説明

乳房細胞を検出するための核酸プライマー及びプローブ

試験試料中のBS106標的配列の検出のための増幅プライマー及びハイブリダイゼーションプローブとして有用であるポリヌクレオチドを提供する。試験試料中のBS106配列の存在を検出するための増幅に基づく方法において、本プライマー及びプローブを使用することができる。さらに、本プライマー及びプローブを使用して、試験試料中のBS106標的配列を検出するために、ホモジニアスリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験試料中で乳房細胞を検出するためのオリゴヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
乳癌は、米国では女性において発生する癌の最もよくある形態である。米国における乳癌の発生率は、1997年では、乳癌の診断を受けたものが180,200例、乳癌関連の死亡が43,900例と推定されている(American Cancer Societyの統計)。米国における乳癌発生は、2004年では、診断を受けたものが213,910例、乳癌関連の死亡が40,921例と推定されている(American Cancer Societyの統計)。世界的には、乳癌の発生率は1985年の700,000例から2000年には約1,050,000例に増加している。G.N.Hortobagyiら、CA Cancer J Clin 45:199−226(1995)、Parkin DM.,Lancet Oncol.2(10):596(2001)。
【0003】
乳癌などの乳房の疾患又は状態を検出する、診断する、病期分類する、モニタリングする、予後を判定する、予防する、治療する又は素因を判定するために使用される手法は、患者の転帰にとって非常に重要である。例えば、早期乳癌と診断された患者の5年相対生存率は、遠隔転移乳癌との診断を受けた患者の生存率が約20%であるのに対し、90%以上である(American Cancer Societyの統計)。現在、早期乳癌の最良の初期指標は乳房の理学的検査とマンモグラフィーである。J.R.Harrisら、Cancer:Principles及びPractice of Oncology,第4版、p.1264−1332、Philadelphia,PA:J/B.Lippincott Co.(1993)。マンモグラフィーは理学的検査によって検出可能となる前に乳癌を検出し得るが、限界がある。例えば、マンモグラフィーの予測値は観察者の技術及び乳房X線像の質に依存する。さらに、疑わしい乳房X線像の80−93%が偽陽性であり、乳癌を有する女性の10−15%の乳房X線像が偽陰性を示す。C.J.Wrightら、Lancet 346:29−32(1995)。早期乳癌を検出するために、より感受性が高くかつ特異的な新しい診断方法が必要であるのは明らかである。
【0004】
乳癌を含むあらゆる癌での大きな問題は、限局した部位(例えば乳房)から身体の他の部位へと疾患が広がることである(転移として知られている。)。
【0005】
転移は、上皮細胞が造血系で検出されたときには起こっていると考えられている。転移が癌のある段階の特徴であり、癌患者の適切な治療の決定は、疾患の段階を的確に特徴付けることに大きく依存するため、この発見は重要である。特に、局限性癌の患者の治療は、癌の転移段階における患者の治療とは大きく異なり得る。
【0006】
古くからなされてきた、造血系中の上皮細胞の検出によって癌の拡散を発見しようとする試みには、免疫細胞学的アッセイ手段が含まれていた。残念ながら、これらのアッセイに使用され、表向きは上皮細胞に対して特異的である抗体が、造血系で通常見られる細胞と交差反応性を示すために、これらの方法は概して不正確である。故に、「正常造血細胞」が転移癌が存在しない状態の際に検出されることがあり、それ故にこれらのアッセイ手段により偽陽性の結果となる場合がある。加えて、免疫細胞学的アッセイは感度に欠け、造血系中に存在する上皮細胞が低レベルである場合、偽陰性の結果となる可能性がある。従って、免疫細胞学的アッセイの使用により早期の転移癌が誤診され得る。
【0007】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの核酸増幅反応の出現によって、造血系に存在する上皮細胞が、タンパク質レベルに代わって核酸レベルで検出できるようになった。それゆえ、交差反応性を有する抗体に関連する問題は回避される。加えて、核酸増幅反応が、従来の抗体に基づくアッセイ法よりも著しく高感度であることは周知である。従って、血流中の上皮細胞の検出のための増幅を利用したアッセイによって、転移癌の初期の発見のための免疫細胞学的アッセイ法に著しい利点がもたらされた。
【0008】
造血系中の上皮細胞の検出に使用されるPCRを利用したアッセイは文献で報告されてきた。これらのアッセイの多くは、上皮細胞の表面で見られるタンパク質であるサイトケラチン19(CK19)をコードする核酸配列を標的にしている。しかし、偽遺伝子(CK19遺伝子を綿密に模倣する核酸配列を含む。)がヒトゲノム中に存在する。従って、CK19標的配列の検出のための増幅アッセイを開発する者が直面するある課題は、CK19由来の配列を増幅し検出するが、密接に関連する偽遺伝子を増幅し検出しないアッセイを設計することである。
【0009】
CK19に加えて、転移性乳癌を検出するために使用し得る2種類のその他のマーカーが発見されている。これらの2種類のマーカーはBU101(リポフィリンBとも呼ばれる。)及びBS106(小乳房上皮ムチン又は「SBEM」とも呼ばれる。)と呼ばれる。(Colpittsら、Ann.NY ACAd.Sci.923:312−315(2000);Colpittsら、Tumor Biol.23:263−278(2002))。これらのマーカーは、乳房上皮で特異的に発現されることが分かった。これらの2種類のマーカーの発現の測定が行われ、CK19と比較された。CK19は、全ての乳癌の検出において非常に感受性が高いことが分かったが、一方で、BU101及びBS106は僅かに限定的であることが分かった。この理由は、CK19が殆どの上皮細胞によって高度に発現され、それにより非常に高感度のマーカーとなるからであるが、これは、乳房特異的とは考えにくい。その結果、BU101及びBS106は、CK19と比較して、より乳房特異的マーカーであると考えられる。従って、BU101及びBS106は、肉眼で発見できない乳癌を検出し測定するのに十分な識別を可能にし得る。
【0010】
BS106のcDNA配列が研究され、特徴が調べられてきた。(Colpittsら、Tumor Biol.23:263−278(2002))。BS106は、乳房、唾液腺及び前立腺で発現されるが、その他の組織では発現されないことが分かった。cDNAは、アミノ酸組成、高度のO結合型グリコシル化及び発現プロファイルに基づき、小さいムチン様タンパク質であることを特徴とする90アミノ酸タンパク質をコードする。BS106 mRNAは、調べた乳房組織の90%で検出されている。
【0011】
浸潤性腺管癌の90%超においてBS106 mRNA発現が検出された。BS106 mRNAが乳癌細胞株において発現されるが、非乳房起源の細胞株では発現されないことが分かった。このことから、BS106発現が乳癌の共通の特徴であり、リンパ節内の微小転移細胞の検出のために、ならびに未知の転移の主要な起源の鑑別診断においての両方に対して、乳房のリンパ節転移に対する有用なマーカーとして役立ち得ることが示唆される。
【0012】
しかし、既知のBS106マーカー検出法は、扱いにくく非特異的である。ある方法では、2段階cDNA生成を行い、その後PCRを行うが、ある方法では、ゲル検出を行う(TaqMan(R)PCR)。
【0013】
さらに、既知のBS106マーカー検出法に伴う別の問題は、このような方法で用いられるプライマー及びプローブがあまり特異的又は高感度ではないことである。実際、密接に関連する配列のコンピュータ比較に基づき、このような検出方に対して使用される増幅プライマー配列を選択し得ることが周知である。理論的に、このようにして選択される配列は、核酸増幅原理によって使用した場合、選択した標的配列のコピーを効果的に生成させるはずである。上記のように選択された配列の理論的な効率にもかかわらず、このような配列によって許容量の増幅産物が生成しないことが多い。残念ながら、この現象はよく分かっていない。従って、コンピュータプログラムを用いてプライマーを最初にスクリーニングできるが、一方で、このようなプライマーを実際に使用するまで、効率を正確に求めることはできない。これは、BS106 mRNAの増幅での使用のためのプライマー及びプローブの設計において特に当てはまった。本発明の発明者らは、BS106 mRNAに含有されるイントロン、反復配列文字列及びAT領域がかなり少ないために、BS106 mRNAの増幅で使用するためのプライマー及びプローブの設計が困難であることを見出した。コンピュータプログラム(OLIGOTMなど)により選択されたプライマーペア及びプローブの多くは、これらの選択がイントロンに及ばず、その他のヒト遺伝子との誤ったプライミングの可能性が高いことから、使用できなかった。
