乱用抵抗性アンフェタミンプロドラッグ
本発明は、アンフェタミンと共有結合した化学的部分を含む化合物及び組成物と、該化合物及び組成物の使用方法とを説明する。これらの化合物及び組成物は、アンフェタミンの乱用及び過剰投与を低減又は防止するのに有用である。これらの化合物及び組成物は、注意欠陥多動性障害(ADHD)、ADD、ナルコレプシー及び肥満症のような特定の疾患に対する乱用抵抗性代替療法を提供するのに一定の用途を見出す。アンフェタミンの経口生体利用性は、治療上有効な用量において維持される。より高い用量では生体利用性は実質的に低減するので、経口での乱用の可能性を低減する方法を提供する。さらに本発明の化合物及び組成物は、静脈内又は鼻腔内投与のような非経口径路によるアンフェタミンの生体利用性を減少させ、その乱用の可能性をさらに限定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンフェタミン化合物に関し、具体的には化学的部分(chemical moiety)と共有結合したアンフェタミンを含むアンフェタミンプロドラッグに関する。本発明は、前記アンフェタミン化合物を含む医薬品組成物と、前記アンフェタミン化合物を製造、送達及び使用する方法とにも関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年4月8日出願の特許文献1及び2に係る出願と、2005年5月16日出願の特許文献3に係る出願と、2006年1月6日出願の特許文献4に係る出願と、2006年1月19日出願の特許文献5に係る出願と、2004年6月1日出願の特許文献6に係る出願とを基礎とする米国特許法第119条(e)の優先権を主張する。本出願は、2004年6月1日出願の特許文献7に係る出願の一部継続出願でもあるが、特許文献7に係る出願自体が、2002年2月22日出願の特許文献8に係る出願と2002年3月7日出願の特許文献9に係る出願とに基づく優先権を主張する2003年2月24日出願の特許文献10に係る出願の一部継続出願である。特許文献7に係る出願も、2003年5月29日出願の特許文献11に係る出願と、2004年5月5日出願の特許文献12に係る出願とを基礎とする米国特許法第119条(e)の優先権を主張する。上記の全ての出願の内容は、その全体が引用によって本明細書に取り込まれる。
【特許文献1】米国仮出願第60/669,385号明細書
【特許文献2】米国仮出願第60/669,386号明細書
【特許文献3】米国仮出願第60/681,170号明細書
【特許文献4】米国仮出願第60/756,548号明細書
【特許文献5】米国仮出願第60/759,958号明細書
【特許文献6】米国特許出願第10/857,619号明細書
【特許文献7】米国特許出願第10/858,526号明細書
【特許文献8】米国仮出願第60/358,368号明細書
【特許文献9】米国仮出願第60/362,082号明細書
【特許文献10】国際出願PCT/US03/05525号明細書
【特許文献11】米国仮出願第60/473,929号明細書
【特許文献12】米国仮出願第60/567,801号明細書
【0003】
アンフェタミンは、中枢神経系(CNS)を刺激し、注意欠陥多動性障害(ADHD)、肥満症及びナルコレプシーを含むさまざまな疾患を治療するために医薬品として使用されてきた。ADHD児童では強力なCNS刺激剤が、単独で、又は、行動療法の補助剤として投与される薬剤治療として数十年の間使用されてきた。メチルフェニデート(リタリン(Ritalin、登録商標))は最も頻繁に処方される刺激剤であったが、そのクラスの原型であるアンフェタミン(アルファ−メチルフェネチルアミン)は以前から使用されており近年ますます使用されている(非特許文献1)。
【非特許文献1】Bradley C,Bowen M,“Amphetamine(benzedrine)therapy of children’s behavior disorders.” American Journal of Orthopsychiatry 11:92−103(1941)
【0004】
その刺激効果のためにアンフェタミン誘導体及び類縁体を含むアンフェタミンは、乱用されやすい。使用者はやがて、これらの薬剤が正規の治療目的のために使用されるときであっても、前記薬剤と、その身体的効果及び心理的効果とに依存するようになる場合がある。薬剤耐性を発現する正規のアンフェタミン使用者は、処方される薬剤に対する耐性の増大に対抗するために用量を増加させるので偶発性中毒者に特になりやすい。加えて個人が、前記薬剤を処方される量より多く不適切に自己投与する場合か、製品又は(例えば(鼻からの吸入のような)吸入、注射及び喫煙のような)投与径路を変更する場合かがあり、処方される量より大量の活性薬剤の即時放出につながる可能性がある。処方される用量より多くの量が摂取されるとアンフェタミンは、高揚感と、エネルギー増大の感覚と、精神的な覚醒とを一時的に引き起こす場合がある。
【0005】
処方薬剤製品の乱用における最近の新事態は、ADHDに対して処方されるアンフェタミンの乱用についての懸念を増大させる。薬物使用及び保健に関する全米調査(NSDUH)は、2003年には12歳以上の米国人120万人がアンフェタミンのような刺激剤を乱用したと推定する。乱用の可能性の高さは、アンフェタミンを、規制物質法(CSA)に記載のスケジュールII状態に分類する。スケジュールII分類は、認められた医学的用途を有するが乱用の可能性が最も高い薬剤のために設けられる。
【0006】
例えばアデロールXR(Adderall XR、登録商標)のようなアンフェタミンの持続放出製剤は、前記製剤の錠剤のそれぞれが高濃度のアンフェタミンを含有するために、単回投与錠剤と比較して乱用の可能性が大きい。物質の乱用者が、前記錠剤を砕いた粉末を鼻から吸入することか、前記粉末を水に溶解しそれを注射することかによって、迅速に作用が始まる高用量のアンフェタミンを摂取することが可能な場合がある。持続放出製剤は、薬剤の放出が不規則な場合もある。
【0007】
アンフェタミンとアンフェタミンの乱用とについての追加情報は、特許文献13に見出される場合がある。
【特許文献13】米国特許出願公開公報第2005/0054561号(米国特許出願第10/858,526号)明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらなるアンフェタミン化合物、特に乱用抵抗性アンフェタミン化合物に対する必要性が存在する。さらに持続放出及び持続的治療効果を提供するアンフェタミン医薬品組成物に対する必要性が存在する。
【0009】
図表の簡単な説明
図1.ペプチドアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図である。
【0010】
図2.リシンアンフェタミンジメシル酸塩の合成を示す図である。
【0011】
図3.リシンアンフェタミン塩酸の合成を示す図である。
【0012】
図4.セリンアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図である。
【0013】
図5.フェニルアラニンアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図である。
【0014】
図6.トリグリシンアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図である。
【0015】
図7.d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩を経口投与されたラット個体からのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0016】
以下の図(図8−16)は、d−アンフェタミン硫酸塩又はL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩のラットへの経口投与の研究(ELISA分析)から得られた結果を表す。
【0017】
図8.(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0018】
図9.(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0019】
図10.(用量6mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0020】
図11.(用量12mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0021】
図12.(用量30mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0022】
図13.(用量60mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0023】
図14.用量1.5、3、6、12、30及び60mg/kgのd−アンフェタミン塩基での、d−アンフェタミン硫酸塩と比較したL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の生体利用性の百分率(AUC及びCmax)を示すグラフである。
【0024】
図15.d−アンフェタミン塩基の用量の段階的増加に対する、投与後30分でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0025】
図16.(用量60mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0026】
図17.(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの鼻腔内投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(ELISA分析)を示すグラフである。
【0027】
図18.(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの鼻腔内投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(ELISA分析)を示すグラフである。
【0028】
図19.(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの静脈内ボーラス投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(ELISA分析)を示すグラフである。
【0029】
図20.(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)デキセドリンスパンスール(Dexedrine Spansule、登録商標)カプセルか、粉砕されたデキセドリンスパンスール(登録商標)カプセルか、L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩かのラットへの経口投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度レベル(ELISA分析)を示すグラフである。
【0030】
以下の図(図21−30)は、d−アンフェタミン硫酸塩又はL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩のラットへの経口投与の研究(LC/MS/MS分析)から得られた結果を表す。
【0031】
図21A及び図21B.(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図21A)及びnM単位(図21B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0032】
図22A及び図22B.(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図22A)及びnM単位(図22B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0033】
図23A及び図23B.(用量6mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図23A)及びnM単位(図23B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0034】
図24A及び図24B.(用量12mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図24A)及びnM単位(図24B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0035】
図25A及び図25B.(用量60mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図25A)及びnM単位(図25B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0036】
図26.ヒト等価用量の段階的増加に比例したL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの相対的生体利用性(Cmax)を示すグラフである。
【0037】
図27.d−アンフェタミン塩基の用量の段階的増加に比例したL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの相対的生体利用性(AUCinf)を示すグラフである。
【0038】
図28.ヒト等価用量の段階的増加に比例したL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの相対的生体利用性(AUCinf)を示すグラフである。
【0039】
図29.ヒト等価用量の段階的増加に比例したインタクトなL−リシン−d−アンフェタミンの相対的生体利用性(Cmax)を示すグラフである。
【0040】
図30.ヒト等価用量の段階的増加に比例したインタクトなL−リシン−d−アンフェタミンの相対的生体利用性(AUCinf)を示すグラフである。
【0041】
図31.(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの鼻腔内投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(LC/MS/MS分析)を示すグラフである。
【0042】
図32A及び図32B.(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの鼻腔内投与後のng/mL単位(図32A)及びnM単位(図32B)でのd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンの血漿中濃度(LC/MS/MS分析)を示すグラフである。
【0043】
図33.(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの静脈内ボーラス投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(LC/MS/MS分析)を示すグラフである。
【0044】
図34A及び図34B.(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの静脈内投与後のng/mL単位(図34A)及びnM単位(図34B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度(LC/MS/MS分析)を示すグラフである。
【0045】
以下の図(図35−40)は、(用量1mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミン硫酸塩又はL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の意識のある雄ビーグル犬への経口及び静脈内投与の研究(LC/MS/MS分析)から得られた結果を表す。
【0046】
図35.L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内又は経口投与(n=3)後のL−リシン−d−アンフェタミンの平均血漿中濃度の経時変化を示すグラフである。
【0047】
図36.L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内又は経口投与(n=3)後のd−アンフェタミンの血漿中濃度の経時変化を示すグラフである。
【0048】
図37A及び図37B.L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内投与(n=3)後のng/mL単位(図37A)及びnM単位(図37B)でのL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの平均血漿中濃度レベルの経時変化を示すグラフである。
【0049】
図38A及び図38B.L−リシン−d−アンフェタミンの経口投与(n=3)後のng/mL単位(図38A)及びnM単位(図38B)でのL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの平均血漿中濃度レベルの経時変化を示すグラフである。
【0050】
図39A及び図39B.L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内投与(図39A)又は経口投与(図39B)後のL−リシン−d−アンフェタミンの個体ごとの血漿中濃度の経時変化を示すグラフである。
【0051】
図40A及び図40B.L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内投与(図40A)又は経口投与(図40B)後のd−アンフェタミンの個体ごとの血漿中濃度の経時変化を示すグラフである。
【0052】
図41.(用量1.8mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩の雄イヌへの経口投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0053】
図42.(用量1.8mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩の雌イヌへの経口投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0054】
図43.L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミンの雄イヌ及び雌イヌへの増量静脈内注射後の平均血圧を示すグラフである。
【0055】
図44.L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミンの雄イヌ及び雌イヌへの増量静脈内注射後の左心室血圧を示すグラフである。
【0056】
以下の図(図45−49)は、d−アンフェタミン硫酸塩又はL−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩のラットへの(用量6mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)経口投与、(用量1mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)鼻腔内投与及び(用量1mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)静脈内投与の研究から得られた結果を表す。
【0057】
図45.経口投与後のラットの自発運動活性(5時間の経時変化)を示すグラフである。
【0058】
図46.経口投与後のラットの自発運動活性(12時間の経時変化)を示すグラフである。
【0059】
図47.鼻腔内投与後のラットの自発運動活性(1時間の経時変化)を示すグラフである。
【0060】
図48.(カルボキシメチルセルロースと併用した)鼻腔内投与後のラットの自発運動活性(2時間の経時変化)を示すグラフである。
【0061】
図49.静脈内投与後のラットの自発運動活性(3時間の経時変化)を示すグラフである。
【0062】
以下の図(図50−58)は、d−アンフェタミン又はアンフェタミンコンジュゲート塩酸塩のラットへの経口投与、鼻腔内投与及び静脈内投与の研究(ELISA分析)から得られた結果を表す。
【0063】
図50.乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸、ジペプチド及びトリペプチドコンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフである。
【0064】
図51.乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸、ジペプチド及びトリペプチドコンジュゲートの経口生体利用性を示すグラフである。
【0065】
図52.乱用抵抗性アンフェタミントリペプチドコンジュゲートの静脈内生体利用性を示すグラフである。
【0066】
図53.乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸コンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフである。
【0067】
図54.乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸コンジュゲートの経口生体利用性を示すグラフである。
【0068】
図55.乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸コンジュゲートの静脈内生体利用性を示すグラフである。
【0069】
図56.乱用抵抗性アンフェタミントリペプチドコンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフである。
【0070】
図57.乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸及びジペプチドコンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフである。
【0071】
図58.D−及びL−アミノ酸異性体を含む乱用抵抗性アンフェタミンジペプチドコンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフである。
【0072】
図59A及び図59B.(用量5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの経口投与後の、d−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンの血清中濃度(ng/mL単位、図59A)と、脳組織内濃度(ng/g単位、図59B)(LC/MS/MS分析)を示すグラフである。
【0073】
図60.L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩70mgのヒトへの経口投与の臨床研究から得られた定常状態の血漿中のd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンのレベル(LC/MS/MS分析)を示すグラフである。
【0074】
以下の図(図61−70)は、L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩のヒトへの経口投与の臨床研究(LC/MS/MS分析)から得られた結果を表す。
【0075】
図61A及び図61B.L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基7.37mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩25mg)のヒトへの経口投与後72時間にわたる血漿中のd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンのレベル(図61Aはng/mL単位、図61BはnM単位。)を示すグラフである。
【0076】
図62A及び図62B.L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)のヒトへの経口投与後72時間にわたる血漿中のd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンのレベル(図62Aはng/mL単位、図62BはnM単位。)を示すグラフである。
【0077】
図63A及び図63B.L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)又は(アンフェタミン塩基21.9mgを含む35mgの)アデロールXR(登録商標)のヒトへの経口投与後の血漿中のd−アンフェタミンのレベル(図63Aは0−12時間、図63Bは0−72時間。)を示すグラフである。
【0078】
図64A及び図64B.L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)又は(アンフェタミン塩基22.1mgを含む30mgの)デキセドリンスパンスール(登録商標)のヒトへの経口投与後の血漿中のd−アンフェタミンのレベル(図64Aは0−12時間、図64Bは0−72時間。)を示すグラフである。
【0079】
図65.単回用量が30mg、50mg及び70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩のADHD小児患者への絶食条件下での経口投与後のd−アンフェタミンの平均血漿中濃度を示すグラフである。
【0080】
図66.健康な成人ボランティアと、ADHD児童とへのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩カプセルの1日1回の経口投与後の、用量で規格化されたd−アンフェタミンのAUCと性別との間の関係を示すグラフである。
【0081】
図67.健康な成人ボランティアと、ADHD児童とへのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩カプセルの1日1回の経口投与後の、用量で規格化されたd−アンフェタミンの最大血漿中濃度と性別との間の関係を示すグラフである。
【0082】
図68.健康な成人ボランティアと、ADHD児童とへのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩カプセルの1日1回の経口投与後の、用量で規格化されたd−アンフェタミンの最大濃度到達時間と性別との間の関係を示すグラフである。
【0083】
図69.小児臨床研究についての終点でのADHD−RSを示すグラフである。
【0084】
図70.小児臨床研究についてのSKAMPスコア(有効性)対時間を示すグラフである。
【課題を解決するための手段】
【0085】
発明の詳細な説明
本発明は、化学的部分と共有結合したアンフェタミンを含むアンフェタミンプロドラッグを提供する。前記アンフェタミンプロドラッグは、共有結合を有するコンジュゲートであることを特徴とする場合もある。前記アンフェタミンプロドラッグは、経口投与が前記化学的部分から前記アンフェタミンを放出させるときまでは前記アンフェタミンプロドラッグは不活性状態に置かれることが好ましいという点で、条件付き生体可逆的誘導体(CBDs)であることを特徴とする場合もある。
【0086】
1つの実施態様では本発明は、化学式Iのアンフェタミンプロドラッグを提供する。
【0087】
【化1】
【0088】
化学式IにおいてAはアンフェタミンである。
【0089】
Xはそれぞれ独立の化学的部分である。
【0090】
Zはそれぞれ独立の化学的部分であって、アジュバントとして作用し、かつ、少なくとも1個のXと異なる化学的部分である。
【0091】
nは、1から50までの、好ましくは1ないし10の、インクリメント(increment)である。
【0092】
mは、0から50までの、好ましくは0の、インクリメントである。
【0093】
mが0のとき前記アンフェタミンプロドラッグは、化学式(II)の化合物である。
【0094】
【化2】
【0095】
化学式(II)においてXはそれぞれ独立の化学的部分である。
【0096】
化学式(II)は、前記アンフェタミンと物理的に結合した化学的部分を指定するために化学式(III)のように記述される場合もある。
【0097】
【化3】
【0098】
化学式(III)においてAはアンフェタミンである。X1は化学的部分であり、好ましくは単一アミノ酸である。Xはそれぞれ独立の化学的部分であって、X1と同じである又は異なる化学的部分である。nは1から50までのインクリメントである。
【0099】
Aすなわちアンフェタミンは、アンフェタミンのような中枢神経系刺激活性を有する交感神経興奮剤のフェネチルアミン誘導体か、いずれかの誘導体、類縁体又はそれらの塩かのいずれかの場合がある。代表的なアンフェタミン類は、アデロール(登録商標)のアンフェタミン化合物と、アンフェタミン、メタンフェタミン、メチルフェニデート、p−メトキシアンフェタミン、メチレンジオキシアンフェタミン、2,5−ジメトキシ−4−メチルアンフェタミン、2,4,5−トリメトキシアンフェタミン及び3,4−メチレンジオキシメタンフェタミン、N−エチルアンフェタミン、フェネチリン、ベンズフェタミン並びにクロルフェンテルミンと、アクテドロン(actedron)と、アクテミン(actemin)と、アジパン(adipan)と、アケドロン(akedron)と、アロデン(allodene)と、アルファ−メチル−(±)−ベンゼンエタンアミンと、アルファ−メチルベンゼンエタンアミンと、アルファ−メチルフェネチルアミンと、アンフェタミンと、アンフェート(amphate)と、アノレキシン(anorexine)と、ベンズバール(benzebar)と、ベンゼドリン(benzedrine)と、ベンジルメチルカルビナミン(benzyl methyl carbinamine)と、ベンゾロン(benzolone)と、ベータ−アミノプロピルベンゼンと、ベータ−フェニルイソプロピルアミンと、ビフェタミン(biphetamine)と、デソキシノレフェドリン(desoxynorephedrine)と、ジエタミン(dietamine)と、DL−アンフェタミンと、エラストノン(elastonon)と、フェノプロミン(fenopromin)と、ファイナム(finam)と、イソアミン(isoamyne)と、イソミン(isomyn)と、メコドリン(mecodrin)と、モノフォス(monophos)と、マイドリアル(mydrial)と、ノレフェドラン(norephedrane)と、ノビドリン(novydrine)と、オベシン(obesin)と、オベシン(obesine)と、オベトロール(obetrol)と、オクテドリン(octedrine)と、オクテドリン(oktedrin)と、フェナミン(phenamine)と、フェネドリン(phenedrine)と、アルファ−メチル−フェネチルアミンと、ペルコモン(percomon)と、プロファミナ(profamina)と、プロフェタミン(profetamine)と、プロピスアミン(propisamine)と、ラセフェン(racephen)と、ラフェタミン(raphetamine)と、ライナレーター(rhinalator)と、シンパミン(sympamine)と、シンパテドリン(simpatedrin)と、シンパティナ(simpatina)と、シンパテドリン(sympatedrine)と、ウェッカミン(weckamine)とを含むがこれらに限定されない。好ましいアンフェタミン類はメタンフェタミン、メチルフェニデート及びアンフェタミンを含み、アンフェタミンが最も好ましい。
【0100】
【化4】
【0101】
前記アンフェタミンは、右旋性及び左旋性の両方の異性体を含むいずれかの立体配置を有する場合がある。右旋性異性体、特にデキストロアンフェタミンが好ましい。
【0102】
前記アンフェタミンは、アンフェタミン塩であることが好ましい。例えば毒性のない無機酸及び有機酸付加塩のような医薬品として許容可能な塩は、当業者に知られている。代表的な塩は、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アムソン酸塩(amsonate)、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、エデト酸カルシウム、ショウノウ酸塩、ショウノウ硫酸塩(camphorsulfonate)、カンシル酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、クラブラル酸塩(clavulariate)、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストール酸塩(estolate)、エシル酸塩、エタンスルホン酸塩、フィナル酸塩(finnarate)、グルセプト酸塩(gluceptate)、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコールリラルサニル酸塩(glycollylarsanilate)、ヘミ硫酸塩(hemisulfate)、ヘプタン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、ラウリルスルホン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、臭化メチル、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、粘液酸塩、ナフチル酸塩(naphthylate)、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、リン酸塩、リン酸/2リン酸塩(phosphateldiphosphate)、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、サッカラート、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、スラマート(suramate)、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸、チオシアン酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド(triethiodide)、ウンデカン酸塩及び吉草酸塩と、これらに類するものとを含むがこれらに限定されない。(Berge et al.(1977)“Pharmaceutical Salts”,J Pharm.Sci.66:1−19を参照せよ。)好ましいアンフェタミン塩は、(例えばL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩のような)メシル酸塩である。
【0103】
特定の塩は、吸湿性がより低いため取り扱いが容易になる場合がある。好ましい実施態様では前記アンフェタミンプロドラッグは、約0%ないし約5%か、約0.1%ないし約3%か、約0.25%ないし約2%か、その範囲内の増分数(increments)かの(カールフィッシャー分析による)水分含量を有する。前記アンフェタミンプロドラッグが医薬品組成物中に処方されるとき、前記医薬品組成物は好ましくは約1%ないし約10%か、約1%ないし約8%か、約2%ないし約7%か、その範囲内の増分数かの水分含量を有する。
【0104】
本出願を通じて「増分数(increment)」という用語は、例えば10の位まで、1の位まで、0.1の位まで、0.01等の位までというように種々の精度で数値を定義するために使用される。前記増分数は、いずれかの測定可能な精度まで四捨五入される場合がある。例えば1ないし100の範囲かその範囲内の増分数かは、20ないし80と、5ないし50と、0.4ないし98と、0.04ないし98.05とのような範囲を含む。
【0105】
前記アンフェタミンは、X及びZと命名される1個又は2個以上の化学的部分と結合する。化学的部分は、該化学的部分と結合している間、未結合の(遊離の)アンフェタミンと比較してアンフェタミンの薬理活性を減少させるいずれかの部分の場合がある。結合する化学的部分は、天然か、合成かの場合がある。代表的な化学的部分は、単一アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド及びポリペプチドを含むペプチドと、糖ペプチドと、炭水化物と、脂質と、ヌクレオシドと、核酸と、ビタミンとを含むがこれらに限定されない。前記化学的部分は、一般的に安全と認められる(GRAS)ことが好ましい。
【0106】
「炭水化物」は例えば(CH2O)n及びCn(H2O)n-1のような、糖と、デンプンと、セルロースと、関連する化合物とを含み、前記(CH2O)nにおいてnは2より大きい整数であり、前記Cn(H2O)n-1においてnは5より大きい整数である。前記炭水化物は、単糖か、二糖か、オリゴ糖か、多糖か、(例えばスルホ基置換又はリン酸基置換された誘導体のような)それらの誘導体かの場合がある。代表的な炭水化物は、フルクトース、グルコース、ラクトース、マルトース、スクロース、グリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、エリスロース、リボース、リブロース、キシルロース、ガラクトース、マンノース、セドヘプツロース、ノイラミン酸、デキストリン及びグリコーゲンを含むがこれらに限定されない。
【0107】
「糖ペプチド」は、オリゴペプチドに連結された炭水化物である。同様に前記化学的部分は、糖タンパク質、糖アミノ酸又はグリコシルアミノ酸の場合もある。「糖タンパク質」は、タンパク質と共有結合した(例えばグリカンのような)炭水化物である。「糖アミノ酸」は、単一アミノ酸と共有結合した(例えば糖類のような)炭水化物である。「グリコシルアミノ酸」は、アミノ酸に(O−、N−又はS−)グリコシル結合を通じて連結された(例えば糖類のような)炭水化物である。
【0108】
「ペプチド」は、単一アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド又はキャリアーペプチドを含む。オリゴペプチドは2個から70個までのアミノ酸を含む。
【0109】
好ましくは前記化学的部分はペプチドであり、具体的には単一アミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドである。前記ペプチドは、70個未満のアミノ酸か、50個未満のアミノ酸か、10個未満のアミノ酸か、4個未満のアミノ酸かを含むことが好ましい。前記化学的部分が1個又は2個以上のアミノ酸のとき前記アンフェタミンは、リシン、セリン、フェニルアラニン又はグリシンと結合していることが好ましい。別の実施態様では前記アンフェタミンは、リシン、グルタミン酸又はロイシンと結合していることが好ましい。別の実施態様では前記アンフェタミンは、リシンと、例えば付加的なアミノ酸のような任意の付加的な化学的部分とに結合している。好ましい実施態様では前記アンフェタミンは、単一のリシンアミノ酸と結合している。
【0110】
ある実施態様では前記化学的部分は、1個から12個までのアミノ酸、好ましくは1個ないし8個のアミノ酸である。別の実施態様ではアミノ酸の数は、1個、2個、3個、4個、5個、6個又は7個である。別の実施態様では前記化学的部分の分子量は、約2,500kD未満であり、より好ましくは約1,000kD未満であり、最も好ましくは約500kD未満である。
【0111】
各々のアミノ酸は、アラニン(Ala又はA)、アルギニン(Arg又はR)、アスパラギン(Asn又はN)、アスパラギン酸(Asp又はD)、システイン(Cys又はC)、グリシン(Gly又はG)、グルタミン酸(Glu又はE)、グルタミン(Gln又はQ)、ヒスチジン(His又はH)、イソロイシン(Ile又はI)、ロイシン(Leu又はL)、リシン(Lys又はK)、メチオニン(Met又はM)、プロリン(Pro又はP)、フェニルアラニン(Phe又はF)、セリン(Ser又はS)、トリプトファン(Trp又はW)、トレオニン(Thr又はT)、チロシン(Tyr又はY)及びバリン(Val又はV)のような天然のアミノ酸のL−又はD−対掌体のいずれか、好ましくはL−対掌体の場合がある。好ましい実施態様では前記ペプチドは、天然に存在するアミノ酸のみ及び/又はL−アミノ酸のみを含む。各々のアミノ酸は、アミノヘキサン酸、ビフェニルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、ジエチルグリシン、ジプロピルグリシン、2,3−ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、ホモセリン、ホモチロシン、ナフチルアラニン、ノルロイシン、オルニチン、フェニルアラニン(4−フルオロ)、フェニルアラニン(2,3,4,5,6−ペンタフルオロ)、フェニルアラニン(4−ニトロ)、フェニルグリシン、ピペコリン酸、サルコシン、テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸及びtert−ロイシンのような非天然、非標準的又は合成のアミノ酸の場合がある。好ましくはアルキル側鎖を有する合成アミノ酸は、炭素数1−17個のアルキル基、好ましくは炭素数1−6個のアルキル基から選択される。ある実施態様では前記ペプチドは、例えばセリン及びトレオニンのような1個又は2個以上のアミノ酸アルコールを含む。別の実施態様では前記ペプチドは、例えばN−メチルアスパラギン酸のような1個又は2個以上のN−メチルアミノ酸を含む。
【0112】
ある実施態様では前記ペプチドは基礎となる短鎖アミノ酸配列として利用され、付加的なアミノ酸が末端又は側鎖に加えられる。別の実施態様では前記ペプチドは、1個又は2個以上のアミノ酸置換を有する場合がある。前記置換アミノ酸は、置換されるアミノ酸と構造、電荷又は極性が類似していることが好ましい。例えばイソロイシンはロイシンと類似しており、チロシンはフェニルアラニンと類似しており、セリンはトレオニンと類似しており、システインはメチオニンと類似しており、アラニンはバリンと類似しており、リシンはアルギニンと類似しており、アスパラギンはグルタミンと類似しており、アスパラギン酸はグルタミン酸と類似しており、ヒスチジンはプロリンと類似しており、グリシンはトリプトファンと類似している。
【0113】
前記ペプチドは、天然又は合成のアミノ酸のホモポリマー又はヘテロポリマーを含む場合がある。例えばアンフェタミンの前記ペプチドとの側鎖結合は、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、リシン、システイン、トレオニン、アスパラギン、アルギニン、チロシン又はグルタミンを含むホモポリマー又はヘテロポリマーの場合がある。
【0114】
代表的なペプチドは、Lysと、Serと、Pheと、Gly−Gly−Glyと、Leu−Serと、Leu−Gluと、Glu及びLeuのホモポリマーと、(Glu)n−Leu−Serのヘテロポリマーとを含む。好ましい実施態様では前記ペプチドは、Lys、Ser、Phe又はGly−Gly−Glyである。
【0115】
1つの実施態様では前記化学的部分は、前記アンフェタミンとの結合点以外に、未結合のカルボキシ及び/又はアミンの末端官能基及び/又は側鎖官能基を1個又は2個以上有する。前記化学的部分は、そのような未結合の状態か、そのエステル又は塩かの場合がある。
【0116】
前記化学的部分は、直接的又は間接的にリンカーを通じて前記アンフェタミンと共有結合している場合がある。共有結合は、エステル結合又は炭酸塩結合(carbonate bond)を含む場合がある。前記結合部位は典型的には、前記アンフェタミン上で利用可能な官能基により決定される。例えばペプチドは、N−末端か、C−末端か、アミノ酸の側鎖かを介してアンフェタミンと結合する場合がある。アンフェタミンを種々の代表的な化学的部分と結合するさらなる方法については、その各々はその全体が引用によって本明細書に取り込まれる米国特許出願第10/156,527号明細書と、PCT/US03/05524号明細書と、PCT/US03/05525号明細書とを参照せよ。
【0117】
上述のアンフェタミンプロドラッグ化合物は、実施例1及び図1で説明されるように合成される場合がある。好ましくはさらなる精製及び/又は結晶化のステップは、高純度の生成物を得るためには必ずしも必要ではない。1つの実施態様では前記アンフェタミンプロドラッグの純度は、少なくとも約95%であり、より好ましくは少なくとも約96%か、97%か、98%か、98.5%か、99%か、99.5%か、99.9%か、その範囲内の増分数かである。L−リシン−d−アンフェタミンの合成に係る既知の不純物は、Lys−Lys−d−アンフェタミン、Lys(Lys)−d−アンフェタミン、d−アンフェタミン、Lys(Boc)−d−アンフェタミン、Boc−Lys−d−アンフェタミン及びBoc−Lys(Boc)−d−アンフェタミンを含む。1つの実施態様ではいずれかの単一の不純物の存在量は約3%未満であり、より好ましくは約2%未満か、1%未満か、0.5%未満か、0.25%未満か、0.15%未満か、0.1%未満か、0.05%未満か、その範囲内の増分数未満かである。
【0118】
1つの実施態様では前記アンフェタミンプロドラッグ(上述の化学式で示したうち1種類の化合物)は、遊離のアンフェタミンを越える以下の利点の1個又は2個以上を示す場合がある。前記アンフェタミンプロドラッグは、例えば処方された用量より多いというように治療のための用量よりも高い用量が投与されたときに、薬理活性が低減されていることにより過剰投与を防止する場合がある。しかし前記アンフェタミンプロドラッグが治療のための用量で投与された場合に前記アンフェタミンプロドラッグは、例えばアデロールXR(登録商標)のような未結合のアンフェタミンを投与することにより得られるのと類似の薬理活性を有する場合がある。また前記アンフェタミンプロドラッグは、前記アンフェタミンを放出しようと試みる不正な化学者により利用されそうな条件下で安定性を示すことにより乱用を防止する場合がある。前記アンフェタミンプロドラッグは、特に不正使用においてしばしば利用される静脈内(シューティング)、鼻腔内(スノーティング)及び/又は吸入(スモーキング)の経路のような非経口径路を介して投与された場合に生体利用性が低減されていることにより乱用を防止する場合がある。したがって前記アンフェタミンプロドラッグは、アンフェタミン乱用に関連する陶酔効果も低減させる場合がある。したがって前記アンフェタミンプロドラッグは、例えば前記アンフェタミンプロドラッグの治療のための用量より高い用量を消費したり、又は、非経口の投与径路を介して消費したりするような製造者の指示に従わない方法で前記アンフェタミンプロドラッグが使用された場合に、乱用及び/又は過剰投与の可能性を防止及び/又は低減する場合がある。
【0119】
「減少した(decreased)」、「低減した(reduced)」、「減弱した(diminished)」又は「低下した(lowered)」のような語句の使用は、薬理活性においては少なくとも10%の変化を含み、乱用及び過剰投与の可能性の低減に対してはより大きな百分率での変化が好ましい。例えば前記変化は、25%か、35%か、45%か、55%か、65%か、75%か、85%か、95%か、96%か、97%か、98%か、99%か、10%より大きい他の増分数かよりも大きい場合もある。
【0120】
「類似の薬理活性」という語句の使用は、2種類の化合物が実質的に同じ、好ましくはお互いの約30%以内の、より好ましくは約25%以内か、20%以内か、10%以内か、5%以内か、2%以内か、1%以内か、30%未満の他の増分数以内かの、AUC、Cmax、Tmax、Cmin及び/又はt1/2パラメーターを有する曲線を示すことを意味する。
【0121】
好ましくは前記アンフェタミンプロドラッグは、未結合のアンフェタミンの少なくとも約60%のAUC(曲線下面積)、より好ましくは少なくとも約70%か、80%か、90%か、95%か、96%か、97%か、98%か、99%か、60%より大きい他の増分数かのAUCの経口生体利用性を示す。好ましくは前記アンフェタミンプロドラッグは、未結合のアンフェタミンの約70%未満のAUCの、より好ましくは約50%未満か、30%未満か、20%未満か、15%未満か、10%未満か、5%未満か、4%未満か、3%未満か、2%未満か、1%未満か、70%未満の他の増分数未満かのAUCの、例えば鼻腔内生体利用性のような非経口生体利用性を示す。特定の治療に対しては前記アンフェタミンプロドラッグが上述の経口及び非経口の生体利用性特性の両方を示すことが望ましい。例えば表61を参照せよ。
【0122】
