説明

乳化重合反応とポリマー分散液に用いるための、およびエマルションポリマーとポリマー分散液を安定化するための界面活性剤および方法

一般式(III):R−O−[CH−CHO]−H、および一般式(IV):


で示される化合物を含む界面活性剤濃縮物を提供する。水中で該界面活性剤濃縮物を含む液体界面活性剤組成物も提供する。界面活性剤濃縮物、および一般式(V):R−O−[CH−CHO]−A、および一般式(VI):


を含む液体界面活性剤組成物も提供する。エマルションポリマーまたはポリマー分散液を安定化するため、および乳化重合反応またはポリマー分散液に添加して、重合反応を実施するための方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、界面活性剤、より具体的には、乳化重合反応とポリマー分散液に界面活性剤を用いるための、およびエマルションポリマーとポリマー分散液を安定化するための界面活性剤および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン性不飽和モノマーの乳化重合によって得られたエマルションポリマーは、建築用被覆物、接着剤、紙被覆物および繊維製品のために工業的に用いられる。アニオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤は、乳化重合反応用の乳化剤として用い得る。乳化剤は、例えばポリマーの粒径、粘度および発泡特性に影響を与えるだけでなく、機械的、化学的、凍結および貯蔵の安定性に影響を与え得る。さらに、乳化剤はまた、エマルションポリマーから形成されたポリマーフィルムの水、湿気および熱に対する耐性ならびに接着性にも影響を与え得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
乳化重合反応とポリマー分散液に界面活性剤を用いるための、およびエマルションポリマーとポリマー分散液を安定化するための界面活性剤および方法の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
簡潔に述べると、本発明の態様に従えば、界面活性剤濃縮物には、
(a)一般式(III):
【化1】

〔式中、Rは、基1個あたり約2〜約8個の平均分枝を有する、飽和または不飽和の分枝状C6〜22基であり、nは0〜約100の値を表す〕
で示される化合物、および
(b)一般式(IV):
【化2】

〔式中、Rは飽和または不飽和のC8〜16基であり、xおよびyはそれぞれ0〜100の値を表し、xとyの合計は少なくとも1〜100の値を表す〕
で示される化合物
が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の態様に従えば、水を界面活性剤濃縮物に添加して、液体界面活性剤組成物を形成し得る。該界面活性剤濃縮物または液体界面活性剤組成物を、乳化重合反応またはポリマー分散液の全重量を基準として約0.3重量%〜約10重量%の量で乳化重合反応またはポリマー分散液に添加して、該重合反応を実施するか、またはポリマー分散液中においてポリマー粒子を安定化し得る。
【0006】
本発明の他の態様に従えば、エマルションポリマーまたはポリマー分散液を安定化する方法には、一般式(V):
【化3】

〔式中、Rは、基1個あたり約2〜約8個の平均分枝を有する、飽和または不飽和の分枝状C6〜22基であり、nは0〜約100の値を表し、また、Aはメチル基、ブチル基およびベンジル基からなる群から選択される〕
で示される化合物、および一般式(VI):
【化4】

〔式中、Rは飽和または不飽和のC8〜16基であり、xおよびyはそれぞれ0〜100の値を表し、xとyの合計は少なくとも1〜100の値を表し、また、Aはメチル基、ブチル基およびベンジル基からなる群から選択される〕
で示される化合物を含む、全重量を基準として約0.3重量%〜約10重量%の反応生成物をエマルションポリマーまたはポリマー分散液に添加する工程が含まれる。
【0007】
本明細書においては、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」またはそれらの任意の他の変形は、他の要素また成分を含み得ることを意味する。例えば、一連の要素を含む工程、方法、物品または装置は明確に列挙された要素に必ずしも限定されないが、明確に列挙されていない、またはこうした方法、プロセス、物品または装置に固有の他の要素を含み得る。さらに、そうでないと明白に記載されていない限り、用語「または」とは包括的な「または」のことであり、排他的な「または」ではない。例えば、条件A「または」Bは、以下の任意の1つに当てはまる:Aは真実(含まれる)であり、Bは虚偽(除外される)である;Aは虚偽(除外される)であり、Bは真実(含まれる)である;および、AとBはいずれも真実(両方含まれる)である。
【0008】
用語「1つの(a)」または「1つの(an)」は、本発明の要素および成分を記載するために用いられる。これは、読者に対する便宜上のために、また、本発明の一般性を示すために行われる。「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、1つまたは少なくとも1つを含むと理解されるべきである。さらに、そうでないと記載されていない限り、単数は複数をも含む。例えば「1つの化合物(a compound)」を含有する組成物に対しては少なくとも1以上の化合物が含まれる。
【0009】
本発明の態様に従えば、ある実施態様においては、界面活性剤濃縮物は、
(a)一般式(III):
【化5】

