説明

乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤

本発明は、少なくとも一つの液体水相と少なくとも一つの液体疎水性相を含む乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤、特にゲル製剤であって、前記製剤は少なくとも一つのリン酸塩を含有し、200〜2000mPa・sの範囲の粘度を示す乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤、特にゲル製剤に関する。眼科用製剤は、例えば人工涙液として及び「ドライアイ」の治療に用いることが可能である。
【背景技術】
【0002】
刺激性又は炎症性の眼の場合、特に「ドライアイ」すなわち乾性角結膜炎において、症状の治療に水性製剤が用いられることは、現技術水準において公知である。これらの製剤は通常、液体、ゲル、クリーム又は軟膏の形態で存在する。
【0003】
不都合にも、溶液には、アレルギーを惹起するか、刺激するか、或いは含有物質に対して感作か不適合性を生じさせ得る様々な含有成分が添加されている。そのような水溶液は、眼と接触時に痒み、熱り又は他の不快な副作用を生じ得ることがよくあることもよく知られている。
【0004】
更に特にゲル、クリーム又は軟膏型の製剤には、既に疼痛性刺激眼を患う患者にとってはその塗布が更に不快に感じられるという欠点がある。更にこれらの製剤は擦り込むことによって眼内か眼への投薬を助けなければならないことが多く、これが同様に患者には更に別の痛覚になるということがある。
【0005】
二相系乳液もまた、現技術水準において公知である。しかし乳液の安定性はとりわけその粘度に依存して決まる。従って乳液は、例えば、親水性相に微分散された疎水性相が凝集するとき、不安定になる。この過程は、乳液の貯蔵時の安定性を制限し、進行が遅いほど、乳液の親水性相はより粘性になる。
【0006】
乳液の十分な安定性を得るため、通常、乳化剤が用いられる。しかし、乳化剤は同様にアレルギー反応又は患者の過敏性に基づく反応を惹起する可能性がある。
乳化剤無添加の製剤が、例えば特許文献1に開示されている。しかしながらこの製剤は、非常に高い粘度を示すため、製剤の適用が患者にとって不快であり、例えば擦り込むことによって眼への製剤の投薬を助けることが、さらに別の痛覚になるという欠点がある。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0817610A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した現技術水準の欠点のうちの少なくとも一つを克服する組成物を得ることが本発明の課題である。特にドライアイでの適用に適した組成物を得ることが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題は、少なくとも一つの液体水相と少なくとも一つの液体疎水性相とを含有する乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤、特にゲル製剤によって解決される。製剤は少なくとも一つのリン酸塩を含有し、200〜2000mPa・sの範囲の粘度を示す。本発明による好ましい適切なリン酸塩は水溶性である。
【0009】
本発明の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤の有利な形態は、従属請求項にお記載される。
「乳化剤無添加」は、この発明の意味において、製剤が主として本発明の意味において
乳化剤ではない含有成分を示すことを意味する。特に本発明の製剤は、水溶性リン酸塩、特にリン酸一水素ナトリウム12水塩すなわちNaHPO×12HOと、ポリアクリル酸と、アクリル酸誘導体ポリマー、特にカルボマーと、トリグリセリド、特に中鎖トリグリセリドと、ビタミンA成分、特にビタミンAパルミチン酸塩と、ビタミンEと、ソルビトールと、水酸化ナトリウムと、保存剤、例えばセトリミド、塩化ベンゾドデシニウム、塩化ベンズアルコニウムまたはチオマーサルと、水とのうちの少なくとも一つを含む物質を有し得る。本発明の意味でこれらの物質は乳化剤ではない。更に本発明の製剤は、グリセロール及びアレキシジンのうちの少なくとも一つから選択された成分を有し、本発明の意味でこれらの成分は乳化剤ではない。
【0010】
本発明の意味における「乳化剤」は、好ましくは油相と水相の間の界面に添加することによって、これらの両相間の界面張力を減らすことができる界面活性剤である。これは、少なくとも一つの極性(親水性)基と少なくとも一つの非極性(脂肪親和性)基とを備えた乳化剤の両親媒性分子を構築することによって可能になる。従って乳化剤は親水性相にも脂肪親和性相にも溶解する。対応する相により良好に溶解する部分は、その相内に突出し、それによって両相の間の界面張力を低下させる。
【0011】
一好ましい実施形態は、少なくとも一つの液体水相と少なくとも一つの液体疎水性相とを含有する製剤、特にゲル製剤であって、製剤は少なくとも一つの特に水溶性のリン酸塩を含有し、200〜2000mPa・sの範囲の粘度を示し、製剤は更に別の乳化剤を含有しないか、又は前述の成分が乳化作用を示さない量で含有する。
【0012】
更に別の好ましい実施形態は、少なくとも一つの液体水相と少なくとも一つの液体疎水性相とを含有する製剤、特にゲル製剤であって、製剤は少なくとも一つの特に水溶性のリン酸塩を含有し、200〜2000mPa・sの範囲の粘度を示し、製剤は、ポリアクリル酸、特にカルボマーと、中鎖トリグリセリドと、リン酸一水素ナトリウム−12水塩すなわちNaHPO×12HOと、ソルビトールと、水酸化ナトリウムと、水とのうちの少なくとも一つから選択された成分を有し、製剤は更に別の乳化剤を含有しないか、又は前述の成分が乳化作用を示さない量で含有する。
【0013】
更にもっと別の好ましい実施形態は、少なくとも一つの液体水相と少なくとも一つの液体疎水性相とを含有する製剤、特にゲル製剤であって、製剤は少なくとも一つの特に水溶性のリン酸塩を含有し、200〜2000mPa・sの範囲の粘度を示し、製剤は、ポリアクリル酸、特にカルボマーと、中鎖トリグリセリドと、リン酸一水素ナトリウム−12水塩すなわちNaHPO×12HOと、ソルビトールと、水酸化ナトリウムと、水と、場合によってはビタミンA成分、特にビタミンAパルミチン酸塩と、ビタミンEと、保存剤、特にセトリミドとのうちの少なくとも一つから選択された成分を有し、製剤は更に別の乳化剤を含有しないか、又は前述の成分が乳化作用を示さない量で含有する。
【0014】