前記アンフェタミンプロドラッグは、経口投与された該プロドラッグが前記アンフェタミンを放出するまでは不活性のままであることが好ましい。理論的な裏づけはないものの、前記化学的部分の結合が前記アンフェタミンと(例えばヒトドーパミン(DAT)及びノルエピネフリン(NET)のトランスポーター部位のような)その生物学的標的部位との間の結合を低減するため前記アンフェタミンプロドラッグは不活性であると信じられている。(Hoebel,B.G.,L.Hernandez,et al.,“Microdialysis studies of brain norepinephrine,serotonin,and dopamine release during ingestive behavior,Theoretical and clinical implications.”Ann KY Acad Sd 575:171−91(1989)を参照せよ。)前記化学的部分の結合は、1つには前記アンフェタミンプロドラッグが血液脳関門を通過することができないという理由で、アンフェタミンとDAT及び/又はNETとの間の結合を低減する場合がある。前記アンフェタミンプロドラッグは経口投与により活性化される、すなわち前記アンフェタミンは例えば胃、腸管又は血清中の酵素によるような加水分解により前記化学的部分から放出される。経口投与は活性化を促進するので、前記アンフェタミンプロドラッグが不法使用者により利用されることの多い非経口径路を介して投与される場合には、活性化は低減される。
【0123】
さらに前記アンフェタミンプロドラッグは、加水分解部位すなわち胃腸管での天然のゲーティング機構のため乱用及び/又は過剰投与に対する抵抗性があると信じられている。このゲーティング機構は前記アンフェタミンプロドラッグから治療量のアンフェタミンの放出を可能にするが、より多量のアンフェタミンの放出を制限すると考えられている。
【0124】
別の実施態様ではアンフェタミンプロドラッグの毒性は、未結合のアンフェタミンの毒性より実質的に低い。例えば好ましい実施態様では急性毒性は、未結合のアンフェタミンの経口投与よりも1倍か、2倍か、3倍か、4倍か、5倍か、6倍か、7倍か、8倍か、9倍か、10倍か、その範囲内の増分数かだけ致死性が低い。
【0125】
前記アンフェタミンプロドラッグは、治療のための用量より高い用量で投与された場合に前記アンフェタミンの毒性レベルを増加させない血清中放出曲線を提供することが好ましい。前記アンフェタミンプロドラッグは、未結合のアンフェタミンと比較してアンフェタミン吸収速度の低減、及び/又は、クリアランス速度の増加を示す場合がある。前記アンフェタミンプロドラッグは、定常状態血清放出曲線を示す場合もある。前記アンフェタミンプロドラッグは生体利用性を提供するが、Cmaxの急上昇か血清中濃度の増加かを防止することが好ましい。薬物動態パラメーターは以下の実施例、特に臨床薬物動態学的な実施例で説明される。1つの実施態様では前記アンフェタミンプロドラッグは、臨床的に測定されるL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の薬物動態活性と類似の薬理活性を提供する。例えば前記薬理学的パラメーター(AUC、Cmax、Tmax、Cmin及び/又はt1/2)は、好ましくは所与の値の80%ないし125%か、80%ないし120%か、85%ないし125%か、90%ないし110%か、その範囲内の増分数かの範囲内である。前記範囲は、例えば85%ないし105%のように対称的な場合があるが、必須ではないと考えられるべきである。小児医学的な研究については、L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩から放出されたd−アンフェタミンの前記薬物動態パラメーターは表72に列挙される。
【0126】
前記アンフェタミンプロドラッグは、遅延放出特性及び/又は持続放出特性を示す場合がある。遅延放出は薬理効果の迅速な開始を防止し、持続放出は例えば1日1回の投与計画のような特定の投与計画にとって望ましい特徴である。前記アンフェタミンプロドラッグは、独立して前記放出プロファイルを獲得する場合がある。代替的に前記アンフェタミンプロドラッグは、そのような放出プロファイルを増強又は達成するために医薬品として処方される場合がある。例えば即効型製品とともに処方することにより薬理効果の開始までの時間を短縮することが望ましい場合がある。
【0127】
したがって本発明は、アンフェタミンプロドラッグを提供、投与、処方又は消費することを含む方法も提供する。本発明は、アンフェタミンプロドラッグを含む医薬品組成物も提供する。かかる医薬品組成物の剤形は、前記望ましい放出プロファイルを任意に増強又は達成する場合がある。
【0128】
1つの実施態様では本発明は、アンフェタミンプロドラッグの治療上の有効量、すなわち疾病の症状を防止、改善及び/又は除去するために十分な量を投与することを含む、患者の治療方法を提供する。これらの方法は、例えばADD及びADHDのような注意欠陥障害その他の学習障害と、肥満症と、アルツハイマー病、健忘症並びにその他の記憶疾患(memory disorders)及び記憶障害(memory impairments)と、線維筋痛と、疲労及び慢性疲労と、うつ病と、てんかんと、強迫神経症(OCD)と、反抗的行為障害(ODD)と、不安神経症と、抵抗性うつ病(resistant depression)と、脳卒中リハビリテーションと、パーキンソン病と、気分障害と、統合失調症と、ハンチントン病と、例えばAIDS認知症及び前頭葉認知症のような認知症と、運動機能不全(movement disfunction)と、無気力症と、ピック病と、クロイツフェルト−ヤコブ病と、例えばナルコレプシー、カタプレキシー、睡眠麻痺及び入眠時幻覚のような睡眠障害と、例えば多発性硬化症、トゥレット症候群及びインポテンスのような脳損傷又は神経変性に関連する疾患と、ニコチン依存症及び禁断症状とを含むがこれらに限定されないアンフェタミン型の薬剤から利益を受ける場合があるいずれかの疾病を治療するために使用される場合がある。好ましい適応症は、ADD、ADHD、ナルコレプシー及び肥満症を含み、ADHDが最も好ましい。
【0129】
前記治療方法は、アンフェタミンプロドラッグを投与することに加え1種類又は2種類以上の治療薬を投与することをさらに含む併用療法を含む。前記活性成分は、単回投与形態で処方される場合か、一度に又は別々に複数回投与形態の中で処方される場合かがある。前記活性成分は、同時に、又は、いずれかの順序で順番に投与される場合がある。代表的な併用療法は表1に列挙される薬剤の投与を含む。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
「組成物」は、1種類又は2種類以上のアンフェタミンプロドラッグを含むいずれかの組成物を広く指す。前記組成物は、乾燥剤形か、水溶液か、無菌の組成物かを含む場合がある。本明細書で説明される化合物を含む組成物は、凍結乾燥された形態で保存される場合と、炭水化物のような安定剤に結合される場合とがある。使用の際前記組成物は、例えばNaClのような塩、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)のような洗剤及びその他の成分を含む水溶液中に入れられる場合がある。
【0133】
ある実施態様では前記アンフェタミンプロドラッグ自体が、持続放出プロファイルを示す。したがって本発明は、アンフェタミンプロドラッグのために持続放出プロファイルを示す医薬品組成物を提供する。
【0134】
別の実施態様では持続放出プロファイルは、前記医薬品組成物中に親水性ポリマーを含めることにより増強又は達成される。適切な親水性ポリマーは、アカシア、トラガカントガム、ローカストビーンガム、グァーガム及びカラヤガムのような天然か、部分合成又は完全合成かの親水性ガムと、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースのようなセルロース誘導体と、寒天、ペクチン、カラギーン及びアルギン酸塩のようなタンパク質性物質と、カルボキシポリメチレンのような親水性ポリマーと、ゼラチンと、カゼインと、ゼインと、ベントナイトと、ケイ酸アルミニウムマグネシウムと、多糖類と、加工デンプン誘導体と、当業者に知られている他の親水性ポリマーとを含むがこれらに限定されない。前記親水性ポリマーは、ゲルであって酸性水溶液中にゆっくりと溶解するため胃中で該ゲルからアンフェタミンプロドラッグを拡散させることができるゲルを形成することが好ましい。その後前記ゲルがより高いpHの腸液に到達したときに前記親水性ポリマーは、さらなる持続放出を可能にするために溶解し、調節された量となる。好ましい親水性ポリマーは、例えばメトセルE10M(Methocel E10M、登録商標、Dow Chemical Company,Midland,Michigan)のようなメトセルエーテル(Methocel ethers)のようなヒドロキシプロピルメチルセルロースである。当業者は、特定の放出プロファイルを得るために有用なビーズ構造及びコーティングのようなさまざまな構造を認識するだろう。米国特許公報第6,913,768号明細書を参照せよ。
【0135】
アンフェタミンプロドラッグに加えて、本発明の医薬品組成物は1種類又は2種類以上の医薬品添加物をさらに含む。医薬品添加物は、希釈剤及びバルク物質と、結合剤及び粘着剤と、滑剤と、流動促進剤と、可塑剤と、崩壊剤と、キャリアー溶媒と、緩衝剤と、着色料と、香料と、甘味料と、保存料と、安定剤と、当業者に知られているその他の医薬品添加物とを含むがこれらに限定されない広範な物質を含む。例えば好ましい実施態様では、前記医薬品組成物はステアリン酸マグネシウムを含む。別の好ましい実施態様では前記医薬品組成物は、(例えばアビセル(Avicel、登録商標)PH−102のような)微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを含む。例えば表62を参照せよ。
【0136】
希釈剤は、投与形態の容積を増加させ、該投与形態を取り扱いやすくする場合がある。代表的な希釈剤は、例えば錠剤及びカプセル剤のような固体投与形態のためのラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、デンプン及びリン酸カルシウムと、ソフトカプセル剤のためのオリーブオイル及びオレイン酸エチルと、例えば懸濁液及び乳化液のような液体投与形態のための水及び植物油と含むがこれらに限定されない。さらなる適切な希釈剤は、スクロース、デキストレート(dextrates)、デキストリン、マルトデキストリン、(例えばアビセル(登録商標)のような)微結晶性セルロース、超微粒セルロース(microfine cellulose)、粉末セルロース、(例えばスターチ1500(Starch 1500、登録商標)のような)アルファ化デンプン、リン酸カルシウム二水和物、(例えばエムコソイ(Emcosoy、登録商標)のような)大豆多糖類、ゼラチン、二酸化ケイ素、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ソルビトール、マンニトール、カオリン、(例えばユードラジット(Eudragit、登録商標)のような)ポリメタクリル酸塩、塩化カリウム、塩化ナトリウム及びタルク含むがこれらに限定されない。好ましい希釈剤は、(例えばアビセル(登録商標)PH−102のような)微結晶性セルロースである。重量百分率で示す希釈剤の量の好ましい範囲は、約40%ないし約90%か、約50%ないし約85%か、約55%ないし約80%か、約50%ないし約60%か、その範囲内の増分数かを含む。
【0137】
前記医薬品組成物が例えば錠剤のような固体投与形態に詰められる実施態様では結合剤は、前記成分がいっしょに保持されるのを助ける場合がある。結合剤は、スクロース、ラクトース及びグルコースのような糖類と、コーンシロップと、大豆多糖類、ゼラチンと、(例えばコリドン(Kollidon、登録商標)、プラスドン(Plasdone、登録商標)のような)ポビドンと、プルランと、微結晶性セルロース、(例えばメトセル(Methocel、登録商標)のような)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、(例えばクルーセル(Klucel、登録商標)のような)ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びメチルセルロースのようなセルロース誘導体と、アクリル酸及びメタクリル酸共重合体と、(例えばカルボポール(Carbopol、登録商標)のような)カルボマーと、ポリビニルポリピロリドン、ポリエチレングリコール(カルボワックス(Carbowax、登録商標))と、製薬用光沢剤と、アルギン酸及びアルギン酸ナトリウムのようなアルギネート(alginates)と、アカシア、グァーガム及びアラビアゴムのようなゴムと、トラガカントガムと、デキストリン及びマルトデキストリンと、乳清のような乳の誘導体と、アルファ化デンプン及びデンプン糊のようなデンプンと、硬化植物油と、ケイ酸アルミニウムマグネシウムとを含むがこれらに限定されない。
【0138】
錠剤投与形態については前記医薬品組成物は、打錠器(punch)からの圧力と染料(dye)とに供される。他の目的の中で滑剤は、前記打錠器及び染料の表面に前記組成物が固着するのを防止する助けとなる場合がある。滑剤は、コーティング剤投与形態のコーティングに使用される場合もある。滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、粉末ステアリン酸、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン(glyceryl palmitostearate)、ベヘン酸グリセリン、シリカ、ケイ酸マグネシウム、コロイド性二酸化ケイ素、二酸化チタン、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、硬化植物油、タルク、ポリエチレングリコール及び鉱物油を含むがこれらに限定されない。好ましい滑剤はステアリン酸マグネシウムである。重量百分率で示す滑剤の量は好ましくは約5%未満であり、より好ましくは約4%未満か、3%未満か、2%未満か、1.5%未満か、1%未満か、0.5%未満か、その範囲内の増分数未満かである。
【0139】
流動促進剤は、詰められていない固体投与形態の流動性を向上させ、投与の精度を向上させる場合がある。流動促進剤は、コロイド性二酸化ケイ素、乾式二酸化ケイ素、シリカゲル、タルク、三ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム又はカルシウム、粉末セルロース、デンプン及びリン酸三カルシウムを含むがこれらに限定されない。
【0140】
可塑剤は、フタル酸ジエチル、フタル酸ブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クロト酸(cronotic acid)、プロピレングリコール、ヒマシ油、トリアセチン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン及びソルビトールのような、しかしこれらに限定されない疎水性可塑剤及び親水性可塑剤の両方を含む。可塑剤は、ポリマーを含みかつソフトカプセル剤及びフィルムコート錠剤中に処方される医薬品組成物にとって特に有用である。1つの実施態様では前記可塑剤は、前記投与形態からの前記アンフェタミンプロドラッグの放出を促進する。
【0141】
崩壊剤は、医薬品組成物の溶解速度を増大させる場合がある。崩壊剤は、アルギン酸及びアルギン酸ナトリウムのようなアルギネート(alginates)と、カルボキシメチルセルロースカルシウムと、(例えばAc−Di−Sol(登録商標)、プリメロース(Primellose、登録商標)のような)カルボキシメチルセルロースナトリウムと、コロイド性二酸化ケイ素と、クロスカルメロースナトリウムと、(例えばコリドン(登録商標)、プラスドン(登録商標)のような)クロスポビドンと、ポリビニルポリピロリドン(プラゾン−XL(Plasone−XL、登録商標))と、グァーガムと、ケイ酸アルミニウムマグネシウムと、メチルセルロースと、微結晶性セルロースと、ポラクリリンカリウム(polacrilin potassium)と、粉末セルロースと、デンプンと、アルファ化デンプンと、(例えばエキスプロタブ(Explotab、登録商標)、プリモゲル(Primogel、登録商標)のような)グリコール酸デンプンナトリウムとを含むがこれらに限定されない。好ましい崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウム及び(例えばアビセル(登録商標)PH−102のような)微結晶性セルロースを含む。重量百分率で示す崩壊剤の量の好ましい範囲は、約1%ないし約10%か、約1%ないし約5%か、約2%ないし約3%か、その範囲内の増分数かを含む。
【0142】
前記医薬品組成物が液体投与形態として処方される実施態様では前記医薬品組成物は、1種類又は2種類以上の溶媒を含む場合がある。適切な溶媒は、水と、エタノール及びイソプロピルアルコールのようなアルコール類と、塩化メチレンと、植物油と、ポリエチレングリコールと、プロピレングリコールと、グリセリンとを含むがこれらに限定されない。
【0143】
前記医薬品組成物は、緩衝液を含む場合がある。緩衝液は、乳酸、クエン酸、酢酸、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムを含むがこれらに限定されない。
【0144】
いかなる医薬品として許容可能な着色料でも、前記医薬品組成物の外観を向上させる目的か、前記医薬品組成物を特定するのを助ける目的かで使用される場合がある。米国連邦規則集、タイトル21、パート74を参照せよ。代表的な着色料は、赤色104号(1)、黄色203号、青色1号、赤色40号、緑色3号、黄色5号及び可食性インクを含む。ゼラチンカプセル剤にとって好ましい色は、白色と、中位のオレンジ色と、明るい青色とである。
【0145】
香料は味を向上させ、チュアブル錠剤又は液体投与形態にとって特に有用な場合がある。香料は、マルトール、バニリン、エチルバニリン、メントール、クエン酸、フマル酸、エチルマルトール及び酒石酸を含むがこれらに限定されない。甘味料は、ソルビトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクロース、アスパルテーム、フルクトース、マンニトール及び転化糖を含むがこれらに限定されない。
【0146】
本発明の医薬品組成物は、保存性を向上させるために1種類又は2種類以上の保存料及び/又は安定剤を含む場合もある。これらは、アルコール、安息香酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール及びエチレンジアミン四酢酸を含むがこれらに限定されない。
【0147】
他の医薬品添加物は、コロイド粘土のようなゲル化剤と、トラガカントガム及びアルギン酸ナトリウムのような濃厚剤と、レシチン、ポリソルビン酸塩及びラウリル硫酸塩のような湿潤剤と、保湿剤と、ビタミンE、カロテン及びBHTのような酸化防止剤と、吸着剤と、発泡剤と、乳化剤、粘度増強剤と、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンソルビタン、ポロザルコール(poloxalkol)及び四級アンモニウム塩のような界面活性剤と、ラクトース、マンニトール、グルコース、フルクトース、キシロース、ガラクトース、スクロース、マルトース、キシリトール、ソルビトール並びにカリウム、ナトリウム及びマグネシウムの塩化物、硫酸塩及びリン酸塩のような他の種々の賦形剤とを含む。
【0148】
前記医薬品組成物は、例えば湿式造粒、乾式造粒、被包、直接圧縮、スラッギング(slugging)等のような医薬品製造に関わる当業者に知られているいずれかの方法に従い製造される場合がある。例えば医薬品組成物は、湿式顆粒を形成するために好ましくは水である一定分量の液体といっしょに前記アンフェタミンプロドラッグを1種類又は2種類以上の医薬品添加物と混合することにより調製される場合がある。前記湿式顆粒は、顆粒を取得するために乾燥される場合がある。得られる顆粒は、粉砕され、ふるいにかけられ、水不溶性ポリマーと付加的な親水性ポリマーとのようなさまざまな医薬品添加物と混合される場合がある。1つの実施態様ではアンフェタミンプロドラッグは、親水性ポリマーと一定分量の水と混合され、その後親水性ポリマーにより被包されたアンフェタミンプロドラッグの顆粒を取得するために乾燥される。
【0149】
造粒後前記医薬品組成物は、例えばゼラチンカプセル中に被包されることが好ましい。前記ゼラチンカプセルは、例えばコーシャーゼラチン(kosher gelatin)と、二酸化チタンと、任意の着色料とを含む場合がある。代替的に前記医薬品組成物は錠剤として成形される、例えば、圧縮され、かつ胃液中で溶解又は分散する保護コーティング剤で任意にコーティングされる場合がある。
【0150】
本発明の医薬品組成物は、さまざまな投与形態により投与される場合がある。当業者に知られているいずれかの生物学的に許容可能な投与形態と、それらの組合せとが意図される。好ましい投与形態の例は、制限なく、チュアブル錠剤、フィルムコート錠剤、即溶性錠剤、発泡性錠剤、多層錠剤及び二層錠剤を含む錠剤と、カプレット剤と、再構成可能な粉末剤を含む粉末剤と、顆粒剤と、分散性顆粒剤と、粒子剤と、微小粒子剤と、ソフト及びハードゼラチンカプセル剤を含むカプセル剤と、トローチ剤と、チュアブルトローチ剤と、カプセル剤(cachets)と、ビーズ剤と、液体剤と、溶液剤と、懸濁液剤と、乳化液剤と、エリキシル剤と、シロップ剤とを含む。
【0151】
前記医薬品組成物は経口投与されることが好ましい。経口投与は、アンフェタミンの最大限の放出を可能とし、アンフェタミンの持続放出を提供し、乱用抵抗性を維持する。前記アンフェタミンプロドラッグは、未結合のアンフェタミンの投与と比較してより長期間にわたり前記アンフェタミンを放出することが好ましい。
【0152】
経口投与形態は、カプセル剤、カプレット剤又は錠剤のような分離した単位として提供される場合がある。好ましい実施態様では本発明は、治療上の等価量の未結合のアンフェタミンを含む固体経口投与形態と比較してよりサイズが小さい、アンフェタミンプロドラッグを含む固体経口投与形態を提供する。1つの実施態様では前記経口投与形態は、サイズ2か、サイズ3か、(例えばサイズ4のような)より小さいサイズかのゼラチンカプセル剤を含む。より小さいサイズのアンフェタミンプロドラッグの投与形態は、飲み込みやすさを増強する。
【0153】
ソフトゲル剤又はソフトゼラチンカプセル剤は、例えば高粘度の混合物を形成させるために(例えば植物油のような)適当な薬物送達手段(vehicle)中に前記剤形を分散させることにより調製される場合がある。この混合物はその後、ゼラチンフィルムで被包される。こうして形成された工業的単位は、その後一定重量まで乾燥される。
【0154】
チュアブル錠剤は、相対的に柔らかく、賦香された、噛まれることを意図される錠剤投与形態を形成するために設計される賦形剤と前記アンフェタミンプロドラッグを混合することにより調製される場合がある。(例えば直接圧縮、造粒及びスラッギングのような)従来の錠剤製造用の機械及び方法が利用される場合がある。
【0155】
フィルムコート錠剤は、錠剤上に接触しているフィルム層を沈着させるために回転鍋式コーティング法(rotating pan coating methods)及び空気サスペンション法のような技術を使用して錠剤をコーティングすることにより調製される場合がある。
【0156】
圧縮錠剤は、前記アンフェタミンプロドラッグを、結合特性を付与する賦形剤と混合することにより調製される場合がある。前記混合物は直接圧縮される場合か、造粒された後に圧縮される場合かがある。
【0157】
代替的に本発明の医薬品組成物は、水性液体又は非水液体中における溶液又は懸濁液のような液体投与形態に剤形される場合がある。前記液体投与形態は、水中油型液体乳化液又は油中水型液体乳化液のような乳化液の場合がある。前記油は、精製及び滅菌した液体を用意された経腸製剤に添加することにより投与される場合があり、その後該経腸製剤は飲み込むことができない患者の補給チューブ中に配置される。
【0158】
希釈剤、分散剤及び/又は界面活性剤を含む微粉末又は微細顆粒は、ドラフト(draught)か、水又はシロップか、乾燥状態のカプセル又は小袋か、懸濁剤が含まれる場合がある非水懸濁液か、水又はシロップ中の懸濁液かで経口投与用に提供される場合がある。経口投与用の液体分散液は、シロップ、乳化液又は懸濁液の場合がある。前記シロップ、乳化液又は懸濁液は、例えば天然ゴムと、寒天と、アルギン酸ナトリウムと、ペクチンと、メチルセルロースと、カルボキシメチルセルロースと、サッカロースと、グリセロール、マンニトール、ソルビトール及びポリビニルアルコールと併用するサッカロースとのようなキャリアーを含む場合がある。
【0159】
ヒトに対する前記アンフェタミンプロドラッグの用量範囲は、前記患者の年齢、体重及び症状を含む因子の数に依存する。分離した単位で提供される錠剤と他の投与形態とは、1種類又は2種類以上のアンフェタミンプロドラッグの1日量か、その適当な画分かを含む場合がある。前記投与形態は、約2.5mgないし約500mgか、約10mgないし約250mgか、約10mgないし約100mgか、約25mgないし約75mgか、その範囲内の増分数かの用量の1種類又は2種類以上の前記アンフェタミンプロドラッグを含む場合がある。好ましい実施態様では前記投与形態は、30mg、50mg又は70mgのアンフェタミンプロドラッグを含む。
【0160】
前記投与形態は、即時放出、長期放出(extended release)、脈状放出(pulse release)、可変放出(variable release)、制御放出、時限放出(timed release)、持続放出(sustained release)、遅延放出及び長時間作用型を含むがこれらに限定されないいずれかの既知の放出プロファイルか、それらのいずれかの組合せかを利用する場合がある。
【0161】
本発明の医薬品組成物は、24時間に1回又は2回以上、部分的な量すなわち分割量で投与される場合がある。分割量か、1倍用量か、2倍用量か、その他の倍数の用量かは24時間に、同時に、又は、異なる時刻に、摂取される場合がある。前記用量はお互いに関して、又は、異なる投与時の個々の成分に関して、不均一な用量の場合がある。1倍用量が1日1回投与されることが好ましい。前記用量は、食後又は食前に投与される場合がある。
【0162】
前記医薬品組成物の投与単位は、例えば単位用量、筒(rolls)、バルク瓶、ブリスター包装等として市場の要求に従い包装される場合がある。例えばブリスター包装のような医薬品の包装はさらに、前記医薬品組成物の正体、(例えばADHDのような)所定の適応症、及び/又は、(例えば1日当たりの回数、1週間当たりの日数等のような)投与期間を個人が特定することを可能にする取扱説明書(indicia)を含むか、添付されるかの場合がある。前記ブリスター包装か他の医薬品の包装かは、併用療法のための別の医薬品製品を含む場合もある。
【0163】
本発明の組成物の薬理活性は、当業者に知られている標準的な薬理学モデルを使用して実証される場合があることが理解される。さらに本発明の組成物は、部位特異的な送達のための適切なポリマーマトリックス又は膜中に組み込まれる場合又は被包される場合があることか、部位特異的送達に影響を及ぼす能力がある特異的標的剤といっしょに機能させられる場合があることかが理解される。これらの技術は、他の薬剤送達技術と同様に当業者に周知である。
【0164】
以上の実施態様のいずれかの特徴は、前記実施態様の他のいずれかの特徴と組み合わせて使用される場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0165】
本発明のより完全な理解を助けるために、以下に実施例が提供される。しかし本発明の範囲は、例示のみを目的とするこれらの実施例で開示される特定の実施態様には限定されない。
【0166】
以下の略語は、実施例中で、また本明細書を通じて使用される。
【0167】
Lys−Amp=L−リシン−d−アンフェタミン、リシン−アンフェタミン、K−Amp、K−アンフェタミン若しくは2,6−ジアミノヘキサン酸−(1−メチル−2−フェニルエチル)−アミド又はリスデキサンフェタミン。
【0168】
Phe−Amp=フェニルアラニン−アンフェタミン、F−Amp又は2−アミノ−3−フェニルプロパン酸−(1−メチル−2−フェニルエチル)−アミド。
【0169】
Ser−Amp=セリン−アンフェタミン、S−Amp又は2−アミノ−3−ヒドロキシプロパン酸−(1−メチル−2−フェニルエチル)−アミド。
【0170】
Gly3−Amp=GGG−アンフェタミン、GGG−Amp又は2−アミノ−N−({[(1−メチル−2−フェニル−エチルカルボミル)−メチル]−カルボミル}−メチル)−アセタミド。
【0171】
BOC=t−ブチルオキシカルボニル。
【0172】
CMC=カルボキシメチルセルロース。
【0173】
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン。
【0174】
mp=融点。
【0175】
NMR=核磁気共鳴。
【0176】
OSu=ヒドロキシサクシニミドエステル。
【0177】
本実施例を通じて他に特に説明がなければ用量は、d−アンフェタミン塩基の量として説明される。代表的な換算表が表2に提供される。
【0178】
【表3】
【実施例1】
【0179】
ペプチドアンフェタミンコンジュゲートの一般的合成
ペプチドコンジュゲートは、図1で説明される一般的な方法により合成された。反復アプローチは、単一アミノ酸コンジュゲートを合成及び試験するステップと、その後ジペプチド及びトリペプチドコンジュゲート等を産生するために1回で1アミノ酸ずつ前記ペプチドを延長させるステップとにより、好ましいコンジュゲートを特定するために使用される場合がある。単一アミノ酸プロドラッグ親候補物質は、多かれ少なかれそのジペプチド又はトリペプチドのような子孫候補物質よりも望ましい特性を示す場合がある。前記反復アプローチは、ペプチド長が生体利用性に影響するかどうかを迅速に示唆する場合がある。
【0180】
単一アミノ酸アンフェタミンコンジュゲートの一般的合成
1,4−ジオキサン(30mL)中の保護されたアミノ酸サクシニミジルエステル(2.0当量)の溶液に、d−アンフェタミン硫酸塩(1.0当量)及びNMM(4.0当量)が添加された。得られた混合物は、20°Cで20時間攪拌された。水(10mL)が添加され、前記溶液は減圧下で溶媒を除去する前に10分間攪拌された。前記粗生成物はEtOAc(100mL)に溶解され、2%AcOHaq(3x100mL)、飽和NaHCO3溶液(2x50mL)及びブライン(1x100mL)で洗浄された。保護されたアミノ酸アンフェタミンコンジュゲートを提供するために前記有機抽出物は、MgSO4で乾燥され、濾過され、蒸発乾固された。この中間体は、1,4−ジオキサン(20mL)中の4N塩酸を添加することにより直接脱保護された。前記溶液は25°Cで20時間攪拌された。対応するアミノ酸アンフェタミン塩酸塩コンジュゲートを提供するために、前記溶媒が蒸発させられ生成物が真空中で乾燥された。代表的な単一アミノ酸コンジュゲートの合成は図2−6に示される。
【0181】
ジペプチドアンフェタミンコンジュゲートの一般的合成
1,4−ジオキサン中の保護されたジペプチドサクシニミジルエステル(1.0当量)の溶液に、アンフェタミン硫酸塩(2.0当量)及びNMM(4.0当量)が添加された。得られた混合物は、25°Cで20時間攪拌された。溶媒は減圧下で除去された。飽和NaHCO3溶液(20mL)は添加され、前記懸濁液は30分間攪拌された。IPAC(100mL)は添加され、前記有機層は2%AcOHaq(3x100mL)及びブライン(2x100mL)で洗浄された。保護されたジペプチドアンフェタミンコンジュゲートを得るために前記有機抽出物はNa2SO4で乾燥され、前記溶媒は蒸発乾固された。前記保護されたジペプチドコンジュゲートは1,4−ジオキサン(20mL)中の4N塩酸を添加することにより直接脱保護され、前記溶液は25°Cで20時間攪拌された。対応するジペプチドアンフェタミン塩酸塩コンジュゲートを提供するために、前記溶媒が蒸発させられ生成物が真空中で乾燥された。
【0182】
トリペプチドアンフェタミンコンジュゲートの一般的合成
アミノ酸コンジュゲートは、上述の一般的な方法に従って合成及び脱保護された。ジオキサン(20mL)中のアミノ酸アンフェタミン塩酸塩(1.0当量)の溶液に、NMM(5.0当量)と保護されたジペプチドコハク酸塩(1.05当量)とが添加された。前記溶液は25°Cで20時間攪拌された。溶媒は減圧下で除去された。飽和NaHCO3溶液(20mL)は添加され、前記懸濁液は30分間攪拌された。IPAC(100mL)は添加され、前記有機層は2%AcOHaq(3x100mL)及びブライン(2x100mL)で洗浄された。保護されたトリペプチドアンフェタミンを得るために前記有機抽出物はNa2SO4で乾燥され、前記溶媒は蒸発乾固された。脱保護は、1,4−ジオキサン(20mL)中の4N塩酸を添加することにより直接実施された。対応するトリペプチドアンフェタミン塩酸塩コンジュゲートを提供するために、前記混合物が25°Cで20時間攪拌され、前記溶媒が蒸発させられ生成物が真空中で乾燥された。
【0183】
前記塩酸塩コンジュゲートはさらなる精製を必要としないが、脱保護された塩酸塩の多くは吸湿性であり、分析とその後のin vivo試験との間には特別な取り扱いを必要とする。
【実施例2】
【0184】
L−リシン−d−アンフェタミンの合成
L−リシン−d−アンフェタミンは、以下の方法により合成された。
【0185】
a.HCl塩の調製(図3を参照せよ。)
i.結合
【0186】
【表4】
【0187】
不活性雰囲気下でジオキサン(100mL)中のBoc−Lys(Boc)−OSu(15.58g、35.13ミリモル)の溶液に、遊離のd−アンフェタミン塩基(4.75g、35.13ミリモル)及びDIPEA(0.9g、1.22mL、7.03ミリモル)が添加された。得られた混合物は、室温で終夜攪拌された。溶媒と過剰の塩基とは、その後減圧蒸発を使用して除去された。粗生成物は酢酸エチルに溶解され、(シリカが24cmまで充填された、幅が7cmの)フラッシュカラムに装荷(loaded on)され、酢酸エチルで溶出された。白色固体を得るために、生成物が単離され、溶媒が回転蒸発により除去され、精製後の保護されたアミドが高真空処理により乾燥させられた。1H NMR(DMSO−d6) δ1.02−1.11(m、2H、Lys γ−CH2)、δ1.04(d、3H、Amp α−CH3)、δ1.22−1.43(m、4H、Lys−β及びδ−CH2)、δ1.37(18H、Boc、6x CH3)、δ2.60−2.72(2H、Amp CH2)、δ3.75−3.83(m、1H、Lys α−H)、δ3.9−4.1(m、1H、Amp α−H)、δ6.54−6.61(d、1H、アミドNH)、δ6.7−6.77(m、1H、アミドNH)、δ7.12−7.29(m、5H、ArH)、δ7.65−7.71(m、1、アミドNH);mp=86−88°C。
【0188】
ii.脱保護
【0189】
【表5】
【0190】
前記保護されたアミドは、50mLの無水ジオキサンに溶解され、50mL(200ミリモル)の4M HCl/ジオキサンが添加しながら攪拌され、終夜室温で攪拌された。その後粘性油を提供するために前記溶媒は回転蒸発により除去された。100mLのMeOHの添加後回転蒸発を行った結果、金色の固形物が生じ、該固形物は高真空下の室温での貯蔵によりさらに乾燥された。1H NMR(DMSO−d6) δ0.86−1.16(m、2H、Lys γ−CH2)、δ1.1(d、3H、Amp α−CH3)、δ1.40−1.56(m、4H、Lys−β及びδ−CH2)、δ2.54−2.78(m、2H、Amp CH2、2H、Lys ε−CH2)、3.63−3.74(m、1H、Lys α−H)、δ4.00−4.08(m、1H、Amp α−H)、δ7.12−7.31(m、5H、Amp ArH)、δ8.13−8.33(d、3H、Lysアミン)、δ8.70−8.78(d、1H、アミドNH);mp=120−122°C。
【0191】
b.メシル酸塩の調製(図2を参照せよ。)
【0192】
同様に前記ペプチドコンジュゲートのメシル酸塩は、以下でさらに詳細に説明されるように脱保護ステップにおいてメタンスルホン酸を使用することにより調製される場合がある。
【0193】
i.結合
【0194】
72−L丸底反応器は、自動撹拌機(mechanical stirrer)と、デジタル式熱電対と、注入漏斗とが装備され、窒素でパージされた。前記容器は、Boc−Lys(Boc)−OSu(3.8kg、8.568モル、1.0当量)及び1,4−ジオキサン(20.4L)を充填され、得られた混濁液は、20±5°Cで10分間攪拌された。前記混合物にN−メチルモルホリン(950g、9.39モル、1.09当量)が1分間かけて添加され、前記混合物は10分間攪拌された。その後氷水浴で前記反応器の外部から冷却しながら、わずかに混濁した前記反応混合物に1,4−ジオキサン(2.9L)中のデキストロ−アンフェタミン(1.753kg、12.96モル、1.51当量)が溶液は30分間かけて添加された。前記添加作業中、内部温度は25°C未満に保たれた。前記添加終了時に、濃厚な白色沈殿が出現した。注入漏斗を洗浄しながら1,4−ジオキサン(2.9L)を反応液中に注入し、前記反応混合物は22±3°Cで攪拌された。添加完了30分後のTLCによる監視は、Boc−Lys(Boc)−Osuが残存しないことを示し、前記反応は脱イオン水(DI H2O、10L)で停止された。高密度の白色固体を提供するために、前記混合物は常温で1時間攪拌され、その後減圧下で濃縮された。
【0195】
抽出のために、脱イオン水(61L)中のNaCl(15kg)及び氷酢酸(2kg)という酢酸/塩溶液と、脱イオン水(30L)中のNaHCO3(1.5kg)という重炭酸塩溶液との2種類の溶液が調製された。
【0196】
前記固体は、IPAC(38L)及び酢酸/塩溶液(39kg)中に再溶解され、150Lの反応器中に移された。各層は10分間混合され、その後分離された。有機層がドレイン排出され、別の酢酸/塩溶液(39kg)で洗浄され、その後重炭酸塩溶液(31.5kg)で洗浄された。全ての相分離は、5分以内に起こった。その後前記有機溶液にシリカゲル(3.8kg;シリカゲル60)が添加された。得られたスラリーは45分間攪拌され、その後濾紙で濾過された。濾紙上の固体は、IPAC(5x7.6L)で洗浄された。前記濾液及び洗浄液は、TLCにより分析され、全てが生成物を含むことが決定された。白色固体として粗生成物を提供するために前記濾液及び洗浄液が混合され、減圧下で濃縮された。
【0197】
ii.脱保護
【0198】
45−Lカーボイは、di−Boc−Lys−Amp(3.63kg、7.829モル)及び1,4−ジオキサン(30.8L、8.5倍容)を添加され、前記混合物は窒素下で30分間迅速に攪拌された。得られた溶液は濾過され、濾紙上の固体は1,4−ジオキサン(2x1.8L)で洗浄された。
【0199】
前記濾液はその後、自動撹拌機と、デジタル式熱電対と、窒素の注入口及び排気口と、5Lの注入漏斗とが装備された72−L丸底フラスコに移された。前記反応混合物の温度は、水浴で21±3°Cに調節された。透明な淡黄色の溶液に、メタンスルホン酸(3.762kg、39.15モル、5当量)が、内部温度を21±3°Cに維持しながら1時間かけて添加された。添加完了約1時間後白色沈殿が出現し始めた。前記混合物が常温で20.5時間攪拌された後、HPLCによる監視が全ての開始物質の消失を示した。前記混合物は濾紙で濾過され、前記反応容器は1,4−ジオキサン(3.6L、1倍容)で洗浄された。濾紙上の固体はジオキサン(3x3.6L)で洗浄され、ラバーダムで1時間乾燥された。前記物質はその後乾燥トレイへ移され、真空オーブンにおいて55°Cで〜90時間乾燥された。この操作は、Lys−Ampジメシル酸塩(3.275kg、収率91.8%;>99%(AUC))を白色固体として提供した。
【実施例3】
【0200】
Ser−Ampの合成
Ser−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−Ser(O−tBu)−OSuであることと、脱保護がHClの代わりにトリフルオロ酢酸の溶液を使用して行われることとを除いて類似の方法(図4を参照せよ。)により合成された。
【実施例4】
【0201】
Phe−Ampの合成
Phe−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−Phe−OSuであることを除いて類似の方法(図5を参照せよ。)により合成された。
【0202】
Phe−Amp塩酸塩:吸湿性;1Η NMR(400MHZ、DMSO−d6):δ8.82(d、J=8.0Hz、1H)、8.34(bs、3H)、7.29−7.11(m、10H)、3.99(m、2H)、2.99(dd、J=13.6、6.2Hz、1H)、2.88(dd、J=13.6、7.2Hz、1H)、2.64(dd、J=13.2、7.6Hz、1H)、2.53(m、1H)、1.07(d、J=6.4Hz、3H);13C NMR(100MHz、DMSO−d6):δ167.31、139.27、135.49、130.05、129.66、128.78、128.61、127.40、126.60、53.83、47.04、42.15、37.27、20.54;HRMS:(ESI)for C18H23N2O(M+H)+:calcd、283.1810:found、283.1806。
【実施例5】
【0203】
Gly3−Ampの合成
Gly3−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−GGG−OSuであることを除いて類似の方法(図6を参照せよ。)により合成された。
【0204】
Gly3−Amp塩酸塩:mp212−214°C;1H NMR(400MHz、DMSO−d6) δ7.28(m、5H)、3.96(m、1H)、3.86(m、2H)、3.66(m、4H)、2.76(m、1H)、2.75(m、1H)、1.02(d、J=6.8Hz、3H);13C NMR(100MHz、DMSO−d6) δ168.91、168.14、166.85、139.45、129.60、128.60、126.48、46.60、42.27、20.30.HRMS:(ESI)for C15H22N4O3Na(M+Na)+:calcd、329.1590:found、329.1590。
【実施例6】
【0205】
d−アンフェタミン硫酸塩と比較したL−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩の薬物動態(ELISA分析)
雄のスプラーグドーリーラットが、自由に水を供給され、終夜絶食させられ、L−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩を強制経口投与された。全研究において投与量は、等価量のd−アンフェタミン塩基を含んでいた。d−アンフェタミンの血漿中濃度は、ELISA(Amphetamine Ultra,109319,Neogen,Corporation,Lexington,KY)により測定された。本アッセイ方法は、主要なd−アンフェタミン代謝生成物(パラ−ヒドロキシ−d−アンフェタミン)に対して最小限(0.6%)の反応性しか有さずd−アンフェタミンに特異的である。L−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩も、前記ELISAにおいて本質的に反応性を有しない(<1%)ことが決定された。
【0206】
d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩の平均(n=4)血漿中濃度曲線が図7に示される。長期放出は、L−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩が投与された4匹の動物全てにおいて観察され、d−アンフェタミン硫酸塩が投与された動物と比較してCmaxは実質的に減少した。d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩についての動物個体のd−アンフェタミンの血漿中濃度は表3に示される。d−アンフェタミンの平均血漿中濃度は表4に示される。L−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩についてのピーク濃度到達時間は、d−アンフェタミンについてのピーク濃度到達時間と同様であった。d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩の経口投与についての薬物動態パラメーターは表5に要約される。
【0207】
【表6】
【0208】
【表7】
【0209】
【表8】
【0210】
本実施例は、活性薬剤のアンフェタミンとリシンがコンジュゲートを形成すると、生体利用性はアンフェタミンとほぼ等しく維持されるがアンフェタミンのピークレベルは減少することを示す。L−リシン−d−アンフェタミンから放出されるアンフェタミンの生体利用性は、等価量のアンフェタミン硫酸塩の生体利用性と同様である。したがってL−リシン−d−アンフェタミンは、その治療価値を維持する。L−リシン−d−アンフェタミンからのアンフェタミンの漸増的放出と、ピークレベルの減少とは、過剰投与の可能性を低減する。
【実施例7】
【0211】
さまざまな用量でのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の経口生体利用性
a.ヒトの治療用の用量と近似する用量(1.5、3及び6mg/kg)
【0212】
1.5、3及び6mg/kgを経口投与されたラットについてのd−アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミンの平均(n=4)血漿中濃度曲線は、それぞれ図8、図9及び図10に示される。長期放出はL−リシン−d−アンフェタミンを投与された動物についての3種類の治療用の用量全てにおいて観察された。1.5、3及び6mg/kgに対する平均血漿中濃度は、各々表6、表7及び表8に示される。さまざまな用量でのd−アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミンの経口投与に対する薬物動態パラメーターは表9に要約される。
【0213】
【表9】
【0214】
【表10】
【0215】
【表11】
【0216】
【表12】
【0217】
b.用量の増加(12、30及び60mg/kg)
d−アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミンの平均(n=4)血漿中濃度曲線は、12、30及び60mg/kgを経口投与されたラットについて示される。これらの高用量でL−リシン−d−アンフェタミンの生体利用性は、d−アンフェタミンと比較して顕著に減少した。
【0218】
【表13】
【0219】
【表14】
【0220】
【表15】
【0221】
【表16】
【実施例8】
【0222】
超薬理学的用量(suprapharmacological dose)と比較してヒトの治療用の用量の範囲を近似する、さまざまな用量でのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の経口生体利用性
雄のスプラーグドーリーラットが、自由に水を供給され、終夜絶食させられ、1.5、3、6、12及び60mg/kgのアンフェタミン硫酸塩か、等価量のd−アンフェタミンを含むL−リシン−d−アンフェタミンかを強制経口投与された。d−アンフェタミンの濃度はELISAにより測定された。
【0223】
活性薬剤のd−アンフェタミンとリシンがコンジュゲートを形成するとき、投与後30分でのd−アンフェタミンのレベルは、1.5ないし12mg/kgの用量範囲にわたり約50%減少することが証明されている。しかし超薬理学的用量(60mg/kg)が与えられるときL−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンのレベルは、d−アンフェタミン硫酸塩に対して観察されるd−アンフェタミンのレベルの8%に到達するにすぎない(表14、表15及び図15を参照せよ。)。高用量での経口生体利用性の実質的な減少は、L−リシン−d−アンフェタミンの乱用の可能性を著しく低減する。
【0224】
【表17】
【0225】
【表18】
【実施例9】
【0226】
高用量でのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の経口生体利用性の減少