〔式中、Rは、基1個あたり約2〜約8個の平均分枝を有する、飽和または不飽和の分枝状C6〜22基であり、nは0〜約100の値を表す〕
で示される化合物、および
(b)一般式(IV):
【化6】

〔式中、Rは飽和または不飽和のC8〜16基であり、xおよびyはそれぞれ0〜100の値を表し、xとyの合計は少なくとも1〜100の値を表す〕
で示される化合物
を含んでなる。
【0010】
界面活性剤濃縮物においては、nは0〜約75の値を表し得る。界面活性剤濃縮物においては、xおよびyはそれぞれ0〜約75の値を表し得、xとyの合計は少なくとも1〜75の値を表し得る。界面活性剤濃縮物においては、Rは約6〜約14個の炭素原子を含有し得、および/またはRは主に13個の炭素原子を含有し得る。Rは主に13個の炭素原子を含有し得るが、例えば、CおよびC10のアルコール(約2%)とC14アルコール(約10%)を含む、異なった炭素鎖長を有するアルコールも存在し得ると理解されるべきである。界面活性剤濃縮物においては、Rは、飽和であって、かつ基1個あたり約2〜約4個の平均分枝を有するか、あるいはRは、飽和であって、かつ基1個あたり約2.5〜約3.5個の平均分枝を有し得る。
【0011】
界面活性剤濃縮物においては、該濃縮物の全重量を基準として、成分(a)は約10重量%〜約99重量%の量で存在し得、また、成分(b)は約1重量%〜約90重量%の量で存在し得る。あるいは、該濃縮物の全重量を基準として、成分(a)は約15重量%〜約95重量%の量で存在し得、また、成分(b)は約5重量%〜約85重量%の量で存在し得る。あるいは、該濃縮物の全重量を基準として、成分(a)は約20重量%〜約90重量%の量で存在し得、また、成分(b)は約10重量%〜約80重量%の量で存在し得る。あるいは、該濃縮物の全重量を基準として、成分(a)は約20重量%〜約80重量%の量で存在し得、また、成分(b)は約20重量%〜約80重量%の量で存在し得る。一般式IIIおよび一般式IVで示されるそれぞれの化合物について少なくとも1以上の末端水素はまた、本発明の態様に従えば、メチル基、ブチル基およびベンジル基からなる群から選択されるアルキル基でキャップ(置換)し得る。界面活性剤濃縮物に水を添加して、注入可能な液体界面活性剤組成物を形成し得る。
【0012】
界面活性剤濃縮物の製造方法は、
(a)一般式(I):
【化7】

〔式中、Rは、基1個あたり約2〜約8個の平均分枝を有する、飽和または不飽和の分枝状C6〜22基を表す〕
で示される少なくとも1つのアルコールを供給する工程:
(b)一般式(II):
【化8】

〔式中、Rは飽和または不飽和のC8〜16基を表す〕
で示される少なくとも1つのジオールを供給する工程:
(c)化合物(I)および化合物(II)を組み合わせて混合物を形成する工程:および(d)前記混合物をエトキシル化して、一般式(III):
【化9】