【0014】
従って、当技術分野において、単純かつBS106マーカーに特異的な検出方法が必要とされている。さらに、この検出法と関連して、この方法で使用でき、BS106マーカーに対して特異的かつ高感度であるプライマー及びプローブ配列が必要とされている。
【発明の開示】
【0015】
本発明は、BS106標的配列を特異的かつ高感度に増幅及び検出するために使用できるポリヌクレオチド配列を提供する。より具体的には、ある実施形態において、本発明は、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号2と少なくとも約80%同一であるセグメントを含む配列を有するプライマー及びその相補体に関する。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号3と少なくとも約80%同一であるセグメントを含む配列を有するプライマー及びその相補体に関する。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、12から40ヌクレオチド長を有し、配列番号4と少なくとも約80%同一であるセグメントを含む配列を有するプローブ及びその相補体に関する。
【0018】
さらに別の実施形態において、本発明は、少なくとも2個の(2)プライマー配列を含有する組成物に関する。第一のプライマーは、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号2と少なくとも約80%同一であるセグメントを含む配列及びその相補体を有し得る。第二のプライマーは、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号3と少なくとも80%同一であるセグメントを含む配列を有し得る。場合によっては、この組成物はまた、12から40ヌクレオチド長を有し、配列番号4で示される配列と少なくとも約80%同一であるセグメントを含む配列を有する少なくとも1個のプローブ配列も含み得る。あるいは、プローブ配列は、配列番号5で示される配列を有し得る。好ましくは、プローブ配列は、測定可能なシグナルを生成できる少なくとも1個の検出可能な標識を含む。
【0019】
本発明のさらに別の実施形態において、多くの様々な方法において、試験試料中でBS106標的配列を検出し得る。例えば、核酸増幅試薬と、BS106標的配列を含有する試験試料と、プライマーセットと、を含む反応混合液を形成することにより、BS106標的配列を増幅し得る。プライマーセットの第一のプライマーは、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号2と少なくとも約80%同一であるセグメントを含有する配列を有し得る。プライマーセットの第二のプライマーは、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号3と少なくとも約80%同一であるセグメントを含有する配列を有し得る。場合によっては、反応混合液はまた、少なくとも1個のプローブも含有し得る。増幅後、増幅させた標的配列を検出し得る。反応混合液がプローブを含有しない場合、以下に限定されないが、ゲル電気泳動などの当技術分野で公知の様々な技術を用いて、増幅標的配列を検出することができる。反応混合液がプローブを含有する場合、次にプローブを増幅標的配列にハイブリダイズさせて、検出可能なプローブ/増幅産物ハイブリッドを形成させる。増幅標的配列を検出するのに使用できるプローブは、12から40ヌクレオチドの長さであり、配列番号4と少なくとも約80%同一であるセグメントを含有する配列を有するプローブであり得る。このようなプローブは、捕捉プローブ、PNAプローブ、TaqMan(R)プローブ、分子指標プローブなどであり得る。使用できる分子指標プローブの例は、配列番号5で示される配列を有する。
【0020】
必要に応じて、増幅BS106標的配列又は生成物ハイブリッドを捕捉し検出し、試験試料中に標的配列が存在することを示すために測定可能なシグナルを生じさせることができる少なくとも1個の検出可能な標識で、プライマー又はプローブを標識することができる。さらに、微粒子捕捉技術を用いて生成物ハイブリッドを検出することができる。好ましくは、配列番号5で示される配列を有するプローブを使用して試験試料中のBS106標的配列を検出する場合、少なくとも1個の蛍光プローブ及び少なくとも1個のクエンチャーで前記プローブを標識する。
【0021】
別の例によって、最初に試験試料からmRNAを抽出することにより、試験試料においてBS106標的配列の存在を検出することができる。このmRNAを試験試料から抽出した後、反応混合液を調製することができる。この反応混合液は、抽出mRNAに加えて、逆転写酵素活性を有する酵素と、核酸増幅試薬と、プライマーペア及び少なくとも1個のプローブと、を含有し得る。このペアの一方のプライマーは、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号2と少なくとも約80%同一であるセグメントを含有する配列を有し得る。このペアの他方のプライマーは、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号3と少なくとも80%同一であるセグメントを含有する配列を有し得る。プローブは、12から40ヌクレオチド長を有し、配列番号4と少なくとも約80%同一であるセグメントを含有する配列を有し得る。好ましくは、このペアの第一のプライマーは、配列番号2で示される配列を有し、このペアの第二のプライマーは配列番号3で示される配列を有し、プローブは配列番号5で示される配列を有する。反応混合液を調製した後、mRNAからcDNAを生成させる。cDNA生成後、(i)増幅産物を生成させ、(ii)ハイブリッドを形成させるために増幅産物にプローブをハイブリダイズさせるのに必要な増幅条件に反応混合液を供する。反応混合液をこの増幅条件に供すると、ハイブリッドを検出できる。当技術分野で公知の常套的技術を用いて検出することができる少なくとも1個の蛍光プローブ及び少なくとも1個のクエンチャーでプローブ(配列番号5)を標識することにより、ハイブリッドの検出を行い得る。ハイブリッドの存在は、試験試料中にBS106標的配列が存在することの指標である。
【0022】
またさらなる実施形態において、本発明はまた、BS106標的配列を増幅するためのキットに関する。このようなキットは、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号2と少なくとも約80%同一であるセグメントを含む配列を有するプライマーと、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号3と少なくとも約80%同一であるセグメントを含む配列を有するプライマーと、増幅試薬と、を含み得る。場合によっては、このキットは、配列番号2で示される配列を有するプライマーと、配列番号3で示される配列を有するプライマーと、を含有し得る。場合によっては、このキットは、12から40ヌクレオチド長を有し、配列番号4を含有する配列に対して少なくとも約80%同一であるセグメントを含むプローブ又は配列番号5で示される配列を有するプローブをさらに含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
定義
本明細書中で使用する場合、「増幅条件」とは、通常、プライマー配列の標的配列へのハイブリダイズ又はアニーリング及び、その後のプライマー配列の伸長を促進させる条件を指す。このようなアニーリングが、いくつかのパラメーター(温度、イオン強度、配列の長さ、相補性、及び配列のG:C含有量など)に予測可能な様式で大きく依存することは、当該技術分野で周知である。例えば、相補的な核酸配列の環境において、温度を低下させるとアニーリングが促進される。何らかのある配列のセットにおいて、溶融温度、すなわちTは、いくつかの公知の方法のいずれかによって推測することができる。通常、診断用途では、溶融温度に近い(すなわち10℃以内)ハイブリダイゼーション温度を使用する。イオン強度又は「塩」濃度も、小さい陽イオンがホスホジエステル骨格上の負電荷を打ち消すことによって二本鎖の形成を安定化する傾向があるため、溶融温度に影響する。典型的な塩濃度は陽イオンの性質と原子価に依存するが、このことは当業者によって容易に理解される。同様に、A:T対が有する水素結合が2個のみであるのに対して、G:C対は3個の水素結合を有することから、また、配列が長いほど、配列を共に保持する水素結合が多くなることから、高G:C含有量及び配列が長くなることにより、二本鎖の形成が安定化されることも知られている。従って、G:C含有量が多く、配列が長いと、溶融温度を上昇させることにより、ハイブリダイゼーション条件に影響する。