本発明の製剤が含有する成分、特に水溶性リン酸塩、ポリアクリル酸、アクリル酸誘導体ポリマー、特にカルボマー、トリグリセリド、ビタミンA成分、ビタミンE、ソルビトール、水酸化ナトリウム、例えばセトリミド、塩化ベンゾドデシニウム、塩化ベンズアルコニウムかチオマーサルなどの保存剤、又は水は、前述の成分が乳化作用を示さない量で用いられる。更に本発明の製剤は、グリセロールとアレキシジンのうちの少なくとも一つの成分を含んでよく、同成分は同様に前記成分が乳化作用を示さない量で用いられる。
【0015】
驚くべきことに、本発明の製剤、特にゲル製剤は2000mPa・sよりも小さい粘度範囲において安定的に処方化することが可能である。これは、特に親水性相(例えば水性相)と疎水性相とを含有するそのような低粘度の乳液では、専門家にとって驚くべきことである。何故ならこれは通常速やかに不安定になり、分解するからである。
【0016】
本化合物の特別な利点は、製剤の安定性が乳化剤を添加せずに得ることができることによって明らかになる。これは本発明の製剤の適合性の改善を可能にする。
リン酸塩を用いることによって、特に本発明の低範囲の粘度の調整が可能となる。本発明の製剤の特別な利点は、リン酸塩を用いることによって、僅かな粘度の乳化剤無添加製剤が得られることで具現化される。
【0017】
特に、粘度の低い製剤は患者に対する適用性を明らかに改善するという利点がある。有利なことに、粘度が低いため、眼の角膜上への投薬を改善でき、加えて投薬を力学的に助けることによってより僅かしか眼を刺激しない液滴形成製剤を得ることが可能である。大きな利点は、本発明の粘度の低い製剤が適用時に眼に僅かな異物感しか生じさせないとともに、患者にとって快適な適合性を提供することである。
【0018】
眼科用製剤の好ましい実施形態では、製剤は300〜1800mPa・sの範囲、特に400〜1500mPa・sの範囲、好ましくは500〜1400mPa・sの範囲、特に好ましくは600〜1350mPa・sの範囲、極めて好ましくは650〜1300mPa・sの範囲の粘度を示す。
【0019】
無菌液滴形成眼科用製剤は、特に少なくとも一つの水溶性リン酸塩を含む。使用可能な水溶性リン酸塩は、特にリン酸アルカリ塩、リン酸アルカリ土類塩、リン酸アンモニウム塩、そのリン酸一水素塩若しくはリン酸二水素塩、及その混合物のうちの少なくとも一つから選択される。好適に使用できるのは、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素カリウム及びその混合物のうちの少なくとも一つから選択された水溶性リン酸塩である。極めて好ましく使用できるのは、リン酸一水素ナトリウムである。
【0020】
好適に使用できるのは、水溶性リン酸塩の水和化合物、特にリン酸アルカリ塩、リン酸アルカリ土類塩、リン酸アンモニウム塩、そのリン酸一水素塩若しくは二水素塩、及びその混合物の水和化合物のうちの少なくとも一つから選択された水和化合物、特に好ましくはリン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素カリウム及びその混合物の水和化合物のうちの少なくとも一つから選択された水和化合物であり得る。好適に使用できるのはn=2,7又は12のNaHPO×nHO又はn=1又は2のNaHPO×nHOである。
【0021】
特に好適に使用できるリン酸塩はリン酸一水素ナトリウム・12水塩すなわちNaHPO×12HOである。リン酸一水素ナトリウム・12水塩等の名称の使用は、対応成分に対するリン酸水素二ナトリウム・12水塩又はリン酸二ナトリウム・12水塩等の対応名称を本発明の意味において共に含む。
【0022】
特に使用可能な水溶性リン酸塩の割合は、製剤の総重量に対し0.01〜5.0重量%の範囲、好ましくは0.05〜0.5重量%の範囲、特に好ましくは0.08〜0.2重量%の範囲である。特に好ましい実施形態では製剤は、製剤の総重量に対し約0.1重量%の水溶性リン酸塩を含有する。記載量は別に明記されない場合、この場合対応水和化合物に関する。
【0023】
下限としての最低割合は、製剤の総重量に対し0.01重量%のNaHPO×12HOが好都合であると証明された。NaHPO×12HOの割合は、製剤の総重量に対し0.01〜5.0重量%の範囲が適切であるとわかった。好ましくはNaHPO×12HOの割合は、製剤の総重量に対し0.05〜0.5重量%の範囲、特に好ましくは0.08〜0.2重量%の範囲で使用できる。特に好ましい実施形態では製剤は
、製剤の総重量に対し約0.1重量%のNaHPO×12HOを含有する。
【0024】
本発明の製剤の更に別の驚くべき効果は、眼内に適用時、好ましい実施形態における製剤が眼内の天然の涙液膜の三相組成のムチン層、水相及び脂質相とほぼ等しくなり、天然涙液膜と置換できることである。特にこれは、欠乏しているのが天然涙液膜の何れの相であるか、又は僅か量しか存在しないかに関係なく有利に実現される。
【0025】
特に多相系製剤は連続相として水相と、その中に分散した小滴、特に微分散小滴型の小滴として液体疎水性相、特に液体油相とを含有する。前記製剤は特に少なくとも二相系に形成され、好ましい実施形態では三相系に形成することも可能である。製剤は特に更に一つのポリマー性ゲル形成成分を水相中に含む。相応に本発明の製剤は、特に液体水相と液体疎水性相を含む二相系の担体液かゲル基剤を含有する。
【0026】
製剤の水相は、製剤が主要な水割合を示すように形成されることが好ましく、特に製剤は製剤の総重量に対し60〜98重量%の範囲、好ましくは90〜96重量%の範囲の割合の水を含み、製剤は約94〜95重量%の水を含有することが特に好ましい。好適に使用できるのは、注射用水である。
【0027】
製剤の水相は好ましい実施形態では角膜を湿らせる天然涙液膜の水相を模造するとともに、浄化機能と保護機能を果たすことが可能である。
有利なことに本発明の眼科用製剤には特に優れた適合性がある。更に、本発明の眼科用製剤は眼への適用時に刺激又は不快感がないか、あっても非常に僅かしかもたらさないという利点がある。眼への適用は、非常に不快な「熱り」感を眼にもたらすことが多いので、これは大きな利点を意味する。
【0028】
特に製剤は更に少なくとも一つのポリマー性ゲル形成成分、特にポリアクリル酸とアクリル酸誘導体ポリマーのうちの少なくとも一つを含有する。好適なポリアクリル酸は、例えば約3〜5百万ダルトンの範囲の分子量を示す。特に好適に使用できるポリアクリル酸又はアクリル酸誘導体ポリマーはINCI名ではカルボマーと称される架橋化アクリル酸ポリマー、特に疎水性修飾架橋化アクリル酸ポリマーである。好適なカルボマーは、例えばノベオン社(Firma Noveon Inc.)では商品名カルボポール(Carbopol(登録商
