乳酸生産のための酵母菌株
乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)をコードしている遺伝子の少なくとも1個のコピーにより形質転換され、そしてさらに、高い収率と生産性をもつ乳酸生産のために改変された酵母菌株が記述される。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
本発明は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)をコードしている遺伝子の少なくとも1個のコピーにより形質転換され、そして高い収率と生産性をもつ乳酸生産のためにさらに改変された酵母菌株に関する。
【0002】
発明の背景 乳酸およびその誘導体の応用は、多くの工業活動分野(すなわち、化学、化粧品および薬学)、ならびに食品製造と使用の重要な範囲を包含する。さらにまた、今日では、生分解性ポリマー材の合成のために直接使用されるそのような有機酸の製造における関心が高まりつつある。
【0003】
乳酸は、化学合成によるか、または微生物を使用する炭水化物の発酵によって製造することができる。後者の方法は、化学合成によって生成されるラセミ混合物に対して、1種の異性体を独占的に生産する微生物が開発されたので、今や商業的に好適である。もっとも重要な工業用微生物。例えば属ラクトバチルス(Lactobacillus)、バチルス(Bacillus)およびリゾープス(Rhizopus)は、L(+)−乳酸を生産する。また、D(−)−乳酸もしくはL(+)−およびD(−)−乳酸の混合物の発酵による生産も知られている。
【0004】
典型的な乳酸発酵においては、生産微生物の代謝活性に対する生産された乳酸によって惹起される阻害効果が存在する。乳酸の存在に加えて、pH値を低下することも、また細胞増殖と代謝活性を阻害する。結果として、一般に、乳酸生産の程度が低下される。
【0005】
それ故、乳酸を中和し、そしてpH低下を防ぐためのCa(OH)2、CaCO3、NaOHもしくはNH4OHの添加は、遊離の乳酸蓄積のネガティブ効果に対抗するための工業的工程における慣用の操作である。
【0006】
これらの工程は、pHを範囲約5〜7の一定値に維持することによって、乳酸塩の生産を可能にする;これは、十分に乳酸のpKa、3.86以上である。
【0007】
主要な欠点は、発酵中の乳酸の中和に関係している。主として、遊離の乳酸をその塩から再生し、そして中和する陽イオンの処理もしくは再利用するために、付加的操作が必要になる;これは、費用のかかる工程である。もし、遊離の乳酸が、低いpH値において増殖する微生物によって蓄積でき、それによって、乳酸塩の生産を最小化することができれば、余分な操作と費用のすべてが排除できるであろう。
【0008】
乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を発現する組み換え酵母の使用によって、解糖の流れを乳酸生産の方向へシフトさせることが提案された。
【0009】
フランス特許出願公開第692 591号(Institut Nationale la Recherche Agronomique)は、乳酸菌由来の乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子であって、酵母においてその発現を調節している配列の制御下にある該遺伝子の少なくとも1個のコピーを含有する酵母菌株、特にサッカロミセス(Saccharomyces)菌株を開示している。
【0010】
該菌株は、アルコールおよび乳酸発酵の両方を行うことができ、そしてこのいわゆる「中間的(intermediate)」もしくは「均衡(balanced)」発酵は、ビール醸造、ワイン醸造およびパン焼きのような領域において利用することができるであろう。
【0011】
また、Porro et al.,(Biotechnol.Prog.11,294−298,1995)は、ウシ乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子を用いるS.セレビシエ(S.cerevisiae)の形質転換を報告した。
【0012】
しかしながら、エタノールの高い生産のために、前記両方法の乳酸生産における収率は、乳酸菌の使用によって得られる収率に匹敵するとは見なされなかった。 過去の10年間において、S.セレビシエ以外の「非慣用酵母」が、異種タンパク質の発現のための宿主としてかなり高い工業的関心を得た。例は、メタノール資化性酵母、例えばハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)およびピヒア・パストリス(Pichia pastoris)、ラクトース資化性酵母、例えばクルイベロミセス ラクチス(Kluyveromyces lactis)である。炭素およびエネルギー源として広範囲な基質の使用を可能にすることに加えて、他の議論は、「非慣用酵母」の工業的使用のために提案された。一般的に言えば、バイオマスおよび生産物収量は、これらの酵母のある種では、細胞環境の苛酷な条件によってもほとんど影響を受けない。高濃度の糖耐性(すなわち、50〜80%w/vグルコース培地;トルラスポラ−異名チゴサッカロミセス−・デルブルッキイ(Torulaspora−syn.Zygosaccharomyces− delbruckii)、チゴサッカロミセス・ルキシイ(Zygosaccharomyces rouxii)およびチゴサッカロミセス・バイリイ(Zygosaccharomyces bailii);Ok T and Hashinaga F.,Journal of General & Applied Microbiology 43(1):39−47,1997)、ならびに酸および乳酸耐性(チゴサッカロミセス・ルキシイおよびチゴサッカロミセス・バイリイ;Houtsma PC,et al.,Jof Food Protection 59(12),1300−1304,1996)の「非慣用酵母」が利用しうる。既に強調されたように、もし発酵法が、前記の1つ以上の「苛酷な条件」下で実施されれば、下流処理の費用は、著しく削減することができるであろう。
【0013】
発明の概要 第1の実施態様によれば、本発明は、エタノール生産能を欠いているか、または低いエタノール生産能をもち、そして酵母において乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)をコードしている遺伝子の発現を可能にするプロモーター配列に、機能的に結合された該遺伝子の少なくとも1個のコピーにより形質転換された酵母菌株を提供する。
【0014】
より具体的には、本発明は、低いピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性と低いピルビン酸デカルボキシラーゼ活性をもち、そして酵母において乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)をコードしている遺伝子の発現を可能にするプロモーター配列に、機能的に結合された該遺伝子の少なくとも1個のコピーにより形質転換された酵母菌株を提供する。
【0015】
その他の実施態様によれば、本発明は、クルイベロミセス、トルラスポラおよびチゴサッカロミセスの種の酵母菌株であって、該酵母において遺伝子の発現を可能にするプロモーター配列に、機能的に結合された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)をコードしている遺伝子の少なくとも1個のコピーにより形質転換された酵母菌株を提供する。
