説明

乗用田植機の予備苗収容構造

【課題】畦から予備苗載せ台への苗供給を容易に行うことができる乗用田植機における予備苗収容構造を提供する。
【解決手段】乗用走行機体の前部の左右に配備した予備苗載せ台8に、予備苗を載置収容する複数の予備苗載置部26を上下方向に所定間隔を置いて配設する第1形態と、予備苗載置部26を前後に一列状に配設する第2形態とに苗受け形態を切換可能に構成し、第2形態にした状態で、1枚半分乃至2枚分の予備苗載置部26が機体前端位置より前方に突出するように構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用走行機体の前部の左右に配備され、上下方向に所定間隔をおいて複数の予備苗を載置収容する予備苗載置部を前後に一列状に配置換えできるようにした乗用田植機の予備苗収容構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、乗用走行機体の前部の左右に配備した予備苗載せ台に、予備苗を載置収容する予備苗載置部を上下方向に所定間隔を置いて配設する第1形態と、予備苗載置部を前後に一列状に配設する第2形態とに苗受け形態を切換可能に構成した乗用田植機の予備苗収容構造が示されている。
【0003】
特許文献1のものでは、図1に示されているように複数の予備苗載置部を上下方向に配設されている状態から、図4、図5、図27に示されているように複数の予備苗載置部を前後に一列状に配設された第2形態では、ほぼ、1個分の予備苗載置部が乗用走行機体の前端より前方に突出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−135506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、予備苗載置部を一列状の第2形態に設定すると、最前側の予備苗載置部が乗用走行機体の前端位置よりも前方に位置するので、乗用走行機体を畦にほぼ直角に畦際まで進行させた状態で停止すると、畦から予備苗載せ台への苗供給を行うことができて便利であるが、畦から少し離れた位置で停止したり、乗用走行車体を畦に対して少し斜めに進行して停止すると、畦から左右の予備苗載せ台への予備苗の補給が困難になり、場所を選んで、慎重に畦際まで進行しないと畦から予備苗載置部へ直接苗補給を行うのが難くなることがある。
【0006】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、畦から予備苗載せ台への苗供給を従来よりも容易に行うことができる予備苗収容構造を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔第1発明の構成〕
第1発明は、乗用走行機体の前部の左右に配備した予備苗載せ台に、予備苗を載置収容する予備苗載置部を上下方向に所定間隔を置いて配設する第1形態と、前記予備苗載置部を前後に一列状に配設する第2形態とに苗受け形態を切換可能に構成した乗用田植機の予備苗収容構造において、
前記予備苗載置部を前後に位置変更可能に支持する位置変更機構を備え、前記第2形態に配設した予備苗載置部を前方位置に位置させた状態で、1枚半分乃至2枚分の前記予備苗載置部が機体前端位置より前方に突出するように構成してある。
【0008】
〔第1発明の作用〕
第1発明によれば、苗植付け作業に際して、予備苗載置部を一列状に配設した第2形態に切換え前方位置に位置変更することで、畦から予備苗載置部へ予備苗を載せるときに、最前側の予備苗載置部が乗用走行機体の前端位置より1枚半分以上の予備苗載置部が前方に飛び出るように位置させることができるので、乗用走行機体を概ね畦に向って進行して畦際で停止するだけで、乗用走行機体が畦に対して直角でなく、又乗用走行機体を畦際ぎりぎりまで前進させなくても最前側の予備苗載置部が畦に近づき、畦から予備苗を最前側の予備苗載置部へ容易に供給することができるようになるので、操縦者による運転操作並びに畦から予備苗載置部への苗補給が容易になった。