図16に示される付加的な経口薬物動態研究は、60mg/kg用量での血中d−アンフェタミンレベルの8時間にわたる経時変化を示す。d−アンフェタミンの場合には血中レベルは迅速に非常に高いレベルに到達し、12匹の動物のうち8匹は死んだか、又は、毒性の急性症状のために屠殺された。これに対しL−リシン−d−アンフェタミンを投与された動物の血中レベル(表16及び表17)は5時間までピークに到達せず、アンフェタミンを投与された動物の血中レベルのごく一部に到達するにすぎなかった。(注記:d−アンフェタミンについての3時間より後の正当なデータは、動物の死及び屠殺のために決定できなかった。)
【0227】
【表19】
【0228】
【表20】
【実施例10】
【0229】
(無傷の、又は、粉砕された)長期放出製剤か、L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩かの投与後のd−アンフェタミンの経口生体利用性
d−アンフェタミン硫酸塩の長期放出製剤(デキセドリンスパンスール(登録商標)カプセル、グラクソスミスクライン)は、無傷のカプセルか、粉砕されたカプセルかとしてラットに経口投与され、等価量のd−アンフェタミン塩基を含むL−リシン−d−アンフェタミンの投与と比較された(図20)。前記粉砕されたカプセルは、無傷のカプセルと比較してCmax及びAUCinfの各々84%及び13%の増加を示した(表18及び表19)。対照的にL−リシン−d−アンフェタミンの投与後のd−アンフェタミンのCmax及びAUCinfは、無傷のカプセルのCmax及びAUCinfと同程度であり、長期放出が前記化合物自体に固有のものであることと、単純な操作によって回避され得ないこととを示した。
【0230】
【表21】
【0231】
【表22】
【0232】
本実施例は、従来のd−アンフェタミンの制御放出製剤に対する本発明の利点を例示する。
【実施例11】
【0233】
L−リシン−d−アンフェタミン対アンフェタミンの鼻腔内生体利用性
a.L−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩の鼻腔内(IN)生体利用性
雄のスプラーグドーリーラットが、3mg/kgのアンフェタミン硫酸塩か、等価量のd−アンフェタミンを含むL−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩かを鼻腔内投与により投与された。L−リシン−d−アンフェタミンはIN投与によっては、血液循環中へd−アンフェタミンをほとんど放出しなかった。アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミンでのアンフェタミンの平均(n=4)血漿中濃度曲線は図17に示される。L−リシン−d−アンフェタミンのIN投与に対する薬物動態パラメーターは表20に要約される。
【0234】
【表23】
【0235】
b.L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の鼻腔内生体利用性
パートaのプロセスは、L−リシン−d−アンフェタミンメシル酸塩を使用して繰り返された。
【0236】
【表24】
【0237】
本実施例は、活性薬剤のd−アンフェタミンとリシンがコンジュゲートを形成するとき鼻腔内径路による生体利用性は実質的に減少し、それにより本径路により前記薬剤を乱用する可能性が減少することを例示する。
【実施例12】
【0238】
アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の静脈内生体利用性
雄のスプラーグドーリーラットが、1.5mg/kgのd−アンフェタミンか、等価量のアンフェタミンを含むL−リシン−d−アンフェタミンかを尾静脈注射により投与された。IN投与で観察されたように前記コンジュゲートは、有意な量のd−アンフェタミンを放出しなかった。アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミンでの平均(n=4)血漿中濃度曲線は図19に示される。L−リシン−d−アンフェタミンのIV投与に対する薬物動態パラメーターは表22に要約される。
【0239】
【表25】
【0240】
本実施例は、活性薬剤のアンフェタミンとリシンがコンジュゲートを形成するとき静脈内径路によるアンフェタミンの生体利用性は実質的に減少し、それにより本径路による前記薬剤を乱用する可能性は減少することを例示する。
【実施例13】
【0241】
段階的に増加する用量でのd−アンフェタミンと比較したL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の経口生体利用性
ラットでの経口投与後吸収されたインタクトなL−リシン−d−アンフェタミンの画分は、1.5mg/kgから12mg/kgまでの段階的に増加する用量に比例して非線形に増加した(図21−25)。用量12mg/kgで吸収された画分は24.6%に増加したが、用量1.5mg/kgで吸収された画分は2.6%のみであった。吸収された画分は、60mg/kgの高用量では9.3%に低下した。Tmaxは0.25時間から3時間までの範囲であり、ピーク濃度は、d−アンフェタミンについてのピーク濃度よりもL−リシン−d−アンフェタミンについてのピーク濃度の方がより早く訪れた。L−リシン−d−アンフェタミンは、最も低い用量では8時間までにほぼ検出不可能な濃度となり、d−アンフェタミンよりも迅速に消失した。
【0242】
投与された各々の薬剤由来のd−アンフェタミンの生体利用性(AUC)は、低い用量ではほぼ等価であった。L−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンについてのTmaxは、d−アンフェタミン硫酸塩由来のd−アンフェタミンについてのTmaxが投与後の0.5時間ないし1.5時間であるのに対して、1.5時間から5時間までの範囲である。Tmaxの差異は、高い用量ほど大きかった。L−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンのCmaxは、治療用のヒト等価用量(HEDs)を近似する用量である、1.5mg/kgないし6mg/kgの用量で投与されたd−アンフェタミン硫酸塩由来のd−アンフェタミンのCmaxと比較してほぼ半分まで減少した。したがって治療用の用量ではL−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンの薬物動態は、持続放出製剤のそれと類似していた。
【0243】
HEDsは、動物モデルの体表面積に従う60kgのヒト個体についての等価用量と定義される。ラットについての調整係数は6.2である。1.5mg/kgのd−アンフェタミンというラットでの用量に対するHEDは例えば、塩の含有量に対して調節されたときに14.52/0.7284=19.9mgのd−アンフェタミン硫酸塩に等しい1.5/6.2x60=14.52mgのd−アンフェタミン塩基に等しい。
【0244】
【表26】
【0245】
超薬理学的用量(12mg/kg及び60mg/kg)ではCmaxは、d−アンフェタミン硫酸塩と比較して各々73%及び84%減少した。これらの高用量ではL−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンについてのAUCsは、d−アンフェタミン硫酸塩由来のd−アンフェタミンについてのAUCsと比較して実質的に減少し、最高の用量(60mg/kg)ではAUCinfが76%減少した。60mg/kgではd−アンフェタミン硫酸塩由来のd−アンフェタミンのレベルは迅速に急上昇した。実験的な経時変化は、人道的な安楽死を必要とする極度の活性過剰のために完成させられなかった。
【0246】
要約するとL−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンの経口生体利用性は、高用量ではある程度まで減少した。しかしL−リシン−d−アンフェタミンについては用量に関する薬物動態は、1.5mg/kgから60mg/kgまでの用量でほぼ線形であり、吸収された画分は(1.5mg/kgの用量から外挿して)52%から81%までの範囲であった。d−アンフェタミン硫酸塩の薬物動態も、1.5mg/kgないし6mg/kgのより低い用量でほぼ線形であり、吸収された画分は62%から84%までの範囲であった。しかしパラメーターはL−リシン−d−アンフェタミンと対照的に、d−アンフェタミン硫酸塩については12mg/kg及び60mg/kgという超薬理学的用量では高用量では不均衡に増加し、吸収された画分は(1.5mg/kgの用量から外挿して)各々101%及び223%と計算された。
【0247】
前記結果は、L−リシン−d−アンフェタミンの緩やかな加水分解が高用量でのd−アンフェタミンの除去能力の飽和を防止するのに対して、硫酸塩として送達された場合にはd−アンフェタミンのクリアランス能力が高用量では飽和状態に達することを示唆する。d−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンについての生体利用性(Cmax及びAUC)に対する用量の比例性の差異は図26−28に示される。高用量でd−アンフェタミンと比較したL−リシン−d−アンフェタミンの薬物動態特性は、用量を段階的に増加させる能力を減少させる。これは、ADHDか他の適応症かの治療のためにd−アンフェタミンを送達させる方法としてL−リシン−d−アンフェタミンの安全性を向上し、乱用の可能性を低減する。
【実施例14】
【0248】
d−アンフェタミンと比較したL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の鼻腔内生体利用性
図31及び図32に示されるようにL−リシン−d−アンフェタミンの鼻腔内ボーラス投与後のd−アンフェタミンの生体利用性は等価量のd−アンフェタミン硫酸塩の投与後のd−アンフェタミンの生体利用性の約5%であり、AUCinf値はL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミン硫酸塩に対して各々56及び1032であった。鼻腔内径路によるL−リシン−d−アンフェタミン投与後のd−アンフェタミンのCmaxも、等価量のd−アンフェタミン硫酸塩の投与後のd−アンフェタミンのCmaxの約5%であり、値はL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミン硫酸塩に対して各々78.6ng/mL及び1962.9ng/mLであった。L−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミン濃度のTmax(60分)は、d−アンフェタミン硫酸塩由来のd−アンフェタミン濃度のTmax(5分)と比較して実質的に遅延し、L−リシン−d−アンフェタミンの緩やかな加水分解を反映した。また高濃度のインタクトなL−リシン−d−アンフェタミンが、鼻腔内投与後に検出された。これらの結果は、L−リシン−d−アンフェタミンの鼻腔内投与が、L−リシン−d−アンフェタミンの最小限の加水分解しか提供しないため、d−アンフェタミンの最小限の放出しか提供しないことを示唆する。
【実施例15】
【0249】
d−アンフェタミンと比較したL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の静脈内生体利用性
図33及び図34に示されるようにL−リシン−d−アンフェタミンの静脈内ボーラス投与後のd−アンフェタミンの生体利用性は、等価量のd−アンフェタミン硫酸塩の投与後のd−アンフェタミンの生体利用性の約2分の1であり、AUCinf値はL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミン硫酸塩に対して各々237.8及び420.2であった。L−リシン−d−アンフェタミン投与後のd−アンフェタミンのCmaxは、等価量のd−アンフェタミン硫酸塩の投与後のCmaxの約4分の1にすぎず、値はL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミン硫酸塩に対して各々99.5及び420.2であった。L−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミン濃度のTmax(30分)は、d−アンフェタミン硫酸塩由来のd−アンフェタミン濃度のTmax(5分)と比較して実質的に遅延し、L−リシン−d−アンフェタミンの緩やかな加水分解を反映した。結論として静脈内経路によるd−アンフェタミンの生体利用性は、L−リシン−d−アンフェタミンとして与えられたときには実質的に減少し、かつ、遅延した。さらに生体利用性は、等価量のL−リシン−d−アンフェタミンの経口投与により取得されるものより小さい。
【0250】
ラットでのLC/MS/MS生体利用性データの要約
以下の表は、実施例13−15で論じられた実験で収集された生体利用性データを要約する。表24、表25及び表26は、各々d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミンの経口投与、鼻腔内投与及び静脈内投与後のd−アンフェタミンの薬物動態パラメーターを要約する。
【0251】
【表27】
【0252】
【表28】
【0253】
【表29】
【0254】
表27、表28及び表29は、L−リシン−d−アンフェタミンの経口投与、静脈内投与及び鼻腔内投与後のL−リシン−d−アンフェタミンの薬物動態パラメーターを要約する。
【0255】
【表30】
【0256】
【表31】
【0257】
【表32】
【0258】
表30及び表31は、d−アンフェタミン硫酸塩と比較したL−リシン−d−アンフェタミンの経口投与、鼻腔内投与及び静脈内投与後のd−アンフェタミンの生体利用性の百分率を要約する。
【0259】
【表33】
【0260】
【表34】
【0261】
表32−37は、d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミンの経口投与、鼻腔内投与及び静脈内投与後のd−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミンの濃度の経時変化を要約する。
【0262】
【表35】
【0263】
【表36】
【0264】
【表37】
【0265】
【表38】
【0266】
【表39】
【0267】
【表40】
【実施例16】
【0268】
イヌにおけるL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩の生体利用性(LC/MS/MS分析)
実施例の実験デザイン:
本実施例は、無作為化しない2処理水準のクロスオーバー研究である。全ての動物は、通常の餌で維持され、各回の投与前に終夜絶食させられた。L−リシン−d−アンフェタミンの用量は、各投与日の朝に測定された体重に基づき設定した。送達された実際の用量は、投与前後のシリンジの重量に基づき算出した。経時的な血液試料は、抗凝固剤としてヘパリンナトリウムを含むヴァキュテイナーチューブ(vacutainer tubes)を使用する頸静脈の直接の静脈穿刺により各々の動物から取得された。得られた血漿試料は、Quest Pharmaceutical Services,Inc.(Newark,DE)への発送まで冷凍保存された。前記血漿の分析結果の薬物動態解析は、Calvertにより実施された。動物は以下のように処理された。
【0269】
【表41】
【0270】
被験物質の投与:
経口:被験物質は、各々の動物に単回強制経口投与された。1日目に動物は、シリンジと結合した食道チューブを使用して強制経口投与を受けた。投与用チューブは、所要の投与用溶液を確実に送達するために約20mLの水道水で洗浄された。
【0271】
静脈内:8日目に動物は、橈側皮静脈中への単回の30分の静脈内点滴としてL−リシン−d−アンフェタミンを受けた。
【0272】
試料収集:
投与剤形:投与後、残りの投与剤形は、貯蔵され、冷凍保存された。
【0273】
血液:経時的な血液試料(2mL)は、ヘパリンナトリウムを含む静脈穿刺チューブを使用して収集された。血液試料は、経口投与後0時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間及び72時間の時点で採取された。血液試料は、静脈点滴の開始後0時間、0.167時間、0.33時間、(点滴停止前の)0.49時間、0.583時間、0.667時間、0.75時間、1時間、2時間、3時間、4時間、8時間、12時間及び23時間の時点で収集された。収集された血液試料は迅速に冷却された。
【0274】
血漿:血漿試料は血液試料の遠心分離により取得された。2回重複の血漿試料(各々約0.2mL)は、事前に標識されたプラスチックバイアル中に移され、約−70°Cで冷凍保存された。
【0275】
試料の分析:
血漿試料は、バリデーションされたLC−MS/MS法を使用して、両検体について1ng/mLのLLOQでL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンについて分析された。
【0276】
平均血漿中濃度の算出と該血漿中濃度−時間データの図示とのためにMicrosoft Excel(Version6,Microsoft Corp.,Redmond,WA)が使用された。(ノンコンパートメント)薬物動態解析は、WinNonlin(登録商標)ソフトウェアプログラム(Version4.1,Pharsight,Inc.Mountain View,CA)を使用して実施された。最大濃度(Cmax)とCmaxへの到達時間(Tmax)とは、実測値であった。血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC)は、線形−対数台形則を使用して決定された。見かけの終末速度定数(terminal rate constant、λz)は、λzの計算用の適当な数の点(最低限データ点3個)を決定するためのデータの外観検査とともに線形最小二乗回帰を使用して導かれた。AUC0-infは、AUC0-t及びCpred/λzの合計として算出され、ここでCpredは最後の定量可能濃度の時点における予測濃度であった。血漿クリアランス(CL/F)は用量/AUC0-infの比として決定された。平均滞留時間(MRT)はAUMC0-inf/AUC0-infの比として算出され、ここでAUMC0-infは時間0から無限大までの第一モーメント曲線(first moment curve)下面積であった。定常状態での分配体積(Vss)はCL*MRTとして評価された。半減期はln2/λzとして算出された。前記経口生体利用性(F)は静脈内投与後のAUC0-infに対する経口投与後のAUC0-infの比として算出された。薬物動態パラメーターの記述統計(平均値及び標準偏差)は、Microsoft Excelを使用して算出された。
【0277】
本研究の目的は、雄ビーグル犬におけるL−リシン−d−アンフェタミンの投与後のL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの薬物動態を特徴づけることである。図35に示されるように、クロスオーバーデザインされた実験で、L−リシン−d−アンフェタミンは3匹の雄ビーグル犬に対して経口投与及び静脈内投与された。血液試料は、静脈内投与及び経口投与後に各々24時間及び72時間まで収集された。
【0278】
L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内投与又は経口投与後のL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの平均血漿中濃度−時間プロファイルは、それぞれ図37及び図38に示される。両径路での投与後のd−アンフェタミンに対するL−リシン−d−アンフェタミンの比較プロファイルは図35及び図36に示される。個体ごとのプロットは図39及び図40に示される。薬物動態パラメーターは表38−46に要約される。
【0279】
L−リシン−d−アンフェタミンの30分間の静脈内点滴後、血漿中濃度は前記点滴完了時にピークに到達した。点滴後L−リシン−d−アンフェタミン濃度は、二成分の指数関数様に(in a biexponential manner)非常に迅速に減少し、投与後約8時間までに定量化可能限界(1ng/mL)未満となった。ノンコンパートメント薬物動態解析の結果は、L−リシン−d−アンフェタミンが、体内総水分量(0.7L/kg)を近似する、中程度の分配体積(Vss)を有する高クリアランス化合物であることを示す。平均クリアランス値は2087mL/h.kg(34.8mL/min.kg)であり、前記イヌにおける肝血流量(40mL/min.kg)と同程度であった。
【0280】
L−リシン−d−アンフェタミンは、経口投与後迅速に吸収され、3匹のイヌ全てにおいてTmaxは0.5時間であった。平均絶対経口生体利用性は33%であり、このことはL−リシン−d−アンフェタミンがイヌにおいて非常によく吸収されることを示唆した。見かけの終末半減期は0.39時間であり、静脈内投与後に観察されたのと同様に迅速な除去を示した。
【0281】
L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内投与又は経口投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度−時間プロファイルも同様であった。表39を参照せよ。1mg/kgのL−リシン−d−アンフェタミンの経口投与では、d−アンフェタミンの平均Cmaxは104.3ng/mLであった。d−アンフェタミンの半減期は3.1時間ないし3.5時間であり、L−リシン−d−アンフェタミンと比較するとずっと長かった。
【0282】
本研究ではL−リシン−d−アンフェタミンは30分間にわたり点滴された。L−リシン−d−アンフェタミンの迅速なクリアランスのために、L−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンの生体利用性は、同程度の用量が静脈内ボーラス注射により与えられた場合には減少した可能性がある。点滴として与えられた場合でさえもL−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンの生体利用性は同様の用量が経口投与された場合の生体利用性を超えず、ピーク濃度到達時間は実質的に遅延した。このデータは、L−リシン−d−アンフェタミンが、静脈内注射によるd−アンフェタミンの乱用の可能性を減少させることをさらに支持する。
【0283】
【表42】
【0284】
薬物動態パラメーターの略語は以下のとおりである。
Cmax 最大実測血漿中濃度
Tmax Cmaxが観察された時間
AUC0-t 0から最後のデータ点までの血漿中濃度対時間曲線下総面積
AUC0-inf 血漿中濃度対時間曲線下総面積
t1/2 見かけの終末半減期
MRT 平均滞留時間
CL/F 口腔クリアランス
Vss 定常状態での分布容積
F 生体利用性
【0285】
【表43】
【0286】
【表44】
【0287】
【表45】
【0288】
【表46】
【0289】
【表47】
【0290】
【表48】
【0291】
【表49】
【0292】
【表50】
【実施例17】
【0293】
静脈内点滴後のd−アンフェタミンと比較したL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の心臓血管への遅延型効果
収縮期及び拡張期血圧(BP)は、治療用の用量でもd−アンフェタミンにより上昇した。L−リシン−d−アンフェタミンは全身での代謝の結果として(緩徐にではあるが)d−アンフェタミンを放出することが予想されるので、予備的研究が、等モル用量のd−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミンを(2匹の雄と2匹の雌との)4匹のイヌに使用して実施された。結果は、前記アミドプロドラッグは不活性であることと、ある程度のd−アンフェタミンの緩徐な放出は最初の投与の20分後に開始することとを示唆する。しかしd−アンフェタミンと比較してL−リシン−d−アンフェタミンの効果は強力ではない。例えば平均血圧は図43に図示される。小用量のd−アンフェタミンは、血圧に対して迅速な効果を有することが観察されたが、これは過去に発表されたデータ(Kohli and Goldberg、1982)に矛盾しない。最低用量(0.5mg/kgのL−リシン−d−アンフェタミンと等モルである0.202mg/kg)は平均血圧を急激に2倍にし、その後平均血圧は30分間にわたり緩やかに回復した。
【0294】
一方L−リシン−d−アンフェタミンは、注射後約30分まで平均血圧にほとんど変化をもたらさなかった。その時点で血圧は約20−50%上昇した。おそらくd−アンフェタミンの連続的放出が、本実験の残りの経時変化での血圧の緩徐かつ安定的な上昇の原因である。その後の注射でd−アンフェタミンは、用量非依存的にその効果を繰り返すようにみえる。すなわち最初の注射より10倍の用量の増加は、同じ最大血圧への上昇を引き起こした。これは、d−アンフェタミンのボーラス注射の連続的な刺激による神経終末でのカテコールアミンレベルの状態を反映する可能性がある。L−リシン−d−アンフェタミンの連続的投与後に見られる平均血圧の上昇(図43)がより緩やかな、かつ、より弱い効果をもたらすことに留意すべきである。類似の結果が左心室圧に対して観察された(図44)。これらの結果は、L−リシン−d−アンフェタミンとして与えられたときの、静脈内経路によるd−アンフェタミンの生体利用性の顕著な減少をさらに実証する。結果としてd−アンフェタミンを注射された人に生じる該薬剤の薬理効果の迅速な開始は排除される。
【0295】
【表51】
【0296】
【表52】
【実施例18】
【0297】
経口投与によるアンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩に対する薬力学反応(自発運動反応)
雄のスプラーグドーリーラットが、自由に水を供給され、終夜絶食させられ、6mg/kgのアンフェタミンか、等価量のd−アンフェタミンを含むL−リシン−d−アンフェタミンかを強制経口投与された。水平自発運動活性(HLA)は、フォトセル活動チャンバー(photocell activity chambers、San Diego Instruments)を使用して明期の間記録された。総カウント数は試験期間中12分毎に記録された。ラットは、3種類の別個の実験で各々5、8及び12時間監視された。d−アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミンについての時間対HLAカウント数は図45及び図46に示される。各々の実験でピーク活性到達までの時間は遅延し、前記薬力学的効果はd−アンフェタミンと比較したL−リシン−d−アンフェタミンについての長期放出に対する証拠であった。Lys−Ampを投与されたラットのHLAについての総活動カウント数は、3種類の実験全てでd−アンフェタミンにより誘発されるHLAについての総活動カウント数に比べて(11−41%)増加した。
【0298】
【表53】
【0299】
【表54】
【実施例19】
【0300】
鼻腔内投与によるd−アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩に対する薬力学反応
雄のスプラーグドーリーラットが、d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミン(1.0mg/kg)を鼻腔内投与された。同様の投与がされた動物の第2の組ではカルボキシメチルセルロース(CMC)が、(L−リシン−d−アンフェタミンの濃度より約2倍高く、d−アンフェタミンの含有量より約5倍高い)62.6mg/mLの濃度で前記薬剤の溶液に添加された。前記CMC薬剤混合物は、各々の投与物が送達される前に徹底的に懸濁された。自発運動活性は、実施例18で説明される手順を使用して監視された。図47及び図48で示されるように活動対時間(1時間又は2時間)は、アンフェタミン/CMC対L−リシン−d−アンフェタミンについて示され、アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミンCMCについての活動対時間と比較される。図47で見られるように、CMCの添加によってはアンフェタミンによる活動への影響は見られなかったのに対して、L−リシン−d−アンフェタミンへのCMCの添加は、IN投与されたラットの活動反応を水/CMC対照と同様のレベルまで減少させた。d−アンフェタミンを投与された動物について観察された活動と比較して、CMCと併用しないL−リシン−d−アンフェタミンの基準線上の活動の増加は34%であったのに対してCMCと併用したL−リシン−d−アンフェタミンの基準線上の活動の増加は9%にすぎなかった(表51)。CMCは、IN投与により誘発されるd−アンフェタミンによる活動に対して観察可能な効果がなかった。
【0301】
【表55】
【実施例20】
【0302】
静脈内投与によるd−アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩に対する薬力学反応
雄のスプラーグドーリーラットが、(1.0mg/kgの)d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミンを静脈内投与された。3時間にわたる総活動カウント数として表現される活性は図49に示される。L−リシン−d−アンフェタミンにより誘発される活動は実質的に減少し、ピーク活性到達時間は遅延された。L−リシン−d−アンフェタミンに係る基準線上の活動の増大は、d−アンフェタミンを投与された動物について観察された活動と比較してL−リシン−d−アンフェタミンについては34%であった(表52)。
【0303】
【表56】
【実施例21】
【0304】
経口投与されたL−リシンーd−アンフェタミン二塩酸塩の毒性の減少
1群当たり3匹の雄と3匹の雌とのスプラーグドーリーラットが、0.1、1.0、10、60、100又は1000mg/kgでL−リシン−d−アンフェタミンを単回経口投与された(表53)。各々の動物は、(投与日を1日目として)1−7日目に毒性の徴候と死とについて観察され、1群・1性別当たり1匹のラットが(計画的に、又は、計画的でなしに)死んだときに剖検された。
【0305】
【表57】
【0306】
本研究の鍵となる観察結果は以下を含む。
【0307】
1−3群における全ての動物は、本研究の実施を通じて観察可能な徴候を示さなかった。
【0308】
4−6群における全ての動物は、投与後2時間以内に運動活性の増大を示し、該運動活性の増大は2日目まで続いた。
【0309】
1000mg/kgを投与された1匹の雌のラットは、2日目に死んでいるのを発見された。剖検は、色素涙と、色素性鼻漏(chromorhinorrhea)と、(気体により)膨張した胃と、肥大した副腎と、浮腫が生じ膨張した腸との所見を示した。
【0310】
計4匹のラットは3日目に重症度の異なる皮膚病変を有した。
【0311】
1000mg/kgを投与された1匹の雄のラットは3日目に、背側頸部(ventral neck)の開放性皮膚病変(open skin lesion)のため安楽死させられた。
【0312】
残りの全ての動物は、4日目から7日目まで外見は正常であった。
【0313】
動物は、投与後1時間、2時間及び4時間の時点で、かつ、投与後7日間は1日1回毒性の徴候について観察され、ケージ横での観察結果が記録された。死んでいることが分かった動物、又は、瀕死の状態にあって屠殺された動物は、剖検及び廃棄された。
【0314】
ケージ横での観察結果と、肉眼での剖検による知見とは、上記のとおり要約される。d−アンフェタミン硫酸塩の経口でのLD50は、96.8mg/kgである。L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩については、致死量を確定するにはデータが十分ではないが、6匹の動物の群から1匹のみの死が発生したため、前記研究は、L−リシン−d−アンフェタミンの経口致死量は1000mg/kgを越えることを示す。この用量の群では2匹目の動物が3日目に安楽死させられたが、これは人道的な理由のために実施され、この動物は完全に回復しただろうと感じられた。観察結果は4−6群において、アンフェタミンの毒性(NTP,1990;NIOSH REGISTRY NUMBER:SI1750000;Goodman et.al.,1985)に特徴的な薬剤誘発性のストレスを示唆した。全ての動物が、4−7日目に異常な徴候を示さず、各々の処理レベルでの完全な回復を示唆した。
【0315】
確定致死量を支持するデータがないことは、アンフェタミンとリシンとのコンジュゲート形成の、推定される保護効果のためであると信じられている。インタクトなL−リシン−d−アンフェタミンは不活性であることが示されているが、代謝により非コンジュゲート形態(d−アンフェタミン)となり活性になる。したがって高用量ではL−リシン−d−アンフェタミンの非コンジュゲート形態への代謝の飽和が、観察される毒性の欠如を説明する場合があるが、該毒性はd−アンフェタミン硫酸塩(NTP、1990)と一致して100mg/kgより大きい用量で予想されていた。d−アンフェタミンの生成速度と、アンフェタミンの生成量とは、両方が毒性の低減に寄与する場合がある。代替的にL−リシン−d−アンフェタミンの経口吸収は、かかる高濃度で飽和する場合もあり、このことはL−リシン−d−アンフェタミンの限定的な生体利用性による低毒性を示唆する場合がある。
【実施例22】
【0316】
L−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩の薬力学的活性のin vitroでの評価
本明細書で論じられるアミノ酸コンジュゲートにおいて観察されたのと同様に、アンフェタミンのアシル化が該親薬剤の刺激活性を顕著に低減することが予想された。例えばMarvola(1976)は、アンフェタミンのN−アセチル化がマウスでの自発運動活性増大効果を完全に消滅させることを示した。前記コンジュゲートは刺激剤として直接的には作用しないことを確認するために、我々は標準放射性リガンド結合アッセイを使用して、Lys−Amp(10-9Mないし10-5M)のヒト組換えドーパミン及びノルエピネフリン輸送結合部位への特異的な結合を試験した(NovaScreen,Hanover,MD)。結果(表54)は、Lys−Ampがこれらの部位に結合しなかったことを示す。これらの結果に照らすと、前記コンジュゲートは刺激活性を保持したことはありえないようにみえる。(Marvola M.(1976)“Effect of acetylated derivatives of some sympathomimetic amines on the acute toxicity,locomotor activity and barbiturate anesthesia time in mice.”Acta Pharmacol Toxicol(Copenh)38(5):474−89)
【0317】
【表58】
【0318】
【表59】
【実施例23】
【0319】
L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩からのアンフェタミンの放出のin vitro評価
「キッチンテスト」は、前記アンフェタミンコンジュゲートから遊離のアンフェタミンを放出させようとする不正な化学者による試みを予想して実施された。好ましいアンフェタミンコンジュゲートはかかる試みに抵抗性がある。最初のキッチンテストは、前記アンフェタミンコンジュゲートの水、酸(酢)及び塩基(ベーキングパウダー及びベーキングソーダ)への抵抗性を評価し、各々の場合において試料は加熱され20−60分間沸騰させられた。L−リシン−d−アンフェタミン及びGGG−Ampは、検出可能な遊離のアンフェタミンを放出しなかった。
【0320】
【表60】
【0321】
アンフェタミンコンジュゲートの安定性は、高温の、濃塩酸及び10N NaOH溶液を含む高濃度条件下で評価された。Lys−Ampストック溶液はH2O中で調製され、最終濃度0.4mg/mL及び最終体積1.5mLになるまで濃塩酸で10倍希釈された。試料は、水浴中で約90°Cまで1時間加熱され、20°Cまで冷却され、中和され、遊離のd−アンフェタミンについてHPLCにより分析された。結果は、最小限の量のd−アンフェタミンだけしかこれらの濃縮条件下で放出されないことを示唆する。
【0322】
【表61】
【0323】
アンフェタミンコンジュゲートの安定性は、酸性条件下で評価された。
【0324】
【表62】
【0325】
常温では限定的な量のd−アンフェタミンしか放出されなかった。90°Cでは限定的な量のd−アンフェタミンしか放出されなかったが、L−リシン−d−アンフェタミンの分解はより顕著であった。これは、アミド結合が安定的であること、及び、検出可能な量が加水分解される前に前記コンジュゲートは通常分解することを示唆する。還流条件では濃塩酸及び50%硫酸は、d−アンフェタミン含有量の各々85%及び59%を放出したが、望ましくない酸性溶液中にd−アンフェタミンを分配した。前記酸性溶液からd−アンフェタミンを回収する工程は、収率をさらに低減する。
【0326】
同様の試験では濃塩酸中での還流は、5時間後にある程度の加水分解(28%)を起こし、22時間後にさらなる加水分解(76%)を起こした。濃硫酸中での2時間の還流は、Lys−Ampの完全な分解を起こし、d−アンフェタミンを放出した可能性がある。上述したように、前記酸性溶液からのd−アンフェタミンの回収は、収率をさらに低減する。
【0327】
アンフェタミンコンジュゲートの安定性は、さまざまな濃度の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、ジエチルアミン及びトリエチルアミンを含む塩基性条件下でも評価された。最大のd−アンフェタミン放出は、3M水酸化ナトリウムにより得られる25.4%であった。全ての他の塩基性条件は、3%未満の放出をもたらした。
【実施例24】
【0328】
市販製品での処理下でのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の安定性
L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の安定性は、市販の酸、塩基及び酵素混合物での処理下で評価された。酸及び塩基(表59)については、10mgのLys−Ampが2mLの各々のストック溶液と混合され、前記溶液は20°Cで振とうされた。酵素処理(表60)については、10mgのLys−Ampが5mLの各々の酵素混合物と混合され、前記溶液は37°Cで振とうされた。一定分量(0時間、1時間及び24時間)の溶液はそれぞれ、HPLCによる分析の前に中和及び濾過された。前記市販試薬の多くは、さまざまな溶媒及び/又は界面活性剤も含んでいた。
【0329】
他に特に指示がなければ溶液は容器から直接使用され、希釈されないLys−Ampの固体と混合された。ルイスレッドデビル(登録商標)ライ(Lewis Red Devil(R)Lye)と、エンフォーサードレインケア(登録商標)セプティックトリートメント(Enforcer Drain Care(R)Septic Treatment)と、リッド−X(登録商標)セプティックトリートメント(Rid−X(R)Septic Treatment)とは、飽和水溶液として調製された。使用された酵素はシグマ(Sigma)から購入され、水に直接溶解された(ペプシン3mg/mL、パンクレアチン10mg/mL、プロナーゼ3mg/mL、エステラーゼ3mg/mL)が、オムニゲスト(Omnigest、登録商標)及びバイタルジム(VitaelZym、登録商標)のような酵素含有栄養補助食品は最初に粉砕又は開封された(H2O 5mL当たり錠剤1個又はカプセル1個)。
【0330】
市販の酸及び塩基はLys−Ampを加水分解するのに効果がなかった。ミラクル−グロ(Miracle−Gro、登録商標)での処理(7%の放出)と、オリンピック(登録商標)デッキクリーナー(Olympic(R)Deck Cleaner)での処理(4%の放出)とのみがなんらかの放出を示したが、24時間後でさえもd−アンフェタミンの量は無視できるほどであった。酵素製品の中では、精製のエステラーゼ(19%の放出)又はプロナーゼ(24%の放出)の混合物のみが(24時間後に)リシンを切断することに成功した。
【0331】
【表63】
【0332】
【表64】
【実施例25】
【0333】
経口径路、鼻腔内径路及び静脈内径路により投与されたさまざまなペプチドアンフェタミンコンジュゲート(HCl塩)の生体利用性
経口投与:雄のスプラーグドーリーラットが、自由に水を供給され、終夜絶食させられ、アンフェタミンか、等価量のd−アンフェタミンを含むアミノ酸アンフェタミンコンジュゲートかを強制経口投与された。
【0334】
鼻腔内投与:雄のスプラーグドーリーラットが、アンフェタミン又はリシン−アンフェタミン(1.8mg/kg)を鼻腔内投与された。
【0335】
さまざまなアミノ酸−アンフェタミン化合物の相対的なin vivoでの性能は図50−58に示され、表61に要約される。Ser−Amp由来のアンフェタミンの鼻腔内生体利用性は、遊離のアンフェタミンと比較してある程度まで減少した。しかしこの化合物は経口径路での投与によるとアンフェタミンと生体には等価ではなかった。フェニルアラニンは経口径路での投与によるとアンフェタミンと生体に等価であったが、非経口径路での投与によると生体利用性の減少はほとんど又は全く観察されなかった。Gly3−Ampは、経口径路によるとほぼ等しい(90%)生体利用性を有し、Cmaxは減少した(74%)。さらにGly3−Ampは、鼻腔内径路及び静脈内径路による生体利用性は、アンフェタミンと比較して低減した。
【0336】
【表65】
【0337】
複数の単一アミノ酸アンフェタミンコンジュゲートが、d−アンフェタミンに匹敵する(80−100%)経口生体利用性を有した。例えばLys、Gly及びPheコンジュゲートの全てが、前記親薬剤と同様の経口生体利用性を示した。ジペプチドプロドラッグは一般的に、各々のアミノ酸類縁体よりも低い生体利用性を示し、トリペプチド化合物は識別可能な傾向を示さなかった。複数のアミノ酸アンフェタミンコンジュゲートは、非経口生体利用性が低かった。Lys−Ampのような好ましいコンジュゲートは、d−アンフェタミンに匹敵する経口生体利用性と、d−アンフェタミンと比較した場合の非経口生体利用性の減少との両方を示す。
【実施例26】
【0338】
d−アンフェタミンコンジュゲートの経口投与Cmaxの減少
雄のスプラーグドーリーラットが、自由に水を供給され、終夜絶食させられ、アンフェタミンコンジュゲート又はd−アンフェタミン硫酸塩を強制経口投与された。全投与物が等価量のd−アンフェタミン塩基を含んでいた。d−アンフェタミンの血漿中濃度は、ELISA(Amphetamine Ultra,109319,Neogen,Corporation,Lexington,KY)により測定された。本アッセイ方法は、主要なd−アンフェタミン代謝生成物(パラ−ヒドロキシ−d−アンフェタミン)に対して最小限(0.6%)の反応性しか有さずd−アンフェタミンに特異的である。d−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンの血漿中濃度は、実施例に示されたLC/MS/MSにより測定された。
【実施例27】
【0339】
d−アンフェタミンコンジュゲートの鼻腔内生体利用性(AUC及びCmax)の減少
雄のスプラーグドーリーラットが自由に水を供給され、投与物が、アンフェタミンコンジュゲート又はd−アンフェタミン硫酸塩を含む0.02mLの水を鼻腔発赤(nasal flare)内に配置することにより投与された。全投与物が等価量のd−アンフェタミン塩基を含んでいた。d−アンフェタミンの血漿中濃度は、ELISA(Amphetamine Ultra,109319,Neogen,Corporation,Lexington,KY)により測定された。本アッセイ方法は、主要なd−アンフェタミン代謝生成物(パラ−ヒドロキシ−d−アンフェタミン)に対して最小限(0.6%)の反応性しか有さずd−アンフェタミンに特異的である。d−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンの血漿中濃度は、実施例に示されたLC/MS/MSにより測定された。
【実施例28】
【0340】
d−アンフェタミンコンジュゲートの静脈内生体利用性(AUC及びCmax)の減少
雄のスプラーグドーリーラットが自由に水を供給され、投与物が、アンフェタミンコンジュゲート又はd−アンフェタミン硫酸塩を含む0.1mLの水の尾静脈注射により投与された。全投与物が等価量のd−アンフェタミン塩基を含んでいた。d−アンフェタミンの血漿中濃度は、ELISA(Amphetamine Ultra,109319,Neogen,Corporation,Lexington,KY)により測定された。本アッセイ方法は、主要なd−アンフェタミン代謝生成物(パラ−ヒドロキシ−d−アンフェタミン)に対して最小限(0.6%)の反応性しか有さずd−アンフェタミンに特異的である。d−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンの血漿中濃度は、実施例に示されたLC/MS/MSにより測定された。
【実施例29】
【0341】
さまざまな化学的部分とのアンフェタミンの結合
上述の実施例は、その治療価値を維持しながら過剰投与の可能性を低減するのに有用な、アミノ酸のような化学的部分とコンジュゲートを形成したアンフェタミンの効用を実証する。化学的部分とのアンフェタミンの結合の有効性は、前記アンフェタミンのリシン(K)との結合を通じて実証されたが、上述の実施例は例示のみが意図される。以下で説明されるように、以下の代表的な開始物質を使用する類似の手順を通じた、いずれかのさまざまな化学的部分(すなわちペプチド、糖ペプチド、炭水化物、ヌクレオシド又はビタミン)とのアンフェタミンの結合が実施可能である。
【0342】
アンフェタミンの合成例:
Gly2−Ampの合成
Gly2−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−Gly−Gly−OSuであることを除いて類似の方法により合成された。
【0343】
Glu2−Phe−Ampの合成
Glu2−Phe−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−OSuであることと、開始薬剤コンジュゲートがPhe−Amp(Phe−Ampの合成を参照せよ。)であることとをを除いて類似の方法により合成された。
【0344】
His−Ampの合成
His−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−His(Trt)−OSuであることを除いて類似の方法により合成された。
【0345】
Lys−Gly−Ampの合成
Lys−Gly−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−Lys(Boc)−OSuであることと、開始薬剤コンジュゲートがGly−Amp(Gly−Ampの合成を参照せよ。)であることとをを除いて類似の方法により合成された。
【0346】
Lys−Glu−Ampの合成
Lys−Glu−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−Lys(Boc)−OSuであることと、開始薬剤コンジュゲートがGlu−Ampであることとをを除いて類似の方法により合成された。
【0347】
Glu−Ampの合成
Glu−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−Glu(OtBu)−OSuであることを除いて類似の方法により合成された。
【0348】
(d)−Lys−(l)−Lys−Ampの合成
(d)−Lys−(l)−Lys−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−(d)−Lys(Boc)−(l)−Lys(Boc)−OSuであることを除いて類似の方法により合成された。
【0349】
グロン酸−Ampの合成
Gul−Ampは、炭水化物開始物質がグロン酸−OSuであることを除いて類似の方法により合成された。
【実施例30】
【0350】
経口投与後の脳組織におけるL−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩の不検出
雄のスプラーグドーリーラットが、自由に水を供給され、終夜絶食させられ、L−リシン−d−アンフェタミン又はd−アンフェタミン硫酸塩を強制経口投与された。全投与物が等価量のd−アンフェタミン塩基を含んでいた。図59に示されるようにd−アンフェタミン硫酸塩又はL−リシン−d−アンフェタミンの投与後に、血清及び脳組織で同様のレベルのd−アンフェタミンが検出された。L−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンは、d−アンフェタミン硫酸塩由来のd−アンフェタミンのレベルと比較して脳における持続的に存在していることを示した。L−リシン−d−アンフェタミンコンジュゲートは血清中に相当量存在したが、脳組織では検出されず、前記コンジュゲートが中枢神経系の作用部位に接近するために血液脳関門を通過しないことを示した。