【0024】
診断用途に対して配列を選択したら、G:C含有量と長さが分かり、どのようなハイブリダイゼーション条件を使用するかを正確に決定するために利用することができる。イオン強度は通常、酵素活性に対して最適化されるため、変化させ得る唯一のパラメーターは温度である。一般に、ハイブリダイゼーション温度は、プローブ又はプライマーのTもしくはその近似値で選択される。従って、特定のプライマー、プローブ、もしくはプライマーとプローブとのセットに適当なハイブリダイゼーション条件を得ることは、当業者により決定され得る。
【0025】
本明細書中で使用する場合、「BS106」という用語は、小乳房上皮ムチン又は「SBEM」としても知られる乳房上皮で発現されるタンパク質を指す。
【0026】
本明細書中で使用する場合、「標識」という用語は、検出可能な特性もしくは特徴を有する分子もしくは部分を意味する。標識は、例えば放射性同位体、蛍光プローブ、化学発光体、酵素、コロイド粒子、蛍光微粒子などを使用して直接検出できるか、又は、例えば特異的結合メンバーを使用して標識を間接的に検出できる。直接検出可能な標識は、さらなる成分、例えば基質、誘発試薬、光、その他標識の検出を可能とするものを必要とする可能性もあることが理解されよう。間接的に検出可能な標識を使用する場合、一般に「複合体」と組み合わせて使用される。複合体は、通常、直接検出可能な標識に接着もしくは結合している特異的結合メンバーである。複合体合成におけるカップリング化学反応は、当技術分野で周知であり、例えば、特異的結合メンバーの特異的結合特性もしくは標識の検出可能特性を破壊しないあらゆる化学的手法及び/又は物理的手法を含み得る。本明細書で使用する場合、「特異的結合メンバー」は、結合対、すなわち、一方の分子が例えば化学的もしくは物理的手段により特異的に他方の分子に結合する2つの異なる分子のうちの1つのメンバーを意味する。抗原及び抗体特異的結合対に加え、その他の結合対として、以下に限定されないが、アビジン及びビオチン;ハプテン及びハプテンに対して特異的な抗体;相補的なヌクレオチド配列;酵素補因子もしくは基質及び酵素などが挙げられる。
【0027】
本明細書中で使用する場合、「微粒子」とは、不溶性であるか、又は、後の反応によって不溶化され、粒子形状を有する何らかの材料を示す。従って、微粒子は、ラテックス、プラスチック、誘導体化プラスチック、磁性もしくは非磁性金属、ガラス、シリコンなどであり得る。非常に数多くの微粒子形態のものも周知であり、これには、以下に限定されないが、ビーズ、シェービング(shavings)、粒(grains)又は当業者にとって周知のその他の粒子が含まれる。本発明による微粒子は、好ましくは0.1μMから1μMのサイズであり、より好ましくは0.3μMから0.6μMのサイズである。
【0028】
本明細書中で使用する場合、「核酸増幅試薬」という用語は、周知の増幅手段(以下に限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT PCR)など)において使用されている従来の試薬を指し、これには、以下に限定されないが、ポリメラーゼ活性又は逆転写活性を有する1以上の酵素、酵素補因子(マグネシウム又はマンガン;塩;ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)など)、塩類、緩衝液及びデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP、例えばデオキシアデニン三リン酸、デオキシグアニン三リン酸、デオキシシトシン三リン酸及びデオキシチミン三リン酸)及び、酵素活性又はプライマーもしくはプローブの特性もしくは感受性を調節するその他の試薬が含まれる。
【0029】
本明細書中で使用する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、DNAもしくはRNA、改変DNAもしくはRNA、DNAもしくはRNA摸倣物又は、非荷電核酸類似体などの(以下に限定されないが、国際特許出願WO92/20702で開示されているペプチド核酸(PNA)又は米国特許第5,185,444号、第5,034,506号及び第5,142,047号(全て、参照により本明細書中に組み込む。)に記載のモルホリノ類似体を含む。)核酸類似体のポリマーを指す。本明細書中で使用する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、天然の核酸塩基、糖及び共有結合ヌクレオシド間(骨格)連結からなるポリヌクレオチドならびに、同様に機能する非天然部分を有するポリヌクレオチドを含む。現在利用可能な様々な技術を用いて、ポリヌクレオチドを常套的に合成することができる。例えば、従来のヌクレオチドホスホロアミダイト化学及びApplied Biosystems,Inc,(Foster City,Calif);DuPont(Wilmington,Del)又はMilligen(Bedford,Mass.)から入手可能な装置を用いてこのような配列を合成することができる。同様に、及び必要に応じて、米国特許第5,464,746号;同第5,424,414号;及び同第4,948,882号(全て、参照により本明細書中に組み込む。)に記載のような当技術分野で周知の方法を用いて配列を標識することができる。しかし、プライマーとして使用される配列が少なくとも配列の3’末端においてDNAを含有すべきであり、好ましくは完全にDNAから構成されることは理解されよう。
【0030】
本明細書中で使用する場合、「固体支持体」という用語は、不溶性であるか、又は後続反応により不溶化できる何らかの材料を指す。従って、固体支持体は、ラテックス、プラスチック、誘導体化プラスチック、磁性もしくは非磁性金属、硝子、シリコンなどであり得る。膨大な固体支持体形態も周知であり、これには、以下に限定されないが、ビーズ、シェービング(shavings)、粒(grains)、粒子、プレート又はチューブが含まれる。
【0031】
本明細書中で使用する場合、「セグメント」という用語は、ポリヌクレオチドの全体の核酸配列の部分配列であり得るオリゴヌクレオチドを指す。本発明はまた、「セグメント」がポリヌクレオチドの全体核酸配列を含有し得ることも想定する。
【0032】
本明細書中で使用する場合、「特異的にハイブリダイズする」という用語は、核酸が検出可能かつ特異的に第二の核酸に結合する能力を指す。ポリヌクレオチドは、非特異的核酸への検出可能な結合の感知され得る量を最小限にするハイブリダイゼーション及び洗浄条件下で特異的に標的核酸鎖にハイブリダイズする。高ストリンジェンシー条件を使用して、当技術分野で公知のように特異的ハイブリダイゼーション条件を達成することができる。当業者にとって当然のことながら、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、ある程度のミスマッチ又は配列突出を許容し得る。
【0033】
本明細書中で使用する場合、「標的配列」は、検出され、増幅され、検出及び増幅されるか、又は、本明細書において提供されるポリヌクレオチド配列の1つに相補的なポリヌクレオチド配列を指す。標的配列という用語は1本鎖と称されることがあるが、当業者は、標的配列が実際は2本鎖であり得ることを認めるであろう。
【0034】
本明細書中で使用する場合、「試験試料」という用語は、標的配列を含有する疑いのあるあらゆるものを指す。試験試料は、何らかの生物起源のもの、例えば血液、骨髄、気管支肺胞洗浄液、唾液、咽頭スワブ、眼レンズ液、脳脊髄液、汗、痰、尿、乳、腹水、粘液、滑液、腹膜液、羊水、組織(例えばリンパ節もしくは心臓組織など)又は発酵ブロス、細胞培養物、化学反応混合物などに由来し得る。試験試料は、(i)このような起源から得たままの状態で直接、又は(ii)試料の性質を変えるための前処理の後で、使用することができる。従って、例えば、血液からの血漿の調製、細胞の破壊、固体物質からの液体の調製、粘性流体の希釈、液体の濾過、液体の蒸留、液体の濃縮、阻害成分の不活性化、試薬の添加、核酸の精製などにより、使用前に試験試料を前処理することができる。最も一般的には、試験試料は、末梢血液、リンパ節又は骨髄である。
【0035】
本発明
本発明は、試験試料中のBS106標的配列を増幅し検出するための、プライマー、プローブ、組成物、試薬、方法及びキットを提供する。
【0036】
プライマー及びプローブ
本発明は、プライマー及びプローブとして使用できるある種のポリヌクレオチド配列(配列番号2、3、4及び5で示される。)に関する。特に、本発明は、BS106標的配列を増幅するために増幅プライマーとして、個別に又は一緒に、の何れかで使用することができる少なくとも2つのポリヌクレオチド配列を提供する。BS106標的配列は、RNA、DNA又はcDNA配列であり得る。好ましくは、BS106標的配列はRNA配列である。WO98/18945(参照により本明細書中に組み込む。)に対してBS106をコードするcDNA配列が提供され、配列番号13で示される。配列番号1は、配列番号13で示されるcDNA配列の一部である。
