説明

乳癌再発の予防のためのワクチン

本発明は、臨床的寛解状態の患者における乳癌に対する防御免疫または治療免疫を誘導し維持する効果を有するHER2/neu癌遺伝子のペプチドE75に対する防御性細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導し維持する方法を特徴とする。該方法は、製薬上許容される担体、アジュバント、例えば組換えヒトGM-CSF、およびE75ペプチドを含むワクチン組成物の有効量を、最適化された用量およびスケジュールで該患者に投与することを含む。該方法は更に、E75特異的T細胞免疫の低下のために1年ごと又は半年ごとにブースターワクチン用量を投与することを含む。本発明はまた、該方法において使用するためのワクチン組成物を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年6月1日付け出願の米国出願番号60/941,524(その全開示を参照により本明細書に組み入れることとする)の利益を主張するものである。
【0002】
分野
本発明は、全般的には、予防用および治療用ワクチンの分野に関する。より詳しくは、本発明は、乳癌の治療および乳癌寛解患者における再発の予防のためのペプチドワクチンに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
特許、公開された出願、技術文献および学術論文を含む種々の刊行物が本明細書の全体において引用されている。これらの引用刊行物のそれぞれの全体をあらゆる目的で参照により本明細書に組み入れることとする。
【0004】
乳癌(BCa)は、女性において最もよく見られる癌診断であり、女性における癌関連死の第2位の主要原因である(Ries LAGら, (編). SEER Cancer Statistics Review, 1975-2003, National Cancer Institute, Bethesda, MD)。過去20年における乳癌治療における大きな進歩は無疾患生存(DFS)率の著しい改善をもたらしている。例えば、疾患の進行を遅らせ又は疾患の再発を予防するために、特定の細胞過程を遮断するための腫瘍関連抗原に対して反応性である抗体を使用する療法が用いられている。乳癌治療における最近の進歩にもかかわらず、相当数の患者が最終的には再発性疾患により死亡する。したがって、再発性疾患の発生を予防し又は遅らせ又は妨げる治療法が必要とされている。
【0005】
ワクチンは、その投与の容易さ及び感染症に関して認められているその高い成功率のため、そのような治療および予防のための魅力的なモデルである。癌ワクチンの構築の基本概念は理論上は単純である。しかし、実際には、充実性腫瘍に対する有効な癌ワクチンの開発は、限られた成功しか収めていない。例えば、転移性メラノーマに対するペプチドワクチンを投与することを試みた1つのグループは、わずか2.6%の客観的応答率を観察したに過ぎなかった(Rosenberg SAら, (2004) Nat. Med. 10:909-15)。
【0006】
この低い成功率に関しては多くの解釈が可能である(Campoli Mら, (2005) Cancer Treat. Res. 123:61-88)。例えば、抗原が特定のタイプの腫瘍細胞に特異的に関連している場合であっても、該腫瘍細胞は該抗原を低レベルでしか発現できないか、あるいはそれは隠れた部位内に位置するか又は免疫検出から遮蔽されている可能性がある。また、腫瘍は、それの発達につれて抗原を取り除くことにより、その抗原プロファイルを変化させることが多い。また、MHCタンパク質および免疫応答を生成するのに必要な他の共刺激性タンパク質を腫瘍細胞が非常に低レベルでしか発現できないということも低い成功率の一因となっている。
【0007】
腫瘍に対するワクチン接種の試みが直面する他の問題は、進行期癌を有する患者において発生する。そのような患者は、より大きな原発性および転移性腫瘍を有する傾向にあり、腫瘍の内部の細胞へは、血流が乏しいため接近できない。これは、ワクチン戦略が、悪性血液疾患の治療では、より成功しやすい傾向にあるという観察と符合する(Radford KJら, (2005) Pathology 37:534-50およびMolldrem JJ (2006) Biol. Bone Marrow Transplant. 12:13-8)。また、腫瘍が転移性になるにつれて、それは、免疫抑制因子をその微小環境内へ放出する能力を発達させうる(Campoli, 2005; およびKortylewski Mら, (2005) Nature Med. 11:1314-21)。転移性腫瘍は末梢血リンパ球数の減少および樹状細胞機能不全にも関連づけられている(Gillanders WEら, (2006) Breast Diseases: A Year Book and Quarterly 17:26-8)。
【0008】
これらの要因の幾つか又は全てが、有効な予防用または治療用ワクチンの開発を困難にする一因になりうるが、根底にある大きな課題は、ほとんどの腫瘍抗原が自己抗原であるか、または自己抗原に対して高度の相同性を有し、したがって、厳密な免疫寛容を受けると予想される点にある。したがって、免疫刺激性アジュバントを伴う又は伴わない、ペプチドベースの多数の癌ワクチンは、低い免疫原性および特異性欠如のため、臨床実施において、限られた成功しか収められない定めにありうることは明らかである。
【0009】
単一抗原に基づく原型乳癌ワクチンは、動物実験において及び乳癌患者での臨床試験において、測定可能な応答を誘導することに、ある程度成功している。しかし、観察された免疫応答は、標準的な手術および化学療法により寛解状態になった疾患の再発に対する臨床的に有意な防御免疫にとして実現されていない。したがって、BCa患者における再発率および全体生存を更に改善するために、新規ワクチンアプローチが必要とされている。
【0010】
好ましいワクチンエピトープは、専ら腫瘍により発現されるもの、あるいは少なくとも上昇したレベルで腫瘍により発現されるものである。HER2/neuは、多数の上皮悪性疾患において発現される原癌遺伝子である(Slamon DJら, (1989) Science 244:707-12)。HER2/neuタンパク質の遺伝子増幅および過剰発現はBCaの20〜25%において見られ、その過剰な存在は予後不良の指標である(Pritchard KIら, (2006) N. Engl. J. Med. 354:2103-11)。HER/neuは非常に詳細に研究されており、このタンパク質から幾つかの免疫原性ペプチドが同定されている。1つのそのようなペプチドはE75と称され、HER2/neuのアミノ酸369-377(配列番号1)に対応する(米国特許第6,514,942号)。
【0011】
抗癌ワクチンとしてE75を利用する試みがなされてきており、例えば、種々の免疫アジュバントと組み合わせたり(Zaks TZら, (1998) Cancer Res. 58:4902-8; Knutson KLら, (2002) Clin. Cancer Res. 8:1014-8およびMurray JLら, (2002) Clin. Cancer Res. 8:3407-18)、あるいは自己樹状細胞上に積載し再注入したり(Brossart Pら, (2000) Blood 96:3102-8およびKono Kら, (2002) Clin. Cancer Res. 8:3394-3400)、あるいはCD4ヘルパーT細胞を動員するために、HLAクラスII分子に結合しうるより長いペプチド内に埋め込んだり(Disis MLら, (1999) Clin. Cancer Res. 5:1289-97; and, Disis ML et al. (2002) J. Clin. Oncol. 20:2624-32)した単一ペプチドワクチンとしての利用がある。各手法はE75特異的細胞傷害性T細胞性免疫応答を刺激したが、進行期乳癌を有する女性における臨床的に有意な治療または防御免疫を実証していない。
【0012】
HER2/neuは上皮増殖因子受容体ファミリーのメンバーであり、細胞の成長および増殖の調節に関与する185kdチロシンキナーゼ受容体をコードしている(Popescu NC, King CR, Kraus MH. Localization of the human erbB-2 gene on normal and rearranged chromosome 17 to bands q12-21.32. Genomics 1989;4:362-366; Yarden Y, Sliwkowski MX. Untangling the ErbB signaling network. Nat Rev Mol Cell Bio 2001;2:127-137)。HER2/neuの過剰発現および/または増幅は浸潤性乳癌(BCa)の25〜30%で見られ、より侵襲性の腫瘍およびより不良な臨床結果と関連づけられている(Slamon DJ, Clark GM, Wong SGら, Human breast cancer: correlation of relapse and survival with amplification of the HER-2/neu oncogene. Science 1987;235:177-182; Slamon DJ, Godolphin W, Jones LAら, Studies of the HER-2/neu proto-oncogene in human breast and ovarian cancer. Science 1989;244:707-12; Toikkanen S, Helin H, Isola J, Joensuu H. Prognostic significance of HER-2 oncoprotein expression in breast cancer: A 30-year follow-up. J Clin Oncol 1992;10:1044-1048)。
【0013】
HER2/neuの状態の決定は、主として、2つの試験、すなわち、免疫組織化学法(IHC)および蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)により行われる。IHCはHER2/neuタンパク質の過剰発現を検出し、0〜3+(0 = 陰性、1+ = 低発現、2+ = 中等度、および3+ = 過剰発現)の半定量的尺度で記録される。一方、FISHはHER2/neu遺伝子の増幅(過剰コピー)を検出し、それは第17染色体遺伝子コピーに対するHER2/neu遺伝子コピーの比率として表され、FISHが>2.0コピーである場合に「過剰発現」と解釈される(Hicks DG, Tubbs RR. Assessment of the HER2 status in breast cancer by fluorescence in situ hybridization: a technical review with interpretive guidelines. Hum Pathol 2005;36:250-261)。IHCおよびFISHの一致は約90%である(Jacobs TW, Gown AM, Yaziji Hら, Specificity of HercepTest in determining HER-2/neu status of breast cancers using the United States Food and Drug Administration-approved scoring system. J Clin Oncol 1999;17:1533-1541)。FISHは最も基準となる試験(gold standard)とみなされている。なぜなら、遡及分析は、それがトラスツズマブ(trastuzumab;Tz)応答の、より良好な予測因子であり、それが、より客観的であり、かつ再現性に富むことを示しているからである(Press MF, Slamon DJ, Flom KJら, Evaluation of HER-2/neu Gene Amplification and Overexpression: Comparison of Frequently Used Assay Methods in a Molecularly Characterized Cohort of Breast Cancer Specimens. J Clin Oncol 2002;14:3095-3105; Bartlett J, Mallon E, Cooke T. The clinical evaluation of HER-2 status: which test to use? J Pathol 2003;199:411-417; Wolff AC, Hammond MEH, Schwartz JNら, American Society of Clinical Oncology / College of American Pathologists guideline recommendations for human epidermal growth factor receptor 2 testing in breast cancer. J Clin Oncol 2007;25:118-145)。
【0014】
