説明

乳酸の製造方法

【課題】乳酸合成能力を有する酵母を用いた乳酸の製造方法において、乳酸の収量や収率を効率的に向上させることができる方法を提供する。
【解決手段】カルシウム、マグネシウム、銅、バナジウム、ニッケル、バリウム、ストロンチウム、カドミウム、ベリリウム、亜鉛、コバルト、鉄等の水酸化物を発酵培地に添加し、カエル(Xenopus laevis)由来の乳酸合成酵素(L−乳酸脱水素酵素)遺伝子を導入した酵母(Saccharomyces)を用いる、乳酸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵母を用いた発酵による乳酸の乳酸製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源循環型社会構築に向け、生物資源由来の材料を用いた工業原料の生産が盛んに行われている。それらの中で生物由来材料である乳酸を原料とするポリ乳酸は、優れた性質を持つポリマーとして注目されており、その原料となる乳酸をいかに安価に供給するかが課題となっている。
【0003】
乳酸の生産は、ラクトバチラス(Lactobacillus)属やラクトコッカス(Lactococcus)属に代表される乳酸菌によって主に実施されているが、乳酸を培養液中に多量に蓄積させるためには、乳酸菌が酸性条件下で生育しないため、炭酸カルシウムやアンモニア、あるいは水酸化ナトリウムなどの中和剤を添加した培養を行わなければならず、中和工程や精製工程に多大なコストを要している。
【0004】
一方、酸性条件下で生育可能な酵母を用いた有機酸の製造法が、複数、提案されている(特許文献1〜3および非特許文献1、2参照)。これらの提案によれば、本来乳酸生成能を持たない酵母に乳酸生成酵素遺伝子を導入し乳酸を生産させることにより、中和操作を軽減し、低コストの乳酸製造工程を構築することが可能である。さらに、酵母による乳酸を始めとする有機酸の生産能力を、遺伝子組み換え等の技術を用いて向上させることにより、より安価な有機酸の製造法を構築することが可能である。
【0005】
しかしながら、上記の従来の生産方法では、炭酸カルシウム、アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ中和による乳酸菌の乳酸生産や遺伝子組み換え酵母による低酸性条件下での乳酸生産の際でも基質濃度10%に対して2〜7%までしか乳酸生産ができない問題がある(非特許文献1〜4参照)。
【特許文献1】特開2001−204468号公報
【特許文献2】特表2001−516584号パンフレット
【特許文献3】特開2003−259878号公報
【非特許文献1】Applied and Environmental Microbiology(アプライド アンド エンバイロンメンタル マイクロバイオロジー)、71、1964(2005)
【非特許文献2】Applied and Environmental Microbiology(アプライド アンド エンバイロンメンタル マイクロバイオロジー)、71、2789(2005)
【非特許文献3】Journal of Bioscience and Bioengineering (ジャーナル オブ バイオサイエンス アンド バイオエンジニーアリング)、101,172(2006)
【非特許文献4】Biotechnology Progress(バイオテクノロジ プログレス)11、294(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乳酸を安価に供給するためには、乳酸生産能力の高い微生物を創出するとともに、乳酸生産効率の高い培養条件を検討することが必要である。そこで本発明は、低コストで生産性及び収率を向上させる乳酸の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、酵母を用いた発酵による乳酸の製造方法であって、二価イオンの水酸化物を用いる乳酸の製造方法による低コストで生産性や収率を向上させる乳酸の製造し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乳酸生産量や生産効率を向上させることができる。すなわち、本発明は乳酸合成能力を有する酵母および乳酸を高生産させるための効果的な中和操作を用いた乳酸の生産方法を提供するものである。さらに、これまでに行われている乳酸発酵において、例えば、バイオマス由来の糖を用いることで、低コストの乳酸生産ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、酵母を用いた発酵による乳酸の製造方法であって、二価イオンの水酸化物を用いる乳酸の製造方法である。本発明の乳酸の製造方法では、二価イオンの水酸化物は、通常、発酵液の中和操作に用いられる。
【0010】
本発明の乳酸の製造方法では、好ましくは、二価イオンの水酸化物が、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化銅(二価)、水酸化バナジウム、水酸化ニッケル、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カドミウム、水酸化ベリリウム、水酸化亜鉛、水酸化コバルト、水酸化鉄から選ばれる少なくとも1種類である。
【0011】
