説明

乳入りコーヒーゼリー飲料

【課題】飲料成分の均質な分散と安定化を保持し、密封容器詰め飲料として長期保存した場合にも白色固形物の生成や、乳分離を起こすことなく安定化した、高品質及び良好な製品外観を保持した乳入りコーヒーゼリー飲料、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】乳入りコーヒーゼリー飲料の製造工程において、予めゲル化剤を乳溶解液に分散させ、乳溶解液分散ゲル化剤を調製し、該ゲル化剤をコーヒー原料に対し、飲料全量に対してゲル化成分が0.05〜0.065重量%の濃度範囲となるように添加し、均質化処理を行なうことにより、分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料を製造する。本発明は密封容器詰め飲料として長期保存した場合にも白色固形物の生成や、乳分離を起こすことなく安定化した、乳入りコーヒーゼリー飲料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料、及びその製造方法に関する。特に、コーヒー飲料としての規格を有し、飲料成分の均質な分散と安定化を保持し、密封容器詰め飲料として長期保存した場合にも白色固形物の生成や、乳分離を起こすことなく安定化した、高品質及び良好な製品外観を保持した乳入りコーヒーゼリー飲料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲食品における消費者の嗜好の多様化から、飲料の形態においても多様化が図られている。その中の一つとして、容器詰され、ゲルで固まった状態でお客様に販売されて飲用時に振り崩して飲むタイプの飲料、いわゆる容器詰ゼリー飲料が登場している。容器詰ゼリー飲料については、その物理的な性状や、栄養機能性或いは味覚嗜好性のような観点から、各種のゼリー飲料が提案されている。
【0003】
物理的な性状に特徴を持たせたゼリー飲料として、例えば、ゲル化点を特定の温度に調整したもの(特開2007−111007号公報、特開2007−68519号公報、特開2006−75026号公報、特開2003−125715号公報)、或いは、炭酸ガスを含有させた炭酸ガス含有ソフトゼリー飲料のような特定の性状のゼリー飲料としたもの(特開2007−236299号公報)、果実に類似した食感のゼリー入り飲料、或いは、繊維状や果肉の砂嚢状のゼリー入り飲料のような特定の食感のゼリー飲料としたもの(特開2009−55879号公報、特開2004−126号公報)等が開示されている。
【0004】
また、栄養機能性等を持たせたゼリー飲料として、ガルシニア抽出エキス、カフエイン及びL−カルニチンを有効成分として、脂肪代謝促進を目的としたもの(特開2005−263706号公報)、ゼリー飲料に、骨強度の増加、骨粗鬆症の予防、治療のために、カルシウムを含有させたもの(特開2005−52065号公報)、水溶性ビタミンの微粒子結晶とグリセリン脂肪酸エステル及び中性脂肪を含有させ水溶性ビタミンを安定化したもの(特開2001−231470号公報)、パラチノースを含有させ、運動後、酸化的代謝を持続するようにしたもの(特開2000−300212号公報)等が開示されている。
【0005】
更に、各種の栄養物質、嗜好物質を含有させたゼリー飲料が開示されている。例えば、ローヤルゼリーを含有させたもの(特開2009−55885号公報、特開2002−176936号公報)、魚類由来コラーゲンペプチドと難消化性デキストリンを含有させたもの(特開2006−180812号公報)、乳清タンパク質加水分解物と、ジェランガム、大豆多糖類等を含有させたもの(特開2005−6663号公報)、茶粉末、茶抽出液、マッシュルーム抽出液等を含有させたもの(特開2001−299297号公報)等が開示されている。
【0006】
近年、コーヒーの嗜好性を生かしたゼリー飲料として、コーヒーゼリー飲料が開示されている(特開2007−189922号公報)。この開示のものは、コーヒー原料と、ゲル化剤と、リン酸、グルコン酸、フィチン酸から選ばれる酸味料とを含有させ、pHを4.0未満とすることで、殺菌条件を緩やかにして、風味の劣化を防止し、しかも沈殿を生じさせず、泡立ちが発生しにくく、品質保持と安定性に優れたコーヒーゼリー飲料の提供を目的としている。しかし、この方法は、pHを4.0未満とする条件を採用しているため、乳入りのコーヒーゼリー飲料の製造には、適用することができない。
【0007】
昨今、乳入りのコーヒー風味を付与したゼリー飲料が市販されている。しかし、これらは何れも乳固形分を多く含む「乳飲料」(乳固形分3.0%以上)、「コーヒー入り清涼飲料」(内容量100g中、コーヒー生豆換算で1g以上2.5g未満)の規格に属するものであり、「コーヒー飲料」(内容量100g中、コーヒー生豆換算で2.5g以上5g未満)、「コーヒー」(内容量100g中、コーヒー生豆換算でコーヒー分5g以上)の規格のものとはなっていない。すなわち、従来、コーヒー飲料、コーヒーとしての規格を有し、しかも、飲料成分の均質な分散と安定性を保持し、密封容器詰め飲料として長期保存した場合にも白色固形物の生成や、乳分離を起こすことなく安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料は提供されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−300212号公報
