説明

乗客コンベヤ

【課題】保守作業の頻度を少なくすることができ、移動手摺の外側面に対する損傷を抑制することができる乗客コンベヤを得る。
【解決手段】移動手摺3は、手摺駆動装置によって所定の移動経路上を移動される。また、移動手摺3は、転送面28aが設けられた手摺本体部28と、手摺本体部28の幅方向両端部に設けられた一対の側壁部29と、各側壁部29から互いに近づく方向へ突出する一対の対向部30とを有している。移動手摺3の変位は、ガイド装置14により移動手摺3の幅方向について規制される。ガイド装置14は、各対向部30間の空間に配置された案内ローラ34を有している。案内ローラ34は、転送面28aに交差する軸線を中心として回転可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばエスカレータや動く歩道等の乗客コンベヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、略C字状の断面を持つ移動手摺の幅方向への変位を抑制するために、扁平の案内ローラを移動手摺の内側に配置した乗客コンベヤが提案されている。案内ローラは、移動手摺の幅方向及び移動方向のいずれに対しても垂直な回転軸を中心に回転可能になっている。案内ローラの回転軸は、移動手摺の外側で保持されているとともに、移動手摺の溝の開放部分から移動手摺の内側に挿入されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、従来、移動手摺の幅方向への変位を抑制するために、移動手摺の幅方向について移動手摺を挟む位置に一対のガイドローラを配置したエスカレータも提案されている。各ガイドローラは、移動手摺の移動に伴って移動手摺の外側面に接触しながら回転される(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−48381号公報
【特許文献2】特開平7−330265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示された乗客コンベヤでは、移動手摺の外側で保持された回転軸が移動手摺の内側まで達しているので、回転軸の長さが長くなってしまう。従って、移動手摺によって案内ローラが移動手摺の幅方向へ押されると、案内ローラの回転軸に大きな曲げモーメントが生じてしまう。また、移動手摺がねじられる挙動を示すと、案内ローラの軸受(例えば、玉軸受等)自体に大きな回転モーメントが作用してしまう。これにより、案内ローラの回転軸や回転軸を保持する軸受等が破損しやすくなってしまい、乗客コンベヤの保守作業の頻度が多くなってしまう。
【0006】
また、特許文献2に示されたエスカレータでは、各ガイドローラが移動手摺の外側面に接触するので、移動手摺の外側面に汚れや傷等が生じてしまう。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、保守作業の頻度を少なくすることができ、移動手摺の外側面に対する損傷を抑制することができる乗客コンベヤを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る乗客コンベヤは、転送面が設けられた手摺本体部と、手摺本体部の幅方向両端部に設けられた一対の側壁部と、各側壁部から互いに近づく方向へ突出する一対の対向部とを有し、所定の移動経路上を移動可能な移動手摺、移動手摺を移動させる手摺駆動装置、及び転送面に交差する軸線を中心として回転可能でかつ各対向部間の空間に配置された案内ローラを有し、移動手摺の変位を移動手摺の幅方向について規制するガイド装置を備えている。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る乗客コンベヤでは、案内ローラが、各対向部間の空間に配置され、かつ転送面に交差する軸線を中心として回転可能になっているので、案内ローラが取り付けられた案内ローラ軸を移動手摺外から移動手摺の内部まで延ばす必要がなくなり、案内ローラ軸の長さを短くすることができる。これにより、案内ローラ軸が受ける曲げモーメントを小さくすることができ、案内ローラ軸や、案内ローラ軸を支持する支持ブラケット等の破損を抑制することができる。また、移動手摺がねじられる挙動を示しても、回転モーメントが軸受に作用することを抑制することができる。従って、ガイド装置の長寿命化を図ることができ、エスカレータの保守作業の頻度を少なくすることができる。また、案内ローラが各対向部間の空間に配置されているので、案内ローラが移動手摺の外側面に接触することはなく、移動手摺の外側面に対する損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1によるエスカレータを示す上部構成図である。