原癌遺伝子としてのHER2/neuの同定および定量は、Tz(ハーセプチン(Herceptin(登録商標)))の使用を含む、体液性または抗体に基づく受動免疫療法につながった。Tzは、HER2/neuタンパク質の細胞外膜近傍ドメインに結合する組換えヒト化モノクローナル抗体である(Plosker GL, Keam SJ. Trastuzumab: A review of its use in the management of HER2-positive metastatic and early-stage breast cancer. Drugs 2006;66:449-475)。TzはHER2/neu過剰発現(IHC 3+ またはFISH>2.0)節陽性(NP)および転移性BCa患者に適応し(Vogel CL, Cobleigh MA, Tripathy Dら, Efficacy and safety of trastuzumab as a single agent in first-line treatment of HER2-overexpressing metastatic breast cancer. J Clin Oncol 2002;20:719-726; Piccart-Gebhart MJ, Procter M, Leyland-Jones Bら, Trastuzumab after adjuvant chemotherapy in HER2-positive breast cancer. N Engl J Med 2005;353:1659-1672)、低度〜中等度のHER2/neu発現を示す患者においては、非常に限られた活性しか示さない(ハーセプチントラスツズマブ(Trastuzumab)医療用薬品挿入書。 South San Francisco, CA: Genentech Inc; September 2000改訂)。
【0015】
研究途上のもう1つの形態の免疫療法は、HER2/neuのような腫瘍関連抗原(TAA)上のエピトープに対する細胞性免疫応答を狙ったワクチン接種および能動免疫療法である。HER2/neuは、HER2/neu発現癌細胞を認識し殺すために免疫系を刺激しうる幾つかの免疫原性ペプチドの源である(Fisk B, Blevins TL, Wharton JTら, Identification of immunodominant peptide of the HER2/neu proto-oncogene recognized by ovarian tumor-specific CTL lines. J Exp Med 1995;181:2109-2117)。
【0016】
E75(KIFGSLAFL, HER2/neu, 369-377)はHER2/neu原癌遺伝子ファミリー中のペプチド配列であり、癌細胞を破壊するための細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を刺激するための抗癌ワクチンとして臨床治験において使用されている(Zaks, Tら, Immunization with a peptide epitope (369-377) from HER-2/neu leads to peptide specific cytotoxic T lymphocytes that fail to recognize HER-2/neu+ tumors. Cancer Research. 58 (21): 4902-8. 1998; Knutson KL, Schiffman K, Cheever MAら, Immunization of cancer patients with HER-2/neu, HLA-A2 peptide, p369-377, results in short-lived peptide-specific immunity. Clin Cancer Res 8:1014-1018, 2002; Murray JL, Gillogly ME, Przepiorka Dら: Toxicity, immunogenicity, and induction of E75-specific tumorlytic CTLs by HER-2 peptide E74 (369-377) combined with granulocyte macrophage colony-stimulating factor in HLA-A2+ patients with metastatic breast and ovarian cancer. Clin Cancer Res 8:3407-3418, 2002; Avigan D, Vasir B, Gong Jら, Fusion cell vaccination of patients with metastatic breast and renal cell cancer induces immunological responses. Clin Cancer Res 2004: 10:4699-4708; Disis ML, Gooley TA, Rinn Kら, Generation of T-cell immunity to the HER2/neu protein after active immunization with HER2/neu peptide-based vaccines. J Clin Oncol 2002;20:2624-32; Disis ML, Grabstein KH, Sleath PRら, Generation of immunity to the HER-2/neu oncogenic protein in patients with breast and ovarian cancer using a peptide-based vaccine. Clin Cancer Res 5:1289-1297, 1999)。
【0017】
HER2/neu原癌遺伝子に基づく標的化受動免疫療法は主にTz(ハーセプチン(登録商標))の使用を中心に展開している。Tzは、HER2/neuタンパク質の細胞外膜近傍ドメインに結合する組換えヒト化モノクローナル抗体である。Tzは規制当局により承認されており、転移性乳癌患者における、および節陽性乳癌患者に対する補助療法における、HER2/neuを過剰発現(IHC 3+またはFISH>2.0)する腫瘍の治療に適応がある。Tzは複数の臨床治験に付されており、現在、転移性患者の治療において、およびHER2/neuの過剰発現を示す高リスク癌患者の補助療法において、常套的に使用されている。しかし、Tzは、低度〜中等度のHER2/neu発現を示す患者においては、限られた活性しか示さない。したがって、Tzで見られたこれまでの結果に基づけば、HER2/neuを標的とする免疫原性ペプチドワクチンは、低度〜中等度のHER2/neu腫瘍発現を示す癌患者において有効であるとは期待されない。
【0018】
したがって、臨床的に寛解状態の乳癌患者に乳癌の再発に対する信頼しうる防御をもたらすワクチンを製造するために、E75の免疫防御および治療の可能性を引き出すことが当技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0019】
概要
本発明は、臨床的に寛解状態にある乳癌患者における乳癌の再発に対する免疫を誘導し維持する方法に関する。該方法は、製薬上有効な担体と配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチドとを含む組成物の有効量を該患者に投与することを含む。該投与は、当技術分野における適当な任意の手段、例えば接種または注射、より具体的には皮内注射(これは1以上の別個の用量で行われうる)により達成されうる。そのような用量は、等濃度の該ペプチドおよび免疫アジュバントを含むことが可能であり、実質的に同時に投与されることが可能であり、皮膚の表面上の1つの接種部位にまたは互いに離れた部位に投与されることが可能である。該組成物は、防御免疫が確立されるまで、月1回で約3〜6回またはそれ以上投与されうる。いくつかの態様においては、該組成物は更に、アジュバント、例えば組換えヒト顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)を含む。
【0020】
いくつかの態様においては、該方法は更に、製薬上有効な担体と配列番号2のペプチドとを含む組成物の有効量を含むブースター(追加免疫)ワクチン用量を被験体に投与することを含む。いくつかの態様においては、該ブースターの組成物は更に、アジュバント、例えばGM-CSFを含む。ブースターの投与は接種または注入により行うことができ、その後6ヶ月または12ヶ月ごとに投与することができる。
【0021】
患者は任意の哺乳動物であってよく、好ましくはヒトである。ある態様においては、ヒトは、ヒト白血球抗原A2またはヒト白血球抗原A3として血液型決定される主要組織適合抗原に関して陽性である。他の態様においては、ヒトは、検出可能なレベルのHER2/neuの発現に関して陽性である。いくつかの態様においては、ヒトは低度または中等度HER2/neu発現者である。例えば、いくつかの好ましい態様においては、ヒトは1+または2+の免疫組織化学(IHC)評価および/または2.0未満の蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)評価を有する。他の態様においては、ヒトは3+までのIHC評価を有しうる。他の態様においては、ヒトはHER2/neuの過剰発現者でありうる。例えば、いくつかの好ましい態様においては、ヒトは3+の免疫組織化学(IHC)評価および/または2.0以上の蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)評価を有する。
【0022】
本発明はまた、本方法において使用するための組成物も特徴とする。そのような組成物は、製薬上許容される担体、配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチドの有効量、アジュバント(例えば顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子)、および最適化された免疫スケジュールを含む。いくつかの特定の態様においては、該ワクチン組成物の好ましい濃度およびスケジュールは、(1)1mg/mlのペプチドおよび0.25mg/mlのアジュバント、(2)0.5mg/mlのペプチドおよび0.25mg/mlのアジュバント、(3)0.1mg/mlのペプチドおよび0.25mg/mlのアジュバント、ならびに(4)0.5mg/mlのペプチドおよび0.125mg/mlのアジュバントを含み、それぞれは、連続した6ヶ月間にわたって月1回接種され、ついで3年以上にわたって年1回ブースター接種される。
【0023】
図面の簡潔な説明
本発明の理解を更に深めるために添付されており、本明細書の一部に含まれ本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の諸態様を例示し、本明細書と共に本発明の原理を説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、E75でワクチン接種された患者が経験した最大局所および全身毒性を示す。局所毒性(注射部位の紅斑および硬化)は、該ワクチンに対する応答を示す望ましい効果である。最も一般的な等級2の局所毒性は、かゆみ又は不快感(投薬を要するもの)である。最も一般的な全身毒性は骨痛、インフルエンザ様症状および疲労感(一般にはGM-CSFと関連している)であり、24時間未満の間持続した。2つの等級3の全身毒性は、舌の血管浮腫(第6回の接種の後)、および骨痛であった。
【図2】図2は、20ヶ月の中間追跡調査における、カプラン・メイヤー(Kaplan Meier)無疾患生存曲線を示す。171人の登録患者に関して、20ヶ月の中間追跡調査において、再発率はワクチン接種群においては5.6%であり、一方、観察群においては14.2%であった(P=0.04)。ワクチン接種群および対照群における無疾患生存率は、それぞれ、92.5%および77%であった。
【図3】図3Aおよび3Bは、ワクチンにより誘導されたE75 CTL応答を示す。(A)全患者に関する、ワクチンにより誘導されたE75特異的CTL。CD8+ E75特異的CTLの中央値はワクチン接種前レベル(0.39%, 範囲0〜3.28%)から最大レベルへ(1.8, 範囲0.4〜12.2%, P<0.0001)、そしてワクチン接種後レベルへ(0.70%, 範囲0.06〜2.91%, P=0.002)と有意に上昇した。特異的CD8+ T細胞のワクチン前レベルと長期(6ヶ月)レベルとの間に差はなかった。(B)既存免疫に基づく、ワクチンにより誘導されたE75特異的CTL。既存免疫を有する患者および有さない患者は、E75ワクチン接種に対する応答において同一パターンを示し、両方に関して類似した中央値最大レベルおよびワクチン接種後レベルが得られた。しかし、既存免疫を有さない患者においては、ワクチン接種前からワクチン接種後6ヶ月までに二量体レベルにおける有意な増加が認められた(0.13% [範囲0〜0.28%] 対0.45% [0〜2.68%], P<0.0001)。
【図4A−B】図4A〜4Dは遅延型過敏症試験の結果を示す。(A)ワクチン接種後の全患者のDTH。対照2.1±0.5mmであるのに対して、ペプチド14.0±1.4mm, P<0.0001。(B)NN患者に関するワクチン接種前およびワクチン接種後のDTH。生理食塩水対照とペプチドワクチン接種前との間に差はなかった。ワクチン接種後、ワクチン接種後の対照と比較して(P<0.001)、およびワクチン接種前のE75 DTHと比較して(P<0.001)、E75ペプチドに対するDTH応答における有意な増加が認められた。
