乳房連鎖球菌のソルターゼ固定化表面タンパク質を含む組成物
本発明は、1つ以上の乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化表面タンパク質またはそれらの免疫原性部分を含む免疫原性組成物であって、対象に投与されたときに免疫応答を引き起こすことができる組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳房連鎖球菌(Streptococcus uberis)に対する免疫応答の誘導に使用するための免疫原性組成物、特に、防御免疫応答を引き起こすことができる免疫原性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
乳房連鎖球菌(S. uberis)は、現在、UKにおいて全臨床型乳腺炎事象の約20−30%に関与しており、世界中で同様の発生率で起こる。乳腺炎は、世界中で最も経済的に重要な乳牛の感染病である。臨床型乳腺炎による年間損失は、UKにおいて約1.7億ポンドおよびUSAにおいて15−20億ドルと概算されている。これらの損失は、ミルク生産の減少、処置の関連コストならびに持続的および反復的に感染するウシの大量処分に起因し得る。乳腺炎を引き起こす微生物は、接触感染性伝達経路を示すもの、例えば、黄色ブドウ球菌およびB群連鎖球菌(Streptococcus agalactiae)、ならびにさらに環境保有宿主から頻繁に乳房に感染するもの、例えば、大腸菌および乳房連鎖球菌に分けることができる。改善された搾乳実施、搾乳後の乳頭消毒およびそれぞれの泌乳後の日常の乳房内抗菌処置に基づいた、過去20年にわたる種々の抑制対策の適用は、単独で接触感染性伝達経路を有する病原体に対して有効であることは証明されているが、環境保有宿主の乳腺への感染の発症に対して、たとえあったとしても、ほとんど影響を与えていない。乳房連鎖球菌に起因するウシ乳腺炎の抑制の失敗は、主に、感染の原因についての不十分な情報に起因する。
【0003】
乳腺(乳房)の炎症を引き起こすウシ乳腺炎は、通常、細菌による乳腺内感染の結果として生じる。乳腺炎の徴候は、宿主および侵入病原体における因子にしたがって変化し、乳腺内感染は、無症候性疾患または症候性疾患をもたらし得る。無症候性乳腺炎は、本質的に、疾患の明らかな徴候を示さない。症候性疾患と関連する感染は、影響を受けた腺における疼痛および膨張を伴うミルク中の可視的な異常(タンパク質凝集体または凝固)から、漿液中の凝集タンパク質のみからなる分泌物の生産に及ぶことができる。重症例では、全身的な徴候、例えば、体温の上昇および食欲喪失が起こる場合があり、菌血症、敗血症を発症させて、動物の死に至ることもある。
【0004】
感染していない乳腺由来のミルクは、一般的に150,000細胞/ml以下の、マクロファージ、好中球およびリンパ球を含む白血球を含む。感染は、通常、感染した乳腺の乳房区(quarter)およびミルクへの好中球の流入により特徴付けられる局所的炎症性応答をもたらす。得られるミルク細胞数は、乳腺の感染の代替的測定値ならびに乳質および乳房健康の測定値として国際的に使用される。無症候的に感染した乳房区由来のミルクは、通常、250,000細胞/mlを超える細胞数を有するが、この数字は広範に変動し得る。症候的に感染した乳房区由来のミルクは、通常、2,000,000細胞/mlを超える細胞を含有する。細菌および/またはそれらの産物と分泌における多数の好中球との間の相互作用は、乳腺炎の特徴であるミルク生産の減少率、分泌物の分解および広範囲の炎症性変化の誘導の根本的な主要原因であると考えられている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の1つの目的は、乳房連鎖球菌に対する防御免疫応答を引き起こし、それにより乳腺炎の発症を予防するか、または減少させるために使用することができる、1つ以上の組成物を提供することである。
【0006】
第1の局面において、本発明は、1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質またはそれらの免疫原性部分を含む免疫原性組成物であって、対象に投与されたときに免疫応答を引き起こすことができる組成物を提供する。
【0007】
好ましくは、1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、ソルターゼ固定化タンパク質またはその免疫原性部分である。
【0008】
乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質は、野生型乳房連鎖球菌において、ソルターゼ酵素の作用により細菌の表面に固定されているあらゆるタンパク質を示す。
【0009】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、タンパク質SUB0145、SUB1095およびSUB1154、または上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む群から選択され得る。
【0010】
免疫原性組成物は、2つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質またはその免疫原性部分を含み得る。
【0011】
2つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または2つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、タンパク質SUB0145、SUB1095およびSUB1154、または上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む群から選択され得る。
【0012】
免疫原性組成物は、タンパク質SUB0145、SUB1095およびSUB1154、または上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含み得る。
【0013】
免疫原性組成物は、タンパク質SUB1095およびSUB1154、または上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含み得る。
【0014】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、タンパク質SUB0135、SUB0145、SUB0207、SUB0826、SUB0888、SUB1095、SUB1154、SUB1370、SUB1730およびSUB0241、または上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む群から選択され得る。
【0015】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、タンパク質SUB0135、SUB0207、SUB0826、SUB0888、SUB1095、SUB1154、SUB1370、SUB1730およびSUB0241、または上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む群から選択され得る。
【0016】
相同性パーセントへの言及は、2つのアラインされた配列間の同一性パーセントに関係する。同一性パーセントは、2つのタンパク質配列が最大に一致するようにアラインされ、逆位および転座が明らかにされるとき、2つのタンパク質において同一の残基を示す。好ましくは、同一性パーセントは、機能に影響しないアラインされた配列間のあらゆる保存的相違点を無視する。アラインされた配列間の同一性パーセントは、よく確立されているツール(例えば、BLAST algorithm - Basic Local Alignment Search Tool; Altschul et al., (1990) J Mol Biol. 215:403-10)を使用することにより、確立することができる。
【0017】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0135である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0135ではない。
【0018】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0145である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0145ではない。
【0019】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0207である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0207ではない。
【0020】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0826である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0826ではない。
【0021】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0888である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0888ではない。
【0022】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1095である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1095ではない。
【0023】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1154である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1154ではない。
【0024】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1370である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1370ではない。
【0025】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1730である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1730ではない。
【0026】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0241である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0241ではない。
【0027】
他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0164ではない。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0348ではない。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1739ではない。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0206ではない。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0337ではない。
【0028】
タンパク質の免疫原性部分は、免疫応答を引き起こすことができる大型タンパク質の一部を示す。好ましくは、引き起こされる免疫応答は、タンパク質の一部およびタンパク質の全体を認識する。好ましくは、免疫原性部分は、全長タンパク質由来の少なくとも1つのエピトープを含む。
【0029】
免疫原性組成物は、対象に投与されたときに組成物中の抗原に対する免疫応答を引き起こすことができる組成物である。好ましくは、引き起こされる免疫応答は、防御的である。好ましくは、対象は、哺乳動物、さらに好ましくは反芻動物、例えばウシ、ヒツジまたはヤギである。本発明の免疫原性組成物中の抗原は、ソルターゼ酵素により乳房連鎖球菌の表面に固定されている1つ以上のタンパク質であり得る。
【0030】
好ましくは、本発明の組成物により引き起こされる免疫応答は、組成物中の抗原に対するものであり、免疫原性組成物が投与された対象において乳房連鎖球菌による感染を予防するか、または減少させるように作用する。該免疫応答は、乳房連鎖球菌を認識して破壊し得る。あるいは、またはさらに、引き起こされる免疫応答は、乳房連鎖球菌の複製を妨げるか、または防止し得る。あるいは、またはさらに、引き起こされる免疫応答は、対象における乳房連鎖球菌誘発疾患、例えば、乳腺炎を妨げるか、または防止し得る。好ましくは、該組成物により引き起こされる免疫応答は、組成物中のタンパク質が由来する株以外の乳房連鎖球菌株に対するものであることもできる。
【0031】
生じる免疫応答は、細胞性および/または抗体介在性免疫応答であり得る。通常、免疫応答は、組成物中の1つ以上の免疫原性タンパク質に対する、抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞および/または細胞毒性T細胞の生産のうち1つ以上を含むが、これらに限定されない。
【0032】
該組成物は、また、1つ以上の乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質に加えて、さらに1つ以上の抗原を含み得る。さらなる抗原は、また、由来する病原体に対する免疫応答を引き起こすことができ得る。さらなる抗原は、乳房連鎖球菌由来であり得るか、または、異なる病原体由来であり得る。
【0033】
該組成物は、対象に投与されたときに防御免疫応答を引き起こす/生じるために使用され得る。該防御免疫応答は、対象感染時に乳房連鎖球菌の死を引き起こすか、または、対象における乳房連鎖球菌の複製、および/または疾患の誘発を防止または阻止し得る。
【0034】
該組成物は、乳房連鎖球菌に対する予防または治療ワクチンとして使用され得る。
【0035】
さらなる局面において、本発明は、1つ以上の乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質またはそれらの部分を、薬学的に許容される担体または賦形剤と共に含む医薬組成物を提供する。
【0036】
好ましくは、該医薬組成物は、本発明のあらゆる局面における組成物を含む。
【0037】
好ましくは、該医薬組成物は、乳房連鎖球菌に対する防御免疫応答を生じることができる。
【0038】
本明細書において使用される「防御免疫応答を生じる」なる表現は、組成物が投与される宿主生物、例えば、ウシにおいて防御応答を産生することができることを意味する。好ましくは、防御免疫応答は、乳房連鎖球菌による続発性感染に対して防御する。該防御免疫応答は、乳房連鎖球菌の作用機序に影響することによって乳房連鎖球菌の複製を減少させることにより、感染のレベルを排除させるか、または減少させ得る。好ましくは、防御免疫応答は、乳房連鎖球菌に起因する疾患を減少させるか、または予防する。
【0039】
医薬組成物中で使用するために適当な許容される賦形剤および担体は、当業者によく知られている。これらは、固体または液体担体を含み得る。適当な液体担体は、水および塩水を含む。組成物のタンパク質は、エマルジョンに製剤化され得るか、または生分解性ミクロスフェアまたはリポソームに製剤化され得る。
【0040】
該組成物はさらにアジュバントを含み得る。適当なアジュバントは、当業者によく知られており、フロイント不完全アジュバント(動物において使用するため)および金属塩、例えば、アルミニウムまたはカルシウム塩を含み得る。
【0041】
該組成物は、また、組成物のコンシステンシー(consistency)を調節するための、および/または組成物からのタンパク質の放出を調節するためのポリマーまたは他の剤を含み得る。