【特許文献2】特開2001−231470号公報
【特許文献3】特開2001−299297号公報
【特許文献4】特開2002−176936号公報
【特許文献5】特開2003−125715号公報
【特許文献6】特開2004−126号公報
【特許文献7】特開2005−6663号公報
【特許文献8】特開2005−52065号公報
【特許文献9】特開2005−263706号公報
【特許文献10】特開2006−75026号公報
【特許文献11】特開2006−180812号公報
【特許文献12】特開2007−68519号公報
【特許文献13】特開2007−111007号公報
【特許文献14】特開2007−189922号公報
【特許文献15】特開2007−236299号公報
【特許文献16】特開2009−55879号公報
【特許文献17】特開2009−55885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
乳入りのコーヒーゼリー飲料において、特に、「コーヒー飲料」(内容量100g中、コーヒー生豆換算でコーヒー分2.5g〜5g)、「コーヒー」(内容量100g中、コーヒー生豆換算でコーヒー分5g以上)の規格に属する乳入りコーヒーゼリー飲料を調製する場合において、従来のように、コーヒー原料とゲル化剤とから調製したコーヒーゼリー中に、乳を均一に分散させる方法では、乳をコーヒーゼリー中に均一に分散させたゼリー飲料を製造することは困難であった。すなわち、該方法によって調製された乳入りコーヒーゼリー飲料では、乳脂肪分を主成分としたリング状の白色固形物がゼリー飲料の上層部に浮いてくる(以下、ネックリングと称する)という問題があった。この状態で、飲用に際して容器を振り、ゲルを崩すとチップ状の白色固形物が混在した不均質な外観・食感を呈し、官能的に問題となる。特に、コーヒー飲料、コーヒーの規格を有するコーヒー分の多い乳入りコーヒーゼリー飲料の場合、及び/又は、乳飲料の規格を有さない乳固形分が少ない乳入りコーヒーゼリー飲料の場合、それらの乳入りコーヒーゼリー飲料は濃い褐色を呈し、白色固形物が生じた場合、そのコントラストが鮮明になるため、その外観は著しく不均質になる。また、飲用に際して容器を振ったときの官能的な問題も重篤になる。
【0010】
そこで、本発明の課題は、分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料、及びその製造方法を提供することにあり、特に、コーヒー飲料、コーヒーとしての規格を有し、しかも、飲料成分の均質な分散と安定化を保持し、密封容器詰め飲料として長期保存した場合にも白色固形物の生成や、乳分離を起こすことなく安定化した、高品質及び良好な製品外観を保持した乳入りコーヒーゼリー飲料、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討する中で、特定のコーヒー原料、ゲル化剤及び乳原料の混合方法と、ゲル化剤とコーヒー原料の特定の配合比を採用することにより、すなわち、予めゲル化剤を乳溶解液に分散させ乳分散ゲル化剤を調製しておき、該ゲル化剤をコーヒー原料に対し、特定の濃度範囲となるように添加し、均質化処理を行なうことにより、コーヒー飲料、コーヒーとしての規格を有する乳入りコーヒーゼリー飲料として、飲料成分の均質な分散と安定化を保持し、密封容器詰め飲料として長期保存した場合にも白色固形物の生成や、乳分離を起こすことなく安定化した、高品質及び良好な製品外観を保持した乳入りコーヒーゼリー飲料を製造することができることを見い出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、乳入りコーヒーゼリー飲料の製造工程において、予めゲル化剤を乳溶解液に分散させ、乳溶解液分散ゲル化剤を調製し、該ゲル化剤をコーヒー原料に対し、飲料全量に対してゲル化成分が0.05〜0.065重量%の濃度範囲となるように添加し、均質化処理を行なうことを特徴とする分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法からなる。該乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法において、予めゲル化剤を乳溶解液に分散させる際の乳溶解液としては、脱脂粉乳、ミルク、全粉乳、及び練乳のうち少なくとも1種類以上を含む乳溶解液を用いることができる。なお、ここで「ミルク」とは、牛乳、生乳、低脂肪乳などの乳脂肪分を含む乳をいう。ここで、乳入りコーヒーゼリー飲料における「コーヒー飲料規格」とは、内容量100g中コーヒー生豆換算で2.5g以上5g未満の乳入りコーヒーゼリー飲料をいい、「コーヒー規格」とは、内容量100g中コーヒー生豆換算で5g以上の乳入りコーヒーゼリー飲料をいう。また、乳入りコーヒーゼリー飲料における「乳飲料規格」とは、無脂乳固形分3.0重量%以上含む乳入りコーヒーゼリー飲料をいう。