【実施例31】
【0351】
L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の医薬品組成物
ゼラチンカプセル投与形態は、3種類の投与強度で調製された。前記硬質ゼラチンカプセルは、NRP104及び前記投与強度を印字された。前記カプセルの充填物は、均一な外観の白ないしオフホワイトの微粉末を含む。
【0352】
【表66】
【0353】
他の希釈剤、崩壊剤、滑剤及び着色料等は使用される場合がある。また特定の成分は、上に列挙される機能と異なる機能を提供するために使用される場合がある。
【0354】
前記医薬品組成物は、塊を崩したL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩(サイズ 20メッシュ)を微結晶性セルロースといっしょに粉砕することにより調製された。前記混合物は30メッシュのふるいにかけられ、その後クロスカルメロースナトリウムといっしょに混合された。予めふるいにかけられたステアリン酸マグネシウム(サイズ 30メッシュ)は添加され、前記カプセルの充填物を形成するために、前記組成物は均一になるまで混合された。
【実施例32】
【0355】
絶食条件下で7日間健康な成人に投与された70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩カプセルの臨床薬物動態評価及び経口生体利用性
この非盲検の単群研究では、18歳ないし55歳の間の年齢の健康な成人が、7日間連続で、1日1回(午前7時に)、70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩を8オンスの水といっしょに投与された。患者は、最後の投与前の少なくとも10時間と、最後の投与後の少なくとも4時間とに絶食した。静脈血試料(7mL)は、0日目、1日目、6日目及び7日目(の朝)の薬剤投与の前と、7日目の最終投与後の16個の時点(0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、10時間、12時間、16時間、24時間、48時間及び72時間)との両方に、EDTAヴァキュテイナー中に採取された。試料収集後すぐにヴァキュテイナーチューブは、3000rpm、4°Cで10分間遠心された。収集から1時間以内に試料は−20°Cで保存された。血漿試料は、バリデーションされたLC−MS/MS法を使用して、L−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンについて分析された。
【0356】
5回目の投与までにd−アンフェタミンは定常状態に到達した。7回目の投与後、平均AUC0-24は1113ng.h/mLであり、平均AUC0-∞は1453ng.h/mLであり、平均Cmaxは90.1ng.h/mLであり、平均Tmaxは3.68時間であった。表63及び図60を参照せよ。比較すると長期放出アンフェタミン塩は、終夜の絶食後に5.8時間のTmaxと、853ng.h/mLのAUC0-∞とを示す。J.F.Auiler et al.,“Effect of food on early drug exposure from extended−release stimulants:results from the Concerta,Adderall XR Food Evaluation(CAFE)study,”Curr Med Res Opin 18:311−316 at 313(2002)。
【0357】
インタクトなL−リシン−d−アンフェタミンは迅速にd−アンフェタミンに変換された。
7回目の投与後、平均AUC0-24は60.66ng.h/mLであり、平均AUC0-∞は61.06ng.h/mLであった。表63及び図60を参照せよ。加えてL−リシン−d−アンフェタミンについては平均Cmaxは47.9ng.h/mLであり、平均Tmaxは1.14時間であった。L−リシン−d−アンフェタミンは、約6時間以内に完全に除去された。
【0358】
Cmaxは体重による規格化後男性で12%高かったが、d−アンフェタミンへの全身曝露には性差はなかった。
【0359】
前記プロドラッグL−リシン−d−アンフェタミンから放出されるd−アンフェタミンの多数回投与薬物動態プロファイルは、長期放出特性と一致する。この設定で生じた有害な事象は、他の刺激剤に矛盾せず、70mgのL−リシン−d−アンフェタミンは、耐容性良好であることを示唆する。
【0360】
【表67】
【実施例33】
【0361】
ADHDの治療に使用されるアンフェタミン長期放出製品アデロールXR(登録商標)及びデキセドリンスパンスール(登録商標)と比較したL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の臨床薬物動態評価及び経口生体利用性
【0362】
【表68】
【0363】
ヒトでのL−リシン−d−アンフェタミンの前記薬物動態及び経口生体利用性の臨床評価が実施された。L−リシン−d−アンフェタミンは、その投与物中のd−アンフェタミン塩基含有量に基づく治療域の下端(25mg)及び上端(75mg)を近似する用量で経口投与された。さらに、高用量の投与物は、該高用量のL−リシン−d−アンフェタミン中のアンフェタミン塩基と等価量のアンフェタミン塩基を含むアデロールXR(登録商標、Shire)又はデキセドリンスパンスール(登録商標、グラクソスミスクライン)の投与物と比較された。処理群及び用量は表64に要約される。定量化可能限界未満(blq<0.5ng/mL)の全てのレベルは、薬物動態解析の目的で0として処理された。
【0364】
各々の被験者個体に対する低用量及び高用量でのL−リシン−d−アンフェタミンの投与後のd−アンフェタミンと、L−リシン−d−アンフェタミンのインタクトなコンジュゲートとの濃度は、薬物動態パラメーターとともに表65−70に示される。各々の被験者個体に対するアデロールXR(登録商標)又はデキセドリンスパンスール(登録商標)の投与後のd−アンフェタミン濃度及び薬物動態パラメーターは、各々表69及び表70に示される。L−リシン−d−アンフェタミンのインタクトなコンジュゲートとd−アンフェタミンとを示す濃度−時間曲線は図61及び図62に示される。L−リシン−d−アンフェタミンからのd−アンフェタミンの長期放出は両方の用量に対して観察され、低用量及び高用量の結果が比較されたとき、薬物動態パラメーター(Cmax及びAUC)は用量に比例した(図61及び図62)。有意なレベルのd−アンフェタミンは、投与後1時間までは観察されなかった。ごく少量(各々25mg及び75mgの用量に対して、モル濃度で算出されるAUCinfを基準として総薬剤吸収量の1.6%及び2.0%)のL−リシン−d−アンフェタミンのインタクトなコンジュゲートは、約1時間の時点でピークに到達するレベルで検出された(表66及び表68)。吸収された少量のインタクトなコンジュゲートは迅速にかつ完全に除去され、最高用量においても5時間までに検出可能な濃度では存在しなくなった。
【0365】
(同一の被験者が7日間のウォッシュアウト期間後にアデロールXR(登録商標)の投与を受ける)クロスオーバーデザインにおいて、高い方の用量のL−リシン−d−アンフェタミンが、等価量のアデロールXR(登録商標)と比較された。アデロールXR(登録商標)は、d−アンフェタミン塩及びl−アンフェタミン塩の混合物(等量のd−アンフェタミン硫酸塩、d−/l−アンフェタミン硫酸塩、d−アンフェタミンサッカラート及びd−/l−アンフェタミンアスパラギン酸塩)を含む、ADHDに対する1日1回型の長期放出治療薬である。等価量の長期放出デキセドリンスパンスール(登録商標、d−アンフェタミン硫酸塩の長期放出製剤を含む。)も本研究に含められた。ラットでの薬物動態研究で観察されたようにL−リシン−d−アンフェタミンの経口投与は、アデロールXR(登録商標)及びデキセドリンスパンスール(登録商標)の濃度−時間曲線と類似したd−アンフェタミンの濃度−時間曲線をもたらした(図63及び図64)。L−リシン−d−アンフェタミンの投与後のd−アンフェタミンの生体利用性(AUCinf)は、両方の長期放出アンフェタミン製品とほぼ等価であった(表71)。ADHDの効果的な1日1回の治療のために必要な時間の典型である12時間にわたり、L−リシン−d−アンフェタミンの生体利用性はアデロールXR(登録商標)の(d−アンフェタミンとl−アンフェタミンとを加えたレベルでの)生体利用性とほぼ等価であり、デキセドリンスパンスール(登録商標)の生体利用性よりも20%を超えて高かった。本臨床研究の結果に基づくと、L−リシン−d−アンフェタミンはADHDに対する効果的な1日1回型の治療薬となるだろう。さらにL−リシン−d−アンフェタミンは、ヒト及び動物モデルにおいて類似の薬物動態、すなわち、長期的放出動態をもたらすd−アンフェタミンの遅延放出を提供した。これらの観察に基づくと、L−リシン−d−アンフェタミンはヒトにおける乱用抵抗特性も有するはずである。
【0366】
【表69】
【0367】
【表70】
【0368】
【表71】
【0369】
【表72】
【0370】
【表73】
【0371】
【表74】
【0372】
【表75】
【0373】
【表76】
【0374】
【表77】
【0375】
【表78】
【0376】
【表79】
【0377】
【表80】
【0378】
【表81】
【実施例34】
【0379】
L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の臨床薬物動態評価及び経口生体利用性
ADHD小児患者(6−12歳)では、終夜8時間絶食後の30mg、50mg又は70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の単回経口投与後のd−アンフェタミンのTmaxは約3.5時間であった。図65を参照せよ。L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩のTmaxは約1時間であった。L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の単回経口投与後のd−アンフェタミンの線形の薬物動態は、児童において30mgないし70mgの用量範囲にわたり確立された。
【0380】
【表82】
【0381】
ADHD児童における定常状態でのd−アンフェタミンの予期されない蓄積はなく、7日間連続で1日1回の投与後のL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の蓄積はない。
【0382】
食事は、健康な成人において70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩カプセルの単回経口投与後のd−アンフェタミンの吸収の程度に影響を与えないが、Tmaxを(食前での3.78時間から高脂肪食後の4.72時間まで)約1時間遅延させる。8時間の絶食後、溶液中のL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩と、インタクトなカプセルとしてのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩との経口投与後のd−アンフェタミンの吸収の程度は等価であった。
【0383】
児童における数値の範囲は成人における数値の範囲より高かったが、用量で規格化されたCmax及びAUCにより測定される曝露には男性と女性との間で見かけ上の差異はなかった。これは、用量で規格化されたCmax及びAUCと体重との間の有意な相関関係の結果であるので、前記差異は児童に投与されたmg/kg単位での用量が高いことが原因である。男性被験者と女性被験者との間でt1/2には見かけ上の差異はなく、t1/2と年齢又は体重との間に何らの明らかな関係もなかった。
【0384】
臨床薬物動態評価の代表的な結果は図66(AUC)、図67(Cmax)及び図68(Tmax)に示される。
【実施例35】
【0385】
小児臨床試験におけるL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の有効性
L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の有効性は、(合併型又は多動性衝動性型の)ADHDのDSM−IV基準を満たす6−12歳の児童(N=290)で実施された二重盲検無作為プラセボ対照平行群研究で確立された。患者は、4週間、1日1回、朝に30mg、50mg又は70mgの最終用量のL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩を受け入れる固定用量治療群か、プラセボを受け入れる群かに無作為化された。50mg及び70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩に無作為化された患者については投与量は強制増量により増加させられた。患者が1日当たり30mgの用量のL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の全てを受け入れた場合には、研究者(ADHD評価尺度(ADHD−RS))及び親(Connerの親評価尺度(CPRS))により評価されたように、治療にかかる第1週を含む4週間の全期間で、プラセボと比較して全ての用量のL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩について、ADHDの徴候及び症状の顕著な改善が実証された。付加的な用量反応的な改善は、各々50mg及び70mgの群で実証された。CPRSスコアにより測定されたようにL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩で治療された患者は、プラセボ治療された患者と比較して朝(〜午前10時)、午後(〜午後2時)及び夕方(〜午後6時)において顕著な改善を示し、1日を通じて有効性を実証した。第一次有効性解析の結果、すなわちITT母集団についての基準線から終点までのADHD−RS総スコアの変化は図69に示される。
【0386】
有効性もSKAMPスコアにより測定された。(合併型又は多動性衝動性型の)ADHDのDSM−IV基準を満たす6−12歳の児童計52人は、二重盲検無作為プラセボ対照クロスオーバー研究に参加した。患者は、1週間、1日1回、朝に各々の治療として固定及び最適用量のL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩(30mg、50mg、70mg)、アデロールXR(登録商標、10mg、20mg又は30mg)又はプラセボを受け入れるために無作為化された。本研究における主要評価項目は、SKAMP(Swanson,Kotkin,Agler,M.Flynn and Pelham rating scale)−態度(Deportment)スコアである。L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩及びアデロールXR(登録商標)の両方は、プラセボと比較して高度に効果的であった。L−リシン−d−アンフェタミンの顕著な効果は朝の投与後2時間以内に生じ、最後の評価時点である朝の投与後12時間を通じて継続し、プラセボと比較して12時間の作用期間を生み出した。図70を参照せよ。
【実施例36】
【0387】
静注L−リシン−d−アンフェタミンの乱用の可能性
乱用の可能性を評価するために、50mgのL−リシン−d−アンフェタミンと、20mgのd−アンフェタミンと、プラセボとが、二重盲検クロスオーバーデザインで、9人の刺激剤乱用者に対して、48時間間隔で2分間にわたり、静注投与された。薬剤は3x3釣合いラテン方格法に従い投与された。各々の投与日に、生命徴候尺度と主観的効果及び行動的効果とは、投与前と、投与後0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、9時間、12時間、16時間及び24時間の時点とに質問表で評価された。これらの時点と5分の時点とに血液試料(5mL)はd−アンフェタミンレベルの評価のために採取された。
【0388】
d−アンフェタミンについては、5分の時点で77.7ng/mLのd−アンフェタミンの平均ピーク血漿中レベルが生じ、その後迅速に元のレベルに戻った。d−アンフェタミンの投与は、予期されたd−アンフェタミン様効果を引き起こし、15分の時点で平均ピーク応答をもたらした。主観的嗜好性視覚的アナログ尺度(Subject Liking VAS)の主要変数でのd−アンフェタミンに対する平均最大応答は、プラセボよりも有意に大きかった(p=0.01)。
【0389】
L−リシン−d−アンフェタミンについては、3時間の時点で33.8ng/mLのd−アンフェタミンの平均ピーク血漿中レベルが生じ、4時間の観察を通じてこのレベルのままであった。L−リシン−d−アンフェタミンは、d−アンフェタミン様の主観的効果、行動的効果及び生命徴候効果をもたらし、1時間ないし3時間の時点で平均ピーク応答をもたらした。主観的嗜好性視覚的アナログ尺度の主要変数に対しては、前記応答はプラセボよりも大きくはなかった(p=0.29)。L−リシン−d−アンフェタミン投与後の血圧の変化は顕著であった。
【0390】
前記研究の終了時点で被験者は、どちらの治療を再び利用しようと思うかどうかについて質問された。6人の被験者は20mgのd−アンフェタミンを選択し、2人の被験者は前記治療のどちらも選択せず、1人の被験者は50mgのL−リシン−d−アンフェタミンを選択した。要約すると、血圧の上昇は遅れて発生したが、50mgのL−リシン−d−アンフェタミンは陶酔感かアンフェタミン様の主観的効果かをもたらさなかった。前記知見は、L−リシン−d−アンフェタミン自体は不活性であることを示唆する。1時間ないし2時間後L−リシン−d−アンフェタミンはd−アンフェタミンに変換される。静注投与されるとL−リシン−d−アンフェタミンは、等価量のd−アンフェタミン塩基を含む即時放出d−アンフェタミンよりも、乱用の可能性は顕著に小さい。
【実施例37】
【0391】
刺激剤乱用の経歴を有する健康な成人におけるL−リシン−d−アンフェタミン対d−アンフェタミンでの乱用の可能性の減少の予備的推測
刺激剤乱用のDSM−IV基準を満たす健康な成人におけるL−リシン−d−アンフェタミン(30−150mg)対d−アンフェタミン硫酸塩(40mg)とプラセボとに対する乱用傾向の予備的推測を取得するために、この無作為単一施設用量漸増研究は、薬物動態パラメーターを使用した。被験者は、各々4人の患者からなる3組のコホートに分割された。全員が48時間という最小限の間隔でL−リシン−d−アンフェタミンの単回投与を受け、d−アンフェタミン硫酸塩(40mg)投与群及びプラセボ投与群が無作為に分散された。コホート1は30mg、50mg、70mg、100mgの用量のL−リシン−d−アンフェタミンを投与された。コホート2は50mg、70mg、100mg、130mgの用量を受けた。コホート3は70mg、100mg、130mg及び150mgの用量を受けた。
【0392】
最初の4時間にかかるd−アンフェタミンのAUClastは、40mgのd−アンフェタミン(245.5−316.8ng/mL)と比較して100mgのL−リシン−d−アンフェタミン(165.3−213.1ng/mL)では実質的に低かった。Cmax及びAUClastは30−130mgのL−リシン−d−アンフェタミンに対しては用量とともに増大し、130mg及び150mgの用量の間では減少した。Tmaxは、d−アンフェタミン硫酸塩(1.88−2.74時間)と比較してL−リシン−d−アンフェタミンでは3.78時間から4.25時間までの範囲にあり大きかった。L−リシン−d−アンフェタミンの半減期(範囲:0.44−0.76時間)は、迅速なクリアランスを示した。副作用の重篤度は軽く、生命徴候又はECGパラメーターには顕著な変化はなかった。L−リシン−d−アンフェタミンは、d−アンフェタミン硫酸塩と比較してd−アンフェタミンのより緩やかな放出特性を有した。150mgという高用量では最大濃度の減少があるようにみえ、より高用量のL−リシン−d−アンフェタミンはCmax及びAUClastのさらなる増大をもたらさないことを示唆する。これらの結果は、乱用の可能性の低減に矛盾しない薬剤プロファイルを示唆する。
【0393】
本明細書で示され、かつ、説明される本発明の特定の実施態様は代表例にすぎないことは理解されるだろう。多数の変更、変化、置換及び均等物は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者が想到するだろう。特に本出願で使用される用語は、関連出願中で使用される類似の用語に照らして広く解釈されるべきである。したがって本明細書で説明され、かつ添付される図面で示される全ての主題は例示のみが目的であるとみなされ限定的な意味ではないこと、及び、本発明の範囲は添付される特許請求の範囲のみにより決定されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0394】
【図1−1】ペプチドアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図。
【図1−2】ペプチドアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図。
【図2】リシンアンフェタミンジメシル酸塩の合成を示す図。
【図3】リシンアンフェタミン塩酸の合成を示す図。
【図4】セリンアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図。
【図5】フェニルアラニンアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図。
【図6】トリグリシンアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図。
【図7】d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩を経口投与されたラット個体からのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図8】(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図9】(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図10】(用量6mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図11】(用量12mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図12】(用量30mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図13】(用量60mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図14】用量1.5、3、6、12、30及び60mg/kgのd−アンフェタミン塩基での、d−アンフェタミン硫酸塩と比較したL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の生体利用性の百分率(AUC及びCmax)を示すグラフ。
【図15】d−アンフェタミン塩基の用量の段階的増加に対する、投与後30分でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図16】(用量60mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図17】(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの鼻腔内投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(ELISA分析)を示すグラフ。
【図18】(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの鼻腔内投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(ELISA分析)を示すグラフ。
【図19】(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの静脈内ボーラス投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(ELISA分析)を示すグラフ。
【図20】(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)デキセドリンスパンスール(登録商標)カプセルか、粉砕されたデキセドリンスパンスール(登録商標)カプセルか、L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩かのラットへの経口投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度レベル(ELISA分析)を示すグラフ。
【図21】(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図21A)及びnM単位(図21B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図22】(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図22A)及びnM単位(図22B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図23】(用量6mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図23A)及びnM単位(図23B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図24】(用量12mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図24A)及びnM単位(図24B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図25】(用量60mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図25A)及びnM単位(図25B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図26】ヒト等価用量の段階的増加に比例したL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの相対的生体利用性(Cmax)を示すグラフ。
【図27】d−アンフェタミン塩基の用量の段階的増加に比例したL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの相対的生体利用性(AUCinf)を示すグラフ。
【図28】ヒト等価用量の段階的増加に比例したL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの相対的生体利用性(AUCinf)を示すグラフ。
【図29】ヒト等価用量の段階的増加に比例したインタクトなL−リシン−d−アンフェタミンの相対的生体利用性(Cmax)を示すグラフ。
【図30】ヒト等価用量の段階的増加に比例したインタクトなL−リシン−d−アンフェタミンの相対的生体利用性(AUCinf)を示すグラフ。
【図31】(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの鼻腔内投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(LC/MS/MS分析)を示すグラフ。
【図32】(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの鼻腔内投与後のng/mL単位(図32A)及びnM単位(図32B)でのd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンの血漿中濃度(LC/MS/MS分析)を示すグラフ。
【図33】(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの静脈内ボーラス投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(LC/MS/MS分析)を示すグラフ。
【図34】(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの静脈内投与後のng/mL単位(図34A)及びnM単位(図34B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度(LC/MS/MS分析)を示すグラフ。
【図35】L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内又は経口投与(n=3)後のL−リシン−d−アンフェタミンの平均血漿中濃度の経時変化を示すグラフ。
【図36】L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内又は経口投与(n=3)後のd−アンフェタミンの血漿中濃度の経時変化を示すグラフ。
【図37】L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内投与(n=3)後のng/mL単位(図37A)及びnM単位(図37B)でのL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの平均血漿中濃度レベルの経時変化を示すグラフ。
【図38】L−リシン−d−アンフェタミンの経口投与(n=3)後のng/mL単位(図38A)及びnM単位(図38B)でのL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの平均血漿中濃度レベルの経時変化を示すグラフ。
【図39】L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内投与(図39A)又は経口投与(図39B)後のL−リシン−d−アンフェタミンの個体ごとの血漿中濃度の経時変化を示すグラフ。
【図40】L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内投与(図40A)又は経口投与(図40B)後のd−アンフェタミンの個体ごとの血漿中濃度の経時変化を示すグラフ。
【図41】(用量1.8mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩の雄イヌへの経口投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図42】(用量1.8mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩の雌イヌへの経口投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図43】L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミンの雄イヌ及び雌イヌへの増量静脈内注射後の平均血圧を示すグラフ。
【図44】L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミンの雄イヌ及び雌イヌへの増量静脈内注射後の左心室血圧を示すグラフ。
【図45】経口投与後のラットの自発運動活性(5時間の経時変化)を示すグラフ。
【図46】経口投与後のラットの自発運動活性(12時間の経時変化)を示すグラフ。
【図47】鼻腔内投与後のラットの自発運動活性(1時間の経時変化)を示すグラフ。
【図48】(カルボキシメチルセルロースと併用した)鼻腔内投与後のラットの自発運動活性(2時間の経時変化)を示すグラフ。
【図49】静脈内投与後のラットの自発運動活性(3時間の経時変化)を示すグラフ。
【図50】乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸、ジペプチド及びトリペプチドコンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフ。
【図51】乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸、ジペプチド及びトリペプチドコンジュゲートの経口生体利用性を示すグラフ。
【図52】乱用抵抗性アンフェタミントリペプチドコンジュゲートの静脈内生体利用性を示すグラフ。
【図53】乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸コンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフ。
【図54】乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸コンジュゲートの経口生体利用性を示すグラフ。
【図55】乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸コンジュゲートの静脈内生体利用性を示すグラフ。
【図56】乱用抵抗性アンフェタミントリペプチドコンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフ。
【図57】乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸及びジペプチドコンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフ。
【図58】D−及びL−アミノ酸異性体を含む乱用抵抗性アンフェタミンジペプチドコンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフ。
【図59】(用量5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの経口投与後の、d−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンの血清中濃度(ng/mL単位、図59A)と、脳組織内濃度(ng/g単位、図59B)(LC/MS/MS分析)を示すグラフ。
【図60】L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩70mgのヒトへの経口投与の臨床研究から得られた定常状態の血漿中のd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンのレベル(LC/MS/MS分析)を示すグラフ。
【図61−A】L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基7.37mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩25mg)のヒトへの経口投与後72時間にわたる血漿中のd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンのレベル(ng/mL単位)を示すグラフ。
【図61−B】L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基7.37mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩25mg)のヒトへの経口投与後72時間にわたる血漿中のd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンのレベル(nM単位)を示すグラフ。
【図62−A】L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)のヒトへの経口投与後72時間にわたる血漿中のd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンのレベル(ng/mL単位)を示すグラフ。
【図62−B】L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)のヒトへの経口投与後72時間にわたる血漿中のd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンのレベル(nM単位)を示すグラフ。
【図63−A】L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)又は(アンフェタミン塩基21.9mgを含む35mgの)アデロールXR(登録商標)のヒトへの経口投与後の血漿中のd−アンフェタミンのレベル(0−12時間)を示すグラフ。
【図63−B】L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)又は(アンフェタミン塩基21.9mgを含む35mgの)アデロールXR(登録商標)のヒトへの経口投与後の血漿中のd−アンフェタミンのレベル(0−72時間)を示すグラフ。
【図64−A】L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)又は(アンフェタミン塩基22.1mgを含む30mgの)デキセドリンスパンスール(登録商標)のヒトへの経口投与後の血漿中のd−アンフェタミンのレベル(0−12時間)を示すグラフ。
【図64−B】L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)又は(アンフェタミン塩基22.1mgを含む30mgの)デキセドリンスパンスール(登録商標)のヒトへの経口投与後の血漿中のd−アンフェタミンのレベル(0−72時間)を示すグラフ。
【図65】単回用量が30mg、50mg及び70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩のADHD小児患者への絶食条件下での経口投与後のd−アンフェタミンの平均血漿中濃度を示すグラフ。
【図66】健康な成人ボランティアと、ADHD児童とへのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩カプセルの1日1回の経口投与後の、用量で規格化されたd−アンフェタミンのAUCと性別との間の関係を示すグラフ。
【図67】健康な成人ボランティアと、ADHD児童とへのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩カプセルの1日1回の経口投与後の、用量で規格化されたd−アンフェタミンの最大血漿中濃度と性別との間の関係を示すグラフ。
【図68】健康な成人ボランティアと、ADHD児童とへのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩カプセルの1日1回の経口投与後の、用量で規格化されたd−アンフェタミンの最大濃度到達時間と性別との間の関係を示すグラフ。
【図69】小児臨床研究についての終点でのADHD−RSを示すグラフ。
【図70】小児臨床研究についてのSKAMPスコア(有効性)対時間を示すグラフ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンフェタミン化合物に関し、具体的には化学的部分(chemical moiety)と共有結合したアンフェタミンを含むアンフェタミンプロドラッグに関する。本発明は、前記アンフェタミン化合物を含む医薬品組成物と、前記アンフェタミン化合物を製造、送達及び使用する方法とにも関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年4月8日出願の特許文献1及び2に係る出願と、2005年5月16日出願の特許文献3に係る出願と、2006年1月6日出願の特許文献4に係る出願と、2006年1月19日出願の特許文献5に係る出願と、2004年6月1日出願の特許文献6に係る出願とを基礎とする米国特許法第119条(e)の優先権を主張する。本出願は、2004年6月1日出願の特許文献7に係る出願の一部継続出願でもあるが、特許文献7に係る出願自体が、2002年2月22日出願の特許文献8に係る出願と2002年3月7日出願の特許文献9に係る出願とに基づく優先権を主張する2003年2月24日出願の特許文献10に係る出願の一部継続出願である。特許文献7に係る出願も、2003年5月29日出願の特許文献11に係る出願と、2004年5月5日出願の特許文献12に係る出願とを基礎とする米国特許法第119条(e)の優先権を主張する。上記の全ての出願の内容は、その全体が引用によって本明細書に取り込まれる。
【特許文献1】米国仮出願第60/669,385号明細書
【特許文献2】米国仮出願第60/669,386号明細書
【特許文献3】米国仮出願第60/681,170号明細書
【特許文献4】米国仮出願第60/756,548号明細書
【特許文献5】米国仮出願第60/759,958号明細書
【特許文献6】米国特許出願第10/857,619号明細書
【特許文献7】米国特許出願第10/858,526号明細書
【特許文献8】米国仮出願第60/358,368号明細書
【特許文献9】米国仮出願第60/362,082号明細書
【特許文献10】国際出願PCT/US03/05525号明細書
【特許文献11】米国仮出願第60/473,929号明細書
【特許文献12】米国仮出願第60/567,801号明細書
【0003】
アンフェタミンは、中枢神経系(CNS)を刺激し、注意欠陥多動性障害(ADHD)、肥満症及びナルコレプシーを含むさまざまな疾患を治療するために医薬品として使用されてきた。ADHD児童では強力なCNS刺激剤が、単独で、又は、行動療法の補助剤として投与される薬剤治療として数十年の間使用されてきた。メチルフェニデート(リタリン(Ritalin、登録商標))は最も頻繁に処方される刺激剤であったが、そのクラスの原型であるアンフェタミン(アルファ−メチルフェネチルアミン)は以前から使用されており近年ますます使用されている(非特許文献1)。
【非特許文献1】Bradley C,Bowen M,“Amphetamine(benzedrine)therapy of children’s behavior disorders.” American Journal of Orthopsychiatry 11:92−103(1941)
【0004】
その刺激効果のためにアンフェタミン誘導体及び類縁体を含むアンフェタミンは、乱用されやすい。使用者はやがて、これらの薬剤が正規の治療目的のために使用されるときであっても、前記薬剤と、その身体的効果及び心理的効果とに依存するようになる場合がある。薬剤耐性を発現する正規のアンフェタミン使用者は、処方される薬剤に対する耐性の増大に対抗するために用量を増加させるので偶発性中毒者に特になりやすい。加えて個人が、前記薬剤を処方される量より多く不適切に自己投与する場合か、製品又は(例えば(鼻からの吸入のような)吸入、注射及び喫煙のような)投与径路を変更する場合かがあり、処方される量より大量の活性薬剤の即時放出につながる可能性がある。処方される用量より多くの量が摂取されるとアンフェタミンは、高揚感と、エネルギー増大の感覚と、精神的な覚醒とを一時的に引き起こす場合がある。
【0005】
処方薬剤製品の乱用における最近の新事態は、ADHDに対して処方されるアンフェタミンの乱用についての懸念を増大させる。薬物使用及び保健に関する全米調査(NSDUH)は、2003年には12歳以上の米国人120万人がアンフェタミンのような刺激剤を乱用したと推定する。乱用の可能性の高さは、アンフェタミンを、規制物質法(CSA)に記載のスケジュールII状態に分類する。スケジュールII分類は、認められた医学的用途を有するが乱用の可能性が最も高い薬剤のために設けられる。
【0006】
例えばアデロールXR(Adderall XR、登録商標)のようなアンフェタミンの持続放出製剤は、前記製剤の錠剤のそれぞれが高濃度のアンフェタミンを含有するために、単回投与錠剤と比較して乱用の可能性が大きい。物質の乱用者が、前記錠剤を砕いた粉末を鼻から吸入することか、前記粉末を水に溶解しそれを注射することかによって、迅速に作用が始まる高用量のアンフェタミンを摂取することが可能な場合がある。持続放出製剤は、薬剤の放出が不規則な場合もある。
【0007】
アンフェタミンとアンフェタミンの乱用とについての追加情報は、特許文献13に見出される場合がある。
【特許文献13】米国特許出願公開公報第2005/0054561号(米国特許出願第10/858,526号)明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらなるアンフェタミン化合物、特に乱用抵抗性アンフェタミン化合物に対する必要性が存在する。さらに持続放出及び持続的治療効果を提供するアンフェタミン医薬品組成物に対する必要性が存在する。
【0009】
図表の簡単な説明
図1.ペプチドアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図である。
【0010】
図2.リシンアンフェタミンジメシル酸塩の合成を示す図である。
【0011】
図3.リシンアンフェタミン塩酸の合成を示す図である。
【0012】
図4.セリンアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図である。
【0013】
図5.フェニルアラニンアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図である。
【0014】
図6.トリグリシンアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図である。
【0015】
図7.d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩を経口投与されたラット個体からのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0016】
以下の図(図8−16)は、d−アンフェタミン硫酸塩又はL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩のラットへの経口投与の研究(ELISA分析)から得られた結果を表す。
【0017】
図8.(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0018】
図9.(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0019】
図10.(用量6mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0020】
図11.(用量12mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0021】
図12.(用量30mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0022】
図13.(用量60mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0023】
図14.用量1.5、3、6、12、30及び60mg/kgのd−アンフェタミン塩基での、d−アンフェタミン硫酸塩と比較したL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の生体利用性の百分率(AUC及びCmax)を示すグラフである。
【0024】
図15.d−アンフェタミン塩基の用量の段階的増加に対する、投与後30分でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0025】
図16.(用量60mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0026】
図17.(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの鼻腔内投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(ELISA分析)を示すグラフである。
【0027】
図18.(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの鼻腔内投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(ELISA分析)を示すグラフである。
【0028】
