説明

乳房加温装置

【課題】乳がんの予防ないし治療をしようとするものである。
【解決手段】加熱ヒータ22により発生した熱をプローブ本体21の円筒板部21Dの先端面から被験者の乳房5の表面に伝達することによって、乳房5の乳房内部6の温度と、円筒板部21Dの先端面21Aが当接する部分で囲まれた乳房5の表面部分の温度とが一致する状態を得、このとき加熱ヒータ22が発生する熱を加温処置するに必要な大きさに切り換えることにより、乳房5の乳房内部6の温度を免疫力が向上する温度にまで高めるようにし得、これにより乳がんの発生を安全かつ確実に予防ないし治療できる乳房加温装置11を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳房加温装置に関し、特に乳がんの発生を予防ないし治療しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
近年、図11に示すように、女性がかかるがんについて、乳がんの発生率が高くなる傾向にあることが指摘され、乳がん発生リスクファクタの研究がなされている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】中川恵一著 がんの教科書 三省堂2006。
【非特許文献2】入来正弼著 体温生理学テキスト 文光堂2003。
【非特許文献3】山陰道明著 「低体温がもたらす体の不調を解消しよう」暮らしと健康2008.08、26〜29頁。
【特許文献1】特表2005−532868
【特許文献2】特表2006−502802
【特許文献3】特開2007−244400
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように乳がんが増え続けている背景には、生活習慣の欧米化があると言われている。
【0005】
最近では、その対策としていわゆるピンクリボン運動に代表される早期発見が効果を上げていると共に、三大療法、すなわち外科手術、化学療法及び放射線療法が効果を上げている。
【0006】
しかしながら、乳がんの予防については、その1つの手法として、温熱治療方法が提案されているが(特許文献1ないし3参照)、具体的な療法としては、未だ普及していない。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、乳がんの発生の予防ないし治療に有効な乳房加温装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明においては、一端を閉塞板部21Cで閉塞した円筒板部21Dを有し、熱伝導材料で構成されたプローブ本体21と、プローブ本体21の内部に配設され、プローブ本体21を加熱する加熱ヒータ22と、プローブ本体21の内部において、加熱ヒータ22から発生された熱をプローブ本体21に伝達させるように、加熱ヒータ22を保持する断熱部材23と、断熱部材23の外表面に設けられた表面温度センサ24とを含む加温プローブ13を具え、プローブ本体21の円筒板部21Dの先端面21A及び表面温度センサ24及が被験者の乳房5の表面に当接するように、加温プローブ13を当該乳房5の表面に装着して、プローブ本体21の円筒板部21Dの先端面の熱を乳房5の表面に伝達させることにより、表面温度センサ24で乳房5の表面温度を検出しながら当該検出結果に基づいて加熱ヒータ22を加熱動作させ、これにより乳房5の乳房内部6を加温処置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加熱ヒータにより発生した熱をプローブ本体の円筒板部の先端面から被験者の乳房の表面に伝達することによって、乳房の乳房内部の温度と、円筒板部の先端面が当接する部分で囲まれた乳房の表面部分の温度とが一致する状態を得、このとき加熱ヒータが発生する熱を加温処置するに必要な大きさに切り換えることにより、乳房の乳房内部の温度を免疫力が向上する温度にまで高めるようにし得、これにより乳がんの発生を安全かつ確実に予防ないし治療できる乳房加温装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】人体の温度分布の説明に供する略線図である。