【図4C−D】図4A〜4Dは遅延型過敏症試験の結果を示す。(C)治験によるワクチン接種後のDTH。NP患者は、NN患者と比較して大幅に大きなDTH応答を示した(17.3±2.4mm対10.9±1.5mm, P=0.02)。これは、NN群における合計ワクチン用量中央値における違いによるものでありうる(2000μg対4000μg, P<0.0001)。(D)投与群ごとのワクチン接種後のDTH。6000μg未満のE75が投与された患者は、合計6000μgが投与された患者と比較して有意に小さなDTH応答を示した(13.3±1.9mm対25.1±4.0mm, P=0.008)。
【図5】図5はブースター患者におけるCD8+ T細胞のレベルを示す。一連の一次ワクチン接種の6ヶ月後にブースターが投与された患者は、一連の一次ワクチン接種から6ヶ月を超える患者よりも有意に高いレベルのCD8+ T細胞を示した。6ヶ月を超える患者においては、彼女らは、一次ワクチン接種の6ヶ月後の自分自身のレベルから、0.7%〜0.44%の有意でない減少を示した。
【図6】図6は、等級付けされた局所および全身毒性を示す。患者の大多数は等級1の局所毒性を示し、2人の患者のみが等級2の局所毒性を示した。該患者の半分以上は全身毒性を示さず、等級2または3の全身毒性は見られなかった。等級1の全身毒性を示した11人の患者は疲労感(4)、頭痛(4)、筋肉痛(3)、悪寒(2)、発熱(2)、下痢(1)、倦怠感(1)、骨痛(1)および関節痛(1)(括弧内は症例数)を示した。
【図7】図7は、SRIを欠く患者におけるブースター応答が抗原特異的CD8+ T細胞数の増加の傾向を示したことを示す。
【図8】図8は、酵素結合免疫吸収により検出されたIFN-γ分泌細胞の増加を示す患者を示す。全体で患者の91%が、ELISPOTによる測定で抗原特異的(機能的)T細胞の増加を示し、50%が明白な増加(アッセイの50%以上でIFN-γ分泌細胞が増加)を示した。
【図9】図9はブースター患者における局所反応を示す。一連の一次ワクチン接種の終了時点に時間的により近い時点(9ヶ月以下;淡色棒グラフ)でブースターが投与された患者は、一連の一次ワクチン接種から9ヶ月を超えて投与された患者よりも有意に大きなLRを示した。それらの2つの群は、一連の一次投与の終了時には、類似したLRを示した(左側)。これらのデータは、より早くブースターが投与された患者における該ブースターの相加効果、およびより遅くブースターが投与された患者に関する維持効果を示している。
【図10】図10は、一連の一次投与の経過に伴って増加するLRを示し、それらの2つの群が一連の最初の投与において同じであったこと、および唯一の相違が一連の一次投与からの時間であることを示している。vax6番号は、図7に示した以前のLR番号の最後とは異なる。というのも、幾人かの患者は4回しか接種を受けていなかったからである。それらの2つの群は、<9ヶ月の群がより大きかったワクチン3(97対80, p=0.04)を除く全ての時点について、統計的に同一であった。
【図11A−B】図11A〜図11Dは、HER2/neuのLEとOEを比較した、E75第II相治験において登録された患者の免疫学的応答(平均±SE)および臨床的応答(絶対的再発および死亡率)を示す。A.in vitro免疫応答 - in vitroでの特異的CD8+ T細胞(%)は全てワクチン接種前(pre)から最大(max)へと統計的に増加し(LE p<0.001, OE p<0.001)、LE患者はOE患者と比較して最大応答の増加を示した(p=0.04)。B.in vivo免疫応答 - in vivoでのDTHは全てワクチン接種前(pre)からワクチン接種後(post)へと統計的に増加した(LE p<0.001, OE p=0.02)。
【図11C−D】図11A〜図11Dは、HER2/neuのLEとOEを比較した、E75第II相治験において登録された患者の免疫学的応答(平均±SE)および臨床的応答(絶対的再発および死亡率)を示す。C.再発率 - 統計的に有意ではないものの、ワクチン接種されたLEおよびOE患者において再発率が減少した。D.死亡率 - ワクチン接種されたLE患者は死亡率の減少の傾向を示した(p=0.08)。
【図12A−B】図12A〜図12Dは、HER2/neu IHC発現レベル(0, 1+, 2+, 3+)ごとの、E75第II相治験において登録された患者の免疫学的応答(平均±SE)および臨床的応答(絶対的再発および死亡率)を示す。A.in vitro免疫応答 - in vitroでの特異的CD8+ T細胞(%)は全てワクチン接種前(pre)から最大(max)へと統計的に増加し、一方、ワクチン接種前(pre)から長期(long term)のHER2/neu 1+のみが有意性の傾向を示した(p=0.08)。B.in vivo免疫応答 - in vivoでのDTHは全てワクチン接種前(pre)からワクチン接種後(post)へと統計的に増加した(0 p=0.03, 1+ p=0.02, 2+ p=0.02, 3+ p=0.05)。
【図12C−D】図12A〜図12Dは、HER2/neu IHC発現レベル(0, 1+, 2+, 3+)ごとの、E75第II相治験において登録された患者の免疫学的応答(平均±SE)および臨床的応答(絶対的再発および死亡率)を示す。C.再発率 - 統計的に有意ではないものの、再発率は全てのワクチン接種IHCレベルにおいて減少した。D.死亡率 - 死亡率は全てのワクチン接種IHCレベルにおいて減少し、HER2/neu IHC 1+ワクチン患者においては統計的に有意であった(p=0.04)。
【図13】図13Aおよび13Bは、ODG対SDGごとの二量体アッセイおよびDTHを示す。(A)平均ワクチン接種前CD8+ E75特異的T細胞レベルにおいてODG対SDGでの有意差が認められた(0.91+0.13%対0.54+0.11%, p=0.03)。平均最大CD8+ E75特異的T細胞レベル間で有意差は認められなかった。最適用量は、月1回のワクチン接種後のCD8+ E75特異的T細胞パーセントの平均において増加の傾向を示した(0.87+0.10%対0.67+0.05%, p=0.07)。6ヶ月の時点の群間の平均長期CD8+ E75特異的T細胞レベルにおける差は認められなかった。(B)ODG対SDG間の直交平均DTH応答(mm)は対照接種に対する差を示さなかった(3.0+1.1mm対2.0+0.5mm)。該ペプチドに対するDTH応答はODG対SDGにおいて有意に増加した(21.5+2.5mm対11.3+1.3mm, p=0.00021)。
【図14】図14はSDGおよびODGの間の臨床的再発率の比較を示す。SDGと比較して、ODGは、より大幅に短期の中間追跡調査におけるものではあるが、より低い再発率の傾向を示した(p=0.27)。しかし、ODGは、より顕著に侵襲性の疾患を有する、より若い患者から構成されていた。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
本明細書および特許請求の範囲の全体にわたって、本発明の方法および他の態様に関する種々の用語が用いられている。そのような用語には、特に示さない限り、当技術分野における通常の意味が与えられるべきである。他の具体的に定義されている用語は、本明細書に記載されている定義に合致するように解釈されるべきである。
【0026】
「予防」なる語は、放射線医学検査または身体診察の結果を含む任意の客観的または主観的パラメーターにより測定された場合の臨床的寛解状態の患者における乳癌の再発/ぶり返しを未然に防ぐことにおける任意の成功または成功の徴候を意味する。
【0027】
「有効量」または「治療的有効量」は本明細書中では互換的に用いられ、本明細書中に開示、記載または例示されている生物学的結果(これらに限定されるものではない)を含む個々の生物学的結果を達成するのに有効な、本明細書に記載の化合物、物質または組成物の量を意味する。そのような結果には、当技術分野における適当な任意の手段により判定された場合の、乳癌の予防、より詳しくは、再発性乳癌の予防、例えば、被験体における再発の予防が含まれうるが、これらに限定されるものではない。最適な治療量は、最良の治療結果を達成するための用量、スケジュールおよびブースターの使用を意味する。
【0028】
「製薬上許容される」は、組成、製剤化、安定性、患者の容認およびバイオアベイラビリティに関して薬理学的/毒物学的観点から患者に許容される及び物理的/化学的観点から薬品製造化学者に許容される特性および/または物質に関して用いられる。「製薬上許容される担体」は、有効成分の生物活性の有効性を妨げない媒体であって、それが投与される宿主に毒性でない媒体を意味する。
【0029】
「防御免疫」または「防御免疫応答」は、例えば本明細書に記載され例示されている乳癌抗原のような抗原の免疫原性成分に対する能動免疫応答を被験体が備え、後に該抗原にさらされた際に、該被験体の免疫系が、該抗原を発現する細胞を標的化し破壊して、該被験体における癌の再発による罹患率および死亡率を減少させることができるようにすることを意味する。本発明の場合の防御免疫は、好ましくは、Tリンパ球により付与されるが、これに限定されるものではない。
【0030】
量、時間的持続などのような測定可能な値に言及する場合に本明細書中で用いる「約」なる語は、開示されている方法を行うのに適した変動である限り、特定されている値からの±20%または±10%、より好ましくは±5%、より一層好ましくは±1%、更に好ましくは±0.1%の変動を包含する意である。
【0031】
「ペプチド」は、ペプチド結合または修飾ペプチド結合(すなわち、ペプチド等量式)により互いに連結された2以上のアミノ酸を含む任意のペプチドを意味する。ポリペプチドは、ペプチド、オリゴペプチドまたはオリゴマーと一般に称される短鎖のもの、およびタンパク質と一般に称される、より長鎖のものの両方を意味する。ポリペプチドは、20種の遺伝子コード化アミノ酸以外のアミノ酸を含有しうる。ポリペプチドは、翻訳後プロセシングのような天然過程により、または当技術分野でよく知られている化学修飾技術により修飾された、アミノ酸配列を含む。そのような修飾は基本的な教科書およびより詳細なモノグラフならびに大部の研究文献に十分に記載されている。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシル末端を含む、ポリペプチドの任意の位置で生じうる。所与のポリペプチド内の幾つかの部位において、同じ又は異なる度合で、同じタイプの修飾が存在しうることは理解されよう。また、所与のポリペプチドは多くのタイプの修飾を含有しうる。ポリペプチドはユビキチン化の結果として分枝状であってよく、それは、分枝を伴う又は伴わない環状であってよい。環状、分枝状および分枝状環状ポリペプチドは天然翻訳後過程から生じるものであってよく、あるいは合成法により製造されうる。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム成分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタマートの形成、ホルミル化、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、タンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加、例えばアルギニン化、およびユビキチン化が含まれる。
【0032】
「ブースター」は、防御免疫を増強し、持続させ又は維持するために及び調節性T細胞により引き起こされるT細胞応答のダウンレギュレーションを克服するために患者に投与される免疫原の投与を意味する。
【0033】
「乳癌を伴わない」または「無疾患(疾患を伴わない)」またはNED(No Evidence of Disease; 疾患の証拠無し)は、患者が、現行の標準的なケア療法での治療により誘導された臨床的寛解状態にあることを意味する。「寛解」または「臨床的寛解」は同義的に用いられ、癌細胞が体内に尚も存在しうるが乳癌の臨床的徴候、放射線医学的徴候および症状が有意に軽減しており又は臨床診断に基づけば完全に消失していることを意味する。したがって、寛解は部分的および完全な寛解を含むと意図される。残存癌細胞の存在は例えばCTC(循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells))のようなアッセイにより計数でき、再発の予測因子となりうる。
【0034】
「ぶり返し」または「再発」または「復活」は本明細書中では互換的に用いられ、ある期間の改善または寛解の後の、乳癌の再生またはその徴候および症状の放射線医学的診断を意味する。
【0035】
乳癌は世界中の女性にとって重大な健康問題である。現在までに試みられた乳癌ワクチンは、疾患を伴わない患者における再発の予防に関しては特に、効力において限られたものである。本発明においては、所定条件下でHER2/neu癌遺伝子のペプチドE75(配列番号2)を患者に投与することにより、無疾患患者における乳癌の再発が有効に予防されることが確認された。また、意外なことに、E75ペプチドはMHC HLA-A2および-A3に関連しており、したがって、HLA-A2および-A3ハプロタイプを有する患者において防御免疫を誘導しうることも確認された。
【0036】