【0042】
該組成物は、また、希釈剤のような他の剤を含み得、水、塩水、グリセロールまたは他の適当なアルコールなど、湿潤剤または乳化剤、緩衝剤、増粘剤、例えばセルロースまたはセルロース誘導体、保存剤、界面活性剤、抗菌剤などを含み得る。
【0043】
好ましくは、組成物中の活性成分は、50%を越える純度、通常80%を越える純度、しばしば90%を越える純度、さらに好ましくは95%、98%または99%を越える純度である。100%の純度、例えば、約99.5%の純度または約99.9%の純度に達する活性成分が、非常にしばしば使用される。
【0044】
本発明の組成物は、乳房連鎖球菌に起因する感染に対するワクチンとして使用され得る。該ワクチンは、乳房連鎖球菌への暴露の危険性がある動物へ予防的に、および/または、すでに乳房連鎖球菌に暴露された動物へ治療的に投与され得る。
【0045】
好ましくは、該組成物がワクチンとして使用されるとき、該組成物は、免疫学的に有効量の抗原(乳房連鎖球菌タンパク質からなる)を含む。抗原の「免疫学的に有効量」は、個体に投与されるとき、単回投与または一連の投与のいずれかにおいて、乳房連鎖球菌による感染の処置または予防に有効な量である。該量は、処置される個体の健康および身体状態ならびに抗原に依存して変化し得る。該量は、日常の試験により決定することができる比較的広い範囲内であると予期される。
【0046】
組成物の投与経路は、組成物中のタンパク質の製剤化に依存して変化し得る。該組成物は、筋肉内、皮内、皮下、腹腔内、静脈内または乳房内に投与されるように調整され得る。あるいは、該組成物は、例えば、鼻腔内による非経腸的、経口的、経口内、吸入的、表皮的、経皮的、局所的、膣内または経直腸投与的に投与されるように調整され得る。
【0047】
該組成物は、単回投与または複数回投与スケジュールの一部として投与されるように調整され得る。複数回投与は、一次免疫後の1回以上の追加免疫として投与され得る。一次免疫および追加免疫間の適当なタイミングは、日常的に決定することができる。
【0048】
本発明の組成物は、対象に投与後に、血清殺菌性抗体応答を誘導することができ得る。これらの応答は、好都合にはマウスにおいて測定され、該結果は、ワクチン有効性の標準指標である。
【0049】
本発明の組成物は、また、あるいは、必ずしも細菌を破壊することなく、乳房連鎖球菌による感染に対して防御するために、宿主細胞上にタンパク質をもたらす免疫応答を引き起こすことができ得る。
【0050】
さらなる局面において、本発明は、免疫応答を引き起こすための薬物の製造における1つ以上の乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質の使用を提供する。該薬物は、乳房連鎖球菌に対する対象の予防または治療ワクチンのために使用され得る。該薬物は、予防または治療ワクチンであり得る。
【0051】
さらなる局面において、本発明は、本発明の任意の他の局面の組成物をヒトまたは非ヒト動物に投与することを含む、ヒトまたは非ヒト動物、好ましくはウシを乳房連鎖球菌による感染の影響から防御するための方法を提供する。
【0052】
他の局面において、本発明は、本発明の組成物をヒトまたは非ヒト動物に投与することを含む、ヒトまたは非ヒト動物、好ましくはウシにおける免疫応答を増強するための方法を提供する。該免疫応答は、好ましくは防御的である。該方法は、すでに免疫(primed)されている対象における追加応答を増強させ得る。該免疫応答は、予防または治療的であり得る。
【0053】
本発明の使用、方法および組成物は、好ましくは乳房連鎖球菌に起因する疾患の予防および/または処置用である。
【0054】
当業者は、上記の好ましいあらゆる特性が、本発明のあらゆる局面に適用することができることを認識すべきである。
【0055】
本発明の好ましい態様は、今回、図面および実施例において、単なる例示のために記載している。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1A、BおよびCは、乳牛における野生型乳房連鎖球菌0140Jおよび乳房連鎖球菌Srt変異体での抗原投与後の細菌単離、体細胞数および臨床応答の結果を示す。図1(A)は、抗原投与後の乳房連鎖球菌の細菌回収を示す。データは、株0140J(四角;n=4)またはSrtA変異体(三角;n=8)のいずれかで抗原投与された動物のミルクから得られた細菌数の幾何平均として示される。図1(B)は、乳房連鎖球菌の野生型およびSrt変異体での抗原投与後の炎症性応答を説明する。データは、株0140J(四角;n=4)またはSrtA変異体(三角;n=8)のいずれかで抗原投与された動物のミルクから得られた体細胞数の幾何平均として示される。図1(C)は、乳房連鎖球菌の野生型およびSrt変異体での抗原投与後の臨床的発現からの組合せ臨床スコアを説明する。データは、株0140J(四角;n=4)またはSrtA変異体(三角;n=8)のいずれかで図2で概説されているとおり、乳房区の外観およびミルクの外観に関して得られた臨床スコアの平均により示される。
【0057】
【図2】図2は、乳房連鎖球菌での感染に対する臨床応答の発現を表の形式で説明する。全ての乳房区およびミルクサンプルを、抗原投与後のそれぞれのミルクでこれらの基準に対して分析した。
【0058】
【図3】図3は、乳房連鎖球菌ゲノムのバイオインフォマティクスにより見出された、ソルターゼにより固定される可能性のあったタンパク質を表の形式で説明する。乳房連鎖球菌のゲノムを、推定ソルターゼ固定化タンパク質に関してLPXXGモチーフを使用して探索した。同定されたタンパク質の一覧は、C−末端に向かってモチーフ、すなわちLPXXGの状況および位置、次にC−末端位置に疎水性領域および荷電残基ならびにN−末端に認識できる分泌シグナルペプチドの存在を使用することにより精密化した。
【0059】
【図4A】図4Aは、THB培地において培養された乳房連鎖球菌0140Jの細胞壁抽出物において同定されたソルターゼ固定化タンパク質を記載する。a乳房連鎖球菌0140Jのゲノム配列(Ward et al 2009)における遺伝子およびタンパク質注釈、bWellcome Trust Sanger InstituteのArtemisデータベース(http://www.sanger.ac.uk/)から得られるタンパク質前駆体に対する理論分子量値、cそれぞれのタンパク質に対する特異的なペプチドヒット数、d実験的に検出されたペプチドにより包含されるタンパク質配列のパーセント、eSrtA変異体の細胞壁画分において同定された2つのペプチド。
【0060】
【図4B】図4Bは、BHI培地において培養された乳房連鎖球菌0140Jの細胞壁抽出物において同定されたソルターゼ固定化タンパク質を記載する。a乳房連鎖球菌0140Jのゲノム配列(Ward et al 2009)における遺伝子およびタンパク質注釈、bWellcome Trust Sanger InstituteのArtemisデータベース(http://www.sanger.ac.uk/)から得られるタンパク質前駆体に対する理論分子量値、cそれぞれのタンパク質に対する特異的なペプチドヒット数、d実験的に検出されたペプチドにより包含されるタンパク質配列のパーセント、eSrtA変異体の細胞壁画分において同定された4つのペプチド。
【0061】
【図5】図5Aおよび5Bは、乳房連鎖球菌0140JおよびsrtA変異体の抽出物からのSub1154およびSub1370の同定を示す。図5A−Sub1154に対するウサギ抗血清を、0140J(レーン2)およびSrtA変異体(レーン3)由来のタンパク質界面活性剤抽出物、0140J(レーン4)、SrtA変異体(レーン5)およびSub1154変異体(レーン6)由来の濃縮され沈殿した媒体を免疫ブロット法で探索するために使用した。分子量標準はレーン1に示されている。図5B−Sub1370に対するウサギ抗血清を、0140J(レーン1)およびSrtA変異体(レーン2)由来のタンパク質界面活性剤抽出物、0140J(レーン3)、SrtA変異体(レーン4)およびSub1370変異体(レーン5)由来の濃縮され沈殿した媒体を免疫ブロット法で探索するために使用した。分子量標準はレーン6に示されている。
【0062】
【図6】図6Aから6Oは、乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質のアミノ酸配列である。
【図6A】図6AはSUB1370の配列(配列番号:1)(亜鉛カルボキシペプチダーゼ)である。
【図6B】図6BはSUB0145の配列(配列番号:2)(ラクトフェリン結合タンパク質)である。
【図6C】図6CはSUB0135の配列(配列番号:3)(フルクタンベータフルクトシダーゼ前駆体)である。
【図6D】図6DはSUB1730の配列(配列番号:4)である。図6EはSUB0888の配列(配列番号:5)である。
【図6F】図6FはSUB0207の配列(配列番号:6)である。
【図6G】図6GはSUB1154の配列(配列番号:7)(スブチリン様セリンプロテアーゼ)である。
【図6H】図6HはSUB1095の配列(配列番号:8)(コラーゲン様タンパク質)である。
【図6I】図6IはSUB0826の配列(配列番号:9)(推定表面固定スブチラーゼ)である。
【図6J】図6JはSUB0164の配列(配列番号:10)(推定短縮表面固定フィブロネクチン結合タンパク質)(推定偽遺伝子によってコードされるが)である。
【図6K】図6KはSUB0348の配列(配列番号:11)(推定コラーゲン様タンパク質の残存物)(偽遺伝子によってコードされるが)である。
【図6L】図6LはSUB1739の配列(配列番号:12)(推定表面固定化タンパク質)(偽遺伝子によってコードされるが)である。
【図6M】図6MはSUB0206の配列(配列番号:13)(未知の機能の推定排出タンパク質)である。
【図6N】図6NはSUB0241の配列(配列番号:14)(未知の機能の推定表面固定化タンパク質)である。
【図6O】図6OはSUB0337の配列(配列番号:15)(推定表面存在グルタミン結合タンパク質)である。
【0063】
【図7】図7は、野生型(0140J)およびsub0145、sub1095またはsub1154を欠いている弱毒変異体株での抗原投与後の細菌コロニー形成を示す。データは、実験的抗原投与後にそれぞれの搾乳で得られるミルクサンプルにおいて検出されるLog10cfu/mlの幾何平均として示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下に示されているデータは、ソルターゼにより乳房連鎖球菌の表面に固定されているタンパク質であるトランスアミダーゼが、毒性において重要であることを証明し、さらに、いくつかのこのようなタンパク質(例えば、sub1095、sub1154およびsub0145)が毒性に関して必須であり、したがって、この細菌において疾患を引き起こすために機能的に必要であることを明らかにする。タンパク質は良好な免疫原である。抗体の形態におけるこれらのタンパク質に対する免疫応答は、これらの機能を除去する可能性があり、したがって、同定されたタンパク質は、乳房連鎖球菌に起因する感染または疾患を減少または予防するために意図される免疫原性組成物内の有用な包含物である。
【実施例】
【0065】
実施例1:乳房連鎖球菌のSrtA変異体の生産および評価
方法および材料
細菌株および試薬
最初にUKにおけるウシ乳腺炎の臨床例から単離された乳房連鎖球菌株0140Jを、本試験にわたって使用した。該細菌は、常法通り日常的にTodd HewittまたはBrain Heart Infusion培養液において培養した。
【0066】
スキムミルクは、Institute for Animal Healthの乳牛群内の数匹の乳牛から無菌で回収した未処理の牛乳から生産した。ミルクは乳腺内感染していない動物から回収した。遠心分離(3,000×g、10分)後、上部脂肪層および沈降した細胞のペレットから、スキムミルクを注意深く取り出した。スキムミルクの無菌性を、アエスクリン(1.0%、w/v、ABA)を含む血液寒天培地上に直接、500μlのミルクを置き、5mlのミルクおよび等容量のTodd Hewitt培養液で集積培養し、次にABA上の単一コロニーの単離を行うことにより決定した。両方の場合において、プレートを37℃で18時間インキュベートした。スキムミルクを4℃で保存し、72時間以内に使用した。
【0067】
他の細菌株および試薬を、テキストに記載されているとおりに使用した。
【0068】
遺伝子型選択によるsrtA変異体の単離
以前に記載されているもの(Taylor, D. L. et al, 2003. J Bacteriol 185:5210-5219; Ward, P. N. et al 2001 Infect Immun 69:392-399)と同様のプロトコールにしたがって乳房連鎖球菌0140J pGhost9::ISS1変異体バンクのPCRスクリーニング後に、srtA(Sub0881)変異体を単離した。簡単に言うと、個々の96−ウェルプレートから一晩培養物を集め、ゲノムDNAを、ローカス特異的プライマーP261(srtA)およびISS1特異的プライマー、P247またはP250を含むPCR増幅反応において鋳型として使用するために調製した。増幅は、35サイクル(95℃20秒、54℃1分および72℃3分)を使用して実施し、AmpliTaq Gold master mix(ABI)で実施した。産物をゲル電気泳動、臭化エチジウムでの染色およびUV光でのトランスイルミネーションにより可視化した。プレート同定後、ウェル位置を、標的プレートのカラムおよび列から集められたゲノムDNAを使用して同様に同定した。変異体クローンの単離後、プラスミドベクターの切除を、抗生物質選択なしに許容温度(28℃)での培養により促進させた。pGhost9ベクターの喪失およびISS1の維持を、以前に記載されているサザンブロット法(Ward, P. N. et al 2001 Infect Immun 69:392-399)により確認した。srtAにおける挿入物の存在を、オープン・リーディング・フレームのPCR増幅およびISS1と破壊されたORFとの間の接合部にわたる得られた産物のシーケンシングにより確認した。使用されたPCRプライマーは以下の表1に示されるとおりである。
【表1】
表1:PCRプライマー。P247 ISS1 fwd(配列番号:16);P250 ISS1 rev(配列番号:17);P261(配列番号:18);P409(配列番号:19);P410(配列番号:20);P615(配列番号:21);P630(配列番号:22);P480(配列番号:23);P481(配列番号:24);P621(配列番号:25)。
【0069】
乳房連鎖球菌から染色体DNAの抽出
ゲノムDNAは、以前に記載されているHill and Leighの方法の変法を使用して調製した(Hill, A. W. et al 1994 FEMS Immunol Med Microbiol 8:109-117)。簡単に言うと、1.5mlの一晩培養物を10,000×gで2分遠心分離し、細胞ペレットを500μlの10mM Tris−Cl、5mM EDTA、pH7.8で洗浄した。細菌細胞壁を、30単位/mlのムタノリシンおよび10mg/mlのリゾチーム(両方ともSigma-Aldrich, St Louis, MO, USAから)を含む375μlの10mM Tris−Cl、5mM EDTA pH7.8中でのに再懸濁により崩壊させ、次に37℃で30分インキュベーションした。全細胞溶解を、最終濃度150μg/mlに20μlのSDS溶液(20%w/v 50mM Tris−Cl、20mM EDTA、pH7.8)およびプロテイナーゼK(Sigma)の添加により達成し、37℃で1時間さらにインキュベーションした。細胞壁物質を、200μlの飽和NaClの添加による沈降、次に12,000×gで10分の遠心分離により除去した。上清をフェノール・クロロホルムで抽出し、DNAを2容量の無水エタノールの添加により沈澱させた。DNAペレットを、70%水性エタノールで洗浄し、空気乾燥させ、20μg/mlのRNAase−A(Sigma)を含むTEバッファーに再懸濁した。