図19.(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの静脈内ボーラス投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(ELISA分析)を示すグラフである。
【0029】
図20.(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)デキセドリンスパンスール(Dexedrine Spansule、登録商標)カプセルか、粉砕されたデキセドリンスパンスール(登録商標)カプセルか、L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩かのラットへの経口投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度レベル(ELISA分析)を示すグラフである。
【0030】
以下の図(図21−30)は、d−アンフェタミン硫酸塩又はL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩のラットへの経口投与の研究(LC/MS/MS分析)から得られた結果を表す。
【0031】
図21A及び図21B.(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図21A)及びnM単位(図21B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0032】
図22A及び図22B.(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図22A)及びnM単位(図22B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0033】
図23A及び図23B.(用量6mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図23A)及びnM単位(図23B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0034】
図24A及び図24B.(用量12mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図24A)及びnM単位(図24B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0035】
図25A及び図25B.(用量60mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図25A)及びnM単位(図25B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0036】
図26.ヒト等価用量の段階的増加に比例したL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの相対的生体利用性(Cmax)を示すグラフである。
【0037】
図27.d−アンフェタミン塩基の用量の段階的増加に比例したL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの相対的生体利用性(AUCinf)を示すグラフである。
【0038】
図28.ヒト等価用量の段階的増加に比例したL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの相対的生体利用性(AUCinf)を示すグラフである。
【0039】
図29.ヒト等価用量の段階的増加に比例したインタクトなL−リシン−d−アンフェタミンの相対的生体利用性(Cmax)を示すグラフである。
【0040】
図30.ヒト等価用量の段階的増加に比例したインタクトなL−リシン−d−アンフェタミンの相対的生体利用性(AUCinf)を示すグラフである。
【0041】
図31.(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの鼻腔内投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(LC/MS/MS分析)を示すグラフである。
【0042】
図32A及び図32B.(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの鼻腔内投与後のng/mL単位(図32A)及びnM単位(図32B)でのd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンの血漿中濃度(LC/MS/MS分析)を示すグラフである。
【0043】
図33.(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの静脈内ボーラス投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(LC/MS/MS分析)を示すグラフである。
【0044】
図34A及び図34B.(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの静脈内投与後のng/mL単位(図34A)及びnM単位(図34B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度(LC/MS/MS分析)を示すグラフである。
【0045】
以下の図(図35−40)は、(用量1mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミン硫酸塩又はL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の意識のある雄ビーグル犬への経口及び静脈内投与の研究(LC/MS/MS分析)から得られた結果を表す。
【0046】
図35.L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内又は経口投与(n=3)後のL−リシン−d−アンフェタミンの平均血漿中濃度の経時変化を示すグラフである。
【0047】
図36.L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内又は経口投与(n=3)後のd−アンフェタミンの血漿中濃度の経時変化を示すグラフである。
【0048】
図37A及び図37B.L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内投与(n=3)後のng/mL単位(図37A)及びnM単位(図37B)でのL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの平均血漿中濃度レベルの経時変化を示すグラフである。
【0049】
図38A及び図38B.L−リシン−d−アンフェタミンの経口投与(n=3)後のng/mL単位(図38A)及びnM単位(図38B)でのL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの平均血漿中濃度レベルの経時変化を示すグラフである。
【0050】
図39A及び図39B.L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内投与(図39A)又は経口投与(図39B)後のL−リシン−d−アンフェタミンの個体ごとの血漿中濃度の経時変化を示すグラフである。
【0051】
図40A及び図40B.L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内投与(図40A)又は経口投与(図40B)後のd−アンフェタミンの個体ごとの血漿中濃度の経時変化を示すグラフである。
【0052】
図41.(用量1.8mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩の雄イヌへの経口投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0053】
図42.(用量1.8mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩の雌イヌへの経口投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフである。
【0054】
図43.L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミンの雄イヌ及び雌イヌへの増量静脈内注射後の平均血圧を示すグラフである。
【0055】
図44.L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミンの雄イヌ及び雌イヌへの増量静脈内注射後の左心室血圧を示すグラフである。
【0056】
以下の図(図45−49)は、d−アンフェタミン硫酸塩又はL−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩のラットへの(用量6mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)経口投与、(用量1mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)鼻腔内投与及び(用量1mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)静脈内投与の研究から得られた結果を表す。
【0057】
図45.経口投与後のラットの自発運動活性(5時間の経時変化)を示すグラフである。
【0058】
図46.経口投与後のラットの自発運動活性(12時間の経時変化)を示すグラフである。
【0059】
図47.鼻腔内投与後のラットの自発運動活性(1時間の経時変化)を示すグラフである。
【0060】
図48.(カルボキシメチルセルロースと併用した)鼻腔内投与後のラットの自発運動活性(2時間の経時変化)を示すグラフである。
【0061】
図49.静脈内投与後のラットの自発運動活性(3時間の経時変化)を示すグラフである。
【0062】
以下の図(図50−58)は、d−アンフェタミン又はアンフェタミンコンジュゲート塩酸塩のラットへの経口投与、鼻腔内投与及び静脈内投与の研究(ELISA分析)から得られた結果を表す。
【0063】
図50.乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸、ジペプチド及びトリペプチドコンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフである。
【0064】
図51.乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸、ジペプチド及びトリペプチドコンジュゲートの経口生体利用性を示すグラフである。
【0065】
図52.乱用抵抗性アンフェタミントリペプチドコンジュゲートの静脈内生体利用性を示すグラフである。
【0066】
図53.乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸コンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフである。
【0067】
図54.乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸コンジュゲートの経口生体利用性を示すグラフである。
【0068】
図55.乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸コンジュゲートの静脈内生体利用性を示すグラフである。
【0069】
図56.乱用抵抗性アンフェタミントリペプチドコンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフである。
【0070】
図57.乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸及びジペプチドコンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフである。
【0071】
図58.D−及びL−アミノ酸異性体を含む乱用抵抗性アンフェタミンジペプチドコンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフである。
【0072】
図59A及び図59B.(用量5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの経口投与後の、d−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンの血清中濃度(ng/mL単位、図59A)と、脳組織内濃度(ng/g単位、図59B)(LC/MS/MS分析)を示すグラフである。
【0073】
図60.L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩70mgのヒトへの経口投与の臨床研究から得られた定常状態の血漿中のd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンのレベル(LC/MS/MS分析)を示すグラフである。
【0074】
以下の図(図61−70)は、L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩のヒトへの経口投与の臨床研究(LC/MS/MS分析)から得られた結果を表す。
【0075】
図61A及び図61B.L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基7.37mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩25mg)のヒトへの経口投与後72時間にわたる血漿中のd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンのレベル(図61Aはng/mL単位、図61BはnM単位。)を示すグラフである。
【0076】
図62A及び図62B.L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)のヒトへの経口投与後72時間にわたる血漿中のd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンのレベル(図62Aはng/mL単位、図62BはnM単位。)を示すグラフである。
【0077】
図63A及び図63B.L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)又は(アンフェタミン塩基21.9mgを含む35mgの)アデロールXR(登録商標)のヒトへの経口投与後の血漿中のd−アンフェタミンのレベル(図63Aは0−12時間、図63Bは0−72時間。)を示すグラフである。
【0078】
図64A及び図64B.L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)又は(アンフェタミン塩基22.1mgを含む30mgの)デキセドリンスパンスール(登録商標)のヒトへの経口投与後の血漿中のd−アンフェタミンのレベル(図64Aは0−12時間、図64Bは0−72時間。)を示すグラフである。
【0079】
図65.単回用量が30mg、50mg及び70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩のADHD小児患者への絶食条件下での経口投与後のd−アンフェタミンの平均血漿中濃度を示すグラフである。
【0080】
図66.健康な成人ボランティアと、ADHD児童とへのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩カプセルの1日1回の経口投与後の、用量で規格化されたd−アンフェタミンのAUCと性別との間の関係を示すグラフである。
【0081】
図67.健康な成人ボランティアと、ADHD児童とへのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩カプセルの1日1回の経口投与後の、用量で規格化されたd−アンフェタミンの最大血漿中濃度と性別との間の関係を示すグラフである。
【0082】
図68.健康な成人ボランティアと、ADHD児童とへのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩カプセルの1日1回の経口投与後の、用量で規格化されたd−アンフェタミンの最大濃度到達時間と性別との間の関係を示すグラフである。
【0083】
図69.小児臨床研究についての終点でのADHD−RSを示すグラフである。
【0084】
図70.小児臨床研究についてのSKAMPスコア(有効性)対時間を示すグラフである。
【課題を解決するための手段】
【0085】
発明の詳細な説明
本発明は、化学的部分と共有結合したアンフェタミンを含むアンフェタミンプロドラッグを提供する。前記アンフェタミンプロドラッグは、共有結合を有するコンジュゲートであることを特徴とする場合もある。前記アンフェタミンプロドラッグは、経口投与が前記化学的部分から前記アンフェタミンを放出させるときまでは前記アンフェタミンプロドラッグは不活性状態に置かれることが好ましいという点で、条件付き生体可逆的誘導体(CBDs)であることを特徴とする場合もある。
【0086】
1つの実施態様では本発明は、化学式Iのアンフェタミンプロドラッグを提供する。
【0087】
【化1】
【0088】
化学式IにおいてAはアンフェタミンである。
【0089】
Xはそれぞれ独立の化学的部分である。
【0090】
Zはそれぞれ独立の化学的部分であって、アジュバントとして作用し、かつ、少なくとも1個のXと異なる化学的部分である。
【0091】
nは、1から50までの、好ましくは1ないし10の、インクリメント(increment)である。
【0092】
mは、0から50までの、好ましくは0の、インクリメントである。
【0093】
mが0のとき前記アンフェタミンプロドラッグは、化学式(II)の化合物である。
【0094】
【化2】
【0095】
化学式(II)においてXはそれぞれ独立の化学的部分である。
【0096】
化学式(II)は、前記アンフェタミンと物理的に結合した化学的部分を指定するために化学式(III)のように記述される場合もある。
【0097】
【化3】
【0098】
化学式(III)においてAはアンフェタミンである。X1は化学的部分であり、好ましくは単一アミノ酸である。Xはそれぞれ独立の化学的部分であって、X1と同じである又は異なる化学的部分である。nは1から50までのインクリメントである。
【0099】
Aすなわちアンフェタミンは、アンフェタミンのような中枢神経系刺激活性を有する交感神経興奮剤のフェネチルアミン誘導体か、いずれかの誘導体、類縁体又はそれらの塩かのいずれかの場合がある。代表的なアンフェタミン類は、アデロール(登録商標)のアンフェタミン化合物と、アンフェタミン、メタンフェタミン、メチルフェニデート、p−メトキシアンフェタミン、メチレンジオキシアンフェタミン、2,5−ジメトキシ−4−メチルアンフェタミン、2,4,5−トリメトキシアンフェタミン及び3,4−メチレンジオキシメタンフェタミン、N−エチルアンフェタミン、フェネチリン、ベンズフェタミン並びにクロルフェンテルミンと、アクテドロン(actedron)と、アクテミン(actemin)と、アジパン(adipan)と、アケドロン(akedron)と、アロデン(allodene)と、アルファ−メチル−(±)−ベンゼンエタンアミンと、アルファ−メチルベンゼンエタンアミンと、アルファ−メチルフェネチルアミンと、アンフェタミンと、アンフェート(amphate)と、アノレキシン(anorexine)と、ベンズバール(benzebar)と、ベンゼドリン(benzedrine)と、ベンジルメチルカルビナミン(benzyl methyl carbinamine)と、ベンゾロン(benzolone)と、ベータ−アミノプロピルベンゼンと、ベータ−フェニルイソプロピルアミンと、ビフェタミン(biphetamine)と、デソキシノレフェドリン(desoxynorephedrine)と、ジエタミン(dietamine)と、DL−アンフェタミンと、エラストノン(elastonon)と、フェノプロミン(fenopromin)と、ファイナム(finam)と、イソアミン(isoamyne)と、イソミン(isomyn)と、メコドリン(mecodrin)と、モノフォス(monophos)と、マイドリアル(mydrial)と、ノレフェドラン(norephedrane)と、ノビドリン(novydrine)と、オベシン(obesin)と、オベシン(obesine)と、オベトロール(obetrol)と、オクテドリン(octedrine)と、オクテドリン(oktedrin)と、フェナミン(phenamine)と、フェネドリン(phenedrine)と、アルファ−メチル−フェネチルアミンと、ペルコモン(percomon)と、プロファミナ(profamina)と、プロフェタミン(profetamine)と、プロピスアミン(propisamine)と、ラセフェン(racephen)と、ラフェタミン(raphetamine)と、ライナレーター(rhinalator)と、シンパミン(sympamine)と、シンパテドリン(simpatedrin)と、シンパティナ(simpatina)と、シンパテドリン(sympatedrine)と、ウェッカミン(weckamine)とを含むがこれらに限定されない。好ましいアンフェタミン類はメタンフェタミン、メチルフェニデート及びアンフェタミンを含み、アンフェタミンが最も好ましい。
【0100】
【化4】
【0101】
前記アンフェタミンは、右旋性及び左旋性の両方の異性体を含むいずれかの立体配置を有する場合がある。右旋性異性体、特にデキストロアンフェタミンが好ましい。
【0102】
前記アンフェタミンは、アンフェタミン塩であることが好ましい。例えば毒性のない無機酸及び有機酸付加塩のような医薬品として許容可能な塩は、当業者に知られている。代表的な塩は、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アムソン酸塩(amsonate)、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、エデト酸カルシウム、ショウノウ酸塩、ショウノウ硫酸塩(camphorsulfonate)、カンシル酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、クラブラル酸塩(clavulariate)、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストール酸塩(estolate)、エシル酸塩、エタンスルホン酸塩、フィナル酸塩(finnarate)、グルセプト酸塩(gluceptate)、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコールリラルサニル酸塩(glycollylarsanilate)、ヘミ硫酸塩(hemisulfate)、ヘプタン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、ラウリルスルホン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、臭化メチル、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、粘液酸塩、ナフチル酸塩(naphthylate)、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、リン酸塩、リン酸/2リン酸塩(phosphateldiphosphate)、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、サッカラート、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、スラマート(suramate)、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸、チオシアン酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド(triethiodide)、ウンデカン酸塩及び吉草酸塩と、これらに類するものとを含むがこれらに限定されない。(Berge et al.(1977)“Pharmaceutical Salts”,J Pharm.Sci.66:1−19を参照せよ。)好ましいアンフェタミン塩は、(例えばL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩のような)メシル酸塩である。
【0103】
特定の塩は、吸湿性がより低いため取り扱いが容易になる場合がある。好ましい実施態様では前記アンフェタミンプロドラッグは、約0%ないし約5%か、約0.1%ないし約3%か、約0.25%ないし約2%か、その範囲内の増分数(increments)かの(カールフィッシャー分析による)水分含量を有する。前記アンフェタミンプロドラッグが医薬品組成物中に処方されるとき、前記医薬品組成物は好ましくは約1%ないし約10%か、約1%ないし約8%か、約2%ないし約7%か、その範囲内の増分数かの水分含量を有する。
【0104】
本出願を通じて「増分数(increment)」という用語は、例えば10の位まで、1の位まで、0.1の位まで、0.01等の位までというように種々の精度で数値を定義するために使用される。前記増分数は、いずれかの測定可能な精度まで四捨五入される場合がある。例えば1ないし100の範囲かその範囲内の増分数かは、20ないし80と、5ないし50と、0.4ないし98と、0.04ないし98.05とのような範囲を含む。
【0105】
前記アンフェタミンは、X及びZと命名される1個又は2個以上の化学的部分と結合する。化学的部分は、該化学的部分と結合している間、未結合の(遊離の)アンフェタミンと比較してアンフェタミンの薬理活性を減少させるいずれかの部分の場合がある。結合する化学的部分は、天然か、合成かの場合がある。代表的な化学的部分は、単一アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド及びポリペプチドを含むペプチドと、糖ペプチドと、炭水化物と、脂質と、ヌクレオシドと、核酸と、ビタミンとを含むがこれらに限定されない。前記化学的部分は、一般的に安全と認められる(GRAS)ことが好ましい。
【0106】
「炭水化物」は例えば(CH2O)n及びCn(H2O)n-1のような、糖と、デンプンと、セルロースと、関連する化合物とを含み、前記(CH2O)nにおいてnは2より大きい整数であり、前記Cn(H2O)n-1においてnは5より大きい整数である。前記炭水化物は、単糖か、二糖か、オリゴ糖か、多糖か、(例えばスルホ基置換又はリン酸基置換された誘導体のような)それらの誘導体かの場合がある。代表的な炭水化物は、フルクトース、グルコース、ラクトース、マルトース、スクロース、グリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、エリスロース、リボース、リブロース、キシルロース、ガラクトース、マンノース、セドヘプツロース、ノイラミン酸、デキストリン及びグリコーゲンを含むがこれらに限定されない。
【0107】
「糖ペプチド」は、オリゴペプチドに連結された炭水化物である。同様に前記化学的部分は、糖タンパク質、糖アミノ酸又はグリコシルアミノ酸の場合もある。「糖タンパク質」は、タンパク質と共有結合した(例えばグリカンのような)炭水化物である。「糖アミノ酸」は、単一アミノ酸と共有結合した(例えば糖類のような)炭水化物である。「グリコシルアミノ酸」は、アミノ酸に(O−、N−又はS−)グリコシル結合を通じて連結された(例えば糖類のような)炭水化物である。
【0108】
「ペプチド」は、単一アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド又はキャリアーペプチドを含む。オリゴペプチドは2個から70個までのアミノ酸を含む。
【0109】
好ましくは前記化学的部分はペプチドであり、具体的には単一アミノ酸、ジペプチド又はトリペプチドである。前記ペプチドは、70個未満のアミノ酸か、50個未満のアミノ酸か、10個未満のアミノ酸か、4個未満のアミノ酸かを含むことが好ましい。前記化学的部分が1個又は2個以上のアミノ酸のとき前記アンフェタミンは、リシン、セリン、フェニルアラニン又はグリシンと結合していることが好ましい。別の実施態様では前記アンフェタミンは、リシン、グルタミン酸又はロイシンと結合していることが好ましい。別の実施態様では前記アンフェタミンは、リシンと、例えば付加的なアミノ酸のような任意の付加的な化学的部分とに結合している。好ましい実施態様では前記アンフェタミンは、単一のリシンアミノ酸と結合している。
【0110】
ある実施態様では前記化学的部分は、1個から12個までのアミノ酸、好ましくは1個ないし8個のアミノ酸である。別の実施態様ではアミノ酸の数は、1個、2個、3個、4個、5個、6個又は7個である。別の実施態様では前記化学的部分の分子量は、約2,500kD未満であり、より好ましくは約1,000kD未満であり、最も好ましくは約500kD未満である。
【0111】
各々のアミノ酸は、アラニン(Ala又はA)、アルギニン(Arg又はR)、アスパラギン(Asn又はN)、アスパラギン酸(Asp又はD)、システイン(Cys又はC)、グリシン(Gly又はG)、グルタミン酸(Glu又はE)、グルタミン(Gln又はQ)、ヒスチジン(His又はH)、イソロイシン(Ile又はI)、ロイシン(Leu又はL)、リシン(Lys又はK)、メチオニン(Met又はM)、プロリン(Pro又はP)、フェニルアラニン(Phe又はF)、セリン(Ser又はS)、トリプトファン(Trp又はW)、トレオニン(Thr又はT)、チロシン(Tyr又はY)及びバリン(Val又はV)のような天然のアミノ酸のL−又はD−対掌体のいずれか、好ましくはL−対掌体の場合がある。好ましい実施態様では前記ペプチドは、天然に存在するアミノ酸のみ及び/又はL−アミノ酸のみを含む。各々のアミノ酸は、アミノヘキサン酸、ビフェニルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、ジエチルグリシン、ジプロピルグリシン、2,3−ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、ホモセリン、ホモチロシン、ナフチルアラニン、ノルロイシン、オルニチン、フェニルアラニン(4−フルオロ)、フェニルアラニン(2,3,4,5,6−ペンタフルオロ)、フェニルアラニン(4−ニトロ)、フェニルグリシン、ピペコリン酸、サルコシン、テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸及びtert−ロイシンのような非天然、非標準的又は合成のアミノ酸の場合がある。好ましくはアルキル側鎖を有する合成アミノ酸は、炭素数1−17個のアルキル基、好ましくは炭素数1−6個のアルキル基から選択される。ある実施態様では前記ペプチドは、例えばセリン及びトレオニンのような1個又は2個以上のアミノ酸アルコールを含む。別の実施態様では前記ペプチドは、例えばN−メチルアスパラギン酸のような1個又は2個以上のN−メチルアミノ酸を含む。
【0112】
ある実施態様では前記ペプチドは基礎となる短鎖アミノ酸配列として利用され、付加的なアミノ酸が末端又は側鎖に加えられる。別の実施態様では前記ペプチドは、1個又は2個以上のアミノ酸置換を有する場合がある。前記置換アミノ酸は、置換されるアミノ酸と構造、電荷又は極性が類似していることが好ましい。例えばイソロイシンはロイシンと類似しており、チロシンはフェニルアラニンと類似しており、セリンはトレオニンと類似しており、システインはメチオニンと類似しており、アラニンはバリンと類似しており、リシンはアルギニンと類似しており、アスパラギンはグルタミンと類似しており、アスパラギン酸はグルタミン酸と類似しており、ヒスチジンはプロリンと類似しており、グリシンはトリプトファンと類似している。
【0113】
前記ペプチドは、天然又は合成のアミノ酸のホモポリマー又はヘテロポリマーを含む場合がある。例えばアンフェタミンの前記ペプチドとの側鎖結合は、グルタミン酸、アスパラギン酸、セリン、リシン、システイン、トレオニン、アスパラギン、アルギニン、チロシン又はグルタミンを含むホモポリマー又はヘテロポリマーの場合がある。
【0114】
代表的なペプチドは、Lysと、Serと、Pheと、Gly−Gly−Glyと、Leu−Serと、Leu−Gluと、Glu及びLeuのホモポリマーと、(Glu)n−Leu−Serのヘテロポリマーとを含む。好ましい実施態様では前記ペプチドは、Lys、Ser、Phe又はGly−Gly−Glyである。
【0115】
1つの実施態様では前記化学的部分は、前記アンフェタミンとの結合点以外に、未結合のカルボキシ及び/又はアミンの末端官能基及び/又は側鎖官能基を1個又は2個以上有する。前記化学的部分は、そのような未結合の状態か、そのエステル又は塩かの場合がある。
【0116】
前記化学的部分は、直接的又は間接的にリンカーを通じて前記アンフェタミンと共有結合している場合がある。共有結合は、エステル結合又は炭酸塩結合(carbonate bond)を含む場合がある。前記結合部位は典型的には、前記アンフェタミン上で利用可能な官能基により決定される。例えばペプチドは、N−末端か、C−末端か、アミノ酸の側鎖かを介してアンフェタミンと結合する場合がある。アンフェタミンを種々の代表的な化学的部分と結合するさらなる方法については、その各々はその全体が引用によって本明細書に取り込まれる米国特許出願第10/156,527号明細書と、PCT/US03/05524号明細書と、PCT/US03/05525号明細書とを参照せよ。
【0117】
上述のアンフェタミンプロドラッグ化合物は、実施例1及び図1で説明されるように合成される場合がある。好ましくはさらなる精製及び/又は結晶化のステップは、高純度の生成物を得るためには必ずしも必要ではない。1つの実施態様では前記アンフェタミンプロドラッグの純度は、少なくとも約95%であり、より好ましくは少なくとも約96%か、97%か、98%か、98.5%か、99%か、99.5%か、99.9%か、その範囲内の増分数かである。L−リシン−d−アンフェタミンの合成に係る既知の不純物は、Lys−Lys−d−アンフェタミン、Lys(Lys)−d−アンフェタミン、d−アンフェタミン、Lys(Boc)−d−アンフェタミン、Boc−Lys−d−アンフェタミン及びBoc−Lys(Boc)−d−アンフェタミンを含む。1つの実施態様ではいずれかの単一の不純物の存在量は約3%未満であり、より好ましくは約2%未満か、1%未満か、0.5%未満か、0.25%未満か、0.15%未満か、0.1%未満か、0.05%未満か、その範囲内の増分数未満かである。
【0118】
1つの実施態様では前記アンフェタミンプロドラッグ(上述の化学式で示したうち1種類の化合物)は、遊離のアンフェタミンを越える以下の利点の1個又は2個以上を示す場合がある。前記アンフェタミンプロドラッグは、例えば処方された用量より多いというように治療のための用量よりも高い用量が投与されたときに、薬理活性が低減されていることにより過剰投与を防止する場合がある。しかし前記アンフェタミンプロドラッグが治療のための用量で投与された場合に前記アンフェタミンプロドラッグは、例えばアデロールXR(登録商標)のような未結合のアンフェタミンを投与することにより得られるのと類似の薬理活性を有する場合がある。また前記アンフェタミンプロドラッグは、前記アンフェタミンを放出しようと試みる不正な化学者により利用されそうな条件下で安定性を示すことにより乱用を防止する場合がある。前記アンフェタミンプロドラッグは、特に不正使用においてしばしば利用される静脈内(シューティング)、鼻腔内(スノーティング)及び/又は吸入(スモーキング)の経路のような非経口径路を介して投与された場合に生体利用性が低減されていることにより乱用を防止する場合がある。したがって前記アンフェタミンプロドラッグは、アンフェタミン乱用に関連する陶酔効果も低減させる場合がある。したがって前記アンフェタミンプロドラッグは、例えば前記アンフェタミンプロドラッグの治療のための用量より高い用量を消費したり、又は、非経口の投与径路を介して消費したりするような製造者の指示に従わない方法で前記アンフェタミンプロドラッグが使用された場合に、乱用及び/又は過剰投与の可能性を防止及び/又は低減する場合がある。
【0119】
「減少した(decreased)」、「低減した(reduced)」、「減弱した(diminished)」又は「低下した(lowered)」のような語句の使用は、薬理活性においては少なくとも10%の変化を含み、乱用及び過剰投与の可能性の低減に対してはより大きな百分率での変化が好ましい。例えば前記変化は、25%か、35%か、45%か、55%か、65%か、75%か、85%か、95%か、96%か、97%か、98%か、99%か、10%より大きい他の増分数かよりも大きい場合もある。
【0120】
「類似の薬理活性」という語句の使用は、2種類の化合物が実質的に同じ、好ましくはお互いの約30%以内の、より好ましくは約25%以内か、20%以内か、10%以内か、5%以内か、2%以内か、1%以内か、30%未満の他の増分数以内かの、AUC、Cmax、Tmax、Cmin及び/又はt1/2パラメーターを有する曲線を示すことを意味する。
【0121】
好ましくは前記アンフェタミンプロドラッグは、未結合のアンフェタミンの少なくとも約60%のAUC(曲線下面積)、より好ましくは少なくとも約70%か、80%か、90%か、95%か、96%か、97%か、98%か、99%か、60%より大きい他の増分数かのAUCの経口生体利用性を示す。好ましくは前記アンフェタミンプロドラッグは、未結合のアンフェタミンの約70%未満のAUCの、より好ましくは約50%未満か、30%未満か、20%未満か、15%未満か、10%未満か、5%未満か、4%未満か、3%未満か、2%未満か、1%未満か、70%未満の他の増分数未満かのAUCの、例えば鼻腔内生体利用性のような非経口生体利用性を示す。特定の治療に対しては前記アンフェタミンプロドラッグが上述の経口及び非経口の生体利用性特性の両方を示すことが望ましい。例えば表61を参照せよ。
【0122】
前記アンフェタミンプロドラッグは、経口投与された該プロドラッグが前記アンフェタミンを放出するまでは不活性のままであることが好ましい。理論的な裏づけはないものの、前記化学的部分の結合が前記アンフェタミンと(例えばヒトドーパミン(DAT)及びノルエピネフリン(NET)のトランスポーター部位のような)その生物学的標的部位との間の結合を低減するため前記アンフェタミンプロドラッグは不活性であると信じられている。(Hoebel,B.G.,L.Hernandez,et al.,“Microdialysis studies of brain norepinephrine,serotonin,and dopamine release during ingestive behavior,Theoretical and clinical implications.”Ann KY Acad Sd 575:171−91(1989)を参照せよ。)前記化学的部分の結合は、1つには前記アンフェタミンプロドラッグが血液脳関門を通過することができないという理由で、アンフェタミンとDAT及び/又はNETとの間の結合を低減する場合がある。前記アンフェタミンプロドラッグは経口投与により活性化される、すなわち前記アンフェタミンは例えば胃、腸管又は血清中の酵素によるような加水分解により前記化学的部分から放出される。経口投与は活性化を促進するので、前記アンフェタミンプロドラッグが不法使用者により利用されることの多い非経口径路を介して投与される場合には、活性化は低減される。
【0123】
さらに前記アンフェタミンプロドラッグは、加水分解部位すなわち胃腸管での天然のゲーティング機構のため乱用及び/又は過剰投与に対する抵抗性があると信じられている。このゲーティング機構は前記アンフェタミンプロドラッグから治療量のアンフェタミンの放出を可能にするが、より多量のアンフェタミンの放出を制限すると考えられている。
【0124】
別の実施態様ではアンフェタミンプロドラッグの毒性は、未結合のアンフェタミンの毒性より実質的に低い。例えば好ましい実施態様では急性毒性は、未結合のアンフェタミンの経口投与よりも1倍か、2倍か、3倍か、4倍か、5倍か、6倍か、7倍か、8倍か、9倍か、10倍か、その範囲内の増分数かだけ致死性が低い。
【0125】
前記アンフェタミンプロドラッグは、治療のための用量より高い用量で投与された場合に前記アンフェタミンの毒性レベルを増加させない血清中放出曲線を提供することが好ましい。前記アンフェタミンプロドラッグは、未結合のアンフェタミンと比較してアンフェタミン吸収速度の低減、及び/又は、クリアランス速度の増加を示す場合がある。前記アンフェタミンプロドラッグは、定常状態血清放出曲線を示す場合もある。前記アンフェタミンプロドラッグは生体利用性を提供するが、Cmaxの急上昇か血清中濃度の増加かを防止することが好ましい。薬物動態パラメーターは以下の実施例、特に臨床薬物動態学的な実施例で説明される。1つの実施態様では前記アンフェタミンプロドラッグは、臨床的に測定されるL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の薬物動態活性と類似の薬理活性を提供する。例えば前記薬理学的パラメーター(AUC、Cmax、Tmax、Cmin及び/又はt1/2)は、好ましくは所与の値の80%ないし125%か、80%ないし120%か、85%ないし125%か、90%ないし110%か、その範囲内の増分数かの範囲内である。前記範囲は、例えば85%ないし105%のように対称的な場合があるが、必須ではないと考えられるべきである。小児医学的な研究については、L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩から放出されたd−アンフェタミンの前記薬物動態パラメーターは表72に列挙される。
【0126】
前記アンフェタミンプロドラッグは、遅延放出特性及び/又は持続放出特性を示す場合がある。遅延放出は薬理効果の迅速な開始を防止し、持続放出は例えば1日1回の投与計画のような特定の投与計画にとって望ましい特徴である。前記アンフェタミンプロドラッグは、独立して前記放出プロファイルを獲得する場合がある。代替的に前記アンフェタミンプロドラッグは、そのような放出プロファイルを増強又は達成するために医薬品として処方される場合がある。例えば即効型製品とともに処方することにより薬理効果の開始までの時間を短縮することが望ましい場合がある。
【0127】
したがって本発明は、アンフェタミンプロドラッグを提供、投与、処方又は消費することを含む方法も提供する。本発明は、アンフェタミンプロドラッグを含む医薬品組成物も提供する。かかる医薬品組成物の剤形は、前記望ましい放出プロファイルを任意に増強又は達成する場合がある。
【0128】
1つの実施態様では本発明は、アンフェタミンプロドラッグの治療上の有効量、すなわち疾病の症状を防止、改善及び/又は除去するために十分な量を投与することを含む、患者の治療方法を提供する。これらの方法は、例えばADD及びADHDのような注意欠陥障害その他の学習障害と、肥満症と、アルツハイマー病、健忘症並びにその他の記憶疾患(memory disorders)及び記憶障害(memory impairments)と、線維筋痛と、疲労及び慢性疲労と、うつ病と、てんかんと、強迫神経症(OCD)と、反抗的行為障害(ODD)と、不安神経症と、抵抗性うつ病(resistant depression)と、脳卒中リハビリテーションと、パーキンソン病と、気分障害と、統合失調症と、ハンチントン病と、例えばAIDS認知症及び前頭葉認知症のような認知症と、運動機能不全(movement disfunction)と、無気力症と、ピック病と、クロイツフェルト−ヤコブ病と、例えばナルコレプシー、カタプレキシー、睡眠麻痺及び入眠時幻覚のような睡眠障害と、例えば多発性硬化症、トゥレット症候群及びインポテンスのような脳損傷又は神経変性に関連する疾患と、ニコチン依存症及び禁断症状とを含むがこれらに限定されないアンフェタミン型の薬剤から利益を受ける場合があるいずれかの疾病を治療するために使用される場合がある。好ましい適応症は、ADD、ADHD、ナルコレプシー及び肥満症を含み、ADHDが最も好ましい。
【0129】
前記治療方法は、アンフェタミンプロドラッグを投与することに加え1種類又は2種類以上の治療薬を投与することをさらに含む併用療法を含む。前記活性成分は、単回投与形態で処方される場合か、一度に又は別々に複数回投与形態の中で処方される場合かがある。前記活性成分は、同時に、又は、いずれかの順序で順番に投与される場合がある。代表的な併用療法は表1に列挙される薬剤の投与を含む。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
「組成物」は、1種類又は2種類以上のアンフェタミンプロドラッグを含むいずれかの組成物を広く指す。前記組成物は、乾燥剤形か、水溶液か、無菌の組成物かを含む場合がある。本明細書で説明される化合物を含む組成物は、凍結乾燥された形態で保存される場合と、炭水化物のような安定剤に結合される場合とがある。使用の際前記組成物は、例えばNaClのような塩、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)のような洗剤及びその他の成分を含む水溶液中に入れられる場合がある。
【0133】
ある実施態様では前記アンフェタミンプロドラッグ自体が、持続放出プロファイルを示す。したがって本発明は、アンフェタミンプロドラッグのために持続放出プロファイルを示す医薬品組成物を提供する。
【0134】
別の実施態様では持続放出プロファイルは、前記医薬品組成物中に親水性ポリマーを含めることにより増強又は達成される。適切な親水性ポリマーは、アカシア、トラガカントガム、ローカストビーンガム、グァーガム及びカラヤガムのような天然か、部分合成又は完全合成かの親水性ガムと、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースのようなセルロース誘導体と、寒天、ペクチン、カラギーン及びアルギン酸塩のようなタンパク質性物質と、カルボキシポリメチレンのような親水性ポリマーと、ゼラチンと、カゼインと、ゼインと、ベントナイトと、ケイ酸アルミニウムマグネシウムと、多糖類と、加工デンプン誘導体と、当業者に知られている他の親水性ポリマーとを含むがこれらに限定されない。前記親水性ポリマーは、ゲルであって酸性水溶液中にゆっくりと溶解するため胃中で該ゲルからアンフェタミンプロドラッグを拡散させることができるゲルを形成することが好ましい。その後前記ゲルがより高いpHの腸液に到達したときに前記親水性ポリマーは、さらなる持続放出を可能にするために溶解し、調節された量となる。好ましい親水性ポリマーは、例えばメトセルE10M(Methocel E10M、登録商標、Dow Chemical Company,Midland,Michigan)のようなメトセルエーテル(Methocel ethers)のようなヒドロキシプロピルメチルセルロースである。当業者は、特定の放出プロファイルを得るために有用なビーズ構造及びコーティングのようなさまざまな構造を認識するだろう。米国特許公報第6,913,768号明細書を参照せよ。
【0135】
アンフェタミンプロドラッグに加えて、本発明の医薬品組成物は1種類又は2種類以上の医薬品添加物をさらに含む。医薬品添加物は、希釈剤及びバルク物質と、結合剤及び粘着剤と、滑剤と、流動促進剤と、可塑剤と、崩壊剤と、キャリアー溶媒と、緩衝剤と、着色料と、香料と、甘味料と、保存料と、安定剤と、当業者に知られているその他の医薬品添加物とを含むがこれらに限定されない広範な物質を含む。例えば好ましい実施態様では、前記医薬品組成物はステアリン酸マグネシウムを含む。別の好ましい実施態様では前記医薬品組成物は、(例えばアビセル(Avicel、登録商標)PH−102のような)微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを含む。例えば表62を参照せよ。
【0136】