【0037】
より具体的に、本発明のプライマー配列の1つは、特異的にBS106標的配列にハイブリダイズし、15から40ヌクレオチド長(すなわち、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40ヌクレオチド長)を有し、配列番号2で表される配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるセグメントを含むポリヌクレオチドである。本発明の第二のプライマー配列は、BS106標的配列と特異的にハイブリダイズし、15から40ヌクレオチド長(すなわち、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40ヌクレオチド長)を有し、配列番号3で表される配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるセグメントを含むポリヌクレオチドである。上述のプライマー配列の両方の相補体もまた想定され、本発明の範囲内にある。当技術分野で周知の多くの方法、例えばUniversity of Wisconsin Computer Group(GCG)ソフトウェアのBLASTNプログラムを使用することより、2個の核酸配列間の%同一性を求めることができる。
【0038】
本発明の目的のために、上述のように、BS106標的配列に特異的にハイブリダイズし、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号2又は配列番号3で表される配列と少なくとも約80%同一であるセグメントを含むプライマー配列は、本発明のプライマー配列の相同体であるとみなされる。「相同体」という用語は、本明細書中で使用する場合、付加、欠失及び小さな置換のある、配列番号2又は配列番号3を含有するポリヌクレオチドを含む。例えば、配列番号2又は配列番号3で表される核酸配列を含有するプライマー(ここで、3’もしくは5’末端の何れか又は両端からヌクレオチドの欠失があり、BS106標的配列に特異的にハイブリダイズする能力を維持する。)は、相同体であり、本発明の範囲内とみなされる。
【0039】
本発明において、BS106標的配列に特異的にハイブリダイズし、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号2で表される配列と少なくとも80%同一であるセグメントを含有するプライマー配列をフォワードプライマーとして使用することができる。BS106標的配列に特異的にハイブリダイズし、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号3で表される配列と少なくとも80%同一であるセグメントを含有するプライマー配列をリバースプライマーとして使用することができる。配列番号3で表される配列を有するプライマー配列は、このプライマーがBS106遺伝子のイントロンに及び、従ってmRNAとゲノムDNA(BS106)標的配列との間の識別に対する機能を与えるため、特に有用である。
【0040】
本明細書中に記載のプライマーに加えて、本発明はまた、試験試料中のBS106標的配列を検出するために使用できる少なくとも1つのプローブ配列も提供する。好ましくは、本明細書中で既に述べたプライマーと共に少なくとも1個のプローブ配列を使用して、試験試料中のBS106標的配列を検出する。使用できるプローブ配列は、BS106標的配列に特異的にハイブリダイズし、12から40ヌクレオチド長(すなわち、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40ヌクレオチド長)を有し、配列番号4で表される配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるセグメントを含有するポリヌクレオチドである。上述のプローブ配列の相補体もまた想定され、本発明の範囲内である。既に考察したように、当技術分野で周知の多くの方法、例えばUniversity of Wisconsin Computer Group(GCG)ソフトウェアのBLASTNプログラムを使用することより、2個の核酸配列間の%同一性を求めることができる。
【0041】
本発明の目的のために、上述のような、BS106標的配列に特異的にハイブリダイズし、12から40ヌクレオチド長を有し、配列番号4で表される配列と少なくとも約80%同一であるセグメントを含有するプローブ配列は、本発明のプローブ配列の相同体であるとみなされる。「相同体」という用語は、本明細書中で使用する場合、付加、欠失及び小さな置換のある、配列番号4を含有するポリヌクレオチドを含む。例えば、配列番号4で表される核酸配列(3’もしくは5’末端の何れか又は両端からのヌクレオチドの欠失があり、BS106標的配列に特異的にハイブリダイズする能力を維持する。)を含有するプローブは、相同体であり、本発明の範囲内とみなされる。
【0042】
本発明のプローブを捕捉プローブ、PNAプローブ、TaqMan(R)プローブ、分子指標(molecular beacon)プローブなどとして使用することができる。
【0043】
TaqMan(R)プローブは、5’末端が蛍光プローブで標識され、3’末端又は蛍光プローブからの距離が数ヌクレオチド以下であるその他の塩基がクエンチャーで標識されている、標的配列に相補的なポリヌクレオチドからなる二重標識蛍光性プローブである。TaqMan(R)プローブは通常、増幅反応においてリアルタイムプローブとして使用される。遊離プローブにおいて、蛍光プローブ及びクエンチャーの近接近により、蛍光プローブが内部で消光される。増幅反応の伸長反応の間、ポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性によりプローブが開裂され、蛍光プローブが放出される。次に、放出された蛍光プローブは蛍光を発し、検出可能なシグナルを生成することができる。TaqMan(R)プローブを作製するための方法は、米国特許第5,210,015号及び同第5,487,972号に記載されている。
【0044】
分子指標プローブは当技術分野で周知であり、米国特許第6,150,097号、同第5,925,517号及び同第6,103,476号に記載されている。基本的に、分子指標は、ステムループ(ヘアピン)構造を形成することができるポリヌクレオチドプローブである。このループは、標的配列に相補的な配列を含有する1本鎖構造であり、このステムは通常、標的配列に無関係であり、2本鎖領域を形成するように自己ハイブリダイズする。標的配列に相補的であり、かつ、自己ハイブリダイズできるヌクレオチドもまた、ステム領域の一部も形成し得る。蛍光プローブ部分がステムの片方の腕に結合し、クエンチャー部分がもう一方の腕に結合する。ポリヌクレオチドがヘアピン形態を導入する場合、蛍光プローブ及びクエンチャーは近接近となり、従って蛍光プローブにより放射されるエネルギーがクエンチャーにより吸収され、熱として発され、結果として、蛍光プローブが内部消光される。その標的配列へポリヌクレオチドが結合する場合、蛍光プローブ及びクエンチャーが空間的に離され、蛍光プローブが蛍光を発し、検出可能なシグナルを生成することができる。
【0045】
本発明はさらに、蛍光プローブ及び高性能ダーククエンチャー(Black Hole Quenchers(BHQTM;Biosearch Technologies,Inc.,Novato,CA)など)と組み合わせた、線状プローブとしての、BS106特異的な遺伝子型非依存的ポリヌクレオチドの使用を想定する。当技術分野で公知のように、高消光能及びBHQTM色素のネイティブの蛍光の欠如により、一方の末端で蛍光プローブにより標識され、他方の末端でBHQTM色素により標識された線状プローブにおいて「ランダム−コイル」消光が起こるようになり、従って、プローブが溶液中にある場合、蛍光プローブが蛍光を発しなくなる。その標的配列の結合において、プローブが伸び、従って蛍光プローブ及びクエンチャーが空間的に離され、蛍光プローブが蛍光を発する。当業者にとって当然のことながらBHQTM色素はまた、分子指標又はTaqMan(R)プローブにおいてクエンチャー部分としても使用できる。
【0046】
