説明

乗用車用タイヤのビードコア

【目的】 局所的な剛性低下を招くことなく、その重量バランスを最適に確保する。
【構成】 内周側から外周側に向かって重ねて環状に巻回し、その巻回終端位置4aを、その周方向において巻回始端位置3aと同位置に設けたワイヤ2aと、このワイヤ2aと同一構造のワイヤ2b〜2hをそれらの巻回軸方向に並べて束ねるとともに、ワイヤ2a〜2hの巻回終端位置4a〜4hを、交互に、その周方向に所定寸法Lだけずらすように構成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、乗用車用タイヤのビードコアの構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】タイヤには、車両装着時にその内周部左右となる部位にビードコアと称される環状部材が埋設されており、リムに装着されたタイヤを、リムに固定する役割を果たしている。このビードコアは、内周側から外周側に向かって重ねて環状に巻回されたワイヤを、図6及び図7に示すように、その巻回軸方向に複数本並べて束ねることによって構成されている。ビードコア20を構成するワイヤ21は、一般には、図6に示すように、所定回数だけ巻回された後、その巻回始端部22と巻回終端部23とが、その周方向において、オーバーラップ部Rを有するようにされており、さらに、ビードコア20を構成する際には、図7に示すように、それぞれのワイヤ21の巻回始端部22及び巻回終端部23を、その巻回軸方向に揃えて束ねられるようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のようなビードコア20では、最も外周側のオーバーラップ部Rの重量により、ビードコア20の周方向において重量の偏りが生じ、これによって、完成タイヤの重量バランスが損なわれ、所定の規格を達成することができないことがある。つまり、このようなタイヤを使用した場合には、車両走行時にその走行性能に影響を及ぼすこととなり好ましくない。そこで、巻回されたワイヤの最も外周側のオーバーラップ部Rをなくし、ビードコア20の周方向における重量の偏りをなくすべく、その巻回始端部と巻回終端部との位置を、その周方向において同位置に設けたワイヤでビードコアを構成することが考えられる。しかし、各ワイヤの最も外周側のオーバーラップ部Rをなくすことで、ビードコアの重量バランスが確保できる反面、各ワイヤの端部位置での剛性が低下することになる。従って、ビードコアにおいては、各ワイヤの端部が揃えられて束ねられるので、各ワイヤの剛性低下部分が、ビードコアの周方向一部に集中されることとなり、これによる、ビードコアの局所的な剛性低下に起因する破断が懸念される。
【0004】本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、局所的な剛性低下を招くことなく、その重量バランスを最適に確保することができる自動車用タイヤのビードコアを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、本発明は、内周側から外周側に向かって重ねて巻回された環状のワイヤを、その巻回軸方向に複数本並べて束ねたタイヤのビードコアにおいて、上記各ワイヤの巻回終端位置を、その周方向において巻回始端位置と同位置に設けるとともに、所定数のワイヤ端部位置を順次その周方向に所定量ずらしたものである。
【0006】請求項2に係る発明は、上記請求項1記載の乗用車用タイヤのビードコアにおいて、所定数のワイヤ端部位置を交互にその周方向に所定量ずらしたものである。
【0007】
【作用】上記請求項1記載の発明によれば、各ワイヤの巻回終端位置が、その周方向において巻回始端位置と同位置にされているので、最も外周側のオーバーラップ部がなく、従ってビードコアの重量バランスを損なうことがない。また、ビードコアを構成する複数のワイヤに対し、所定数のワイヤの端部位置を順次その周方向において所定量だけずらし、当該ワイヤの剛性低下部分と他のワイヤにおける剛性低下部分とをずらすことによって、ビードコアにおける剛性低下部分を分散させ、これによってビードコアにおける局所的な剛性低下が防止される。
【0008】上記請求項2記載の発明によれば、ビードコアを構成する複数のワイヤに対し、所定数のワイヤの端部位置を交互にその周方向において、所定量だけずらし、当該ワイヤの剛性低下部分と他のワイヤにおける剛性低下部分とをずらすことによって、ビードコアにおける剛性低下部分を分散させ、これによってビードコアにおける局所的な剛性低下が防止されるとともに、ワイヤ端部位置がその周方向2個所に分散されるだけなので、上記請求項1記載のビードコアと比較するとその製造が容易である。
【0009】
【実施例】図1及び図2は本発明に係るビードコアを示している。同図において、ビードコア1は、内周側から外周側に向かって重ねて環状に巻回されたワイヤ2a〜2hが、その巻回軸方向に並べられて束ねられた構成をなしている。ワイヤ2aには、高炭素鋼からなる線材、あるいは最近ではピアノ線の表面をゴムで被覆したものが適用され、これが所定の回数だけ巻回されて、その巻回終端部4aが、その周方向において、巻回始端部3aと同位置(図2では、一点鎖線5に示す位置)になるようにされている。なお、説明を省略するが、ワイヤ2b〜2hも、上記ワイヤ2aと同様の構造を有するものである。