〔式中、Rは先に定義したとおりであり、nは0〜約100の値を表す〕
で示される化合物;および一般式(IV):
【化10】

〔式中、Rは先に定義したとおりであり、xおよびyはそれぞれ0〜100の値を表し、xとyの合計は少なくとも1〜100の値を表す〕
で示される化合物を含む反応生成物を得る工程
を含んでなる。工程(d)は、約100℃〜約180℃の温度で、かつ最大圧約70psiで実施し得る。アルカリ触媒を工程(d)に添加し得る。
【0013】
一般式(III)で示される化合物および一般式(IV)で示される化合物を含む界面活性剤濃縮物は、一般式(I)および(II)で示される化合物の混合物のコエトキシル化(同時のエトキシル化)によって製造される。エトキシル化工程における一般式(I)で示される少なくとも1つのアルコール化合物は分枝状である。分枝は、該アルコールの炭素鎖上の任意の位置で生じ得る。例えば、適当な平均分枝数は、基1個あたり約2〜約8個の間の範囲である。他の実施態様においては、平均分枝は約2〜約4個の間の範囲であり得、また、他の実施態様においては、平均分枝は基1個あたり約2.5〜約3.5個の間の範囲であり得る。一般式(I)で示される適当な化合物として、基1個あたり様々な量の分枝を有する1以上の分枝状アルコールを挙げ得ると理解されるべきである。
【0014】
式(I)で示される適当な分枝状アルコールとして、トリデシルアルコール、オクチルフェノール、ノニルフェノールまたはドデシルフェノールが挙げられるが、これらに限定されない。適当なトリデシルアルコールは、商標EXXAL(登録商標)(EXXAL(登録商標) 13)としてExxonMobil Chemical Companyから市販されている。他の適当な分枝アルコールは、商標EXXAL(登録商標)としてExxonMobilから、または商標SAFOL(登録商標)(SAFOL(登録商標 23)としてSasolから市販されている。オクチルフェノール、ノニルフェノールおよびドデシルフェノールを含む適当な分枝アルコールはまた、Schenectady International,Inc.(ニューヨーク州)からも市販されている。一般式(I)で示される適当な分枝アルコールとして、Shell Chemical Company(テキサス州)から商標NEODOL(登録商標)として市販されている分枝アルコールも挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
式(I)で示される少なくとも1つの分枝アルコールに加えて、一般式(II)で示される化合物はコエトキシル化工程に含まれる。一般式(II)で示される適当な化合物として、偶数または奇数の、第1級または第2級の、脂肪または合成の直鎖アルコールが挙げられる。一般式(II)で示される適当な化合物は、例えばCognis Corporation(オハイオ州)製の市販品が容易に入手できる。一般式(II)で示される適当な第2級アルコールとして、β−2−ヒドロキシエチルアルコールが挙げられるが、これに限定されない。
【0016】
一般式(I)および(II)で示される化合物を、コエトキシル化前に適当な容器中で混合する。エトキシル化の間、該混合物を、最大圧約70psiで約100℃〜約180℃の間の範囲の高温に曝す。コエトキシル化(同時のエトキシル化)工程は、水酸化ナトリウム(NaOH)または水酸化カリウム(KOH)を含む適当な触媒の存在下に行う。ナトリウムエチラートまたはナトリウムメチラートを用い得るが、該反応はエタノールおよびメタノールを含む望ましくない副生成物が生じる。
【0017】
本発明の他の態様に従えば、他の実施態様においては、注入可能な液体界面活性剤組成物は水中で界面活性剤濃縮物を含む。選択量の水を、撹拌下、約25℃〜約80℃の範囲の温度で該界面活性剤濃縮物に添加して、液体界面活性剤組成物を形成し得る。該液体界面活性剤組成物を冷却し、水を添加して変換中に失われた水を補充し得る。該界面活性剤濃縮物は、液体界面活性剤組成物の全重量を基準として約30重量%〜約90重量%の量で液体界面活性剤組成物中に存在させ得、該重量による量は合計で100%となる。該界面活性剤濃縮物は、液体界面活性剤組成物の全重量を基準として約40重量%〜約85重量%の量で液体界面活性剤組成物中に存在させ得る。該界面活性剤濃縮物はまた、液体界面活性剤組成物の全重量を基準として約50重量%〜約80重量%の量で液体界面活性剤組成物中に存在させ得る。該液体界面活性剤組成物の凝固点は15℃未満であり得る。該凝固点はまた、0℃未満であり得る。該液体界面活性剤組成物は25℃での粘度が2000cps未満であり得る。該液体界面活性剤組成物は25℃での粘度が1000cps未満であり得る。凝固点および粘度の違いは、ある態様においては、一般式(III)および(IV)で示される化合物の選択割合によって決まる。
【0018】
本発明の他の実施態様においては、一般式(III)および(IV)で示される化合物を、適当な反応物質、例えば塩化メチル、塩化ブチルまたは塩化ベンジルと反応させて、その結果、一般式(III)および(IV)で示されるそれぞれの化合物についての1以上の末端水素基をメチル基、ブチル基またはベンジル基でキャップする。
【0019】
本発明の他の態様に従えば、エマルションポリマーまたはポリマー分散液を安定化させる方法には、
一般式(V):
【化11】