又、苗植付け作業時は、第2形態の予備苗載置部を後方位置に戻して作業を行うが、これによって、機体前方への突出量が少なくなるので植え付けラインを定めるための前方の見通しが良くなるとともに畦際ぎりぎりで旋回しても障害物に当たりにくくなって運転がしやすくなり、また予備苗載置部上の予備苗を苗載せ台に補給しやすくなる。
第1発明によれば、予備苗載置部を上下方向に所定間隔を置いて配設した第1形態においても、予備苗載置部を前後に位置変更できるので、第1形態において予備苗載置部への苗補給や苗植付け作業時に適切に対応できる。
【0009】
〔第1発明の効果〕
第1発明によれば、1枚半分以上の予備苗載置部を乗用走行機体の前端位置より前方に飛び出るように位置させることがきるので、予備苗補給のための操縦者による運転操作並びに畦から予備苗載置部へ苗補給を容易に行うことができるようになった。
【0010】
〔第2発明の構成〕
第2発明は、第1発明の構成において、乗用走行機体の運転部より前方の機体左右にステップを形成し、前記予備苗載置部を後方位置乃至前方位置に位置させた状態において、平面視で前記ステップに少なくとも通行可能なステップ幅が残るように、前記ステップの機体横外側に前記予備苗載せ台を配設してある。
【0011】
〔第2発明の作用効果〕
第2発明によれば、第1及び第2形態の予備苗載置部を後方及び前方位置に位置させた状態でも運転部より前方の機体左右のステップを通行することができるので、補助者がいない場合、運転者が前方の前記ステップを通って畦に降りて予備苗を予備苗載置部に載置し、再び前記ステップを通って運転席へ戻ることができるというように前記ステップを自由に行き来でき、運転者一人で作業を行うのに好都合である。
【0012】
〔第3発明の構成〕
第3発明は、第1発明または第2発明の構成において、前記予備苗載せ台に前後に延出された支持フレームを備え、前記第2形態において前記支持フレームに前記予備苗載置部を片持ち状に着脱自在に支持してある。
【0013】
〔第3発明の作用効果〕
第3発明によれば、予備苗載置部を、前後に延出された支持フレームに対して片持ち状に着脱自在に支持させるので、例えば、一対の支持フレームで両持ち構造とするのに比べて、外側の支持フレームが不要で支持部材が少なくなり、予備苗載置部へ予備苗を積み込むのに支持フレームが邪魔になり難い。
又、引用文献1に示されているような予備苗載置部どうしを連結して、支柱に取り付けたひとつの予備苗載置部により他の予備苗載置部を連結支持する構成でないので、予備苗載置部自体を支持部材を兼ねるような丈夫なものにしなくてもよく、予備苗載置部を軽量に構成でき、予備苗載置部の生産性が向上する。
【0014】
〔第4発明の構成〕
第4発明は、第3発明の構成において、前記予備苗載置部を外した状態で、前記支持フレームの前後長さを短縮すべく前記支持フレームを複数のフレーム部材で形成して前後に折り畳み可能に構成してある。
【0015】
〔第4発明の作用効果〕
第4発明によれば、路上走行や乗用田植機の格納時には、予備苗載置部を上下方向に配設する第1形態にし、支持フレームを折り畳むことで、乗用田植機の全長が短くなり、路上運転が行いやすく、又乗用田植機をコンパクトに格納することができる。
【0016】
〔第5発明の構成〕
第5発明は、第4発明の構成において、前記支持フレームの折り畳み部を、隣り合う前記フレーム部材のうちの一方のフレーム部材に備えられたヒンジ部材と、他方のフレーム部材に備えられたヒンジ部材と、前記両ヒンジ部材に接続する中間ヒンジ部材とを備えて構成してある。
【0017】
〔第5発明の作用効果〕
第5発明によれば、隣り合うフレーム部材に備えられたヒンジ部材間に中間ヒンジ部材を備えることで、支持フレームを折り曲げる支点が2つになるので、中間ヒンジ部材を介して折り畳まれたフレーム部材間に、ある程度の空間部を形成した状態で折り畳むことができ、又、ヒンジ部材の連結部(枢支部)をフレーム部材の前後展開状態(第2形態)において予備苗載置部上端よりも上方に突出しないように構成できる。