【図2】図1の手摺駆動装置及びガイド装置を示す拡大図である。
【図3】図2のIII-III線に沿った断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2によるエスカレータの手摺駆動装置及びガイド装置を示す構成図である。
【図5】図4のV-V線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエスカレータを示す上部構成図である。図において、乗客コンベヤであるエスカレータでは、トラス1がエスカレータの長手方向に沿って配置されている。トラス1上には、エスカレータの幅方向について対向する一対の欄干2が立設されている。各欄干2の周縁部には、無端状の移動手摺3が設けられている。移動手摺3は、欄干2を囲む所定の移動経路に沿って配置されている。また、トラス1には、無端状に連結された複数の踏段4が支持されている。各移動手摺3は、各踏段4と同期して所定の移動経路上を移動される。
【0012】
トラス1の長手方向一端部(上端部)内には、駆動機5と、駆動機5の駆動力により動作されるスプロケット装置6とが設けられている。
【0013】
駆動機5は、モータを含む駆動機本体7と、駆動機本体7に設けられ、駆動機本体7の駆動力により回転される駆動機スプロケット8とを有している。
【0014】
スプロケット装置6は、一体に回転される中間スプロケット9及び手摺駆動用スプロケット10を有している。駆動機スプロケット8及び中間スプロケット9間には、無端状の駆動機チェーン11が巻き掛けられている。駆動機5からの駆動力は、駆動機チェーン11を介して中間スプロケット9に伝達される。中間スプロケット9及び手摺駆動用スプロケット10は、中間スプロケット9が駆動機5からの駆動力を受けることにより一体に回転される。
【0015】
手摺駆動用スプロケット10には、無端状の手摺側伝達チェーン12が巻き掛けられている。トラス1内には、移動手摺3を移動させる手摺駆動装置13が設けられている。手摺駆動装置13は、移動手摺3の帰路側に位置している。手摺駆動装置13には、手摺側伝達チェーン12を介して手摺駆動用スプロケット10の回転力が伝達される。移動手摺3は、手摺駆動装置13が手摺駆動用スプロケット10の回転力を受けて動作されることにより、各踏段4と同期して移動される。
【0016】
手摺駆動装置13の近傍には、移動手摺3の移動を案内する一対のガイド装置14が設けられている。各ガイド装置14は、移動手摺3の移動経路に沿った方向について手摺駆動装置13の両側の位置に配置されている。即ち、各ガイド装置14のいずれか一方は手摺駆動装置13における移動手摺3の入口の近傍に配置され、他方は手摺駆動装置13における移動手摺3の出口の近傍に他方のガイド装置14が配置されている。
【0017】
図2は、図1の手摺駆動装置13及びガイド装置14を示す拡大図である。また、図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。手摺駆動装置13は、図2に示すように、移動手摺3の移動方向へ互いに間隔を置いて配置された複数(この例では、4つ)の駆動ローラ15と、手摺駆動用スプロケット10の回転力を各駆動ローラ15に伝達して各駆動ローラ15を回転させる動力伝達装置16と、各駆動ローラ15との間で移動手摺3を挟んで移動手摺3を駆動ローラ15に押圧する押圧装置17とを有している。
【0018】