標))で得られる。特に好適なカルボマーは、アクリル酸ホモポリマー、例えばCarbopol(登録商標)ホモポリマー、特に好ましく使用できるのはCarbopol(登録商標)980NFであり、更に好適に使用できるのはCarbopol(登録商標)940NFである。ポリアクリル酸とアクリル酸ポリマーの概念は、本出願の意味において同義的に用いられる。
【0029】
特に眼科用製剤はポリマー性ゲル形成成分、特にポリアクリル酸及びアクリル酸ポリマー誘導体のうちの少なくとも一つ、特に好ましくはカルボマーを製剤の総重量に対し0.1〜3重量%の範囲、好ましくは0.1重量%〜1重量%の範囲、特に好ましくは0.15〜0.5重量%の範囲、極めて好ましくは約0.2重量%の範囲において含有する。
【0030】
好ましい実施形態では製剤は更に眼科的及び/又は眼科学的に許容される有機性油を含む。眼科に許容される有機性油は、この実施形態では本発明の製剤の液体疎水性相を形成する。液体疎水性油成分として使用できるのは、例えば、脂肪酸エステル、トリグリセリド及びフタル酸エステル等の脂肪酸誘導体である。好ましくは製剤は、眼科に許容される有機性油として中鎖トリグリセリド、特に好ましくは脂肪酸の総重量に対し少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%のC〜C12脂肪酸、好ましくはC〜C10脂肪酸から形成されたトリグリセリドを示す。
【0031】
製剤は飽和中鎖トリグリセリドを示すことが極めて好ましい。更に好適に使用できるのは、脂肪酸の総重量に対し少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%の飽和C脂肪酸とC10脂肪酸から形成されるトリグリセリドである。特に好ましいのは、エステル化飽和C脂肪酸とC10脂肪酸から形成される混合物のカプリル・カプリン酸・トリグリセリドである。
【0032】
使用可能なトリグリセリドは合成、半合成又は、オリーブ油、パーム油、扁桃油、ココナッツ油かその混合物等の天然油の形態で得られる。好適に使用できるトリグリセリドは、ココナッツ油から得られる。そのような中鎖トリグリセリドは例えばCocos・nucifera・L.の内胚乳、特に乾燥固体部分の油或いはElasis・guineensis・Jacq.から製造される。更に好適に使用できるトリグリセリド、特に中鎖トリグリセリドは中性油、例えばミリトール(Myritol(登録商標))318の商品名のもと得られる。特に欧州局方、欧州薬局方5.0,01/2005:0868,S.2623、Triglycerida saturata mediaにおいて記載されるような種類の中鎖トリグ
リセリドもある。酸成分は、脂肪酸の総重量に対し少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも94重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%の割合でn−オクタン酸とn−デカン酸の混合物を含有することが好ましい。
【0033】
飽和C脂肪酸とC10脂肪酸、好ましくはカプリル・カプリン酸・トリグリセリドから形成された混合物に基づく好適に使用できる中鎖トリグリセリドの利点は、飽和脂肪酸が脂質膜の安定性を改善し、それによって驚異的に改善された、より長い製剤の滞留時間が眼内で得られることである。
【0034】
中鎖トリグリセリドは有利なことに水性成分の気化を阻止できると共に、涙液膜又は製剤の速すぎる流出を防止することが可能である。
特に無菌液滴形成眼科用製剤は、好ましくは脂肪酸エステル、トリグリセリド及び/又はフタル酸エステルを含む脂肪酸誘導体の群から選択した眼科的に及び/又は眼科学的に許容される有機性油、特に好ましくは中鎖トリグリセリドを製剤の総重量に対し0.5〜10重量%の範囲、好ましくは0.6〜5重量%の範囲、特に好ましくは0.8〜2重量%の範囲、極めて好ましくは約1重量%で含有する。特に好ましい実施形態では無菌液滴形成眼科用製剤は、カプリル・カプリン酸・トリグリセリドか、脂肪酸の総重量に対し少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%の飽和C脂肪酸とC10脂肪酸から選択したトリグリセリドを製剤の総重量に対し0.5〜10重量%の範囲、好ましくは0.6〜5重量%の範囲、特に好ましくは0.8〜2重量%の範囲、極めて好ましくは約1重量%で含有する。
【0035】
製剤の総重量に対し0.1〜3重量%の範囲、特に約0.2重量%のゲル形成剤を水相中に含有する、特にゲル基剤に基づく本発明の製剤の好ましい実施形態は、0.5〜10重量%の範囲で中鎖トリグリセリドを含有し、特に約1重量%の中鎖トリグリセリドを含有する。
【0036】
製剤の更に別の特別な利点は、同時に乳化剤を用いる必要なく、製剤が相応含有量のトリグリセリドを含有できることによって具現化される。これは、眼にまだ残っている天然涙液分が乳化剤によって破壊されないという大きな利点を備える。
【0037】
特に本発明の製剤中のトリグリセリドは、微分散小滴型で存在する。特定の理論に拘束されるわけではなく、微分散小滴型で本発明の製剤中に存在するトリグリセリドは、乳化剤を含有することなく、長い貯蔵期間にわたる驚異的な安定性を可能にすると推察される。
【0038】
製剤の更に別の利点は、特に単回投薬量単位の製剤は保存剤も含有せずに温和な気候条件(21℃,相対湿度45%)か地中海亜熱帯気候(25℃,相対湿度40%)下だけではなく、更に非常に暑くて湿った気候条件下、例えば25℃、相対湿度60%で、30℃、相対湿度70%で、又は40℃、相対湿度75%でも、非常に安定であり、少なくとも三ヶ月間、特に六ヶ月間、好ましくは9ヶ月間、もっと好ましくは12ヶ月間、更に好ましくは18ヶ月間、更にもっと好ましくは26ヶ月間、pH値、浸透圧、粘度及び外観に関して変化がないか、又は僅かな変化しか示さないことである。
【0039】
本発明の製剤は、抗ウイルス剤、ステロイド系若しくは非ステロイド系の消炎化合物又はコルチコステロイド、抗生物質、抗真菌剤、麻酔剤、消炎性作用剤又は抗アレルギー性作用剤等の医薬品又は医薬活性物質を含有しないことが可能である。本発明の意味では医薬活性物質は特にビタミンA及びビタミンEではない。
【0040】
好ましい実施形態では、本発明の製剤は更に少なくとも一つの眼科系活性成分、例えばビタミンA成分、好ましくはビタミンAパルミチン酸塩を含有する。特に本発明の製剤においてビタミンA及びビタミンEのうちの少なくとも一つ等のビタミンを使用する他に、医薬活性成分は提供されない。
【0041】