【0016】
さらなる実施態様によれば、本発明は、また、異種LDH遺伝子により形質転換され、そして乳酸輸送体を過剰発現する酵母細胞を提供する。
【0017】
他の実施態様は、酵母プロモーター配列に機能的に結合された乳酸デヒドロゲナーゼをコードしているDNA配列を含有する発現ベクター、および炭素源を含有する発酵培地において前記の代謝的に工作された酵母菌株を培養し、そして発酵培地から乳酸を回収することによるDL−、D−もしくはL−乳酸の製造方法である。
【0018】
さらにまた、本発明は、操作された発酵培地において該酵母菌株を培養し、そして発酵培地から乳酸を回収することによって、乳酸の炭素源における生産性(g/l/hr)、生産量(g/l)および収率(g/g)を改良する方法を提供する。
【0019】
発明の記述 乳酸が、属クルイベロミセス、サッカロミセス、トルラスポラおよびチゴサッカロミセスに属する代謝的に改変された酵母によって生産し得ることが見い出された。
【0020】
より具体的には、乳酸生産における非常に高い収率が、少なくともエタノール発酵を乳酸発酵によって置換するように工作された酵母菌株によって得られることが見い出された。
【0021】
乳酸生産において、なおより高い収率(>80%g/g)は、エタノール発酵とミトコンドリアによるピルビン酸の使用の両方を、乳酸発酵によって置換するように工作された酵母菌株によって得られるかも知れない。
【0022】
この目的のために、また、本発明は、例えば、1細胞当たりの増加されたLDHコピー数、またはLDH発現を制御するより強力なプロモーターの使用の結果として、増強されたLDH活性をもつ形質転換酵母細胞を提供する。
【0023】
1細胞当たりの増加されたLDHコピー数は、乳酸デヒドロゲナーゼタンパク質をコードしている核酸配列の少なくとも1個のコピー、好ましくは少なくとも2個のコピー、より好ましくは4個のコピー、なおより好ましくは、該核酸配列の10〜50個のコピーを意味する。
【0024】
乳酸のもっとも高い生産のためには、本発明により形質転換された酵母細胞は、好ましくは、乳酸輸送体を過剰発現する。これは、乳酸輸送体のために必要な遺伝子の1個以上のコピーにより酵母細胞を形質転換することによって得ることができる。
【0025】
本発明による菌株は、いくつかの方法によって、例えば、乳酸デヒドロゲナーゼ活性の発現を標的とする遺伝子工学技術、およびエタノールの生産に関与する酵素活性、例えばピルビン酸デカルボキシラーゼとアルコールデヒドロゲナーゼ活性の不活性化もしくは抑制、およびミトコンドリアによるピルビン酸の利用に関与する酵素活性の不活性化もしくは抑制によって得ることができる。
【0026】
ピルビン酸デカルボキシラーゼは、アルコール経路における最初の段階を触媒するので、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)活性をもたないか実質的に低い活性をもち、そして異種の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を発現する酵母菌株が好適である。
【0027】
さらに、ピルビン酸デヒドロゲナーゼは、ミトコンドリアによるピルビン酸の利用における最初の段階を触媒するので、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)活性をもたないか実質的に低い活性をもち、そして異種の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を発現する酵母菌株が、また好適である。
【0028】
乳酸は、乳酸輸送体を介して培地中に分泌されるので、乳酸を生産し、そして乳酸輸送体を過剰発現する細胞が、また好適である。
【0029】
酵母菌株におけるLDH遺伝子の発現は、遊離の酸が直接得られ、そして乳酸塩の面倒な転化と回収が最小化されるような酸性pH値における乳酸の生産を可能にする。本発明において、発酵培地のpHは、最初は4.5を超えていてもよいが、発酵の終了時には、pH4.5以下、好ましくは3以下まで低下するであろう。
【0030】
いかなる種類の酵母菌株も、本発明により使用されてもよいが、クルイベロミセス、サッカロミセス、トルラスポラおよびチゴサッカロミセスの種が好適である。何故なら、これらの菌株は、非常に低いpHにおいて、特にpH4.5以下の範囲において増殖し、そして/または代謝できるからである;これらの菌株のための遺伝子工学法は、よく開発されている;そしてこれらの菌株は、食品関連の応用における使用のために広く受け入れられている。
【0031】
乳酸の良好な収率は、さらに、「野生型」ピルビン酸デカルボキシラーゼおよび/またはピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性をもつ乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子により形質転換されたクルイベロミセス、トルラスポラおよびチゴサッカロミセス菌株によって得ることができる。
【0032】
用語「低いピルビン酸デカルボキシラーゼ活性」は、細胞における減少された酵素濃度、または酵素の低いか全くない比触媒活性、のいずれかを意味する。
【0033】
用語「低いピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性」は、細胞における減少された酵素濃度、または酵素の低いか全くない比触媒活性、のいずれかを意味する。
【0034】
本発明によれば、エタノール生産がゼロであるかそれに近いが、例えば、野生型菌株の正常値よりも少なくとも60%低く、好ましくは少なくとも80%低く、そしてなおより好ましくは少なくとも90%低く、低い生産が受け入れられる菌株の使用が好適である。
【0035】
本発明によれば、ピルビン酸デカルボキシラーゼおよび/またはピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性が、ゼロであるかそれに近いが、例えば、野生型菌株の正常値よりも少なくとも60%低く、好ましくは少なくとも80%低く、そしてさらにより好ましくは少なくとも90%低く、低い活性が認められる菌株の使用が好適である。
【0036】
PDC活性をもたないK.ラクチスの例は、Mol.Microbiol.19(1),27−36,1996において開示された。
【0037】
低いPDC活性をもつサッカロミセス菌株の例は、Acc.No.200027および200028を付してATCCから入手できる。調節PDC2遺伝子の欠失の結果として低いPDC活性をもつサッカロミセス菌株のさらなる例が、Hohmann S (1993)(Mol Gen Genet 241:657−666)において記述された。
【0038】
PDC活性をもたないサッカロミセス菌株の例は、Flikweert M.T.らにより記述された(Yeast,12:247−257,1996)。S.セレビシエにおける、PDC活性の低下は、構造遺伝子(PDC1,PDC5,PDC6)の欠失もしくは調節遺伝子(PDC2)の欠失のいずれかによって得ることができる。
【0039】
PDH活性をもたないクルイベロミセス菌株の例は、Zeemanらにより記述された(Genes involved in pyruvate metabolism in K.lactis;Yeast,vol 13 Special Issue April 1997,Eighteenth International Conference on Yeast Genetics and Molecular Biology,p143)。