駆動ローラ15は、トラス1に取り付けられた駆動ローラ軸を中心に回転可能になっている。駆動ローラ軸は、エスカレータの幅方向に沿って配置されている。即ち、駆動ローラ軸は、移動手摺3の移動方向に垂直な水平軸とされている。駆動ローラ15の外周部は、移動手摺3に接触している。移動手摺3は、駆動ローラ15の回転に応じて移動される。
【0019】
動力伝達装置16は、手摺側伝達チェーン12が巻き掛けられた第1の伝達用スプロケット18と、第1の伝達用スプロケット18と一体に回転される第2の伝達用スプロケット19と、各駆動ローラ15の駆動ローラ軸にそれぞれ設けられ、駆動ローラ15と一体に回転される複数の駆動ローラ軸スプロケット20と、第2の伝達用スプロケット19及び各駆動ローラ軸スプロケット20に巻き掛けられた無端状の伝達装置チェーン21と、伝達装置チェーン21が巻き掛けられ、伝達装置チェーン21に張力を与えるテンションスプロケット22とを有している。
【0020】
手摺駆動用スプロケット10の回転力は、手摺側伝達チェーン12を介して第1の伝達用スプロケット18に伝達される。第1の伝達用スプロケット18に伝達された回転力は、第2の伝達用スプロケット19、伝達装置チェーン21及び駆動ローラ軸スプロケット20の順に伝達され、各駆動ローラ15が回転される。
【0021】
テンションスプロケット22は、トラス1に固定された固定ブラケット23に取り付けられている。また、テンションスプロケット22は、各駆動ローラ軸スプロケット20の位置よりも第1及び第2の伝達用スプロケット18,19に近い位置に配置されている。固定ブラケット23には、互いに平行な複数の長穴26が設けられている。固定ブラケット23は、各長穴26に通されたボルト27によってトラス1に固定されている。トラス1に対する固定ブラケット23の位置は、ボルト27に対する長穴26の位置を調整することにより、調整可能になっている。各駆動ローラ軸スプロケット20に対するテンションスプロケット22の位置は、トラス1に対する固定ブラケット23の位置の調整により調整される。
【0022】
押圧装置17は、複数の押圧ばね40を介してトラス1に取り付けられている。また、押圧装置17は、複数(この例では、2つ)の取付バー(取付部材)24と、各取付バー24に設けられ、移動手摺3に接触する複数(この例では、4つ)の従動ローラ25とを有している。
【0023】
各従動ローラ25は、移動手摺3の移動方向について、各駆動ローラ15と同位置に配置されている。移動手摺3には、各従動ローラ25が接触している。移動手摺3は、各従動ローラ25によって各駆動ローラ15に押し付けられている。
【0024】
取付バー24は、移動手摺3の移動方向に沿って配置されている。また、取付バー24は、各押圧ばね40によって移動手摺3に近づく方向へ付勢されている。各従動ローラ25は、取付バー24が押圧ばね40によって上方へ付勢されることにより、移動手摺3に押し付けられている。各従動ローラ25は、移動手摺3が移動されると、移動手摺3に接触しながら移動手摺3の移動に応じて回転される。
【0025】
移動手摺3は、図3に示すように、転送面28aが設けられた手摺本体部28と、手摺本体部28の幅方向両端部に設けられ、断面形状が弧状とされた一対の側壁部29と、各側壁部29の上縁部から互いに近づく方向へ突出する一対の対向部30とを有している。各対向部30の突出端部は互いに離れている。これにより、移動手摺3の断面形状は略C字状となっている。
【0026】
移動手摺3には、手摺本体部28、各側壁部29及び各対向部30で囲まれた手摺溝31が形成されている。手摺溝31は、各対向部30間の空間部分を通して開放されている。転送面28aは、手摺溝31内に露出している。
【0027】
各対向部30間の寸法(手摺溝31の開放部の幅寸法)Xは、各駆動ローラ15の厚さ寸法(駆動ローラ軸の軸線に沿った方向についての駆動ローラ15の寸法)Yよりも大きくされている。各駆動ローラ15の一部は、各対向部30間の空間(手摺溝31の開放部)から手摺溝31内に挿入されている。各駆動ローラ15の外周部は、手摺溝31内で転送面28aに接触している。
【0028】
各ガイド装置14は、トラス1に取り付けられた支持ブラケット(支持部材)32と、支持ブラケット32に取り付けられた案内ローラ軸33と、案内ローラ軸33の先端部(下端部)に設けられ、各対向部30間の空間(手摺溝31の開放部)に配置された案内ローラ34とを有している。