ビタミンAパルミチン酸塩の特に好ましい含有量は、製剤グラム当り1000国際単位(I.E.)のビタミンAパルミチン酸塩であり、有利なことに更に20%の安定性割増量が使用される。好適に使用できるビタミンAパルミチン酸塩は、ビタミンAパルミチン酸塩グラム当り百万国際単位(I.E.)を示し、特に安定化剤としてブチル化ヒドロキシアニソール及びブチル化ヒドロキシトルエンのうちの少なくとも一つを含有する。特にビタミンA成分、特にビタミンAパルミチン酸塩の含有量は、製剤の総重量に対し約0.12重量%の安定性割増量を考慮に入れて0.05〜0.5重量%の範囲、好ましくは0.08〜0.2重量%の範囲、特に好ましくは約0.1重量%である。
【0042】
ビタミンA成分は、ビタミンE等の抗酸化剤と組み合わせて使用できることが特に好ましい。ビタミンA成分は、少なくとも一つの抗酸化剤、好ましくはビタミンE、特に好ましくはD,L−α−トコフェノールで安定化されることが好ましい。安定化のため、特に好適には僅かな含有量の抗酸化剤、好ましくはビタミンE、特に好ましくはD,L−α−トコフェロールが、例えば製剤の総重量に対し0.002〜0.01重量%の範囲、好ましくは0.006〜0.008重量%の範囲で使用できる。
【0043】
更に別の利点は、懸濁するか、油相に溶かしたビタミンA成分等の作用物質を均一に投薬できることである。眼科用器具のコンタクトレンズかフロントレンズ等の角膜に載せる物体の湿潤性は、それによって改善される。
【0044】
好ましい実施形態では製剤は等張性を調整する一又は複数の薬剤、特にデキストロース、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール又はマンニトール等の多価アルコールを含み、製剤はソルビトールを含有することが好ましい。特に製剤は、天然涙液と等張な組成を提供するために十分な量の等張性の一又は複数の調整剤を有する。好ましい実施形態では製剤は、製剤の総重量に対し0.5〜10重量%の範囲、好ましくは1〜5重量%の範囲、特に好ましくは約4重量%の等張化剤、特にソルビトールを含む。もっと好ましい実施形態では製剤は、製剤の総重量に対し3.5〜4重量%の範囲、好ましくは3.6〜3.7重量%の範囲の等張化剤、特にソルビトールを含む。特に製剤は、製剤が同様にグリセロールを含む場合、製剤の総重量に対し3.6〜3.7重量%の範囲、特に好ましくは約3.666重量%のソルビトールを含むことが可能である。
【0045】
好ましい実施形態では製剤は、100〜500mosmol/kgの範囲、特に200〜300mosmol/kgの範囲、特に好ましくは220〜260mosmol/kgの範囲の浸透圧を示す。
特に眼科用製剤のpH値は、酸と塩基のうちの少なくとも一つによって、好ましくはホウ酸と苛性ソーダ溶液のうちの少なくとも一つによって調整され、2%〜3%の水酸化ナトリウム水溶液を用いることが特に有利である。
【0046】
無菌液滴形成眼科用製剤は、好ましくは水酸化ナトリウムを製剤の総重量に対し特に0.02重量%〜1重量%の範囲、更に好ましくは0.05〜0.1重量%の範囲、特に好ましくは0.06〜0.07重量%の範囲で含有する。他に明記しなければ、データは固体の水酸化ナトリウムに関する。極めて好ましい実施形態では保存剤無添加の製剤は、製剤の総重量に対し約0.0665重量%の水酸化ナトリウムを含有し、保存剤を含有する製剤は、製剤の総重量に対し約0.06333重量%の水酸化ナトリウムを含有することが好ましい。
【0047】
好ましい実施形態では眼科用製剤は、ポリアクリル酸と、アクリル酸ポリマー誘導体、特にカルボマーと、トリグリセリド、特に中鎖トリグリセリドと、水溶性リン酸塩、特にNaHPO×12HOと、ソルビトールと、水酸化ナトリウムと、水とのうちの少なくとも一つから選択された成分を有する。特に好ましい実施形態では眼科用製剤は、製剤の総重量に対し0.2重量%のアクリル酸ポリマー、好ましくはカルボマー、4.0重量%のソルビトール、0.1重量%のNaHPO×12HO、0.0665重量%の水酸化ナトリウム及び1.0重量%の中鎖トリグリセリドのうちの少なくとも一つ、並びに100重量%までの水を含む。
【0048】
更に好ましい実施形態では眼科用製剤は、ポリアクリル酸と、アクリル酸ポリマー誘導体、特にカルボマーと、トリグリセリド、特に中鎖トリグリセリドと、水溶性リン酸塩、特にNaHPO×12HOと、ビタミンA成分、特にビタミンAパルミチン酸塩と、ビタミンE、特にD,L−α−トコフェロールと、ソルビトールと、水酸化ナトリウムと、水とのうちの少なくとも一つから選択された成分を有する。更に特に好ましい実施形態では眼科用製剤は、製剤の総重量に対し、0.2重量%のアクリル酸ポリマー、好ましくはカルボマー、4.0重量%のソルビトール、0.1重量%のNaHPO×12HO、0.0665重量%の水酸化ナトリウム、0.12重量%のビタミンAパルミチン酸塩、0.006重量%のビタミンE、特にD,L−α−トコフェロール、及び1.0重量%の中鎖トリグリセリドのうちの少なくとも一つ、並びに100重量%までの水を含む。
【0049】
有利な実施形態では製剤は6〜8の範囲、好ましくは6.5〜7.5の範囲のpH値を示す。特に有利な実施形態では製剤は6.8〜7.2の範囲のpHを示す。
本発明の製剤は例えば、特にセトリミド、塩化ベンゾドデシニウム、塩化ベンズアルコニウム及びチオマーサルのうちの少なくとも一つから選択された保存剤を含むことが可能である。好ましくは、セトリミドとアレキシジンのうちの少なくとも一つから選択された保存剤である。製剤は特にセトリミド、塩化ベンゾドデシニウム、塩化ベンズアルコニウム及びチオマーサルのうちの少なくとも一つから選択された保存剤を製剤の総重量に対し0.001〜0.05重量%の範囲、特に好ましくは0.005〜0.01重量%の範囲で含有する。
【0050】
「セトリミド」はN−セチル−N,N,N−トリメチル−臭化アンモニウムの通称であり、「塩化ベンゾドデシニウム」はN−ベンジル−N−ドデシル−N,N−ジメチル−塩化アンモニウムの通称であり、「塩化ベンズアルコニウム」は塩化ベンジルラウリルジメチルアンモニウムの通称であり、「チオマーサル」は2−(エチルメルクリチオ)−安息香酸のナトリウム塩の通称である。
【0051】
好ましい実施形態では製剤は製剤の総重量に対し0.01重量%のセトリミドと塩化ベンゾドデシニウムのうちの少なくとも一つを含む。更に好ましい実施形態では製剤は製剤の総重量に対し0.01重量%の塩化ベンズアルコニウムを含む。特に好ましい実施形態では製剤は保存剤を含まない。
【0052】
本発明の製剤は更に別の成分としてアレキシジン、好ましくは塩酸アレキシジンを含有することができ、特に本発明の製剤は、製剤の総重量に対し約3ppmのアレキシジン2H