【0040】
PDH活性をもたないサッカロミセス菌株の例は、Pronk JT.らにより記述された(Microbiology.140(Pt 3):601−10,1994)。
【0041】
PDC遺伝子は、種々の酵母の属中で高度に保存されている(Bianchi et al.,Molecular Microbiology, 19(1):27−36,1996;Lu P.et al.,Applied & Enviromental Microbiology,64(1):94−7,1998)。それ故、Lu Pら(前出)によって報告されたように、古典的分子アプローチにしたがって、両トルラスポラおよびチゴサッカロミセス酵母種からピルビン酸デカルボキシラーゼ活性に必要な遺伝子を、同定し、クローン化し、そして破壊することが可能であることは、容易に期待できる。さらに、Neveling Uら(1998,Journal of Bacteriology,180(6):1540−8,1998)によって報告されたように、同じ古典的アプローチにしたがって、トルラスポラおよびチゴサッカロミセスの両酵母種においてPDH活性に必要な遺伝子を、単離し、クローン化し、そして破壊することが可能であることは、また容易に期待できる。
【0042】
ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性は、既知の方法、例えばUlbrich J.,Methods in Enzymology,Vol.18,p.109−119,1970,Academic Press, New Yorkによって測定できる。
【0043】
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性は、例えばNeveling U.ら(前出)による既知の方法によって測定できる。
【0044】
適当な菌株は、野生型もしくは保存菌株の選択的突然変異および/または遺伝子操作によって得ることができる。数百の変異株が、「高生産性スクリーン」アプローチによって選択できる。種々の解糖系流速を支持する栄養物質を使用することによるピルビン酸デカルボキシラーゼ活性の調節(Biotechnol.Prog.11,294−298,1995)は、満足されないことが証明された。
【0045】
本発明により酵母菌株におけるピルビン酸デカルボキシラーゼ活性および/またはピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性を低下もしくは消滅する好適な方法は、対応する遺伝子もしくは遺伝子群の欠失にある。
【0046】
これらの欠失は、Bianchiら(Molecular Microbiol.19(1),27−36,1996;Flikweert M.T.et al.,Yeast,12:247−257,1996およびPronk JT.et al.,Microbiology,140(Pt 3):601−10,1994)によって開示されたような既知の方法によって、選択マーカー、例えばURA3マーカー、好ましくはサッカロミセス・セレビシエ由来のURA3マーカーの手段による欠失もしくは挿入によって実施される。あるいはまた、欠失、点変異および/またはフレーム・シフト変異が、機能性プロモーターおよびPDCおよび/またはPDH活性に必要な遺伝子中に導入できる。これらの技術は、例えば、Nature,305,391−397,1983において開示されている。これらの活性を低下する付加法は、PDCおよびPDHmRNAの翻訳を阻害するための、遺伝子配列中の終止コドンの導入もしくはアンチセンスmRNAの発現であってもよい。
【0047】
PDC遺伝子が、S.セレビシエのURA3遺伝子によって置換されたクルイベロミセス・ラクチス菌株は、既に、Molecular Microbiology 19(1),27−36,1996において記述された。
【0048】
乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子は、いかなる種(例えば、ウシのような哺乳類もしくは細菌類)のものであってもよく、そしてそれは、L(+)−LDHもしくはD(−)−LDHをコードしていてもよい。あるいはまた、両タイプのLDH遺伝子が、同時に発現されてもよい。さらに、LDH DNA配列をもついかなる天然もしくは合成変異体、野生型LDH遺伝子と高い同一性をもついかなるDNA配列、正常なLDH活性を補足するいかなるDNA配列が、使用されてもよい。
【0049】
輸送体遺伝子として、例えば、S.セレビシエの乳酸輸送体をコードしているJEN1遺伝子が使用できる。
【0050】
酵母菌株の形質転換は、組み込みもしくは複製ベクター、直鎖状もしくはプラスミド状のいずれを用いても実施することができる。
【0051】
本発明の組み換え細胞は、外来DNAを細胞中に導入させるすべての方法(Spencer Jf,et al.,Journal of Basic Microbiology 28(5):321−333,1988)、例えば、形質転換、エレクトロポレーション、接合、プロトプラスト融合もしくはすべての他の既知技術によって得ることができる。形質転換に関して、種々の方法が記述された:特に、それは、Ito H.ら(J.Bacteriol.,153:163,1983)による酢酸リチウムおよびポリエチレングリコールの存在下、またはDurrens P.ら(Curr.Genet.,18:7,1990)によるエチレングリコールおよびジメチルスルホキシドの存在下で、全細胞を処理することによって実施することができる。また別の方法は、欧州特許第361991号において記述されている。エレクトロポレーションは、Becker D.M.およびGuarente L.(Methods in Enzymology,194:18,1991)により実施することができる。
【0052】
非細菌性組み込みベクターの使用は、酵母菌体が、発酵法の終了時点で、保存飼料として、または他の繁殖用、農業用もしくは食用目的に使用される場合には好適であろう。
【0053】
本発明の特定の実施態様では、組み換えDNAは、自律もしくは組み込み複製できる発現プラスミドの一部分である。
【0054】
特に、両S.セレビシエおよびK.ラクチスでは、自律複製ベクターは、選ばれた宿主における自律複製配列を使用することによって得ることができる。特に、酵母においては、それらは、プラスミド(2μ,pKD1など)もしくは染色体配列(ARS)さえから得られる複製開始点であってもよい。
【0055】
組み込みベクターは、相同組み換えによりベクターの組み込みを可能にする、宿主ゲノムのある領域における相同DNA配列を使用することによって得ることができる。
【0056】