【図2】乳房加温手法の原理の説明に供する略線図である。
【図3】本発明の実施の形態による乳房加温装置を示す略線的ブロック図である。
【図4】図3の加温プローブの具体的構成を示す断面図である。
【図5】加温プローブの乳房への装着の仕方の説明に供する略線図である。
【図6】図3のシステム制御部14の詳細構成を示すブロック図である。
【図7】図6の中央処理ユニット(CPU)31の加温動作処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図6の加温処理データメモリ部39の構成を略線図である。
【図9】第2の実施の形態の加温プローブの具体的構成を示す断面図である。
【図10】図9の加温プローブの乳房への装着の仕方の説明に供する略線図である。
【図11】乳がん発生リスクファクタとして知られている事項の説明に供する略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0012】
(1)乳房加温手法の原理
免疫によるがん予防が一部の医師から提唱されており、多くは体温は免疫に相関があることに着目して、体温を高く保つことによりがん予防をしようとするものである。
【0013】
ところで人体の温度分布は、図1に示すように(非特許文献2参照)、外気温から大きな影響を受けており、室温が35〔°C〕の時の人体1の温度分布は、比較的広い範囲に亘って深部2の温度がほぼ核心温37〔°C〕をもつと共に、人体1の表面の温度が体全体について1〔°C〕程度の低下、すなわち36〔°C〕の程度に低下するに過ぎない。
【0014】
これに対して室温が20〔°C〕にまで下がると、核心温37〔°C〕をもつ深部2の範囲は、上半身ないし頭部の比較的狭い範囲に縮減され、胴体下部、両腕、両足などの外郭部分の温度は深部2の温度37〔°C〕から極端に低い温度になる。
【0015】
この点について、当該人体の温度分布において、乳房は外郭部に属するために、外気温の影響を受けて冷え易い部位である。
【0016】
これに加えて乳房は大胸筋と皮膚に挟まれた部位であるため、熱量の移動に寄与する大きな動脈がなく、高い温度を維持するためには毛細血管の血液移動が重要である。
【0017】
しかしながら乳がんのリスクファクタは、図11に示すように、毛細血管の血流を阻害するものが多く、がん予防のためには生活習慣の改善などに多大な努力が求められる。
【0018】
これに対して、外郭に属する乳房は、外気温の影響を受け易いため、冷え易い部位であるが、逆に温め易い部位でもある。
【0019】
実験によれば、図2(A)に示すように、舌下温が37.1〔°C〕、脇下温36.9〔°C〕の被験者について、乳房5の表面温が35.2〔°C〕のとき、乳房内部6の内部温は35.5〔°C〕であった。
【0020】
ところが、がんに対する人体1の機能として、図2(B)に示すように、がん細胞は、35〔°C〕程度の低温では増殖し易いのに対して、高温には弱いことが知られている(非特許文献3参照)。
【0021】
このような人体1の機能から考えると、乳房内部6の内部温が35.5〔°C〕ではがん細胞が増殖し易い状態にあるから、図2(C)に示すように、加温手段7によって乳房5を外側から加温することにより乳房内部6の内部温を免疫力が活性化する温度(例えば図2(B)の37.0〔°C〕以上の41.0〔°C〕程度)にまで加温すれば、人体1の機能から見て、乳房内部6におけるがん細胞の発生を予防ないし治療が可能である。41〔℃〕を越える場合、皮膚表層の火傷などの恐れがあり、好ましくない。
【0022】
(2)乳房加温装置の構成
かかる動作原理に基づいて、当該実施の形態に基づく乳房加温装置11は、図3に示すように、乳房の皮膚表面部12に加温プローブ13を設けると共に、この加温プローブ13をシステム制御部14によって制御することにより、乳房の深部15の温度を乳がん予防可能温度(この実施の形態の場合38.0〔°C〕)に高めることにより、乳房の深部15の機能を高め、これにより乳がんの予防ないし治療をする。
【0023】