これにより、ヒンジ部材をフレーム部材より上方に大きく突出する状態で設けることなく、コンパクトに折り畳むことができるようになり、ヒンジ部材の連結部(枢支部)を第2形態で予備苗載置部より上下方向に突出しないようにすることができるので、ヒンジ部材が邪魔にならない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】乗用田植機の全体側面図である。
【図2】乗用田植機の全体平面図である。
【図3】左の予備苗載せ台における第1形態を示す正面図である。
【図4】予備苗載せ台における第2形態を示す側面図である。
【図5】予備苗載せ台における第2形態を示す平面図である。
【図6】左の予備苗載せ台における第2形態を示す正面図である。
【図7】予備苗載せ台における第1形態を示す側面図である。
【図8】左の予備苗載せ台における第2形態を示す要部の斜視図である。
【図9】(a)は左の支持フレームの折り畳み状態を示す側面図、(b)は左の支持フレームの伸展状態を示す側面図である。
【図10】左の予備苗載せ台における第2形態を示す平面図である。
【図11】予備苗載せ台における支柱の位置変更機構を示す要部縦断背面図である。
【図12】予備苗載置部を取り付けた状態で機体内側から見た要部を示す一部縦断側面図である。
【図13】隣接する予備苗載置部どうしの連結部の構造を示す側面図である。
【図14】別実施の形態の支持フレームの折り畳み部の構造を示す要部側面図である。
【図15】別実施の形態の予備苗載せ台における第2形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に、本発明に係る予備苗収容構造を備えた施肥装置付き乗用田植機の側面が、図2にその平面がそれぞれ示されている。この乗用田植機は、前輪1と後輪2を備えた4輪駆動式の乗用走行機体3の後部に、油圧シリンダ4で駆動される平行四連リンク構造のリンク機構5を介して苗植付け装置6が昇降自在に連結され、乗用走行機体3の後部に施肥装置7が搭載されるとともに、乗用走行機体3の前部における左右両側に2組の予備苗載せ台8が立設装備されている。
【0020】
乗用走行機体3の前部には、エンジン9を収容した原動部10が設けられるとともに、乗用走行機体3の後部に運転座席11が設けられ、運転座席11の足元から原動部10の左右両脇に亘って配備されたステップ12の左右横外側には、下方を透視可能なスノコ状に形成された拡張ステップ13が備えられている。
【0021】
苗植付け装置6は8条植え仕様に構成されており、8条分のマット状の苗を載置して苗幅に相当する一定ストロークで往復横移動される苗載せ台15、苗載せ台15の下端から1株分ずつ苗を切り出して田面に押し込む8組の回転式植付け機構16、田面の植付け箇所を均らす5個の整地フロート17、等を備えている。
【0022】
施肥装置7は、運転座席11の後方に配備された肥料ホッパ18、肥料ホッパ18に貯留された粒状肥料を所定量ずつ繰り出す回転式の繰出し機構19、繰り出された肥料を風力搬送するための電動ブロワ20、風力搬送される肥料を整地フロート17に備えた作溝器21に導く供給ホース22、等を備えており、各条の植付け苗の横側近くに作溝器21で形成した施肥溝に肥料を送り込んで埋設するよう構成されている。
【0023】
図1〜図3に示すように、予備苗載せ台8には、乗用走行機体3に取り付けた支持枠23に横軸心周りに前後揺動自在に立設された前後一対の支柱24,24と、前後の支柱24,24の上端部に枢支軸25aを介して揺動自在に枢支連結された逆U字状の取付け枠25と、取付け枠25の乗用走行機体3の外側に上下4段に配備された予備苗載置部26と、取付け枠25に前後に折り畳み自在で、伸長した状態で予備苗載置部26を片持ち状に着脱自在に支持できるように構成した支持フレーム27等が備えられている。
図1〜図3に示すように、乗用走行機体3の外側の4枚の予備苗載置部26が、取付け枠25に上下に配設された第1形態と、図4〜図6に示すように、支持フレーム27を伸展させた状態で前後並べて支持フレーム27に取り付けた第2形態とに切換え可能に構成されている。
【0024】