本発明の乳酸の製造方法では、二価イオンの水酸化物が、水酸化カルシウム、または、水酸化マグネシウムであることが、より好ましく、二価イオンの水酸化物が、水酸化カルシウムであることが、特に好ましい。
【0012】
本発明の乳酸の製造方法では、水酸化カルシウムの濃度は、好ましくは、水1kgに対し、3.7g以上370g以下であり、より好ましくは、水1kgに対し、7.4g以上296g以下であり、さらに特に好ましくは、水1kgに対し、18.5g以上74g以下である。本発明の乳酸の製造方法では、水酸化カルシウムは、スラリー状でも使用可能である。
【0013】
本発明の乳酸の製造方法では、水酸化マグネシウムの濃度は、好ましくは、水1kgに対し、2.9g以上292g以下であり、より好ましくは、水1kgに対し、5.8g以上233g以下であり、特に好ましくは、水1kgに対し、14.6g以上58g以下である。本発明の乳酸の製造方法では、水酸化マグネシウムは、スラリー状でも使用可能である。
【0014】
本発明の乳酸の製造方法において、二価イオンの水酸化物は、乳酸生産培地に含ませても良いし、醗酵培養液に培養中分割してあるいは連続的に添加することもできる。二価イオンの水酸化物が乳酸生産培地に含まれ、また、発酵培養液に培養中分割して、あるいは、連続的に添加する組み合わせの形でもできる。
【0015】
本発明において、二価イオンの水酸化物は、培養中分割して、あるいは、連続的に添加することもできる。添加回数は、1回でも、2回以上であっても良い。
【0016】
本発明で使用する乳酸生産培地での発酵原料は、酵母が資化し得る炭素源、窒素源および無機塩類等を含有し、酵母の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地および合成培地のいずれを用いても良い。
【0017】
発酵原料に含有される炭素源は、シュクロース、フラクトース、グルコース、ガラクトース、ラクトース、マルトース等の糖類、これら糖類を含有するデンプン、及び、デンプン加水分解物、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、ケーンジュース、ケーンジュース抽出物または濃縮液、ケーンジュースからの精製または結晶化された原料糖、ケーンジュースからの精製または結晶化された精製糖、更には酢酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、グリセリン等の糖の原料、またはこれらから選ばれる少なくとも1種類を含むものが好ましい。
【0018】
前記の炭素源は、培養開始時に一括して添加してもよいし、培養中分割してあるいは連続的に添加することもできる。
【0019】
本発明において炭素源の濃度は、好ましくは、1L培養液に10g以上1000g以下であり、より好ましくは、1L培養液に50g以上300g以下であり、特に好ましくは、1L培養液に50g以上200g以下である。炭素源の濃度が、1L培養液に10g以上1000g以下であると、乳酸合成能力を有する酵母が正常に生育し、酵母の乳酸生産が効率的であるので、好ましい。
【0020】
本発明では、乳酸の製造方法で使用する乳酸生産培地が、シュクロース、フラクトース、グルコース、ガラクトース、ラクトース、マルトースから選ばれる少なくとも1種類を含む乳酸生産培地であることが、より好ましい。また、乳酸の製造方法で使用する乳酸生産培地が、デンプン、及び、デンプン加水分解物、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、ケーンジュース、ケーンジュース抽出物または濃縮液、ケーンジュースからの精製または結晶化された原料糖、ケーンジュースからの精製または結晶化された精製糖、酢酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、グリセリンから選ばれる少なくとも1種類を含む乳酸生産培地であることが、より好ましい。本発明では、これら発酵原料を必要に応じて希釈して用いることができる。
【0021】
また、発酵原料に含有される窒素源は、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが好ましく使用される。
【0022】
また、発酵原料に含有される無機塩として、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等を適宜添加することができる。
【0023】
本発明で使用する乳酸生産培地は、必要に応じて、消泡剤を使用することができる。
【0024】
本発明で使用する乳酸生産培地は、好ましくは、微生物が生育のために特定の栄養素、または、特定の栄養素を含有する天然物として添加する。
【0025】
本発明は、酵母を用いた発酵による乳酸の製造方法であり、乳酸は、L−乳酸であることが好ましい。
【0026】
本発明で使用する酵母は、サッカロミセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属又はクリベロミセス(Kluyveromyces)属に属する酵母が挙げられ、サッカロミセス(Saccharomyces)属に属する酵母が、より好ましく、さらに好ましくは、サッカロミセス・セレビセ(Saccharomyces cerevisiae)である。本発明で使用する酵母は、具体的には、NBRC10505株、NBRC10506株が、特に好ましい。