本発明のポリヌクレオチドと一緒に使用するのに適切な蛍光プローブ及びクエンチャーを当業者は容易に決定することができる(Tgayiら、Nature Biotechnol.16:49−53(1998);Marrasら、Genet.Anal:Biomolec.Eng.14:151−156(1999)も参照のこと。)。例えばMolecular Probe(Eugene,OR)又はBiosearch Technologies,Inc.(Novato,CA)から、多くの蛍光プローブ及びクエンチャーが市販されている。本発明で使用できる蛍光プローブの例としては、以下に限定されないが、フルオレセイン及びフルオレセイン誘導体、例えば、FAM、VIC及びJOEなど、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS)、クマリン及びクマリン誘導体、ルシファーイエロー、NED、テキサスレッド、テトラメチルローダミン、テトラクロロ−6−カルボキシフルオロセイン、5カルボキシローダミン、シアニン色素などが挙げられる。クエンチャーとしては、以下に限定されないが、DABSYL、4’−(4−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)、4−ジメメチルアミノフェニルアゾフェニル4’−マレイミド(DABMI)、テトラメチルローダミン、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、BHQTM色素などが挙げられる。蛍光プローブ及びクエンチャーを核酸にカップリングする方法は、当技術分野で周知である。
【0047】
好ましくは、本発明のプローブは分子指標プローブである。当技術分野で公知のように、増幅反応を首尾よくモニタリング及び検出するために、分子指標プローブに対してある種の基準が合致する必要がある。従って、本発明は、自己相補領域とともに本発明のポリヌクレオチドを含有する分子指標プローブを提供する。本発明のポリヌクレオチドは、分子指標のループ領域を構成し得るか、又はループ領域及びステム領域の一部を構成し得る。従って、自己相補的ステム配列は、標的配列と無関係であるか、又は、標的配列に相補的な1以上のヌクレオチドを含有し得る。
【0048】
当技術分野で公知のように、分子指標プローブを使用して、リアルタイムで増幅反応の進行をモニタリングすることができる。PCRなどの増幅反応の経過の間、分子指標は、プローブに対するアニーリング温度でその標的配列と相互作用し、蛍光シグナルが生じる。増幅反応で生成される標的鎖数が増加するほど、標的に結合する分子指標の数が同時に増加し、蛍光シグナルの強度が強まる。
【0049】
最も好ましくは、本発明において使用するべき分子指標プローブは、配列番号5
【0050】
【化1】

で示される配列を有する。配列番号5で上記で示される太字の配列は、分子指標のステム形成を補助するために付加された非BS106cDNAコンセンサス配列である。下線を付した配列は、指標の全体の分子ステムを形成する。このプローブの重要な特性の1つは、このプローブがBS106遺伝子のイントロンに及び、これがゲノムDNAの検出を排除するか又は最小限に抑えることである。BS106標的配列の検出における使用のために、当業者にとって公知の常套的な技術を用いて、適切な蛍光プローブ及びクエンチャーで配列番号5を標識することができる。
【0051】
試験試料中のBS106標的配列を増幅及び検出するための方法
ある実施形態において、当技術分野で公知の増幅手段に従い、少なくとも2つのプライマーを増幅プライマーとして使用して、試験試料中のBS106標的配列を増幅する。具体的に、プライマーの一方は、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号2と少なくとも約80%同一であるセグメントを含有し、第二のプライマーは、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号3と少なくとも約80%同一であるセグメントを含む。以下に限定されないがPCR(米国特許第4,683,195号及び同第4,683,202号に記載。)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)などの当技術分野で公知の様々な増幅手段において、本明細書中に記載のプライマー配列を使用することができる。BS106標的配列がRNAであるため、BS106標的配列の増幅において逆転写段階が含まれるべきであることは当業者に理解されよう。rTthなどの逆転写酵素活性を有する酵素は、RNA鋳型からDNA配列を合成することができる能力についてよく知られている。逆転写PCR(RT PCR)は、当技術分野で周知であり、米国特許第5,310,652号及び同第5,322,770号(参照により本明細書中に組み込む。)に記載されており、また、適切な増幅手段として本発明での使用に対して想定される。さらに、当業者は、例えばSDAに対して、本発明のプライマーが改変される必要があり得るある種の増幅手段での使用を認識し、プライマーは、制限エンドヌクレアーゼに対する認識部位を構成する5’末端付近でのさらなるヌクレオチドを含有する。同様に、NASNAに対して、プライマーは、RNAポリメラーゼプロモーターを構成する5’末端付近でのさらなるヌクレオチドを含有する。このように改変されたポリヌクレオチドは本発明の範囲内とみなされる。
【0052】
従って、本発明の増幅方法は、一般に、(a)核酸増幅試薬と、少なくとも2個のプライマー(このプライマーの一方は、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号2と少なくとも約80%同一であるセグメントを含有し、第二のプライマーは、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号3と少なくとも約80%同一であるセグメントを含有する。)と、BS106標的配列を含有する疑いのある試験試料と、を含有する反応混合液を形成させ、(b)BS106標的ポリヌクレオチド配列の少なくとも1コピー(「増幅産物」又は「単位複製配列(amplicon(s))」と呼ばれる。)を生成させるための増幅条件にこの混合液を供する段階を含む。
【0053】
当然のことながら、上述の方法の段階(b)に必要とされる正確な増幅条件を当業者は容易に決定することができる。さらに、当業者にとって当然のことながら、BS106標的配列のさらなるコピーを生成させるために、温度サイクリング(thermal cycling)技術を用いて上述の方法の段階(b)を数回繰り返すことができる。
【0054】
当業者にとって公知の様々な方法により、増幅中又は増幅後の何れかで、上述のようにBS106標的配列の増幅により生成される増幅産物(又は単位複製配列)を検出することができる。増幅中の標的配列の増幅を検出するための方法は、米国特許第5,210,015号(参照により本明細書中に組み込む。)に記載されている。さらに、必ずしも必要ではないが、検出中に反応成分から増幅産物を分離することができる。
【0055】
ある態様において、当業者にとって公知の技術であるゲル電気泳動を用いて増幅産物を検出することができる。
【0056】
別の態様において、本発明のプローブを用いて増幅産物を検出することができる。例えば、BS106標的配列に特異的にハイブリダイズし、12から40ヌクレオチド長であり、配列番号4で表される配列と少なくとも約80%同一であるセグメントを含有するプローブをプライマーと共に反応混合液に添加し、上述の増幅条件に供することができる。それ故、増幅されたBS106標的配列を検出するためのこのような方法には、(a)プローブ及びBS106標的配列を含有するハイブリッドを形成させるために本発明のプローブの少なくとも1つをBS106標的配列にハイブリダイズさせ、(b)試験試料中のBS106標的配列の存在の指標としてのハイブリッドを検出する段階が含まれる。
【0057】
ハイブリッドを分離し検出するために使用できる微粒子及び標識を用いて、上記のように形成されたハイブリッドを検出することができる。市販のAbbott LCx(R)機器(Abbott Laboratories;Abbott Park,Ill)により使用されるプロトコルに従い、検出を行うことができる。
【0058】
さらに別の態様において、検出を促進するために、本発明のプライマー及び/又はプローブの一方又は両方において標識を組み込むことにより、ハイブリッドを検出することができる。それ故、プライマー及びプローブに結合する第一及び第二の特異的結合メンバーを使用して、微粒子にハイブリッドを固定化し、結合により微粒子の存在を検出することができる。
【0059】
あるいは、特異的結合メンバー及び直接検出可能な標識の組み合わせを使用して、ハイブリッドを検出することができる。例えば、特異的結合メンバーで標識されたプライマーを用いて、ハイブリッドにおいて特異的結合メンバーを導入することができる。直接検出可能な標識で標識されたプローブを用いて、直接検出可能な標識をハイブリッドに組み込むことができる。それ故、特異的結合メンバーを用いてハイブリッドを微粒子に固定化し、プローブ上の標識によって直接検出することができる。当然のことながら、当業者はその他の検出形態を選択できる。
【0060】