前記支持フレーム27は、逆U字状の取付け枠25に固定した固定フレーム部材27aと、ヒンジ部材29,30を介して固定フレーム部材27aとピン連結された前フレーム部材27bと、ヒンジ部材31,32及び中間ヒンジ部材33を介して固定フレーム部材27aに連結された後フレーム部材27cとで構成されている。
【0025】
前フレーム部材27bの前端部と後フレーム部材27cの後部部の後端部に弾性を有する樹脂製の蓋部53を取り付けてある。これにより、折り畳み時の緩衝部材として作用させることができ、重ね合った部分に弾性樹脂が介在することで、異音やビビリ音が発生しない。これにより締付け構造が不要として、コストダウンを図ることができる。
【0026】
前記支持フレーム27は、予備苗載置部26を前後展開状態に一列状に支持する第2形態と、折り畳んだ収納状態とした第2形態とに変更可能で、上記中間ヒンジ部材33を設けたことで、支持フレーム27を折り曲げる支点が一つの支点でなく、2つの支点とし、2つの支点間距離を適宜設定することで、折り畳み時に、上下のフレーム部材27a,27c間に、ある程度の空間部を形成することができ、かつ、支持フレーム27を前後展開状態にした第2形態において、ヒンジ部材31,32及び中間ヒンジ部材33を含む支持フレーム27を予備苗載置部26の上端よりも上方に突出しないようにして、コンパクトに折り畳むことができるようになる。
【0027】
支持フレーム27を折り畳んだ収納状態では、支持フレーム27の前後幅が、ほぼ一つの予備苗載置部26の前後幅と同じ長さになるようにしてある。これにより、乗用田植機を格納するときの収納性が向上でき、又、支持フレーム27を収納すると前後に突出する部分がなくなるので、支持フレーム27が邪魔になることを極力回避でき、予備苗載置部26を取付け枠25に上下に配設した第1形態での段積み作業の作業性が向上する。
【0028】
乗用走行機体3の外側に支持される4枚の予備苗載置部26は同一仕様で樹脂成形されたものが使用されている。図3、図6、図8に示すように、最下段の予備苗載置部26及び上2段の予備苗載置部26は、逆U字状の取付け枠25の前後に形成したピン孔34に予備苗載置部26の内側の前後に形成した連結部材26aに連結ピン35,35aを挿通して、片持ち状に連結されている。即ち、予備苗載置部26を、逆U字状の取付け枠25へ取付けた支持形態(第1形態)及び支持フレーム27へ取り付けた支持形態(第2形態)のいずれの支持形態においても片持ち状に支持するようにしてある。予備苗載置部26を片持ち状に支持することによって苗補給時に予備苗載置部26を支持する取付け枠25や支持フレーム27が邪魔になり難い。
【0029】
予備苗載置部26を取付け枠25に上下4段に取り付けるとき(第1形態)は、最下段の予備苗載置部26と下から2段目の支持フレーム27に取り付ける予備苗載置部26の片持ち支持部の支持構造は、支持フレーム27に取り付けたブラケット37に形成したピン孔36と予備苗載置部26の連結部材26aに形成したピン孔とに亘って連結ピン35aを挿通して図示しない割ピンにて抜け止めを施してある。これに対して、最上段と上から2段目の予備苗載置部26は、図12に示すように、内側の側枠26bの外面にリンク28の一端部を枢着し、他端部に長孔28aを介して連結ピン35を揺動自在に取り付けてあって、連結ピン35を予備苗載置部26の連結部材26aの孔と、図6、図8に示す取付け枠25に形成したピン孔34とに亘って挿通することで、予備苗載置部26を取付け枠25に止着するようにしてある。
【0030】
最上段と上から2段目の予備苗載置部26を一列状に支持フレーム27に付け替えるとき(第2状態)は、取付け枠25のピン孔34と連結部材26aに挿通している連結ピン35を、アーム28を揺動させて抜き取るだけで、予備苗載置部26を取付け枠25から外すことができ、図12に示すように、支持フレーム27のブラケット37のピン孔36と連結部材26aのピン孔とに亘って連結ピン35を挿通することで、支持フレーム27に予備苗載置部26を取り付ける。前記アーム28を介して連結ピン35を予備苗載置部26に止着しておけば、予備苗載置部26の付け替えが容易でしかも連結ピン35を紛失することもない。