【0027】
本発明の乳酸の製造方法では、酵母が、乳酸合成酵素遺伝子を導入した酵母であることが好ましい。本発明において、乳酸合成酵素遺伝子(ldh遺伝子)とは、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)とピルビン酸を乳酸と酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)に変換する活性を持つ乳酸脱水素酵素をコードしている遺伝子である。本発明においては、乳酸合成酵素遺伝子(ldh遺伝子)は、乳酸脱水素酵素(ldh)遺伝子である。
【0028】
乳酸脱水素酵素遺伝子は、生物の種類に応じてもしくは生体内においても各種同族体が存在する。本発明における乳酸脱水素酵素遺伝子としては、天然由来の乳酸合成酵素遺伝子の他、化学合成的あるいは遺伝子工学的手法で人工的に合成された乳酸脱水素酵素遺伝子でもよい。
【0029】
本発明では、酵母に導入する乳酸合成酵素をコードする遺伝子は、好ましくは、酵素活性の強い乳酸合成酵素をコードするDNAが好ましい。
【0030】
天然由来の乳酸合成酵素遺伝子は、例えば、乳酸菌などの原核生物もしくはカビなどの真核微生物由来のもの、さらにウシ、人などの哺乳類を含む高等真核生物由来の乳酸合成酵素遺伝子を挙げることができる。
【0031】
本発明で好ましく使用する乳酸脱水素酵素遺伝子として、例えば、カエル由来では、アオガエル科(Rhacophoridae)、アカガエル科(Ranidae)、アマガエル科(Hylidae)、ジムグリガエル科(Microhylidae)、ヒキガエル科(Bufonidae)、クサガエル科(Hyperoliidae)、スキアシガエル科(Pelobatinae)、スズガエル科(Discoglossidae)、コモリガエル科(Pipidae)に属する乳酸脱水素酵素遺伝子が挙げられる。これらの中でも、コモリガエル科(Pipidae)に属する乳酸脱水素酵素遺伝子を用いることが好ましく、コモリガエル科に属するカエルの中でも、入手が容易であるゼノプス・レービス由来の乳酸脱水素酵素遺伝子であることが好ましい。
【0032】
本発明で好ましく使用する乳酸脱水素酵素遺伝子は、カエル由来のL−乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子が好ましい。
【0033】
本発明で好ましく使用する乳酸脱水素酵素遺伝子は、ゼノプス・レービス(Xenopus laevis)由来のL−乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子が好ましい。
【0034】
本発明で好ましく使用する乳酸脱水素酵素遺伝子は、より好ましくは、配列番号1に示す核酸配列を有する乳酸脱水素酵素遺伝子であり、さらに好ましくは、カエル由来のL−乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子であって、配列番号1に示す核酸配列を有する遺伝子である。
【0035】
本発明の乳酸の製造方法では、乳酸脱水素酵素遺伝子は、L-乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子が好ましく、L-乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子は、L-乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子の発現を可能とするプロモーターの下流に導入されていることが、より好ましい。さらに、本発明の乳酸の製造方法では、L-乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子が、染色体上のピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子のプロモーターの下流に発現可能な状態で導入されているより好ましい。
【0036】
本発明で好ましく使用する乳酸脱水素酵素遺伝子には、遺伝的多型性や、変異誘発などによる変異型の遺伝子も含まれる。ここでいう遺伝的多型性とは、遺伝子上の自然突然変異により遺伝子の塩基配列が一部変化しているものである。また、変異誘発とは、人工的に遺伝子に変異を導入することをいい、例えば、部位特異的変異導入用キット(Mutant−K(タカラバイオ社製))を用いる方法や、ランダム変異導入用キット(BD Diversify PCR Random Mutagenesis(CLONTECH社製))を用いる方法などがある。
【0037】
さらに酵素活性が強化された乳酸合成酵素をコードするDNAとしては、例えば、部位特異的変異導入法を用いた変異手法によって得られる酵素活性が強い乳酸合成酵素をコードするDNAや、強力なプロモーターの支配下に乳酸合成酵素をコードするDNAを連結したDNAなどを挙げることができる。
【0038】
本発明の乳酸の製造方法に用いられる酵母は、好ましくは、乳酸合成酵素(乳酸脱水素酵素、Lactate dehydrogenase)をコードする遺伝子を遺伝子組み換え等の手法を用いて導入することにより製造することができる。また、酵母が、既に目的とする乳酸合成酵素をコードする遺伝子を有している場合は、必ずしも該遺伝子を導入する必要はない。