【0029】
支持ブラケット32は、ボルト35でトラス1に締結された取付部32aと、取付部32aから手摺溝31の開放部に対向する位置まで水平に突出する水平ブラケット部32bとを有している。支持ブラケット32の断面形状は、取付部32a及び水平ブラケット部32bによってL字状となっている。水平ブラケット部32bにおける手摺溝31の開放部に対向する部分には、長穴36が設けられている。支持ブラケット32は、長穴36の長手方向が移動手摺3の幅方向と同一になるように配置されている。
【0030】
案内ローラ軸33は、その軸線が転送面28aに交差するように配置されている。この例では、案内ローラ軸33の軸線が転送面28aに垂直となっている。また、案内ローラ軸33は、長穴36に通されたねじ部33aと、案内ローラ34が取り付けられたローラ取付部33bとを有している。
【0031】
ねじ部33aには、水平ブラケット部32bを挟む2つのナット37が螺合されている。案内ローラ軸33は、各ナット37間で水平ブラケット部32bを締め付けることにより水平ブラケット部32bに取り付けられている。案内ローラ軸33は、各ナット37による締め付けを緩めることにより、水平ブラケット部32bに対して変位可能になっている。
【0032】
案内ローラ34は、軸受38を介してローラ取付部33bに取り付けられている。これにより、案内ローラ34は、案内ローラ軸33の軸線を中心に回転される。案内ローラ34の外径Wは、駆動ローラ15の厚さ寸法Yよりも大きくなっている。また、案内ローラ34の外径Wは、各対向部30間の寸法Xよりも小さくなっている。さらに、案内ローラ34の厚さ寸法(案内ローラ軸33の軸線方向についての案内ローラ34の寸法)Pは、各対向部30の厚さ寸法Qよりも大きくなっている。さらにまた、案内ローラ34の厚さ寸法Pは、手摺溝31の深さ寸法(各対向部30の手摺本体部28側の面と転送面28aとの間の寸法)Rよりも大きくなっている。
【0033】
案内ローラ34は、各対向部30と隙間を介した状態で各対向部30間の空間(手摺溝31の開放部)に配置されている。また、案内ローラ34は、転送面28aから離して配置されている。さらに、案内ローラ34は、移動手摺3の移動方向に沿って見たときに移動手摺3の幅方向両側へ駆動ローラ15から突出している。移動手摺3の幅方向についての移動手摺3の変位は、対向部30が案内ローラ34に当たることにより規制される。
【0034】
移動手摺3に対する案内ローラ34の位置は、水平ブラケット部32bに対する案内ローラ軸33の位置の調整により調整される。即ち、移動手摺3に対する案内ローラ34の位置は、長穴36の長径方向についての水平ブラケット部32bに対する案内ローラ軸33の位置の調整により移動手摺3の幅方向について調整され、長穴36に対するねじ部33aの挿入量の調整により手摺溝31の深さ方向について調整される。
【0035】
案内ローラ34は、支持ブラケット32に対する案内ローラ軸33の着脱、あるいはトラス1に対する支持ブラケット32の着脱により、トラス1に対して着脱可能になっている。
【0036】
次に、動作について説明する。手摺駆動装置13が駆動機5からの駆動力を受けると、各駆動ローラ15が同一速度で回転される。各駆動ローラ15が回転されると、各駆動ローラ15と転送面28aとの間の摩擦力により、各駆動ローラ15の回転に応じた速度で移動手摺3が移動される。このとき、各従動ローラ25も回転される。
【0037】
何らかの原因で移動手摺3の幅方向(横方向)への力を移動手摺3が受けると、移動手摺3は横方向へ変位される。移動手摺3の横方向への変位により対向部30が案内ローラ34に当たると、移動手摺3の横方向への変位が阻止される。このとき、各対向部30は、駆動ローラ15から離れたままとなっている。また、対向部30が案内ローラ34に当たっている状態では、案内ローラ34が回転しながら移動手摺3が移動される
【0038】