【0070】
泌乳期乳牛への乳房連鎖球菌0140JおよびSrtA変異体での抗原投与
感染原因におけるSrtAの役割を、乳牛の乳腺内感染モデルにおいて、株0140JおよびSrtAを欠いている変異体(srtA変異体)の毒性比較により決定した。細菌は、Todd Hewitt 培養液において18時間37℃で培養した。細胞を遠心分離(10,000×g、10分)により回収し、発熱物質−非含有塩水(Sigma)に懸濁し、必要な細胞密度を提供するように同じもので希釈した。それぞれの株の懸濁液を、抗原投与動物に使用するまで氷上に保持した。それぞれの懸濁液の同一のアリコートにおける生菌数を抗原投与前後に数えた。
【0071】
第1の泌乳から2−10週以内の6匹の乳牛を、抗原投与のためにInstituteの乳牛群から選択した。選択のための基準は以下のものである。乳腺炎の徴候の非存在、抗原投与前にミルクサンプルにおける細菌の非存在、現在の泌乳中に乳腺炎の病歴がない、および出産7および14日後に得られたミルクサンプルにおいて乳腺内感染の証拠がない。動物に対し、1mlの乳房連鎖球菌を含む発熱物質−非含有塩水(Sigma)の注入により乳房区に抗原投与した。2匹の動物に対し、全4つの乳房区に6.0×102cfuの株0140Jを抗原投与し、さらに4匹の動物に対し、全8つの乳房区に類似の用量のsrtA変異体を抗原投与した。抗原投与後、動物を1日に2回(07:00時および15:30時)搾乳および検査し、臨床的エンドポイントのあらかじめ決められた基準(凝固し変色したミルクおよび/または乳房区腫大または触診において誘発する不快感)に達したものを、図2で概説された規定された基準にしたがって、商標登録された(proprietary branded)抗生物質で処置した。ミルクサンプルを取り、下記のとおりに細菌および体細胞に関して分析した。
【0072】
ミルクサンプルの分析
存在する生菌数を、ABA上に1mlおよび100μlのそれぞれのミルクサンプルを直接置くことにより概算した。また、サンプルを塩水で希釈し、50μlのそれぞれの希釈物をABA上に直接置いた。それぞれの場合において、乳房連鎖球菌の存在および/または数を測定し、回収された単離物の遺伝子型を、以下に記載されているとおり、染色体DNAの制限酵素切断フラグメント長多型(RFLP)およびsrtA遺伝子座の増幅を含むことにより、決定した。ミルクサンプル中に存在する体細胞数を、コールターカウンター(Beckman Coulter, Ltd)を使用して測定した。
【0073】
メタノールクロロホルム沈降による細菌増殖培地由来のタンパク質の調製
細菌を、BHI(200ml)中で培養培地でOD600nmで約0.5に増殖させ、遠心分離(16,000×g、20分、4℃)により回収し、細菌増殖培地を0.22μMフィルター(Millipore)を介してフィルター滅菌した。1×濃度で完全プロテアーゼ阻害剤(Roche)の添加後、細菌増殖培地を、10kDaの分子量排除でAmicon遠心濾過機(Millipore)を使用して、約100倍に濃縮した。タンパク質を沈殿させるために、600μlのメタノールおよび150μlのクロロホルム(両方ともBDH)を、200μlの濃縮された細菌増殖培地に加えた。調製物をボルテックスし、450μlのMilliQ水を加え、遠心分離(16,000×g、1分)した。上相を注意深く取り出して捨て、450μlのメタノールを残りの物質に加え、これをボルテックスし、遠心(16,000×g、2分)した。上清を除去し、残りのペレットを空気乾燥させ、SDS−ローディングバッファーに再懸濁した。
【0074】
界面活性剤での非固定化タンパク質の抽出
上記培養物由来の細菌ペレットを40mlのPBSで3回洗浄し、500μlのヒアルロニダーゼを含むPBS(100U/ml、Sigma−Aldrich)に再懸濁した。細胞を2時間37℃でインキュベートし、加水分解された莢膜物質を遠心分離(8000×g、6分、4℃)により除去した。細胞を40mlのPBSで3回洗浄し、200μlのPBS中の0.1%(v/v) NonIdet P−40(NP−40)に再懸濁した。遠心分離(16,000×g、10分、4℃)による細菌細胞の除去後に、界面活性剤抽出物を回収した。
【0075】
組換えSub1154およびSub1370タンパク質の生産および精製
乳房連鎖球菌0140J ゲノムDNAから、スブチラーゼ様セリンプロテアーゼと相同性を有する推定srtA基質であるSub1154の予測される成熟コード配列(すなわち、N−末端シグナル配列を欠いている)を増幅するために、プライマーp409およびp410(上記表、参照)を設計した。3.4kbのアンプリコンを、PhusionTM高忠実度ポリメラーゼ(New England Biolabs)を使用して産生し、MinElute PCR Purification Kit(Qiagen)を使用して精製し、方向性(directional)クローニングを容易にするために、KpnI(New England Biolabs)で処理した。プラスミドpQE1(Qiagen)を、PvuII、KpnIおよびAntarcticホスファターゼ(全てNew England Biolabs)を使用して製造し、構築物を製造業者の指示にしたがって一晩20℃でライゲーションした(T4 DNAリガーゼ、New England Biolabs)。20マイクロリットルのライゲーション混合物を、Atrazhev and Elliottの方法(Atrazhev, A. M., and J. F. Elliott. 1996 Biotechniques 21:1024)を使用して、脱塩した。約10ngの脱塩されたライゲーション混合物で、大腸菌 M15 pREP4(Qiagen)を形質転換させ、組換えクローンをLB Kan25μg/ml Amp50μg/mlの寒天プレートで選択した。残基Asp34で開始する組換え(6×Hisタグ)Sub1154タンパク質を、50μg/mlのアンピシリンおよび25μg/mlのカナマイシンを含む1600mlのLB培養液への一晩培養物の希釈(1/30)により精製し、2時間撹拌なしで20℃で培養した。組換えSub1370を、プライマーP480およびP481を使用することにより、同様に製造し、800mlの培養培地で同様に増殖した。タンパク質発現をIPTGの添加により最終濃度0.2mMに誘導した。培養物をさらに2−4時間インキュベートし、次に8,000×gで20分遠心し、細菌細胞を回収した。それぞれ、約1mgおよび0.3mgの可溶性6×HisタグSub1154およびSub1370タンパク質を、製造業者の指示にしたがって、CelLyticおよびHisSelect高流量カートリッジ(両方ともSigma)を使用して、プロテアーゼ阻害剤(完全−EDTAフリー;Roche)の存在下で精製した。
【0076】
ウサギにおけるSub1154およびSub1370抗血清の生産および免疫ブロット
約50μgのフリーズドライされた精製された組換えSub1154およびSub1370タンパク質の5つのアリコートを、ウサギにおける血清生産のためにDavids Biotechnologie(Germany)に提供した。抗血清(50ml)は、フィルター滅菌され、保存剤として0.02%のアジ化ナトリウムを含んで、提供された。
【0077】
野生型乳房連鎖球菌およびSrtA変異体の培養物由来の界面活性剤および培地抽出物を、10%ドデシル硫酸ナトリウム ポリアクリルアミド(SDS−PAGE)ゲルで分離し、次に、免疫検出のためにニトロセルロース膜(Amersham)に移すか、あるいはInstantBlue (Novexin)を使用してクマシー染色した。転写は、25mMのTris−base、192mMのグリシンおよび20%(v/v)のメタノール、pH8.1−8.4からなる転写バッファーでTransblot装置(Biorad)において、170mAで1時間で行った。転写後、膜をPBS中の1%のスキムミルク粉末のブロッキング溶液中で4℃で一晩インキュベートした。膜を、0.1%のTween 20(PBST)を含むPBSで5分間で3回洗浄し、次にブロッキング溶液中における、1/12,000希釈(Sub1154抗血清の場合)および1/16,000希釈(Sub1370抗血清の場合)のウサギ抗血清と共に1時間インキュベートした。膜をPBST中で5分間、3回洗浄し、次に1/1,000希釈のHRPに複合体化させたヤギ抗−ウサギ免疫グロブリンG(Southern Biotech)と共に1時間インキュベートした。膜を、上記のとおりに再び洗浄し、HRP複合体を、16.7%のメタノールおよび0.00015%(v/v)のH2O2を含むPBS中の4−クロロナフトール(0.5mg/ml)の溶液を使用して検出し、暗下で1時間インキュベートし、膜をPBSで洗浄し、乾燥させた。
【0078】
srtA変異体の単離および遺伝的特性化
乳房連鎖球菌0140Jの完全ゲノムの分析によって、単一のソルターゼ相同体であるソルターゼA(srtA)の存在を確認した(Ward, P.N. et al (2008年提出) BMC Genomics)。変異体クローンを、逆方向性において、ソルターゼコード配列の塩基対248と249間に挿入されたISS1エレメントで単離した。この変異srtA遺伝子の翻訳産物は、srtA ORFにおいてコードされる252アミノ酸の最初の82残基と終始コドンに達する前のISS1エレメントにおけるさらなる18残基からなった。
【0079】
ウシ乳腺における実験的抗原投与後の野生型およびsrtA変異体乳房連鎖球菌の感染性および毒性
野生型株と比較したsrtA変異体の感染性および毒性を、多くの乳牛のウシ乳腺に抗原投与することにより測定した。600cfuの野生型乳房連鎖球菌を与えた動物の全抗原投与乳房区は感染し、抗原投与48−60時間後までに、約106から107cfu/mlで細菌を流出した(図1A)。類似の用量のsrtA変異体を4匹の動物における8つの乳房区に抗原投与後、全てが感染の証拠を示し、srtA変異体が、抗原投与24時間以内に野生型のものと類似のレベルで、ミルク中で検出された。しかしながら、その後の細菌コロニー形成は、抗原投与24時間後までの最大104cfu/mlミルクから減少し、その結果、実験の終わり(抗原投与の7日後)までに存在する平均細菌数が約10cfu/mlになった(図1B)。この時点まで、8つの乳房区のうち2つだけが細菌を流出し続け、残りは感染を解消した(<1cfu/ml ミルク)。
【0080】
感染に応答した乳腺への細胞浸潤は、両方の動物群において同一であり、抗原投与株に依存していなかった。それぞれの場合において、これは、このモデルにおいて以前に報告されているものと類似であり、抗原投与の48−60時間後までに最大約107細胞/mlミルクに達した。野生型株で抗原投与された動物において、これは、乳腺炎の急性臨床徴候の外観と一致し(図2および図1C)、これは感染を解消し、疾患の徴候を緩和するために抗生物質治療の投与を必要とした。全く対照的に、srtA変異体を投与された動物は、たとえあったとしても、乳腺炎の徴候をほとんど示さなかった(図2および図1C)。
【0081】
図1に示される結果は、乳房連鎖球菌が、該細菌による毒性の完全発現のために、srtAによってコードされるソルターゼタンパク質を必要とすることを証明する。SrtAを欠いている変異体は、最初に野生型乳房連鎖球菌と同様にウシ乳腺にコロニーを作ることができるが、最大細菌数が野生型株を抗原投与された動物由来のミルクにおいて検出されたものよりも約1000倍低く維持されるので、高レベルで該腺にコロニーを作ることができなかった。これは、srtA変異体が疾患の進行性臨床徴候を誘導できないことと一致した。
【0082】
srtAは、高レベルのコロニー形成および/または症候性疾患と関連する重度の炎症応答の誘導のために、毒性に関与する1つ以上のタンパク質を細菌の表面に固定すると理解することができる。
【0083】
乳房連鎖球菌におけるソルターゼ固定化タンパク質の検出
ソルターゼにより乳房連鎖球菌の細胞壁に固定されたタンパク質を同定するために、野生型乳房連鎖球菌の細胞壁タンパク質を乳房連鎖球菌のSrtA変異体のものと比較した。
【0084】
固定された細胞壁タンパク質のトリプシンペプチドを単離するために使用される方法論は、以下のとおりである。細菌培養物を、THBまたはBHIのいずれかにおいて指数増殖期および静止期の両方まで増殖させた。指数増殖培養物を、OD550nmで0.6の光学濃度まで1.5リットルの培養液において増殖させ、静止期培養物を一晩1リットルの培養液において増殖させた。細菌細胞ペレットを遠心分離(16,000×g、10分、4℃)により回収し、PBS、PBS中の0.1%(v/v) Nonidet P40(NP40)およびPBSで連続洗浄し、上記のとおりの遠心分離により回収した。細胞ペレットを、1×完全プロテアーゼ阻害剤(Roche)を含むPBSに再懸濁し、0.1mmのジルコニア/シリカビーズを含むねじぶた付きマイクロチューブ中で、氷上の散在された休息期間を有する5×1分間隔で最大速度でビーズ破砕することにより、破壊した。破壊されていない細胞およびビーズを遠心分離(8,000×g、10分、4℃)2回により除去し、次に上清を高速遠心分離(125,000×g、30分)に付した。得られたペレットを4%のSDS/PBSに再懸濁し、80℃で4時間加熱し、次に遠心した(200,000×g 30分)。得られたペレットを30℃でMilliQ水で4回洗浄し、上記のとおりに遠心した。次にペレットを1μgのプロテオミクスグレードトリプシン(Sigma)を含む50mMの重炭酸アンモニウムに再懸濁し、一晩37℃で撹拌してインキュベートした。遠心分離(16,000×g、10分)後に上清からペプチドを回収し、消化を最終濃度0.1%でのギ酸の添加により停止させた。
【0085】
ペプチドを、逆相液体クロマトグラフィー系を使用するナノLC−MS/MSにより、分離して分析した。MS/MSデータの解釈および提示は、乳房連鎖球菌0140Jに関して生産されたゲノムデータベースを使用してMascotソフトウェア(Matrixscience, London, UK)を使用して行われる探索で、公開ガイドラインにしたがって行った。
【0086】
存在するタンパク質を同定するために、トリプシンペプチドの配列を、乳房連鎖球菌の翻訳ゲノム配列とアラインした。
【0087】
図4およびBに挙げられている9つのタンパク質は、乳房連鎖球菌0140Jから調製された細胞壁上に存在するが、乳房連鎖球菌の同系srtA欠失変異体の培養物から作られた同等調製物に非存在であることが見出され、該タンパク質がソルターゼ固定化タンパク質であることが証明された。
【0088】
9つのソルターゼ固定化タンパク質の配列は、図6Aから6Iに挙げられている。図6Jから6Oは、プロテオミクスにより同定された推定ソルターゼ固定化タンパク質の配列である。
【0089】
野生型およびSrtA変異体乳房連鎖球菌のタンパク質抽出物におけるSub1154およびSub1370タンパク質の検出
乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質の2つの例である組換えSub1154および組換えSub1370は、両方とも、増幅させたゲノム乳房連鎖球菌DNAから産生し、該産物をpQE1ベクターを使用する大腸菌でクローニングし、これはそれぞれのタンパク質のN−末端で6×Hisタグを組み込んでいた。組換えタンパク質を、6×Hisタグを利用して精製し、抗血清の生産のために使用した。
【0090】
次に、ウサギ抗−Sub1154および抗−Sub1370を使用して、乳房連鎖球菌0140JおよびsrtA変異体の界面活性剤および培地抽出物の免疫ブロット法により、Sub1154およびSub1370タンパク質を検出した。BHIにおいて培養されたSub1154およびSub1370変異体由来の培地抽出物も、抗血清で調べた。Sub1154の検出を、srtA界面活性剤抽出物およびSub1154変異体培地抽出物において確認した。後者の場合において、タンパク質の予測される切断形を検出した(図5A)。Sub1370に対応するタンパク質は、srtA変異体から得られた増殖培地のみで検出された(図5B)。srtA変異体由来の抽出物のみにおけるSub1154およびSub1370タンパク質の存在は、野生型株において、該タンパク質がソルターゼにより乳房連鎖球菌の細胞壁に固定されていることを示す。