したがって、本発明は、乳癌の再発に対する防御免疫を誘導するためのワクチン組成物に関する。本発明はまた、乳癌に対する防御免疫、より詳しくは再発性乳癌に対する防御免疫を誘導するための及び維持するための方法に関する。いくつかの態様においては、該方法は、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドと製薬上有効な担体とを含む組成物の有効量を被験体に投与することを含む。配列番号2の変異体、例えば、米国特許公開番号20050169934に記載されているようなアミノ酸の修飾側鎖を有するものも、本ワクチン組成物および方法における免疫原としての使用に適している。
【0037】
該被験体は任意の動物であることが可能であり、好ましくは哺乳動物、例えばヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ブタなどである。ヒトが最も好ましい。非常に好ましい態様においては、ヒトはHLA-A2またはHLA-A3ハプロタイプに関して陽性である。他の好ましい態様においては、ヒトはヒトHER2/neuの発現に関して陽性であり、主として、低度および/または中等度HER2/neu発現腫瘍を有するヒト、ならびにHER2/neuの過剰発現体であるヒトを含む。
【0038】
該ワクチン組成物は、当技術分野における適当な任意の手段により、凍結乾燥製剤または液体製剤として製剤化されうる。液体形態製剤の非限定的な例には、液剤、懸濁剤、シロップ剤、スラリーおよび乳剤が含まれる。適当な液体担体には、好ましくは無菌形態の、任意の適当な有機または無機溶媒、例えば水、アルコール、食塩水、緩衝生理食塩水、生理食塩水溶液、デキストロース溶液、水プロピレングリコール溶液などが含まれる。
【0039】
該ワクチン組成物は中性または塩形態で製剤化されうる。製薬上許容される塩には、酸付加塩(該活性ポリペプチドの遊離アミノ基と共に形成されるもの)、および無機酸、例えば塩酸またはリン酸、あるいは有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などと共に形成されるものが含まれる。また、無機塩基、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基から、遊離カルボキシル基から形成される塩が誘導されうる。
【0040】
該ワクチン組成物は、好ましくは、被験体への接種または注射のために製剤化される。注射の場合には、本発明のワクチン組成物は、例えば水もしくはアルコールのような水溶液中、または例えばハンクス液、リンガー液もしくは生理食塩水緩衝液のような生理的に許容されるバッファー中に製剤化されうる。該溶液は、製剤化剤、例えば懸濁化剤、保存剤、安定剤および/または分散剤を含有しうる。注射剤は、例えば無菌水、生理食塩水またはアルコールのような適当なビヒクルでの使用前の再構成により注射に適した液体形態製剤に使用直前に変換されることが意図される固体形態製剤として製造されうる。
【0041】
また、該ワクチン組成物は徐放ビヒクル中またはデポー剤に製剤化されうる。そのような長期作用性製剤は接種もしくは植え込み(移植)(例えば皮下または筋肉内)により又は注射により投与されうる。したがって、例えば、該ワクチン組成物は、(例えば、許容される油中のエマルションとして)適当な重合性もしくは疎水性物質またはイオン交換樹脂で、あるいは難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として製剤化されうる。リポソームおよびエマルションは、担体としての使用に適した送達ビヒクルの良く知られた例である。
【0042】
該ワクチン組成物は、該ワクチンの防御効力を増強する物質、例えばアジュバントを含みうる。アジュバントには、E75ペプチド抗原に対する防御免疫応答を増強して該ワクチン中で必要な抗原の量および/または防御免疫応答の生成に必要な投与頻度を減少させるよう作用する任意の化合物が含まれる。アジュバントには、例えば、乳化剤、ムラミルジペプチド、アブリジン、水性アジュバント、例えば水酸化アルミニウム、キトサンに基づくアジュバント、ならびに種々のサポニン、油および当技術分野で公知の他の物質のいずれか、例えばアンフィゲン(Amphigen)、LPS、細菌細胞壁抽出物、細菌DNA、CpG配列、合成オリゴヌクレオチドおよびそれらの組合せ(Schijnsら, (2000) Curr. Opin. Immunol. 12:456)、マイコバクテリアルフレイ(Mycobacterialphlei)(M. phlei)細胞壁抽出物(MCWE)(米国特許第4,744,984号)、M. phlei DNA(M-DNA)およびM-DNA-M. phlei細胞壁複合体(MCC)が含まれうる。乳化剤として働きうる化合物には、天然および合成乳化剤、ならびに陰イオン性、陽イオン性および非イオン性化合物が含まれる。該合成化合物における陰イオン性乳化剤には、例えば、ラウリン酸およびオレイン酸のカリウム、ナトリウムおよびアンモニウム塩、脂肪酸のカルシウム、マグネシウムおよびアルミニウム塩、ならびに有機スルホナート、例えばラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。合成陽イオン性物質には、例えば、セチルトリエチルアンモニウムブロミドが含まれ、一方、合成非イオン性物質としては、グリセリルエステル(例えば、グリセリルモノステアラート)、ポリオキシエチレングリコールエステルおよびエーテル、ならびにソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノパルミタート)およびそれらのポリオキシエチレン誘導体(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート)が例示される。天然乳化剤には、アカシア、ゼラチン、レシチンおよびコレステロールが含まれる。
【0043】
他の適当なアジュバントは、油成分、例えば単一の油、油の混合物、油中水型エマルションまたは水中油型エマルションで形成されうる。該油は鉱油、植物油または動物油でありうる。鉱油は、蒸留技術によりペトロラタムから得られる液体炭化水素であり、当技術分野においては流動パラフィン、液体ペトロラタムまたは白色鉱油とも称される。適当な動物油には、例えば、タラ肝油、オヒョウ油、ニシン油、オレンジ・ラフィー(orange roughy)油およびサメ肝油(これらは全て商業的に入手可能である)が含まれる。適当な植物油には、例えばカノラ油、アーモンド油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ラッカセイ油、サフラワー油、ゴマ油、ダイズ油などが含まれる。フロイント完全アジュバント(FCA)およびフロイント不完全アジュバント(FIA)は、ワクチン製剤中で一般に使用される2つの一般的なアジュバントであり、本発明での使用にも適している。FCAおよびFIAは共に鉱油中水型エマルションであるが、FCAは死菌Mycobacterium sp.をも含有する。
【0044】
ワクチン効力を例えばアジュバントとして増強するために、免疫調節性サイトカインも該ワクチン組成物において使用されうる。そのようなサイトカインの非限定的な例には、インターフェロンアルファ(IFN-α)、インターロイキン-2(IL-2)および顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)またはそれらの組合せが含まれる。GM-CSFが非常に好ましい。
【0045】
E75ペプチド抗原を含み更にアジュバントを含むワクチン組成物は、混合、超音波処理およびマイクロフルイデーション(microfluidation)(これらに限定されるものではない)を含む、当業者によく知られた技術を用いて製造されうる。該アジュバントは、該ワクチン組成物の約10%〜約50%(v/v)、より好ましくは約20%〜約40%(v/v)、より好ましくは約20%〜約30%(v/v)、またはこれらの範囲内の任意の整数パーセントを構成しうる。約25%(v/v)が非常に好ましい。
【0046】
該ワクチン組成物の投与は注入または注射(例えば、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、鞘内、十二指腸内、腹腔内など)によるものでありうる。該ワクチン組成物は鼻腔内、膣内、直腸内、経口的または経皮的にも投与されうる。また、ワクチン組成物は「無針」送達系により投与されうる。好ましくは、該組成物は皮内注射により投与される。投与は医師または医師の補助者の監督により行われうる。
【0047】
注射は複数の注射に分割されることが可能であり、そのような分割接種は、好ましくは、実質的に同時に投与される。分割接種として投与される場合、該免疫原の用量は、好ましくは、それぞれの別個の注射において等しく配分されるが、必ずしもこれが必要なわけではない。該ワクチン組成物中にアジュバントが存在する場合、該アジュバントの用量は、それぞれの別個の注射において等しく配分されるが、必ずしもこれが必要なわけではない。分割接種のための別個の注射は、好ましくは、患者の身体上で互いに実質的に近接して投与される。いくつかの好ましい態様においては、それらの注射は、身体上で互いに少なくとも約1cm離して投与される。いくつかの好ましい態様においては、それらの注射は、身体上で互いに少なくとも約2.5cm離して投与される。非常に好ましい態様においては、それらの注射は、身体上で互いに少なくとも約5cm離して投与される。いくつかの態様においては、それらの注射は、身体上で互いに少なくとも約10cm離して投与される。いくつかの態様においては、それらの注射は、身体上で互いに少なくとも10cm以上離して、例えば、身体上で互いに少なくとも約12.5、15、17.5、20cmまたはそれ以上離して投与される。一次免疫注射およびブースター注射は、本明細書中に記載され例示されているとおりに分割接種として投与されうる。
【0048】
種々の代替的な医薬送達系が用いられうる。そのような系の非限定的な例には、リポソームおよびエマルションが含まれる。ある有機溶媒、例えばジメチルスルホキシドも使用されうる。また、該ワクチン組成物は、徐放系を用いて、例えば該治療用物質を含有する固体重合体の半透性マトリックスを用いて送達されうる。利用可能な種々の徐放性物質が当業者によく知られている。徐放カプセル剤は、その化学的性質に応じて、数日間から数週間から数ヶ月間の範囲にわたって該ワクチン組成物を放出しうる。
【0049】
乳癌寛解状態にある患者における乳癌の再発を予防するために、該ワクチンの治療的有効量が該被験体(患者)に投与される。治療的有効量は、当技術分野における適当な任意の手段により測定された場合の、該患者におけるE75特異的細胞傷害性Tリンパ球(CD8+)の数の臨床的に有意な増加、および該抗原に対する細胞傷害性Tリンパ球応答の臨床的に有意な増強をもたらす。該患者においては全体として、該ワクチン組成物の治療的有効量は、該患者における残存する顕微疾患を破壊し、該患者における乳癌の再発のリスクを有意に減少させ又は排除する。
【0050】
該ワクチン組成物の有効量は、患者の種、血統、サイズ、身長、体重、年齢、全身的健康状態、製剤のタイプ、投与の方法または様態、あるいは患者において乳癌が再発する可能性を有意に増加させるリスク因子の存在または非存在(これらに限定されるものではない)を含む多数の変数に左右されうる。そのようなリスク因子には、手術のタイプ、リンパ節の状態および陽性の数、腫瘍のサイズ、腫瘍の組織学的等級、ホルモン受容体(エストロゲンおよびプロゲステロン受容体)の存在/非存在、HER2/neu発現、リンパ管浸潤および遺伝的素因(BRCA1および2)が含まれるが、これらに限定されるものではない。いくつかの好ましい態様においては、該有効量は、患者がリンパ節陽性であるかリンパ節陰性であるかどうかに左右され、該患者がリンパ節陽性である場合には、該陽性節の数および度合に左右される。全ての場合において、適当な有効量は、通常の最適化技術ならびに実施者の熟練した且つ告知された判断および当業者に明らかな他の要因に従い、当業者により常套的に決定されうる。好ましくは、本明細書に記載のワクチン組成物の治療的有効量は、実質的な毒性を被験体に与えることなく療法上の予防的利益をもたらす。
【0051】
該ワクチン組成物の毒性および治療効力は、例えばLD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法により決定されうる。毒性効果および治療効果の間の用量比は治療係数であり、それはLD50/ED50の比として表されうる。大きな治療係数を示すワクチン組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは患者における使用のための投与量の範囲の決定に用いられうる。そのようなワクチン組成物の投与量は、好ましくは、毒性をほとんど又は全く伴わないED50を含む循環濃度の範囲内である。該投与量は、使用する剤形および用いる投与経路に応じて、この範囲内で変動しうる。
【0052】
特定の被験体(例えば、ヒト)における有用な用量をより正確に決定するために、毒性の情報が用いられうる。治療医師は、毒性または臓器機能不全に応じて投与を終了、中断または調節することが可能であり、臨床応答が適切でない場合には、該応答を改善するために、必要に応じて治療を調節することが可能である。再発性乳癌の予防における投与量の規模は、患者の状態の重症度、再発の相対リスクまたは投与経路などのような要因によって変動するであろう。患者の状態の重症度は、例えば、部分的には、標準的な予後評価法により評価されうる。
【0053】