このようなエスカレータでは、案内ローラ34が、各対向部30間の空間に配置され、かつ転送面28aに交差する軸線を中心として回転可能になっているので、案内ローラ34が取り付けられた案内ローラ軸33を移動手摺3外から手摺溝31内の奥まで延ばす必要がなくなり、案内ローラ軸33の長さを短くすることができる。これにより、案内ローラ軸33が受ける曲げモーメントを小さくすることができ、案内ローラ軸33や、案内ローラ軸33を固定する支持ブラケット32等の破損を抑制することができる。また、移動手摺がねじられる挙動を示しても、回転モーメントが軸受に作用することを抑制することができる。従って、ガイド装置14の長寿命化を図ることができ、エスカレータの保守作業の頻度を少なくすることができる。また、案内ローラ34が各対向部30間の空間に配置されているので、案内ローラ34が移動手摺3の外側面に接触することはなく、移動手摺3の外側面に対する損傷を抑制することができ、移動手摺3の意匠性の低下を抑制することができる。
【0039】
また、案内ローラ34の厚さ寸法Pは、対向部30の厚さ寸法Qよりも大きくなっているので、移動手摺3が横方向へ変位されたときに案内ローラ34に対向部30をより確実に接触させることができる。これにより、移動手摺3の横方向への変位の規制をより確実に行うことができる。また、案内ローラ34と対向部30との間の接触面積を大きくすることができるので、案内ローラ34から対向部30が受ける面圧を小さくすることができる。これにより、案内ローラ34と対向部30とが接触したときの対向部30の変形を抑制することができる。
【0040】
また、案内ローラ34の厚さ寸法Pは、手摺溝31の深さ寸法Rよりも大きくなっているので、何らかの原因で転送面28aが案内ローラ34に近づくような挙動を移動手摺3が行った場合であっても、案内ローラ34が手摺溝31内に嵌って抜けなくなることを防止することができる。従って、ガイド装置14の正常な機能をより確実に維持することができる。
【0041】
また、案内ローラ34の位置は、移動手摺3の幅方向について調整可能になっているので、駆動ローラ15の側面に対向部30が接触してしまう等が不具合の解消を容易に行うことができる。即ち、案内ローラ34に対して対向部30が強い力で横方向へ押されると、対向部30が案内ローラ34によって弾性変形され、各対向部30間の間隔が案内ローラ34の位置で広がることがある。この場合、駆動ローラ15の位置で移動手摺3の横方向への変位がさらに大きくなり、駆動ローラ15の側面に対向部30が接触することがあるが、駆動ローラ15の側面に接触している対向部30が駆動ローラ15の側面から離れる方向へ案内ローラ34の位置を調整することにより、駆動ローラ15と対向部30との接触の不具合を容易に解消することができる。
【0042】
なお、上記の例では、案内ローラ34の外径Wが駆動ローラ15の厚さ寸法Yよりも大きくなっているが、移動手摺3の幅方向についての案内ローラ34の位置の調整により、駆動ローラ15と対向部30との接触が防止されるのであれば、案内ローラ34の外径Wが駆動ローラ15の厚さ寸法Yと同一であってもよいし、案内ローラ34の外径Wが駆動ローラ15の厚さ寸法Yよりも小さくてもよい。
【0043】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2によるエスカレータの手摺駆動装置及びガイド装置を示す構成図である。また、図5は、図4のV-V線に沿った断面図である。図において、ガイド装置14は、トラス1に取り付けられた支持ブラケット(支持部材)41と、支持ブラケット41に取り付けられた案内ローラ軸33と、案内ローラ軸33の先端部に設けられ、各対向部30間の空間(手摺溝31の開放部)に配置された案内ローラ34と、支持ブラケット41に取り付けられた支持ローラ軸42と、支持ローラ軸42に設けられ、移動手摺3の外面に接触する支持ローラ43とを有している。
【0044】
案内ローラ軸33の軸線の位置は、移動手摺3の移動方向に沿ってみたとき、移動手摺3の幅方向(駆動ローラ15の厚さ方向)についての駆動ローラ15の中心位置と一致している。
【0045】