【0039】
本発明で使用する酵母は、1倍体で良いが、倍数体でもよい。染色体が1組であることが1倍体、複数組を倍数体である。例えば、染色体が2組あれば2倍体と呼ぶ。
【0040】
本発明の乳酸の製造方法では、乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子を酵母に導入する方法としては、例えば、乳酸脱水素酵素遺伝子をクローニングし、クローニングした該遺伝子を組み込んだ発現ベクターを酵母に形質転換する方法、クローニングした該遺伝子を染色体上の目的箇所に相同組換えで挿入する方法等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0041】
本発明で好ましく使用する乳酸脱水素酵素遺伝子をクローニングする方法としては、特に制限はなく、既知の手法を用いることができる。例えば、既知の遺伝子情報に基づき、PCR(Polymerase Chain Reaction)法を用いて必要な遺伝領域を増幅取得する方法や、ゲノムライブラリーやcDNAライブラリーより相同性や酵素活性を指標としてクローニングする方法などが挙げられる。また、既知のタンパク質情報に基づき化学合成的又は遺伝子工学的に合成する方法も可能である。
【0042】
クローニングした乳酸脱水素酵素遺伝子を組み込む発現ベクターとしては、酵母で汎用的に利用される発現ベクターを用いることができる。酵母で汎用的に利用される発現ベクターとは、酵母細胞内での自立的複製に必要な配列、大腸菌細胞内での自立的複製に必要な配列、酵母選択マーカー及び大腸菌選択マーカーを有しており、また、組み込んだ乳酸脱水素酵素遺伝子を発現させるために、その発現を調節するオペレーター、プロモーター、ターミネーター又はエンハンサー等のいわゆる調節配列をも有していることが望ましい。
【0043】
ここで、酵母細胞内での自立的複製に必要な配列とは、例えば、酵母の自立複製開始点(ARS1)とセントロメア配列の対もしくは酵母の2μmプラスミドの複製開始点であり、大腸菌内での自立的複製に必要な配列とは、例えば、大腸菌のColE1複製開始点である。また、酵母選択マーカーとしては、URA3又はTRP1等の栄養要求性相補的遺伝子もしくはG418耐性遺伝子又はネオマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が挙げられ、大腸菌の選択マーカーとしては、アンピシリン耐性遺伝子又はカナマイシン耐性遺伝子等の抗生物質耐性遺伝子が挙げられる。調節配列としては、GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)プロモーター、ADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、GAPDHターミネーターが挙げられる。しかしながら、発現ベクターはこれらに限定されるものではない。
【0044】
上記発現ベクターのプロモーター下流に乳酸脱水素酵素遺伝子を導入することにより、該遺伝子を発現可能なベクターが得られる。得られた乳酸脱水素酵素遺伝子発現ベクターを、後述する方法により酵母に形質転換することにより、乳酸脱水素酵素遺伝子を酵母に導入することができる。
【0045】
乳酸脱水素酵素遺伝子を染色体上の目的箇所に、好ましくは、pdc1遺伝子のプロモーターの下流に相同組み換えで挿入する方法としては、乳酸脱水素酵素遺伝子の上流及び下流に、導入目的箇所に相同的な部分を付加するようにデザインしたプライマーを用いてPCRを行い、得られたPCR断片を後述する方法により酵母に形質転換する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、形質転換株の選択を容易にするために、上記PCR断片には酵母選択マーカーが含まれることが好ましい。
【0046】
ここで用いるPCR断片を調整する方法は、例えば、下記(1)〜(3)のステップ1〜3の工程により行うことができる。その概略を図1に示す。
【0047】
(1)ステップ1:乳酸脱水素酵素遺伝子の下流にターミネーターがつながったプラスミドを鋳型とし、プライマー1,2をセットとして、乳酸脱水素酵素遺伝子及びターミネーターを含む断片をPCRで増幅する。プライマー1は、導入目的箇所の上流側に相同的な配列40bp以上を付加するようデザインし、プライマー2は、ターミネーターより下流のプラスミド由来の配列をもとにデザインする。好ましくは、プライマー1に付加する導入目的箇所の上流側に相同的な配列は、ピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子(pdc1遺伝子)の上流に相同的な配列である。
【0048】
(2)ステップ2:酵母選択マーカーを持つプラスミド、例えばpRS424、pRS426等を鋳型として、プライマー3,4をセットとして酵母選択マーカーを含む断片をPCRで増幅する。プライマー3は、ステップ1のPCR断片のターミネーターより下流の配列と相同性のある配列が30bp以上を付加するようにデザインし、プライマー4には、導入目的箇所の下流側に相同的な配列40bp以上を付加するようデザインする。好ましくは、プライマー4に付加する導入目的箇所の下流側に相同的な配列は、pdc1遺伝子の下流に相同的な配列である。