Clを含有することが可能である。アレキシジンは本発明の意味において乳化剤ではなく、或いはアレキシジンは乳化作用を示さない量で含有される。
【0053】
更に別の成分として本発明の製剤は、グリセリンとも称されるグリセロールを例えば製剤の総重量に対し約0.2重量%含有することができる。グリセリンは本発明の意味において乳化剤ではないか、或いは前記成分が乳化作用を示さない量で含有される。
【0054】
特に製剤は製剤の総重量に対し0.01〜1.0重量%の範囲、好ましくは0.1〜0.5重量%の範囲、特に好ましくは0.2〜0.3重量%の範囲のグリセロールを示すことが可能である。前記製剤は100%グリセロールか、特に水との混合物である85%グリセロールの形態でグリセロールを示すことが可能である。好ましい実施形態では製剤は0.2重量%の100%グリセロールか0.235重量%の85%グリセロールを含むことが可能である。
【0055】
好ましい実施形態では眼科用製剤は、ポリアクリル酸と、アクリル酸誘導体ポリマー、特にカルボマーと、トリグリセリド、特に中鎖トリグリセリドと、水溶性リン酸塩、特にNaHPO×12HOと、ビタミンA成分、特にビタミンAパルミチン酸塩と、ビタミンE、特にD,L−α−トコフェロールと、ソルビトールと、水酸化ナトリウムと、保存剤、特にセトリミド、塩化ベンゾドデシニウム、塩化ベンズアルコニウム又はアレキシジンと、グリセロールと、水とのうちの少なくとも一つから選択された成分を含む。
【0056】
更に好ましい実施形態では眼科用製剤は、ポリアクリル酸と、アクリル酸誘導体ポリマー、特にカルボマーと、トリグリセリド、特に中鎖トリグリセリドと、水溶性リン酸塩、特にNaHPO×12HOと、ソルビトールと、水酸化ナトリウムと、グリセロールと、水とのうちの少なくとも一つから選択された成分を有する。更にもっと特に好ましい実施形態では眼科用製剤は、製剤の総重量に対し0.2重量%のアクリル酸ポリマー、好ましくはカルボマーと、3.666重量%のソルビトールと、0.1重量%のNaHPO×12HOと、0.063重量%の水酸化ナトリウムと、0.235重量%の85%グリセロールか0.2重量%の100%グリセロールと、1.0重量%の中鎖トリグリセリドと、100重量%までの水とのうちの少なくとも一つを含む。
【0057】
更にもっと好ましい実施形態では眼科用製剤は、ポリアクリル酸と、アクリル酸誘導体ポリマー、特にカルボマーと、トリグリセリド、特に中鎖トリグリセリドと、水溶性リン酸塩、特にNaHPO×12HOと、ビタミンA成分、特にビタミンAパルミチン酸塩と、ビタミンE、特にD,L−α−トコフェロールと、ソルビトールと、水酸化ナトリウムと、グリセロールと、水とのうちの少なくとも一つから選択された成分を含む。更にもっと特に好ましい実施形態では、眼科用製剤は、製剤の総重量に対し0.2重量%のアクリル酸ポリマー、特にカルボマーと、3.666重量%のソルビトールと、0.1重量%のNaHPO×12HOと、0.063重量%の水酸化ナトリウムと、0.12重量%のビタミンAパルミチン酸塩と、0.006重量%のビタミンE、特にD,L−α−トコフェロールと、0.235重量%の85%グリセロールか0.2重量%の100%グリセロール及び/又は1.0重量%の中鎖トリグリセリドと、100重量%までの水
とを含む。
【0058】
更に好ましい実施形態では眼科用製剤は、ポリアクリル酸と、アクリル酸誘導体ポリマー、特にカルボマーと、トリグリセリド、特に中鎖トリグリセリドと、水溶性リン酸塩、特にNaHPO×12HOと、保存剤、特にセトリミドと、ソルビトールと、水酸化ナトリウム及び水とのうちの少なくとも一つから選択された成分を含む。更に特に好ましい実施形態では眼科用製剤は、製剤の総重量に対し0.2重量%のアクリル酸ポリマー、好ましくはカルボマーと、4.0重量%のソルビトールと、0.1重量%のNaHPO×12HOと、0.06333重量%の水酸化ナトリウムと、0.1重量%のセトリミド及び/又は1.0重量%の中鎖トリグリセリドと、100重量%までの水とを含む。同様に特に好ましい実施形態では眼科用製剤は、製剤の総重量に対し0.2重量%のアクリル酸ポリマー、好ましくはカルボマーと、4.0重量%のソルビトールと、0.1重量%のNaHPO×12HOと、0.06333重量%の水酸化ナトリウムと、0.01重量%のセトリミド及び/又は1.0重量%の中鎖トリグリセリドと、100重量%までの水とを含む。
【0059】
更に好ましい実施形態では眼科用製剤は、ポリアクリル酸と、アクリル酸誘導体ポリマー、特にカルボマーと、トリグリセリド、特に中鎖トリグリセリドと、水溶性リン酸塩、特にNaHPO×12HOと、ビタミンA成分、特にビタミンAパルミチン酸塩と、ビタミンE、特にD,L−α−トコフェロールと、ソルビトールと、水酸化ナトリウムと、保存剤、特にセトリミドか塩化ベンゾドデシニウム及び水とのうちの少なくとも一つから選択された成分を含む。更に特に好ましい実施形態では眼科用製剤は、製剤の総重量に対し0.2重量%のアクリル酸ポリマー、好ましくはカルボマーと、4.0重量%のソルビトールと、0.1重量%のNaHPO×12HOと、0.06333重量%の水酸化ナトリウムと、0.1重量%のセトリミドと、0.12重量%のビタミンAパルミチン酸塩と、0.006重量%のビタミンE、特にD,L−α−トコフェロール及び/又は1.0重量%の中鎖トリグリセリドと、100重量%までの水とを含む。同様に更に特に好ましい実施形態では眼科用製剤は、製剤の総重量に対し0.2重量%のアクリル酸ポリマー、好ましくはカルボマーと、4.0重量%のソルビトールと、0.1重量%のNaHPO×12HOと、0.06333重量%の水酸化ナトリウムと、0.01重量%のセトリミドと、0.12重量%のビタミンAパルミチン酸塩と、0.006重量%のビタミンE、特にD,L−α−トコフェロール及び/又は1.0重量%の中鎖トリグリセリドと、100重量%までの水とを含む。
【0060】
更にもっと好ましい実施形態では眼科用製剤は、ポリアクリル酸と、アクリル酸誘導体ポリマー、特にカルボマーと、トリグリセリド、特に中鎖トリグリセリドと、水溶性リン酸塩、特にNaHPO×12HOと、グリセロールと、ソルビトールと、水酸化ナトリウムと、保存剤、特にセトリミドか塩化ベンズアルコニウム及び水とのうちの少なくとも一つから選択された成分を含む。特に更にもっと好ましい実施形態では眼科用製剤は、製剤の総重量に対し0.2重量%のアクリル酸ポリマー、好ましくはカルボマーと、3.666重量%のソルビトールと、0.1重量%のNaHPO×12HOと、0.063重量%の水酸化ナトリウムと、0.01重量%のセトリミドか0.01重量%の塩化ベンズアルコニウムと、0.2重量%の100%グリセロールか0.235重量%の85%グリセロール及び/又は1.0重量%の中鎖トリグリセリドと、100重量%までの水とを含む。