〔式中、Rは、基1個あたり約2〜約8個の平均分枝を有する、飽和または不飽和の分枝状C6〜22基であり、nは0〜約100の値を表し、およびAはメチル基、ブチル基およびベンジル基からなる群から選択される〕
で示される化合物、および一般式(VI):
【化12】

〔式中、Rは、飽和または不飽和のC8〜16基であり、xおよびyはそれぞれ0〜100の値を表し、xとyの合計は少なくとも1〜100の値を表し、およびAはメチル基、ブチル基およびベンジル基からなる群から選択される〕
で示される化合物を含む、全重量を基準として約0.3重量%〜約10重量%の反応生成物をエマルションポリマーまたはポリマー分散液に添加する工程が含まれる。
【0020】
本発明の他の態様に従えば、上記の成分(V)および(VI)は、界面活性剤濃縮物または注入可能な液体界面活性剤組成物の形態であり得る。あるいは、全重量を基準として約0.5重量%〜約5重量%の反応生成物を水性エマルションポリマーまたはポリマー分散液に添加し得る。あるいは、全重量を基準として約0.5重量%〜約1重量%の反応生成物を水性エマルションポリマーまたはポリマー分散液に添加し得る。
【0021】
有利には、エチレン性不飽和モノマーの乳化重合反応において、界面活性剤濃縮物または液体界面活性剤組成物を乳化重合反応に添加して、該重合反応を実施し得る。乳化重合反応またはポリマー分散液においては、界面活性剤濃縮物または液体界面活性剤組成物を、乳化重合反応またはポリマー分散液中の全重量を基準として約0.3重量%〜約10重量%の量で添加し得る。あるいは、乳化重合反応またはポリマー分散液中の全重量を基準として約0.5重量%〜約6重量%の界面活性剤濃縮物または液体界面活性剤組成物を添加し得る。あるいは、乳化重合反応またはポリマー分散液中の全重量を基準として約1重量%〜約3重量%の界面活性剤濃縮物または液体界面活性剤組成物を添加し得る。
【0022】
適当なエチレン性不飽和モノマーとして、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびこれらの混合物を含むがこれらに限定されないC1〜12アルキルアクリレート;エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレートおよびこれらの混合物を含むがこれらに限定されないC1〜12アルキルメタクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、3−および4−ビニルトルエンおよびこれらの混合物を含むがこれらに限定されないビニル芳香族化合物;C3〜6α,β−モノエチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸エチレン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびこれらの混合物を含むがこれらに限定されないエチレン性不飽和カルボン酸;およびアクリルアミド、メタクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタ−アクリルアミドおよびこれらの混合物を含むがこれらに限定されない不飽和カルボキサミドが挙げられるが、これらに限定されない。エチレン性不飽和モノマーの他の例として、脂肪族ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、吉草酸ビニル、カプリル酸ビニルおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
エチレンオキシドの直鎖状脂肪アルコールによる付加物は、水混和性が限られ、粘度が極めて高く、そして凝固温度が高い。有利には、本発明の態様に従う注入可能な液体非イオン性界面活性剤は、水混和性が改善され、粘度が低く、凝固温度が低く、そして界面活性が改善されている。界面活性剤濃縮物および液体組成物は、有利には、例えば塗料製剤を含む水性被覆組成物に向上した溶解性および性能を付与する。
【0024】