【0031】
予備苗載置部26を一列状に支持フレーム27に取り付けた状態において、隣接する予備苗載置部26の後側の予備苗載置部26における前端部であって、連結ピン35,35aで連結した片持ち支持部側とは反対側端部の予備苗載置部26の裏面に、前側の予備苗載置部26の後端を受け止め支持する受け部材52を固設してある。これは、前側の予備苗載置部26の後端縁の苗載置面26cの上面高さが、後側の予備苗載置部の前端縁における苗載置面26cの高さより低い段違いとならないようにするためである。
【0032】
即ち、複数の予備苗載置部26を一列状に前後に配列した場合、後に位置する予備苗載置部26の前端の苗載置面26cの高さが前に位置する予備苗載置部26の後端の苗載置面26cの高さよりも低い場合は問題ないが、逆の場合だと、予備苗を予備苗載置部26に載置するすくい板(図示せず。すくい板は予備苗を後方の苗載せ台15に移載するまで予備苗を載せて運ぶために予備苗とともに予備苗載置部に載置されるものである)に予備苗を載せた状態で、すくい板に載せたまま予備苗を畦から前端の予備苗載置部26に載置し、引き続いて予備苗を載せたすくい板で先に載せたすくい板を後方に押しながら後続する予備苗を予備苗載置部26に載置しようとするとき、後方に押された予備苗を載置しているすくい板が段差のある後方の予備苗載置部26の前端縁に当たってすくい板を後方に押し込むことができなくなる。
【0033】
そこで、一列状に伸展した支持フレーム27に取り付けた予備苗載置部26の片持ち支持部とは反対側端の前端部に、前側の予備苗載置部26の裏面を受け止め支持する受け部材52を設けることで、前側の予備苗載置部26の苗載置面26cの後端部が後側の予備苗載置部26の苗載置面26cの上面よりも低くなるという段差現象が解消できるので、畦から予備苗を予備苗載置部26に載せて後方に押し込みながら順次複数の予備苗をスムーズに前後に一列状に配設された全ての予備苗載置部26に搭載することができる。
【0034】
下から2つ目の予備苗載置部26は、前記支持フレーム27の固定フレーム部材27aに連結ピン35aで連結されている。
支持フレーム27の固定フレーム部材27a、前フレーム部材27b及び後フレーム部材27cの横外側面の前後2箇所に、予備苗載置部26を連結するためのピン孔36を形成したブラケット37を固定してある。
【0035】
前後一対の支柱24,24と、支柱24の基部の支持枠23,23と、逆U字状の取付け枠25(取付け枠25の枢支軸25a,25a間)とで平行四連リンクAが形成されている。前記平行四連リンクAを構成する取付け枠25に支持された予備苗載置部26を、前後に前後方向の所望の位置に位置変更して所望の位置で固定できる位置変更機構Bを備えている。
【0036】
前後一対の支柱24の基部24aは、外向きに屈曲され、前後の支持枠23に前後揺動自在に枢支連結されている。支持枠23に枢支連結されている前後2箇所の支柱24の基部24aは、予備苗載置部26の左右幅内の下方に設定してある。これにより、苗重量を含む予備苗載せ台8の荷重は予備苗載せ台8の真下で受けることができるので、予備苗載せ台8の支持バランスを保ち、機体走行時の横揺れが軽減でき、耐久性を向上させることができる。
【0037】
前記位置変更機構Bは次のように構成されている。すなわち、予備苗載せ台8の後方の支柱24の外向きに屈曲された基部24aには、前方の支持枠23との間でダンパー38を架設するための補強部材39が固定されており、この補強部材39と支柱24との間にピン保持筒40が連結され、ピン保持筒40に支持枠23と係脱する操作ピン41を摺動自在に保持している。他方、支柱24を枢支する支持枠23に円弧状に複数の位置決め用孔42が形成されている。前記操作ピン41の内端は、支柱24より内側に突出させて、係止ピン43を介してL型リンク44に連係されている。L型リンク44は操作ロッド45を介して支柱24の上端のハンドル54に取り付けた操作レバー46に連係されている。