【0061】
同様に好ましい実施形態では眼科用製剤は、ポリアクリル酸と、アクリル酸誘導体ポリマー、特にカルボマーと、トリグリセリド、特に中鎖トリグリセリドと、水溶性リン酸塩、特にNaHPO×12HOと、グリセロールと、ソルビトールと、水酸化ナトリウムと、保存剤、特にアレキシジンと、水とのうちの少なくとも一つから選択された成分
を含む。同様に特に好ましい実施形態では眼科用製剤は、製剤の総重量に対し0.2重量%のアクリル酸ポリマー、好ましくはカルボマーと、3.666重量%のソルビトールと、0.1重量%のNaHPO×12HOと、0.063重量%の水酸化ナトリウムと、0.0003重量%の塩酸アレキシジンと、0.2重量%の100%グリセロールか0.235重量%の85%グリセロール及び/又は1.0重量%の中鎖トリグリセリドと、100重量%までの水とを含む。
【0062】
特に好ましい実施形態では眼科用製剤は製剤の総重量に対し以下の成分、
a.0.2重量%のアクリル酸ポリマーと、
b.4.0重量%のソルビトールと、
c.0.1重量%のNaHPO×12HOと、
d.0.0665重量%の水酸化ナトリウムと、
e.1.0重量%の中鎖トリグリセリドと、
f.100重量%までの水と
を含む。
【0063】
別に明記しなければ、製剤中に含有される各々の成分の重量含有量は、各々の成分の総重量が製剤の総重量に対し100重量%を超えないように選択されている。
「成分」の概念では、本発明の意味において製剤を示す成分は、アクリル酸ポリマーと、アクリル酸誘導体ポリマー、カルボマーと、ソルビトールと、水溶性リン酸塩、特にNaHPO×12HOと、水酸化ナトリウムと、中鎖トリグリセリドと、保存剤、特にセトリミドと、ビタミンA成分、特にビタミンAパルミチン酸塩と、ビタミンE、特にD,L−α−トコフェロールと、グリセロールと、水とのうちの少なくとも一つから特に選択された成分と理解される。
【0064】
更に好ましい実施形態では眼科用製剤は、製剤の総重量に対し以下の成分、
a.0.2重量%のアクリル酸ポリマーと、
b.4.0重量%のソルビトールと、
c.0.1重量%のNaHPO×12HOと、
d.0.06333重量%の水酸化ナトリウムと、
e.1.0重量%の中鎖トリグリセリドと、
f.0.1重量%のセトリミドと、
g.100重量%までの水と
を含む。
【0065】
更になお好ましい実施形態では眼科用製剤は、製剤の総重量に対し以下の成分、
a.0.2重量%のアクリル酸ポリマーと、
b.4.0重量%のソルビトールと、
c.0.1重量%のNaHPO×12HOと、
d.0.06333重量%の水酸化ナトリウムと、
e.1.0重量%の中鎖トリグリセリドと、
f.0.1重量%のセトリミドと、
g.0.12重量%のビタミンAパルミチン酸塩と、
h.0.006重量%のD,L−α−トコフェロールと、
i.100重量%までの水と
を含む。
【0066】
同様に好ましい実施形態では眼科用製剤は、製剤の総重量に対し以下の成分、
a.0.2重量%のアクリル酸ポリマーと、
b.4.0重量%のソルビトールと、
c.0.1重量%のNaHPO×12HOと、
d.0.06333重量%の水酸化ナトリウムと、
e.1.0重量%の中鎖トリグリセリドと、
f.0.01重量%のセトリミドと、
g.100重量%までの水と
を含む。
【0067】
同様に更に好ましい実施形態では眼科用製剤は、製剤の総重量に対し以下の成分、
a.0.2重量%のアクリル酸ポリマーと、
b.4.0重量%のソルビトールと、
c.0.1重量%のNaHPO×12HOと、
d.0.06333重量%の水酸化ナトリウムと、
e.1.0重量%の中鎖トリグリセリドと、
f.0.01重量%のセトリミドと、
g.0.12重量%のビタミンAパルミチン酸塩と、
h.0.006重量%のD,L−α−トコフェロールと、
i.100重量%までの水と
を含む。
【0068】
同様に好ましい実施形態では眼科用製剤は、製剤の総重量に対し以下の成分、
a.0.2重量%のアクリル酸ポリマーと、
b.3.666重量%のソルビトールと、
c.0.1重量%のNaHPO×12HOと、
d.0.063重量%の水酸化ナトリウムと、
e.1.0重量%の中鎖トリグリセリドと、
f.0.01重量%の塩化ベンズアルコニウムと、
g.0.2重量%のグリセロール(100%)か
0.235重量%のグリセロール(85%)と、
h.100重量%までの水と
を含む。
【0069】
同様になお好ましい実施形態では眼科用製剤は、製剤の総重量に対し以下の成分、
a.0.2重量%のアクリル酸ポリマーと、
b.3.666重量%のソルビトールと、
c.0.1重量%のNaHPO×12HOと、
d.0.063重量%の水酸化ナトリウムと、
e.1.0重量%の中鎖トリグリセリドと、
f.0.0003重量%の塩酸アレキシジンと、
g.0.2重量%のグリセロール(100%)か
0.235重量%のグリセロール(85%)と、
h.100重量%までの水と
を含む。
【0070】
更に同様に好ましい実施形態では眼科用製剤は、製剤の総重量に対し以下の成分、
a.0.2重量%のアクリル酸ポリマーと、
b.3.666重量%のソルビトールと、
c.0.1重量%のNaHPO×12HOと、
d.0.063重量%の水酸化ナトリウムと、
e.1.0重量%の中鎖トリグリセリドと、
f.0.2重量%のグリセロール(100%)か
0.235重量%のグリセロール(85%)と、
g.100重量%までの水と
を含む。
【0071】
本発明の製剤は、有利なことに問題なく無菌的に製造でき、卓越した適合性がある。本発明の無菌製剤、特にゲル製剤の製造は、特に多段階式方法で行われる。特に本発明の製剤の水相に少なくとも一つの水溶性リン酸塩が添加される。
【0072】
当然のことながら、使用する眼科用製剤は特に無菌性であるので、無菌成分は無菌条件下で用いられるか、或いは製剤は成分を混合した後に滅菌される。
本発明の製剤の好適な製造方法では、アクリル酸ポリマーかアクリル酸誘導体ポリマー、特にカルボマーの懸濁液が、好ましくは無菌条件下で製造される。続いてこの懸濁液に同様にリン酸一水素ナトリウム・12水塩か他のリン酸塩、場合によっては保存剤を含む等張化剤、特にソルビトールの水性滅菌ろ過溶液が加えられる。この場合、好ましくは滅菌ろ過窒素、又は圧縮ガスとして圧縮空気の使用下で作業することが可能である。慎重に混合した後、適切な塩基、特に2%か3%の無菌水酸化ナトリウム溶液を添加することによって、ポリアクリル酸成分のカルボキシル基を中和し、ポリアクリル酸成分のゲル化を開始させ、特にゲルが均質になるまで更に撹拌する。