希釈剤は、投与形態の容積を増加させ、該投与形態を取り扱いやすくする場合がある。代表的な希釈剤は、例えば錠剤及びカプセル剤のような固体投与形態のためのラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、デンプン及びリン酸カルシウムと、ソフトカプセル剤のためのオリーブオイル及びオレイン酸エチルと、例えば懸濁液及び乳化液のような液体投与形態のための水及び植物油と含むがこれらに限定されない。さらなる適切な希釈剤は、スクロース、デキストレート(dextrates)、デキストリン、マルトデキストリン、(例えばアビセル(登録商標)のような)微結晶性セルロース、超微粒セルロース(microfine cellulose)、粉末セルロース、(例えばスターチ1500(Starch 1500、登録商標)のような)アルファ化デンプン、リン酸カルシウム二水和物、(例えばエムコソイ(Emcosoy、登録商標)のような)大豆多糖類、ゼラチン、二酸化ケイ素、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ソルビトール、マンニトール、カオリン、(例えばユードラジット(Eudragit、登録商標)のような)ポリメタクリル酸塩、塩化カリウム、塩化ナトリウム及びタルク含むがこれらに限定されない。好ましい希釈剤は、(例えばアビセル(登録商標)PH−102のような)微結晶性セルロースである。重量百分率で示す希釈剤の量の好ましい範囲は、約40%ないし約90%か、約50%ないし約85%か、約55%ないし約80%か、約50%ないし約60%か、その範囲内の増分数かを含む。
【0137】
前記医薬品組成物が例えば錠剤のような固体投与形態に詰められる実施態様では結合剤は、前記成分がいっしょに保持されるのを助ける場合がある。結合剤は、スクロース、ラクトース及びグルコースのような糖類と、コーンシロップと、大豆多糖類、ゼラチンと、(例えばコリドン(Kollidon、登録商標)、プラスドン(Plasdone、登録商標)のような)ポビドンと、プルランと、微結晶性セルロース、(例えばメトセル(Methocel、登録商標)のような)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、(例えばクルーセル(Klucel、登録商標)のような)ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びメチルセルロースのようなセルロース誘導体と、アクリル酸及びメタクリル酸共重合体と、(例えばカルボポール(Carbopol、登録商標)のような)カルボマーと、ポリビニルポリピロリドン、ポリエチレングリコール(カルボワックス(Carbowax、登録商標))と、製薬用光沢剤と、アルギン酸及びアルギン酸ナトリウムのようなアルギネート(alginates)と、アカシア、グァーガム及びアラビアゴムのようなゴムと、トラガカントガムと、デキストリン及びマルトデキストリンと、乳清のような乳の誘導体と、アルファ化デンプン及びデンプン糊のようなデンプンと、硬化植物油と、ケイ酸アルミニウムマグネシウムとを含むがこれらに限定されない。
【0138】
錠剤投与形態については前記医薬品組成物は、打錠器(punch)からの圧力と染料(dye)とに供される。他の目的の中で滑剤は、前記打錠器及び染料の表面に前記組成物が固着するのを防止する助けとなる場合がある。滑剤は、コーティング剤投与形態のコーティングに使用される場合もある。滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、粉末ステアリン酸、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン(glyceryl palmitostearate)、ベヘン酸グリセリン、シリカ、ケイ酸マグネシウム、コロイド性二酸化ケイ素、二酸化チタン、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、硬化植物油、タルク、ポリエチレングリコール及び鉱物油を含むがこれらに限定されない。好ましい滑剤はステアリン酸マグネシウムである。重量百分率で示す滑剤の量は好ましくは約5%未満であり、より好ましくは約4%未満か、3%未満か、2%未満か、1.5%未満か、1%未満か、0.5%未満か、その範囲内の増分数未満かである。
【0139】
流動促進剤は、詰められていない固体投与形態の流動性を向上させ、投与の精度を向上させる場合がある。流動促進剤は、コロイド性二酸化ケイ素、乾式二酸化ケイ素、シリカゲル、タルク、三ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム又はカルシウム、粉末セルロース、デンプン及びリン酸三カルシウムを含むがこれらに限定されない。
【0140】
可塑剤は、フタル酸ジエチル、フタル酸ブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クロト酸(cronotic acid)、プロピレングリコール、ヒマシ油、トリアセチン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン及びソルビトールのような、しかしこれらに限定されない疎水性可塑剤及び親水性可塑剤の両方を含む。可塑剤は、ポリマーを含みかつソフトカプセル剤及びフィルムコート錠剤中に処方される医薬品組成物にとって特に有用である。1つの実施態様では前記可塑剤は、前記投与形態からの前記アンフェタミンプロドラッグの放出を促進する。
【0141】
崩壊剤は、医薬品組成物の溶解速度を増大させる場合がある。崩壊剤は、アルギン酸及びアルギン酸ナトリウムのようなアルギネート(alginates)と、カルボキシメチルセルロースカルシウムと、(例えばAc−Di−Sol(登録商標)、プリメロース(Primellose、登録商標)のような)カルボキシメチルセルロースナトリウムと、コロイド性二酸化ケイ素と、クロスカルメロースナトリウムと、(例えばコリドン(登録商標)、プラスドン(登録商標)のような)クロスポビドンと、ポリビニルポリピロリドン(プラゾン−XL(Plasone−XL、登録商標))と、グァーガムと、ケイ酸アルミニウムマグネシウムと、メチルセルロースと、微結晶性セルロースと、ポラクリリンカリウム(polacrilin potassium)と、粉末セルロースと、デンプンと、アルファ化デンプンと、(例えばエキスプロタブ(Explotab、登録商標)、プリモゲル(Primogel、登録商標)のような)グリコール酸デンプンナトリウムとを含むがこれらに限定されない。好ましい崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウム及び(例えばアビセル(登録商標)PH−102のような)微結晶性セルロースを含む。重量百分率で示す崩壊剤の量の好ましい範囲は、約1%ないし約10%か、約1%ないし約5%か、約2%ないし約3%か、その範囲内の増分数かを含む。
【0142】
前記医薬品組成物が液体投与形態として処方される実施態様では前記医薬品組成物は、1種類又は2種類以上の溶媒を含む場合がある。適切な溶媒は、水と、エタノール及びイソプロピルアルコールのようなアルコール類と、塩化メチレンと、植物油と、ポリエチレングリコールと、プロピレングリコールと、グリセリンとを含むがこれらに限定されない。
【0143】
前記医薬品組成物は、緩衝液を含む場合がある。緩衝液は、乳酸、クエン酸、酢酸、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムを含むがこれらに限定されない。
【0144】
いかなる医薬品として許容可能な着色料でも、前記医薬品組成物の外観を向上させる目的か、前記医薬品組成物を特定するのを助ける目的かで使用される場合がある。米国連邦規則集、タイトル21、パート74を参照せよ。代表的な着色料は、赤色104号(1)、黄色203号、青色1号、赤色40号、緑色3号、黄色5号及び可食性インクを含む。ゼラチンカプセル剤にとって好ましい色は、白色と、中位のオレンジ色と、明るい青色とである。
【0145】
香料は味を向上させ、チュアブル錠剤又は液体投与形態にとって特に有用な場合がある。香料は、マルトール、バニリン、エチルバニリン、メントール、クエン酸、フマル酸、エチルマルトール及び酒石酸を含むがこれらに限定されない。甘味料は、ソルビトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクロース、アスパルテーム、フルクトース、マンニトール及び転化糖を含むがこれらに限定されない。
【0146】
本発明の医薬品組成物は、保存性を向上させるために1種類又は2種類以上の保存料及び/又は安定剤を含む場合もある。これらは、アルコール、安息香酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール及びエチレンジアミン四酢酸を含むがこれらに限定されない。
【0147】
他の医薬品添加物は、コロイド粘土のようなゲル化剤と、トラガカントガム及びアルギン酸ナトリウムのような濃厚剤と、レシチン、ポリソルビン酸塩及びラウリル硫酸塩のような湿潤剤と、保湿剤と、ビタミンE、カロテン及びBHTのような酸化防止剤と、吸着剤と、発泡剤と、乳化剤、粘度増強剤と、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンソルビタン、ポロザルコール(poloxalkol)及び四級アンモニウム塩のような界面活性剤と、ラクトース、マンニトール、グルコース、フルクトース、キシロース、ガラクトース、スクロース、マルトース、キシリトール、ソルビトール並びにカリウム、ナトリウム及びマグネシウムの塩化物、硫酸塩及びリン酸塩のような他の種々の賦形剤とを含む。
【0148】
前記医薬品組成物は、例えば湿式造粒、乾式造粒、被包、直接圧縮、スラッギング(slugging)等のような医薬品製造に関わる当業者に知られているいずれかの方法に従い製造される場合がある。例えば医薬品組成物は、湿式顆粒を形成するために好ましくは水である一定分量の液体といっしょに前記アンフェタミンプロドラッグを1種類又は2種類以上の医薬品添加物と混合することにより調製される場合がある。前記湿式顆粒は、顆粒を取得するために乾燥される場合がある。得られる顆粒は、粉砕され、ふるいにかけられ、水不溶性ポリマーと付加的な親水性ポリマーとのようなさまざまな医薬品添加物と混合される場合がある。1つの実施態様ではアンフェタミンプロドラッグは、親水性ポリマーと一定分量の水と混合され、その後親水性ポリマーにより被包されたアンフェタミンプロドラッグの顆粒を取得するために乾燥される。
【0149】
造粒後前記医薬品組成物は、例えばゼラチンカプセル中に被包されることが好ましい。前記ゼラチンカプセルは、例えばコーシャーゼラチン(kosher gelatin)と、二酸化チタンと、任意の着色料とを含む場合がある。代替的に前記医薬品組成物は錠剤として成形される、例えば、圧縮され、かつ胃液中で溶解又は分散する保護コーティング剤で任意にコーティングされる場合がある。
【0150】
本発明の医薬品組成物は、さまざまな投与形態により投与される場合がある。当業者に知られているいずれかの生物学的に許容可能な投与形態と、それらの組合せとが意図される。好ましい投与形態の例は、制限なく、チュアブル錠剤、フィルムコート錠剤、即溶性錠剤、発泡性錠剤、多層錠剤及び二層錠剤を含む錠剤と、カプレット剤と、再構成可能な粉末剤を含む粉末剤と、顆粒剤と、分散性顆粒剤と、粒子剤と、微小粒子剤と、ソフト及びハードゼラチンカプセル剤を含むカプセル剤と、トローチ剤と、チュアブルトローチ剤と、カプセル剤(cachets)と、ビーズ剤と、液体剤と、溶液剤と、懸濁液剤と、乳化液剤と、エリキシル剤と、シロップ剤とを含む。
【0151】
前記医薬品組成物は経口投与されることが好ましい。経口投与は、アンフェタミンの最大限の放出を可能とし、アンフェタミンの持続放出を提供し、乱用抵抗性を維持する。前記アンフェタミンプロドラッグは、未結合のアンフェタミンの投与と比較してより長期間にわたり前記アンフェタミンを放出することが好ましい。
【0152】
経口投与形態は、カプセル剤、カプレット剤又は錠剤のような分離した単位として提供される場合がある。好ましい実施態様では本発明は、治療上の等価量の未結合のアンフェタミンを含む固体経口投与形態と比較してよりサイズが小さい、アンフェタミンプロドラッグを含む固体経口投与形態を提供する。1つの実施態様では前記経口投与形態は、サイズ2か、サイズ3か、(例えばサイズ4のような)より小さいサイズかのゼラチンカプセル剤を含む。より小さいサイズのアンフェタミンプロドラッグの投与形態は、飲み込みやすさを増強する。
【0153】
ソフトゲル剤又はソフトゼラチンカプセル剤は、例えば高粘度の混合物を形成させるために(例えば植物油のような)適当な薬物送達手段(vehicle)中に前記剤形を分散させることにより調製される場合がある。この混合物はその後、ゼラチンフィルムで被包される。こうして形成された工業的単位は、その後一定重量まで乾燥される。
【0154】
チュアブル錠剤は、相対的に柔らかく、賦香された、噛まれることを意図される錠剤投与形態を形成するために設計される賦形剤と前記アンフェタミンプロドラッグを混合することにより調製される場合がある。(例えば直接圧縮、造粒及びスラッギングのような)従来の錠剤製造用の機械及び方法が利用される場合がある。
【0155】
フィルムコート錠剤は、錠剤上に接触しているフィルム層を沈着させるために回転鍋式コーティング法(rotating pan coating methods)及び空気サスペンション法のような技術を使用して錠剤をコーティングすることにより調製される場合がある。
【0156】
圧縮錠剤は、前記アンフェタミンプロドラッグを、結合特性を付与する賦形剤と混合することにより調製される場合がある。前記混合物は直接圧縮される場合か、造粒された後に圧縮される場合かがある。
【0157】
代替的に本発明の医薬品組成物は、水性液体又は非水液体中における溶液又は懸濁液のような液体投与形態に剤形される場合がある。前記液体投与形態は、水中油型液体乳化液又は油中水型液体乳化液のような乳化液の場合がある。前記油は、精製及び滅菌した液体を用意された経腸製剤に添加することにより投与される場合があり、その後該経腸製剤は飲み込むことができない患者の補給チューブ中に配置される。
【0158】
希釈剤、分散剤及び/又は界面活性剤を含む微粉末又は微細顆粒は、ドラフト(draught)か、水又はシロップか、乾燥状態のカプセル又は小袋か、懸濁剤が含まれる場合がある非水懸濁液か、水又はシロップ中の懸濁液かで経口投与用に提供される場合がある。経口投与用の液体分散液は、シロップ、乳化液又は懸濁液の場合がある。前記シロップ、乳化液又は懸濁液は、例えば天然ゴムと、寒天と、アルギン酸ナトリウムと、ペクチンと、メチルセルロースと、カルボキシメチルセルロースと、サッカロースと、グリセロール、マンニトール、ソルビトール及びポリビニルアルコールと併用するサッカロースとのようなキャリアーを含む場合がある。
【0159】
ヒトに対する前記アンフェタミンプロドラッグの用量範囲は、前記患者の年齢、体重及び症状を含む因子の数に依存する。分離した単位で提供される錠剤と他の投与形態とは、1種類又は2種類以上のアンフェタミンプロドラッグの1日量か、その適当な画分かを含む場合がある。前記投与形態は、約2.5mgないし約500mgか、約10mgないし約250mgか、約10mgないし約100mgか、約25mgないし約75mgか、その範囲内の増分数かの用量の1種類又は2種類以上の前記アンフェタミンプロドラッグを含む場合がある。好ましい実施態様では前記投与形態は、30mg、50mg又は70mgのアンフェタミンプロドラッグを含む。
【0160】
前記投与形態は、即時放出、長期放出(extended release)、脈状放出(pulse release)、可変放出(variable release)、制御放出、時限放出(timed release)、持続放出(sustained release)、遅延放出及び長時間作用型を含むがこれらに限定されないいずれかの既知の放出プロファイルか、それらのいずれかの組合せかを利用する場合がある。
【0161】
本発明の医薬品組成物は、24時間に1回又は2回以上、部分的な量すなわち分割量で投与される場合がある。分割量か、1倍用量か、2倍用量か、その他の倍数の用量かは24時間に、同時に、又は、異なる時刻に、摂取される場合がある。前記用量はお互いに関して、又は、異なる投与時の個々の成分に関して、不均一な用量の場合がある。1倍用量が1日1回投与されることが好ましい。前記用量は、食後又は食前に投与される場合がある。
【0162】
前記医薬品組成物の投与単位は、例えば単位用量、筒(rolls)、バルク瓶、ブリスター包装等として市場の要求に従い包装される場合がある。例えばブリスター包装のような医薬品の包装はさらに、前記医薬品組成物の正体、(例えばADHDのような)所定の適応症、及び/又は、(例えば1日当たりの回数、1週間当たりの日数等のような)投与期間を個人が特定することを可能にする取扱説明書(indicia)を含むか、添付されるかの場合がある。前記ブリスター包装か他の医薬品の包装かは、併用療法のための別の医薬品製品を含む場合もある。
【0163】
本発明の組成物の薬理活性は、当業者に知られている標準的な薬理学モデルを使用して実証される場合があることが理解される。さらに本発明の組成物は、部位特異的な送達のための適切なポリマーマトリックス又は膜中に組み込まれる場合又は被包される場合があることか、部位特異的送達に影響を及ぼす能力がある特異的標的剤といっしょに機能させられる場合があることかが理解される。これらの技術は、他の薬剤送達技術と同様に当業者に周知である。
【0164】
以上の実施態様のいずれかの特徴は、前記実施態様の他のいずれかの特徴と組み合わせて使用される場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0165】
本発明のより完全な理解を助けるために、以下に実施例が提供される。しかし本発明の範囲は、例示のみを目的とするこれらの実施例で開示される特定の実施態様には限定されない。
【0166】
以下の略語は、実施例中で、また本明細書を通じて使用される。
【0167】
Lys−Amp=L−リシン−d−アンフェタミン、リシン−アンフェタミン、K−Amp、K−アンフェタミン若しくは2,6−ジアミノヘキサン酸−(1−メチル−2−フェニルエチル)−アミド又はリスデキサンフェタミン。
【0168】
Phe−Amp=フェニルアラニン−アンフェタミン、F−Amp又は2−アミノ−3−フェニルプロパン酸−(1−メチル−2−フェニルエチル)−アミド。
【0169】
Ser−Amp=セリン−アンフェタミン、S−Amp又は2−アミノ−3−ヒドロキシプロパン酸−(1−メチル−2−フェニルエチル)−アミド。
【0170】
Gly3−Amp=GGG−アンフェタミン、GGG−Amp又は2−アミノ−N−({[(1−メチル−2−フェニル−エチルカルボミル)−メチル]−カルボミル}−メチル)−アセタミド。
【0171】
BOC=t−ブチルオキシカルボニル。
【0172】
CMC=カルボキシメチルセルロース。
【0173】
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン。
【0174】
mp=融点。
【0175】
NMR=核磁気共鳴。
【0176】
OSu=ヒドロキシサクシニミドエステル。
【0177】
本実施例を通じて他に特に説明がなければ用量は、d−アンフェタミン塩基の量として説明される。代表的な換算表が表2に提供される。
【0178】
【表3】
【実施例1】
【0179】
ペプチドアンフェタミンコンジュゲートの一般的合成
ペプチドコンジュゲートは、図1で説明される一般的な方法により合成された。反復アプローチは、単一アミノ酸コンジュゲートを合成及び試験するステップと、その後ジペプチド及びトリペプチドコンジュゲート等を産生するために1回で1アミノ酸ずつ前記ペプチドを延長させるステップとにより、好ましいコンジュゲートを特定するために使用される場合がある。単一アミノ酸プロドラッグ親候補物質は、多かれ少なかれそのジペプチド又はトリペプチドのような子孫候補物質よりも望ましい特性を示す場合がある。前記反復アプローチは、ペプチド長が生体利用性に影響するかどうかを迅速に示唆する場合がある。
【0180】
単一アミノ酸アンフェタミンコンジュゲートの一般的合成
1,4−ジオキサン(30mL)中の保護されたアミノ酸サクシニミジルエステル(2.0当量)の溶液に、d−アンフェタミン硫酸塩(1.0当量)及びNMM(4.0当量)が添加された。得られた混合物は、20°Cで20時間攪拌された。水(10mL)が添加され、前記溶液は減圧下で溶媒を除去する前に10分間攪拌された。前記粗生成物はEtOAc(100mL)に溶解され、2%AcOHaq(3x100mL)、飽和NaHCO3溶液(2x50mL)及びブライン(1x100mL)で洗浄された。保護されたアミノ酸アンフェタミンコンジュゲートを提供するために前記有機抽出物は、MgSO4で乾燥され、濾過され、蒸発乾固された。この中間体は、1,4−ジオキサン(20mL)中の4N塩酸を添加することにより直接脱保護された。前記溶液は25°Cで20時間攪拌された。対応するアミノ酸アンフェタミン塩酸塩コンジュゲートを提供するために、前記溶媒が蒸発させられ生成物が真空中で乾燥された。代表的な単一アミノ酸コンジュゲートの合成は図2−6に示される。
【0181】
ジペプチドアンフェタミンコンジュゲートの一般的合成
1,4−ジオキサン中の保護されたジペプチドサクシニミジルエステル(1.0当量)の溶液に、アンフェタミン硫酸塩(2.0当量)及びNMM(4.0当量)が添加された。得られた混合物は、25°Cで20時間攪拌された。溶媒は減圧下で除去された。飽和NaHCO3溶液(20mL)は添加され、前記懸濁液は30分間攪拌された。IPAC(100mL)は添加され、前記有機層は2%AcOHaq(3x100mL)及びブライン(2x100mL)で洗浄された。保護されたジペプチドアンフェタミンコンジュゲートを得るために前記有機抽出物はNa2SO4で乾燥され、前記溶媒は蒸発乾固された。前記保護されたジペプチドコンジュゲートは1,4−ジオキサン(20mL)中の4N塩酸を添加することにより直接脱保護され、前記溶液は25°Cで20時間攪拌された。対応するジペプチドアンフェタミン塩酸塩コンジュゲートを提供するために、前記溶媒が蒸発させられ生成物が真空中で乾燥された。
【0182】
トリペプチドアンフェタミンコンジュゲートの一般的合成
アミノ酸コンジュゲートは、上述の一般的な方法に従って合成及び脱保護された。ジオキサン(20mL)中のアミノ酸アンフェタミン塩酸塩(1.0当量)の溶液に、NMM(5.0当量)と保護されたジペプチドコハク酸塩(1.05当量)とが添加された。前記溶液は25°Cで20時間攪拌された。溶媒は減圧下で除去された。飽和NaHCO3溶液(20mL)は添加され、前記懸濁液は30分間攪拌された。IPAC(100mL)は添加され、前記有機層は2%AcOHaq(3x100mL)及びブライン(2x100mL)で洗浄された。保護されたトリペプチドアンフェタミンを得るために前記有機抽出物はNa2SO4で乾燥され、前記溶媒は蒸発乾固された。脱保護は、1,4−ジオキサン(20mL)中の4N塩酸を添加することにより直接実施された。対応するトリペプチドアンフェタミン塩酸塩コンジュゲートを提供するために、前記混合物が25°Cで20時間攪拌され、前記溶媒が蒸発させられ生成物が真空中で乾燥された。
【0183】
前記塩酸塩コンジュゲートはさらなる精製を必要としないが、脱保護された塩酸塩の多くは吸湿性であり、分析とその後のin vivo試験との間には特別な取り扱いを必要とする。
【実施例2】
【0184】
L−リシン−d−アンフェタミンの合成
L−リシン−d−アンフェタミンは、以下の方法により合成された。
【0185】
a.HCl塩の調製(図3を参照せよ。)
i.結合
【0186】
【表4】
【0187】
不活性雰囲気下でジオキサン(100mL)中のBoc−Lys(Boc)−OSu(15.58g、35.13ミリモル)の溶液に、遊離のd−アンフェタミン塩基(4.75g、35.13ミリモル)及びDIPEA(0.9g、1.22mL、7.03ミリモル)が添加された。得られた混合物は、室温で終夜攪拌された。溶媒と過剰の塩基とは、その後減圧蒸発を使用して除去された。粗生成物は酢酸エチルに溶解され、(シリカが24cmまで充填された、幅が7cmの)フラッシュカラムに装荷(loaded on)され、酢酸エチルで溶出された。白色固体を得るために、生成物が単離され、溶媒が回転蒸発により除去され、精製後の保護されたアミドが高真空処理により乾燥させられた。1H NMR(DMSO−d6) δ1.02−1.11(m、2H、Lys γ−CH2)、δ1.04(d、3H、Amp α−CH3)、δ1.22−1.43(m、4H、Lys−β及びδ−CH2)、δ1.37(18H、Boc、6x CH3)、δ2.60−2.72(2H、Amp CH2)、δ3.75−3.83(m、1H、Lys α−H)、δ3.9−4.1(m、1H、Amp α−H)、δ6.54−6.61(d、1H、アミドNH)、δ6.7−6.77(m、1H、アミドNH)、δ7.12−7.29(m、5H、ArH)、δ7.65−7.71(m、1、アミドNH);mp=86−88°C。
【0188】
ii.脱保護
【0189】
【表5】
【0190】
前記保護されたアミドは、50mLの無水ジオキサンに溶解され、50mL(200ミリモル)の4M HCl/ジオキサンが添加しながら攪拌され、終夜室温で攪拌された。その後粘性油を提供するために前記溶媒は回転蒸発により除去された。100mLのMeOHの添加後回転蒸発を行った結果、金色の固形物が生じ、該固形物は高真空下の室温での貯蔵によりさらに乾燥された。1H NMR(DMSO−d6) δ0.86−1.16(m、2H、Lys γ−CH2)、δ1.1(d、3H、Amp α−CH3)、δ1.40−1.56(m、4H、Lys−β及びδ−CH2)、δ2.54−2.78(m、2H、Amp CH2、2H、Lys ε−CH2)、3.63−3.74(m、1H、Lys α−H)、δ4.00−4.08(m、1H、Amp α−H)、δ7.12−7.31(m、5H、Amp ArH)、δ8.13−8.33(d、3H、Lysアミン)、δ8.70−8.78(d、1H、アミドNH);mp=120−122°C。
【0191】
b.メシル酸塩の調製(図2を参照せよ。)
【0192】
同様に前記ペプチドコンジュゲートのメシル酸塩は、以下でさらに詳細に説明されるように脱保護ステップにおいてメタンスルホン酸を使用することにより調製される場合がある。
【0193】
i.結合
【0194】
72−L丸底反応器は、自動撹拌機(mechanical stirrer)と、デジタル式熱電対と、注入漏斗とが装備され、窒素でパージされた。前記容器は、Boc−Lys(Boc)−OSu(3.8kg、8.568モル、1.0当量)及び1,4−ジオキサン(20.4L)を充填され、得られた混濁液は、20±5°Cで10分間攪拌された。前記混合物にN−メチルモルホリン(950g、9.39モル、1.09当量)が1分間かけて添加され、前記混合物は10分間攪拌された。その後氷水浴で前記反応器の外部から冷却しながら、わずかに混濁した前記反応混合物に1,4−ジオキサン(2.9L)中のデキストロ−アンフェタミン(1.753kg、12.96モル、1.51当量)が溶液は30分間かけて添加された。前記添加作業中、内部温度は25°C未満に保たれた。前記添加終了時に、濃厚な白色沈殿が出現した。注入漏斗を洗浄しながら1,4−ジオキサン(2.9L)を反応液中に注入し、前記反応混合物は22±3°Cで攪拌された。添加完了30分後のTLCによる監視は、Boc−Lys(Boc)−Osuが残存しないことを示し、前記反応は脱イオン水(DI H2O、10L)で停止された。高密度の白色固体を提供するために、前記混合物は常温で1時間攪拌され、その後減圧下で濃縮された。
【0195】
抽出のために、脱イオン水(61L)中のNaCl(15kg)及び氷酢酸(2kg)という酢酸/塩溶液と、脱イオン水(30L)中のNaHCO3(1.5kg)という重炭酸塩溶液との2種類の溶液が調製された。
【0196】
前記固体は、IPAC(38L)及び酢酸/塩溶液(39kg)中に再溶解され、150Lの反応器中に移された。各層は10分間混合され、その後分離された。有機層がドレイン排出され、別の酢酸/塩溶液(39kg)で洗浄され、その後重炭酸塩溶液(31.5kg)で洗浄された。全ての相分離は、5分以内に起こった。その後前記有機溶液にシリカゲル(3.8kg;シリカゲル60)が添加された。得られたスラリーは45分間攪拌され、その後濾紙で濾過された。濾紙上の固体は、IPAC(5x7.6L)で洗浄された。前記濾液及び洗浄液は、TLCにより分析され、全てが生成物を含むことが決定された。白色固体として粗生成物を提供するために前記濾液及び洗浄液が混合され、減圧下で濃縮された。
【0197】
ii.脱保護
【0198】
45−Lカーボイは、di−Boc−Lys−Amp(3.63kg、7.829モル)及び1,4−ジオキサン(30.8L、8.5倍容)を添加され、前記混合物は窒素下で30分間迅速に攪拌された。得られた溶液は濾過され、濾紙上の固体は1,4−ジオキサン(2x1.8L)で洗浄された。
【0199】
前記濾液はその後、自動撹拌機と、デジタル式熱電対と、窒素の注入口及び排気口と、5Lの注入漏斗とが装備された72−L丸底フラスコに移された。前記反応混合物の温度は、水浴で21±3°Cに調節された。透明な淡黄色の溶液に、メタンスルホン酸(3.762kg、39.15モル、5当量)が、内部温度を21±3°Cに維持しながら1時間かけて添加された。添加完了約1時間後白色沈殿が出現し始めた。前記混合物が常温で20.5時間攪拌された後、HPLCによる監視が全ての開始物質の消失を示した。前記混合物は濾紙で濾過され、前記反応容器は1,4−ジオキサン(3.6L、1倍容)で洗浄された。濾紙上の固体はジオキサン(3x3.6L)で洗浄され、ラバーダムで1時間乾燥された。前記物質はその後乾燥トレイへ移され、真空オーブンにおいて55°Cで〜90時間乾燥された。この操作は、Lys−Ampジメシル酸塩(3.275kg、収率91.8%;>99%(AUC))を白色固体として提供した。
【実施例3】
【0200】
Ser−Ampの合成
Ser−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−Ser(O−tBu)−OSuであることと、脱保護がHClの代わりにトリフルオロ酢酸の溶液を使用して行われることとを除いて類似の方法(図4を参照せよ。)により合成された。
【実施例4】
【0201】
Phe−Ampの合成
Phe−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−Phe−OSuであることを除いて類似の方法(図5を参照せよ。)により合成された。
【0202】
Phe−Amp塩酸塩:吸湿性;1Η NMR(400MHZ、DMSO−d6):δ8.82(d、J=8.0Hz、1H)、8.34(bs、3H)、7.29−7.11(m、10H)、3.99(m、2H)、2.99(dd、J=13.6、6.2Hz、1H)、2.88(dd、J=13.6、7.2Hz、1H)、2.64(dd、J=13.2、7.6Hz、1H)、2.53(m、1H)、1.07(d、J=6.4Hz、3H);13C NMR(100MHz、DMSO−d6):δ167.31、139.27、135.49、130.05、129.66、128.78、128.61、127.40、126.60、53.83、47.04、42.15、37.27、20.54;HRMS:(ESI)for C18H23N2O(M+H)+:calcd、283.1810:found、283.1806。
【実施例5】
【0203】
Gly3−Ampの合成
Gly3−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−GGG−OSuであることを除いて類似の方法(図6を参照せよ。)により合成された。
【0204】
Gly3−Amp塩酸塩:mp212−214°C;1H NMR(400MHz、DMSO−d6) δ7.28(m、5H)、3.96(m、1H)、3.86(m、2H)、3.66(m、4H)、2.76(m、1H)、2.75(m、1H)、1.02(d、J=6.8Hz、3H);13C NMR(100MHz、DMSO−d6) δ168.91、168.14、166.85、139.45、129.60、128.60、126.48、46.60、42.27、20.30.HRMS:(ESI)for C15H22N4O3Na(M+Na)+:calcd、329.1590:found、329.1590。
【実施例6】
【0205】
d−アンフェタミン硫酸塩と比較したL−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩の薬物動態(ELISA分析)
雄のスプラーグドーリーラットが、自由に水を供給され、終夜絶食させられ、L−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩を強制経口投与された。全研究において投与量は、等価量のd−アンフェタミン塩基を含んでいた。d−アンフェタミンの血漿中濃度は、ELISA(Amphetamine Ultra,109319,Neogen,Corporation,Lexington,KY)により測定された。本アッセイ方法は、主要なd−アンフェタミン代謝生成物(パラ−ヒドロキシ−d−アンフェタミン)に対して最小限(0.6%)の反応性しか有さずd−アンフェタミンに特異的である。L−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩も、前記ELISAにおいて本質的に反応性を有しない(<1%)ことが決定された。
【0206】
d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩の平均(n=4)血漿中濃度曲線が図7に示される。長期放出は、L−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩が投与された4匹の動物全てにおいて観察され、d−アンフェタミン硫酸塩が投与された動物と比較してCmaxは実質的に減少した。d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩についての動物個体のd−アンフェタミンの血漿中濃度は表3に示される。d−アンフェタミンの平均血漿中濃度は表4に示される。L−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩についてのピーク濃度到達時間は、d−アンフェタミンについてのピーク濃度到達時間と同様であった。d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩の経口投与についての薬物動態パラメーターは表5に要約される。
【0207】
【表6】
【0208】
【表7】
【0209】
【表8】
【0210】
本実施例は、活性薬剤のアンフェタミンとリシンがコンジュゲートを形成すると、生体利用性はアンフェタミンとほぼ等しく維持されるがアンフェタミンのピークレベルは減少することを示す。L−リシン−d−アンフェタミンから放出されるアンフェタミンの生体利用性は、等価量のアンフェタミン硫酸塩の生体利用性と同様である。したがってL−リシン−d−アンフェタミンは、その治療価値を維持する。L−リシン−d−アンフェタミンからのアンフェタミンの漸増的放出と、ピークレベルの減少とは、過剰投与の可能性を低減する。
【実施例7】
【0211】
さまざまな用量でのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の経口生体利用性
a.ヒトの治療用の用量と近似する用量(1.5、3及び6mg/kg)
【0212】
1.5、3及び6mg/kgを経口投与されたラットについてのd−アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミンの平均(n=4)血漿中濃度曲線は、それぞれ図8、図9及び図10に示される。長期放出はL−リシン−d−アンフェタミンを投与された動物についての3種類の治療用の用量全てにおいて観察された。1.5、3及び6mg/kgに対する平均血漿中濃度は、各々表6、表7及び表8に示される。さまざまな用量でのd−アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミンの経口投与に対する薬物動態パラメーターは表9に要約される。
【0213】
【表9】
【0214】
【表10】
【0215】
【表11】
【0216】
【表12】
【0217】
b.用量の増加(12、30及び60mg/kg)
d−アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミンの平均(n=4)血漿中濃度曲線は、12、30及び60mg/kgを経口投与されたラットについて示される。これらの高用量でL−リシン−d−アンフェタミンの生体利用性は、d−アンフェタミンと比較して顕著に減少した。
【0218】
【表13】
【0219】
【表14】
【0220】
【表15】
【0221】
【表16】
【実施例8】
【0222】
超薬理学的用量(suprapharmacological dose)と比較してヒトの治療用の用量の範囲を近似する、さまざまな用量でのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の経口生体利用性
雄のスプラーグドーリーラットが、自由に水を供給され、終夜絶食させられ、1.5、3、6、12及び60mg/kgのアンフェタミン硫酸塩か、等価量のd−アンフェタミンを含むL−リシン−d−アンフェタミンかを強制経口投与された。d−アンフェタミンの濃度はELISAにより測定された。
【0223】
活性薬剤のd−アンフェタミンとリシンがコンジュゲートを形成するとき、投与後30分でのd−アンフェタミンのレベルは、1.5ないし12mg/kgの用量範囲にわたり約50%減少することが証明されている。しかし超薬理学的用量(60mg/kg)が与えられるときL−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンのレベルは、d−アンフェタミン硫酸塩に対して観察されるd−アンフェタミンのレベルの8%に到達するにすぎない(表14、表15及び図15を参照せよ。)。高用量での経口生体利用性の実質的な減少は、L−リシン−d−アンフェタミンの乱用の可能性を著しく低減する。
【0224】
【表17】
【0225】
【表18】
【実施例9】
【0226】
高用量でのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の経口生体利用性の減少
図16に示される付加的な経口薬物動態研究は、60mg/kg用量での血中d−アンフェタミンレベルの8時間にわたる経時変化を示す。d−アンフェタミンの場合には血中レベルは迅速に非常に高いレベルに到達し、12匹の動物のうち8匹は死んだか、又は、毒性の急性症状のために屠殺された。これに対しL−リシン−d−アンフェタミンを投与された動物の血中レベル(表16及び表17)は5時間までピークに到達せず、アンフェタミンを投与された動物の血中レベルのごく一部に到達するにすぎなかった。(注記:d−アンフェタミンについての3時間より後の正当なデータは、動物の死及び屠殺のために決定できなかった。)
【0227】
【表19】
【0228】
【表20】
【実施例10】
【0229】
(無傷の、又は、粉砕された)長期放出製剤か、L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩かの投与後のd−アンフェタミンの経口生体利用性
d−アンフェタミン硫酸塩の長期放出製剤(デキセドリンスパンスール(登録商標)カプセル、グラクソスミスクライン)は、無傷のカプセルか、粉砕されたカプセルかとしてラットに経口投与され、等価量のd−アンフェタミン塩基を含むL−リシン−d−アンフェタミンの投与と比較された(図20)。前記粉砕されたカプセルは、無傷のカプセルと比較してCmax及びAUCinfの各々84%及び13%の増加を示した(表18及び表19)。対照的にL−リシン−d−アンフェタミンの投与後のd−アンフェタミンのCmax及びAUCinfは、無傷のカプセルのCmax及びAUCinfと同程度であり、長期放出が前記化合物自体に固有のものであることと、単純な操作によって回避され得ないこととを示した。
【0230】
【表21】
【0231】
【表22】
【0232】
本実施例は、従来のd−アンフェタミンの制御放出製剤に対する本発明の利点を例示する。
【実施例11】
【0233】
L−リシン−d−アンフェタミン対アンフェタミンの鼻腔内生体利用性
a.L−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩の鼻腔内(IN)生体利用性
雄のスプラーグドーリーラットが、3mg/kgのアンフェタミン硫酸塩か、等価量のd−アンフェタミンを含むL−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩かを鼻腔内投与により投与された。L−リシン−d−アンフェタミンはIN投与によっては、血液循環中へd−アンフェタミンをほとんど放出しなかった。アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミンでのアンフェタミンの平均(n=4)血漿中濃度曲線は図17に示される。L−リシン−d−アンフェタミンのIN投与に対する薬物動態パラメーターは表20に要約される。
【0234】
【表23】
【0235】
b.L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の鼻腔内生体利用性
パートaのプロセスは、L−リシン−d−アンフェタミンメシル酸塩を使用して繰り返された。
【0236】
【表24】
【0237】
本実施例は、活性薬剤のd−アンフェタミンとリシンがコンジュゲートを形成するとき鼻腔内径路による生体利用性は実質的に減少し、それにより本径路により前記薬剤を乱用する可能性が減少することを例示する。
【実施例12】
【0238】
アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の静脈内生体利用性
雄のスプラーグドーリーラットが、1.5mg/kgのd−アンフェタミンか、等価量のアンフェタミンを含むL−リシン−d−アンフェタミンかを尾静脈注射により投与された。IN投与で観察されたように前記コンジュゲートは、有意な量のd−アンフェタミンを放出しなかった。アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミンでの平均(n=4)血漿中濃度曲線は図19に示される。L−リシン−d−アンフェタミンのIV投与に対する薬物動態パラメーターは表22に要約される。
【0239】
【表25】
【0240】
本実施例は、活性薬剤のアンフェタミンとリシンがコンジュゲートを形成するとき静脈内径路によるアンフェタミンの生体利用性は実質的に減少し、それにより本径路による前記薬剤を乱用する可能性は減少することを例示する。
【実施例13】
【0241】
段階的に増加する用量でのd−アンフェタミンと比較したL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の経口生体利用性
ラットでの経口投与後吸収されたインタクトなL−リシン−d−アンフェタミンの画分は、1.5mg/kgから12mg/kgまでの段階的に増加する用量に比例して非線形に増加した(図21−25)。用量12mg/kgで吸収された画分は24.6%に増加したが、用量1.5mg/kgで吸収された画分は2.6%のみであった。吸収された画分は、60mg/kgの高用量では9.3%に低下した。Tmaxは0.25時間から3時間までの範囲であり、ピーク濃度は、d−アンフェタミンについてのピーク濃度よりもL−リシン−d−アンフェタミンについてのピーク濃度の方がより早く訪れた。L−リシン−d−アンフェタミンは、最も低い用量では8時間までにほぼ検出不可能な濃度となり、d−アンフェタミンよりも迅速に消失した。
【0242】
投与された各々の薬剤由来のd−アンフェタミンの生体利用性(AUC)は、低い用量ではほぼ等価であった。L−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンについてのTmaxは、d−アンフェタミン硫酸塩由来のd−アンフェタミンについてのTmaxが投与後の0.5時間ないし1.5時間であるのに対して、1.5時間から5時間までの範囲である。Tmaxの差異は、高い用量ほど大きかった。L−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンのCmaxは、治療用のヒト等価用量(HEDs)を近似する用量である、1.5mg/kgないし6mg/kgの用量で投与されたd−アンフェタミン硫酸塩由来のd−アンフェタミンのCmaxと比較してほぼ半分まで減少した。したがって治療用の用量ではL−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンの薬物動態は、持続放出製剤のそれと類似していた。
【0243】
HEDsは、動物モデルの体表面積に従う60kgのヒト個体についての等価用量と定義される。ラットについての調整係数は6.2である。1.5mg/kgのd−アンフェタミンというラットでの用量に対するHEDは例えば、塩の含有量に対して調節されたときに14.52/0.7284=19.9mgのd−アンフェタミン硫酸塩に等しい1.5/6.2x60=14.52mgのd−アンフェタミン塩基に等しい。
【0244】
【表26】
【0245】
超薬理学的用量(12mg/kg及び60mg/kg)ではCmaxは、d−アンフェタミン硫酸塩と比較して各々73%及び84%減少した。これらの高用量ではL−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンについてのAUCsは、d−アンフェタミン硫酸塩由来のd−アンフェタミンについてのAUCsと比較して実質的に減少し、最高の用量(60mg/kg)ではAUCinfが76%減少した。60mg/kgではd−アンフェタミン硫酸塩由来のd−アンフェタミンのレベルは迅速に急上昇した。実験的な経時変化は、人道的な安楽死を必要とする極度の活性過剰のために完成させられなかった。
【0246】
要約するとL−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンの経口生体利用性は、高用量ではある程度まで減少した。しかしL−リシン−d−アンフェタミンについては用量に関する薬物動態は、1.5mg/kgから60mg/kgまでの用量でほぼ線形であり、吸収された画分は(1.5mg/kgの用量から外挿して)52%から81%までの範囲であった。d−アンフェタミン硫酸塩の薬物動態も、1.5mg/kgないし6mg/kgのより低い用量でほぼ線形であり、吸収された画分は62%から84%までの範囲であった。しかしパラメーターはL−リシン−d−アンフェタミンと対照的に、d−アンフェタミン硫酸塩については12mg/kg及び60mg/kgという超薬理学的用量では高用量では不均衡に増加し、吸収された画分は(1.5mg/kgの用量から外挿して)各々101%及び223%と計算された。
【0247】
前記結果は、L−リシン−d−アンフェタミンの緩やかな加水分解が高用量でのd−アンフェタミンの除去能力の飽和を防止するのに対して、硫酸塩として送達された場合にはd−アンフェタミンのクリアランス能力が高用量では飽和状態に達することを示唆する。d−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンについての生体利用性(Cmax及びAUC)に対する用量の比例性の差異は図26−28に示される。高用量でd−アンフェタミンと比較したL−リシン−d−アンフェタミンの薬物動態特性は、用量を段階的に増加させる能力を減少させる。これは、ADHDか他の適応症かの治療のためにd−アンフェタミンを送達させる方法としてL−リシン−d−アンフェタミンの安全性を向上し、乱用の可能性を低減する。
【実施例14】
【0248】
d−アンフェタミンと比較したL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の鼻腔内生体利用性
図31及び図32に示されるようにL−リシン−d−アンフェタミンの鼻腔内ボーラス投与後のd−アンフェタミンの生体利用性は等価量のd−アンフェタミン硫酸塩の投与後のd−アンフェタミンの生体利用性の約5%であり、AUCinf値はL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミン硫酸塩に対して各々56及び1032であった。鼻腔内径路によるL−リシン−d−アンフェタミン投与後のd−アンフェタミンのCmaxも、等価量のd−アンフェタミン硫酸塩の投与後のd−アンフェタミンのCmaxの約5%であり、値はL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミン硫酸塩に対して各々78.6ng/mL及び1962.9ng/mLであった。L−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミン濃度のTmax(60分)は、d−アンフェタミン硫酸塩由来のd−アンフェタミン濃度のTmax(5分)と比較して実質的に遅延し、L−リシン−d−アンフェタミンの緩やかな加水分解を反映した。また高濃度のインタクトなL−リシン−d−アンフェタミンが、鼻腔内投与後に検出された。これらの結果は、L−リシン−d−アンフェタミンの鼻腔内投与が、L−リシン−d−アンフェタミンの最小限の加水分解しか提供しないため、d−アンフェタミンの最小限の放出しか提供しないことを示唆する。