BS106標的配列のコピーの伸長を用意するためにプライマー配列を使用し、捕捉標識又は検出標識の何れかで標識する。このプローブ配列を使用して、プライマー配列により生成された配列とハイブリダイズさせ、通常はプライマー配列を含まない配列とハイブリダイズさせる。プライマー配列と同様に、捕捉標識又は検出標識の何れかでプローブ配列も標識されるが、ただし、プライマーを捕捉標識で標識する場合、プローブを検出標識で標識する(逆もまた同様)。検出標識は、既に定義した「標識」と同じ定義を有し、「捕捉標識」は通常、伸長産物及びこのような何らかの産物と結合したプローブを他の増幅反応物から分離するために使用する。(既に定義したような)特異的結合メンバーは、この目的に良く適している。また、この方法に従い使用されるプローブは、好ましくは、ハイブリダイゼーション条件下で伸長されないように、その3’末端がブロックされている。プローブの伸長を妨げるための方法は周知であり、当業者は選択できる。通常、プローブの3’末端にリン酸基を付加することは、プローブの伸長を妨げる目的に十分である。
【0061】
好ましい態様において、本発明の少なくとも1つのプローブ配列により、BS106標的配列の増幅後に、上述の増幅方法により生成した増幅産物を検出する。好ましくは、増幅産物を他の反応成分から分離しない。実際に、核酸増幅試薬、プライマー及び試験試料を含有する反応混合液中にプローブが含まれることもまた好ましい。それ故、増幅されたBS106標的配列を検出するための方法には、(a)プローブ及びBS106標的配列を含有するハイブリッドを形成させるために本発明の少なくとも1つのプローブをBS106標的配列にハイブリダイズさせ、(b)試験試料中の標的配列の存在の指標としてハイブリッドを検出する段階が含まれる。当技術分野で公知の常套的手段を使用することにより、ハイブリッドを検出することができる。好ましくは、プローブは、配列番号5で示される配列を有し、少なくとも1つの蛍光プローブ及び少なくとも1つのクエンチャーで標識されている。
【0062】
反応混合液の一部としてプローブを最初に添加する場合、増幅条件下に反応混合液を置く際、プローブのTを超える温度で標的配列のコピーを生成させるために、プローブ配列がプライマー配列よりも低い溶融温度を有するように、プライマー、プローブ及び増幅条件を選択する。このようなコピーの合成後、これらを変性させ、プローブとBS106標的配列の何れかのコピーとの間でハイブリッドが形成できるように混合液を冷却する。変性温度から、プローブが1本鎖コピーに結合する温度へと温度を低下させる際の温度低下速度は好ましくは非常に速いものであり(例えば、1分から5分未満)、特に、ポリメラーゼ活性を有する酵素がプライマー伸長に対して活性である温度範囲は素早く通り過ぎるものである。このような急冷では、プライマー/コピー配列ハイブリダイゼーション及び伸長よりもコピー配列/プローブハイブリダイゼーションが優先される。
【0063】
リアルタイムRT−PCRアッセイにおいて本発明のプライマーペア及びプローブセットを使用することができる。リアルタイムRT−PCRアッセイは、関心のある集団から遺伝子低発現の集団を区別するために定量し、カットオフをポジティブに設定できるという長所がある。リアルタイムRT−PCRアッセイは、BS106RNAのゲル検出よりも適している。本発明のプライマーペア及びプローブセットはまた、本発明よりも長い単位複製配列を通常生成させる当技術分野で公知のその他のプライマーペア及びプローブセットよりも適している。特にホルマリン固定組織から調製したRNAにおいて、試料処理中に細胞において起こるRNA変性のために、単位複製配列が150bpよりも長くなる場合、アッセイ感度が悪くなることが知られている。ホットスタート酵素を含有するRT−PCR増幅のマスターミックス液及びリアルタイムRT−PCR検出と本発明のプライマー及びプローブを組み合わせて、BS106の特異的検出及びRNA2コピーの感度を有するアッセイを得る。
【0064】
キット
試験試料中のBS106標的配列の検出を可能にするキットの一部として本発明のプライマー及びプローブを提供することができる。このようなキットを使用して、哺乳動物、好ましくはヒトにおける乳癌を検出又は同定することができる。ある実施形態において、このキットは、少なくとも2つのプライマー及び少なくとも1つのプローブを含有する。好ましくは、プライマーの1つは、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号2と少なくとも約80%同一であるセグメントを含有し、第二のプライマーは、15から40ヌクレオチド長を有し、配列番号3と少なくとも約80%同一であるセグメントを含有し、プローブは、12から40ヌクレオチド長を有し、配列番号4で表される配列と少なくとも約80%同一であるセグメントを含有する。別の実施形態において、このキットは、配列番号2及び3で示される配列を有するプライマー及び配列番号5で示される配列を有するプローブを含有する。
【0065】
このキットは、場合によっては、増幅試薬、反応成分及び/又は反応容器を含み得る。プライマー及び/又はプローブの1以上は、検出可能な標識又は1以上の蛍光プローブ及びクエンチャーを組み込み得るか、又はこのキットは、ポリヌクレオチドを標識するための試薬を含み得る。このキットの成分の1以上が凍結乾燥され得、このキットは、凍結乾燥成分の再構成に適切な試薬を含有し得る。このキットは、さらに、使用説明書を含有し得る。
【0066】
適用
本発明のプライマー及びプローブは、哺乳動物、好ましくはヒトの乳癌進行のリスクを有するかもしくはリスクにあるかを同定するために、臨床又は研究において適用することができる。末梢血液、リンパ節又は骨髄などの乳房の外部の乳房細胞の同定から、例えば、乳癌細胞が転移していることが示され得る。医師は、患者の乳癌の当てはまるステージを変更するためにこの情報を使用し得、従って、潜在的により的確な治療を行い得る。あるいは、医師は、現在の治療の効率を評価するために末梢血液をモニタリングし得、これにより、循環している乳房細胞が検出された場合には、より効果的な治療に早期に変更することができる。さらなる潜在用途において、疾患の再発をモニタリングするために、治療終了後、医師は定期的に乳癌患者を調べ得る。
【0067】
次の実施例は、本発明をさらに説明するために提供するものであり、本発明を限定するものではない。
【0068】
実施例
次の実施例は、本明細書中で提供するDNAオリゴマープライマー及びプローブを用いた、BS106の検出を示す。これらのDNAプライマー及びプローブは、配列番号2、配列番号3及び配列番号5として同定される。BS106コンセンサス配列の一部は、配列番号1と称する。本発明の内容に有用なヌクレオチド配列は以下のとおりである:
配列番号1:ACCATGAAGTTCTTAGCAGTCCTGGTACTCTTG
GGAGTTTCCATCTTTCTGGTCTCTGCCCAGAATCCGACAACAGCTGCTCCAGCTGACACGTATCCAGCTACTGGTCCTGCTGATGAT
配列番号2:5’ACC ATG AAG TTC TTA GCA GTC ’3
配列番号3:5’ATC ATC AGC AGG ACC AGT AGC ’3
配列番号5:FAM−GTGCTG CCCAGA ATCCGAC AACAGCAC−クエンチャー。
【0069】
次の実施例において、BS106 cDNAコンセンサス配列(配列番号13)に特異的な増幅プライマーとして配列番号2及び配列番号3を使用する。BS106増幅産物に対する内部ハイブリダイゼーションプロ―ブとして配列番号5を使用する。
【実施例1】
【0070】
BS106プライマー及びプローブの調製
A.BS106プライマー
分子指標RT−PCRにより、BS106遺伝子mRNA配列を増幅及び検出するために、標的特異的プライマー及びプローブを設計した。これらのプライマーを配列番号2及び配列番号3で示す。従来のヌクレオチドホスホロアミダイト化学を用いてプライマー配列を合成した。
【0071】
B.BS106プローブ
ハイブリダイゼーションにより、増幅されたBS106標的配列とハイブリダイズさせるために、検出プローブを設計した。ハイブリダイゼーション時に分子指標ステムが分離し、それにより、3’クエンチャーに対して近接近ではなくなるため、5’連結蛍光プローブが蛍光を発することができるようになる。プローブを配列番号5で示す。従来のヌクレオチドホスホロアミダイト化学を用いてプローブ配列を合成し、5’末端で6−FAM蛍光プローブ(Applied Biosystems、Foster City,California)により標識し、3’末端でクエンチャー、BHQ1(Biosource Technologies,Inc.、Nevada,California)により標識した。
【実施例2】
【0072】
BS106mRNAの調製
American Type Culture Collection(ATCC#HTB−27、Manassas,VA))より得たMDA−MB−361転移性乳腺腺癌細胞株からBS106RNAを抽出した。
【0073】