遺伝子発現のための遺伝道具は、S.セレビシエに関して非常に良く開発されており、そしてRomanos,M.A.et al.,Yeast,8:423,1992に記述されている。遺伝道具は、また、組み換えタンパク質生産のための宿主細胞として酵母クルイベロミセスおよびトルラスポラ種の使用を可能にするためにも開発されてきた(Spencer Jf,et al.,前出;Reiser J.et al.,Advances in Biochemical Engineering−Biotechnology.43,75−102,1990)。K.ラクチスにおいて自律的に複製するベクターの若干の例は、K.ラクチスの直鎖状プラスミドpKG1(de Lovencourt L. et al.,J.Bacteriol.,154:737,1982)に基づくか、または自己複製と正しい分離能をベクターに付与するK.ラクチスそれ自体の染色体配列(KARS)(Das S.,Hollenberg C.P.,Curr.Genet.,6:123,1982)を含有しているかいずれかであると報告されている。さらにまた、K.ドロソフィラルム(K.drosophilarum)に固有の2μ−様プラスミド(プラスミドpKD1−米国特許第5 166 070号)の認識が、組み換えタンパク質の生産のための非常に有効な宿主/ベクター系を確立させた(欧州特許出願公開第361 991号)。組み換え体pKD1に基づくベクターは、適当な酵母および細菌マーカーに融合された完全な元の配列を含有する。あるいはまた、pKD1の一部を、共通のS.セレビシエ発現ベクターと組み合わせることができる(Romanos,M.A.et al.Yeast,8:423,1992)(Chen et al.,Curr.Genet.,16:95,1989)。
【0057】
S.セレビシエ由来の2μプラスミドが、トルラスポラにおいて複製し、そして安定に維持されることが知られている。この酵母において、異種タンパク質の発現は、同時形質転換操作、すなわち、S.セレビシエのための発現ベクターと全2μプラスミドの同時存在によって得られた(Compagno C.et al.,Mol.Microb.,3:1003−1010,1989)。分子間および分子内組み換えの結果として、完全な2μ配列と異種遺伝子を担持しているハイブリッドプラスミドを単離することができる;そのようなプラスミドは、原則的には、トルラスポラを直接形質転換することができる。
【0058】
さらに、S.セレビシエARS1配列に基づくエピソームプラスミドも記述されているが、このプラスミドの安定性は非常に低い、Compagnoら(前出)。
【0059】
近年、pTD1と名付けられた内因性の2μ−様プラスミドが、トルラスポラにおいて単離された(Blaisonneau J.et al.,Plasmid,38:202−209,1997);現在S.セレビシエのために利用できる遺伝道具は、新規プラスミドに転移することができ、かくしてトルラスポラ酵母種に与えられる発現ベクターを得る。
【0060】
トルラスポラ酵母のための遺伝マーカーは、例えば、URA3(Watanabe Y.et al.,FEMS Microb.Letters,145:415−420,1996),G418耐性(Compagno C.et al.,Mol.Microb.,3:1003−1010,1989)およびシクロヘキシミド耐性(Nakata K.et Okamura k.,Biosc.Biotechnol.Biochem.,60:1686−1689,1996)を含む。
【0061】
チゴサッカロミセス種からの2μ−様プラスミドが知られており、そしてZ.ルキシイ(pSR1)、Z.ビスポラス(Z.bisporus)(pSB3)、Z.フェルメンタチ(Z.fermentati)(pSM1)およびZ.バイリイ(pSB2)において単離された(Spencer Jf.et al.,前出)。
【0062】
プラスミドpSR1は、もっともよく知られている:それはS.セレビシエにおいて複製されるが、2μARSは、Z.ルキシイにおいて認識されない(Araki H.and Hoshima Y.,J.Mol.Biol.,207:757−769,1989)。
【0063】
S.セレビシエARS1に基づくエピソームベクターは、Z.ルキシイのために記述されている(Araki et al.,Mol.Gen.Genet.,238:120−128,1993)。
【0064】
チゴサッカロミセスのための選択マーカーは、G418を含有する培地において増殖を可能にする遺伝子APT1である(Ogawa et al.,Agric.Biol.Chem.,54:2521−2529,1990)。
【0065】
誘導的であれ構成的であれ、いかなる酵母プロモーターが、本発明により使用されてもよい。今日まで、S.セレビシエにおけるタンパク質の発現に使用されたプロモーターは、Romanosら(前出)によってよく記述されている。K.ラクチスにおいて外来タンパク質発現に普通に使用されるプロモーターは、S.セレビシエPGKおよびPHO5であるか(Romanosら、前出)、または相同プロモーター、例えばLAC4(van den Berg J.A.et al.,BioTechnology,8:135,1990)およびKlPDC(米国特許第5 631 143号)である。K.ラクチスのピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子のプロモーター(KlPDC)が特に好適である。
【0066】
クルイベロミセス・ラクチス株の形質転換に特に有効である異種遺伝子発現のためのベクターは、米国特許第5 166 070号に記述されており、引用によって本明細書に組み入れられる。
【0067】
Molecular Microbiol.19(1),27−36,1996に開示されている、好ましくはクルイベロミセス種からの、なおより好ましくはクルイベロミセス・ラクチスからのピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子プロモーターが、特に好適である。また、好ましくはサッカロミセス種、なおより好ましくはサッカロミセス・セレビシエからのトリオースリン酸イソメラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼプロモーターが好適である(Romanosら、前出)。
【0068】
乳酸の生産のために、本発明の酵母菌株は、炭素源および他の必須栄養素を含有する培地において培養され、そして乳酸が、pH7以下、好ましくはpH4.5以下、なおより好ましくはpH3以下において回収される。培地のpHが低下されるので、比較的少量の中和剤が必要である。乳酸塩の形成は、対応して減じられ、そして乳酸を回収するためには遊離酸の比例的に少ない再生が必要になる。回収工程は、既知の方法のいずれを用いてもよい(T.B.Vickroy,Volume3,Chaper38 of ”Comprehensive Biotechnology,”(editor:M.MooYoung),Pergamon,Oxford,1985)(R.Datta et al.,FEMS Microbiology Reviews 16,221−231,1995)。典型的には、乳酸を回収する前に、微生物が濾過もしくは遠心によって除去される。乳酸回収の既知の方法は、例えば、非混和性溶媒相への乳酸の抽出、または乳酸もしくはそのエステルの蒸留を含む。炭素源に対するより高い収率(乳酸g/消費グルコースg)およびより高い生産性(乳酸g/l/h)が、Mg++およびZn++を欠くか、または該イオンの低い利用能をもつ培地において増殖する酵母菌株、特にサッカロミセス菌株によって得られる。好ましくは、培地は、Mg++5mM未満および/またはZn++0.02mM未満を含有するであろう。
【0069】
本発明は、乳酸の生産において次の利点を提供する:1. 発酵が、pH4.5以下で実施される場合、慣用の方法と比較して、外来の微生物による汚染の危険性が低い。さらに、発酵設備は単純化でき、そして発酵制御が容易に行うことができる。
2. より少ない中和剤が、中和のために培地中に添加されるので、対応して、乳酸塩を遊離乳酸へ転化するための鉱酸もしくは他の再生薬剤を使用する必要性が低い。したがって、生産コストが低減できる。