【0049】
(3)ステップ3:ステップ1,2で得られたPCR断片を混合したものを鋳型とし、プライマー1,4をセットとしてPCRを行うことにより、両末端に導入目的箇所の上流側及び下流側に相同的な配列が付加された、乳酸脱水素酵素遺伝子、ターミネーター及び酵母選択マーカーを含むPCR断片が得られる。好ましくは、前記PCR断片は、両末端にpdc1遺伝子の上流及び下流に相同的な配列が付加された、ldh遺伝子、ターミネーター及びマーカー遺伝子を含むPCR断片である。
【0050】
上記で得られた乳酸脱水素酵素遺伝子発現ベクターまたはPCR断片を酵母に導入するには、形質転換、形質導入、トランスフェクション、コトランスフェクションまたはエレクトロポレーション等の方法を用いることができる。具体的には、例えば、酢酸リチウムを用いる方法やプロトプラスト法等がある。
【0051】
得られた形質転換株の培養方法としては、例えば、「M.D. Rose et al.,"Methods In Yeast Genetics", Cold Spring Harbor Laboratory Press (1990)」等に記載されている既知の方法を用いることができる。乳酸脱水素酵素遺伝子発現ベクター又はPCR断片が導入された酵母は、発現ベクター又はPCR断片が有する酵母選択マーカーによって、栄養非添加培地又は薬剤添加培地で培養することにより選択することができる。
【0052】
本発明で好ましく用いられる乳酸脱水素酵素遺伝子が導入された酵母を培養することにより、培地中に乳酸を製造することができる。
【0053】
導入する発現ベクターを酵母内に保持させるのであれば、選択マーカーによる選択圧をかけた培地を用いることが好ましい。培地としては、例えば、ベクターの持つ選択マーカーに符号するアミノ酸を除去した合成培地などが挙げられる。特に好ましい培地は、炭素源としてグルコースを1〜10%、窒素源としてYeast Nitrogen Base without amino acid (DIFCO社製)を0.67%含有し、適切なアミノ酸を添加した合成培地である。
【0054】
培養は、振とう培養もしくは撹拌培養などで行うことができる。さらに、培養形態として、回分培養、半回分培養、連続培養などで行うことができる。酸素供給条件は特に限定されるものではないが、好気的条件下あるいは微好気条件下で行うことができる。培養温度は摂氏20〜40度がよく、好ましくは25〜37度、より好ましくは30〜34度がよい。培養時間は、通常24時間〜5日間である。培養中の培養液のpHは2.0〜10.0に保持することが望ましく、好ましくは2.5〜8、より好ましくは5に保持することがよい。このpHの調整は、アルカリ溶液、アンモニア、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等を用いて行うことができる。
【0055】
乳酸の製造に際しては、まず、本発明の酵母を前培養し、前培養液を新しい培地に移して本培養することにより、培養液中に乳酸を製造することができる。培養温度は、菌株の増殖が実質的に阻害されず乳酸を生産し得る範囲であれば特に制限されるものでないが、好ましくは摂氏20〜40度の範囲の温度であり、より好ましくは摂氏25〜37度の範囲の温度であり、さらに好ましくは摂氏30〜34度である。培養には、静置、撹拌または振とうのいずれの方法も採用し得る。
【0056】
上記のような条件で培養することにより、培地中に1〜20%の乳酸を得ることができる。得られた乳酸の測定法に特に制限はないが、例えば、HPLCを用いる方法や、F-キット(ロシュ社製)を用いる方法などがある。
【0057】
本発明において、乳酸脱水素酵素活性とは、ピルビン酸とNADHを乳酸とNAD+に変換する活性を示す。また限定されるわけではないが、乳酸脱水素酵素活性は比活性を指標として比較できる。すなわち、ldh遺伝子導入方法及び遺伝的バックグラウンドが同じ酵母を同条件で培養し、培養菌体から抽出したタンパク質を用いてNADHの減少に伴う340nmにおける吸光度の変化を測定する。その際に、室温において1分間当たりに1μmolのNADHを減少させる酵素量を1単位(Unit)と定義する事により、乳酸脱水素酵素の比活性は式(1)であらわせる。ここで、Δ340は1分間あたりの340nmの吸光度の減少量、6.22はNADHのミリモル分子吸光係数である。
【0058】
【数1】

【0059】
得られた培養液中の乳酸は、従来から知られている方法によって、精製することができる。例えば、微生物を遠心分離した発酵液をpH1以下にしてからジエチルエーテルや酢酸エチル等で抽出する方法、イオン交換樹脂に吸着、洗浄した後、溶出する方法、酸触媒の存在下でアルコールと反応させてエステルとしてから蒸留する方法、カルシウム塩やリチウム塩として晶析する方法などがある。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0061】
以下、乳酸脱水素酵素遺伝子としてカエルの乳酸脱水素酵素遺伝子、酵母としてサッカロミセス・セレビセ(Saccharomyces cerevisiae)を選定して具体的な実施形態を示し、本発明をより詳細に説明する。
【0062】
参考例1(乳酸合成能力を持つ酵母の造成)