有利には、本発明の態様に従えば、界面活性剤濃縮物および液体組成物は凍結(凝固)点が低く、凍結防止剤を添加する必要がない。本発明のある態様においては、濃縮物は、凝固点(SP)が15℃未満、他の態様においてはSPが5℃未満、他の態様においてはSPが0℃未満である。凝固点の差異は、ある態様において、一般式(III)および(IV)で示される化合物の選択比率によって決まる。
【0025】
界面活性剤濃縮物または液体界面活性剤組成物を含有する水性ポリマー組成物は、例えば塗料、インキ、シーラントおよび接着剤を含む様々な被覆用途に用い得る。該界面活性剤濃縮物および液体界面活性剤組成物はまた、被覆金属、木材、プラスチック、紙および繊維製品用の製剤に使用するのにも適している。該界面活性剤および液体界面活性剤組成物はまた、例えば、洗浄剤および清掃製剤を含む、家庭および個人用のケア用化学製品を含む、他の用途にも使用し得る。
【0026】
液体界面活性剤組成物はまた、高い充填剤含量、例えば、路面塗料、紙被覆物および建築用被覆物に従来的に用いるカルシウム、マグネシウムおよび亜鉛を含む、二価金属イオンを含有する無機充填剤を有するラテックス製剤の後重合安定化に有利に用い得る。
【0027】
界面活性剤濃縮物および液体界面活性剤組成物には、微生物増殖を防止する殺生物剤、および基礎特性および該組成物の効果にあまり影響しない他の成分を含ませ得る。
【0028】
他に定義のない限り、本明細書に用いる全ての技術的および化学的な用語は、発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明に記載のものと類似または等しい方法および物質は本発明の実施または試験に用いることができるが、適当な方法および物質を以下に記載する。本明細書に開示されている物質、方法および実施例は、例示にすぎず、限定を意図するものではない。
【実施例】
【0029】
実施例1
界面活性剤混合物(濃縮物)の製造
成分Aである主にC13第一級飽和分枝状アルコールを、成分B(エポキシ含量を基準として当モル量のエチレングリコールでの末端エポキシ化C12/C14アルカン混合物(C1267重量%とC14約33重量%)の開環によって調製した)と混合した。成分Aと成分Bの混合物を様々な量のエチレンオキシドと反応させた。
【0030】
実施例2(比較例)
成分Cである、約0重量%〜約2重量%のn−デカノール、約70重量%〜約75重量%のラウリン酸アルコール(C12)、約24重量%〜約30重量%のミリスチン酸アルコール(C14)および約0重量%〜2重量%のセチルアルコール(C16)を含有する直鎖状脂肪アルコール混合物を、実施例1の成分Bと混合した。成分Bおよび成分Cの混合物を様々なモル量のエチレンオキシドと反応させた。
【0031】
実施例3
3.1 ノニルフェノール(成分D)を成分Bと混合した。成分Bと成分Dの混合物を様々なモル量のエチレンオキシドと反応させた。
3.2 オクチルフェノール(成分E)を成分Bと混合した。成分Bと成分Eの混合物を様々なモル量のエチレンオキシドと反応させた。
3.3 67重量%の第1級C13アルコールと33重量%のC15アルコールを含有する合成アルコール混合物(成分F)を成分Bと混合した。成分Bと成分Fの混合物を様々なモル量のエチレンオキシドと反応させた。
【0032】
かくして得られた界面活性剤混合物を、40℃〜70℃の温度で水によって、全界面活性剤含量および界面活性剤混合物の組成が異なる液体界面活性剤組成物に変換した。100グラムの液体界面活性剤組成物を生じさせるのに十分な水を、選択量の界面活性剤濃縮物に添加した。室温まで冷却した後、変換中に消失した水を補充した。
【0033】
表1は、異なった濃度のエチレンオキシドで反応させた、実施例1および実施例2の混合物のエトキシル化によって得られた界面活性剤濃縮物を示す。表記M/A/B :X℃においては、Mは水中での界面活性剤濃縮物(一般式(III)で示される成分Aの「A」部および一般式(IV)で示される成分Bの「B」部からなる混合物、AとBの合計は100である)の重量部を表し、X℃は凝固温度である。例えば、値50/90/10は、水中での50%の界面活性剤濃縮物を表し(50重量%)、90/10は混合物中の各成分(AとB)の量を表し、または、例えば、値60/70/30は水中での界面活性剤濃縮物60%を表し、全組成物の40重量%が水である。
【0034】
【表1】