該ワクチン組成物は、乳癌の再発に対する防御免疫を誘導および/または維持するのに適した、より詳しくは、E75(配列番号2)に対する細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導および/または維持するのに適した任意のスケジュールで患者に投与されうる。例えば、本明細書中に記載され例示されているとおりに一次免疫としてワクチン組成物を患者に投与し、ついで該防御免疫を増強および/または維持するためにブースターの投与を行うことが可能である。
【0054】
いくつかの態様においては、該ワクチン組成物を1ヶ月当たり1回、2回またはそれ以上、患者に投与することが可能である。一次免疫スケジュールに関しては特に、防御免疫応答を確立するためには、連続した6ヶ月間にわたり月1回が好ましい。いくつかの態様においては、ブースターは、該一次免疫スケジュールの完了後、一定間隔(例えば、6ヶ月ごと、またはそれ以上の間隔)で投与されうる。該ブースターの投与は、好ましくは、6ヶ月ごとに行われる。また、ブースターは、必要に応じて投与されることも可能である。
【0055】
一次免疫およびブースター投与を含むワクチン投与スケジュールは、患者に必要な期間にわたって継続されることが可能であり、例えば数年間から該患者の生涯にわたって継続されうる。いくつかの態様においては、該ワクチンスケジュールは、該ワクチン投与計画の開始時における、より頻繁な投与を含み、そして、該防御免疫を維持するための経時的なそれほど頻繁でない投与(例えば、ブースター)を含む。
【0056】
該ワクチンは、該ワクチン投与計画の開始時には、より低用量で投与され、経時的に、より高用量で投与されうる。また、該ワクチンは、該ワクチン投与計画の開始時に、より高用量で投与され、経時的に、より低用量で投与されうる。一次ワクチンおよびブースター投与の頻度ならびに投与されるE75の用量は、当技術分野における適当な任意の手段に従い投与医師により決定されるとおりに、個々の患者の個々の要求を満たすよう修飾および/または調節されうる。
【0057】
いくつかの態様においては、ブースターとしての投与のための組成物を含む該ワクチン組成物は約0.1mg〜約10mgのE75ペプチドを含む。いくつかの好ましい態様においては、該組成物は約0.5mgのE75を含む。いくつかの好ましい態様においては、該組成物は約2mgのE75を含む。いくつかの好ましい態様においては、該組成物は約1mgのE75を含む。
【0058】
いくつかの好ましい態様においては、ブースターとしての投与のための組成物を含む該ワクチン組成物は更に、GM-CSFを含む。そのような組成物は、好ましくは、約0.01mg〜約0.5mgのGM-CSFを含む。いくつかの好ましい態様においては、該組成物は約0.125mgのGM-CSFを含む。いくつかの好ましい態様においては、該組成物は約0.25mgのGM-CSFを含む。
【0059】
いくつかの特に好ましい態様においては、該ワクチン組成物は1mlの総体積中に1mgのE75および0.125mg〜0.250mgのGM-CSFを含み、それぞれ0.5mlの分割接種物として月1回投与され、患者の身体上で約5cm離れた部位における注射により投与され、そして同時に投与され又は混合される。該投与スケジュールは、好ましくは、6ヶ月間にわたり月1回である。約48時間の期間の後、紅斑および硬化の局所反応に関して該注射部位が評価されうる。両方の部位における該反応が融合し全体的な硬化の領域が>100mmである(または患者がいずれかの>等級2の全身毒性を経験している)場合には、該ペプチド用量は同じままにしてGM-CSFの用量を例えば半減させることが可能である。患者が後続の投与において激しい反応を示す場合には、GM-CSFを更に減少させることが可能であり、例えば更に半減させることが可能である。患者が激しい反応を示さない場合には、該患者において、より高いGM-CSF用量で継続することが可能である。いくつかの態様においては、ブースターの投与スケジュールおよび用量は同様に決定され、ブースターは、1mgのE75および0.25mgのGM-CSFを含むワクチン組成物の投与で開始され、一次免疫化ワクチンスケジュールの終結の後、約6ヶ月ごとに投与される。
【0060】
本発明を実施するための具体的な実施例の以下の典型的態様は専ら例示目的で記載されているに過ぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例1】
【0061】
患者の選択
節陽性(node-positive)(NP)および節陰性(NN)治験は、地域の施設内治験審査委員会(Institutional Review Boards)により承認され、治験新薬申請(BB-IND#9187)に基づいてWalter Reed Army Medical Center, Washington, DCおよびJoyce Murtha Breast Care Center, Windber, PAにおいて実施された。全ての患者は、組織学的に確認された乳癌(BCa)を有し、登録前に標準的な一連の手術、化学療法および放射線療法(必要に応じて)を完了していた。ホルモン療法を受けている患者は彼女らの特定の治療計画を継続した。適切なカウンセリングおよび同意の後、BCa患者は適切な治験(NPまたはNN)に登録され、ついでHLAタイプ決定された。なぜなら、E75は主として、一般集団の約40〜50%に見出されるHLA-A2に結合するからである。HLA-A2+ 患者にはワクチン接種し、HLA-A2- 患者は臨床再発について予め観察した。HLA-A3+ 患者は、該A2患者とのパラレル(並行)治験に登録され、登録の時点で能動投与スケジュールで治療された。ワクチン接種前に、患者を一連の想起(recall)抗原(ムンプス、破傷風およびカンジダ)で皮膚検査した。患者が>2の抗原と反応(>5mm)した場合には、該患者は免疫応答性とされた。
【0062】
合計186人の患者が両方のE75ワクチン治験に登録された(NP=95, NN=91)。彼女らは標準的な療法の後で疾患を有していないが、高い再発リスクを有していた。HLA-A2+、そして次いでHLA-A3+ 患者(n=101)にワクチン接種した(49のNPおよび52のNN; 90のHLA-A2+および11のHLA-A3+)。すべての他の患者(n=85)は観察に割り当てられた。5人のワクチン患者および4人の観察患者は、いずれも毒性によるものではないが試験から離脱した。したがって、96人のワクチン接種患者および81人の観察患者が分析に利用可能であった。両方の群に関する人口統計および予後因子を表1に示す。
【表1】

【0063】
それらの2つの群はほとんどの標準的な予後カテゴリーにおいて同等であった。しかし、ワクチン接種患者はより多くがホルモン受容体陰性であり、したがって、該ワクチン群内の、より少数の患者が補助ホルモン療法を受けた。個々の治験を見ると、NN治験においては、対照に比べて、より多数のワクチン接種患者がHER2/neu過剰発現腫瘍を有し(25.0%対7.1%, P<0.05)、より少数の患者が補助放射線療法を受けた(64.7%対85.7%, P<0.05)。
【0064】
2つの一般に用いられるHLA-ペプチド結合アルゴリズム:BIMAS(配列番号3)およびSYFPEITHI(配列番号4)から得られた結合アフィニティデータに基づいて、E75はHLA-A3+ 患者において使用可能であることが該治験中に確認された。また、前臨床評価は、E75刺激性HLA-A3+ CTLがHLA-A3+ HER2/neu発現癌細胞を細胞溶解できることを示した(データ非表示)。
【0065】
HLA-A3亜集団の節状態には、HLA-A2亜集団と比べて、差は認められなかったが(54.5%対45.9%, P=0.59)、それらはより小さい腫瘍を有する傾向があり(90.9%T1対65.7%, P=0.08)、ホルモン不感受性腫瘍を有する可能性がより低く(18.2%対29.6%, P=0.4)、より少数のHER2/neu過剰発現腫瘍を有していた(0%対31.5%, P=0.028)。
【実施例2】
【0066】
ワクチン接種および臨床プロトコール
E75ペプチドは適正製造基準(good manufacturing practices)等級で、NeoMPS, Inc.(San Diego, CA)により商業的に製造された。ペプチド純度(>95%)は高速液体クロマトグラフィーおよび質量分析により確認され、アミノ酸含量はアミノ酸分析により決定された。無菌性および一般安全性試験は該製造業者により行われた。無菌生理食塩水中に凍結乾燥ペプチド(0.5ml中に100μg、500μgまたは1000μg)を再構成した。投与時に、該ペプチドを解凍し、0.5ml中のGM-CSF(Berlex, Seattle, WA)と混合し、その1.0mlの接種物を分割し、5cm離れた2つの部位に皮内投与した。全ての接種物は同じ四肢に投与された。
【0067】
一連のワクチン接種
NP治験は2段階の安全性治験として設計され、最初の段階ではペプチドの用量を段階的に増加し、後の段階においてはスケジュールを変化させた。一連のワクチン接種の詳細は既に公開されている(Peoples GEら, (2005) J. Clin. Oncol. 23:7536-45)。簡潔に説明すると、3〜6人の患者(HLA-A2+またはHLA-A3+)をそれぞれ、100μg、500μgまたは1000μgのE75の4回または6回の月1回の注射(それぞれ100.6、500.4、500.6、1000.4および1000.6)を受けるよう割り当てた(表2)。NP患者における最適用量を決定し確認するために、最終的に群を拡張したため、後の用量群における患者数の方が多くなった。
【表2】

【0068】
GM-CSFの用量を様々に変化させ接種スケジュールを改変することにより、最適な生物学的用量を更に示すようにNN治験を設計した。抗原ナイーブと思われる宿主にワクチン接種する可能性を判定するために、非HER2/neu発現腫瘍を有する患者をこの治験に含めた。5ヶ月にわたる3回、4回または6回の月1回の注射を受けるよう10人の患者を各用量群に割り当てた(表2)。
【0069】
末梢血単核細胞(PBMC)の単離および培養
各ワクチン接種の前ならびに一連のワクチン接種の完了の1ヶ月後(ワクチン後(post-vaccine))および6ヶ月後(長期(long-term))にそれぞれ血液を採取した。50mlの血液を採取し、PBMCを単離した。PBMCを洗浄し、培地に再懸濁させ、リンパ球源として使用した。
【0070】
毒性
患者をワクチン接種後1時間にわたって即時型過敏症に関して観察し、48〜72時間後に呼び戻して彼女らの注射部位を測定し、彼女らに毒性に関して質問した。毒性をNCI Common Terminology Criteria for Adverse Events, v3.0により等級付けし、0〜5の尺度で記録した。より低用量の群において重大な毒性が生じない場合に限り、1つの用量群から次の用量群へと進めた。これらの一連の試験中に生じた最大の局所および全身毒性に基づいて、患者特異的な結果を記録した。
【0071】
局所および全身毒性は軽度であり、全ての患者が一連のワクチン試験を完了した。局所毒性は等級1(81%)および等級2(19%)であった。全身毒性は最低減であり、等級0(12%)、等級1(71%)、等級2(14%)および等級3(2%)であり(図1)、等級4または5の全身毒性は観察されなかった。観察された毒性はGM-CSFと一致したため、重大な局所または全身反応の場合には(患者の18.7%)、GM-CSFにおける50%の用量減少を行った。
【0072】
A3患者における毒性プロファイルは彼女らのA2対応物と同じであった。すなわち、どちらの群についても、最大局所毒性 等級1(82%)および等級2(18%)であった。最大全身毒性(A3対A2):等級0(0%対15%)、等級1(92%対68%)、等級2(8%対14%)および等級3(0%対2%; p=0.4)。A3患者の局所応答は、それぞれの用量群内で、A2患者と同じであった。したがって、HLA-A2+ 患者と比較してHLA-A3+ 患者間で毒性プロファイルにおける差は無く、局所反応はちょうど同等の頑健さであった。等級2の局所毒性はそれぞれ18%に対して20%であり、これは同様のin vivo免疫原性を示唆している。
【0073】
臨床的再発
患者の主治医の腫瘍専門医による指示どおりに、ケア癌スクリーニングの基準に従い、臨床的再発に関して全ての患者を観察した。生検により証明された場合、または腫瘍専門医主治医チームにより再発に対して治療された場合には、患者は再発とみなされた。
【0074】
プロトコール設計に従い、18ヶ月の中間追跡調査の時点で一次分析を開始した。この分析の完了時に、171人の患者が登録されており、20ヶ月の中間追跡調査の時点で、ワクチン接種群における再発率は5.6%であり、一方、観察群においては14.2%であった(P=0.04)。ワクチン接種群および対照群における、無疾患生存率は、それぞれ92.5%および77%であった(図2)。観察群においては4人が死亡し(全体生存率[OS] 95.1%)、一方、ワクチン群においては1人が死亡したに過ぎなかった(OS 99%, P=0.1)。
【0075】
免疫の低下および該プロトコール設計におけるブースター接種の欠如にもかかわらず、両方の治験の追跡調査を5年に延長した。更新された分析は、58ヶ月の時点におけるワクチン群における遅発性再発を含む両群における追加的な再発を示した。26ヶ月の中間追跡調査において、186人の患者が登録されており、再発率はワクチン群においては8.3%であり、一方、観察群においては14.8%であった(P=0.15)。これらの患者の間では、異なる再発分布が認められた。骨のみの再発は対照患者においては再発の50%を占め(6/12)、ワクチン接種再発患者においては0%であった(P=0.04)。