乳酸脱水素酵素(ldh)遺伝子として、配列番号1に示す核酸配列を有するゼノプス・レービス(Xenopus laevis)由来の乳酸脱水素酵素遺伝子を使用した。乳酸脱水素酵素遺伝子のクローニングはPCR法により行った。PCRには、ゼノプス・レービスの腎臓由来cDNAライブラリー(STRATAGENE社製)より付属のプロトコールに従い調製したファージミドDNAを鋳型とした。
【0063】
PCR増幅反応には、KOD−Plus polymerase(東洋紡社製)を用い、反応バッファー、dNTPmixなどは付属のものを使用した。上記のように付属のプロトコールに従い調整したファージミドDNAを50ng/サンプル、プライマーを50pmol/サンプル、及びKOD−Plus polymeraseを1ユニット/サンプルになるように50μlの反応系に調製した。反応溶液をPCR増幅装置iCycler(BIO−RAD社製)により94℃の温度で5分熱変成させた後、94℃(熱変成):30秒、55℃(プライマーのアニール):30秒、68℃(相補鎖の伸張):1分を1サイクルとして30サイクル行い、その後4℃の温度に冷却した。なお、遺伝子増幅用プライマー(配列番号2,3)には、5末端側にはSalI認識配列、3末端側にはNotI認識配列がそれぞれ付加されるようにして作製した。
【0064】
PCR増幅断片を精製し、末端をT4 polynucleotide Kinase(タカラバイオ社製)によりリン酸化後、pUC118ベクター(制限酵素HincIIで切断し、切断面を脱リン酸化処理したもの)にライゲーションした。ライゲーションは、DNA Ligation Kit Ver.2(タカラバイオ社製)を用いて行った。ライゲーション溶液を大腸菌DH5αのコンピテント細胞(タカラバイオ社製)に形質転換し、抗生物質アンピシリンを50μg/mLを含むLBプレートに蒔いて一晩培養した。生育したコロニーについて、ミニプレップでプラスミドDNAを回収し、制限酵素SalI及びNotIで切断し、ldh遺伝子が挿入されているプラスミドを選抜した。これら一連の操作は、全て付属のプロトコールに従い行った。
【0065】
上記乳酸脱水素酵素遺伝子が挿入されたpUC118ベクターを制限酵素SalI及びNotIで切断し、DNA断片を1%アガロースゲル電気泳動により分離、定法に従い、乳酸脱水素酵素遺伝子を含む断片を精製した。得られた乳酸脱水素酵素遺伝子を含む断片を、図2に示す発現ベクターpTRS11のXhoI/NotI切断部位にライゲーションし、上記と同様な方法でプラスミドDNAを回収し、制限酵素XhoI及びNotIで切断することにより、乳酸脱水素酵素遺伝子が挿入された発現ベクターを選抜した。以後、このようにして作成した乳酸脱水素酵素遺伝子を組み込んだ発現ベクターをpTRS102とした。
【0066】
得られた発現ベクターpTS102を増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号4,5)をプライマーセットとしたPCRにより、乳酸脱水素酵素遺伝子及びGAPDHターミネーター配列を含む1.3kbのDNA断片を増幅した(図1のステップ1に相当)。ここで配列番号4は、pdc1遺伝子の上流65bpに相同性のある配列が付加されるようデザインした。
【0067】
次に、プラスミド酵母選択用マーカーを持つプラスミドpRS424を増幅鋳型として、オリゴヌクレオチド(配列番号6,7)をプライマーセットとしたPCRにより、酵母選択マーカーであるTRP1遺伝子を含む1.2kbのDNA断片を増幅した。ここで、配列番号7は、pdc1遺伝子の下流65bpに相同性のある配列が付加されるようデザインした。
【0068】
それぞれのDNA断片を1.5%アガロースゲル電気泳動により分離、常法に従い精製した。ここで得られた各1.3kb断片、1.2kb断片を混合したものを増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号:4,7)をプライマーセットとしたPCR法によって、乳酸脱水素酵素遺伝子、GAPDHターミネーター及びTRP1遺伝子が連結された約2.5kbのDNA断片を増幅した。
【0069】
上記のDNA断片を1.5%アガロースゲル電気泳動により分離、常法に従い精製後、酵母サッカロミセス・セレビセNBRC10505株に形質転換し、トリプトファン非添加培地で培養することにより、ldh遺伝子が染色体上のpdc1遺伝子プロモーターの下流に導入されている形質転換株を選択した。
【0070】
上記のようにして得られた形質転換株が、乳酸脱水素酵素遺伝子が染色体上のpdc1遺伝子プロモーターの下流に導入されている酵母であることの確認は下記のように行った。まず、形質転換株のゲノムDNAをゲノムDNA抽出キットGenとるくん(タカラバイオ社製)により調製し、これを増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号7,8)をプライマーセットとしたPCRにより、約2.8kbの増幅DNA断片が得られることで確認した。なお、非形質転換株では、上記PCRによって約2.1kbの増幅DNA断片が得られる。以下、上記乳酸脱水素酵素遺伝子が染色体上のpdc1遺伝子プロモーターの下流に導入された形質転換株を、B2株とする。
【0071】
実施例1
参考例1において作製したB2株を用いて、乳酸発酵試験を行った。