【0013】
本発明において、予めゲル化剤を、脱脂粉乳、ミルク、全粉乳、及び練乳のうち少なくとも1種類以上を含むような乳溶解液に分散することにより、該脱脂粉乳、ミルク等の乳原料溶液によって、ゲル化剤の膨潤を抑制することができる。また、該ゲル化剤をコーヒー原料に対し、飲料全量に対してゲル化成分が0.05〜0.065重量%の濃度範囲となるように添加し、均質化することにより、白色固形物の生成が起こらず、均質な乳入りコーヒーゼリー飲料を調製することができる。ゲル化剤の添加率が、ゲル化成分として0.065重量%を超えると白色固形物が発生し、外観上好ましくない。また、ゲル化剤の添加率が、ゲル化成分として0.05重量%より少ないと、ゼリー飲料として食感が物足りない。なお、市販のゲル化剤において、賦形剤などのゲル化成分以外の各種成分を含有する場合には、上記ゲル化成分の濃度範囲となるように市販のゲル化剤の添加率を適宜、調整することができる。
【0014】
本発明の乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法において、乳溶解液に分散させたゲル化剤を、コーヒー原料と混合・均質化させるための均質化処理としては、ホモジナイザによる均質化圧力12〜18MPaによる均質化処理を採用することができる。本発明の乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法において用いるゲル化剤としては、公知の天然多糖類からなるゲル化剤を用いることができるが、ジェランガム及び/又はカラギーナンをゲル化成分とするゲル化剤を用いることが特に好ましい。
【0015】
本発明の乳入りコーヒーゼリー飲料は、コーヒー飲料、コーヒーの規格を有する分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料として提供することができ、特に、分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料として、該乳入りコーヒーゼリー飲料を金属容器等に充填してからレトルト殺菌するか、或いはUHT殺菌してからPET容器等に充填し、冷却することにより密封容器詰飲料として提供することができる。
【0016】
すなわち、具体的には本発明は、[1]乳入りコーヒーゼリー飲料の製造工程において、予めゲル化剤を乳溶解液に分散させ、乳溶解液分散ゲル化剤を調製し、該ゲル化剤をコーヒー原料に対し、飲料全量に対してゲル化成分が0.05〜0.065重量%の濃度範囲となるように添加した後、均質化処理をすることを特徴とする分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法や、[2]乳溶解液が、脱脂粉乳、ミルク、全粉乳、及び練乳のうち少なくとも1種類以上を含む乳溶解液であることを特徴とする上記[1]記載の分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法や、[3]ゲル化剤が、ジェランガム及び/又はカラギーナンをゲル化成分とするゲル化剤であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法からなる。
【0017】
また、本発明は、[4]均質化処理が、ホモジナイザによる均質化圧力12〜18MPaによる均質化処理であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか記載の分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法や、[5]上記[1]〜[4]のいずれか記載の製造方法によって製造された分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料や、[6]乳入りコーヒーゼリー飲料が、分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料を、容器に充填後、レトルト殺菌又はUHT殺菌を行った密封容器詰飲料であることを特徴とする上記[5]記載の分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料からなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法により、コーヒー飲料、コーヒーとしての規格を有し、しかも、飲料成分の均質な分散と安定化を保持し、密封容器詰め飲料として長期保存した場合にも白色固形物の生成や、乳分離を起こすことなく安定化した、高品質及び良好な製品外観を保持し、嗜好性に富んだ乳入りコーヒーゼリー飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、乳入りコーヒーゼリー飲料の製造工程において、予めゲル化剤を乳溶解液に分散させ、乳溶解液分散ゲル化剤を調製し、該ゲル化剤をコーヒー原料に対し、飲料全量に対してゲル化成分が0.05〜0.065重量%の濃度範囲となるように添加し、均質化処理することを特徴とする分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法からなる。