3. より少ない中和剤が培地に添加されるので、培養液の粘度が低下される。その結果、培養液は処理が容易である。
4. 本発明により分離された細胞は、新鮮な乳酸発酵のための種菌微生物として再び利用できる。
5. 細胞は、本発明にしたがって、乳酸発酵中に連続的に分離され、そして回収することができ、それ故、発酵が連続的に実施できる。
6. 組み換え酵母菌株は、エタノール生産能とピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性を欠くか、または両低いエタノール生産と低いピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性をもつので、乳酸の生産は、野生型のエタノール生産能と野生型のミトコンドリアによるピルビン酸利用能の両方をもつ酵母菌株に比較して、より高い収率で実施することができる。
7. クルイベロミセス、トルラスポラおよびチゴサッカロミセスの種に属する代謝的に工作された非慣用酵母による乳酸の生産は、非慣用炭素源(すなわち、若干の例を示せば、ガラクトース−ラクトース−スクロース−ラフィノース−マルトース−セロビオース−アラビノース−キシロース)から、高糖濃度培地中で細胞を増殖させ、そして高濃度の乳酸の存在下で細胞を増殖させて得ることができる。
【0070】
【発明の詳細な記述】
定義 次の定義は、本発明の詳細な記述を理解する際、当業者を助けるために提供される。
【0071】
「増幅」は、所望の核酸分子のコピー数を増加することを指す。
【0072】
「コドン」は、特定のアミノ酸配列を指定する3個のヌクレオチド配列を指す。
【0073】
「欠失」は、核酸配列から1個以上のヌクレオチドを除去する変異を指す。
【0074】
「DNAリガーゼ」は、2つの二本鎖DNA片を共有結合する酵素を指す。
【0075】
「エレクトロポレーション」は、宿主細胞を透過性にするよう短時間高電圧のdc電荷を使用して、そこに染色体外DNAを取り込ませる、細胞中に外来DNAを導入する方法を指す。
【0076】
用語「内因性」は、生物体もしくは細胞内から生じる物質を指す。
【0077】
用語「エンドヌクレアーゼ」は、内部の位置において二本鎖DNAを加水分解する酵素を指す。
【0078】
用語「発現」は、対応するmRNAを生産するための遺伝子の転写、および対応する遺伝子産物、すなわちペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質を生産するためのこのmRNAの翻訳を指す。
【0079】
用語「アンチセンスRNAの発現」は、遺伝子産物、例えばタンパク質をコードしている第2のRNA分子にハイブリダイズできる第1のRNA分子を生産するためのDNAの転写を指す。RNA−RNAハイブリッドの形成は、遺伝子産物を生産する第2のRNA分子の翻訳を阻害する。
【0080】
句「機能的に結合された」は、コーディングもしくは構造配列の転写が、プロモーターもしくはプロモーター領域によって命令できるような方向および距離における、プロモーターもしくはプロモーター領域およびコーディングもしくは構造配列を指す。
【0081】
用語「遺伝子」は、染色体DNA、プラスミドDNA、cDNA、合成DNA、またはペプチド、ポリペプチド、タンパク質もしくはRNA分子をコードしている他のDNA、ならびに発現の制御に関与するコーディング配列に隣接している領域を指す。
【0082】
用語「ゲノム」は、宿主細胞内の染色体およびプラスミドの両方を包含する。したがって、宿主細胞中に導入された本発明のコーディングDNAは、染色体に組み込まれていても、またプラスミドに局在されていてもよい。
【0083】
「異種DNA」は、受容細胞のDNAとは異なる起源からのDNAを指す。
【0084】
「相同DNA」は、受容細胞のDNAと同じ起源からのDNAを指す。
【0085】
「ハイブリダイゼーション」は、塩基対を介して相補的な鎖と結合する核酸鎖の機能を指す。ハイブリダイゼーションは、2本の核酸鎖における相補的配列が互いに結合する場合に起きる。
【0086】
「乳酸デヒドロゲナーゼ」(LDH)は、ピルビン酸およびNADHの、乳酸およびNAD+への転化を触媒するタンパク質を指す。L(+)−LDHは、L(+)−乳酸を生成し;D(−)−LDHは、D(−)−乳酸を生成する。
【0087】
用語「乳酸輸送体」は、細胞の内側から外側への乳酸の輸送を可能にするタンパク質を指す。
【0088】
「変異」は、核酸配列におけるすべての変化もしくは変更を指す。ある種のタイプは、ポイント、フレームシフトおよびスプライシングを含んで存在する。変更は、特異的に(例えば部位特異的変異誘発)もしくはランダムに(例えば化学薬剤により、修復マイナス細菌株を通過して)遂行されてもよい。
【0089】
核酸コード:A=アデノシン;C=シトシン;G=グアノシン;T=チミジン;N=等モルのA,C,GおよびT;I=デオキシイノシン;K=等モルのGおよびT;R=等モルのAおよびG;S=等モルのCおよびG;W=等モルのAおよびT;Y=等モルのCおよびT.
「オープンリーディングフレーム(ORF)」は、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質をコードしているDNAもしくはRNAの領域を指す。
【0090】
「ピルビン酸デカルボキシラーゼ」(PDC)は、ピルビン酸のアセトアルデヒドへの転化を触媒するタンパク質を指す。
【0091】
「ピルビン酸デヒドロゲナーゼ」(PDH)は、ピルビン酸のアセチル−CoAへの転化を触媒するタンパク質複合体を指す。
【0092】
「プラスミド」は、環状の、染色体外の、自己複製するDNA片を指す。
【0093】
「点変異」は、核酸配列において単一ヌクレオチドの変更を指す。
【0094】
「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)」は、1つの核酸配列の多数のコピーを作成するための酵素的技術を指す。DNA配列のコピーは、2つのアンプリマー(amplimer)間でDNAポリメラーゼを往復させることによって製造される。この増幅法の基礎は、変性し、次にアンプリマーを再アニールし、続いて伸長して、側面を接するアンプリマー間に位置する領域に新しいDNA鎖を合成するための多周期の温度変化である。
【0095】
用語「プロモーター」もしくは「プロモーター領域」は、RNAポリメラーゼに対する認識部位を提供することによってメッセンジャーRNA(mRNA)の生産を調節する要素および/または正しい部位における転写の開始に必須な他の因子を指す。
【0096】
「組み換え細胞」もしくは「形質転換細胞」は、そのDNAが、外因性核酸分子のその細胞への導入によって変えられた細胞を指す。
【0097】
用語「組み換えDNA構築物」は、1種以上のDNA配列が機能的作動方式において結合されたDNA分子を含む、ゲノム組み込みもしくは自律複製できる、プラスミド、コスミド、ウイルス、自律的に複製する配列、ファージ、または直鎖状もしくは環状一本鎖もしくは二本鎖DNAもしくはRNAヌクレオチド配列を指す。そのような組み換えDNA構築物もしくはベクターは、DNA配列が、翻訳され、したがって発現される機能的mRNAに転写されるような様式で、細胞中に、5’調節配列もしくはプロモーター領域および選択される遺伝子産物のためのDNA配列を導入できる。組み換えDNA構築物もしくは組み換えベクターは、あるいはまた、興味ある特定のRNAの翻訳を阻害するために、アンチセンスRNAを発現できるように構築されてもよい。
【0098】