これにより、操作レバー46を握り操作すると、操作ロッド45を引き上げて、L型リンク44を枢支ピン47周りで回動し、長孔48の機能により操作ピン41が支持枠23の孔42より抜け出すので、支柱24を直立状態から図4に示す最前側位置までの所望の傾斜角度で操作レバー46を戻すと、操作ピン41が対応する位置決め用孔42に嵌入し、支柱24が位置固定される。操作レバー46を握り操作した状態で、支柱24を予備苗載置部26が最前方位置となる位置(即ち、予備苗載置部26が最前側に移動した位置)まで傾斜させるとダンパー38によって前方への移動が阻止される。この状態で操作レバー46の握り操作を解除すると、操作ピン41が前端の位置決め用孔42に嵌入して支柱24がロックされる。
【0038】
逆U字状の取付け枠25は平行四連リンクAを構成している部材であるから、支柱24を前方に傾動させても取付け枠25は乗用走行機体3に対して一定の姿勢で前方に移動する。したがって、取付け枠25に固定した予備苗載置部26の姿勢及び支持フレーム27は、支柱24の直立姿勢から最前側に傾動させた全ての範囲に亘って乗用走行機体3に対して一定の姿勢を保ちながら揺動移動する。
【0039】
路上走行時や車庫への格納時ときには、予備苗載置部26を取付け枠25に固定し、支柱24を略直立姿勢に位置固定した姿勢にしておく。植付け作業を行うときには、折り畳んである支持フレーム27を展開し、最上段と2番目の予備苗載置部26の連結ピン35を抜き取って取付け枠25に固定している予備苗載置部26を外し、支持フレーム27の前フレーム部材27bと後フレーム部材27cの各ブラケット37のピン孔36と予備苗載置部26の連結部材26aのピン孔とに連結ピン35を挿通して支持フレーム27に予備苗載置部26を連結する。
【0040】
作業に際して、畦から予備苗を予備苗載置部26に積み込むときには、予備苗載せ台8の操作レバー46を握り操作して支持枠23から操作ピン41を抜き、支柱24のロックを解除する。この状態で、支柱24を前に倒して予備苗載置部26が最前側まで移動した時点で操作レバー46から手を離すと操作ピン41が最前端の位置決め用孔42に嵌入して支柱24がロックされ、図5に示すように第2形態において、予備苗載置部26が機体前端位置より1枚半分前方に突出した状態に設定される。この第2形態(図5の平面視)で予備苗載置部26を前後に移動させても、予備苗載置部26はステップ12と重複しない状態で、左右の予備苗載置部26どうしが、後方ほど距離が離れるハの字状に配置されるレイアウトになっている。平面視で予備苗載置部26,26の前側の左右間隔が狭くなるハの字状にレイアウトすることで、補助者による左右の予備苗載置部26への苗補給が容易になり、作業性が向上する。図1及び図2に示す第1形態において、予備苗載置部26を前後に移動させても、予備苗載置部26は平面視でステップ12とは重複しない。
又、前後一列状に並べられた第2形態の予備苗載置部26の前部から予備苗を供給するときに、上記のように支柱24を前側に倒すことによって、予備苗載置部26が前方に移動するだけでなく予備苗載置部26の苗載置面26cの高さも低くなり、予備苗載置部26への苗補給作業が行いやすくなる。
【0041】
各予備苗載置部26については、左右の側枠26bの近くの前後方向3位置に横向軸心周りに遊転自在なローラ49が、苗載置面26cより少し上方に突出して装備され、上記第2形態において、前後直列に並べられた予備苗載置部26に沿って予備苗を押し動かす際に、予備苗(すくい板)が円滑に順送りすることができるようになっている。
【0042】
前記第2形態において、畦から供給される予備苗の後方移動を円滑に行えるように、前後一列状に並べられた予備苗載置部26が全体的に少し後下がり傾斜している。
【0043】
図1〜図3に示すように、最上段の予備苗載置部26の後部及び上から2段目の予備苗載置部26の前部には、図10に示すように、予備苗載置部26を前後に一列状に配設したときに、4枚の予備苗を載置することができるように、前後方向にスライド自在な引出し補助受け部50を備えている。引出し補助受け部50は、スライド自在な2本の支持杆50aと、最上段の補助苗載置部26に対しては支持杆50aの前端部、上から2段目の補助苗載置部26に対しては支持杆50aの後端部にクランク状に屈曲させたストッパー杆50bとで構成されている。