【0072】
表1に示したケーンジュースを含む培地(以下、天然培地と略す)10mLを試験管に取り、そこに少量のB2株を植菌し、30℃で一晩培養した(前々培養)。次に、天然培地100mLを500ml容三角フラスコにいれ、前々培養液をそれぞれ全量植菌し、30℃で24時間振とう培養した(前培養)。続いて、天然培地を1L投入したミニジャーファメンター(丸菱バイオエンジ社製、容量5L)に、前培養開始から24時間後の前培養液を全量植菌し、1Nの水酸化カルシウム水溶液による中和操作をしながら培養した。培養は攪拌速度(120rpm)、通気量(0.1L/min)、温度(30℃)、pH(pH5)を一定にして行った(本培養)。本培養開始後10時間毎の培養液を遠心分離し、得られた上清を膜濾過した後、下記に示す条件でHPLCによりL−乳酸量を測定した。
【0073】
【表1】

【0074】
カラム:Shim−Pack SPR−H(島津社製)
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃。
【0075】
測定結果から算出したL−乳酸の生産量を図3に示し、対糖収率を表2に示す。1Nの水酸化カルシウム水溶液による天然培地での乳酸発酵では乳酸の生産収率は83.5%まで向上した。
【0076】
実施例2
1Nの水酸化カルシウム水溶液の代わりに、1Nの水酸化マグネシウム水溶液を用いた他は、実施例1と同様にして、乳酸発酵試験を行った。
【0077】
1Nの水酸化マグネシウム水溶液による天然培地での乳酸発酵では、乳酸の生産収率は74.9%であった。
【0078】
比較例1
参考例1において作製したB2株を用いて、水酸化ナトリウムを用いた乳酸発酵試験を行った。
【0079】
天然培地10mLを試験管に取り、そこに少量のB2株を植菌し、30℃で一晩培養した(前々培養)。次に、天然培地100mLを500ml容三角フラスコにいれ、前々培養液を全量植菌し、30℃で24時間振とう培養した(前培養)。続いて、天然培地を1L投入したミニジャーファメンター(丸菱バイオエンジ社製、容量5L)に、前培養開始から24時間後の前培養液を全量植菌し、1N水酸化ナトリウム水溶液による中和操作をしながら培養した。攪拌速度(120rpm)、通気量(0.1L/min)、温度(30℃)、pH(pH5)を一定にして培養を行った(本培養)。本培養開始後10時間毎の培養液を遠心分離し、得られた上清を膜濾過した後、実施例1と同様の方法でHPLCによりL−乳酸量を測定した。
【0080】
測定結果から算出したL−乳酸の生産量を図3に示し、対糖収率を表2に示す。
【0081】
比較例2
1Nの水酸化ナトリウム水溶液の代わりに、1Nの水酸化カリウム水溶液を用いた他は、実施例1と同様にして、乳酸発酵試験を行った。測定結果から算出したL−乳酸の生産量を図3に示し、対糖収率を表2に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
その結果、1Nの水酸化ナトリウム水溶液による天然培地での乳酸発酵(比較例1)では乳酸の生産収率が65.0%であり、1Nの水酸化カリウム水溶液による天然培地での乳酸発酵(比較例2)では乳酸の生産収率は62.1%であるのに対し、1Nの水酸化マグネシウム水溶液による天然培地での乳酸発酵では乳酸の生産収率は74.9%であり(実施例2)、1Nの水酸化カルシウム水溶液による天然培地での乳酸発酵では乳酸の生産収率は83.5%まで向上した(実施例1)。天然培地での二価イオンの水酸化物による中和が乳酸の生産収率に効果的であった。
【0084】
実施例3
参考例1において作製したB2株を用いて、合成培地を用いた乳酸発酵試験を行った。
【0085】
表3に示した組成の培地(以下、合成培地と略す)10mLを試験管に取り、そこに少量のB2株を植菌し、30℃で一晩培養した(前々培養)。次に、合成培地100mLを500ml容三角フラスコにいれ、前々培養液を全量植菌し、30℃で24時間振とう培養した(前培養)。続いて、合成培地を1L投入したミニジャーファメンター(丸菱バイオエンジ社製、容量5L)に、前培養開始から24時間後の前培養液を全量植菌し、攪拌速度(120rpm)、通気量(0.1L/min)、温度(30℃)、pH(pH5)を一定にして培養を行った(本培養)。1Nの水酸化カルシウム水溶液による中和操作をしながら培養した。本培養開始後10時間毎の培養液を遠心分離し、得られた上清を膜濾過した後、実施例1と同様の方法でHPLCによりL−乳酸量を測定した。
【0086】
【表3】

【0087】
測定結果から算出したL−乳酸の生産量を図4に示し、対糖収率を表4に示す。1Nの水酸化カルシウム水溶液を用いた合成培地での乳酸発酵では乳酸の生産収率は69.1%まで向上した。
【0088】
比較例3
参考例1において作製したB2株を用いて、合成培地を用いた乳酸発酵試験を行った。
【0089】
合成培地10mLを試験管に取り、そこに少量のB2株を植菌し、30℃で一晩培養した(前々培養)。次に、合成培地100mLを500ml容三角フラスコにいれ、前々培養液を全量植菌し、30℃で24時間振とう培養した(前培養)。続いて、合成培地を1L投入したミニジャーファメンター(丸菱バイオエンジ社製、容量5L)に、前培養開始から24時間後の前培養液を全量植菌し、1N水酸化ナトリウムによる中和操作をしながら培養した。攪拌速度(120rpm)、通気量(0.1L/min)、温度(30℃)、pH(pH5)を一定にして培養を行った(本培養)。本培養開始後10時間毎の培養液を遠心分離し、得られた上清を膜濾過した後、実施例1と同様の方法でHPLCによりL−乳酸量を測定した。