【0035】
表1に示すように、実施例2の脂肪アルコールは、本発明の態様に従う実施例1のものと比べて凝固点が著しく高かった。
【0036】
実施例5
実施例4に従う種々の非イオン性界面活性剤(実施例1に従って調製した)は、乳化重合用の適当な乳化剤として評価した。評価した幾つかのモノマー組成物は、(1)51%メチルメタクリレート/49%ブチルアクリレート/1%メタクリル酸;(2)50%スチレン/49%ブチルアクリレート/1%メタクリル酸;および(3)80%酢酸ビニル/19%ブチルアクリレート/1%メタクリル酸であった。
【0037】
形成した凝塊の量は、ラテックスの機械的安定度の尺度である。実施例4(実施例1に従って調製した)において列挙された界面活性剤を用いて形成した凝塊の量は、実施例4に示された同様のエトキシル化の濃度でアルキルフェノール界面活性剤(実施例2に従って調製した)を用いて製造したラテックス中で形成した凝塊の量と比べて同様であるかまたは著しく低い。この結果は、本発明による界面活性剤濃縮物が、アクリルコポリマー、酢酸ビニルコポリマー、ビニルネオネートコポリマーおよびスチレンコポリマーのための商業的な乳化重合に用いるのに適していることを示している。
【0038】
実施例6
後重合安定化は、路面塗料、紙被覆物、建築用被覆物および一般に高処方被覆物中で従来的に用いる、高い充填剤含量(例えば、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛を含む、二価の金属イオンを含有する無機充填剤)を有するラテックス製剤にとって重要である。高度にエトキシル化(高い親水性−親油性バランス(HLB)値)した、実施例2による水中での界面活性剤を含有する実施例4の界面活性剤は、アクリルコポリマー、スチレンコポリマー、酢酸ビニルコポリマーおよびスチレンブタジエンコポリマーを含むラテックスの電気的安定性を向上させるための後重合乳化剤として優れた性能を示した。従って、実施例1による界面活性剤混合物を含有する実施例4の界面活性剤は、向上していない場合には、性能特性が等しく類似している。
【0039】
本発明を特定の実施態様について記載した。しかしながら、当業者には、特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱せずに種々の改良および変更を加えることができると理解される。さらに、典型的なモノマーを記載したが、本発明の態様に従って用いるのに適した多数のモノマー、ポリマー分散液およびエマルションポリマーが存在する。従って、本明細書は制限目的としてよりはむしろ例示的な方法とみなされるべきであり、このような改良は全て、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0040】
利点、有利な点および問題に対する解決策を特定の実施形態について記載した。利点、有利な点および問題に対する解決策、およびいかなる利点、有利な点、解決策を生じさせ、あるいはより明白とする要因は、いかなる請求項の重要な、必要な、または本質的な特性または要素として解釈されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一般式(III):
【化1】