【0020】
本発明の乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法において用いられる乳原料としては、脱脂粉乳、ミルク、全粉乳、及び練乳のうち少なくとも1種類以上を挙げることができる。なお、ここで「ミルク」とは、牛乳、生乳、低脂肪乳などの乳脂肪分を含む乳をいう。本発明の乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法においては、該乳原料の一部又は全部から調製された乳溶解液を、予めゲル化剤を分散するための分散剤として用いる。該乳溶解液の濃度は特に限定されないが、重量比でゲル化成分1に対して無脂乳固形分0.01〜10、好ましくは0.01〜5、更に好ましくは0.02〜1となるような乳溶解液分散ゲル化剤を調製することが望ましい。
【0021】
本発明の乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法において用いられるコーヒー原料としては、通常のコーヒー飲料の製造に用いられるコーヒー原料を用いることができる。豆の種類、品質、焙煎方法、焙煎度合等によって特に制限されず、また、コーヒー豆から直接抽出されたものの他、インスタントコーヒー(スプレードライ、フリーズドライ等)、コーヒーエキス、コーヒーフレーバーを併用してもよい。これらコーヒー原料の乳入りコーヒーゼリー飲料への添加量に制限は無いが、特に、コーヒー飲料(内容量100g中、生豆換算でコーヒー分2.5g以上)の規格を有する乳入りコーヒーゼリー飲料、更に、コーヒー(内容量100g中、生豆換算でコーヒー分5g以上)の規格を有する乳入りコーヒーゼリー飲料にて、本発明技術の効果を好適に得ることができる。
【0022】
本発明の乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法において用いられるゲル化剤としては、公知の天然多糖類からなるゲル化成分の1又は2以上を含有するゲル化剤を用いることができる。該ゲル化成分としては、ゼラチン、ペクチン、寒天、カラギーナン、ジェランガム、グルコマンナン及びローカストビーンガム等を挙げることができるが、本発明において、ジェランガム及び/又はカラギーナンをゲル化成分とするゲル化剤を用いることが特に好ましい。
【0023】
本発明の乳入りコーヒーゼリー飲料の製造工程においては、予めゲル化剤を乳溶解液に分散させ、乳溶解液分散ゲル化剤を調製するが、該ゲル化剤はコーヒー原料に対し、飲料全量に対してゲル化成分が0.05〜0.065重量%の濃度範囲となるように添加される。ゲル化剤の添加率が、ゲル化成分として0.065重量%を超えると白色固形物が発生し、外観上好ましくない。また、ゲル化剤の添加率が、ゲル化成分として0.05重量%より少ないと、ゼリー飲料として食感が物足りない。
【0024】
また、本発明の乳入りコーヒーゼリー飲料の製造工程においては、予めゲル化剤を乳溶解液に分散させ、乳溶解液分散ゲル化剤を調製し、該ゲル化剤をコーヒー原料に混合した後、均質化処理を行なうが、該均質化処理は、ホモジナイザを用い、均質化圧力12〜18MPaによる均質化処理条件で実施することができる。該ホモジナイズ処理により、白色固形物を発生を防止することができる。例えば、均質化圧力17.5MPa程度で均質化処理を行うと良好な分散・均質化されたゲル化剤を調製することができる。通常のミルクコーヒーを作成する際に経時的な乳分離は避けられない現象であるが、ホモジナイズ処理を行うことで安定化させ、発生を遅らせることができる。本発明の乳入りコーヒーゼリーを作成する際はホモジナイズ処理を行い、分離が起こる前に完全にゲル化させることにより、特定のゲル化剤添加率の範囲内では白色固形物の生成を回避もしくは低減することができる。
【0025】
本発明の乳入りコーヒーゼリー飲料の製造は、本発明によって採用される特定のコーヒー原料、ゲル化剤、及び乳の配合及び処理方法の点を除いては、従来の乳入りコーヒーの製造方法によって採用される原料、処理方法及び処理条件を採用して実施することができる(具体的には「最新・ソフトドリンクス」(光琳)のコーヒー飲料の製造方法を参照)。すなわち、コーヒー抽出液等のコーヒー原料に対して、各原料を混合した上で所定のホモジナイズをおこなった後、金属容器等に充填してからレトルト殺菌するか、或いはUHT殺菌してからPET容器等に充填し、冷却することで製造することができる。また、かかる乳入りコーヒーゼリー飲料の調製品の製造に際して添加される添加剤等も、従来、コーヒー飲料の製造に際して用いられている添加剤(例えば糖類、甘味料、香料、乳化剤、pH調整剤、等)を適宜添加することができる。