【0076】
HLA A3+患者においては、再発率はHLA-A2+患者に類似していた(9.1%対8.2%)。
【0077】
統計解析
Kaplan-Meier法による生存分析を用いて群間で再発率を比較し、ログランク分析を用いて、再発を示した被験者の比率を比較した。適宜、ウィルコックソン、フィッシャー正確確率検定またはχ2を用いて、臨床-病理学的(clinico-pathologic)因子に関するP値を計算した。ワクチン接種前およびワクチン接種後の二量体レベルを比較するためのP値を、ウィルコックソン検定を用いて計算し、DTHに関しては、スチューデントt検定を用いて計算した。
【実施例3】
【0078】
HLA-A2:免疫グロブリン二量体アッセイ
患者からの新たに単離されたPBMCにおけるCD8+ E75特異的細胞の存在を、二量体アッセイを用いることにより直接的にアッセイした。簡潔に説明すると、HLA-A2:免疫グロブリン(Ig)二量体(PharMingen, San Diego, CA)をE75または対照ペプチド(E37, 葉酸結合性タンパク質(25-33)RIAWARTEL(配列番号5))と共にローディングした。これは、1μgの二量体を過剰(5μg)のペプチドおよび0.5μgのβ2-ミクログロブリン(Sigma , St. Louis, MO)と共に37℃で一晩インキュベートすることにより行った。ついでそれらを、使用するまで4℃で保存した。PBMCを洗浄し、PharMingen染色バッファー(Stain Buffer)(PharMingen)に再懸濁させ、5ml丸底ポリスチレンチューブ(Becton Dickinson, Mountain View, CA)内に5×105 細胞/100μl/チューブで加え、ローディングされた二量体および抗体で染色した。各患者において、それぞれの逐次ワクチン接種に応答したCD8+ E75特異的細胞のレベルを決定し、各患者ごとに全ての接種後測定値を平均し、彼女らの接種前レベルと比較した。
【0079】
各ワクチン接種前ならびに1ヶ月(ワクチン接種後)および6ヶ月(長期)の時点で該二量体アッセイにより新鮮なex vivo PMBCにおいてE75特異的CTLを評価した。該二量体アッセイは機能性免疫アッセイ(細胞傷害性およびサイトカイン分泌)と相関することが既に示されている(Peoples GEら, (2005) J. Clin. Oncol. 23:7536-45)。増加するCD8+ E75特異的CTLのパターンを一連のワクチン接種において観察した。それはピークに達した後、完了によりプラトーへと減少した。
【0080】
全患者に関する累積二量体応答を図3Aに示す。ワクチン接種前レベルからワクチン接種後レベルへ、そしてピークレベルへの、CD8+ E75特異的細胞の中央値における統計的に有意な増加が認められた。長期レベルはワクチン接種前レベルと異ならなかった。ワクチン接種の6ヶ月後には、患者の僅か48.3%が有意な残存免疫(二量体>0.5として定義される)を維持したに過ぎなかった。
【0081】
E75に対する既存免疫(二量体>0.3として定義される)は患者の42.7%において見出された(図3B)。初期二量体レベルには無関係に、同じパターンの二量体応答が見られた。しかし、既存免疫を欠く患者は彼女らの長期二量体レベルにおける有意な増加を示した。
【実施例4】
【0082】
遅延型過敏症
既に記載されているように(Peoples GEら, (2005) J. Clin. Oncol. 23:7536-45)して、一連のワクチン接種の完了の1ヶ月後、両方の治験において、0.5mlの正常生理食塩水中の100μgのE75(GM-CSFを含有しない)および体積対照としての0.5mlの正常生理食塩水を使用してDTH反応を評価した。感受性ボールペン法を用いることにより、48〜72時間の時点で二次元で該DTH反応を測定し、直交平均(orthogonal mean)として表し、対照と比較した。NN治験においては、ワクチン接種前にもDTHを実施した。
【0083】
in vivo免疫応答
該ワクチンのin vivo有効性を測定するために、一連のワクチン接種の完了の1ヶ月後に、100μgのE75を生理食塩水体積対照と共に皮内注射することによりワクチン接種後DTHを測定した。全ワクチン接種患者のうち、74%が陽性ワクチン接種後DTHを示し、E75に対する平均硬化は14.0±1.4mmであり、一方、対照においては2.1±0.5mmであった(P<0.0001)(図4A)。
【0084】
NN患者はワクチン接種後DTHだけでなく、ワクチン接種前DTHも示した(図4B)。ワクチン接種前においては、E75と対照との間のDTHにおける差は無かった。ワクチン接種後においては、E75に対するDTH応答は対照より統計的に大きく、E75 DTHはワクチン接種後とワクチン接種前とで有意に異なっていた(10.9±1.5mm対2.8±0.8mm, P<0.0001)。
【0085】
NP患者は、NN患者より大きなワクチン接種後E75 DTH応答を示した(図4C)。その相違は、NN患者が全体として、より少量のE75の投与を受けたことによるものと考えられる。DTH応答を用量の関数として評価すると、6000μgのE75が投与された患者は、<6000μgのペプチドが投与された患者に比べて有意に大きなDTH反応を示した(25.1±4.0mm対13.3±1.9mm, P=0.008)(図4D)。
【0086】
HLA-A3+ 患者は、HLA-A2+ と同等のワクチン接種後DTHを示した(10.5±2.7mm対15.1±1.9mm, P=0.38)。
【実施例5】
【0087】
HLA-A3+ ELISPOTアッセイ
HLA-A3+ 患者に関するワクチン応答をE75特異的インターフェロンγ ELISPOTによっても評価した。ELISPOTにより、該A3患者はベースラインにおいて0〜30スポット/106 細胞の範囲を示し、これはワクチン接種後においては3〜448スポット/106 細胞の範囲に増加した(p=0.04)。最も重要なことに、臨床的再発は両方の群において同じであり(A3, 9.1%対A2, 8.2%)、これに対して、対照群においては14.8%であった。
【実施例6】
【0088】
乳癌ワクチンブースター
患者
NPおよびNN治験は地域の施設内治験審査委員会(Institutional Review Boards)により承認され、Walter Reed Army Medical Center (WRAMC), Washington, DCおよびJoyce Murtha Breast Care Center, Windber, PAにおいて実施された。これらの臨床治験は、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)により承認された治験新薬申請(BB-IND#9187)に基づいて実施されている。全ての患者は、組織学的に確認された乳癌を有し、標準的な療法を完了しており、初期登録の時点で無疾患かつ免疫応答性であった。前記実施例に記載されているとおりに、6ヶ月の期間にわたる種々のスケジュールに基づき、HLA-A2+ 患者およびHLA-A3+ 患者に種々の用量のE75およびGM-CSFをワクチン接種した。患者がその一連の一次ワクチン接種の完了から少なくとも6ヶ月経過している場合には、E75(1mg)+ GM-CSF(0.250mg)の選択的ブースター用量を該患者に投与した。
【0089】
25人の患者にブースターワクチン接種を行った(表3)。半分を少し超える患者(56%)がNP乳癌を有していた。先のワクチン接種からの時間の中央値は12ヶ月であった(範囲: 6〜24ヶ月)。一連の一次投与の6ヶ月後に患者にブースターが投与された場合には、該患者は早期ブースター(EB)として評価され、あるいは一連の一次投与から>6ヶ月後に患者にブースターが投与された場合には、該患者は晩期ブースター(LB)として評価された。
【表3】

【0090】
HLA-A2:IgG二量体により測定したところ、残存するE75特異的免疫は経時的に減少した。CD8+ T細胞の中央値はEB群(n=6)においては1.4%(0.61〜3.43%の範囲)であり、これに対して、LB群(n=13)においては0.44%(0〜2.67%, p=0.02)であった。LB患者においては、一連の初期投与の6ヶ月後の彼女らの二量体レベルの中央値は0.70%(0.19%〜1.55%)であった。これはEB患者の6ヶ月の二量体レベルと統計的に異ならなかった(図5)。
【0091】
ブースターワクチン
E75ペプチドは適正製造基準(good manufacturing practices)等級においてNeoMPS(San Diego, CA)により商業的に製造された。ペプチド純度は高速液体クロマトグラフィーおよび質量分析により確認され、アミノ酸含量はアミノ酸分析により決定された。該ペプチドは95%超にまで精製された。無菌性および一般安全性試験は該製造業者により行われた。凍結乾燥ペプチドを無菌生理食塩水中で0.5ml中1000μgの濃度で再構成した。該ペプチドを0.5mL中のGM-CSF(Berlex, Seattle, WA)と混合し、その1.0mlの接種物を分割し、5cm離れた2つの部位に皮内投与した。ブースター接種は一連の一次接種と同じ四肢において行った。
【0092】
毒性
患者をワクチン接種後1時間にわたって即時型過敏症に関して観察した。毒性をNCI Common Toxicity Criteria for Adverse Events, v3.0により等級付けし、0〜5の尺度で記録した。重大(等級2または3)な局所または全身毒性を既に示していた患者には0.125mgの低用量のGM-CSFを投与した。
【0093】
該ブースター用量は非常に良く許容され(図6)、主として等級1の局所毒性(所望の効果)が示された。該患者の半分以上は全身性の訴えを示さなかった。等級3または4の毒性は見られなかった。1人の患者(4%)のみが、該ブースター中に、一連の一次投与中より高い等級の毒性(等級2の局所炎症)を示した。
【0094】
末梢血単核細胞(PBMC)の単離および培養
ブースターワクチン接種の前ならびにブースター投与の3〜4週間後に血液を採取して末梢血単核細胞をVacutainer CPTチューブ内に単離し、それをリンパ球源として使用した。
【0095】
HLA-A2:免疫グロブリン二量体アッセイ
患者からの新たに単離されたPBMCにおけるCD8+ E75特異的細胞の存在を、前記実施例3に記載されている二量体アッセイを用いることにより直接的にアッセイした。簡潔に説明すると、HLA-A2:免疫グロブリン(Ig)二量体(PharMingen, San Diego, CA)をE75または対照ペプチド(葉酸結合性タンパク質ペプチドE37 (25-33)RIAWARTEL(配列番号5))と共にローディングした。これは、1μgの二量体を過剰(5μg)のペプチドおよび0.5μgのβ2-ミクログロブリン(Sigma , St. Louis, MO)と共に37℃で一晩インキュベートすることにより行った。ついでそれらを、使用するまで4℃で保存した。PBMCを洗浄し、PharMingen染色バッファー(Stain Buffer)(PharMingen, San Diego, CA)に再懸濁させ、5ml丸底ポリスチレンチューブ(Becton Dickinson, Mountain View, CA)内に5×105 細胞/100μl/チューブで加え、ローディングされた二量体および抗体で染色した。各HLA-A2+ 患者において、該ワクチンブースターの前および後のCD8+ E75特異的細胞のレベルを決定した。
【0096】
ブースターワクチン接種の前および3〜4週間後、抗原特異的CD8+ T細胞を定量した。有意な残存免疫(SRI, >0.5%の抗原特異的CD8+ T細胞として定義される)はそれらの2群において有意に異なっており、EB患者においては100%(6/6)であったが、LB患者においては30.8%(4/13)であった(p=0.01)。SRIを欠く患者(n=8)においては、0.43%(0〜0.49%)から0.87%(0〜2.3%: p=0.08)へのE75特異的CD8+ T細胞の増加の傾向が認められた(図7)。
【0097】
酵素結合イムノスポットアッセイ
直ちに(ex vivo)またはペプチドとの7日間のインキュベーションの後にBD ELISPOTキットを使用して、IFNγ産生細胞を検出した。IL-7を含有する培地中(ex vivo)またはIL-7を添加したまたは添加しない培地中(7日)、新鮮なPBMCをウェル当たり5×105 細胞(ex vivo)または1×105 (7日)の濃度でELISPOTプレート内にプレーティングした。ペプチド(E37, FluM, E75, GP2, HER2/neu 1μgまたは5μg)の存在下または非存在下、細胞を16時間(ex vivo)または7日間刺激した。該7日ウェル内での追加的なインキュベーションはE75+HER2/neu 1μgまたは5μgの組合せを含むものであった。十分な細胞が入手可能であった場合には、各血液サンプルに関して合計16回のアッセイを行った。インキュベーションの終了時に、該プレートを製造業者の説明に従い発色させた。ビオチン化検出抗体を加え、該プレートを4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、該プレートを洗浄し、アビジン-HRP溶液を1時間加え、AEC基質溶液を使用してスポットを発色させた。分析装置Immunospot Series 2およびImmunoSpotソフトウェアを使用して、スポットを計数した。