加温プローブ13は、熱伝導材料で構成された、一端を閉塞した円筒形状の、お碗型のプローブ本体21の内部に、その内面を加熱するヒータ22を設けると共に、プロープ本体21の内部に詰め込んだ断熱材料でなる断熱部材23を介して、プローブ本体21の開口における中央部下面位置に、乳房の皮膚表面部12に直接接触できるように、計測用サーミスタでなる表面温度センサ24を配設する。
【0024】
加熱ヒータ22にはシステム制御部14から加熱電流S1を供給することにより、加熱熱量がプローブ本体21に供給され、その熱量がプローブ本体21を熱伝導して皮膚表面部12に当接した円環状先端面21Aから皮膚表面部12に伝達される。
【0025】
かくして、プローブ本体21の円環状先端面21Aから皮膚表面部12に伝達された熱量は、皮膚表面部12のプローブ本体21の外側の部位においては、当該外側の部位が外気にさらされているので、皮膚表面から自然放熱されることにより、皮膚表面部12の外表面に近づくに従って温度が低下して行くように、等温線25で示すような温度勾配を呈する。
【0026】
これに対して、皮膚表面部12のうち、プローブ本体21の円環状先端面21Aによって囲まれかつ、断熱部材23に接触している中央部21Bの部位においては、当該中央部21Bにおける皮膚表面部12の表面の温度は、自然放熱の影響を受けずに、深部15の温度と等しくなる。
【0027】
この原理を応用すれば、表面温度センサ24の周囲の皮膚から外気中に放散する熱を遮断することにより、深部15の温度を表面温度センサ24によって検出することができる(この手法は熱流補償法と呼ばれている)。
【0028】
図3の加温プローブ13は、当該熱流補償法を利用してプローブ本体21から皮膚表面部12に対して、加温プローブ13を設けなかった場合の深部15の温度より高い温度に加温できるように熱量を付与することにより深部15の温度がその分高くなることを利用すると共に、当該深部15の温度を高くした状態で、供給する熱量と放熱する熱量との平衡を得ることにより、深部15の温度と等しい温度を表面温度センサ24によって検出する。
【0029】
かくして図3の加温プローブ13は、深部15の温度を表面温度センサ24によって確認しながら、当該深部15の温度を高めるような加温動作をすることができる。
【0030】
表面温度センサ24によって得られた表面温度検出信号S2はシステム制御部14に取り込まれる。
【0031】
これに加えて、プローブ本体21の温度が、プローブ本体21に埋め込まれた制御用温度センサ26によって検出され、これが制御用温度検出信号S3としてシステム制御部14に取り込まれる。
【0032】
この実施の形態の場合、加熱プロープ13は、図4に示すように、円筒板部21Dの一端を閉塞板部21Cによって閉塞した構成のプローブ本体21を有し、当該円筒板部21D及び閉塞板部21Cの内面に沿うように加熱ヒータ22を構成する電熱線を配設し、外側中央部に表面温度センサ24を有する円板状の断熱部材23によって加熱ヒータ22を閉塞板部21Cに対向させるように押さえ込み保持した、構成を有する。
【0033】
この加温プローブ13は、図5(A)に示すように、乳房5の乳首8に表面温度センサ24を対向させるように加温プローブ13を用意し、当該加温プローブ13を図5(B)に示すように、表面温度センサ24によって乳首8を押さえるように乳房5の先端部分に押し付け保持される。
【0034】
かくして加温プローブ13を構成するプローブ本体21の円環状先端面21Aから乳首8の周囲に加熱ヒータ22から供給した熱量を供給することにより、乳房5の皮膚表面部12に対して加温熱量を供給する。
【0035】
システム制御部14は、図6に示すように、マイクロコンピュータ構成の中央処理ユニット(CPU)31が、バス32を介してROM構成のプログラムメモリ33のプログラムをRAM構成の動作メモリ34を用いて実行することにより、表面温度センサ24の表面温度検出信号S2を表面検出温度入力部37によってディジタルデータに変換して取り込むと共に、制御用温度センサ26の制御用温度検出信号S3を制御用検出温度入力部38においてディジタルデータに変換して取り込む。
【0036】