Qiagen(Valencia,California)からのRNeasy(R)単離キットを用いて、製造者の使用説明書に従い、MDA−MB−361細胞培養物からRNAを抽出し、精製した。260nmで読み取り、吸光係数40の吸収を用いて、分光光度分析により、精製したRNAを定量するか、又は、細胞ベースで定量した。検出の境界にあるRNAの2つのレベルの40複製において、実施例3Aで述べるようなリアルタイムRT−PCRを行うことにより、細胞あたりのコピー数を調べた。Poisson分布計算を使用して、コピー数を計算した(コピー数=−自然対数(ミスした複製数/複製総数)。
【実施例3】
【0074】
BS106Aの検出
A.BS106の増幅及び検出
cDNAの調製、増幅及び検出のための試薬が全て反応開始時に混合され、各反応が1個の密閉ウェル中で連続的に起こる、定量的1段階リアルタイムRT−PCR反応において、cDNAの調製、PCR増幅及びBS106の検出を行った。BS106精製RNA(実施例2において述べるように調製)を、20ng/μLポリA中5μLあたり10,000から2コピー(5μLあたり120から0.024MDA−MG−361細胞と同等)に連続的に希釈した。Applied Biosystems,Foster City,Californiaから購入した、冷却した光学96ウェル増幅プレートのウェルに希釈BS106RNA試料5μLを添加し、その後、1xQUANTITECTTMプローブRT−PCRマスターミックス及び0.5U QUANTITECTTMプローブRTミックス(Qiagen、Valencia、Californiaより得た。)、配列番号2 500nM、配列番号3 800nM及び配列番号5 150nMを含有する45μLマスターミックス溶液を添加した。2コピーレベルを除く試料の全てに対して、3回反復して試験を行い、2コピーレベルではこれを6回反復した。100ngのポリA(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)及び50ng Raji細胞株RNA(ATCC#CCL−86、Manassas VAより入手した細胞、実施例2で述べるように精製したRNA)をネガティブ対照として用いた。
【0075】
次に、96ウェル増幅プレートを光学密閉フィルムで密閉し、Sigma−Qiagen14−Cプレート遠心分離において1分間6,000rpmで遠心分離し、次いで、Applied BiosystemsからのABI PRISM 7000TM装置に載せた。ABI PRISM7000TMにて反応混合液をサイクルして、50℃にて30分間cDNAを調製し、94℃にて15分間RT酵素を不活性化し、DNAポリメラーゼを活性化させた。94℃にて15秒/63℃にて30秒を5サイクル及び94℃にて15秒/62℃にて30秒/47℃にて30秒を40サイクル行うことにより、反応混合液をすぐにPCR増幅した。
【0076】
各47℃サイクル段階中に蛍光読み取りを行い、FAM蛍光プローブ(閾値サイクル、C)の上昇に対応したサイクル数を決定するためにリアルタイム増幅プロットを生成させる機器により、反応産物を検出した。閾値サイクル及び標準偏差(SD)を表1で示し、これは、0.024MDA−MB−361細胞(2コピー)という少ない数からのBS106RNAの特異的検出を示す。
【0077】
【表1】

【0078】
さらに、上述の温度サイクリング段階後、試料の少量を取り出し、SYBR(R)Greenで染色した10%ポリアクリルアミドゲル上で視覚化した。このゲルから、予想される123塩基対の産物が示された。
【0079】
B.RNAからのBS106検出感度
MDA−MB−361細胞株から精製したRNA(実施例2に記載のように調製。)を20ng/μLポリA中5μLあたり10,000から2コピーまで(5μLあたり120から0.024MDA−MG−361細胞と同等)連続的に希釈し、標準曲線試料として使用した。実施例2に記載のように、Poisson分布実験により細胞あたりのBS106のコピー数を予め調べた。Raji細胞株RNA(実施例3Aに記載)及びRNAse/DNAse不含水で、上記の100コピー及び10コピー標準曲線試料の一定分量をさらに希釈して、50ng Raji(バーキットリンパ腫)ネガティブ対照RNA存在下の10コピー、5コピー及び2コピーのBS106 RNA「未知」試料を調製した。試料の5μLを実施例3に記載のようなマスターミックス溶液45μLに添加した。10,000から10コピー標準曲線試料(10倍希釈)、ネガティブ対照試料、2コピー標準曲線試料、10コピー標準曲線試料、5コピー標準曲線試料及び2コピー未知試料を、それぞれ3、3、6、5、5及び8回反復して行った。実施例3Aで上述したように、リアルタイムRT−PCRを行った。
【0080】
このアッセイは、標準曲線値により求め、ABI PRISM 7000TMソフトウェアバージョン1.1により計算したところ、103.7%のPCR効率及び0.994のRを有する。この実験及び標準偏差からの平均C及び定量値(ABI PRISM 7000TMソフトウェアにより定量)を表2で示すが、これは、50ngRNAのバックグラウンドでのBS106RNA 2コピーという少量からのBS106の検出を示す。従って、これらのプライマー及びプローブを用いて、この方法は、非特異的RNA存在下で非常に低いレベルのBS106RNAを検出することができ、これは、循環腫瘍細胞が低いレベルで発生し、常にバックグランド細胞存在下にあることから、臨床において重要であり得る。
【0081】
【表2】

【実施例4】
【0082】
複数のプライマー/プローブセットの比較
配列番号2、配列番号3及び配列番号5及び表3で挙げる配列ペア間で比較を行った。プライマーペア1、2及び3に対する100及び1 MDA−MB−361細胞試料/反応に対して、SYBR(R)Greenで染色した4%アガロースゲル上でBS106特異的PCR産物を前もって観察したが、プライマーペア4に対してはPCR産物は視覚化されなかった。従って、リアルタイムRT−PCRにおいて指標プローブを用いて、感度及び特異性について1から3をさらに評価した。
【0083】
実施例2で述べるような精製したMDA−MB−361RNAを50から0.5細胞/反応(20ngポリA中)(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)まで、10倍連続希釈した。Applied Biosystems,Foster City,Californiaから購入した、冷却した光学96ウェル増幅プレート中のウェルに、希釈したBS106RNA試料5μLを添加し、その後、1xPROMEGA AccessTMRT−PCRマスターミックス、2.5mM MgSO、200μM dNTP、0.1U AMV RT酵素及び0.1U Tfl DNAポリメラーゼ(全てPromega,Madison,WLより入手)、200nMの各フォワード/リバースプライマー及び300nMの指標プローブ(表3に挙げる各プライマー/プローブペア1、2及び3より)を含有する45μLマスターミックス溶液を添加した。ネガティブ対照として10ngポリA及び50ngヒトゲノムDNA(BD Biosciences/Clontech、Palo Alto,CA)を用いて2回反復して試験を行った。
【0084】
【表3】

【0085】
配列番号2:5’ ACC ATG AAG TTC TTA GCA GTC ’3
配列番号3:5’ ATC ATC AGC AGG ACC AGT AGC ’3
配列番号5:FAM−GTGCTG CCCAGA ATCCGAC AACAGCAC−クエンチャー
配列番号6:5’ GCC CAG AAT CCG ACA ACA ’3
配列番号7:FAM−CGCGTG TGCTCC AGCTGACACGTATC CACGCG−クエンチャー
配列番号8:5’ TCT ACC ACT GCT CGT AAA GAC ’3
配列番号9:5’ CTC AGG GAC ACA CTC TAC CAT ’3
配列番号10:FAM−GCGTG CAAATGGG TT GGGGATCT CACGC−クエンチャー
配列番号11:5’ TGC TTC TAC CAC TGC TCG TAA A 3’
配列番号12:5’ CCA TCT CAG GGA CAC ACT CTA CCA T ’3
【0086】
次に96ウェル増幅プレートを光学密閉フィルムで密閉し、Sigma−Qiagen14−Cプレート遠心分離において1分間6,000rpmで遠心分離し、次いで、Applied BiosystemsからのABI PRISM 7000TM装置に載せた。ABI PRISM7000TMで、48℃にて45分間、cDNAを調製し、95℃にて1分間cDNAを溶融させ、反応混合液をサイクルした。94℃にて15秒/63℃にて30秒を5サイクル及び94℃にて15秒/62℃にて30秒/45℃にて30秒を40サイクル行うことにより、反応混合液をすぐにPCR増幅させた。各45℃サイクル段階中に蛍光読み取りを行う機器を用いて、実施例3Aに記載のようにして反応産物を検出した。