【0044】
前後一列状に並べられた第2形態の予備苗載置部26の前部から予備苗を供給する場合、予備苗載置部26に載置した予備苗を順次後方に押し動かす。乗用走行機体3に搭乗している運転作業者は、最後部の予備苗載置部26に到達した苗を順次取り出して後方の苗載せ台15に移載する。予備苗載置部26に予備苗を満載するときは、引出し補助受け部50を引き出すことで、予備苗が4枚列状に載置することができ、第2形態の予備苗載置部26を最前側に移動させた状態では、乗用走行機体3の前端位置よりも予備苗載置部26が1枚半前方に突出して2枚の予備苗が前方に突出する状態で搭載されるようになっている。苗載せ台15及び予備苗載せ台8に苗が満載されると、支柱24が直立するように予備苗載置部26を後方に移動させた状態での第2形態のまま植付け作業に移る。
【0045】
各予備苗載置部26の前記引出し補助受け部50を備えていない前後方向の端部には、丸棒材の一片を長くした下向きの変形コの字状に屈曲し、長片側を予備苗載置部の下面の下方で前後軸周りで位置変更可能に軸支してなるストッパー51を備えている。
図1〜図3及び図7に示す第1形態では、ストッパー51は、図7に示すように、最上段の予備苗載置部26の前端側に、上から2段目の予備苗載置部26の後端側に、上から3段目の予備苗載置部26の前後両側にそれぞれ設けられており、第1形態では、ストッパー51を苗載置面26cより上方に位置するようにセットし、載置苗のずり落ちを防止している。図4〜図6に示す第2形態では、図6の上段に示すように、ストッパー51を苗載置面26cより下方に回動させて予備苗の移動を妨げないようにする。最下段の予備苗載置部26の前後に配設されたストッパー51は固定されている。
【0046】
〔別実施の形態〕
(1)上記主たる実施の形態では、図7〜図9に示すように、前側のヒンジ部材29,30は直接連結し、後側のヒンジ部材31,32の間に中間ヒンジ部材33を介して連結して、支持フレーム27を折り畳み可能に構成したが、中間ヒンジ部材33の連結位置を前後逆にしてもよい。
【0047】
(2)上記(1)の別実施の形態に代えて、中間ヒンジ部材33をなくして、図14に示すように、ヒンジ部材54,55を高く形成してもよい。これにより、複数の予備苗載置部26を前後一列状に配設した状態から、最前側の予備苗載置部26をその後の予備苗載置部26の上方に折り畳むとき、折り畳んで上方に位置する予備苗載置部26と下方の予備苗載置部26の間に空間部が形成されるようにすることができる。これにより、前端側の予備苗が消費された状態で、植付け作業中に障害物を避けるとき、折り曲げる予備苗載置部26の後方の予備苗載置部26上に予備苗が載置されていても大きく折り畳めるので、前端の予備苗載置部26に対して障害物を回避することができる。
【0048】
(3)図15に示すように、予備苗載置部26を前後一列状に配設した第2形態において、前部の予備苗載置部26を上下軸心周りで回動可能に構成してある。これにより、予備苗載置部26を前後一列状に設置した第2形態での作業中に、前端側の予備苗載置部26が邪魔になるときは、予備苗載置部26に予備苗を載せていた状態でも、当該予備苗載置部26を機体中央に回動できるので、圃場内の障害物を避けることが可能となり、作業性が向上する。
【0049】
(4)主たる実施の形態では、予備苗載せ台8への畦からの予備苗を補給する第2形態の姿勢で、予備苗載置部26を機体前端位置よりも前方に1枚半分前方に突出するように構成したが、第2形態で予備苗載置部26を機体前端位置よりも前方に1枚半分を越え、2枚分に相当する予備苗載置部26を前方に突出するように構成してもよい。
【0050】
(5)主たる実施の形態では、支持フレーム27を3つに折り畳めるように構成したが、2つに折り畳めるように構成してもよい。