案内ローラ34の外径Wと駆動ローラ15の厚さ寸法Yとの関係は、案内ローラ34に押し付けられた対向部30の弾性変形によって各対向部30間の間隔が案内ローラ34の位置で広がっても、各対向部30が駆動ローラ15の側面に接触しない関係となっている。例えば、案内ローラ34の位置で広がる各対向部30間の間隔の最大値に所定の余裕値を加えた寸法がAである場合、案内ローラ34の外径Wと駆動ローラ15の厚さ寸法Yとの関係は、案内ローラ34の外径Wと駆動ローラ15の厚さ寸法Yとの差(W−Y)が寸法2Aよりも大きくなる関係(W−Y>2A)とされている。
【0046】
支持ブラケット41は、ボルト35でトラス1に締結された取付部41aと、取付部41aよりも移動手摺3に近い位置に配置され、移動手摺3の幅方向に対して垂直な垂直ブラケット部41bと、取付部41aと垂直ブラケット部41bとを繋ぐ中間部41cと、中間部41cに固定され、移動手摺3の幅方向に沿って配置された水平ブラケット部41dとを有している。
【0047】
水平ブラケット部41dにおける手摺溝31の開放部に対向する部分には、ねじ部33aが通された丸穴44が設けられている。案内ローラ軸33は、ねじ部33aに螺合された2つのナット37間で水平ブラケット部41dを締め付けることにより水平ブラケット部41dに取り付けられている。従って、この例では、移動手摺3の幅方向についての案内ローラ34の位置の調整が不可能になっている。垂直ブラケット部41bの先端部(下端部)には、丸穴45が設けられている。
【0048】
支持ローラ軸42は、その軸線方向が移動手摺3の幅方向と同一になるように配置されている。また、支持ローラ軸42は、丸穴45の内径よりも大きな外径を持つ軸本体部42aと、軸本体部42aの一端部に設けられ、丸穴45に通されたねじ部42bと、軸本体部42aの他端部に設けられ、支持ローラ43が取り付けられたローラ取付部42cとを有している。
【0049】
ねじ部42bには、ナット46が螺合されている。支持ローラ軸42は、ナット46と軸本体部42aとの間で垂直ブラケット部41bを締め付けることにより垂直ブラケット部41bに取り付けられている。
【0050】
支持ローラ43は、軸受47を介してローラ取付部42cに取り付けられている。これにより、支持ローラ43は、支持ローラ軸42の軸線を中心に回転される。また、支持ローラ43は、手摺本体部28からみて案内ローラ34と反対側の位置に配置されている。従って、案内ローラ34から離れる方向への手摺本体部28の変位は、手摺本体部28が支持ローラ43に接触することにより規制される。
【0051】
支持ローラ43の厚さ寸法(支持ローラ軸42の軸線方向についての支持ローラ43の寸法)は、移動手摺3の幅方向についての手摺本体部28の寸法とほぼ同一とされている。支持ローラ43は、移動手摺3の外面に接触しながら移動手摺3の移動に応じて回転される。支持ローラ43は、垂直ブラケット部41bに対する支持ローラ軸42の着脱により、トラス1に対して着脱可能になっている。他の構成は実施の形態1と同様である。
【0052】
このようなエスカレータでは、手摺本体部28からみて案内ローラ34と反対側の位置に支持ローラ43が配置されているので、案内ローラ34から離れる方向への手摺本体部28の変位を支持ローラ43によって規制することができる。従って、手摺本体部28が案内ローラ34から離れる方向への力を移動手摺3が受けた場合であっても、案内ローラ34が各対向部30間の空間から外れることを防止することができる。これにより、ガイド装置14の正常な機能をさらに確実に維持することができる。
【0053】
また、支持ローラ43がトラス1に対して着脱可能になっているので、支持ローラ43をトラス1から取り外すことにより、移動手摺3をガイド装置14から容易に取り外すことができる。従って、例えばエスカレータの保守作業等の手間を軽減することができる。さらに、案内ローラ34もトラス1に対して着脱可能になっているので、案内ローラ34をトラス1から取り外すことによっても、移動手摺3をガイド装置14から容易に取り外すことができる。
【0054】
また、案内ローラ34の外径Wが駆動ローラ15の厚さ寸法よりも大きくなっているので、移動手摺3の幅方向についての案内ローラ34の位置を調整しなくても、駆動ローラ15の側面に対する各対向部30の接触を防止することができる。従って、移動手摺3の幅方向についての案内ローラ34の位置を調整する構造をなくすことができる。従って、ガイド装置14の構造を簡単にすることができる。