「低い(酵素)活性」は、同種の野生型菌株から単離される測定酵素活性に較べて、形質転換もしくは変異菌株から単離されるより低い測定酵素活性を指す。低い酵素活性は、低い酵素濃度、酵素の低い比活性もしくはそれらの組み合わせの結果であろう。
【0099】
「修復マイナス」もしくは「修復欠失」菌株は、低いか、または除去されたDNA修復経路をもつ生物体を指す。そのような菌株は、同種の野生型菌株の率に較べて、増大される変異率を現す。修復マイナス菌株を通しての核酸配列の伝播は、核酸配列を通したランダム変異の導入をもたらす。
【0100】
「制限酵素」は、二本鎖DNA中のヌクレオチドの特定のパリンドローム配列を認識し、そして両鎖を切断する酵素を指す;また、制限エンドヌクレアーゼと呼ばれる。切断は、典型的には、制限部位内で起きる。
【0101】
「選択性マーカー」は、その発現が、核酸配列を含有する細胞の同定を容易にする表現型を与える核酸配列を指す。選択性マーカーは、毒性化学物質に対する耐性(例えばアンピシリン耐性、カナマイシン耐性)を示すか、栄養欠乏(例えばウラシル、ヒスチジン、ロイシン)を補足するか、または肉眼的に区別しうる特徴(例えば色彩変化、蛍光)を与えるものを含む。
【0102】
「転写」は、DNA鋳型からRNAコピー生産する方法を指す。
【0103】
「形質転換」は、外因性核酸配列(例えばベクター、プラスミド、組み換え核酸分子)を、外因性核酸配列が染色体に組み込まれるか、または自律複製できる細胞中に導入する方法を指す。
【0104】
「翻訳」は、メッセンジャーRNAからのタンパク質生産を指す。
【0105】
用語「収率」は、消費されたグルコース量(gr/l)で除した生産された乳酸量(gr/l)を指す。
【0106】
酵素の「単位」は、酵素活性を指し、そして1分間当たりの総細胞タンパク質1mg当たり変換された基質ミクロモル量を示す。
【0107】
「ベクター」は、核酸配列を宿主生物中に運搬するプラスミド、コスミド、バクテリオファージもしくはウイルスを指す。
【0108】
ウシ乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(LDH−A)の部位特異的変異誘発 ウシ酵素LDH−A(EC1.1.1.27)のコーディング配列を完全な長さのcDNAから単離するために、古典的な部位特異的変異誘発(J.Biol.Chem.253:6551,1978,Meth.Enzymol.154:329,1987)が遂行された。オリゴヌクレオチドによる部位特異的変異誘発は、合成オリゴヌクレオチドと一本鎖DNA断片とのイン・ビトロのハイブリダイゼーションに基づき、このオリゴヌクレオチドは、変異誘発されるべきDNA配列と一致する、中心のミスマッチ領域を除くDNA断片と相補的である。
【0109】
ATGコドン11bp前にXbaI制限酵素部位を導入するために、1743bpウシLDHcDNAが、プラスミドpLDH12(Ishiguro et al.,Gene,91 281−285,1991)から、EcoRIおよびHindIII制限酵素(New England Biolabs,Beverly,MA)による消化によってクローン化された。単離されたDNA断片は、次いで、pALTER−1(Promega,cat#96210;lot#48645,1996)発現ベクターに挿入された。
【0110】
そのようなベクターは、M13およびR408バクテリオファージ複製開始点および抗生物質耐性の2つの遺伝子を含有する。これらの遺伝子の1つ、テトラサイクリン耐性は機能性である。他(すなわちアンピシリン耐性)は、不活性化されていた。変異誘発反応の間に、変異鎖に対してアンピシリン耐性を回復するオリゴヌクレオチドが提供される(oligoAMP;Promega,Madison,WI Tab.1)。このオリゴヌクレオチドは、一本鎖DNA(ssDNA)鋳型にアニーリングされる。同時に、変異原性オリゴヌクレオチド(oligoLDH,Madison WI)は、同様にアニーリングされた。DNA合成および連結反応に続いて、DNAが、E.コリ(E.coli)の修復マイナス菌株(BMH71−18mutS;kit Promega)中に形質転換される。選択は、LB+アンピシリンにおいて行われた(Molecular Cloning a laboratory manual,edited by Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press)。JM109(kit Promega)E.コリ菌株における形質転換の第2ラウンドが、変異および野生型プラスミドの適当な分離を確実にした。
【0111】
【表1】
【0112】
表1: 部位特異的変異誘発のために使用された合成オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列。oligoLDHにおける下線の配列は、変異誘発によって導入されたXbaI制限部位を示す。
【0113】
使用された技術および材料(oligoLDH以外の)のさらなる詳細は、キットのデータシートにおいて見い出すことができる。
【0114】
ウシLDHについて変異されたcDNAを含有する、得られたプラスミドは、pVC1と命名された(図2)。
【0115】
ラクトバチルス・カゼイ、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)およびバチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophylus)からの細菌乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(LDH)のPCR変異誘発 ラクトバチルス・カゼイLDH遺伝子(GTG)の元の開始(starting)コドン(GTG)(LDH配列は,the National Center of Biotechnologyによって提供されるGenbank Sequence DatabaseのアクセスナンバーM76708において利用できる −NCBI− ウェブ・サイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)は、S.セレビシエによって正しく認識されない。本発明者らは、プラスミドpST2およびLDH配列を、Hutkins Robert(University of Nebraska,USA)から得た。pST2は、pUC19ベクター(Boehringer Mannheim GmbH,Mannheim、Germany,cat.885827)に基づいており、そしてL.カゼイ686(Culture collection of the University of Nebraska)から増幅されたBamHI−SphI LDH−cDNA断片を含有する。
【0116】
普通の真核生物の最初のコドン(すなわち、ATG)により開始するコーディング配列を得るために、LDH配列が、PCRを介して変異誘発された。
【0117】
LDH配列(GenBAnk Sequence DatabaseのアクセスナンバーM76708、前出)の位置163におけるNcoI制限酵素部位の導入は、元のGTGコドンのATGへの付随変化を与える。PCR反応(Mastercycler 5330,Eppendorf,Hamburg,Germany)は、pGEM7Z f(+)(Promega Corporation,Madison WI,USA,cat.P2251)ベクターに基づくプラスミドpLC1から出発して遂行し、そしてL.カゼイの遺伝子(pST2から切り取られた断片BamHI−SphI)を含有する。反応のプライマーとして使用されたオリゴヌクレオチドの配列は表2に報告される。