【0098】
全ての患者が、1回の採血からのPBMCの入手可能性に応じて16回までの異なるアッセイにおいてブースターワクチン接種の前および後で定量されたIFNγ産生細胞を有していた。22人の患者が少なくとも1対(1ペア)のブースター前およびブースター後ELISPOTアッセイを受けた(中央値で患者当たり10アッセイ, 範囲1〜14)。これらの患者において、合計255のブースター前アッセイが行われ、そのうちの54.5%が、検出可能なIFNγ産生を示した。194のペアアッセイ(同一患者からのブースター前およびブースター後サンプルが同一ペプチド濃度でアッセイされた)のうち、78(40.2%)がブースターによるIFNγ産生細胞の増加を示した。全部で20/22人(91%)の患者が少なくとも1つのアッセイにおいてIFNγ産生細胞の増加を示し、11人(50%)が該アッセイの少なくとも50%においてIFNγ産生細胞の増加を示した。結果を図8に示す。
【0099】
局所反応
局所反応(LR)を応答のin vivo機能評価として測定した。LRをワクチン接種の48〜72時間後に測定し、感受性ボールペン法を用いて2方向において測定し、直交(orthogonal)平均±SEとして記録した。LRをその患者自身の以前のLRと比較して、ブースターに対する応答を評価した。
【0100】
一連の一次接種から<9ヶ月の時点でブースターが投与された患者(n=12)は、一連の一次接種から>9ヶ月の患者(n=13)の場合(79.4±4mm)より有意に大きなLR(103±7mm)を示した(p=0.01)。一連の一次接種の終了時にそれらを比較した場合、それらの2つの群における差は無かった(<9ヶ月 81±5 mm; >9ヶ月 85±8 mm, p=0.73)。結果を図9および10に示す。
【0101】
統計分析
HLA:IgG二量体値を中央値として表し、ウィルコックソン検定を用いてP値を計算した。比例比較のために、フィッシャー正確確率検定を用いた。局所反応の比較は、適宜、対応のある又は対応の無いスチューデントt検定で行った。
【実施例7】
【0102】
HER2/neu発現レベルごとのHER2/neu(E75)ペプチドワクチン応答
節陽性および節陰性BCa患者において、HER2/neu E75ペプチドワクチンを使用して臨床治験を行った。これらの患者は、あらゆるレベルのHER2/neu発現のものから構成されていた。HER2/neu状態の決定は、主に、2種類の試験、すなわち、免疫組織化学法(IHC)および蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)により行った。IHCはHER2/neuタンパク質の過剰発現を検出し、0〜3+(0 = 陰性、1+ = 低発現、2+ = 中等度、および3+ = 過剰発現)の半定量尺度で記録されている。一方、FISHはHER2/neu遺伝子の増幅(過剰コピー)を検出し、17番染色体に対するHER2/neuの比率として表され、FISHが>2.0コピーであれば過剰発現と解釈される。IHCおよびFISHの一致は約90%である。
【0103】
材料および方法:
HER2/neu発現のレベルに基づいて、本発明者らの第II相E75ワクチン治験に登録された163人のBCa患者において、サブセット(部分集団)分析を行った。患者は、低発現体(LE = IHC 1+〜2+およびFISH>0であるが<2.0)と過剰発現体(OE = IHC 3+および/またはFISH>2.0)を比較して、さらにIHC状態(0, 1+, 2+, 3+)により、評価した。標準的な臨床病理学的因子、該ワクチンに対する免疫応答(in vivo DTH反応およびin vitro HLA-A2:IgG二量体アッセイ)および臨床応答(絶対的再発および致死率)の分析を行った。
【0104】
患者の特徴および臨床プロトコール:
E75 NPおよびNN治験が施設内治験審査委員会(Institutional Review Boards)により承認され、治験新薬申請(BB-IND#9187)に基づいてWalter Reed Army Medical Center, Washington, DCおよびJoyce Murtha Breast Care Center, Windber, PAにおいて実施された。全ての患者は、組織学的に確認された乳癌(BCa)を有し、登録前に標準的な一連の手術、化学療法および放射線療法(必要に応じて)を完了していた。ホルモン療法を受けている患者は彼女らの特定の治療計画を継続した。適切なカウンセリングおよび同意の後、BCa患者は適切な治験(NPまたはNN)に登録され、ついでHLAタイプ決定された。なぜなら、E75は主として、一般集団の約40〜50%に見出されるHLA-A2に結合するからである。HLA-A2+ 患者にはワクチン接種し、HLA-A2- 患者は臨床再発について予め観察した。ついでHLA-A3+ 患者にワクチン接種した。ワクチン接種前に、患者を一連の想起(recall)抗原で皮膚検査した(マントゥー試験)。患者が>2の抗原と反応(>5mm)した場合には、該患者は免疫応答性とみなされた。
【0105】
ワクチン:
E75ペプチドは適正製造基準(good manufacturing practices)等級においてNeoMPS, Inc.(San Diego, CA)により商業的に製造された。ペプチド純度(>95%)は高速液体クロマトグラフィーおよび質量分析により確認された。無菌性および一般安全性試験は該製造業者により行われた。0.5mlの無菌生理食塩水中に100mcg、500mcgまたは1000mcgの凍結乾燥ペプチドを再構成した。該ペプチドを0.5ml中のGM-CSF(Berlex, Seattle, WA)と混合した。その1.0mlの接種物を分割し、同じ四肢における5cm離れた2つの部位に皮内投与した。
【0106】
一連のワクチン接種:
NP治験は2段階の安全性治験として設計され、最初の段階ではペプチドの用量を段階的に増加し、後の段階においてはスケジュールを変化させた。一連のワクチン接種の詳細は既に公開されている。簡潔に説明すると、3〜6人の患者をそれぞれ、100mcg、500mcgまたは1000mcgのE75ペプチドの4回または6回の月1回の注射(それぞれ100:6、500:4、500:6、1000:4および1000:6)を受けるよう割り当てた。NP患者における最適用量を決定し確認するために、最終的に群を拡張したため、後の用量群における患者数の方が多くなった。
【0107】
GM-CSFの用量を様々に変化させ接種スケジュールを改変することにより、最適な生物学的用量を更に詳細に示すようにNN治験を設計した。抗原ナイーブと思われる宿主にワクチン接種する可能性を判定するために、HER2/neu IHC 0腫瘍を有する12人の患者をこの治験に含めた。E75ペプチドを一定量の500mcgとし、GM-CSF用量を変化させて(125mcgまたは250mcg)、3回、4回または6回の月1回の注射を受けるように10人の患者を各用量群に割り当てた。
【0108】
毒性:
患者をワクチン接種後1時間にわたって即時型過敏症に関して観察し、48〜72時間後に呼び戻して彼女らの注射部位を測定し、彼女らに毒性に関して質問した。毒性をNCI Common Terminology Criteria for Adverse Events, v3.0により等級付けした(0〜5の尺度で記録した)。より低用量の群において重大な毒性が生じない場合に限り、1つの用量群から次の用量群へと進めた。これらの一連の試験中に生じた最大の局所および全身毒性に基づいて、患者特異的な結果を記録した。
【0109】
末梢血単核細胞(PBMC)の単離および培養
各ワクチン接種の前ならびに一連のワクチン接種の完了の1ヶ月後(ワクチン後(post-vaccine))および6ヶ月後(長期(long-term))に血液を採取した。50mlの血液を採取し、PBMCを単離した。PBMCを洗浄し、培養培地に再懸濁させ、リンパ球源として使用した(既に記載されているとおりである)。
【0110】
HLA-A2:免疫グロブリン二量体アッセイ:
患者からの新たに単離されたPBMCにおけるCD8+ E75特異的細胞の存在を、既に記載されているとおりに二量体アッセイを用いることにより直接的にアッセイした。簡潔に説明すると、HLA-A2:免疫グロブリン(Ig)二量体(PharMingen, San Diego, CA)をE75または対照ペプチド(E37, 葉酸結合性タンパク質(25-33)RIAWARTEL(配列番号5))と共にローディングした。これは、1mcgの二量体を過剰(5mcg)のペプチドおよび0.5mcgのβ2-ミクログロブリン(Sigma , St. Louis, MO)と共に37℃で一晩インキュベートすることにより行った。ついでそれらを、使用するまで4℃で保存した。PBMCを洗浄し、PharMingen染色バッファー(Stain Buffer)(PharMingen)に再懸濁させ、5ml丸底ポリスチレンチューブ(Becton Dickinson, Mountain View, CA)内に5×105 細胞/100μl/チューブで加え、ローディングされた二量体および抗体で染色した。各患者において、それぞれの逐次ワクチン接種に応答したCD8+ E75特異的細胞のレベルを決定し、平均接種後レベルを彼女らの接種前レベルと比較した。
【0111】
遅延型過敏症(DTH):
既に記載されているようにして、一連のワクチン接種の完了の1ヶ月後、両方の治験において、0.5mlの正常生理食塩水(GM-CSFを含有しない)中の100mcgのE75ペプチドおよび体積対照としての0.5mlの正常生理食塩水を使用してDTH反応を評価した。感受性ボールペン法を用いることにより、48〜72時間の時点で二次元で該DTH反応を測定し、直交平均(orthogonal mean)として記録し、対照と比較した。NN治験においては、ワクチン接種前にも同様にDTHを実施した。
【0112】
臨床的再発:
患者の主治医の腫瘍専門医による指示どおりに、ケア癌スクリーニングの基準に従い、臨床的再発に関して全ての患者を観察した。生検により証明された場合、または腫瘍専門医主治医チームにより再発に対して治療された場合には、患者は再発とみなされた。
【0113】
統計解析
Kaplan-Meier法による生存分析を用いて群間で再発率を比較し、ログランク分析を用いて、再発を示した被験者の比率を比較した。適宜、ウィルコックソン、フィッシャー正確確率検定またはχ2を用いて、臨床病理学的因子に関するP値を計算した。ワクチン接種前およびワクチン接種後の二量体レベルを比較するためのP値およびDTHを、対応のある又は対応の無い両側スチューデントt検定を用いて計算した。
【0114】
結果:
LE(対照 = 44、ワクチン = 56)対 OE患者(対照 = 22、ワクチン = 29)およびIHC状態対照およびワクチン群(それぞれ、0 = 5対7, 1+ = 15対25, 2+ = 24対26, 3+ = 13対19)を評価した。LE対OEおよび全てのIHC状態ワクチン接種群は共に免疫学的に応答したが、LE患者、より詳しくは、IHC 1+患者は、増加した長期in vitro免疫応答を示した(それぞれ、p=0.04およびp=0.08)。また、それらの対照群と比較して、LE患者は死亡率の減少傾向を示し、IHC 1+患者は死亡率の減少を示した(それぞれ、p=0.08およびp=0.04)。
【0115】
患者:
186人を該E75ワクチン研究に登録した。9人は離脱(4人の対照患者および5人のワクチン接種患者 - 毒性により離脱した者はいなかった)して177人が該治験を完了した。NP治験における全ての対照(C)およびワクチン接種(V)患者(C=46, V=45, 合計=91人の患者)にIHC、FISHまたは両方の試験を行った。NN治験(C=35, V=51, 合計=86人の患者)においては、12人の患者がHER2/neu IHC 0腫瘍を示した(C=5, V=7)。また、NN治験においては、14人の患者(C=7, V=7)の腫瘍はIHCもFISHも受けなかった。これらの14人の患者はサブセット分析から除外されている。したがって、163人の患者が分析に利用可能であった。
【0116】
LE対OEサブセット分析:
発現ごとの患者:
LE(IHC 1+〜2+またはFISH>0および<2.0)をOE(IHC 3+またはFISH>2.0)と比較するサブセット(部分集団)分析を行った。対照群の66人の患者にIHCまたはFISHを行った(LE=44, OE=22)。E75ワクチン群の合計85人の患者にIHCまたはFISHを行った(LE=56, OE=29)。同等数のCおよびV患者がLE群(それぞれ、67%対66%)およびOE群(それぞれ、33%対34%)に含まれていた。
【0117】
LE患者対OE患者の人口統計、予後因子および治療プロファイルを表4に示す。LE患者に関しては、C患者とV患者との間の統計的差異は認められなかった。OE患者では、C群におけるものよりも統計的に多いV患者がホルモン受容体陰性であった(p=0.02)(表4)。
【表4】

【0118】
発現ごとの免疫応答:
該E75ワクチンはLE患者およびOE患者の両方においてin vitro免疫応答を惹起することが可能であった。ワクチン接種前から最大値までのE75特異的CD8+ T細胞の有意な増加が両方の群において認められた(LE p<0.001, OE p<0.001)。LE患者は、OE患者に比べて統計的に高い最大免疫応答を示した(p=0.04)(図11A)。
【0119】
ワクチン接種前およびワクチン接種後のDTHによる測定によれば、LE患者およびOE患者は共に、in vivo免疫応答を惹起することが可能であった。ワクチン接種前からワクチン接種後(pre-post)へのDTHの有意な増加が両方のカテゴリーにおいて認められた(LE p<0.001, OE p=0.02)(図11B)。LEワクチン接種後DTHはOEワクチン接種後DTHより重度だが(それぞれ15.9+1.9mm対12.8+2.0mm)、統計的有意性は存在しない(p=0.5)。全体としては、該E75ワクチンは、LE患者において、より免疫学的に活性と思われる。
【0120】
発現ごとの臨床応答:
再発および死亡率により評価された臨床応答を図11Cおよび11Dに示す。C患者と比較した場合、全てのV患者(LE=10.7%対OE=13.8%)が再発率の減少を示したようであったが(LEおよびOE=18.2%)、これらの数は統計的に有意ではなかった。より重要なことに、V患者においては死亡率の減少の傾向が認められ、これはLE患者において最も印象的に認められた(C=6.8%対V=0.0%; p=0.08)。
【0121】
IHC状態サブセット分析:
IHC状態ごとの患者:
C群は、IHC(0=5, 1+=15, 2+=24, 3+=13)に付された57人の患者の病理学的標本を有していた。E75 V群は、IHC(0=7, 1+=25, 2+=26, 3+=19)に付された77人の患者の病理学的標本を有していた。同等のパーセンテージのCおよびV患者が各IHC群に含まれていた(0 C=8.8%対V=9.1%; 1+ C=26.3%対V=32.5%, 2+ C=42.1%対V=33.8%, 3+ C=22.8%対V=24.7%)。
【0122】
IHC状態ごとの人口統計、予後因子および治療プロファイルを表5に示す。IHC状態群については予後因子に2つの有意差が認められた。IHC 1+患者は、C群においては、V群と比較して高いパーセンテージのT2-T4腫瘍を有していた(66.7%対30.8%, p=0.05)。IHC 3+ C患者は全てNPであり、V患者の42.1%がNPであった(p=0.003)。
【表5】

【0123】
IHC状態ごとの免疫応答:
該E75ワクチンは全てのIHCカテゴリーにおいてin vitro免疫応答を惹起することが可能であった。ワクチン接種前から最大値へのE75特異的CD8+ T細胞への有意な増加により認められるとおり(0 p=0.007, 1+ p<0.001, 2+ p=0.004, 3+ p=0.002)、全てのIHC群(0, 1+, 2+, 3+)が該ワクチンに応答した。IHC 1+患者のみが、ワクチン接種前から長期へのE75特異的CD8+ T細胞における有意な増加の傾向を示した(p=0.08)(図12A)。
【0124】
また、ワクチン接種前およびワクチン接種後にDTHにより測定したところ、全ての患者がin vivo免疫応答を惹起することが可能であった。ワクチン接種前からワクチン接種後へ(pre-pro)のDTHの有意な増加が全IHCカテゴリーにおいて認められた(0 p=0.03, 1+ p=0.02, 2+ p=0.02, 3+ p=0.05)。全体的に、IHCにより測定されたHER2/neu発現には無関係に、該ワクチンは免疫学的に有効であったが、IHC 1+の患者において最も有効であると思われる(図12B)。
【0125】
IHC状態ごとの臨床応答:
再発および致死率により評価された臨床応答を図12Cおよび12Dに示す。全てのIHCカテゴリー(再発患者がいなかったIHC 0を除く)において、その数は統計的有意性に達していないもののC患者とV患者との比較において再発率の減少が認められた。より重要なことに、IHC 1+ 患者の致死率における有意な減少が認められた(C=20%およびV=0%の致死率)(p=0.04)。
【0126】
以前の第II相治験において、該E75ワクチンの投与は20ヶ月の時点における再発率の減少と致死率の減少の傾向とをもたらしたが、これらの差異は有意性を欠いていた。これは、ブースターを用いなかったため、免疫が減弱したからである。あらゆるレベルのHER2/neu発現を有する患者が該ワクチンに免疫学的に応答すること、しかしLE(具体的にはIHC 1+)患者はより頑健な免疫応答を示し、致死率の減少を伴う最も大きなの臨床利益を引き出すことが示された。また、抗原ナイーブ患者も同様に該ワクチンに免疫学的に応答することが示された。
【0127】
本明細書において、物理的特性(例えば、分子量)または化学的特性(例えば、化学式)に関して範囲が用いられている場合、そこに記載の範囲特異的態様の全ての組合せ及び下位組合せ(subcombination)が含まれることが意図される。
【0128】
本明細書において引用されている全ての刊行物および特許出願の全体を、それぞれの個々の刊行物または特許出願があらゆる目的で参照により本明細書に組み入れられると具体的かつ個別的に示されているのと同様に、あらゆる目的で参照により本明細書に組み入れることとする。
【0129】
前記の発明は、理解の明瞭化を目的として、例示および実施例により相当詳しく記載されているが、本発明の教示を考慮すれば、添付されている特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく或る変更および修飾が本発明に施されうることが当業者に容易に理解されるであろう。
【0130】
配列
配列番号1(HER/neuアミノ酸配列)

【0131】
配列番号2(E75ペプチド)
KIFGSLAFL
配列番号3
BIMAS
配列番号4
SYFPEITHI
配列番号5
RIAWARTEL

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における乳癌再発に対する防御免疫または治療免疫を誘導する方法であって、製薬上有効な担体と配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチドとを含む組成物の有効量を該被験体に投与することを含んでなる方法。
【請求項2】
該組成物を注射または接種により投与する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該注射が皮内注射である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
該組成物を1以上の分割用量として注射する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
該用量が該ペプチドの最適化量を含有する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
身体上の複数の注射部位が互いに約5cm離れて位置する、請求項4記載の方法。
【請求項7】
防御免疫が確立されるまで該組成物を6ヶ月にわたって6回投与する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
製薬上有効な担体と配列番号2を有するペプチドとを含むワクチンブースター組成物の有効量を含むブースターを該被験体に投与することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
該ブースター組成物を注射により投与する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
該注射が皮内注射である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
該ブースター組成物を1以上の別個の用量で注射する、請求項8記載の方法。
【請求項12】
2つの用量が等濃度の該ペプチドを含有する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
身体上の複数の注射部位が互いに約5cm離れて位置する、請求項11記載の方法。
【請求項14】
一次免疫スケジュールが完了した後、6ヶ月または12ヶ月ごとに該ブースターを投与する、請求項8記載の方法。
【請求項15】
該被験体がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項16】
該ヒトがヒト白血球抗原A2を発現する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
該ヒトがヒト白血球抗原A3を発現する、請求項15記載の方法。
【請求項18】
該ヒトが、検出可能なレベルのHER2/neuを発現する、請求項15記載の方法。
【請求項19】
該ヒトが、HER2/neu遺伝子発現に関して、タンパク質発現1+または2+の免疫組織化学(IHC)評価、および約0より大きく約2.0未満の蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)評価を有する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
該ヒトが、HER2/neu遺伝子発現に関して、過剰発現3+の免疫組織化学(IHC)評価および約2.0より大きな蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)評価を有する、請求項18記載の方法。
【請求項21】
該被験体が、節陽性または節陰性乳癌の診断後に完全な臨床的寛解の状態にある、請求項1記載の方法。
【請求項22】
該被験体が乳癌に関して部分的な臨床的寛解の状態にある、請求項1記載の方法。
【請求項23】
該組成物がアジュバントを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
該アジュバントが組換えヒト顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
該ワクチンブースター組成物がアジュバントを更に含む、請求項8記載の方法。
【請求項26】
該アジュバントが組換えヒト顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子である、請求項23記載の方法。
【請求項27】
該組成物の投与が、配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチドに対する細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導する、請求項1記載の方法。
【請求項28】
該ヒトが節陽性乳癌を有していた、請求項15記載の方法。
【請求項29】
該ヒトが節陰性乳癌を有していた、請求項15記載の方法。
【請求項30】
製薬上許容される担体、配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチドの有効量およびアジュバントを含んでなるワクチン組成物。
【請求項31】
該アジュバントが顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子である、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
該ペプチドの有効量が1mg/mlであり、該アジュバントの用量が0.1〜0.5mg/mlである、請求項30記載の組成物。
【請求項33】
該ペプチドの有効量が1mg/mlであり、該アジュバントの用量が0.25mg/mlである、請求項30記載の組成物。
【請求項34】
該ペプチドの有効量が1mg/mlであり、該アジュバントの用量が0.125mg/mlである、請求項30記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A−B】
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【図4C−D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A−B】
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【図11C−D】
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【図12A−B】
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【図12C−D】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−529026(P2010−529026A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510385(P2010−510385)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/060044
【国際公開番号】WO2008/150577
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(508019975)ザ ヘンリー エム.ジャクソン ファウンデーション フォー ザ アドバンスメント オブ ミリタリー メディスン,インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】