【0091】
実施例2:乳房連鎖球菌の毒性における特異的ソルターゼ固定化タンパク質の必要性に関する調査
ソルターゼ固定化タンパク質の同定後、これらをコードするそれぞれの遺伝子で野生型株を変異させた。それぞれ個々のソルターゼ固定化タンパク質を欠いている変異体を、毒性を評価するために、乳牛における抗原投与モデルにおいて使用した。毒性の減少または除去を示すものから欠失しているタンパク質は、疾患の病因/病理に関与する。のこれらのタンパク質のいずれか、好ましくは全てに対する中和免疫(抗体)応答の誘導は、野生型株での感染後の疾患を減少させるであろう。したがって、毒性において役割を有すると同定されたタンパク質のいずれか、好ましくは全てを含むワクチンは、畜牛における乳腺炎の予防において有用であろう。
【0092】
方法論
SrtA固定化タンパク質(Sub0135、Sub0145、Sub0207、Sub0241、Sub0826、Sub0888、Sub1095、Sub1154、Sub1370、Sub1730)を欠いている乳房連鎖球菌の変異体株の生産および単離
挿入的に不活化された変異体は、以前に記載されている(Taylor, D. L. et al, 2003. J Bacteriol 185:5210-5219; Ward, P. N. et al 2001 Infect Immun 69:392-399)ものと同様のプロトコールにしたがって、乳房連鎖球菌0140J pGhost9::ISS1変異体バンクのPCRスクリーニングにより、ランダム挿入変異体バンク内に位置していた。簡単に言うと、個々の96−ウェルプレートから一晩培養物を集め、ゲノムDNAを、それぞれの興味ある遺伝子に対するローカス特異的プライマーを含むPCR増幅反応において、鋳型として使用するために調製し、ISS1に特異的なプライマーと共に使用した。変異体クローンの単離後、プラスミドベクターの切除を、抗生物質選択なしに許容温度(28℃)での培養により促進させた。pGhost9ベクターの喪失およびISS1の維持を、以前に記載されているサザンブロット法(Ward, P. N. et al 2001 Infect Immun 69:392-399)により確認した。適当なORFにおける挿入物の存在を、オープン・リーディング・フレームのPCR増幅およびISS1と破壊されたORFの接合部にわたる得られた産物のシーケンシングにより確認した。
【0093】
SUB1154コード配列のほぼ開始点付近に位置するISS1を有する0140Jランダム変異体バンクから挿入変異体を単離する試みは、不成功であることが証明された。標的欠失戦略を、SUB1154遺伝子産物の生産を除去するために使用した。簡単に言うと、3432塩基対オープン・リーディング・フレームのいずれかの末端に位置する2つのフラグメントを、ゲノムDNAから増幅した。該2つのフラグメントを精製し、次にさらなるPCR増幅反応において均等な割合で鋳型として使用して、3432塩基対のSUB1154コード配列から3169塩基対を欠いている単一のΔ1154産物を産生した。このアンプリコンを、低コピー・pG+h9温度感受性プラスミドのマルチクローニングサイトにサブクローニングした。プラスミド構築物を、200μg/μlのエリスロマイシン上で37.5℃での選択を用いる大腸菌 TG1 RepAの形質転換により増幅し、次に精製したプラスミド10ngを使用して、1μg/mlのエリスロマイシン上で28℃での選択により乳房連鎖球菌0140Jをさらに形質転換した。乳房連鎖球菌0140J/pG+h9::Δ1154形質転換体を、28℃でTodd Hewitt培養液中でOD5500.5まで培養し、次に培養温度を37.5℃の非許容プラスミド複製温度まで上昇させて、単一の交差染色体組み込みをさせた。組み込み体を1μg/mlでEryを含むTHA上で37℃で選択し、次に抗生物質を欠いているTHB中で28℃で培養して、第2の交差事象によりpG+h9レプリコンの切除を促進させた。得られた細菌をTHA上に置き、37℃で一晩培養後に、コロニーを採取した。Sub1154遺伝子座の欠失は、Sub1154遺伝子座のPCR増幅により決定した。
【0094】
乳房連鎖球菌での泌乳期乳牛への抗原投与
毒性のための個々のSrtA基質の必要性を、乳牛においてよく確立した乳腺内感染モデルにおいて、実験的抗原投与により決定した。細菌は、Todd Hewitt 培養液において18時間37℃で培養した。細胞を遠心分離(10,000×g、10分)により回収し、発熱物質−非含有塩水(Sigma)に懸濁し、必要な細胞密度(500−1500cfu/ml)を提供するように同じものに希釈した。それぞれの株の懸濁液を、動物に抗原投与するために使用するまで氷上に保持した。それぞれの懸濁液の同一のアリコートにおける生菌数を抗原投与前後に数えた。
【0095】
第1の泌乳から2−10週以内の、乳牛を抗原投与のために選択した。選択のための基準は以下のものであった。乳腺炎の徴候の非存在、抗原投与前にミルクサンプルにおいて細菌の非存在、現在の泌乳中に乳腺炎の病歴がない、および出産7および14日後に得られたミルクサンプルにおいて乳腺内感染の証拠がない。500−1500cfuの乳房連鎖球菌を含む1mlの発熱物質−非含有塩水(Sigma)の注入により、動物の乳房区に抗原投与した。
【0096】
抗原投与後、動物を1日に2回(07:00および15:30)4日間、搾乳および検査した。臨床的エンドポイントのあらかじめ決められた基準(凝固し、変色したミルクおよび/または乳房区腫大または触診において誘発する不快感)に達したものを、商標登録された抗生物質で処置した。ミルクサンプルをそれぞれの搾乳時に採取し、下記のとおりに細菌および体細胞の存在に関して分析した。
【0097】
ミルクサンプルの分析
存在する生菌数を、ABA上に50μlのそれぞれのミルクサンプルを直接置くことにより概算した。また、サンプルを塩水で希釈し、50μlのそれぞれの希釈物をABA上に直接置いた。それぞれの場合において、乳房連鎖球菌の存在および/または数を測定し、回収された単離物の遺伝子型を、適当な遺伝子座の増幅により決定した。ミルクサンプル中に存在する体細胞数を、製造業者の指示にしたがって、DeLaval携帯型細胞カウンターを使用して測定した。
【0098】
結果
Sub0145、Sub1095またはSub1154の1つを欠いている変異体を、該変異が乳房連鎖球菌の主要な減毒をもたらすか否かを決定するために、乳房区に抗原投与するために使用した。全ての場合において、株を抗原投与後のミルクから回収し、それぞれを、正確に変異した遺伝子の存在を示すために遺伝子型分析した。株(sub1095、sub0145またはsub1154のいずれかを欠いている)での抗原投与は、実験の期間中に比較的乏しいコロニー形成をもたらし(図7)、野生型株と対照的にこれらのいずれの株も疾患の臨床徴候を誘導することはできなかった。結果として、感染原因におけるこれらのタンパク質の機能は、必須であると考えることができる。これらのタンパク質のいずれか、好ましくは全てに対する中和免疫(抗体)応答の誘導は、野生型株での感染後の疾患を減少させると予期される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳房連鎖球菌(Streptococcus uberis)に対する免疫応答の誘導に使用するための免疫原性組成物、特に、防御免疫応答を引き起こすことができる免疫原性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
乳房連鎖球菌(S. uberis)は、現在、UKにおいて全臨床型乳腺炎事象の約20−30%に関与しており、世界中で同様の発生率で起こる。乳腺炎は、世界中で最も経済的に重要な乳牛の感染病である。臨床型乳腺炎による年間損失は、UKにおいて約1.7億ポンドおよびUSAにおいて15−20億ドルと概算されている。これらの損失は、ミルク生産の減少、処置の関連コストならびに持続的および反復的に感染するウシの大量処分に起因し得る。乳腺炎を引き起こす微生物は、接触感染性伝達経路を示すもの、例えば、黄色ブドウ球菌およびB群連鎖球菌(Streptococcus agalactiae)、ならびにさらに環境保有宿主から頻繁に乳房に感染するもの、例えば、大腸菌および乳房連鎖球菌に分けることができる。改善された搾乳実施、搾乳後の乳頭消毒およびそれぞれの泌乳後の日常の乳房内抗菌処置に基づいた、過去20年にわたる種々の抑制対策の適用は、単独で接触感染性伝達経路を有する病原体に対して有効であることは証明されているが、環境保有宿主の乳腺への感染の発症に対して、たとえあったとしても、ほとんど影響を与えていない。乳房連鎖球菌に起因するウシ乳腺炎の抑制の失敗は、主に、感染の原因についての不十分な情報に起因する。
【0003】
乳腺(乳房)の炎症を引き起こすウシ乳腺炎は、通常、細菌による乳腺内感染の結果として生じる。乳腺炎の徴候は、宿主および侵入病原体における因子にしたがって変化し、乳腺内感染は、無症候性疾患または症候性疾患をもたらし得る。無症候性乳腺炎は、本質的に、疾患の明らかな徴候を示さない。症候性疾患と関連する感染は、影響を受けた腺における疼痛および膨張を伴うミルク中の可視的な異常(タンパク質凝集体または凝固)から、漿液中の凝集タンパク質のみからなる分泌物の生産に及ぶことができる。重症例では、全身的な徴候、例えば、体温の上昇および食欲喪失が起こる場合があり、菌血症、敗血症を発症させて、動物の死に至ることもある。
【0004】
感染していない乳腺由来のミルクは、一般的に150,000細胞/ml以下の、マクロファージ、好中球およびリンパ球を含む白血球を含む。感染は、通常、感染した乳腺の乳房区(quarter)およびミルクへの好中球の流入により特徴付けられる局所的炎症性応答をもたらす。得られるミルク細胞数は、乳腺の感染の代替的測定値ならびに乳質および乳房健康の測定値として国際的に使用される。無症候的に感染した乳房区由来のミルクは、通常、250,000細胞/mlを超える細胞数を有するが、この数字は広範に変動し得る。症候的に感染した乳房区由来のミルクは、通常、2,000,000細胞/mlを超える細胞を含有する。細菌および/またはそれらの産物と分泌における多数の好中球との間の相互作用は、乳腺炎の特徴であるミルク生産の減少率、分泌物の分解および広範囲の炎症性変化の誘導の根本的な主要原因であると考えられている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の1つの目的は、乳房連鎖球菌に対する防御免疫応答を引き起こし、それにより乳腺炎の発症を予防するか、または減少させるために使用することができる、1つ以上の組成物を提供することである。
【0006】
第1の局面において、本発明は、1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質またはそれらの免疫原性部分を含む免疫原性組成物であって、対象に投与されたときに免疫応答を引き起こすことができる組成物を提供する。
【0007】
好ましくは、1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、ソルターゼ固定化タンパク質またはその免疫原性部分である。
【0008】
乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質は、野生型乳房連鎖球菌において、ソルターゼ酵素の作用により細菌の表面に固定されているあらゆるタンパク質を示す。
【0009】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、タンパク質SUB0145、SUB1095およびSUB1154、または上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む群から選択され得る。
【0010】
免疫原性組成物は、2つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質またはその免疫原性部分を含み得る。
【0011】
2つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または2つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、タンパク質SUB0145、SUB1095およびSUB1154、または上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む群から選択され得る。
【0012】
免疫原性組成物は、タンパク質SUB0145、SUB1095およびSUB1154、または上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含み得る。
【0013】
免疫原性組成物は、タンパク質SUB1095およびSUB1154、または上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含み得る。
【0014】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、タンパク質SUB0135、SUB0145、SUB0207、SUB0826、SUB0888、SUB1095、SUB1154、SUB1370、SUB1730およびSUB0241、または上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む群から選択され得る。
【0015】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、タンパク質SUB0135、SUB0207、SUB0826、SUB0888、SUB1095、SUB1154、SUB1370、SUB1730およびSUB0241、または上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む群から選択され得る。
【0016】
相同性パーセントへの言及は、2つのアラインされた配列間の同一性パーセントに関係する。同一性パーセントは、2つのタンパク質配列が最大に一致するようにアラインされ、逆位および転座が明らかにされるとき、2つのタンパク質において同一の残基を示す。好ましくは、同一性パーセントは、機能に影響しないアラインされた配列間のあらゆる保存的相違点を無視する。アラインされた配列間の同一性パーセントは、よく確立されているツール(例えば、BLAST algorithm - Basic Local Alignment Search Tool; Altschul et al., (1990) J Mol Biol. 215:403-10)を使用することにより、確立することができる。
【0017】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0135である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0135ではない。
【0018】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0145である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0145ではない。
【0019】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0207である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0207ではない。
【0020】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0826である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0826ではない。