増幅サイクル:94°;1’ (変性段階)
94°30” (変性段階)
56°30” 4回 (プライマーアニーリング段階)
68°3’ (伸長段階)
94°30” (変性段階)
60°30” 23回 (プライマーアニーリング段階)
68°3’ (伸長段階)
68°3’ (最終伸長段階)
反応の最後に、増幅され、そして変異された遺伝子に対応する単一バンドが単離された。次いで、DNA断片は、平滑末端連結によりpMOSBlue(Amersham Life Science,Buckingamshire,England;cod.RPN5110)クローニングベクターのEcoRV部位において挿入され、pLC3プラスミドが生じた。
【0118】
すべての他の変異誘発法が、同様に使用できる。
【0119】
【表2】
【0120】
表2: PCR増幅のために使用された合成オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列。oligoATGにおける下線の配列は、変異誘発によって導入されたNcoI制限部位、および結果として得られたATG開始コドンを示す。
【0121】
また、本発明者らは、古典的なPCRアプローチにしたがって、細菌バチルス・メガテリウムおよびバチルス・ステアロサーモフィルス(Biol.Chem.Hoppe−Seyler,1987,368:1391)(Biol.Chem.Hoppe−Seyler,1987,368:1167)からのL(+)LDH遺伝子(DNA配列は,また、the National Center of Biotechnologyによって提供されるGenbank Sequence DatabaseのアクセスナンバーM22305およびM19396において利用できる −NCBI− ウェブ・サイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を、酵母S.セレビシエのための発現ベクター(すなわち、それぞれpBME2およびpBST2、下記参照)中にクローン化した。
【0122】
KlPDCAプロモーターおよびウシLDHcDNAを含有するpEPL2複製ベクターの構築 KlPDCAプロモーターおよびコーディング配列は、K.ラクチスのrag6変異を相補するK.ラクチス・ゲノムライブラリークローン(Bianchi et al.,Mol.Microbiol.,19:27−36,1996)から4KbpHindIII断片としてサブクローン化された。プロモーター領域が、ベクターpBleuscript II KS(Stratagene,LaJolla,Ca#212205)のSalIおよびXbaI部位中に、分子クローニング標準操作(Sambrook et al.,Molecular Cloning,前出)を用いるT4 DNAリガーゼによりサブクローン化された。pVC1ベクターから1675bpをもつXbaI−HindIII断片として単離されたウシLDH配列は、ベクターpBleuscript II KSの対応するクローニング部位においてクローン化された。GM82 E.コリ菌株(dam- dcm-)(ATCCもしくはCGSCコレクションから得られる)は、それぞれpKSMD8/7およびpKSEXH/16(図3Aおよび3B)と呼ばれる2種の新ベクターにより形質転換された。
【0123】
それぞれpKSMD8/7およびpKSEXH/16からSalI−XbaI断片として単離された、KlPDCAプロモーターおよびウシLDH配列は、SalIエンドヌクレアーゼの存在下、室温で、T4 DNAリガーゼによりイン・ビトロで連結されて、XbaI末端において連結された。連結反応産物は、pE1ベクター(Bianchi M.et al.,Curr.Genet.12:185−192,1987;Chen X. J.et al.,Curr.Genet.16:95−98,1989およびUS#5166070)のSalIクローニング部位においてクローン化された。このプラスミドは、サッカロミセス・セレビシエ遺伝マーカーURA3を含有するYIp5組み込みプラスミド、およびクルイベロミセス・ドロソフィラルムから単離されたpKD1プラスミド(US#5166070)に基づいている。プラスミドpE1は、S.セレビシエ2μ DNAに類似する機能的構成をもち、そしてクルイベロミセス・ラクチス細胞(Chen X. J.et al.,前出)において安定な進行で複製することができる。プラスミド上のURA3マーカーは、K.ラクチスuraA1−1変異を相補(de Louvencourt et al.,J.Bacteriol.154:737−742(1982))させ、したがって、ウラシルを含まない選択培地における形質転換細胞の増殖を可能にする。
【0124】
得られたベクターは、pEPL2(図4)と呼ばれ、そしてE.コリDH5−alfa菌株(Life Technologies Inc.,Gaitherburg,MA)を形質転換するために使用された。
【0125】
KlPDCAプロモーターおよび細菌LDH遺伝子を含有するpEPL4複製ベクターの構築 pEPL2プラスミドに関して記述されたウシLDH遺伝子が、本文を通して記述された古典的分子アプローチにしたがって、細菌ラクトバチルス・カゼイ遺伝子(前記参照)からのLDH DNA配列と置き換えられて、プラスミドpEPL4を得た。ウシもしくは細菌LDHを担持する形質転換K.ラクチス酵母細胞は、類似の結果を与えた。
【0126】
KlPDCAプロモーターおよびウシLDHcDNAを含有するpLAZ10複製ベクターの構築 ベクターpLAZ10は、KlPDC1プロモーターとウシLDHコーディング配列を担持するpEPL2のSalI断片を、ベクターp3K31のユニークSalI部位中にクローニングすることによって得られた。ベクターp3K31は、市販ベクターpUC19およびプラスミドpKD1のユニークSphI部位に挿入されたベクターpKan707(Fleer et al.,Bio/tchnology 9:968−974,1991)のG418耐性カセットからなる。
【0127】
pLC5,pLC7,pB1,pBM2,pBST2,pLC5−KanMXおよびpJEN1組み込みベクターの構築 L.カゼイLDH遺伝子は、NcoI−SalI消化によってpLC3(前記)から切り取られ、そしてpYX012もしくはpYX022組み込みベクター(R&D System Europe Ltd,Abingdon,England)中に連結された。
【0128】
TPIプロモーターの制御下の細菌LDH遺伝子について変異されたDNAを含有し、そして栄養素要求性マーカーURA3もしくはHIS3を担持する、得られた2種のプラスミドは、pLC5(図5)およびpLC7とそれぞれ命名された。pB1、pBM2およびpBST2の構築では、本発明者らは、pLC5の構築について記述されたものと類似のアプローチを使用した;しかしながら、ウシLDH、B.メガテリウムLDHおよびB.ステアロサーモフィルスLDH(Biol.Chem.Hoppe−Seyler,1987,368:1391)(Biol.Chem.Hoppe−Seyler,1987,368:1167)をそれぞれ使用した。最後に、プラスミドpFA6a−KanMX(Wach et al.,Yeast,1994,10:1793−1808)が、SacIとSmaIにより消化され、そして生じる断片が、同じ酵素で切断されたpLC5中に連結されて、プラスミドpLC5−KanMXを生成した。このプラスミドでは、LDH遺伝子は、TPIプロモーターの制御下にある。