【0087】
この実験からのデータを表4で示し、これは、結果としてポリA又はヒト胎盤DNAの何れかに対して偽陽性であり、従って特異性が失われていることから、プライマー/プローブペア2及び3の使用がこのアッセイに有用ではないことを示す。
【0088】
【表4】

【0089】
本発明が目的を遂行し、言及する結果及び長所ならびにそこで特有の結果及び長所を得るのによく適合させられることを当業者は容易に認めよう。本明細書中に記載の、分子複合体及び方法、手段、治療、分子、具体的化合物は、目下の好ましい実施形態であり、典型であり、本発明の範囲を限定するものとして意図されるものではない。当業者にとって当然のことながら、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書中で開示する本発明に対して様々な置換及び変更がなされ得る。
【0090】
本明細書中で言及する全ての特許及び刊行物は、本発明が関連する当業者のレベルを示すものである。全ての特許及び刊行物は、各々の参考文献が参考により組み込まれているのと同じように、具体的に、及び個別に、本明細書中に参考により組み込まれる。
【0091】
説明として本明細書中に記載される本発明を、本明細書中で具体的に開示しない何らかの1又は複数の要素、1又は複数の制限なく、適切に実施し得る。従って、例えば、「含む」、「基本的に〜からなる」及び「からなる」という何れの用語も、本明細書中のどの場合にも、他の2つの用語の何れかで置き換え得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
15から40ヌクレオチド長を有し、ならびに配列番号2と少なくとも約80%同一であるセグメントを含む配列を有するプライマー及びその相補体。
【請求項2】
15から40ヌクレオチド長を有し、ならびに配列番号3と少なくとも約80%同一であるセグメントを含む配列を有するプライマー及びその相補体。
【請求項3】
12から40ヌクレオチド長を有し、ならびに配列番号4と少なくとも約80%同一であるセグメントを含む配列を有するプローブ及びその相補体。
【請求項4】
15から40ヌクレオチド長を有し、ならびに配列番号2と少なくとも約80%同一であるセグメントを含む配列を有するプライマー及び15から40ヌクレオチド長を有し、ならびに配列番号3と少なくとも約80%同一であるセグメントを含む配列を有するプライマーを含有する、組成物。
【請求項5】
一つのプライマーが配列番号2からなる配列を有し、及び一つのプライマーが配列番号3からなる配列を有する、請求項4の組成物。
【請求項6】
15から40ヌクレオチド長を有し、ならびに配列番号2と少なくとも約80%同一であるセグメントを含む配列を有するプライマー、15から40ヌクレオチド長を有し、ならびに配列番号3と少なくとも80%同一であるセグメントを含む配列を有するプライマー及び12から40ヌクレオチド長を有し、ならびに配列番号4と少なくとも約80%同一であるセグメントを含む配列を有するプローブを含有する、BS106標的配列を検出するための組成物。
【請求項7】
一つのプライマーが配列番号2からなる配列を有し、及び一つのプライマーが配列番号3からなる配列を有し、及びプローブが配列番号5からなる配列を有する、請求項6の組成物。
【請求項8】
試験試料中でBS106標的配列を検出するための方法であって、
(a)試験試料からmRNAを抽出すること、
(b)抽出したmRNA、逆転写酵素活性を有する酵素、核酸増幅試薬、プライマーのペア及びプローブを含有する反応混合液を形成すること(ここで、プライマーの一方が、15から40ヌクレオチド長を有し、ならびに配列番号2と少なくとも約80%同一であるセグメントを含む配列を有し、及び他方のプライマーが、15から40ヌクレオチド長を有し、ならびに配列番号3と少なくとも約80%同一であるセグメントを含む配列を有し、及びプローブが、12から40ヌクレオチド長を有し、ならびに配列番4と少なくとも約80%同一である長さを有するセグメントを含む配列を有し、及び検出可能な標識で標識されている。)、
(c)mRNAからcDNAを生成させること、
(d)増幅産物を生成させ、ハイブリッドを形成させるためにその増幅産物にプローブをハイブリダイズさせるのに必要な増幅条件に反応混合液を供すること、及び
(e)試験試料中でのBS106標的配列の存在の指標としてハイブリッドの存在を検出すること
を含む方法。
【請求項9】
プライマーの1つが配列番号2からなる配列を有し、及び他方のプライマーが配列番号3からなる配列を有し、及びプローブが配列番号5からなる配列を有する、請求項8の方法。
【請求項10】
少なくとも1個の蛍光プローブ及び少なくとも1個のクエンチャーでプローブが標識される、請求項9の方法。
【請求項11】
(a)核酸増幅試薬と、請求項4の組成物と、及びBS106標的配列を含有する疑いのある試験試料と、を含む反応混合液を形成させる段階、及び
(b)標的配列に相補的なポリヌクレオチド配列の少なくとも1コピーを生成させるための増幅条件に混合液を供する段階、及び
(c)ゲル電気泳動を用いてポリヌクレオチド配列を検出する段階
を含む、BS106標的配列を検出する方法。
【請求項12】
(a)核酸増幅試薬と、請求項4の組成物及びBS106標的配列を含有する疑いのある試験試料と、を含む反応混合液を形成させる段階、
(b)混合液を増幅条件に供して増幅産物を生成させる段階、
(c)12から40ヌクレオチド長を有し、ならびに配列番号4と少なくとも約80%同一であるセグメントを含有する配列を有するプローブを提供する段階、
(d)増幅産物にプローブをハイブリダイズさせてハイブリッドを形成させる段階、及び
(e)試験試料中のBS106標的配列の存在の指標としてハイブリッドを検出する段階
を含む、試験試料中でBS106標的配列を検出するための方法。
【請求項13】
ハイブリッドを検出する前に、微粒子にハイブリッドを固定化する段階をさらに含む、請求項12の方法。
【請求項14】
前記検出段階が、測定可能なシグナルを生じさせることができる検出可能な標識を使用することを含む、請求項12の方法。
【請求項15】
プローブが、測定可能なシグナルを生じさせることができる検出可能な標識を含む、請求項12の方法。
【請求項16】
プローブが、配列番号5の配列を有し、ならびに少なくとも1個の蛍光プローブ及び少なくとも1個のクエンチャーで標識されている、請求項12の方法。
【請求項17】
(a)核酸増幅試薬と、請求項6の組成物と、及びBS106標的配列を含有する疑いのある試験試料と、を含む反応混合液を形成させる段階、
(b)混合液を増幅条件に供して増幅産物を生成させ、ならびに増幅産物にプローブをハイブリダイズさせてハイブリッドを形成する段階、及び
(c)試験試料中のBS106標的配列の存在の指標としてハイブリッドを検出する
段階を含む、試験試料中でBS106標的配列を検出するための方法。
【請求項18】
ハイブリッドを検出する前に、微粒子にハイブリッドを固定化する段階をさらに含む、請求項17の方法。
【請求項19】
前記検出段階が、測定可能なシグナルを生じさせることができる検出可能な標識を使用することを含む、請求項17の方法。
【請求項20】
プローブが、測定可能なシグナルを生じさせることができる検出可能な標識を含む、請求項17の方法。
【請求項21】
プローブが、配列番号5からなる配列を有し、ならびに少なくとも1個の蛍光プローブ及び少なくとも1個のクエンチャーで標識されている、請求項17の方法。
【請求項22】
(a)15から40ヌクレオチド長を有し、ならびに配列番号2と少なくとも約80%同一であるセグメントを含有する配列を有するプライマー及び、15から40ヌクレオチド長を有し、ならびに配列番号3と少なくとも約80%同一であるセグメントを含有するプライマー、及び
(b)増幅試薬
を含む、BS106標的配列を増幅するためのキット。
【請求項23】
プライマーが配列番号2及び配列番号3からなる配列を有する、請求項22のキット。
【請求項24】
12から40ヌクレオチド長を有し、ならびに配列番号4と少なくとも約80%同一であるセグメントを含有する配列を有するプローブをさらに含有する、請求項22のキット。
【請求項25】
配列番号5からなる配列を有するプローブをさらに含有する、請求項22のキット。

【公表番号】特表2008−517626(P2008−517626A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538986(P2007−538986)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/037474
【国際公開番号】WO2006/049868
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】