【0026】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
[試験例1:ゲル化剤の水中への分散・溶解試験]
<試験方法>
ゲル化剤は粉末であり、水中へ分散・溶解しにくいため、以下の検討を行った。
(1)ゲル化剤を重量比でゲル化剤の10倍量の乳原料溶解液(乳原料濃度:15%)中にミキサーを使用して分散させた。尚、乳原料として、脱脂粉乳、全粉乳、練乳、クリームのいずれかを使用した。
(2)対照としてゲル化剤を重量比でゲル化剤の10倍量の水にミキサーを使用して分散させた。
【0028】
<結果>
ゲル化剤の分散に及ぼす乳原料の影響を表1(ゲル化剤の分散に及ぼす乳原料の影響)に示す。乳原料として、脱脂粉乳を使用することが最も良い結果となり、脱脂粉乳溶解液中でゲル化剤を分散させた場合は、20メッシュを通すことができたが、対照の水だけでは、ゲル化剤を水に接触させると非常に粘性の高いダマ状の状態に変化してしまい、20メッシュに通すことはおろか、ポンプにて送液することができなくなった。以上、脱脂粉乳、全粉乳、練乳等の乳原料溶解液にゲル化剤を分散させることにより、ゲル化剤の膨潤を抑制することができた。
【0029】
【表1】

【実施例2】
【0030】
[試験例2:乳入りコーヒーゼリー飲料の安定化試験]
<試験方法>
比較例1〜6、実施例1〜2について、表2(試作処方:添加率重量%)に示す処方にて配合し、乳入りコーヒーゼリー飲料を調製した:ゲル化剤としては、市販のゲル化剤(配合例[1]:ジェランガム60%、カラギナン5%、デキストリン35%、配合例[2]ジェランガム60%、グルコース30%、クエン酸三Na10%)を使用した。乳入りコーヒーゼリー飲料を調製に際し、ゲル化剤の膨潤を抑制するために、予め、脱脂粉乳等の乳原料溶解液にゲル化剤を分散させた。該ゲル化剤とコーヒー原料とを配合後、70℃まで昇温し、ホモジナイザを使用して、17.5MPaの圧力で均質化を行った。その後、200mlの瓶容器に充填してからレトルト殺菌を行った。
【0031】
【表2】

※実施例3は、ゲル化剤:配合例[2]として使用した。その他実施例及び比較例はゲル化剤:配合例[1]を使用した。
【0032】
<結果>
24時間常温で静置保存後の評価結果(外観のチェック)を表3に示す。表3に示されるようにゲル化剤0.08〜0.10重量%(ゲル化成分0.05〜0.65重量%)の範囲で、分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料が得られた。
【0033】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、コーヒー飲料、コーヒーとしての規格を有し、しかも、飲料成分の均質な分散と安定化を保持し、密封容器詰め飲料として長期保存した場合にも白色固形物の生成や、乳分離を起こすことなく安定化した、嗜好性に富んだ乳入りコーヒーゼリー飲料を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳入りコーヒーゼリー飲料の製造工程において、予めゲル化剤を乳溶解液に分散させ、乳溶解液分散ゲル化剤を調製し、該ゲル化剤をコーヒー原料に対し、飲料全量に対してゲル化成分が0.05〜0.065重量%の濃度範囲となるように添加した後、均質化処理をすることを特徴とする分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法。
【請求項2】
乳溶解液が、脱脂粉乳、ミルク、全粉乳、及び練乳のうち少なくとも1種類以上を含む乳溶解液であることを特徴とする請求項1記載の分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法。
【請求項3】
ゲル化剤が、ジェランガム及び/又はカラギーナンをゲル化成分とするゲル化剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法。
【請求項4】
均質化処理が、ホモジナイザによる均質化圧力12〜18MPaによる均質化処理であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の製造方法によって製造された分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料。
【請求項6】
乳入りコーヒーゼリー飲料が、分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料を、容器に充填後、レトルト殺菌又はUHT殺菌を行った密封容器詰飲料であることを特徴とする請求項5記載の分散安定化した乳入りコーヒーゼリー飲料。