【0021】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0888である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0888ではない。
【0022】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1095である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1095ではない。
【0023】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1154である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1154ではない。
【0024】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1370である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1370ではない。
【0025】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1730である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1730ではない。
【0026】
1つの態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0241である。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0241ではない。
【0027】
他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0164ではない。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0348ではない。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB1739ではない。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0206ではない。他の態様において、1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質は、SUB0337ではない。
【0028】
タンパク質の免疫原性部分は、免疫応答を引き起こすことができる大型タンパク質の一部を示す。好ましくは、引き起こされる免疫応答は、タンパク質の一部およびタンパク質の全体を認識する。好ましくは、免疫原性部分は、全長タンパク質由来の少なくとも1つのエピトープを含む。
【0029】
免疫原性組成物は、対象に投与されたときに組成物中の抗原に対する免疫応答を引き起こすことができる組成物である。好ましくは、引き起こされる免疫応答は、防御的である。好ましくは、対象は、哺乳動物、さらに好ましくは反芻動物、例えばウシ、ヒツジまたはヤギである。本発明の免疫原性組成物中の抗原は、ソルターゼ酵素により乳房連鎖球菌の表面に固定されている1つ以上のタンパク質であり得る。
【0030】
好ましくは、本発明の組成物により引き起こされる免疫応答は、組成物中の抗原に対するものであり、免疫原性組成物が投与された対象において乳房連鎖球菌による感染を予防するか、または減少させるように作用する。該免疫応答は、乳房連鎖球菌を認識して破壊し得る。あるいは、またはさらに、引き起こされる免疫応答は、乳房連鎖球菌の複製を妨げるか、または防止し得る。あるいは、またはさらに、引き起こされる免疫応答は、対象における乳房連鎖球菌誘発疾患、例えば、乳腺炎を妨げるか、または防止し得る。好ましくは、該組成物により引き起こされる免疫応答は、組成物中のタンパク質が由来する株以外の乳房連鎖球菌株に対するものであることもできる。
【0031】
生じる免疫応答は、細胞性および/または抗体介在性免疫応答であり得る。通常、免疫応答は、組成物中の1つ以上の免疫原性タンパク質に対する、抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞および/または細胞毒性T細胞の生産のうち1つ以上を含むが、これらに限定されない。
【0032】
該組成物は、また、1つ以上の乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質に加えて、さらに1つ以上の抗原を含み得る。さらなる抗原は、また、由来する病原体に対する免疫応答を引き起こすことができ得る。さらなる抗原は、乳房連鎖球菌由来であり得るか、または、異なる病原体由来であり得る。
【0033】
該組成物は、対象に投与されたときに防御免疫応答を引き起こす/生じるために使用され得る。該防御免疫応答は、対象感染時に乳房連鎖球菌の死を引き起こすか、または、対象における乳房連鎖球菌の複製、および/または疾患の誘発を防止または阻止し得る。
【0034】
該組成物は、乳房連鎖球菌に対する予防または治療ワクチンとして使用され得る。
【0035】
さらなる局面において、本発明は、1つ以上の乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質またはそれらの部分を、薬学的に許容される担体または賦形剤と共に含む医薬組成物を提供する。
【0036】
好ましくは、該医薬組成物は、本発明のあらゆる局面における組成物を含む。
【0037】
好ましくは、該医薬組成物は、乳房連鎖球菌に対する防御免疫応答を生じることができる。
【0038】
本明細書において使用される「防御免疫応答を生じる」なる表現は、組成物が投与される宿主生物、例えば、ウシにおいて防御応答を産生することができることを意味する。好ましくは、防御免疫応答は、乳房連鎖球菌による続発性感染に対して防御する。該防御免疫応答は、乳房連鎖球菌の作用機序に影響することによって乳房連鎖球菌の複製を減少させることにより、感染のレベルを排除させるか、または減少させ得る。好ましくは、防御免疫応答は、乳房連鎖球菌に起因する疾患を減少させるか、または予防する。
【0039】
医薬組成物中で使用するために適当な許容される賦形剤および担体は、当業者によく知られている。これらは、固体または液体担体を含み得る。適当な液体担体は、水および塩水を含む。組成物のタンパク質は、エマルジョンに製剤化され得るか、または生分解性ミクロスフェアまたはリポソームに製剤化され得る。
【0040】
該組成物はさらにアジュバントを含み得る。適当なアジュバントは、当業者によく知られており、フロイント不完全アジュバント(動物において使用するため)および金属塩、例えば、アルミニウムまたはカルシウム塩を含み得る。
【0041】
該組成物は、また、組成物のコンシステンシー(consistency)を調節するための、および/または組成物からのタンパク質の放出を調節するためのポリマーまたは他の剤を含み得る。
【0042】
該組成物は、また、希釈剤のような他の剤を含み得、水、塩水、グリセロールまたは他の適当なアルコールなど、湿潤剤または乳化剤、緩衝剤、増粘剤、例えばセルロースまたはセルロース誘導体、保存剤、界面活性剤、抗菌剤などを含み得る。
【0043】
好ましくは、組成物中の活性成分は、50%を越える純度、通常80%を越える純度、しばしば90%を越える純度、さらに好ましくは95%、98%または99%を越える純度である。100%の純度、例えば、約99.5%の純度または約99.9%の純度に達する活性成分が、非常にしばしば使用される。
【0044】
本発明の組成物は、乳房連鎖球菌に起因する感染に対するワクチンとして使用され得る。該ワクチンは、乳房連鎖球菌への暴露の危険性がある動物へ予防的に、および/または、すでに乳房連鎖球菌に暴露された動物へ治療的に投与され得る。
【0045】
好ましくは、該組成物がワクチンとして使用されるとき、該組成物は、免疫学的に有効量の抗原(乳房連鎖球菌タンパク質からなる)を含む。抗原の「免疫学的に有効量」は、個体に投与されるとき、単回投与または一連の投与のいずれかにおいて、乳房連鎖球菌による感染の処置または予防に有効な量である。該量は、処置される個体の健康および身体状態ならびに抗原に依存して変化し得る。該量は、日常の試験により決定することができる比較的広い範囲内であると予期される。
【0046】
組成物の投与経路は、組成物中のタンパク質の製剤化に依存して変化し得る。該組成物は、筋肉内、皮内、皮下、腹腔内、静脈内または乳房内に投与されるように調整され得る。あるいは、該組成物は、例えば、鼻腔内による非経腸的、経口的、経口内、吸入的、表皮的、経皮的、局所的、膣内または経直腸投与的に投与されるように調整され得る。
【0047】
該組成物は、単回投与または複数回投与スケジュールの一部として投与されるように調整され得る。複数回投与は、一次免疫後の1回以上の追加免疫として投与され得る。一次免疫および追加免疫間の適当なタイミングは、日常的に決定することができる。
【0048】
本発明の組成物は、対象に投与後に、血清殺菌性抗体応答を誘導することができ得る。これらの応答は、好都合にはマウスにおいて測定され、該結果は、ワクチン有効性の標準指標である。
【0049】
本発明の組成物は、また、あるいは、必ずしも細菌を破壊することなく、乳房連鎖球菌による感染に対して防御するために、宿主細胞上にタンパク質をもたらす免疫応答を引き起こすことができ得る。
【0050】
さらなる局面において、本発明は、免疫応答を引き起こすための薬物の製造における1つ以上の乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質の使用を提供する。該薬物は、乳房連鎖球菌に対する対象の予防または治療ワクチンのために使用され得る。該薬物は、予防または治療ワクチンであり得る。
【0051】
さらなる局面において、本発明は、本発明の任意の他の局面の組成物をヒトまたは非ヒト動物に投与することを含む、ヒトまたは非ヒト動物、好ましくはウシを乳房連鎖球菌による感染の影響から防御するための方法を提供する。
【0052】
他の局面において、本発明は、本発明の組成物をヒトまたは非ヒト動物に投与することを含む、ヒトまたは非ヒト動物、好ましくはウシにおける免疫応答を増強するための方法を提供する。該免疫応答は、好ましくは防御的である。該方法は、すでに免疫(primed)されている対象における追加応答を増強させ得る。該免疫応答は、予防または治療的であり得る。
【0053】
本発明の使用、方法および組成物は、好ましくは乳房連鎖球菌に起因する疾患の予防および/または処置用である。
【0054】
当業者は、上記の好ましいあらゆる特性が、本発明のあらゆる局面に適用することができることを認識すべきである。
【0055】
本発明の好ましい態様は、今回、図面および実施例において、単なる例示のために記載している。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1A、BおよびCは、乳牛における野生型乳房連鎖球菌0140Jおよび乳房連鎖球菌Srt変異体での抗原投与後の細菌単離、体細胞数および臨床応答の結果を示す。図1(A)は、抗原投与後の乳房連鎖球菌の細菌回収を示す。データは、株0140J(四角;n=4)またはSrtA変異体(三角;n=8)のいずれかで抗原投与された動物のミルクから得られた細菌数の幾何平均として示される。図1(B)は、乳房連鎖球菌の野生型およびSrt変異体での抗原投与後の炎症性応答を説明する。データは、株0140J(四角;n=4)またはSrtA変異体(三角;n=8)のいずれかで抗原投与された動物のミルクから得られた体細胞数の幾何平均として示される。図1(C)は、乳房連鎖球菌の野生型およびSrt変異体での抗原投与後の臨床的発現からの組合せ臨床スコアを説明する。データは、株0140J(四角;n=4)またはSrtA変異体(三角;n=8)のいずれかで図2で概説されているとおり、乳房区の外観およびミルクの外観に関して得られた臨床スコアの平均により示される。
【0057】
【図2】図2は、乳房連鎖球菌での感染に対する臨床応答の発現を表の形式で説明する。全ての乳房区およびミルクサンプルを、抗原投与後のそれぞれのミルクでこれらの基準に対して分析した。
【0058】
【図3】図3は、乳房連鎖球菌ゲノムのバイオインフォマティクスにより見出された、ソルターゼにより固定される可能性のあったタンパク質を表の形式で説明する。乳房連鎖球菌のゲノムを、推定ソルターゼ固定化タンパク質に関してLPXXGモチーフを使用して探索した。同定されたタンパク質の一覧は、C−末端に向かってモチーフ、すなわちLPXXGの状況および位置、次にC−末端位置に疎水性領域および荷電残基ならびにN−末端に認識できる分泌シグナルペプチドの存在を使用することにより精密化した。
【0059】
【図4A】図4Aは、THB培地において培養された乳房連鎖球菌0140Jの細胞壁抽出物において同定されたソルターゼ固定化タンパク質を記載する。a乳房連鎖球菌0140Jのゲノム配列(Ward et al 2009)における遺伝子およびタンパク質注釈、bWellcome Trust Sanger InstituteのArtemisデータベース(http://www.sanger.ac.uk/)から得られるタンパク質前駆体に対する理論分子量値、cそれぞれのタンパク質に対する特異的なペプチドヒット数、d実験的に検出されたペプチドにより包含されるタンパク質配列のパーセント、eSrtA変異体の細胞壁画分において同定された2つのペプチド。
【0060】
【図4B】図4Bは、BHI培地において培養された乳房連鎖球菌0140Jの細胞壁抽出物において同定されたソルターゼ固定化タンパク質を記載する。a乳房連鎖球菌0140Jのゲノム配列(Ward et al 2009)における遺伝子およびタンパク質注釈、bWellcome Trust Sanger InstituteのArtemisデータベース(http://www.sanger.ac.uk/)から得られるタンパク質前駆体に対する理論分子量値、cそれぞれのタンパク質に対する特異的なペプチドヒット数、d実験的に検出されたペプチドにより包含されるタンパク質配列のパーセント、eSrtA変異体の細胞壁画分において同定された4つのペプチド。
【0061】
【図5】図5Aおよび5Bは、乳房連鎖球菌0140JおよびsrtA変異体の抽出物からのSub1154およびSub1370の同定を示す。図5A−Sub1154に対するウサギ抗血清を、0140J(レーン2)およびSrtA変異体(レーン3)由来のタンパク質界面活性剤抽出物、0140J(レーン4)、SrtA変異体(レーン5)およびSub1154変異体(レーン6)由来の濃縮され沈殿した媒体を免疫ブロット法で探索するために使用した。分子量標準はレーン1に示されている。図5B−Sub1370に対するウサギ抗血清を、0140J(レーン1)およびSrtA変異体(レーン2)由来のタンパク質界面活性剤抽出物、0140J(レーン3)、SrtA変異体(レーン4)およびSub1370変異体(レーン5)由来の濃縮され沈殿した媒体を免疫ブロット法で探索するために使用した。分子量標準はレーン6に示されている。
【0062】
【図6】図6Aから6Oは、乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質のアミノ酸配列である。
【図6A】図6AはSUB1370の配列(配列番号:1)(亜鉛カルボキシペプチダーゼ)である。
【図6B】図6BはSUB0145の配列(配列番号:2)(ラクトフェリン結合タンパク質)である。
【図6C】図6CはSUB0135の配列(配列番号:3)(フルクタンベータフルクトシダーゼ前駆体)である。
【図6D】図6DはSUB1730の配列(配列番号:4)である。図6EはSUB0888の配列(配列番号:5)である。
【図6F】図6FはSUB0207の配列(配列番号:6)である。
【図6G】図6GはSUB1154の配列(配列番号:7)(スブチリン様セリンプロテアーゼ)である。
【図6H】図6HはSUB1095の配列(配列番号:8)(コラーゲン様タンパク質)である。
