を固定したとしても必要な剛性が得られないことがある。
【0022】
ただ、縦面部14や斜面部15の幅寸法W1,W2を広くすれば、機械的強度の低下を解消することができる。しかし、縦面部14や斜面部15の幅寸法W1,W2を、側枠体11A,11Bの全長に亘って拡幅すれば、側枠体11A,11Bの重量が増加し、軽量化に逆行することになるので、得策ではない。
【0023】
さらに、本実施の形態においては、前記側面部11cに形成された縦面部14に、上辺部11aと下辺部11bとの間の内法寸法Hに合致する高さ寸法を有する補強部材16を重ね合わせて固定したが、製作誤差や組立誤差などで、補強部材16が上辺部11aと下辺部11b間の内法寸法H内に収納できなくなることが起こり得ないとも限らない。そのような場合、図4に示す変形例のように、補強部材16を形成すれば良い。
【0024】
即ち、補強部材16の高さ寸法を、側枠体11A,11Bの上辺部11aと下辺部11b間の内法寸法Hよりも短くし、高さ寸法の短い補強部材16を上辺部11aと側面部11cに当接して固定し、下辺部11bに対しては補強部材16の下端との間に隙間gができるようにするのである。そして、補強部材16の下端は、下部に位置する横桁12Bを介して下辺部11bに固定するのである。
【0025】
このように構成することで、補強部材16が上辺部11aと下辺部11b間の内法寸法H内に容易に収納することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上の説明は、乗客コンベアとしてエスカレーターの枠体を一例に説明したが、平面設置型の電動道路の枠体や傾斜設置型の電動道路の枠体にも適用できるのは云うまでもない。
【符号の説明】
【0027】
1…エスカレーター、2…上階床、3…下階床、4…枠体、5A,5B…乗降床、6…踏段チェーン、7…踏段、9…駆動機、10…欄干部材、11A,11B…側枠体、11a…上辺部、11b…下辺部、11c…側面部、12A,12B…横桁、13…穴、14…縦面部、15…斜面部、16,17……補強部材、19A,19B…ブラケット、20A,20B…欄干パネル、21A,21B…移動手摺。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物に設置された枠体と、この枠体内に案内され無端状に連結された踏板と、この踏板の移動方向両側に対応する位置の前記枠体に立設された欄干と、この欄干の周縁に案内され前記踏板と同期して駆動される移動手摺とを備え、前記枠体は、左右の側枠体と、これら左右の側枠体を連結する複数の横桁とを有する乗客コンベアにおいて、前記側枠体を、鋼板を断面コ字状に折り曲げて上弦部を構成する上辺部と下弦部を構成する下辺部と側面部を形成すると共に、前記側面部に三角形状の穴をあけて前記上弦部と下弦部との間に縦面部と斜面部とを有するトラス形状に形成し、このトラス形状の縦面部に型材による補強部材を重ね合わせて固定し、かつ、左右の側枠体の縦面部に固定した補強部材を前記横桁で連結したことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
建築構造物に設置された枠体と、この枠体内に案内され無端状に連結された踏板と、この踏板の移動方向両側に対応する位置の前記枠体に立設された欄干と、この欄干の周縁に案内され前記踏板と同期して駆動される移動手摺とを備え、前記枠体は、左右の側枠体と、これら左右の側枠体を連結する複数の横桁とを有する乗客コンベアにおいて、前記側枠体を、鋼板を断面コ字状に折り曲げて上弦部を構成する上辺部と下弦部を構成する下辺部と側面部を形成すると共に、前記側面部に三角形状の穴をあけて前記上弦部と下弦部との間に縦面部と斜面部とを有するトラス形状に形成し、このトラス形状の縦面部には型材による補強部材が重ね合わせて固定されており、左右の側枠体の縦面部に固定した補強部材は前記横桁で連結されており、前記補強部材は前記上弦部と下弦部の間隔よりも短く形成されており、前記補強部材は、前記側枠体の上辺部と側面部の夫々に重ね合わされて固定ており、前記補強部材の下端は別部材を介して前記側枠体の下辺部に連結されていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項3】
建築構造物に設置された枠体と、この枠体内に案内され無端状に連結された踏板と、この踏板の移動方向両側に対応する位置の前記枠体に立設された欄干と、この欄干の周縁に案内され前記踏板と同期して駆動される移動手摺とを備え、前記枠体は、左右の側枠体と、これら左右の側枠体を連結する複数の横桁とを有する乗客コンベアにおいて、前記側枠体を、鋼板を断面コ字状に折り曲げて上弦部を構成する上辺部と下弦部を構成する下辺部と側面部を形成すると共に、前記側面部に三角形状の穴をあけて前記上弦部と下弦部との間に縦面部と斜面部とを有するトラス形状に形成し、このトラス形状の縦面部には型材による補強部材が重ね合わせて固定されており、左右の側枠体の縦面部に固定した補強部材は前記横桁で連結されており、前記補強部材には構成部品の支持座が形成されていることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項4】
前記補強部材は、前記側枠体の上辺部と下辺部と側面部の夫々に重ね合わされて固定されていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記補強部材は、前記側枠体の上辺部と側面部の夫々に重ね合わされて固定さると共に、前記側枠体の下辺部には別部材を介して固定されていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の乗客コンベア。
【請求項6】
前記側枠体の下辺部には横桁が連結されており、前記補強部材は、前記側枠体の上辺部と側面部の夫々に重ね合わされて固定さると共に、前記補強部材の下部は前記側枠体の下辺部に連結された前記横桁に固定されていることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベア。
【請求項7】
前記側枠体の斜面部に、型材による補強部材が重ね合わせて固定されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の乗客コンベア。
【請求項8】
前記側面部に形成した三角形状の穴の角部は円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の乗客コンベア。
【請求項9】
前記補強部材は、前記円弧状を含む上弦部側と前記円弧状を含む下弦側で、前記縦面部に固定されていることを特徴とする請求項8記載の乗客コンベア。
【請求項10】
前記補強部材は、前記円弧状を含む上弦部側と前記円弧状を含む下弦側で、前記縦面部及び前記斜面部に固定されていることを特徴とする請求項8記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−189131(P2010−189131A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34799(P2009−34799)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】