【0073】
製造された無菌ヒドロゲルに疎水性液体相、特に中鎖トリグリセリド成分が無菌条件下で混合される。特に中鎖グリセリドは、連続水相中、特に無菌ヒドロゲルに均質に分散される。
【0074】
好ましくは完全に均質化されるまで撹拌する。そのようにして得られる疎水性液体相の小滴、或いは分散液中の小油滴の大きさは、特に最大約100ミクロンである。無菌製剤は、次いで通常の方法で調合することが可能である。
【0075】
本発明の製剤の製造方法では、同様にビタミンAパルミチン酸塩のような活性成分をそのようにして製造された無菌ゲルに添加することが可能である。活性成分は無菌条件下で加え、均質に混合することが好ましい。特にビタミンA成分と特に存在する極微量の抗酸化剤を疎水性相に溶解し、その後滅菌ろ過する。次に疎水性の無菌活性成分含有相を撹拌下でゲルに混合する。
【0076】
特に利点は、本発明の眼科用製剤が眼又は眼周囲かそれに関連する臓器か組織の疾患又は状態、特にドライアイを治療する化粧剤及び/又は医薬剤の製造に用いることが可能なことである。
【0077】
製剤の有益な成分によって、この製剤は眼又は眼周囲か眼と関連する臓器か組織の疾病か状態を治療する薬剤として、特にゲル製剤型で用いることが可能である。特に製剤は、ドライアイでの症状の緩和及び/又はドライアイの対症療法に適している。
【0078】
特に保存剤無添加の発明に従う眼科用製剤は、有利なことにドライアイでの長期間の使用において用いることが可能である。眼科用製剤の有益な成分によって、特に保存剤無添加の眼科用製剤は問題なく持続的に適用でき、例えば涙液代用品として用いることができる。
【0079】
驚くべきことに製剤の適用後、早くも数分以内に眼のドライ感、同様に熱り、痒み、発赤又は腫脹等の症状を明らかに改善できることが認められた。特別な利点は、この症状を本発明の製剤によって持続的に緩和できることである。
【0080】
適用のため、本発明の製剤は、特にその含有物を眼に塗布できるように形成された適切な容器、例えば特にポリエチレン、好ましくはHDPE(高密度のポリエチレン)かLDPE(低密度のポリエチレン)に基づく滴瓶、特にオフチオール(Ophtiole(登録商標))の名称で公知の容器に充填される。
【0081】
眼科用製剤の好ましい実施形態ではこの製剤は、単一投薬量単位、特に、例えばEindosis−Ophtiole(登録商標)の名称で公知の特にLDPEに基づく単回投薬量容器内に含有される。眼科用製剤の特に好ましい実施形態ではこの製剤は、保存剤無添加の単回投薬量容器内にゲル製剤型で存在する。
【0082】
乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤の更に好ましい実施形態では、この製剤は複数回投薬量単位、例えば複数回投薬量容器に含有される。眼科用製剤の同様に特に好ましい実施形態ではこの製剤は特に、複数回投薬量容器中に保存剤無添加のゲル製剤型で存在する。
【0083】
複数回投薬量単位は、より多量の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤、例えば複数回投薬量を含有する。従って有利なことに、例えば複数回投薬量を一つの容器に含有させることができる。
【0084】
粘度は、20℃、5回転/分のCP51スピンドルの使用下でブルックフィールド社(Firma Brookfield)のDV−III+型レオメータによるコーン・プレート法によって測定された。別に明記されなければ、粘度のデータは眼に適用する前の製剤の粘度に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
以下の実施例は本発明を説明するためのもので制限するものではない。
実施例1
眼科用ゲルは、100kg中、
0.2kgのアクリル酸ポリマー*1と、
4.0kgのソルビトールと、
0.1kgのNaHPO×12HOと、
0.0665kgの水酸化ナトリウムと、
1kgの中鎖トリグリセリド*2と、
100kgまでの水と
を含有する。
*1例えばノベオン社(Firma Noveon Inc.)の商品名Carbopol(登録商標)98
0NFで得られる。
*2例えば商品名Myritol318(登録商標)で得られる。
【0086】
前記製剤は、20℃、5回転/分のGP51スピンドルの使用下でブルックフィールド社のDV−III+型レオメータを用いてコーン・プレート法によって測定した781mPa・sの粘度と、7.0のpH値と、261mosmol/kgの浸透圧を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの液体水相と少なくとも一つの液体疎水性相とを含む乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤、特にゲル製剤であって、該製剤は、少なくとも一つのリン酸塩を含有し、200〜2000mPa・sの範囲の粘度を示すことを特徴とする乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項2】
前記粘度は、300〜1800mPa・sの範囲、特に400〜1500mPa・sの範囲、好ましくは500〜1400mPa・sの範囲、特に好ましくは600〜1350mPa・sの範囲、極めて好ましくは650〜1300mPa・sの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項3】
水溶性リン酸塩は、リン酸アルカリ塩、リン酸アルカリ土類塩、リン酸アンモニウム塩、そのリン酸一水素塩若しくはリン酸二水素塩、及びその混合物のうちの少なくとも一つから選択され、好ましくはリン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素カリウム及びその混合物のうちの少なくとも一つから選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項4】
前記製剤は、前記製剤の総重量に対し0.01〜5.0重量%の範囲、好ましくは0.05〜0.5重量%の範囲、特に0.08〜0.2重量%の範囲のNaHPO×12HO、特に好ましくは約0.1重量%のNaHPO×12HOを含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項5】
前記製剤は、連続相としての前記水相と、その中に分散された小滴としての前記疎水性相とを含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項6】