【図6I】図6IはSUB0826の配列(配列番号:9)(推定表面固定スブチラーゼ)である。
【図6J】図6JはSUB0164の配列(配列番号:10)(推定短縮表面固定フィブロネクチン結合タンパク質)(推定偽遺伝子によってコードされるが)である。
【図6K】図6KはSUB0348の配列(配列番号:11)(推定コラーゲン様タンパク質の残存物)(偽遺伝子によってコードされるが)である。
【図6L】図6LはSUB1739の配列(配列番号:12)(推定表面固定化タンパク質)(偽遺伝子によってコードされるが)である。
【図6M】図6MはSUB0206の配列(配列番号:13)(未知の機能の推定排出タンパク質)である。
【図6N】図6NはSUB0241の配列(配列番号:14)(未知の機能の推定表面固定化タンパク質)である。
【図6O】図6OはSUB0337の配列(配列番号:15)(推定表面存在グルタミン結合タンパク質)である。
【0063】
【図7】図7は、野生型(0140J)およびsub0145、sub1095またはsub1154を欠いている弱毒変異体株での抗原投与後の細菌コロニー形成を示す。データは、実験的抗原投与後にそれぞれの搾乳で得られるミルクサンプルにおいて検出されるLog10cfu/mlの幾何平均として示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下に示されているデータは、ソルターゼにより乳房連鎖球菌の表面に固定されているタンパク質であるトランスアミダーゼが、毒性において重要であることを証明し、さらに、いくつかのこのようなタンパク質(例えば、sub1095、sub1154およびsub0145)が毒性に関して必須であり、したがって、この細菌において疾患を引き起こすために機能的に必要であることを明らかにする。タンパク質は良好な免疫原である。抗体の形態におけるこれらのタンパク質に対する免疫応答は、これらの機能を除去する可能性があり、したがって、同定されたタンパク質は、乳房連鎖球菌に起因する感染または疾患を減少または予防するために意図される免疫原性組成物内の有用な包含物である。
【実施例】
【0065】
実施例1:乳房連鎖球菌のSrtA変異体の生産および評価
方法および材料
細菌株および試薬
最初にUKにおけるウシ乳腺炎の臨床例から単離された乳房連鎖球菌株0140Jを、本試験にわたって使用した。該細菌は、常法通り日常的にTodd HewittまたはBrain Heart Infusion培養液において培養した。
【0066】
スキムミルクは、Institute for Animal Healthの乳牛群内の数匹の乳牛から無菌で回収した未処理の牛乳から生産した。ミルクは乳腺内感染していない動物から回収した。遠心分離(3,000×g、10分)後、上部脂肪層および沈降した細胞のペレットから、スキムミルクを注意深く取り出した。スキムミルクの無菌性を、アエスクリン(1.0%、w/v、ABA)を含む血液寒天培地上に直接、500μlのミルクを置き、5mlのミルクおよび等容量のTodd Hewitt培養液で集積培養し、次にABA上の単一コロニーの単離を行うことにより決定した。両方の場合において、プレートを37℃で18時間インキュベートした。スキムミルクを4℃で保存し、72時間以内に使用した。
【0067】
他の細菌株および試薬を、テキストに記載されているとおりに使用した。
【0068】
遺伝子型選択によるsrtA変異体の単離
以前に記載されているもの(Taylor, D. L. et al, 2003. J Bacteriol 185:5210-5219; Ward, P. N. et al 2001 Infect Immun 69:392-399)と同様のプロトコールにしたがって乳房連鎖球菌0140J pGhost9::ISS1変異体バンクのPCRスクリーニング後に、srtA(Sub0881)変異体を単離した。簡単に言うと、個々の96−ウェルプレートから一晩培養物を集め、ゲノムDNAを、ローカス特異的プライマーP261(srtA)およびISS1特異的プライマー、P247またはP250を含むPCR増幅反応において鋳型として使用するために調製した。増幅は、35サイクル(95℃20秒、54℃1分および72℃3分)を使用して実施し、AmpliTaq Gold master mix(ABI)で実施した。産物をゲル電気泳動、臭化エチジウムでの染色およびUV光でのトランスイルミネーションにより可視化した。プレート同定後、ウェル位置を、標的プレートのカラムおよび列から集められたゲノムDNAを使用して同様に同定した。変異体クローンの単離後、プラスミドベクターの切除を、抗生物質選択なしに許容温度(28℃)での培養により促進させた。pGhost9ベクターの喪失およびISS1の維持を、以前に記載されているサザンブロット法(Ward, P. N. et al 2001 Infect Immun 69:392-399)により確認した。srtAにおける挿入物の存在を、オープン・リーディング・フレームのPCR増幅およびISS1と破壊されたORFとの間の接合部にわたる得られた産物のシーケンシングにより確認した。使用されたPCRプライマーは以下の表1に示されるとおりである。
【表1】
表1:PCRプライマー。P247 ISS1 fwd(配列番号:16);P250 ISS1 rev(配列番号:17);P261(配列番号:18);P409(配列番号:19);P410(配列番号:20);P615(配列番号:21);P630(配列番号:22);P480(配列番号:23);P481(配列番号:24);P621(配列番号:25)。
【0069】
乳房連鎖球菌から染色体DNAの抽出
ゲノムDNAは、以前に記載されているHill and Leighの方法の変法を使用して調製した(Hill, A. W. et al 1994 FEMS Immunol Med Microbiol 8:109-117)。簡単に言うと、1.5mlの一晩培養物を10,000×gで2分遠心分離し、細胞ペレットを500μlの10mM Tris−Cl、5mM EDTA、pH7.8で洗浄した。細菌細胞壁を、30単位/mlのムタノリシンおよび10mg/mlのリゾチーム(両方ともSigma-Aldrich, St Louis, MO, USAから)を含む375μlの10mM Tris−Cl、5mM EDTA pH7.8中でのに再懸濁により崩壊させ、次に37℃で30分インキュベーションした。全細胞溶解を、最終濃度150μg/mlに20μlのSDS溶液(20%w/v 50mM Tris−Cl、20mM EDTA、pH7.8)およびプロテイナーゼK(Sigma)の添加により達成し、37℃で1時間さらにインキュベーションした。細胞壁物質を、200μlの飽和NaClの添加による沈降、次に12,000×gで10分の遠心分離により除去した。上清をフェノール・クロロホルムで抽出し、DNAを2容量の無水エタノールの添加により沈澱させた。DNAペレットを、70%水性エタノールで洗浄し、空気乾燥させ、20μg/mlのRNAase−A(Sigma)を含むTEバッファーに再懸濁した。
【0070】
泌乳期乳牛への乳房連鎖球菌0140JおよびSrtA変異体での抗原投与
感染原因におけるSrtAの役割を、乳牛の乳腺内感染モデルにおいて、株0140JおよびSrtAを欠いている変異体(srtA変異体)の毒性比較により決定した。細菌は、Todd Hewitt 培養液において18時間37℃で培養した。細胞を遠心分離(10,000×g、10分)により回収し、発熱物質−非含有塩水(Sigma)に懸濁し、必要な細胞密度を提供するように同じもので希釈した。それぞれの株の懸濁液を、抗原投与動物に使用するまで氷上に保持した。それぞれの懸濁液の同一のアリコートにおける生菌数を抗原投与前後に数えた。
【0071】
第1の泌乳から2−10週以内の6匹の乳牛を、抗原投与のためにInstituteの乳牛群から選択した。選択のための基準は以下のものである。乳腺炎の徴候の非存在、抗原投与前にミルクサンプルにおける細菌の非存在、現在の泌乳中に乳腺炎の病歴がない、および出産7および14日後に得られたミルクサンプルにおいて乳腺内感染の証拠がない。動物に対し、1mlの乳房連鎖球菌を含む発熱物質−非含有塩水(Sigma)の注入により乳房区に抗原投与した。2匹の動物に対し、全4つの乳房区に6.0×102cfuの株0140Jを抗原投与し、さらに4匹の動物に対し、全8つの乳房区に類似の用量のsrtA変異体を抗原投与した。抗原投与後、動物を1日に2回(07:00時および15:30時)搾乳および検査し、臨床的エンドポイントのあらかじめ決められた基準(凝固し変色したミルクおよび/または乳房区腫大または触診において誘発する不快感)に達したものを、図2で概説された規定された基準にしたがって、商標登録された(proprietary branded)抗生物質で処置した。ミルクサンプルを取り、下記のとおりに細菌および体細胞に関して分析した。
【0072】
ミルクサンプルの分析
存在する生菌数を、ABA上に1mlおよび100μlのそれぞれのミルクサンプルを直接置くことにより概算した。また、サンプルを塩水で希釈し、50μlのそれぞれの希釈物をABA上に直接置いた。それぞれの場合において、乳房連鎖球菌の存在および/または数を測定し、回収された単離物の遺伝子型を、以下に記載されているとおり、染色体DNAの制限酵素切断フラグメント長多型(RFLP)およびsrtA遺伝子座の増幅を含むことにより、決定した。ミルクサンプル中に存在する体細胞数を、コールターカウンター(Beckman Coulter, Ltd)を使用して測定した。
【0073】
メタノールクロロホルム沈降による細菌増殖培地由来のタンパク質の調製
細菌を、BHI(200ml)中で培養培地でOD600nmで約0.5に増殖させ、遠心分離(16,000×g、20分、4℃)により回収し、細菌増殖培地を0.22μMフィルター(Millipore)を介してフィルター滅菌した。1×濃度で完全プロテアーゼ阻害剤(Roche)の添加後、細菌増殖培地を、10kDaの分子量排除でAmicon遠心濾過機(Millipore)を使用して、約100倍に濃縮した。タンパク質を沈殿させるために、600μlのメタノールおよび150μlのクロロホルム(両方ともBDH)を、200μlの濃縮された細菌増殖培地に加えた。調製物をボルテックスし、450μlのMilliQ水を加え、遠心分離(16,000×g、1分)した。上相を注意深く取り出して捨て、450μlのメタノールを残りの物質に加え、これをボルテックスし、遠心(16,000×g、2分)した。上清を除去し、残りのペレットを空気乾燥させ、SDS−ローディングバッファーに再懸濁した。
【0074】
界面活性剤での非固定化タンパク質の抽出
上記培養物由来の細菌ペレットを40mlのPBSで3回洗浄し、500μlのヒアルロニダーゼを含むPBS(100U/ml、Sigma−Aldrich)に再懸濁した。細胞を2時間37℃でインキュベートし、加水分解された莢膜物質を遠心分離(8000×g、6分、4℃)により除去した。細胞を40mlのPBSで3回洗浄し、200μlのPBS中の0.1%(v/v) NonIdet P−40(NP−40)に再懸濁した。遠心分離(16,000×g、10分、4℃)による細菌細胞の除去後に、界面活性剤抽出物を回収した。
【0075】
組換えSub1154およびSub1370タンパク質の生産および精製
乳房連鎖球菌0140J ゲノムDNAから、スブチラーゼ様セリンプロテアーゼと相同性を有する推定srtA基質であるSub1154の予測される成熟コード配列(すなわち、N−末端シグナル配列を欠いている)を増幅するために、プライマーp409およびp410(上記表、参照)を設計した。3.4kbのアンプリコンを、PhusionTM高忠実度ポリメラーゼ(New England Biolabs)を使用して産生し、MinElute PCR Purification Kit(Qiagen)を使用して精製し、方向性(directional)クローニングを容易にするために、KpnI(New England Biolabs)で処理した。プラスミドpQE1(Qiagen)を、PvuII、KpnIおよびAntarcticホスファターゼ(全てNew England Biolabs)を使用して製造し、構築物を製造業者の指示にしたがって一晩20℃でライゲーションした(T4 DNAリガーゼ、New England Biolabs)。20マイクロリットルのライゲーション混合物を、Atrazhev and Elliottの方法(Atrazhev, A. M., and J. F. Elliott. 1996 Biotechniques 21:1024)を使用して、脱塩した。約10ngの脱塩されたライゲーション混合物で、大腸菌 M15 pREP4(Qiagen)を形質転換させ、組換えクローンをLB Kan25μg/ml Amp50μg/mlの寒天プレートで選択した。残基Asp34で開始する組換え(6×Hisタグ)Sub1154タンパク質を、50μg/mlのアンピシリンおよび25μg/mlのカナマイシンを含む1600mlのLB培養液への一晩培養物の希釈(1/30)により精製し、2時間撹拌なしで20℃で培養した。組換えSub1370を、プライマーP480およびP481を使用することにより、同様に製造し、800mlの培養培地で同様に増殖した。タンパク質発現をIPTGの添加により最終濃度0.2mMに誘導した。培養物をさらに2−4時間インキュベートし、次に8,000×gで20分遠心し、細菌細胞を回収した。それぞれ、約1mgおよび0.3mgの可溶性6×HisタグSub1154およびSub1370タンパク質を、製造業者の指示にしたがって、CelLyticおよびHisSelect高流量カートリッジ(両方ともSigma)を使用して、プロテアーゼ阻害剤(完全−EDTAフリー;Roche)の存在下で精製した。
【0076】
ウサギにおけるSub1154およびSub1370抗血清の生産および免疫ブロット
約50μgのフリーズドライされた精製された組換えSub1154およびSub1370タンパク質の5つのアリコートを、ウサギにおける血清生産のためにDavids Biotechnologie(Germany)に提供した。抗血清(50ml)は、フィルター滅菌され、保存剤として0.02%のアジ化ナトリウムを含んで、提供された。
【0077】
野生型乳房連鎖球菌およびSrtA変異体の培養物由来の界面活性剤および培地抽出物を、10%ドデシル硫酸ナトリウム ポリアクリルアミド(SDS−PAGE)ゲルで分離し、次に、免疫検出のためにニトロセルロース膜(Amersham)に移すか、あるいはInstantBlue (Novexin)を使用してクマシー染色した。転写は、25mMのTris−base、192mMのグリシンおよび20%(v/v)のメタノール、pH8.1−8.4からなる転写バッファーでTransblot装置(Biorad)において、170mAで1時間で行った。転写後、膜をPBS中の1%のスキムミルク粉末のブロッキング溶液中で4℃で一晩インキュベートした。膜を、0.1%のTween 20(PBST)を含むPBSで5分間で3回洗浄し、次にブロッキング溶液中における、1/12,000希釈(Sub1154抗血清の場合)および1/16,000希釈(Sub1370抗血清の場合)のウサギ抗血清と共に1時間インキュベートした。膜をPBST中で5分間、3回洗浄し、次に1/1,000希釈のHRPに複合体化させたヤギ抗−ウサギ免疫グロブリンG(Southern Biotech)と共に1時間インキュベートした。膜を、上記のとおりに再び洗浄し、HRP複合体を、16.7%のメタノールおよび0.00015%(v/v)のH2O2を含むPBS中の4−クロロナフトール(0.5mg/ml)の溶液を使用して検出し、暗下で1時間インキュベートし、膜をPBSで洗浄し、乾燥させた。
【0078】
srtA変異体の単離および遺伝的特性化