【0010】そして、図1に示すように、上記のような各ワイヤ2a〜2hが、その巻回軸方向に並べられて束ねられた後、例えばテーピング等により固定されてビードコア1が構成されている。この際、ワイヤ2aの巻回終端部4aとこれに隣接されたワイヤ2bの巻回終端部4bを、図1に示すように、所定寸法Lだけずらし、また、ワイヤ2bに隣接されたワイヤ2cの巻回終端部4cを上記ワイヤ2aの巻回終端部2aと揃え、さらにワイヤ2cに隣接されたワイヤ2dの巻回終端部4dを上記所定寸法Lだけずらして、上記ワイヤ2bの巻回終端部4bに揃えるといったように、ワイヤ2a〜2hの各巻回終端部4a〜4hを、交互に上記所定寸法Lだけずらして固定するようになっている。つまり、ワイヤ2a〜2hの各巻回終端部4a〜4hをビードコア1の周方向2個所に分散させて固定するようになっている。上記所定寸法Lは、ワイヤ2a〜2hの材料径、あるいは適用されるタイヤサイズ、さらにはビードコアを構成するワイヤの数等を考慮して決定されるもので、実施例においては、60〜80mmに設定されている。
【0011】このビードコア1の製造方法としては、ワイヤ2a〜2hの巻回始端部3a〜3hを交互に所定寸法Lだけずらしておき、内周側から巻き始めた各ワイヤ2a〜2hを、外周側の巻回終端部4a〜4hで、寸法Lだけずらして切断するようにすればよい。
【0012】以上のように構成されたビードコア1においては、ビードコア1を構成するワイヤ2aの巻回始端部3aと巻回終端部4aとを、その周方向において同位置に設けることによって各ワイヤ2a〜2hの最も外周側のオーバーラップ部をなくすようにしているので、従来例のようにワイヤ21の周方向において、重量の偏り部分が生じることがない。従って、上記ワイヤ2aとこれと同一構造を有するワイヤ2b〜2hとを並べて束ねた構成のビードコア1においても、重量の偏りが生じることがなく、その重量バランスを最適に確保することができる。しかし、その一方で、ワイヤ2aの巻回始端部3aと巻回終端部4aとを、その周方向において同位置に設け、他のワイヤ2b〜2hにおいても同様に構成したので、それらの端部位置での剛性が低下するが、本発明のビードコア1は、各ワイヤ2a〜2hの端部位置、すなわち各ワイヤ2a〜2hにおける剛性低下部分を、交互に所定寸法Lだけずらして固定するようにしているので、剛性低下部分がビードコア1の周方向に分散され、これによって、ビードコア1の局所的な剛性低下を招くことがないようにされている。
【0013】従って、本発明のビードコア1によれば、局所的な剛性低下によるビードコアの破断を招くことなく、そのバランスを最適に確保することが可能となる。
【0014】なお、上記実施例では、ビードコア1を構成するワイヤ2a〜2hにおいて、各ワイヤ2a〜2hの巻回終端部4a〜4hを交互に所定寸法Lずらすように構成しているが、このような構成以外にも、例えば、図3に示すように、隣接したワイヤ2a〜2hを2本毎ずらすようにしてビードコア7を構成してもよい。また、図4に示すように、各ワイヤ2a〜2hの巻回終端部4a〜4hをその周方向に順次等間隔(図4では、所定寸法L1)でずらすようにしてビードコア8を構成してもよいし、また、図5に示すように、隣接したワイヤ2a〜2hを2本毎、順次等間隔(図5では、所定寸法L2)でずらすようにしてビードコア9を構成してもよい。なお、図4及び図5に示すビードコア8及び9において、ワイヤ2a〜2hの巻回終端部4a〜4hをビードコア8,9の全周に亘ってずらすように所定寸法L1及びL2を設定すれば、剛性低下部分がビードコア8,9の全周に亘って分散されることになるので、より好ましい。
【0015】また、上記ビードコア1における、所定寸法Lも、実施例では60〜80mmに設定されているが、これは所定寸法L値の一例であって、必ずしもこの値に設定する必要はなく、ワイヤ2a〜2hの材料径、ビードコアを構成するワイヤの数、あるいはビードコアが使用されるタイヤのサイズ等に応じて適宜設定するようにすればよい。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、内周側から外周側に向かって重ねて巻回された環状のワイヤを、その巻回軸方向に複数本並べて束ねたタイヤのビードコアにおいて、上記各ワイヤの巻回終端位置を、その周方向において巻回始端位置と同位置に設けるとともに、所定数のワイヤ端部位置を順次その周方向に所定量ずらしたので、ビードコアの局所的な剛性低下を招くことなく、その重量バランスを最適に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動車用タイヤのビードコアを示す図2R>2におけるB矢視図である。
【図2】本発明の自動車用タイヤのビードコアを示す正面図である。
【図3】本発明の自動車用タイヤのビードコアの別の実施例を示す平面図である。
【図4】本発明の自動車用タイヤのビードコアの別の実施例を示す平面図である。
【図5】本発明の自動車用タイヤのビードコアの別の実施例を示す平面図である。
【図6】従来の自動車用タイヤのビードコアを示す正面図である。
【図7】従来の自動車用タイヤのビードコアを示す図6におけるB矢視図である。
【符号の説明】
1 ビードコア
2a〜2h ワイヤ
3a〜3h 巻回始端部
4a〜4h 巻回終端部
L 所定寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】 内周側から外周側に向かって重ねて巻回された環状のワイヤを、その巻回軸方向に複数本並べて束ねたタイヤのビードコアにおいて、上記各ワイヤの巻回終端位置を、その周方向において巻回始端位置と同位置に設けるとともに、所定数のワイヤ端部位置を順次その周方向に所定量ずらしたことを特徴とする乗用車用タイヤのビードコア。
【請求項2】 上記請求項1記載の乗用車用タイヤのビードコアにおいて、所定数のワイヤ端部位置を交互にその周方向に所定量ずらしたことを特徴とする乗用車用タイヤのビードコア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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