【0055】
なお、各上記実施の形態では、移動手摺3の移動経路に沿った方向について手摺駆動装置13の両側の位置にガイド装置14が配置されているが、手摺駆動装置13の両側のうち、いずれか一方にのみガイド装置14を配置してもよい。即ち、手摺駆動装置13における移動手摺3の入口及び出口のいずれか一方の近傍にのみガイド装置14を配置してもよい。
【0056】
また、各上記実施の形態では、案内ローラ軸33の軸線が転送面28aに垂直になっているが、案内ローラ軸33の軸線が転送面28aに対して傾斜していてもよい。
【0057】
また、各上記実施の形態では、案内ローラ34の厚さ寸法Pが対向部30の厚さ寸法Qよりも大きくなっているが、案内ローラ34の厚さ寸法Pを対向部30の厚さ寸法Qと同一にしてもよいし、案内ローラ34の厚さ寸法Pを対向部30の厚さ寸法Qよりも小さくしてもよい。
【0058】
また、各上記実施の形態では、この発明がエスカレータに適用されているが、動く歩道にこの発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 トラス、3 移動手摺、13 手摺駆動装置、14 ガイド装置、15 駆動ローラ、28 手摺本体部、28a 転送面、29 側壁部、30 対向部、34 案内ローラ、43 支持ローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転送面が設けられた手摺本体部と、上記手摺本体部の幅方向両端部に設けられた一対の側壁部と、各上記側壁部から互いに近づく方向へ突出する一対の対向部とを有し、所定の移動経路上を移動可能な移動手摺、
上記移動手摺を移動させる手摺駆動装置、及び
上記転送面に交差する軸線を中心として回転可能でかつ各上記対向部間の空間に配置された案内ローラを有し、上記移動手摺の変位を上記移動手摺の幅方向について規制するガイド装置
を備えていることを特徴とする乗客コンベヤ。
【請求項2】
上記ガイド装置は、上記手摺本体部からみて上記案内ローラと反対側の位置に配置され上記案内ローラから離れる方向への上記手摺本体部の変位を規制する支持ローラをさらに有していることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベヤ。
【請求項3】
上記案内ローラ及び上記支持ローラの少なくともいずれか一方は、トラスに対して着脱可能になっていることを特徴とする請求項2に記載の乗客コンベヤ。
【請求項4】
上記案内ローラの厚さ寸法は、上記対向部の厚さ寸法以上とされていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の乗客コンベヤ。
【請求項5】
上記案内ローラの厚さ寸法は、各上記対向部の上記手摺本体部側の面と上記転送面との間の寸法よりも大きくなっていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の乗客コンベヤ。
【請求項6】
上記案内ローラの位置は、上記移動手摺の幅方向について調整可能になっていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の乗客コンベヤ。
【請求項7】
上記手摺駆動装置は、上記転送面に接触する駆動ローラを有し、
上記ガイド装置は、上記手摺駆動装置の近傍に配置され、
上記移動手摺の幅方向についての上記案内ローラの寸法は、上記移動手摺の幅方向についての上記駆動ローラの寸法よりも大きくなっていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の乗客コンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−98805(P2011−98805A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253905(P2009−253905)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】