CPU31は、取り込んだ表面温度検出データ及び制御用温度検出データに基づいて、図7に示す加温動作処理手順RT1を実行することにより、加温処理データメモリ部39に処理データを蓄積しながら加熱電源出力部40を介して加熱ヒータ22に対する加熱電流S1を送出する。
【0037】
CPU31は、操作入力部41を介してオペレータが加熱動作命令を入力すると、加温動作処理手順RT1に入ってステップSP1において表面温度センサ24及び制御用温度センサ26を検出動作させることにより、乳房5の皮膚表面部12(図3)の表面温度データを加温処理データメモリ部39(図8)の表面温度メモリM1に格納する(その温度は表面温度表示部42に表示される)と共に、制御用温度データを制御用温度メモリM2に取り込み、両者の差分データを差分データメモリM3に取り込む。
【0038】
続いてCPU31は、ステップSP2に移って、加熱ヒータ22に対する比較的小さい値の加熱電流S1を、加熱電源出力部40から、表面温度測定用電流として、出力する。
【0039】
この表面温度測定用電流は、乳房の深部15の温度を測定するための電流で、加熱電流S1はプローブ本体21を介して乳房5の皮膚表面部12(図3)から外部に放熱される放熱量に見合った電流値に選定され、当該表面温度測定用電流値は加温処理データメモリ部39の表面温度測定用電流値メモリM4に予め格納されている。
【0040】
かくしてCPU31は、加熱ヒータ22によって皮膚表面部12に加温開始し、次のステップSP3において、表面温度センサ24の表面温度データと制御用温度センサ26の制御用温度データが平衡したか否かの判断をする。
【0041】
ここで否定結果が得られると、このことは皮膚表面部12の表面温度とプローブ本体21の温度とが平衡状態になっていないためさらに加熱ヒータ22による加熱を続ける必要があることを意味し、このときCPUは上述のステップSP1に戻って再度、表面温度センサ24の表面温度と制御用温度センサ26の制御用温度とを取り込む動作を繰り返す。
【0042】
やがてステップSP3において肯定結果が得られると、このことはプローブ本体21の先端面21Aから皮膚表面部12に供給される熱量と皮膚表面部12から外部に放熱される熱量とが平衡状態になったことを意味し、このとき深部15の温度と、表面温度センサ24の配設位置における皮膚表面の温度とが等しくなったことを意味する。
【0043】
このときCPU31は、ステップSP4に移って、当該表面温度センサ24によって検出された温度を深部温度として加温処理データメモリ部39の加温温度設定メモリM6に取り込む(その温度は表面温度表示部42に表示される)。
【0044】
続いてCPU31は、次のステップSP5に移って加熱ヒータ22に対して乳房加温用電流を流す。
【0045】
この乳房加温用電流は、乳房5の深部15(すなわち乳房内部6)の温度を皮膚表面部12を介して高くするために加熱ヒータ22に流すもので、当該乳房加温用電流値は予め加温処理データメモリ部39の乳房加温用電流値設定メモリM5に格納されており、CPU31はこの乳房加温用電流値設定メモリM5のデータに基づいて比較的大きい電流値の電流を加熱ヒータ22に供給する。
【0046】
この結果加温プローブ13からは、上述のステップSP2において流した表面温度測定用電流より格段的に大きい熱量を加温プローブ13の先端面21Aから乳房5の皮膚表面部12に与えることにより、深部15の温度を高めて行く。
【0047】
続いてCPU31は、ステップSP6において、加温処理データメモリ部39の加温温度設定メモリM6に格納されている加温温度設定データに基づいて、表面温度センサ24から得られる表面温度が加温温度設定値に到達したか否かの判断をする。
【0048】
ここで否定結果が得られれば、このことは深部15(すなわち乳房内部6)の温度が未だ加温設定温度に到達していないことを意味し、このときCPUは上述のステップSP5に戻って加熱ヒータ22に対してさらに乳房加温用電流を流し続ける動作を繰り返す。
【0049】