前記製剤は少なくとも一つのポリマー性ゲル化成分、特にポリアクリル酸とアクリル酸誘導体ポリマーのうちの少なくとも一つ、好ましくはカルボマーを含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項7】
前記製剤は眼科に許容される有機性油、特にトリグリセリド、好ましくは中鎖トリグリセリドを含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項8】
前記製剤は少なくとも一つの眼科用活性成分、特にビタミンA成分、好ましくはビタミンAパルミチン酸塩を、特に好ましくはビタミンEなどの抗酸化剤と組み合わせて含有することを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項9】
前記製剤はソルビトールを含むことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項10】
前記製剤は水酸化ナトリウムを含むことを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項11】
前記製剤は、特にセトリミド、塩化ベンゾドデシニウム、塩化ベンズアルコニウム、アレキシジン及びチオマーサルのうちの少なくとも一つから選択され、好ましくはセトリミ
ド及びアレキシジンのうちの少なくとも一つから選択された保存剤を示すことを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項12】
前記製剤は前記製剤の総重量に対し0.01〜1.0重量%の範囲、好ましくは0.1〜0.5重量%の範囲、特に0.2〜0.3重量%の範囲のグリセロールを含むことを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項13】
前記製剤は100〜500mosmol/kgの範囲、特に200〜300mosmol/kgの範囲、好ましくは220〜260mosmol/kgの範囲の浸透圧を示すことを特徴とする請求項1〜1
2の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項14】
前記製剤は6〜8の範囲、好ましくは6.8〜7.2の範囲のpH値を示すことを特徴とする請求項1〜13の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項15】
前記製剤は、
ポリアクリル酸と、
アクリル酸誘導体ポリマー、特にカルボマーと、
トリグリセリド、特に中鎖トリグリセリドと、
水溶性リン酸塩、特にNaHPO×12HOと、
ビタミンA成分、特にビタミンAパルミチン酸塩と、
ビタミンE、特にD,L−α−トコフェロールと、
ソルビトールと、
水酸化ナトリウムと、
保存剤、特にセトリミド、塩化ベンゾドデシニウム、塩化ベンズアルコニウムまたはアレキシジンと、
グリセロールと、
水と
のうちの少なくとも一つから選択された成分を有することを特徴とする請求項1〜14の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項16】
前記製剤は、前記製剤の総重量に対し以下の成分、
a.0.2重量%のアクリル酸ポリマーと、
b.4.0重量%のソルビトールと、
c.0.1重量%のNaHPO×12HOと、
d.0.0665重量%の水酸化ナトリウムと、
e.1.0重量%の中鎖トリグリセリドと、
f.100重量%までの水と
を含有することを特徴とする請求項1〜15の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項17】
液体疎水性相、特に中鎖トリグリセリドは、連続水相に、特に無菌ヒドロゲルを製造する前に均質に分散されることを特徴とする請求項1〜16の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項18】
カルボキシル基を適切な塩基、特に水酸化ナトリウム溶液で中和することによってゲル化されるポリアクリル酸とアクリル酸誘導体ポリマーのうちの少なくとも一つ、好ましくはカルボマーが用いられることを特徴とする請求項17に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項19】
前記水相に少なくとも一つの水溶性リン酸塩が添加されることを特徴とする請求項17又は18に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項20】
無菌製剤に活性成分、特にビタミンAが無菌条件下で添加され、均質に混合されることを特徴とする請求項1〜19の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤。
【請求項21】
眼若しくは眼周囲又はそれと関連する臓器又は組織の疾病又は状態、特にドライアイを治療する化粧剤及び医薬用薬剤のうちの少なくとも一つの製造における請求項1〜20の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤の使用方法。
【請求項22】
請求項1〜20の何れか一項に記載の成分を含む、眼若しくは眼周囲又はそれと関連する臓器又は組織の疾病又は状態を治療する特にゲル製剤型の薬剤。
【請求項23】
請求項1〜20の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤を含有する単回投薬量容器。
【請求項24】
前記眼科用製剤は保存剤を含有しないことを特徴とする請求項23に記載の単回投薬量容器。
【請求項25】
請求項1〜20の何れか一項に記載の乳化剤無添加の無菌液滴形成多相系眼科用製剤を含有する複数回投薬量容器。
【請求項26】
前記眼科用製剤は保存剤を含有しないことを特徴とする請求項25に記載の複数回投薬量容器。

【公表番号】特表2009−502866(P2009−502866A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523342(P2008−523342)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064557
【国際公開番号】WO2007/012625
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(594026217)ドクトル ゲルハルト マン ケム−ファルム. ファブリック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク (1)
【Fターム(参考)】