乳房連鎖球菌0140Jの完全ゲノムの分析によって、単一のソルターゼ相同体であるソルターゼA(srtA)の存在を確認した(Ward, P.N. et al (2008年提出) BMC Genomics)。変異体クローンを、逆方向性において、ソルターゼコード配列の塩基対248と249間に挿入されたISS1エレメントで単離した。この変異srtA遺伝子の翻訳産物は、srtA ORFにおいてコードされる252アミノ酸の最初の82残基と終始コドンに達する前のISS1エレメントにおけるさらなる18残基からなった。
【0079】
ウシ乳腺における実験的抗原投与後の野生型およびsrtA変異体乳房連鎖球菌の感染性および毒性
野生型株と比較したsrtA変異体の感染性および毒性を、多くの乳牛のウシ乳腺に抗原投与することにより測定した。600cfuの野生型乳房連鎖球菌を与えた動物の全抗原投与乳房区は感染し、抗原投与48−60時間後までに、約106から107cfu/mlで細菌を流出した(図1A)。類似の用量のsrtA変異体を4匹の動物における8つの乳房区に抗原投与後、全てが感染の証拠を示し、srtA変異体が、抗原投与24時間以内に野生型のものと類似のレベルで、ミルク中で検出された。しかしながら、その後の細菌コロニー形成は、抗原投与24時間後までの最大104cfu/mlミルクから減少し、その結果、実験の終わり(抗原投与の7日後)までに存在する平均細菌数が約10cfu/mlになった(図1B)。この時点まで、8つの乳房区のうち2つだけが細菌を流出し続け、残りは感染を解消した(<1cfu/ml ミルク)。
【0080】
感染に応答した乳腺への細胞浸潤は、両方の動物群において同一であり、抗原投与株に依存していなかった。それぞれの場合において、これは、このモデルにおいて以前に報告されているものと類似であり、抗原投与の48−60時間後までに最大約107細胞/mlミルクに達した。野生型株で抗原投与された動物において、これは、乳腺炎の急性臨床徴候の外観と一致し(図2および図1C)、これは感染を解消し、疾患の徴候を緩和するために抗生物質治療の投与を必要とした。全く対照的に、srtA変異体を投与された動物は、たとえあったとしても、乳腺炎の徴候をほとんど示さなかった(図2および図1C)。
【0081】
図1に示される結果は、乳房連鎖球菌が、該細菌による毒性の完全発現のために、srtAによってコードされるソルターゼタンパク質を必要とすることを証明する。SrtAを欠いている変異体は、最初に野生型乳房連鎖球菌と同様にウシ乳腺にコロニーを作ることができるが、最大細菌数が野生型株を抗原投与された動物由来のミルクにおいて検出されたものよりも約1000倍低く維持されるので、高レベルで該腺にコロニーを作ることができなかった。これは、srtA変異体が疾患の進行性臨床徴候を誘導できないことと一致した。
【0082】
srtAは、高レベルのコロニー形成および/または症候性疾患と関連する重度の炎症応答の誘導のために、毒性に関与する1つ以上のタンパク質を細菌の表面に固定すると理解することができる。
【0083】
乳房連鎖球菌におけるソルターゼ固定化タンパク質の検出
ソルターゼにより乳房連鎖球菌の細胞壁に固定されたタンパク質を同定するために、野生型乳房連鎖球菌の細胞壁タンパク質を乳房連鎖球菌のSrtA変異体のものと比較した。
【0084】
固定された細胞壁タンパク質のトリプシンペプチドを単離するために使用される方法論は、以下のとおりである。細菌培養物を、THBまたはBHIのいずれかにおいて指数増殖期および静止期の両方まで増殖させた。指数増殖培養物を、OD550nmで0.6の光学濃度まで1.5リットルの培養液において増殖させ、静止期培養物を一晩1リットルの培養液において増殖させた。細菌細胞ペレットを遠心分離(16,000×g、10分、4℃)により回収し、PBS、PBS中の0.1%(v/v) Nonidet P40(NP40)およびPBSで連続洗浄し、上記のとおりの遠心分離により回収した。細胞ペレットを、1×完全プロテアーゼ阻害剤(Roche)を含むPBSに再懸濁し、0.1mmのジルコニア/シリカビーズを含むねじぶた付きマイクロチューブ中で、氷上の散在された休息期間を有する5×1分間隔で最大速度でビーズ破砕することにより、破壊した。破壊されていない細胞およびビーズを遠心分離(8,000×g、10分、4℃)2回により除去し、次に上清を高速遠心分離(125,000×g、30分)に付した。得られたペレットを4%のSDS/PBSに再懸濁し、80℃で4時間加熱し、次に遠心した(200,000×g 30分)。得られたペレットを30℃でMilliQ水で4回洗浄し、上記のとおりに遠心した。次にペレットを1μgのプロテオミクスグレードトリプシン(Sigma)を含む50mMの重炭酸アンモニウムに再懸濁し、一晩37℃で撹拌してインキュベートした。遠心分離(16,000×g、10分)後に上清からペプチドを回収し、消化を最終濃度0.1%でのギ酸の添加により停止させた。
【0085】
ペプチドを、逆相液体クロマトグラフィー系を使用するナノLC−MS/MSにより、分離して分析した。MS/MSデータの解釈および提示は、乳房連鎖球菌0140Jに関して生産されたゲノムデータベースを使用してMascotソフトウェア(Matrixscience, London, UK)を使用して行われる探索で、公開ガイドラインにしたがって行った。
【0086】
存在するタンパク質を同定するために、トリプシンペプチドの配列を、乳房連鎖球菌の翻訳ゲノム配列とアラインした。
【0087】
図4およびBに挙げられている9つのタンパク質は、乳房連鎖球菌0140Jから調製された細胞壁上に存在するが、乳房連鎖球菌の同系srtA欠失変異体の培養物から作られた同等調製物に非存在であることが見出され、該タンパク質がソルターゼ固定化タンパク質であることが証明された。
【0088】
9つのソルターゼ固定化タンパク質の配列は、図6Aから6Iに挙げられている。図6Jから6Oは、プロテオミクスにより同定された推定ソルターゼ固定化タンパク質の配列である。
【0089】
野生型およびSrtA変異体乳房連鎖球菌のタンパク質抽出物におけるSub1154およびSub1370タンパク質の検出
乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質の2つの例である組換えSub1154および組換えSub1370は、両方とも、増幅させたゲノム乳房連鎖球菌DNAから産生し、該産物をpQE1ベクターを使用する大腸菌でクローニングし、これはそれぞれのタンパク質のN−末端で6×Hisタグを組み込んでいた。組換えタンパク質を、6×Hisタグを利用して精製し、抗血清の生産のために使用した。
【0090】
次に、ウサギ抗−Sub1154および抗−Sub1370を使用して、乳房連鎖球菌0140JおよびsrtA変異体の界面活性剤および培地抽出物の免疫ブロット法により、Sub1154およびSub1370タンパク質を検出した。BHIにおいて培養されたSub1154およびSub1370変異体由来の培地抽出物も、抗血清で調べた。Sub1154の検出を、srtA界面活性剤抽出物およびSub1154変異体培地抽出物において確認した。後者の場合において、タンパク質の予測される切断形を検出した(図5A)。Sub1370に対応するタンパク質は、srtA変異体から得られた増殖培地のみで検出された(図5B)。srtA変異体由来の抽出物のみにおけるSub1154およびSub1370タンパク質の存在は、野生型株において、該タンパク質がソルターゼにより乳房連鎖球菌の細胞壁に固定されていることを示す。
【0091】
実施例2:乳房連鎖球菌の毒性における特異的ソルターゼ固定化タンパク質の必要性に関する調査
ソルターゼ固定化タンパク質の同定後、これらをコードするそれぞれの遺伝子で野生型株を変異させた。それぞれ個々のソルターゼ固定化タンパク質を欠いている変異体を、毒性を評価するために、乳牛における抗原投与モデルにおいて使用した。毒性の減少または除去を示すものから欠失しているタンパク質は、疾患の病因/病理に関与する。のこれらのタンパク質のいずれか、好ましくは全てに対する中和免疫(抗体)応答の誘導は、野生型株での感染後の疾患を減少させるであろう。したがって、毒性において役割を有すると同定されたタンパク質のいずれか、好ましくは全てを含むワクチンは、畜牛における乳腺炎の予防において有用であろう。
【0092】
方法論
SrtA固定化タンパク質(Sub0135、Sub0145、Sub0207、Sub0241、Sub0826、Sub0888、Sub1095、Sub1154、Sub1370、Sub1730)を欠いている乳房連鎖球菌の変異体株の生産および単離
挿入的に不活化された変異体は、以前に記載されている(Taylor, D. L. et al, 2003. J Bacteriol 185:5210-5219; Ward, P. N. et al 2001 Infect Immun 69:392-399)ものと同様のプロトコールにしたがって、乳房連鎖球菌0140J pGhost9::ISS1変異体バンクのPCRスクリーニングにより、ランダム挿入変異体バンク内に位置していた。簡単に言うと、個々の96−ウェルプレートから一晩培養物を集め、ゲノムDNAを、それぞれの興味ある遺伝子に対するローカス特異的プライマーを含むPCR増幅反応において、鋳型として使用するために調製し、ISS1に特異的なプライマーと共に使用した。変異体クローンの単離後、プラスミドベクターの切除を、抗生物質選択なしに許容温度(28℃)での培養により促進させた。pGhost9ベクターの喪失およびISS1の維持を、以前に記載されているサザンブロット法(Ward, P. N. et al 2001 Infect Immun 69:392-399)により確認した。適当なORFにおける挿入物の存在を、オープン・リーディング・フレームのPCR増幅およびISS1と破壊されたORFの接合部にわたる得られた産物のシーケンシングにより確認した。
【0093】
SUB1154コード配列のほぼ開始点付近に位置するISS1を有する0140Jランダム変異体バンクから挿入変異体を単離する試みは、不成功であることが証明された。標的欠失戦略を、SUB1154遺伝子産物の生産を除去するために使用した。簡単に言うと、3432塩基対オープン・リーディング・フレームのいずれかの末端に位置する2つのフラグメントを、ゲノムDNAから増幅した。該2つのフラグメントを精製し、次にさらなるPCR増幅反応において均等な割合で鋳型として使用して、3432塩基対のSUB1154コード配列から3169塩基対を欠いている単一のΔ1154産物を産生した。このアンプリコンを、低コピー・pG+h9温度感受性プラスミドのマルチクローニングサイトにサブクローニングした。プラスミド構築物を、200μg/μlのエリスロマイシン上で37.5℃での選択を用いる大腸菌 TG1 RepAの形質転換により増幅し、次に精製したプラスミド10ngを使用して、1μg/mlのエリスロマイシン上で28℃での選択により乳房連鎖球菌0140Jをさらに形質転換した。乳房連鎖球菌0140J/pG+h9::Δ1154形質転換体を、28℃でTodd Hewitt培養液中でOD5500.5まで培養し、次に培養温度を37.5℃の非許容プラスミド複製温度まで上昇させて、単一の交差染色体組み込みをさせた。組み込み体を1μg/mlでEryを含むTHA上で37℃で選択し、次に抗生物質を欠いているTHB中で28℃で培養して、第2の交差事象によりpG+h9レプリコンの切除を促進させた。得られた細菌をTHA上に置き、37℃で一晩培養後に、コロニーを採取した。Sub1154遺伝子座の欠失は、Sub1154遺伝子座のPCR増幅により決定した。
【0094】
乳房連鎖球菌での泌乳期乳牛への抗原投与
毒性のための個々のSrtA基質の必要性を、乳牛においてよく確立した乳腺内感染モデルにおいて、実験的抗原投与により決定した。細菌は、Todd Hewitt 培養液において18時間37℃で培養した。細胞を遠心分離(10,000×g、10分)により回収し、発熱物質−非含有塩水(Sigma)に懸濁し、必要な細胞密度(500−1500cfu/ml)を提供するように同じものに希釈した。それぞれの株の懸濁液を、動物に抗原投与するために使用するまで氷上に保持した。それぞれの懸濁液の同一のアリコートにおける生菌数を抗原投与前後に数えた。
【0095】
第1の泌乳から2−10週以内の、乳牛を抗原投与のために選択した。選択のための基準は以下のものであった。乳腺炎の徴候の非存在、抗原投与前にミルクサンプルにおいて細菌の非存在、現在の泌乳中に乳腺炎の病歴がない、および出産7および14日後に得られたミルクサンプルにおいて乳腺内感染の証拠がない。500−1500cfuの乳房連鎖球菌を含む1mlの発熱物質−非含有塩水(Sigma)の注入により、動物の乳房区に抗原投与した。
【0096】
抗原投与後、動物を1日に2回(07:00および15:30)4日間、搾乳および検査した。臨床的エンドポイントのあらかじめ決められた基準(凝固し、変色したミルクおよび/または乳房区腫大または触診において誘発する不快感)に達したものを、商標登録された抗生物質で処置した。ミルクサンプルをそれぞれの搾乳時に採取し、下記のとおりに細菌および体細胞の存在に関して分析した。
【0097】
ミルクサンプルの分析
存在する生菌数を、ABA上に50μlのそれぞれのミルクサンプルを直接置くことにより概算した。また、サンプルを塩水で希釈し、50μlのそれぞれの希釈物をABA上に直接置いた。それぞれの場合において、乳房連鎖球菌の存在および/または数を測定し、回収された単離物の遺伝子型を、適当な遺伝子座の増幅により決定した。ミルクサンプル中に存在する体細胞数を、製造業者の指示にしたがって、DeLaval携帯型細胞カウンターを使用して測定した。
【0098】
結果
Sub0145、Sub1095またはSub1154の1つを欠いている変異体を、該変異が乳房連鎖球菌の主要な減毒をもたらすか否かを決定するために、乳房区に抗原投与するために使用した。全ての場合において、株を抗原投与後のミルクから回収し、それぞれを、正確に変異した遺伝子の存在を示すために遺伝子型分析した。株(sub1095、sub0145またはsub1154のいずれかを欠いている)での抗原投与は、実験の期間中に比較的乏しいコロニー形成をもたらし(図7)、野生型株と対照的にこれらのいずれの株も疾患の臨床徴候を誘導することはできなかった。結果として、感染原因におけるこれらのタンパク質の機能は、必須であると考えることができる。これらのタンパク質のいずれか、好ましくは全てに対する中和免疫(抗体)応答の誘導は、野生型株での感染後の疾患を減少させると予期される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の乳房連鎖球菌(Streptococcus uberis)タンパク質またはそれらの免疫原性部分を含む免疫原性組成物であって、対象に投与されたときに免疫応答を引き起こすことができる組成物。
【請求項2】
1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質がソルターゼ固定化タンパク質またはそれらの免疫原性部分である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質が、タンパク質SUB0145、SUB1095およびSUB1154、または、上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む群から選択される、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質が、タンパク質SUB0135、SUB0145、SUB0207、SUB0826、SUB0888、SUB1095、SUB1154、SUB1370、SUB1730およびSUB0241、または、上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む群から選択される、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質が、タンパク質SUB0135、SUB0207、SUB0826、SUB0888、SUB1095、SUB1154、SUB1370、SUB1730およびSUB0241、または、上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む群から選択される、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質がSUB1154である、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質がSUB1095である、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質がSUB0145である、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