やがて、ステップSP6において肯定結果が得られると、このことは表面温度センサ24によって検出される表面温度が予定した設定加温温度に到達すると共に、深部15の温度上昇分と皮膚表面部12から外部への温度放出分とが平衡することにより、深部15の温度と皮膚表面の温度とが一致する状態になったとこを意味する。
【0050】
このときCPU31は、次のステップSP7に移って、このときの表面温度センサ24の温度を深部15の温度、従って乳房内部6の温度として検出して加温処理データメモリ部39の内部温度検出メモリM7に取り込む(その温度は表面温度表示部42に表示される)。
【0051】
続いてCPU31は、ステップSP8において、加温処理データメモリ39の加温時間設定メモリM9に予め格納されている設定加温時間データに基いて設定加熱時間が経過したか否かの判断をする。
【0052】
この加温時間は、乳がんの予防ないし治療に必要とする治療時間だけ加温を続けることが必要なことを意味し、従ってステップSP8において否定結果が得られると、このことは治療時間が不足していることを意味する。
【0053】
このときCPU31は、ステップSP9に移って現在の表面温度センサ24の温度が許容制限温度を越えていないことを確認する。
【0054】
この許容制限温度は、乳房に火傷を負わせない安全確保のために、表面温度制限値として加温処理データメモリ部39の表面温度制限値メモリM8に予め格納されている。
【0055】
表面温度が制限値を越えていなければ、ステップSP9において肯定結果が得られることにより、CPU31は上述のステップSP5に戻って再度加熱ヒータ22に乳房加温用電流を流し続ける処理を繰り返す。
【0056】
やがてステップSP8において肯定結果が得られると、このことは予定された治療時間の間、乳房内部6に対する加温処置をしたことを意味し、このときCPU31はステップSP10において加熱ヒータ22、表面温度センサ24、制御用温度センサ26をオフ動作させて、次のステップSP11において当該加温動作処理手順RT1を終了する。
【0057】
これに対して上述のステップSP9において否定結果が得られると、このことは乳房の内部温度が制限温度を越えていることを意味し、このときCPU31はステップSP10−SP11を介して当該加温動作処理手順RT1を終了する。
【0058】
かくして乳房加温装置11は、乳房内部6の温度を、がんの発生の予防ないし治療に必要な温度に必要な治療時間の間、加熱処置をしたことになる。
【0059】
以上の構成によれば、乳房に対して外部から加温プローブ13を当てるだけの簡易な構成によって乳房内部6における、免疫力活発化などのがんの発生の予防ないし治療が可能な機能を実現できる高い温度に、確実かつ安全に高めるような加温処置を行うことができる乳房加温装置を実現し得る。
【0060】
(3)他の実施の形態
(3−1)図9は第2の実施の形態を示すもので、図4との対応部分に同一符号に添字Xを付して示すように、加温プローブ13Xは全体として、外側に膨出するように湾曲した構成を有する。
【0061】
すなわちプローブ本体21Xの円筒板部21DXは外側に円錐台形状に延長すると共に、これを閉塞する閉塞板部21CXはドーム形状に外側に湾曲している。
【0062】
この実施の形態の場合、加熱ヒータ22Xは、円筒板部21DX及び閉塞板部21CXと対向するように湾曲するように折れ曲るように配置され、その内側から支持するようにほぼドーム形状に外側に湾曲した断熱部材23Xが円筒板部21DXに嵌込み保持されている。
【0063】
かくして加温プローブ13Xはその内面中央部に設けた表面温度センサ24Xを、図10(A)に示すように、乳房5の乳首8に対向するように加温プローブ13Xを準備した後、図10(B)に示すように乳房5の先端部分に押し付けるように装着する。
【0064】
この装着状態において、図7について上述した加温動作処理手順RT1を実行する際に、加温プローブ13Xの円筒板部21DXの先端面21AXが、内側から嵌め込まれた断熱部材23Xがドーム形状に外側に湾曲していることにより、乳房5の表面に隙間なく接触できると共に、表面温度センサ24Xも同様に乳房5の先端部に隙間なく接触することができる。
【0065】