【実施例15】
【0249】
d−アンフェタミンと比較したL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の静脈内生体利用性
図33及び図34に示されるようにL−リシン−d−アンフェタミンの静脈内ボーラス投与後のd−アンフェタミンの生体利用性は、等価量のd−アンフェタミン硫酸塩の投与後のd−アンフェタミンの生体利用性の約2分の1であり、AUCinf値はL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミン硫酸塩に対して各々237.8及び420.2であった。L−リシン−d−アンフェタミン投与後のd−アンフェタミンのCmaxは、等価量のd−アンフェタミン硫酸塩の投与後のCmaxの約4分の1にすぎず、値はL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミン硫酸塩に対して各々99.5及び420.2であった。L−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミン濃度のTmax(30分)は、d−アンフェタミン硫酸塩由来のd−アンフェタミン濃度のTmax(5分)と比較して実質的に遅延し、L−リシン−d−アンフェタミンの緩やかな加水分解を反映した。結論として静脈内経路によるd−アンフェタミンの生体利用性は、L−リシン−d−アンフェタミンとして与えられたときには実質的に減少し、かつ、遅延した。さらに生体利用性は、等価量のL−リシン−d−アンフェタミンの経口投与により取得されるものより小さい。
【0250】
ラットでのLC/MS/MS生体利用性データの要約
以下の表は、実施例13−15で論じられた実験で収集された生体利用性データを要約する。表24、表25及び表26は、各々d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミンの経口投与、鼻腔内投与及び静脈内投与後のd−アンフェタミンの薬物動態パラメーターを要約する。
【0251】
【表27】
【0252】
【表28】
【0253】
【表29】
【0254】
表27、表28及び表29は、L−リシン−d−アンフェタミンの経口投与、静脈内投与及び鼻腔内投与後のL−リシン−d−アンフェタミンの薬物動態パラメーターを要約する。
【0255】
【表30】
【0256】
【表31】
【0257】
【表32】
【0258】
表30及び表31は、d−アンフェタミン硫酸塩と比較したL−リシン−d−アンフェタミンの経口投与、鼻腔内投与及び静脈内投与後のd−アンフェタミンの生体利用性の百分率を要約する。
【0259】
【表33】
【0260】
【表34】
【0261】
表32−37は、d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミンの経口投与、鼻腔内投与及び静脈内投与後のd−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミンの濃度の経時変化を要約する。
【0262】
【表35】
【0263】
【表36】
【0264】
【表37】
【0265】
【表38】
【0266】
【表39】
【0267】
【表40】
【実施例16】
【0268】
イヌにおけるL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩の生体利用性(LC/MS/MS分析)
実施例の実験デザイン:
本実施例は、無作為化しない2処理水準のクロスオーバー研究である。全ての動物は、通常の餌で維持され、各回の投与前に終夜絶食させられた。L−リシン−d−アンフェタミンの用量は、各投与日の朝に測定された体重に基づき設定した。送達された実際の用量は、投与前後のシリンジの重量に基づき算出した。経時的な血液試料は、抗凝固剤としてヘパリンナトリウムを含むヴァキュテイナーチューブ(vacutainer tubes)を使用する頸静脈の直接の静脈穿刺により各々の動物から取得された。得られた血漿試料は、Quest Pharmaceutical Services,Inc.(Newark,DE)への発送まで冷凍保存された。前記血漿の分析結果の薬物動態解析は、Calvertにより実施された。動物は以下のように処理された。
【0269】
【表41】
【0270】
被験物質の投与:
経口:被験物質は、各々の動物に単回強制経口投与された。1日目に動物は、シリンジと結合した食道チューブを使用して強制経口投与を受けた。投与用チューブは、所要の投与用溶液を確実に送達するために約20mLの水道水で洗浄された。
【0271】
静脈内:8日目に動物は、橈側皮静脈中への単回の30分の静脈内点滴としてL−リシン−d−アンフェタミンを受けた。
【0272】
試料収集:
投与剤形:投与後、残りの投与剤形は、貯蔵され、冷凍保存された。
【0273】
血液:経時的な血液試料(2mL)は、ヘパリンナトリウムを含む静脈穿刺チューブを使用して収集された。血液試料は、経口投与後0時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間及び72時間の時点で採取された。血液試料は、静脈点滴の開始後0時間、0.167時間、0.33時間、(点滴停止前の)0.49時間、0.583時間、0.667時間、0.75時間、1時間、2時間、3時間、4時間、8時間、12時間及び23時間の時点で収集された。収集された血液試料は迅速に冷却された。
【0274】
血漿:血漿試料は血液試料の遠心分離により取得された。2回重複の血漿試料(各々約0.2mL)は、事前に標識されたプラスチックバイアル中に移され、約−70°Cで冷凍保存された。
【0275】
試料の分析:
血漿試料は、バリデーションされたLC−MS/MS法を使用して、両検体について1ng/mLのLLOQでL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンについて分析された。
【0276】
平均血漿中濃度の算出と該血漿中濃度−時間データの図示とのためにMicrosoft Excel(Version6,Microsoft Corp.,Redmond,WA)が使用された。(ノンコンパートメント)薬物動態解析は、WinNonlin(登録商標)ソフトウェアプログラム(Version4.1,Pharsight,Inc.Mountain View,CA)を使用して実施された。最大濃度(Cmax)とCmaxへの到達時間(Tmax)とは、実測値であった。血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC)は、線形−対数台形則を使用して決定された。見かけの終末速度定数(terminal rate constant、λz)は、λzの計算用の適当な数の点(最低限データ点3個)を決定するためのデータの外観検査とともに線形最小二乗回帰を使用して導かれた。AUC0-infは、AUC0-t及びCpred/λzの合計として算出され、ここでCpredは最後の定量可能濃度の時点における予測濃度であった。血漿クリアランス(CL/F)は用量/AUC0-infの比として決定された。平均滞留時間(MRT)はAUMC0-inf/AUC0-infの比として算出され、ここでAUMC0-infは時間0から無限大までの第一モーメント曲線(first moment curve)下面積であった。定常状態での分配体積(Vss)はCL*MRTとして評価された。半減期はln2/λzとして算出された。前記経口生体利用性(F)は静脈内投与後のAUC0-infに対する経口投与後のAUC0-infの比として算出された。薬物動態パラメーターの記述統計(平均値及び標準偏差)は、Microsoft Excelを使用して算出された。
【0277】
本研究の目的は、雄ビーグル犬におけるL−リシン−d−アンフェタミンの投与後のL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの薬物動態を特徴づけることである。図35に示されるように、クロスオーバーデザインされた実験で、L−リシン−d−アンフェタミンは3匹の雄ビーグル犬に対して経口投与及び静脈内投与された。血液試料は、静脈内投与及び経口投与後に各々24時間及び72時間まで収集された。
【0278】
L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内投与又は経口投与後のL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの平均血漿中濃度−時間プロファイルは、それぞれ図37及び図38に示される。両径路での投与後のd−アンフェタミンに対するL−リシン−d−アンフェタミンの比較プロファイルは図35及び図36に示される。個体ごとのプロットは図39及び図40に示される。薬物動態パラメーターは表38−46に要約される。
【0279】
L−リシン−d−アンフェタミンの30分間の静脈内点滴後、血漿中濃度は前記点滴完了時にピークに到達した。点滴後L−リシン−d−アンフェタミン濃度は、二成分の指数関数様に(in a biexponential manner)非常に迅速に減少し、投与後約8時間までに定量化可能限界(1ng/mL)未満となった。ノンコンパートメント薬物動態解析の結果は、L−リシン−d−アンフェタミンが、体内総水分量(0.7L/kg)を近似する、中程度の分配体積(Vss)を有する高クリアランス化合物であることを示す。平均クリアランス値は2087mL/h.kg(34.8mL/min.kg)であり、前記イヌにおける肝血流量(40mL/min.kg)と同程度であった。
【0280】
L−リシン−d−アンフェタミンは、経口投与後迅速に吸収され、3匹のイヌ全てにおいてTmaxは0.5時間であった。平均絶対経口生体利用性は33%であり、このことはL−リシン−d−アンフェタミンがイヌにおいて非常によく吸収されることを示唆した。見かけの終末半減期は0.39時間であり、静脈内投与後に観察されたのと同様に迅速な除去を示した。
【0281】
L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内投与又は経口投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度−時間プロファイルも同様であった。表39を参照せよ。1mg/kgのL−リシン−d−アンフェタミンの経口投与では、d−アンフェタミンの平均Cmaxは104.3ng/mLであった。d−アンフェタミンの半減期は3.1時間ないし3.5時間であり、L−リシン−d−アンフェタミンと比較するとずっと長かった。
【0282】
本研究ではL−リシン−d−アンフェタミンは30分間にわたり点滴された。L−リシン−d−アンフェタミンの迅速なクリアランスのために、L−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンの生体利用性は、同程度の用量が静脈内ボーラス注射により与えられた場合には減少した可能性がある。点滴として与えられた場合でさえもL−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンの生体利用性は同様の用量が経口投与された場合の生体利用性を超えず、ピーク濃度到達時間は実質的に遅延した。このデータは、L−リシン−d−アンフェタミンが、静脈内注射によるd−アンフェタミンの乱用の可能性を減少させることをさらに支持する。
【0283】
【表42】
【0284】
薬物動態パラメーターの略語は以下のとおりである。
Cmax 最大実測血漿中濃度
Tmax Cmaxが観察された時間
AUC0-t 0から最後のデータ点までの血漿中濃度対時間曲線下総面積
AUC0-inf 血漿中濃度対時間曲線下総面積
t1/2 見かけの終末半減期
MRT 平均滞留時間
CL/F 口腔クリアランス
Vss 定常状態での分布容積
F 生体利用性
【0285】
【表43】
【0286】
【表44】
【0287】
【表45】
【0288】
【表46】
【0289】
【表47】
【0290】
【表48】
【0291】
【表49】
【0292】
【表50】
【実施例17】
【0293】
静脈内点滴後のd−アンフェタミンと比較したL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の心臓血管への遅延型効果
収縮期及び拡張期血圧(BP)は、治療用の用量でもd−アンフェタミンにより上昇した。L−リシン−d−アンフェタミンは全身での代謝の結果として(緩徐にではあるが)d−アンフェタミンを放出することが予想されるので、予備的研究が、等モル用量のd−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミンを(2匹の雄と2匹の雌との)4匹のイヌに使用して実施された。結果は、前記アミドプロドラッグは不活性であることと、ある程度のd−アンフェタミンの緩徐な放出は最初の投与の20分後に開始することとを示唆する。しかしd−アンフェタミンと比較してL−リシン−d−アンフェタミンの効果は強力ではない。例えば平均血圧は図43に図示される。小用量のd−アンフェタミンは、血圧に対して迅速な効果を有することが観察されたが、これは過去に発表されたデータ(Kohli and Goldberg、1982)に矛盾しない。最低用量(0.5mg/kgのL−リシン−d−アンフェタミンと等モルである0.202mg/kg)は平均血圧を急激に2倍にし、その後平均血圧は30分間にわたり緩やかに回復した。
【0294】
一方L−リシン−d−アンフェタミンは、注射後約30分まで平均血圧にほとんど変化をもたらさなかった。その時点で血圧は約20−50%上昇した。おそらくd−アンフェタミンの連続的放出が、本実験の残りの経時変化での血圧の緩徐かつ安定的な上昇の原因である。その後の注射でd−アンフェタミンは、用量非依存的にその効果を繰り返すようにみえる。すなわち最初の注射より10倍の用量の増加は、同じ最大血圧への上昇を引き起こした。これは、d−アンフェタミンのボーラス注射の連続的な刺激による神経終末でのカテコールアミンレベルの状態を反映する可能性がある。L−リシン−d−アンフェタミンの連続的投与後に見られる平均血圧の上昇(図43)がより緩やかな、かつ、より弱い効果をもたらすことに留意すべきである。類似の結果が左心室圧に対して観察された(図44)。これらの結果は、L−リシン−d−アンフェタミンとして与えられたときの、静脈内経路によるd−アンフェタミンの生体利用性の顕著な減少をさらに実証する。結果としてd−アンフェタミンを注射された人に生じる該薬剤の薬理効果の迅速な開始は排除される。
【0295】
【表51】
【0296】
【表52】
【実施例18】
【0297】
経口投与によるアンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩に対する薬力学反応(自発運動反応)
雄のスプラーグドーリーラットが、自由に水を供給され、終夜絶食させられ、6mg/kgのアンフェタミンか、等価量のd−アンフェタミンを含むL−リシン−d−アンフェタミンかを強制経口投与された。水平自発運動活性(HLA)は、フォトセル活動チャンバー(photocell activity chambers、San Diego Instruments)を使用して明期の間記録された。総カウント数は試験期間中12分毎に記録された。ラットは、3種類の別個の実験で各々5、8及び12時間監視された。d−アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミンについての時間対HLAカウント数は図45及び図46に示される。各々の実験でピーク活性到達までの時間は遅延し、前記薬力学的効果はd−アンフェタミンと比較したL−リシン−d−アンフェタミンについての長期放出に対する証拠であった。Lys−Ampを投与されたラットのHLAについての総活動カウント数は、3種類の実験全てでd−アンフェタミンにより誘発されるHLAについての総活動カウント数に比べて(11−41%)増加した。
【0298】
【表53】
【0299】
【表54】
【実施例19】
【0300】
鼻腔内投与によるd−アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩に対する薬力学反応
雄のスプラーグドーリーラットが、d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミン(1.0mg/kg)を鼻腔内投与された。同様の投与がされた動物の第2の組ではカルボキシメチルセルロース(CMC)が、(L−リシン−d−アンフェタミンの濃度より約2倍高く、d−アンフェタミンの含有量より約5倍高い)62.6mg/mLの濃度で前記薬剤の溶液に添加された。前記CMC薬剤混合物は、各々の投与物が送達される前に徹底的に懸濁された。自発運動活性は、実施例18で説明される手順を使用して監視された。図47及び図48で示されるように活動対時間(1時間又は2時間)は、アンフェタミン/CMC対L−リシン−d−アンフェタミンについて示され、アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミンCMCについての活動対時間と比較される。図47で見られるように、CMCの添加によってはアンフェタミンによる活動への影響は見られなかったのに対して、L−リシン−d−アンフェタミンへのCMCの添加は、IN投与されたラットの活動反応を水/CMC対照と同様のレベルまで減少させた。d−アンフェタミンを投与された動物について観察された活動と比較して、CMCと併用しないL−リシン−d−アンフェタミンの基準線上の活動の増加は34%であったのに対してCMCと併用したL−リシン−d−アンフェタミンの基準線上の活動の増加は9%にすぎなかった(表51)。CMCは、IN投与により誘発されるd−アンフェタミンによる活動に対して観察可能な効果がなかった。
【0301】
【表55】
【実施例20】
【0302】
静脈内投与によるd−アンフェタミン対L−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩に対する薬力学反応
雄のスプラーグドーリーラットが、(1.0mg/kgの)d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミンを静脈内投与された。3時間にわたる総活動カウント数として表現される活性は図49に示される。L−リシン−d−アンフェタミンにより誘発される活動は実質的に減少し、ピーク活性到達時間は遅延された。L−リシン−d−アンフェタミンに係る基準線上の活動の増大は、d−アンフェタミンを投与された動物について観察された活動と比較してL−リシン−d−アンフェタミンについては34%であった(表52)。
【0303】
【表56】
【実施例21】
【0304】
経口投与されたL−リシンーd−アンフェタミン二塩酸塩の毒性の減少
1群当たり3匹の雄と3匹の雌とのスプラーグドーリーラットが、0.1、1.0、10、60、100又は1000mg/kgでL−リシン−d−アンフェタミンを単回経口投与された(表53)。各々の動物は、(投与日を1日目として)1−7日目に毒性の徴候と死とについて観察され、1群・1性別当たり1匹のラットが(計画的に、又は、計画的でなしに)死んだときに剖検された。
【0305】
【表57】
【0306】
本研究の鍵となる観察結果は以下を含む。
【0307】
1−3群における全ての動物は、本研究の実施を通じて観察可能な徴候を示さなかった。
【0308】
4−6群における全ての動物は、投与後2時間以内に運動活性の増大を示し、該運動活性の増大は2日目まで続いた。
【0309】
1000mg/kgを投与された1匹の雌のラットは、2日目に死んでいるのを発見された。剖検は、色素涙と、色素性鼻漏(chromorhinorrhea)と、(気体により)膨張した胃と、肥大した副腎と、浮腫が生じ膨張した腸との所見を示した。
【0310】
計4匹のラットは3日目に重症度の異なる皮膚病変を有した。
【0311】
1000mg/kgを投与された1匹の雄のラットは3日目に、背側頸部(ventral neck)の開放性皮膚病変(open skin lesion)のため安楽死させられた。
【0312】
残りの全ての動物は、4日目から7日目まで外見は正常であった。
【0313】
動物は、投与後1時間、2時間及び4時間の時点で、かつ、投与後7日間は1日1回毒性の徴候について観察され、ケージ横での観察結果が記録された。死んでいることが分かった動物、又は、瀕死の状態にあって屠殺された動物は、剖検及び廃棄された。
【0314】
ケージ横での観察結果と、肉眼での剖検による知見とは、上記のとおり要約される。d−アンフェタミン硫酸塩の経口でのLD50は、96.8mg/kgである。L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩については、致死量を確定するにはデータが十分ではないが、6匹の動物の群から1匹のみの死が発生したため、前記研究は、L−リシン−d−アンフェタミンの経口致死量は1000mg/kgを越えることを示す。この用量の群では2匹目の動物が3日目に安楽死させられたが、これは人道的な理由のために実施され、この動物は完全に回復しただろうと感じられた。観察結果は4−6群において、アンフェタミンの毒性(NTP,1990;NIOSH REGISTRY NUMBER:SI1750000;Goodman et.al.,1985)に特徴的な薬剤誘発性のストレスを示唆した。全ての動物が、4−7日目に異常な徴候を示さず、各々の処理レベルでの完全な回復を示唆した。
【0315】
確定致死量を支持するデータがないことは、アンフェタミンとリシンとのコンジュゲート形成の、推定される保護効果のためであると信じられている。インタクトなL−リシン−d−アンフェタミンは不活性であることが示されているが、代謝により非コンジュゲート形態(d−アンフェタミン)となり活性になる。したがって高用量ではL−リシン−d−アンフェタミンの非コンジュゲート形態への代謝の飽和が、観察される毒性の欠如を説明する場合があるが、該毒性はd−アンフェタミン硫酸塩(NTP、1990)と一致して100mg/kgより大きい用量で予想されていた。d−アンフェタミンの生成速度と、アンフェタミンの生成量とは、両方が毒性の低減に寄与する場合がある。代替的にL−リシン−d−アンフェタミンの経口吸収は、かかる高濃度で飽和する場合もあり、このことはL−リシン−d−アンフェタミンの限定的な生体利用性による低毒性を示唆する場合がある。
【実施例22】
【0316】
L−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩の薬力学的活性のin vitroでの評価
本明細書で論じられるアミノ酸コンジュゲートにおいて観察されたのと同様に、アンフェタミンのアシル化が該親薬剤の刺激活性を顕著に低減することが予想された。例えばMarvola(1976)は、アンフェタミンのN−アセチル化がマウスでの自発運動活性増大効果を完全に消滅させることを示した。前記コンジュゲートは刺激剤として直接的には作用しないことを確認するために、我々は標準放射性リガンド結合アッセイを使用して、Lys−Amp(10-9Mないし10-5M)のヒト組換えドーパミン及びノルエピネフリン輸送結合部位への特異的な結合を試験した(NovaScreen,Hanover,MD)。結果(表54)は、Lys−Ampがこれらの部位に結合しなかったことを示す。これらの結果に照らすと、前記コンジュゲートは刺激活性を保持したことはありえないようにみえる。(Marvola M.(1976)“Effect of acetylated derivatives of some sympathomimetic amines on the acute toxicity,locomotor activity and barbiturate anesthesia time in mice.”Acta Pharmacol Toxicol(Copenh)38(5):474−89)
【0317】
【表58】
【0318】
【表59】
【実施例23】
【0319】
L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩からのアンフェタミンの放出のin vitro評価
「キッチンテスト」は、前記アンフェタミンコンジュゲートから遊離のアンフェタミンを放出させようとする不正な化学者による試みを予想して実施された。好ましいアンフェタミンコンジュゲートはかかる試みに抵抗性がある。最初のキッチンテストは、前記アンフェタミンコンジュゲートの水、酸(酢)及び塩基(ベーキングパウダー及びベーキングソーダ)への抵抗性を評価し、各々の場合において試料は加熱され20−60分間沸騰させられた。L−リシン−d−アンフェタミン及びGGG−Ampは、検出可能な遊離のアンフェタミンを放出しなかった。
【0320】
【表60】
【0321】
アンフェタミンコンジュゲートの安定性は、高温の、濃塩酸及び10N NaOH溶液を含む高濃度条件下で評価された。Lys−Ampストック溶液はH2O中で調製され、最終濃度0.4mg/mL及び最終体積1.5mLになるまで濃塩酸で10倍希釈された。試料は、水浴中で約90°Cまで1時間加熱され、20°Cまで冷却され、中和され、遊離のd−アンフェタミンについてHPLCにより分析された。結果は、最小限の量のd−アンフェタミンだけしかこれらの濃縮条件下で放出されないことを示唆する。
【0322】
【表61】
【0323】
アンフェタミンコンジュゲートの安定性は、酸性条件下で評価された。
【0324】
【表62】
【0325】
常温では限定的な量のd−アンフェタミンしか放出されなかった。90°Cでは限定的な量のd−アンフェタミンしか放出されなかったが、L−リシン−d−アンフェタミンの分解はより顕著であった。これは、アミド結合が安定的であること、及び、検出可能な量が加水分解される前に前記コンジュゲートは通常分解することを示唆する。還流条件では濃塩酸及び50%硫酸は、d−アンフェタミン含有量の各々85%及び59%を放出したが、望ましくない酸性溶液中にd−アンフェタミンを分配した。前記酸性溶液からd−アンフェタミンを回収する工程は、収率をさらに低減する。
【0326】
同様の試験では濃塩酸中での還流は、5時間後にある程度の加水分解(28%)を起こし、22時間後にさらなる加水分解(76%)を起こした。濃硫酸中での2時間の還流は、Lys−Ampの完全な分解を起こし、d−アンフェタミンを放出した可能性がある。上述したように、前記酸性溶液からのd−アンフェタミンの回収は、収率をさらに低減する。
【0327】
アンフェタミンコンジュゲートの安定性は、さまざまな濃度の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、ジエチルアミン及びトリエチルアミンを含む塩基性条件下でも評価された。最大のd−アンフェタミン放出は、3M水酸化ナトリウムにより得られる25.4%であった。全ての他の塩基性条件は、3%未満の放出をもたらした。
【実施例24】
【0328】
市販製品での処理下でのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の安定性
L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の安定性は、市販の酸、塩基及び酵素混合物での処理下で評価された。酸及び塩基(表59)については、10mgのLys−Ampが2mLの各々のストック溶液と混合され、前記溶液は20°Cで振とうされた。酵素処理(表60)については、10mgのLys−Ampが5mLの各々の酵素混合物と混合され、前記溶液は37°Cで振とうされた。一定分量(0時間、1時間及び24時間)の溶液はそれぞれ、HPLCによる分析の前に中和及び濾過された。前記市販試薬の多くは、さまざまな溶媒及び/又は界面活性剤も含んでいた。
【0329】
他に特に指示がなければ溶液は容器から直接使用され、希釈されないLys−Ampの固体と混合された。ルイスレッドデビル(登録商標)ライ(Lewis Red Devil(R)Lye)と、エンフォーサードレインケア(登録商標)セプティックトリートメント(Enforcer Drain Care(R)Septic Treatment)と、リッド−X(登録商標)セプティックトリートメント(Rid−X(R)Septic Treatment)とは、飽和水溶液として調製された。使用された酵素はシグマ(Sigma)から購入され、水に直接溶解された(ペプシン3mg/mL、パンクレアチン10mg/mL、プロナーゼ3mg/mL、エステラーゼ3mg/mL)が、オムニゲスト(Omnigest、登録商標)及びバイタルジム(VitaelZym、登録商標)のような酵素含有栄養補助食品は最初に粉砕又は開封された(H2O 5mL当たり錠剤1個又はカプセル1個)。
【0330】
市販の酸及び塩基はLys−Ampを加水分解するのに効果がなかった。ミラクル−グロ(Miracle−Gro、登録商標)での処理(7%の放出)と、オリンピック(登録商標)デッキクリーナー(Olympic(R)Deck Cleaner)での処理(4%の放出)とのみがなんらかの放出を示したが、24時間後でさえもd−アンフェタミンの量は無視できるほどであった。酵素製品の中では、精製のエステラーゼ(19%の放出)又はプロナーゼ(24%の放出)の混合物のみが(24時間後に)リシンを切断することに成功した。
【0331】
【表63】
【0332】
【表64】
【実施例25】
【0333】
経口径路、鼻腔内径路及び静脈内径路により投与されたさまざまなペプチドアンフェタミンコンジュゲート(HCl塩)の生体利用性
経口投与:雄のスプラーグドーリーラットが、自由に水を供給され、終夜絶食させられ、アンフェタミンか、等価量のd−アンフェタミンを含むアミノ酸アンフェタミンコンジュゲートかを強制経口投与された。
【0334】
鼻腔内投与:雄のスプラーグドーリーラットが、アンフェタミン又はリシン−アンフェタミン(1.8mg/kg)を鼻腔内投与された。
【0335】
さまざまなアミノ酸−アンフェタミン化合物の相対的なin vivoでの性能は図50−58に示され、表61に要約される。Ser−Amp由来のアンフェタミンの鼻腔内生体利用性は、遊離のアンフェタミンと比較してある程度まで減少した。しかしこの化合物は経口径路での投与によるとアンフェタミンと生体には等価ではなかった。フェニルアラニンは経口径路での投与によるとアンフェタミンと生体に等価であったが、非経口径路での投与によると生体利用性の減少はほとんど又は全く観察されなかった。Gly3−Ampは、経口径路によるとほぼ等しい(90%)生体利用性を有し、Cmaxは減少した(74%)。さらにGly3−Ampは、鼻腔内径路及び静脈内径路による生体利用性は、アンフェタミンと比較して低減した。
【0336】
【表65】
【0337】
複数の単一アミノ酸アンフェタミンコンジュゲートが、d−アンフェタミンに匹敵する(80−100%)経口生体利用性を有した。例えばLys、Gly及びPheコンジュゲートの全てが、前記親薬剤と同様の経口生体利用性を示した。ジペプチドプロドラッグは一般的に、各々のアミノ酸類縁体よりも低い生体利用性を示し、トリペプチド化合物は識別可能な傾向を示さなかった。複数のアミノ酸アンフェタミンコンジュゲートは、非経口生体利用性が低かった。Lys−Ampのような好ましいコンジュゲートは、d−アンフェタミンに匹敵する経口生体利用性と、d−アンフェタミンと比較した場合の非経口生体利用性の減少との両方を示す。
【実施例26】
【0338】
d−アンフェタミンコンジュゲートの経口投与Cmaxの減少
雄のスプラーグドーリーラットが、自由に水を供給され、終夜絶食させられ、アンフェタミンコンジュゲート又はd−アンフェタミン硫酸塩を強制経口投与された。全投与物が等価量のd−アンフェタミン塩基を含んでいた。d−アンフェタミンの血漿中濃度は、ELISA(Amphetamine Ultra,109319,Neogen,Corporation,Lexington,KY)により測定された。本アッセイ方法は、主要なd−アンフェタミン代謝生成物(パラ−ヒドロキシ−d−アンフェタミン)に対して最小限(0.6%)の反応性しか有さずd−アンフェタミンに特異的である。d−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンの血漿中濃度は、実施例に示されたLC/MS/MSにより測定された。
【実施例27】
【0339】
d−アンフェタミンコンジュゲートの鼻腔内生体利用性(AUC及びCmax)の減少
雄のスプラーグドーリーラットが自由に水を供給され、投与物が、アンフェタミンコンジュゲート又はd−アンフェタミン硫酸塩を含む0.02mLの水を鼻腔発赤(nasal flare)内に配置することにより投与された。全投与物が等価量のd−アンフェタミン塩基を含んでいた。d−アンフェタミンの血漿中濃度は、ELISA(Amphetamine Ultra,109319,Neogen,Corporation,Lexington,KY)により測定された。本アッセイ方法は、主要なd−アンフェタミン代謝生成物(パラ−ヒドロキシ−d−アンフェタミン)に対して最小限(0.6%)の反応性しか有さずd−アンフェタミンに特異的である。d−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンの血漿中濃度は、実施例に示されたLC/MS/MSにより測定された。
【実施例28】
【0340】
d−アンフェタミンコンジュゲートの静脈内生体利用性(AUC及びCmax)の減少
雄のスプラーグドーリーラットが自由に水を供給され、投与物が、アンフェタミンコンジュゲート又はd−アンフェタミン硫酸塩を含む0.1mLの水の尾静脈注射により投与された。全投与物が等価量のd−アンフェタミン塩基を含んでいた。d−アンフェタミンの血漿中濃度は、ELISA(Amphetamine Ultra,109319,Neogen,Corporation,Lexington,KY)により測定された。本アッセイ方法は、主要なd−アンフェタミン代謝生成物(パラ−ヒドロキシ−d−アンフェタミン)に対して最小限(0.6%)の反応性しか有さずd−アンフェタミンに特異的である。d−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンの血漿中濃度は、実施例に示されたLC/MS/MSにより測定された。
【実施例29】
【0341】
さまざまな化学的部分とのアンフェタミンの結合
上述の実施例は、その治療価値を維持しながら過剰投与の可能性を低減するのに有用な、アミノ酸のような化学的部分とコンジュゲートを形成したアンフェタミンの効用を実証する。化学的部分とのアンフェタミンの結合の有効性は、前記アンフェタミンのリシン(K)との結合を通じて実証されたが、上述の実施例は例示のみが意図される。以下で説明されるように、以下の代表的な開始物質を使用する類似の手順を通じた、いずれかのさまざまな化学的部分(すなわちペプチド、糖ペプチド、炭水化物、ヌクレオシド又はビタミン)とのアンフェタミンの結合が実施可能である。
【0342】
アンフェタミンの合成例:
Gly2−Ampの合成
Gly2−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−Gly−Gly−OSuであることを除いて類似の方法により合成された。
【0343】
Glu2−Phe−Ampの合成
Glu2−Phe−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−Glu(OtBu)−Glu(OtBu)−OSuであることと、開始薬剤コンジュゲートがPhe−Amp(Phe−Ampの合成を参照せよ。)であることとをを除いて類似の方法により合成された。
【0344】
His−Ampの合成
His−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−His(Trt)−OSuであることを除いて類似の方法により合成された。
【0345】
Lys−Gly−Ampの合成
Lys−Gly−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−Lys(Boc)−OSuであることと、開始薬剤コンジュゲートがGly−Amp(Gly−Ampの合成を参照せよ。)であることとをを除いて類似の方法により合成された。
【0346】
Lys−Glu−Ampの合成
Lys−Glu−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−Lys(Boc)−OSuであることと、開始薬剤コンジュゲートがGlu−Ampであることとをを除いて類似の方法により合成された。
【0347】
Glu−Ampの合成
Glu−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−Glu(OtBu)−OSuであることを除いて類似の方法により合成された。
【0348】
(d)−Lys−(l)−Lys−Ampの合成
(d)−Lys−(l)−Lys−Ampは、アミノ酸開始物質がBoc−(d)−Lys(Boc)−(l)−Lys(Boc)−OSuであることを除いて類似の方法により合成された。
【0349】
グロン酸−Ampの合成
Gul−Ampは、炭水化物開始物質がグロン酸−OSuであることを除いて類似の方法により合成された。
【実施例30】
【0350】
経口投与後の脳組織におけるL−リシン−d−アンフェタミン二塩酸塩の不検出
雄のスプラーグドーリーラットが、自由に水を供給され、終夜絶食させられ、L−リシン−d−アンフェタミン又はd−アンフェタミン硫酸塩を強制経口投与された。全投与物が等価量のd−アンフェタミン塩基を含んでいた。図59に示されるようにd−アンフェタミン硫酸塩又はL−リシン−d−アンフェタミンの投与後に、血清及び脳組織で同様のレベルのd−アンフェタミンが検出された。L−リシン−d−アンフェタミン由来のd−アンフェタミンは、d−アンフェタミン硫酸塩由来のd−アンフェタミンのレベルと比較して脳における持続的に存在していることを示した。L−リシン−d−アンフェタミンコンジュゲートは血清中に相当量存在したが、脳組織では検出されず、前記コンジュゲートが中枢神経系の作用部位に接近するために血液脳関門を通過しないことを示した。
【実施例31】
【0351】
L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の医薬品組成物
ゼラチンカプセル投与形態は、3種類の投与強度で調製された。前記硬質ゼラチンカプセルは、NRP104及び前記投与強度を印字された。前記カプセルの充填物は、均一な外観の白ないしオフホワイトの微粉末を含む。
【0352】
【表66】
【0353】
他の希釈剤、崩壊剤、滑剤及び着色料等は使用される場合がある。また特定の成分は、上に列挙される機能と異なる機能を提供するために使用される場合がある。
【0354】
前記医薬品組成物は、塊を崩したL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩(サイズ 20メッシュ)を微結晶性セルロースといっしょに粉砕することにより調製された。前記混合物は30メッシュのふるいにかけられ、その後クロスカルメロースナトリウムといっしょに混合された。予めふるいにかけられたステアリン酸マグネシウム(サイズ 30メッシュ)は添加され、前記カプセルの充填物を形成するために、前記組成物は均一になるまで混合された。
【実施例32】
【0355】
絶食条件下で7日間健康な成人に投与された70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩カプセルの臨床薬物動態評価及び経口生体利用性
この非盲検の単群研究では、18歳ないし55歳の間の年齢の健康な成人が、7日間連続で、1日1回(午前7時に)、70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩を8オンスの水といっしょに投与された。患者は、最後の投与前の少なくとも10時間と、最後の投与後の少なくとも4時間とに絶食した。静脈血試料(7mL)は、0日目、1日目、6日目及び7日目(の朝)の薬剤投与の前と、7日目の最終投与後の16個の時点(0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、10時間、12時間、16時間、24時間、48時間及び72時間)との両方に、EDTAヴァキュテイナー中に採取された。試料収集後すぐにヴァキュテイナーチューブは、3000rpm、4°Cで10分間遠心された。収集から1時間以内に試料は−20°Cで保存された。血漿試料は、バリデーションされたLC−MS/MS法を使用して、L−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンについて分析された。
【0356】
5回目の投与までにd−アンフェタミンは定常状態に到達した。7回目の投与後、平均AUC0-24は1113ng.h/mLであり、平均AUC0-∞は1453ng.h/mLであり、平均Cmaxは90.1ng.h/mLであり、平均Tmaxは3.68時間であった。表63及び図60を参照せよ。比較すると長期放出アンフェタミン塩は、終夜の絶食後に5.8時間のTmaxと、853ng.h/mLのAUC0-∞とを示す。J.F.Auiler et al.,“Effect of food on early drug exposure from extended−release stimulants:results from the Concerta,Adderall XR Food Evaluation(CAFE)study,”Curr Med Res Opin 18:311−316 at 313(2002)。
【0357】
インタクトなL−リシン−d−アンフェタミンは迅速にd−アンフェタミンに変換された。
7回目の投与後、平均AUC0-24は60.66ng.h/mLであり、平均AUC0-∞は61.06ng.h/mLであった。表63及び図60を参照せよ。加えてL−リシン−d−アンフェタミンについては平均Cmaxは47.9ng.h/mLであり、平均Tmaxは1.14時間であった。L−リシン−d−アンフェタミンは、約6時間以内に完全に除去された。
【0358】
Cmaxは体重による規格化後男性で12%高かったが、d−アンフェタミンへの全身曝露には性差はなかった。
【0359】
前記プロドラッグL−リシン−d−アンフェタミンから放出されるd−アンフェタミンの多数回投与薬物動態プロファイルは、長期放出特性と一致する。この設定で生じた有害な事象は、他の刺激剤に矛盾せず、70mgのL−リシン−d−アンフェタミンは、耐容性良好であることを示唆する。
【0360】
【表67】
【実施例33】
【0361】
ADHDの治療に使用されるアンフェタミン長期放出製品アデロールXR(登録商標)及びデキセドリンスパンスール(登録商標)と比較したL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の臨床薬物動態評価及び経口生体利用性
【0362】
【表68】
【0363】
ヒトでのL−リシン−d−アンフェタミンの前記薬物動態及び経口生体利用性の臨床評価が実施された。L−リシン−d−アンフェタミンは、その投与物中のd−アンフェタミン塩基含有量に基づく治療域の下端(25mg)及び上端(75mg)を近似する用量で経口投与された。さらに、高用量の投与物は、該高用量のL−リシン−d−アンフェタミン中のアンフェタミン塩基と等価量のアンフェタミン塩基を含むアデロールXR(登録商標、Shire)又はデキセドリンスパンスール(登録商標、グラクソスミスクライン)の投与物と比較された。処理群及び用量は表64に要約される。定量化可能限界未満(blq<0.5ng/mL)の全てのレベルは、薬物動態解析の目的で0として処理された。
【0364】
各々の被験者個体に対する低用量及び高用量でのL−リシン−d−アンフェタミンの投与後のd−アンフェタミンと、L−リシン−d−アンフェタミンのインタクトなコンジュゲートとの濃度は、薬物動態パラメーターとともに表65−70に示される。各々の被験者個体に対するアデロールXR(登録商標)又はデキセドリンスパンスール(登録商標)の投与後のd−アンフェタミン濃度及び薬物動態パラメーターは、各々表69及び表70に示される。L−リシン−d−アンフェタミンのインタクトなコンジュゲートとd−アンフェタミンとを示す濃度−時間曲線は図61及び図62に示される。L−リシン−d−アンフェタミンからのd−アンフェタミンの長期放出は両方の用量に対して観察され、低用量及び高用量の結果が比較されたとき、薬物動態パラメーター(Cmax及びAUC)は用量に比例した(図61及び図62)。有意なレベルのd−アンフェタミンは、投与後1時間までは観察されなかった。ごく少量(各々25mg及び75mgの用量に対して、モル濃度で算出されるAUCinfを基準として総薬剤吸収量の1.6%及び2.0%)のL−リシン−d−アンフェタミンのインタクトなコンジュゲートは、約1時間の時点でピークに到達するレベルで検出された(表66及び表68)。吸収された少量のインタクトなコンジュゲートは迅速にかつ完全に除去され、最高用量においても5時間までに検出可能な濃度では存在しなくなった。
【0365】
(同一の被験者が7日間のウォッシュアウト期間後にアデロールXR(登録商標)の投与を受ける)クロスオーバーデザインにおいて、高い方の用量のL−リシン−d−アンフェタミンが、等価量のアデロールXR(登録商標)と比較された。アデロールXR(登録商標)は、d−アンフェタミン塩及びl−アンフェタミン塩の混合物(等量のd−アンフェタミン硫酸塩、d−/l−アンフェタミン硫酸塩、d−アンフェタミンサッカラート及びd−/l−アンフェタミンアスパラギン酸塩)を含む、ADHDに対する1日1回型の長期放出治療薬である。等価量の長期放出デキセドリンスパンスール(登録商標、d−アンフェタミン硫酸塩の長期放出製剤を含む。)も本研究に含められた。ラットでの薬物動態研究で観察されたようにL−リシン−d−アンフェタミンの経口投与は、アデロールXR(登録商標)及びデキセドリンスパンスール(登録商標)の濃度−時間曲線と類似したd−アンフェタミンの濃度−時間曲線をもたらした(図63及び図64)。L−リシン−d−アンフェタミンの投与後のd−アンフェタミンの生体利用性(AUCinf)は、両方の長期放出アンフェタミン製品とほぼ等価であった(表71)。ADHDの効果的な1日1回の治療のために必要な時間の典型である12時間にわたり、L−リシン−d−アンフェタミンの生体利用性はアデロールXR(登録商標)の(d−アンフェタミンとl−アンフェタミンとを加えたレベルでの)生体利用性とほぼ等価であり、デキセドリンスパンスール(登録商標)の生体利用性よりも20%を超えて高かった。本臨床研究の結果に基づくと、L−リシン−d−アンフェタミンはADHDに対する効果的な1日1回型の治療薬となるだろう。さらにL−リシン−d−アンフェタミンは、ヒト及び動物モデルにおいて類似の薬物動態、すなわち、長期的放出動態をもたらすd−アンフェタミンの遅延放出を提供した。これらの観察に基づくと、L−リシン−d−アンフェタミンはヒトにおける乱用抵抗特性も有するはずである。
【0366】
【表69】
【0367】
【表70】
【0368】
【表71】
【0369】
【表72】
【0370】
【表73】
【0371】
【表74】
【0372】
【表75】
【0373】
【表76】
【0374】
【表77】
【0375】
【表78】
【0376】
【表79】
【0377】
【表80】
【0378】
【表81】
【実施例34】
【0379】
L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の臨床薬物動態評価及び経口生体利用性
ADHD小児患者(6−12歳)では、終夜8時間絶食後の30mg、50mg又は70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の単回経口投与後のd−アンフェタミンのTmaxは約3.5時間であった。図65を参照せよ。L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩のTmaxは約1時間であった。L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の単回経口投与後のd−アンフェタミンの線形の薬物動態は、児童において30mgないし70mgの用量範囲にわたり確立された。
【0380】
【表82】
【0381】