【0051】
(6)主たる実施の形態では、支柱24を直立姿勢から前倒れ姿勢に揺動可能とし、支持フレーム27に前後3個の予備苗載置部26を一列状に配設するようにしてあるが、支柱24を前後揺動可能に構成し、支持フレーム27を4つ折りにして、一列状に伸展した第2形態の状態で、予備苗載置部26を主たる実施の形態の構成よりも一個分前方に長くしてもよい。この場合、4個の予備苗載置部26を一列状に配設した第2形態の状態において、支柱24が直立姿勢にある状態では、予備苗載せ部26を1枚半分、機体前端位置よりも前方に突出し、支柱24を前方に傾倒した状態では予備苗載置部26を2枚半分だけ機体前端位置よりも前方突出するように構成して、予備苗載置部26を機体最前端位置から略1枚半分乃至2枚半分の範囲で複数段にその突出位置を設定変更可能に構成してもよい。
【0052】
(7)主たる実施の形態では、支持フレーム27を折り畳み式に構成したが、前端又は前端と後端とをスライドできる伸縮式に形成してもよい。
【0053】
(8)主たる実施の形態では、支柱24を前後に揺動するよう構成したが、支柱24を前後に揺動しない固定構造とし、支持フレーム27を一列状に伸展した第2形態の状態において、支柱24に取り付けた取付け枠25に対して支持フレーム27を前後にスライド移動並びに位置変更固定自在に構成して、支持フレーム27を最前方位置にスライドさせた状態で、機体前端位置より前方に予備苗載置部26が1枚半分乃至2枚分突出するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
乗用田植機としては、4条植え、6条植え或いは8条を越える多条植えの乗用田植機に適用できる。
【符号の説明】
【0055】
3 乗用走行機体
8 予備苗載せ台
12 ステップ
14 運転部
26 予備苗載置部
27 支持フレーム
27a フレーム部材
27b フレーム部材
27c フレーム部材
31 ヒンジ部材
32 ヒンジ部材
33 中間ヒンジ部材
B 位置変更機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗用走行機体の前部の左右に配備した予備苗載せ台に、予備苗を載置収容する予備苗載置部を上下方向に所定間隔を置いて配設する第1形態と、前記予備苗載置部を前後に一列状に配設する第2形態とに苗受け形態を切換可能に構成した乗用田植機の予備苗収容構造において、
前記予備苗載置部を前後に位置変更可能に支持する位置変更機構を備え、前記第2形態に配設した予備苗載置部を前方位置に位置させた状態で、1枚半分乃至2枚分の前記予備苗載置部が機体前端位置より前方に突出するように構成してある乗用田植機の予備苗収容構造。
【請求項2】
乗用走行機体の運転部より前方の機体左右にステップを形成し、前記予備苗載置部を後方位置乃至前方位置に位置させた状態において、平面視で前記ステップに少なくとも通行可能なステップ幅が残るように、前記ステップの機体横外側に前記予備苗載せ台を配設してある請求項1記載の乗用田植機の予備苗収容構造。
【請求項3】
前記予備苗載せ台に前後に延出された支持フレームを備え、前記第2形態において前記支持フレームに前記予備苗載置部を片持ち状に着脱自在に支持してある請求項1または2記載の乗用田植機の予備苗収容構造。
【請求項4】
前記予備苗載置部を外した状態で、前記支持フレームの前後長さを短縮すべく前記支持フレームを複数のフレーム部材で形成して前後に折り畳み可能に構成してある請求項3記載の乗用田植機の予備苗収容構造。
【請求項5】
前記支持フレームの折り畳み部を、隣り合う前記フレーム部材のうちの一方のフレーム部材に備えられたヒンジ部材と、他方のフレーム部材に備えられたヒンジ部材と、前記両ヒンジ部材に接続する中間ヒンジ部材とを備えて構成してある請求項4記載の乗用田植機の予備苗収容構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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