免疫原性組成物が2つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質またはそれらの免疫原性部分を含む、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
2つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または2つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質が、タンパク質SUB0145、SUB1095およびSUB1154、または、上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む群から選択される、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
免疫原性組成物が、タンパク質SUB0145、SUB1095およびSUB1154、または、上記タンパク質の1つと50%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
組成物の免疫原性部分が全長タンパク質由来の少なくとも1つのエピトープを含む、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
対象が反芻動物であってもよい哺乳動物ある、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
免疫原性組成物が、ソルターゼ酵素により乳房連鎖球菌の表面に固定されている1つ以上のタンパク質である抗原を含む、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
抗原組成物が、組成物中の抗原に対する免疫応答を引き起こすことができ、免疫原性組成物が投与された対象において乳房連鎖球菌による感染を予防するか、または減少させるように作用する、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
組成物が、1つ以上の乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質に加えて、さらに1つ以上の抗原を含む、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
組成物が対象に投与されたときに防御免疫応答を引き起こす/生じるために使用される、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
組成物が乳房連鎖球菌に対する予防または治療ワクチンとして使用される、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
組成物がさらにアジュバントを含む、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
組成物が、組成物のコンシステンシー(consistency)を調節するための、および/または組成物からのタンパク質の放出を調節するためのポリマーまたは他の剤を含む、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
組成物中の活性成分が50%を越える純度である、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
組成物が乳房連鎖球菌に起因する感染に対するワクチンとして使用される、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
ワクチンが、乳房連鎖球菌への暴露の危険性がある動物へ予防的に、および/または、すでに乳房連鎖球菌に暴露された動物へ治療的に投与される、請求項22に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
組成物が、免疫学的に有効量の乳房連鎖球菌タンパク質からなる抗原を含む、請求項22または23に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
1つ以上の乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質またはそれらの部分を、薬学的に許容される担体または賦形剤と共に含む医薬組成物。
【請求項26】
請求項1から24のいずれかに記載の組成物をさらに含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
医薬組成物が、乳房連鎖球菌に対する防御免疫応答を生じることができる、請求項25または26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
免疫応答を引き起こすための薬物の製造における1つ以上の乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質の使用。
【請求項29】
薬物が乳房連鎖球菌に対する対象の予防または治療ワクチンのために使用される、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
請求項1から27のいずれかに記載の組成物をヒトまたは非ヒト動物に投与することを含む、乳房連鎖球菌による感染の影響からヒトまたは非ヒト動物を防御する方法。
【請求項31】
請求項1から27のいずれかに記載の組成物をヒトまたは非ヒト動物に投与することを含む、ヒトまたは非ヒト動物における免疫応答を増強するための方法。
【請求項32】
乳房連鎖球菌に起因する疾患の予防および/または処置のために使用するための、請求項1から27のいずれかに記載の組成物。
【請求項1】
1つ以上の乳房連鎖球菌(Streptococcus uberis)タンパク質またはそれらの免疫原性部分を含む免疫原性組成物であって、対象に投与されたときに免疫応答を引き起こすことができる組成物。
【請求項2】
1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質がソルターゼ固定化タンパク質またはそれらの免疫原性部分である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質が、タンパク質SUB0145、SUB1095およびSUB1154、または、上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む群から選択される、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質が、タンパク質SUB0135、SUB0145、SUB0207、SUB0826、SUB0888、SUB1095、SUB1154、SUB1370、SUB1730およびSUB0241、または、上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む群から選択される、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質が、タンパク質SUB0135、SUB0207、SUB0826、SUB0888、SUB1095、SUB1154、SUB1370、SUB1730およびSUB0241、または、上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む群から選択される、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質がSUB1154である、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質がSUB1095である、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
1つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質がSUB0145である、請求項1または2に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
免疫原性組成物が2つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質またはそれらの免疫原性部分を含む、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
2つ以上のソルターゼ固定化タンパク質または2つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質が、タンパク質SUB0145、SUB1095およびSUB1154、または、上記タンパク質の1つと50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む群から選択される、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
免疫原性組成物が、タンパク質SUB0145、SUB1095およびSUB1154、または、上記タンパク質の1つと50%またはそれ以上の配列相同性を有するタンパク質を含む、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
組成物の免疫原性部分が全長タンパク質由来の少なくとも1つのエピトープを含む、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
対象が反芻動物であってもよい哺乳動物ある、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
免疫原性組成物が、ソルターゼ酵素により乳房連鎖球菌の表面に固定されている1つ以上のタンパク質である抗原を含む、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
抗原組成物が、組成物中の抗原に対する免疫応答を引き起こすことができ、免疫原性組成物が投与された対象において乳房連鎖球菌による感染を予防するか、または減少させるように作用する、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
組成物が、1つ以上の乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質に加えて、さらに1つ以上の抗原を含む、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
組成物が対象に投与されたときに防御免疫応答を引き起こす/生じるために使用される、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
組成物が乳房連鎖球菌に対する予防または治療ワクチンとして使用される、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
組成物がさらにアジュバントを含む、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
組成物が、組成物のコンシステンシー(consistency)を調節するための、および/または組成物からのタンパク質の放出を調節するためのポリマーまたは他の剤を含む、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
組成物中の活性成分が50%を越える純度である、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
組成物が乳房連鎖球菌に起因する感染に対するワクチンとして使用される、前記請求項のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
ワクチンが、乳房連鎖球菌への暴露の危険性がある動物へ予防的に、および/または、すでに乳房連鎖球菌に暴露された動物へ治療的に投与される、請求項22に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
組成物が、免疫学的に有効量の乳房連鎖球菌タンパク質からなる抗原を含む、請求項22または23に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
1つ以上の乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質または1つ以上の乳房連鎖球菌タンパク質またはそれらの部分を、薬学的に許容される担体または賦形剤と共に含む医薬組成物。
【請求項26】
請求項1から24のいずれかに記載の組成物をさらに含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
医薬組成物が、乳房連鎖球菌に対する防御免疫応答を生じることができる、請求項25または26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
免疫応答を引き起こすための薬物の製造における1つ以上の乳房連鎖球菌ソルターゼ固定化タンパク質の使用。
【請求項29】
薬物が乳房連鎖球菌に対する対象の予防または治療ワクチンのために使用される、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
請求項1から27のいずれかに記載の組成物をヒトまたは非ヒト動物に投与することを含む、乳房連鎖球菌による感染の影響からヒトまたは非ヒト動物を防御する方法。
【請求項31】
請求項1から27のいずれかに記載の組成物をヒトまたは非ヒト動物に投与することを含む、ヒトまたは非ヒト動物における免疫応答を増強するための方法。
【請求項32】
乳房連鎖球菌に起因する疾患の予防および/または処置のために使用するための、請求項1から27のいずれかに記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図6J】
【図6K】
【図6L】
【図6M】
【図6N】
【図6O】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図6J】
【図6K】
【図6L】
【図6M】
【図6N】
【図6O】
【図7】
【公表番号】特表2012−504661(P2012−504661A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530570(P2011−530570)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051321
【国際公開番号】WO2010/041056
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(500342709)ザ ユニバーシティ オブ ノッティンガム (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051321
【国際公開番号】WO2010/041056
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(500342709)ザ ユニバーシティ オブ ノッティンガム (7)
【Fターム(参考)】
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