〔式中、Rは、基1個あたり約2〜約8個の平均分枝を有する、飽和または不飽和の分枝状C6〜22基であり、nは0〜約100の値を表す〕
で示される化合物、および
(b)一般式(IV):
【化2】

〔式中、Rは飽和または不飽和のC8〜16基であり、xおよびyはそれぞれ0〜100の値を表し、xとyの合計は少なくとも1〜100の値を表す〕
で示される化合物
を含んでなる界面活性剤濃縮物。
【請求項2】
nは0〜約75の値を表す、請求項1に記載の界面活性剤濃縮物。
【請求項3】
xおよびyはそれぞれ0〜約75の値を表し、xとyの合計は少なくとも1〜75の値を表す、請求項1に記載の界面活性剤濃縮物。
【請求項4】
は約6〜約14個の炭素原子を含有する、請求項1に記載の界面活性剤濃縮物。
【請求項5】
は主に13個の炭素原子を含有する、請求項1に記載の界面活性剤濃縮物。
【請求項6】
は、飽和であって、かつ基1個あたり約2〜約4個の平均分枝を有する、請求項1に記載の界面活性剤濃縮物。
【請求項7】
濃縮物の全重量を基準として、成分(a)は約10重量%〜約99重量%の量で存在し、および成分(b)は約1重量%〜約90重量%の量で存在する、請求項1に記載の界面活性剤濃縮物。
【請求項8】
一般式(III)および一般式(IV)に記載の各化合物について少なくとも1つの末端水素は、メチル基、ブチル基およびベンジル基からなる群から選択されるアルキル基で置換されている、請求項1に記載の界面活性剤濃縮物。
【請求項9】
液体界面活性剤組成物を形成するために、水が添加されている、請求項1に記載の界面活性剤濃縮物。
【請求項10】
界面活性剤濃縮物は、液体界面活性剤組成物の全重量を基準として約30重量%〜約90重量%の量で存在する、請求項9に記載の界面活性剤組成物。
【請求項11】
凝固点は15℃未満である 、請求項9に記載の界面活性剤組成物。
【請求項12】
凝固点は0℃未満である、請求項9に記載の界面活性剤組成物。
【請求項13】
25℃での粘度は2000cps未満である、請求項9に記載の界面活性剤組成物。
【請求項14】
25℃での粘度は1000cps未満である、請求項9に記載の界面活性剤組成物。
【請求項15】
界面活性剤濃縮物は、乳化重合反応またはポリマー分散液の全重量を基準として約0.3重量%〜約10重量%の量で乳化重合反応またはポリマー分散液に添加されている、請求項1に記載の界面活性剤濃縮物。
【請求項16】
液体界面活性剤組成物は、乳化重合反応またはポリマー分散液の全重量を基準として約0.3重量%〜約10重量%の量で乳化重合反応またはポリマー分散液に添加されている、請求項9に記載の界面活性剤組成物。
【請求項17】
一般式(V):
【化3】

〔式中、Rは、基1個あたり約2〜約8個の平均分枝を有する、飽和または不飽和の分枝状C6〜22基であり、nは0〜約100の値を表し、また、Aはメチル基、ブチル基およびベンジル基からなる群から選択される〕
で示される化合物、および一般式(VI):
【化4】

〔式中、Rは飽和または不飽和のC8〜16基であり、xおよびyはそれぞれ0〜100の値を表し、xとyの合計は少なくとも1〜100の値を表し、また、Aはメチル基、ブチル基およびベンジル基からなる群から選択される〕
で示される化合物を含む、全重量を基準として約0.3重量%〜約10重量%の反応生成物をエマルションポリマーまたはポリマー分散液に添加する工程
を含んでなる、エマルションポリマーまたはポリマー分散液の安定化方法。
【請求項18】
全重量を基準として約0.5重量%〜約5重量%の反応生成物を添加する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
全重量を基準として約0.5重量%〜約1重量%の反応生成物を添加する、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2010−506720(P2010−506720A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533327(P2009−533327)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/021959
【国際公開番号】WO2008/051389
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】