説明

乗客コンベア

【課題】複数のサイズの制御装置をトラスに簡単に取付けることができる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】トラス10の側面に固定された取付け板34と、取付け板34に開口した複数の係合孔44と、係合孔44に上方から係合する係合片28が背面に設けられた乗客コンベアの制御装置24を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアを設置する場合には、乗客コンベアの施工主の意向に合わせた動きをするように制御回路を立案する。次に、その制御回路を構成するリレー、タイマーなどの制御機器を収めることができるサイズの金属製のケースを製作する。次に、そのケースをトラス内に固定できるように、取付け用の支持金具をトラスに溶接して、ケースを固定している。
【0003】
例えば、特許文献1の乗客コンベアにおいては、エスカレータの乗り場床下にある機械室内を開閉する開閉床板の裏面に制御装置を取付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−18424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乗客コンベアが古くなり、リニューアル工事をする場合に制御装置を交換する必要がある。そのため、既設の制御装置と同じサイズの新たな制御装置を特別に製作するか、又は、新規に製作する制御装置の取付けサイズに適した支持部材をトラスに改めて取付ける必要があった。
【0006】
しかし、同じサイズの新たな制御装置を特別に製作するには、コストが上がるという問題点があった。
【0007】
また、リニューアル工事では基本的に溶接工事ができないため、新しく支持部材を追加するにはネジ止めによって取付ける必要がある。そのため、現地の作業において、既設のトラスへの孔空け作業が必要になり、工事時間が大幅に増え、また、制御装置の取付け方法を設計する場合に、支持部材の固定方法を立案するために莫大な時間が必要であり、新たな制御回路を考えるよりも多くの時間を必要とするという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、複数のサイズの制御装置をトラスに簡単に取付けることができる乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、乗客コンベアのトラスの側面に固定された取付け板と、前記取付け板に開口した複数の係合孔と、前記係合孔に、上方から係合する係合片が背面に設けられた前記乗客コンベアの制御装置と、を有することを特徴とする乗客コンベアである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例のエスカレータの上階側の平面図である。
【図2】図1における制御装置取付け部分の拡大図である。
【図3】制御装置をトラス側面に取付けた状態を正面から見た図である。
【図4】図3におけるA−A千断面図である。
【図5】古い制御装置を新しい2台の制御装置に交換した場合のトラス側面を正面から見た図である。
【図6】エスカレータのトラスの全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態の乗客コンベアについて図1〜図6に基づいて説明する。なお、本実施例では乗客コンベアとしてエスカレータを用いて説明する。
【0012】
(1)エスカレータのトラスの構造
エスカレータのトラス10は、図6に示すように、縦梁12と横梁14などの梁を組み合わせて、上階側の水平空間16と傾斜空間18と下階側の水平空間20を形成している。そして、トラス10の上階側の水平空間16が、エスカレータのモータなどを配する機械室22を構成している。
【0013】
機械室22を構成する水平空間20の上部には、トラス10の上端部を建屋に固定するための支持金具19が設けられている。
【0014】
(2)制御装置24の固定構造
機械室22内部には、エスカレータ10の施工主からの注文により製作された制御装置24が固定される。以下、その制御装置24の固定構造について説明する。
【0015】
制御装置24のケース26は、金属製であって直方体をなしている。このケース26内部に、エスカレータ10を駆動させるためのリレー、タイマーなどより構成される制御回路の制御機器が収納されている。
【0016】
ケース26背面には、4個の金属製の係合片28が固定されている。この係合片28は、ケース26の背面上部における左右と、下部における左右にそれぞれ設けられており、図4に示すように、ケース26の背面に溶着される固定部30と、この固定部30の下端から下方に延びたフック片32とから形成されている。
【0017】
上階側の水平空間16のトラス10,すなわち、機械室22の側面を構成する2本の縦梁12,12の間には、機械室22の側面の上部から下部まで覆う長方形の取付け板34が固定されている。この固定方法は、図1及び図2に示すように、取付け板34の左右両側部35,35が前方に折曲され、左右両側部35,35の上部と下部にそれぞれ取付け金具36が取付けられている。取付け金具36の背面に、前記側部35と縦梁12を構成する縦板38とが挟み込まれるための溝40が形成されている。取付け金具36にはボルト42が螺合し、溝40の間に挟まれた側部35と縦板38とが、ボルト42によって締結される。これによって、取付け板34が2本の縦梁12,12の間に固定される。
【0018】
取付け板34の表面には、格子状に配置された係合孔44が開口している。係合孔44は鎧窓形状の孔であって、係合孔44はトラス10の内側に出っ張り、上面が開放されている。
【0019】
(3)制御装置24の固定方法
次に、制御装置24のケース26を取付け板34に固定する方法について説明する。
【0020】
制御装置24は、取付け板34よりも一回り小さい形状をなし、4個の係合片28をそれぞれ4個の係合孔44に上方から差し込む。この場合に、係合片28のフック片32を係合孔44の開放した上面から差し込み固定する。制御装置24の重みにより、係合孔28は係合孔44に差し込まれて拔脱することがない。これによって制御装置24は、トラス10の側面に固定される。
【0021】
(4)交換方法
次に、エスカレータをリニューアル工事する場合に、新たな制御装置46、48を固定する場合について説明する。なお、制御装置46が主制御装置であり、制御装置48は補助制御装置である。制御装置46,48においても、ケース26の背面にそれぞれ4個の係合片28が突出している。
【0022】
まず、作業者は、古い制御装置24を上方に引き上げることにより、係合片28が係合孔44から外れ、取付け板34から簡単に取り外すことができる。
【0023】
次に、新しい制御装置46,48を取付ける場合について説明する。
【0024】
作業者は、1台目の制御装置46の4個の係合片28を、取付け板34の左側の4個の係合孔44に差し込み固定する。この固定方法は、古い制御装置24と同様である。
【0025】
作業者は、取付けた新しい制御装置46の右側に位置する取付け板34に2代目の制御装置48を取付ける。この場合も制御装置48の4個の係合片28を4個の係合孔44に差し込んで固定する。
【0026】
(5)効果
本実施例によれば、古い制御装置24を新しい制御装置46,48に簡単に取り替えることができる。この場合に、取付け板34を取り替えることなく新しい制御装置46,48を取付けることができる。また、溶接作業も不要となるため、現地作業の工数が大幅に減少する。また、制御装置46,48の設計段階においても、固定方法を考える必要が無くなるため、設計時間の短縮も図ることができる。
【0027】
(6)変更例
上記実施例では、新しい制御装置46,48に交換したが、交換する制御装置の台数、サイズはこれに限らない。
【0028】
上記実施例では、エスカレータ10で説明したがこれに代えて動く歩道で本実施例を適用してもよい。
【0029】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
10・・・トラス、12・・・縦梁、14・・・横梁、22・・・機械室、24・・・制御装置、26・・・ケース、28・係合片、30・・・固定部、32・・・フック片、34・・・取付け板、36・・・取付け金具、38・・・縦板、40・・・溝、42・・・ボルト、44・・・係合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアのトラスの側面に固定された取付け板と、
前記取付け板に開口した複数の係合孔と、
前記係合孔に、上方から係合する係合片が背面に設けられた前記乗客コンベアの制御装置と、
を有することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記係合孔が、前記取付け板に対し格子状に複数開口している、
ことを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記取付け板が、前記トラスの梁にボルトで固定されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の乗客コンベア。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−176810(P2012−176810A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39610(P2011−39610)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】