【0090】
測定結果から算出したL−乳酸の生産量を図4に示し、対糖収率を表4に示す。
【0091】
比較例4
1Nの水酸化ナトリウム水溶液の代わりに、1Nの水酸化カリウム水溶液を用いた他は、実施例1と同様にして、乳酸発酵試験を行った。測定結果から算出したL−乳酸の生産量を図4に示し、対糖収率を表4に示す。
【0092】
【表4】

【0093】
その結果、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いた合成培地での乳酸発酵(比較例3)では乳酸の生産収率が60.0%であり、1Nの水酸化カリウム水溶液を用いた合成培地での乳酸発酵(比較例4)では乳酸の生産収率は58.8%であるのに対し、1Nの水酸化カルシウム水溶液を用いた合成培地での乳酸発酵では乳酸の生産収率は69.1%まで向上した(実施例3)。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、pdc1遺伝子プロモーター下流に、乳酸脱水素酵素遺伝子(ldh遺伝子)を導入する方法を説明する概略図である。
【図2】図2は、本発明で用いられる酵母発現ベクターpTRS11のフィジカルマップを示す図である。
【図3】図3は、天然培地における乳酸生産量増加のグラフである。
【図4】図4は、合成培地における乳酸生産量増加のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母を用いた発酵による乳酸の製造方法であって、二価イオンの水酸化物を用いる乳酸の製造方法。
【請求項2】
二価イオンの水酸化物が、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化銅(二価)、水酸化バナジウム、水酸化ニッケル、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カドミウム、水酸化ベリリウム、水酸化亜鉛、水酸化コバルト、水酸化鉄から選ばれる少なくとも1種類である請求項1に記載の乳酸の製造方法。
【請求項3】
乳酸が、L−乳酸である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
酵母が、乳酸合成酵素遺伝子を導入した酵母である請求項1〜3のいずれかに記載の乳酸の製造方法。
【請求項5】
乳酸合成酵素遺伝子が、カエル由来のL−乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子が配列番号1に示す核酸配列を有する遺伝子である請求項4に記載の乳酸の製造方法。
【請求項6】
乳酸合成酵素遺伝子が、ゼノプス・レービス(Xenopus laevis)由来のL−乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子である請求項4に記載の乳酸の製造方法。
【請求項7】
L-乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子が、L-乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子の発現を可能とするプロモーターの下流に導入されている請求項6に記載の乳酸の製造方法。
【請求項8】
L-乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子が、染色体上のピルビン酸脱炭酸酵素1遺伝子のプロモーターの下流に発現可能な状態で導入されている請求項6に記載の乳酸の製造方法。
【請求項9】
酵母が、サッカロミセス(Saccharomyces)属に属する請求項1〜8のいずれかに記載の乳酸の製造方法。
【請求項10】
乳酸の製造方法で使用する乳酸生産培地が、シュクロース、フラクトース、グルコース、ガラクトース、ラクトース、マルトースから選ばれる少なくとも1種類を含む乳酸生産培地である請求項1〜9に記載の乳酸の製造方法。
【請求項11】
乳酸の製造方法で使用する乳酸生産培地が、デンプン、及び、デンプン加水分解物、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、ケーンジュース、ケーンジュース抽出物または濃縮液、ケーンジュースからの精製または結晶化された原料糖、ケーンジュースからの精製または結晶化された精製糖、酢酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、グリセリンから選ばれる少なくとも1種類を含む乳酸生産培地である請求項1〜10に記載の乳酸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−283917(P2008−283917A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132998(P2007−132998)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】