かくしてプローブ本体21Xの熱が円筒板部21DXの先端面21AXから効率良く乳房5の表面に伝達できることにより、当該伝達した熱が皮膚表面部12から外部に放熱できる状態になることにより、深部15の温度とプローブ本体21Xの内側中央部に設けた表面温度センサ24Xとの平衡動作を確実に実現できる。
【0066】
従って以上の構成によれば、さらに一段と確実かつ安全に乳房5の乳房内部6に対する加温処理を一段と安全かつ確実に実行できる乳房加温装置13Xを得ることができる。
【0067】
(3−2)図4及び図5並びに図9及び図10の実施の形態の場合、加温プローブ13並びに13Xを乳房5の先端表面に接触させるように設けた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、加温プローブ13並びに13Xの装着位置は乳房5の先端以外の位置に装着するようにしても良い。
【0068】
また加温プローブの形状は図4並びに図9の形状に限らず、例えば乳房5の全体を覆うような大きさにしたり、又はプローブ本体21並びに21Xを半円環状に構成したりしても良い。
【0069】
さらには、ブラジャーや肌着などに取り付け、あるいは組み込んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は乳がんの予防ないし治療処理に利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1……人体、2……深部、5……乳房、6……乳房内部、7……加熱手段、11……乳房加温装置、12……皮膚表面部、13、13X……加温プローブ、14……システム制御部、15……深部、21、21X……プローブ本体、21A、21AX……先端面、22、22X……加熱ヒータ、23、23X……断熱部材、24、24X……表面温度センサ、25……等温線、26、26X……制御用温度センサ、37……表面検出温度入力部、38……制御用検出温度入力部、39……加温処理データメモリ部、40……加熱電源出力部、41……操作入力部、42……表面温度表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を閉塞板部で閉塞した円筒板部を有し、熱伝導材料で構成されたプローブ本体と、
上記プローブ本体の内部に配設され、上記プローブ本体を加熱する加熱ヒータと、
上記プローブ本体の内部において、上記加熱ヒータから発生された熱を上記プローブ本体に伝達させるように、上記加熱ヒータを保持する断熱部材と、
上記断熱部材の外表面に設けられた表面温度センサと
を含む加温プローブを具え、上記プローブ本体の円筒板部の先端面及び上記表面温度センサ及が被験者の乳房の表面に当接するように、上記加温プローブを当該乳房の表面に装着して、上記プローブ本体の円筒板部の先端面の熱を上記乳房の表面に伝達させることにより、上記表面温度センサで上記乳房の表面温度を検出しながら当該検出結果に基づいて上記加熱ヒータを加熱動作させ、これにより上記乳房の乳房内部を加温処置する
ことを特徴とする乳房加温装置。
【請求項2】
上記プローブ本体の温度を検出する制御用温度センサと、
上記表面温度センサの検出信号と、上記制御用温度センサの検出信号とに基づいて上記加熱ヒータにおける加熱発熱量を制御するシステム制御部と
を具え、上記システム制御部は、上記表面温度センサの測定温度と上記乳房内部の温度とを平衡させるように制御動作する
ことを特徴とする請求項1に記載の乳房加温装置。
【請求項3】
上記システム制御部は、上記加熱ヒータの発熱量を内部温度設定値に設定することにより、上記表面温度センサの測定温度を上記乳房内部の温度と一致させる
ことを特徴とする請求項2に記載の乳房加温装置。
【請求項4】
上記システム制御部は、上記表面温度センサの測定温度と上記乳房内部の温度との一致が得られたとき、上記加熱ヒータの発熱量を加温用設定値に設定することにより、上記乳房内部の温度を加温処置温度に高める
ことを特徴とする請求項3に記載の乳房加温装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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