ADHD児童における定常状態でのd−アンフェタミンの予期されない蓄積はなく、7日間連続で1日1回の投与後のL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の蓄積はない。
【0382】
食事は、健康な成人において70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩カプセルの単回経口投与後のd−アンフェタミンの吸収の程度に影響を与えないが、Tmaxを(食前での3.78時間から高脂肪食後の4.72時間まで)約1時間遅延させる。8時間の絶食後、溶液中のL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩と、インタクトなカプセルとしてのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩との経口投与後のd−アンフェタミンの吸収の程度は等価であった。
【0383】
児童における数値の範囲は成人における数値の範囲より高かったが、用量で規格化されたCmax及びAUCにより測定される曝露には男性と女性との間で見かけ上の差異はなかった。これは、用量で規格化されたCmax及びAUCと体重との間の有意な相関関係の結果であるので、前記差異は児童に投与されたmg/kg単位での用量が高いことが原因である。男性被験者と女性被験者との間でt1/2には見かけ上の差異はなく、t1/2と年齢又は体重との間に何らの明らかな関係もなかった。
【0384】
臨床薬物動態評価の代表的な結果は図66(AUC)、図67(Cmax)及び図68(Tmax)に示される。
【実施例35】
【0385】
小児臨床試験におけるL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の有効性
L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の有効性は、(合併型又は多動性衝動性型の)ADHDのDSM−IV基準を満たす6−12歳の児童(N=290)で実施された二重盲検無作為プラセボ対照平行群研究で確立された。患者は、4週間、1日1回、朝に30mg、50mg又は70mgの最終用量のL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩を受け入れる固定用量治療群か、プラセボを受け入れる群かに無作為化された。50mg及び70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩に無作為化された患者については投与量は強制増量により増加させられた。患者が1日当たり30mgの用量のL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の全てを受け入れた場合には、研究者(ADHD評価尺度(ADHD−RS))及び親(Connerの親評価尺度(CPRS))により評価されたように、治療にかかる第1週を含む4週間の全期間で、プラセボと比較して全ての用量のL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩について、ADHDの徴候及び症状の顕著な改善が実証された。付加的な用量反応的な改善は、各々50mg及び70mgの群で実証された。CPRSスコアにより測定されたようにL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩で治療された患者は、プラセボ治療された患者と比較して朝(〜午前10時)、午後(〜午後2時)及び夕方(〜午後6時)において顕著な改善を示し、1日を通じて有効性を実証した。第一次有効性解析の結果、すなわちITT母集団についての基準線から終点までのADHD−RS総スコアの変化は図69に示される。
【0386】
有効性もSKAMPスコアにより測定された。(合併型又は多動性衝動性型の)ADHDのDSM−IV基準を満たす6−12歳の児童計52人は、二重盲検無作為プラセボ対照クロスオーバー研究に参加した。患者は、1週間、1日1回、朝に各々の治療として固定及び最適用量のL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩(30mg、50mg、70mg)、アデロールXR(登録商標、10mg、20mg又は30mg)又はプラセボを受け入れるために無作為化された。本研究における主要評価項目は、SKAMP(Swanson,Kotkin,Agler,M.Flynn and Pelham rating scale)−態度(Deportment)スコアである。L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩及びアデロールXR(登録商標)の両方は、プラセボと比較して高度に効果的であった。L−リシン−d−アンフェタミンの顕著な効果は朝の投与後2時間以内に生じ、最後の評価時点である朝の投与後12時間を通じて継続し、プラセボと比較して12時間の作用期間を生み出した。図70を参照せよ。
【実施例36】
【0387】
静注L−リシン−d−アンフェタミンの乱用の可能性
乱用の可能性を評価するために、50mgのL−リシン−d−アンフェタミンと、20mgのd−アンフェタミンと、プラセボとが、二重盲検クロスオーバーデザインで、9人の刺激剤乱用者に対して、48時間間隔で2分間にわたり、静注投与された。薬剤は3x3釣合いラテン方格法に従い投与された。各々の投与日に、生命徴候尺度と主観的効果及び行動的効果とは、投与前と、投与後0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、9時間、12時間、16時間及び24時間の時点とに質問表で評価された。これらの時点と5分の時点とに血液試料(5mL)はd−アンフェタミンレベルの評価のために採取された。
【0388】
d−アンフェタミンについては、5分の時点で77.7ng/mLのd−アンフェタミンの平均ピーク血漿中レベルが生じ、その後迅速に元のレベルに戻った。d−アンフェタミンの投与は、予期されたd−アンフェタミン様効果を引き起こし、15分の時点で平均ピーク応答をもたらした。主観的嗜好性視覚的アナログ尺度(Subject Liking VAS)の主要変数でのd−アンフェタミンに対する平均最大応答は、プラセボよりも有意に大きかった(p=0.01)。
【0389】
L−リシン−d−アンフェタミンについては、3時間の時点で33.8ng/mLのd−アンフェタミンの平均ピーク血漿中レベルが生じ、4時間の観察を通じてこのレベルのままであった。L−リシン−d−アンフェタミンは、d−アンフェタミン様の主観的効果、行動的効果及び生命徴候効果をもたらし、1時間ないし3時間の時点で平均ピーク応答をもたらした。主観的嗜好性視覚的アナログ尺度の主要変数に対しては、前記応答はプラセボよりも大きくはなかった(p=0.29)。L−リシン−d−アンフェタミン投与後の血圧の変化は顕著であった。
【0390】
前記研究の終了時点で被験者は、どちらの治療を再び利用しようと思うかどうかについて質問された。6人の被験者は20mgのd−アンフェタミンを選択し、2人の被験者は前記治療のどちらも選択せず、1人の被験者は50mgのL−リシン−d−アンフェタミンを選択した。要約すると、血圧の上昇は遅れて発生したが、50mgのL−リシン−d−アンフェタミンは陶酔感かアンフェタミン様の主観的効果かをもたらさなかった。前記知見は、L−リシン−d−アンフェタミン自体は不活性であることを示唆する。1時間ないし2時間後L−リシン−d−アンフェタミンはd−アンフェタミンに変換される。静注投与されるとL−リシン−d−アンフェタミンは、等価量のd−アンフェタミン塩基を含む即時放出d−アンフェタミンよりも、乱用の可能性は顕著に小さい。
【実施例37】
【0391】
刺激剤乱用の経歴を有する健康な成人におけるL−リシン−d−アンフェタミン対d−アンフェタミンでの乱用の可能性の減少の予備的推測
刺激剤乱用のDSM−IV基準を満たす健康な成人におけるL−リシン−d−アンフェタミン(30−150mg)対d−アンフェタミン硫酸塩(40mg)とプラセボとに対する乱用傾向の予備的推測を取得するために、この無作為単一施設用量漸増研究は、薬物動態パラメーターを使用した。被験者は、各々4人の患者からなる3組のコホートに分割された。全員が48時間という最小限の間隔でL−リシン−d−アンフェタミンの単回投与を受け、d−アンフェタミン硫酸塩(40mg)投与群及びプラセボ投与群が無作為に分散された。コホート1は30mg、50mg、70mg、100mgの用量のL−リシン−d−アンフェタミンを投与された。コホート2は50mg、70mg、100mg、130mgの用量を受けた。コホート3は70mg、100mg、130mg及び150mgの用量を受けた。
【0392】
最初の4時間にかかるd−アンフェタミンのAUClastは、40mgのd−アンフェタミン(245.5−316.8ng/mL)と比較して100mgのL−リシン−d−アンフェタミン(165.3−213.1ng/mL)では実質的に低かった。Cmax及びAUClastは30−130mgのL−リシン−d−アンフェタミンに対しては用量とともに増大し、130mg及び150mgの用量の間では減少した。Tmaxは、d−アンフェタミン硫酸塩(1.88−2.74時間)と比較してL−リシン−d−アンフェタミンでは3.78時間から4.25時間までの範囲にあり大きかった。L−リシン−d−アンフェタミンの半減期(範囲:0.44−0.76時間)は、迅速なクリアランスを示した。副作用の重篤度は軽く、生命徴候又はECGパラメーターには顕著な変化はなかった。L−リシン−d−アンフェタミンは、d−アンフェタミン硫酸塩と比較してd−アンフェタミンのより緩やかな放出特性を有した。150mgという高用量では最大濃度の減少があるようにみえ、より高用量のL−リシン−d−アンフェタミンはCmax及びAUClastのさらなる増大をもたらさないことを示唆する。これらの結果は、乱用の可能性の低減に矛盾しない薬剤プロファイルを示唆する。
【0393】
本明細書で示され、かつ、説明される本発明の特定の実施態様は代表例にすぎないことは理解されるだろう。多数の変更、変化、置換及び均等物は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者が想到するだろう。特に本出願で使用される用語は、関連出願中で使用される類似の用語に照らして広く解釈されるべきである。したがって本明細書で説明され、かつ添付される図面で示される全ての主題は例示のみが目的であるとみなされ限定的な意味ではないこと、及び、本発明の範囲は添付される特許請求の範囲のみにより決定されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0394】
【図1−1】ペプチドアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図。
【図1−2】ペプチドアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図。
【図2】リシンアンフェタミンジメシル酸塩の合成を示す図。
【図3】リシンアンフェタミン塩酸の合成を示す図。
【図4】セリンアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図。
【図5】フェニルアラニンアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図。
【図6】トリグリシンアンフェタミンコンジュゲートの合成を示す図。
【図7】d−アンフェタミン又はL−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩を経口投与されたラット個体からのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図8】(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図9】(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図10】(用量6mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図11】(用量12mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図12】(用量30mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図13】(用量60mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図14】用量1.5、3、6、12、30及び60mg/kgのd−アンフェタミン塩基での、d−アンフェタミン硫酸塩と比較したL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩の生体利用性の百分率(AUC及びCmax)を示すグラフ。
【図15】d−アンフェタミン塩基の用量の段階的増加に対する、投与後30分でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図16】(用量60mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)d−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図17】(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの鼻腔内投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(ELISA分析)を示すグラフ。
【図18】(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの鼻腔内投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(ELISA分析)を示すグラフ。
【図19】(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの静脈内ボーラス投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(ELISA分析)を示すグラフ。
【図20】(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)デキセドリンスパンスール(登録商標)カプセルか、粉砕されたデキセドリンスパンスール(登録商標)カプセルか、L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩かのラットへの経口投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度レベル(ELISA分析)を示すグラフ。
【図21】(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図21A)及びnM単位(図21B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図22】(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図22A)及びnM単位(図22B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図23】(用量6mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図23A)及びnM単位(図23B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図24】(用量12mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図24A)及びnM単位(図24B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図25】(用量60mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)ng/mL単位(図25A)及びnM単位(図25B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図26】ヒト等価用量の段階的増加に比例したL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの相対的生体利用性(Cmax)を示すグラフ。
【図27】d−アンフェタミン塩基の用量の段階的増加に比例したL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの相対的生体利用性(AUCinf)を示すグラフ。
【図28】ヒト等価用量の段階的増加に比例したL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの相対的生体利用性(AUCinf)を示すグラフ。
【図29】ヒト等価用量の段階的増加に比例したインタクトなL−リシン−d−アンフェタミンの相対的生体利用性(Cmax)を示すグラフ。
【図30】ヒト等価用量の段階的増加に比例したインタクトなL−リシン−d−アンフェタミンの相対的生体利用性(AUCinf)を示すグラフ。
【図31】(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの鼻腔内投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(LC/MS/MS分析)を示すグラフ。
【図32】(用量3mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの鼻腔内投与後のng/mL単位(図32A)及びnM単位(図32B)でのd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンの血漿中濃度(LC/MS/MS分析)を示すグラフ。
【図33】(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの静脈内ボーラス投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度(LC/MS/MS分析)を示すグラフ。
【図34】(用量1.5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの静脈内投与後のng/mL単位(図34A)及びnM単位(図34B)でのd−アンフェタミンの血漿中濃度(LC/MS/MS分析)を示すグラフ。
【図35】L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内又は経口投与(n=3)後のL−リシン−d−アンフェタミンの平均血漿中濃度の経時変化を示すグラフ。
【図36】L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内又は経口投与(n=3)後のd−アンフェタミンの血漿中濃度の経時変化を示すグラフ。
【図37】L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内投与(n=3)後のng/mL単位(図37A)及びnM単位(図37B)でのL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの平均血漿中濃度レベルの経時変化を示すグラフ。
【図38】L−リシン−d−アンフェタミンの経口投与(n=3)後のng/mL単位(図38A)及びnM単位(図38B)でのL−リシン−d−アンフェタミン及びd−アンフェタミンの平均血漿中濃度レベルの経時変化を示すグラフ。
【図39】L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内投与(図39A)又は経口投与(図39B)後のL−リシン−d−アンフェタミンの個体ごとの血漿中濃度の経時変化を示すグラフ。
【図40】L−リシン−d−アンフェタミンの静脈内投与(図40A)又は経口投与(図40B)後のd−アンフェタミンの個体ごとの血漿中濃度の経時変化を示すグラフ。
【図41】(用量1.8mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩の雄イヌへの経口投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図42】(用量1.8mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩の雌イヌへの経口投与後のd−アンフェタミンの血漿中濃度を示すグラフ。
【図43】L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミンの雄イヌ及び雌イヌへの増量静脈内注射後の平均血圧を示すグラフ。
【図44】L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩又はd−アンフェタミンの雄イヌ及び雌イヌへの増量静脈内注射後の左心室血圧を示すグラフ。
【図45】経口投与後のラットの自発運動活性(5時間の経時変化)を示すグラフ。
【図46】経口投与後のラットの自発運動活性(12時間の経時変化)を示すグラフ。
【図47】鼻腔内投与後のラットの自発運動活性(1時間の経時変化)を示すグラフ。
【図48】(カルボキシメチルセルロースと併用した)鼻腔内投与後のラットの自発運動活性(2時間の経時変化)を示すグラフ。
【図49】静脈内投与後のラットの自発運動活性(3時間の経時変化)を示すグラフ。
【図50】乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸、ジペプチド及びトリペプチドコンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフ。
【図51】乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸、ジペプチド及びトリペプチドコンジュゲートの経口生体利用性を示すグラフ。
【図52】乱用抵抗性アンフェタミントリペプチドコンジュゲートの静脈内生体利用性を示すグラフ。
【図53】乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸コンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフ。
【図54】乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸コンジュゲートの経口生体利用性を示すグラフ。
【図55】乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸コンジュゲートの静脈内生体利用性を示すグラフ。
【図56】乱用抵抗性アンフェタミントリペプチドコンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフ。
【図57】乱用抵抗性アンフェタミンアミノ酸及びジペプチドコンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフ。
【図58】D−及びL−アミノ酸異性体を含む乱用抵抗性アンフェタミンジペプチドコンジュゲートの鼻腔内生体利用性を示すグラフ。
【図59】(用量5mg/kgのd−アンフェタミン塩基での)L−リシン−d−アンフェタミン塩酸塩又はd−アンフェタミン硫酸塩のラットへの経口投与後の、d−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンの血清中濃度(ng/mL単位、図59A)と、脳組織内濃度(ng/g単位、図59B)(LC/MS/MS分析)を示すグラフ。
【図60】L−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩70mgのヒトへの経口投与の臨床研究から得られた定常状態の血漿中のd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンのレベル(LC/MS/MS分析)を示すグラフ。
【図61−A】L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基7.37mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩25mg)のヒトへの経口投与後72時間にわたる血漿中のd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンのレベル(ng/mL単位)を示すグラフ。
【図61−B】L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基7.37mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩25mg)のヒトへの経口投与後72時間にわたる血漿中のd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンのレベル(nM単位)を示すグラフ。
【図62−A】L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)のヒトへの経口投与後72時間にわたる血漿中のd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンのレベル(ng/mL単位)を示すグラフ。
【図62−B】L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)のヒトへの経口投与後72時間にわたる血漿中のd−アンフェタミン及びL−リシン−d−アンフェタミンのレベル(nM単位)を示すグラフ。
【図63−A】L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)又は(アンフェタミン塩基21.9mgを含む35mgの)アデロールXR(登録商標)のヒトへの経口投与後の血漿中のd−アンフェタミンのレベル(0−12時間)を示すグラフ。
【図63−B】L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)又は(アンフェタミン塩基21.9mgを含む35mgの)アデロールXR(登録商標)のヒトへの経口投与後の血漿中のd−アンフェタミンのレベル(0−72時間)を示すグラフ。
【図64−A】L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)又は(アンフェタミン塩基22.1mgを含む30mgの)デキセドリンスパンスール(登録商標)のヒトへの経口投与後の血漿中のd−アンフェタミンのレベル(0−12時間)を示すグラフ。
【図64−B】L−リシン−d−アンフェタミン(d−アンフェタミン塩基22.1mgを含むL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩75mg)又は(アンフェタミン塩基22.1mgを含む30mgの)デキセドリンスパンスール(登録商標)のヒトへの経口投与後の血漿中のd−アンフェタミンのレベル(0−72時間)を示すグラフ。
【図65】単回用量が30mg、50mg及び70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩のADHD小児患者への絶食条件下での経口投与後のd−アンフェタミンの平均血漿中濃度を示すグラフ。
【図66】健康な成人ボランティアと、ADHD児童とへのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩カプセルの1日1回の経口投与後の、用量で規格化されたd−アンフェタミンのAUCと性別との間の関係を示すグラフ。
【図67】健康な成人ボランティアと、ADHD児童とへのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩カプセルの1日1回の経口投与後の、用量で規格化されたd−アンフェタミンの最大血漿中濃度と性別との間の関係を示すグラフ。
【図68】健康な成人ボランティアと、ADHD児童とへのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩カプセルの1日1回の経口投与後の、用量で規格化されたd−アンフェタミンの最大濃度到達時間と性別との間の関係を示すグラフ。
【図69】小児臨床研究についての終点でのADHD−RSを示すグラフ。
【図70】小児臨床研究についてのSKAMPスコア(有効性)対時間を示すグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式IIIの化合物又はその塩を投与するステップを含むナルコレプシーの治療方法であって、
【化1】
化学式(III)においてAはアンフェタミンの右旋性異性体であり、X1はL−アミノ酸であり、Xはそれぞれ独立の化学的部分であり、nは1から50までのインクリメントであることを特徴とするナルコレプシーの治療方法。
【請求項2】
X1はリシンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Aは、アンフェタミン、メタンフェタミン又はメチルフェニデートであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Aはアンフェタミンであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物はL−リシン−d−アンフェタミンであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物はL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物は1日1回投与されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
化学式IIIのアンフェタミンプロドラッグ又はその塩と、少なくとも1種類の医薬品添加物とを含む経口投与用の医薬品組成物であって、
【化2】
化学式(III)においてAはアンフェタミンの右旋性異性体であり、X1はL−アミノ酸であり、Xはそれぞれ独立の化学的部分であり、nは1から50までのインクリメントであり、前記医薬品組成物が経口投与されるとき前記医薬品組成物は治療上の有効量のアンフェタミンを放出し、前記医薬品組成物は未結合のアンフェタミンと比較してアンフェタミン吸収速度の低減を示すことを特徴とする医薬品組成物。
【請求項9】
前記アンフェタミンプロドラッグはL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩であることを特徴とする請求項8に記載の医薬品組成物。
【請求項10】
約10mgないし約250mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩を含むことを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項11】
約30mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩を含むことを特徴とする請求項10に記載の医薬品組成物。
【請求項12】
約50mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩を含むことを特徴とする請求項10に記載の医薬品組成物。
【請求項13】
約70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩を含むことを特徴とする請求項10に記載の医薬品組成物。
【請求項14】
放出されるアンフェタミンのCmaxは選択される値の約80%ないし約120%の範囲内であり、該選択される値は53.2±9.62ng/mL、93.3±18.2ng/mL又は134±26.1ng/mLであることを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項15】
放出されるアンフェタミンのTmaxは選択される値の約80%ないし約120%の範囲内であり、該選択される値は3.41±1.09時間、3.58±1.18時間又は3.46±1.34時間であることを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項16】
放出されるアンフェタミンのAUCは選択される値の約80%ないし約120%の範囲内であり、該選択される値は845±117ng.h/mL、1510±242ng.h/mL又は2157±383ng.h/mLであることを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項17】
前記医薬品組成物は約40重量%ないし約90重量%の希釈剤を含むことを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項18】
前記医薬品組成物は約55重量%ないし約80重量%の希釈剤を含むことを特徴とする請求項17に記載の医薬品組成物。
【請求項19】
前記希釈剤は微結晶性セルロースであることを特徴とする請求項18に記載の医薬品組成物。
【請求項20】
前記医薬品組成物は約1重量%ないし約10重量%の崩壊剤を含むことを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項21】
前記医薬品組成物は約1重量%ないし約5重量%の崩壊剤を含むことを特徴とする請求項20に記載の医薬品組成物。
【請求項22】
前記崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムであることを特徴とする請求項21に記載の医薬品組成物。
【請求項23】
前記医薬品組成物は約5重量%未満の滑剤を含むことを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項24】
前記医薬品組成物は約1重量%ないし約1.5重量%の滑剤を含むことを特徴とする請求項23に記載の医薬品組成物。
【請求項25】
前記滑剤はステアリン酸マグネシウムであることを特徴とする請求項24に記載の医薬品組成物。
【請求項26】
前記医薬品組成物は本質的に、(a)約10mgないし約250mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩と、(b)約40重量%ないし約90重量%の微結晶性セルロースと、
(c)約1重量%ないし約10重量%のクロスカルメロースナトリウムと、(d)約5重量%未満のステアリン酸マグネシウムとからなることを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項27】
本質的に、(a)約30mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩と、(b)約151mgの微結晶性セルロースと、(c)約4.69mgのクロスカルメロースナトリウムと、(d)約1.88mgのステアリン酸マグネシウムとからなることを特徴とする請求項26に記載の医薬品組成物。
【請求項28】
本質的に、(a)約50mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩と、(b)約70mgの微結晶性セルロースと、(c)約3.12mgのクロスカルメロースナトリウムと、(d)約1.88mgのステアリン酸マグネシウムとからなることを特徴とする請求項26に記載の医薬品組成物。
【請求項29】
本質的に、(a)約70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩と、(b)約98mgの微結晶性セルロースと、(c)約4.37mgのクロスカルメロースナトリウムと、(d)約2.63mgのステアリン酸マグネシウムとからなることを特徴とする請求項26に記載の医薬品組成物。
【請求項30】
前記医薬品組成物はサイズ3のゼラチンカプセルに被包されることを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物を含む経口投与形態剤。
【請求項31】
放出されるアンフェタミンの経口生体利用性は少なくとも約60%のAUCであることを特徴とする請求項8に記載の医薬品組成物。
【請求項32】
放出されるアンフェタミンの経口生体利用性は少なくとも約80%のAUCであることを特徴とする請求項31に記載の医薬品組成物。
【請求項33】
放出されるアンフェタミンの経口生体利用性は少なくとも約90%のAUCであることを特徴とする請求項32に記載の医薬品組成物。
【請求項34】
放出されるアンフェタミンの経口生体利用性は少なくとも約95%のAUCであることを特徴とする請求項33に記載の医薬品組成物。
【請求項35】
放出されるアンフェタミンの経口生体利用性は少なくとも約98%のAUCであることを特徴とする請求項34に記載の医薬品組成物。
【請求項36】
放出されるアンフェタミンの非経口生体利用性は約70%未満のAUCであることを特徴とする請求項8に記載の医薬品組成物。
【請求項37】
放出されるアンフェタミンの非経口生体利用性は約50%未満のAUCであることを特徴とする請求項36に記載の医薬品組成物。
【請求項38】
放出されるアンフェタミンの非経口生体利用性は約15%未満のAUCであることを特徴とする請求項37に記載の医薬品組成物。
【請求項39】
放出されるアンフェタミンの非経口生体利用性は約10%未満のAUCであることを特徴とする請求項38に記載の医薬品組成物。
【請求項40】
放出されるアンフェタミンの非経口生体利用性は約1%未満のAUCであることを特徴とする請求項39に記載の医薬品組成物。
【請求項41】
放出されるアンフェタミンの経口生体利用性は少なくとも約60%のAUCであり、かつ、放出されるアンフェタミンの非経口生体利用性は約15%未満のAUCであることを特徴とする請求項8に記載の医薬品組成物。
【請求項1】
化学式IIIの化合物又はその塩を投与するステップを含むナルコレプシーの治療方法であって、
【化1】
化学式(III)においてAはアンフェタミンの右旋性異性体であり、X1はL−アミノ酸であり、Xはそれぞれ独立の化学的部分であり、nは1から50までのインクリメントであることを特徴とするナルコレプシーの治療方法。
【請求項2】
X1はリシンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Aは、アンフェタミン、メタンフェタミン又はメチルフェニデートであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Aはアンフェタミンであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物はL−リシン−d−アンフェタミンであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物はL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物は1日1回投与されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
化学式IIIのアンフェタミンプロドラッグ又はその塩と、少なくとも1種類の医薬品添加物とを含む経口投与用の医薬品組成物であって、
【化2】
化学式(III)においてAはアンフェタミンの右旋性異性体であり、X1はL−アミノ酸であり、Xはそれぞれ独立の化学的部分であり、nは1から50までのインクリメントであり、前記医薬品組成物が経口投与されるとき前記医薬品組成物は治療上の有効量のアンフェタミンを放出し、前記医薬品組成物は未結合のアンフェタミンと比較してアンフェタミン吸収速度の低減を示すことを特徴とする医薬品組成物。
【請求項9】
前記アンフェタミンプロドラッグはL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩であることを特徴とする請求項8に記載の医薬品組成物。
【請求項10】
約10mgないし約250mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩を含むことを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項11】
約30mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩を含むことを特徴とする請求項10に記載の医薬品組成物。
【請求項12】
約50mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩を含むことを特徴とする請求項10に記載の医薬品組成物。
【請求項13】
約70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩を含むことを特徴とする請求項10に記載の医薬品組成物。
【請求項14】
放出されるアンフェタミンのCmaxは選択される値の約80%ないし約120%の範囲内であり、該選択される値は53.2±9.62ng/mL、93.3±18.2ng/mL又は134±26.1ng/mLであることを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項15】
放出されるアンフェタミンのTmaxは選択される値の約80%ないし約120%の範囲内であり、該選択される値は3.41±1.09時間、3.58±1.18時間又は3.46±1.34時間であることを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項16】
放出されるアンフェタミンのAUCは選択される値の約80%ないし約120%の範囲内であり、該選択される値は845±117ng.h/mL、1510±242ng.h/mL又は2157±383ng.h/mLであることを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項17】
前記医薬品組成物は約40重量%ないし約90重量%の希釈剤を含むことを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項18】
前記医薬品組成物は約55重量%ないし約80重量%の希釈剤を含むことを特徴とする請求項17に記載の医薬品組成物。
【請求項19】
前記希釈剤は微結晶性セルロースであることを特徴とする請求項18に記載の医薬品組成物。
【請求項20】
前記医薬品組成物は約1重量%ないし約10重量%の崩壊剤を含むことを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項21】
前記医薬品組成物は約1重量%ないし約5重量%の崩壊剤を含むことを特徴とする請求項20に記載の医薬品組成物。
【請求項22】
前記崩壊剤はクロスカルメロースナトリウムであることを特徴とする請求項21に記載の医薬品組成物。
【請求項23】
前記医薬品組成物は約5重量%未満の滑剤を含むことを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項24】
前記医薬品組成物は約1重量%ないし約1.5重量%の滑剤を含むことを特徴とする請求項23に記載の医薬品組成物。
【請求項25】
前記滑剤はステアリン酸マグネシウムであることを特徴とする請求項24に記載の医薬品組成物。
【請求項26】
前記医薬品組成物は本質的に、(a)約10mgないし約250mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩と、(b)約40重量%ないし約90重量%の微結晶性セルロースと、
(c)約1重量%ないし約10重量%のクロスカルメロースナトリウムと、(d)約5重量%未満のステアリン酸マグネシウムとからなることを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項27】
本質的に、(a)約30mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩と、(b)約151mgの微結晶性セルロースと、(c)約4.69mgのクロスカルメロースナトリウムと、(d)約1.88mgのステアリン酸マグネシウムとからなることを特徴とする請求項26に記載の医薬品組成物。
【請求項28】
本質的に、(a)約50mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩と、(b)約70mgの微結晶性セルロースと、(c)約3.12mgのクロスカルメロースナトリウムと、(d)約1.88mgのステアリン酸マグネシウムとからなることを特徴とする請求項26に記載の医薬品組成物。
【請求項29】
本質的に、(a)約70mgのL−リシン−d−アンフェタミンジメシル酸塩と、(b)約98mgの微結晶性セルロースと、(c)約4.37mgのクロスカルメロースナトリウムと、(d)約2.63mgのステアリン酸マグネシウムとからなることを特徴とする請求項26に記載の医薬品組成物。
【請求項30】
前記医薬品組成物はサイズ3のゼラチンカプセルに被包されることを特徴とする請求項9に記載の医薬品組成物を含む経口投与形態剤。
【請求項31】
放出されるアンフェタミンの経口生体利用性は少なくとも約60%のAUCであることを特徴とする請求項8に記載の医薬品組成物。
【請求項32】
放出されるアンフェタミンの経口生体利用性は少なくとも約80%のAUCであることを特徴とする請求項31に記載の医薬品組成物。
【請求項33】
放出されるアンフェタミンの経口生体利用性は少なくとも約90%のAUCであることを特徴とする請求項32に記載の医薬品組成物。
【請求項34】
放出されるアンフェタミンの経口生体利用性は少なくとも約95%のAUCであることを特徴とする請求項33に記載の医薬品組成物。
【請求項35】
放出されるアンフェタミンの経口生体利用性は少なくとも約98%のAUCであることを特徴とする請求項34に記載の医薬品組成物。
【請求項36】
放出されるアンフェタミンの非経口生体利用性は約70%未満のAUCであることを特徴とする請求項8に記載の医薬品組成物。
【請求項37】
放出されるアンフェタミンの非経口生体利用性は約50%未満のAUCであることを特徴とする請求項36に記載の医薬品組成物。
【請求項38】
放出されるアンフェタミンの非経口生体利用性は約15%未満のAUCであることを特徴とする請求項37に記載の医薬品組成物。
【請求項39】
放出されるアンフェタミンの非経口生体利用性は約10%未満のAUCであることを特徴とする請求項38に記載の医薬品組成物。
【請求項40】
放出されるアンフェタミンの非経口生体利用性は約1%未満のAUCであることを特徴とする請求項39に記載の医薬品組成物。
【請求項41】
放出されるアンフェタミンの経口生体利用性は少なくとも約60%のAUCであり、かつ、放出されるアンフェタミンの非経口生体利用性は約15%未満のAUCであることを特徴とする請求項8に記載の医薬品組成物。
【図1−1】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61−A】
【図61−B】
【図62−A】
【図62−B】
【図63−A】
【図63−B】
【図64−A】
【図64−B】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61−A】
【図61−B】
【図62−A】
【図62−B】
【図63−A】
【図63−B】
【図64−A】
【図64−B】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【公表番号】特表2008−535860(P2008−535860A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505617(P2008−505617)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/013221
【国際公開番号】WO2006/121552
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(507145662)ニュー リヴァー ファーマシューティカルズ インク. (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/013221
【国際公開番号】WO2006/121552
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(507145662)ニュー リヴァー ファーマシューティカルズ インク. (1)
【Fターム(参考)】
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