【0129】
S.セレビシエの乳酸輸送体をコードしているJEN1(Davis E.S.,Thesis,1994−Laboratory of Eukaryotic Gene Expression,Advanced Bioscience Laboratories)(Davis,E.S.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89(23),11169,1992)(Andre,B.Yeast(11),1575,1995)のDNA配列(DNA配列は,また、the National Center of Biotechnologyによって提供されるGenbank Sequence DatabaseのアクセスナンバーU24155において利用できる −NCBI− ウェブ・サイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)は、E.S.Davis(University of Marryland,USA)から得られた。JEN1コーディング配列は、本文を通して記述された古典的PCRアプローチによって増幅され、そしてプラスミドpYX022(前記)中にクローン化された。組み込みプラスミドでは、JEN1過剰発現は、TPIプロモーターの制御下にある。
【0130】
ADH1プロモーターおよびウシLDHcDNAを含有するpLAT−ADH複製ベクターの構築 第1に、pLDH−Kanプラスミドが、pFA6−KanMX4ベクター(Wach et al.,Yeast 10:1793−1808(1994))のSmaI/EcoRV消化から誘導されたゲネチシン(G418)耐性を付与するAPT1遺伝子を、pBluescript II KS(Promega Corporation,Madison WI,USA,cat.212208)クローニングベクターのEcoRV部位にクローニングして構築された。
【0131】
第2に、ウシLDH遺伝子のコーディング領域が、前述のpVC1プラスミドからのXbaI/HindIII断片をpVT102−Uベクター(Vernet et al.Gene 52:225−233(1987))中にサブクローニングすることによって、S.セレビシエのADH1プロモーターとターミネーター配列の制御下でクローン化された。
【0132】
最後に、全発現カセット(ADH1プロモーター−LDH遺伝子−ADH1ターミネーター)が、SphI消化によって切り取られ、pLDH−Kanと連結され、SphIで直鎖状にされて、pLAT−ADHベクター(図6)を得た。
【0133】
K.ラクチスPMI/C1菌株の単離 PM6−7A酵母菌株(MAT a,adeT−600,uraA1−1)(Wesolowski et al.,Yeast 1992,8:711)におけるKlPDCA遺伝子の欠失が、菌株PMIを生じた。欠失は、S.セレビシエのURA3マーカーの挿入によって実施された。菌株PMIは、グルコース含有培地で増殖する;PDC活性は検出されず、そして菌株はエタノールを生産しない(Bianchi M.M.,et al.,(1996)、前出)。いかなる検出しうるPDC活性ももたないS.セレビシエ細胞は、グルコース無機質培地では増殖しない(Flikweert M.T.et al.Yeast,12:247−257,1996)ということを強調することが重要である。
【0134】
PMI酵母細胞の定常期の培養からの1x107〜3x107細胞が、5−フルオロオロチン酸を含有する合成培地上に平板塗布された。5−フルオロオロチン酸含有培地における酵母細胞の増殖は、ウラシル合成において損傷された細胞の選択を可能にする(McCusker and Davis,Yeast 7:607−608(1991))。28℃で5日培養後、数株のura−変異株が単離された。得られたこれらの変異株の1株は、PMI/C1と呼ばれ、組み込み形質転換によって予め導入されたURA3遺伝子における変異を生じたが、それは、URA3遺伝子を含有するプラスミド(Kep6ベクター;Chen et al.,J.Basic Microbiol.28:211−220(1988))を用いる形質転換による相補試験から証明された。PMI/C1の遺伝子型は、次のとおりである:MATa,adeT−600,uraA1−1,pdcA::ura3。
【0135】
CENPK113△PDC1△PDC5△PDC6、CENPK113△PDC2およびGRF18U△PDC2菌株の単離 一般的戦略は、最初に、各PDC遺伝子(PDC1、PDC2、PDC5およびPDC6)の単一欠失変異株を作成することであった。遺伝子欠失は、Wachら(1994;Yeast 10、1793−1808)およびGueldenerら(1996;Nucleic acids Res.24,2519−2524)によって記述されたショートフランキングホモロジー(SFH)PCR法を用いて、対応するPDC遺伝子の座における相同性組み換えによりloxP−KanSRD−loxPカセットの組み込みによって行われた。続いて、欠失カセットは、欠失座におけるloxP部位の単一コピーをリーディング ビハインド(leading behind)するcre−リコンビナーゼを発現することによって除かれた。pdc1 pdc5 pdc6三重欠失変異株は、続いて、単一の一倍体欠失株を交雑することによって作成された。
【0136】
PCR反応は、ある種のシュワニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)遺伝子(機密)の調節配列(プロモーター/ターミネーター)に融合されたカナマイシン耐性(E.コリ トランスポゾンTn903のオープンリーディングフレーム)の遺伝子を含有するDNA鋳型において実施された。この選択カセットは、loxP配列(loxP−KanSRD−loxP)によって両端において隣接されており、SRD(Scientific Reseach and Development)によって開発された。loxP−KanSRD−loxPカセットを増幅するために使用されるプライマーは、センスプライマーのDNA配列が、選択カセット配列の5’末端と相同であるように、そしてプライマーが、ある種のサッカロミセス・セレビシエPDC遺伝子の5’末端配列に対応する、その5’末端領域40ヌクレオチドにおける付加において存在するように、設計される。アンチセンスプライマーは、類似の方法で構築され、それは、選択カセットの3’末端と相補的であり、この場合、このプライマーは、ある種のサッカロミセス・セレビシエPDC遺伝子の3’末端配列に対応する、また好ましくは40ヌクレオチドをその5’末端領域において含有する。
【0137】
次の表は、SFH PCR法による対応するPDC遺伝子の遺伝子欠失のために使用されるプライマーを示す。下線の配列は、対応するPDC遺伝子と相同性であり、そしてloxP−KanSRD−loxPカセットに相補的な配列は、太字で存在する。
【0138】
【表3】
【0139】
PCR増幅された欠失カセットは、SRDによって開発された原栄養性二倍体サッカロミセス・セレビシエ菌株CEN.PK112の形質転換のために使用された。
【0140】
CEN.PK112(Mata,alpha,URA3,URA3,HIS3,HIS3,LEU2,LEU2,TRP1,TRP1,MAL2−8C,MAL2−8C,SUC2,SUC2)
形質転換株の選択のために、ゲネチシン(硫酸G−418,Life Technologies)が、最終濃度200mg/lにおいて添加された。四分子分析後、続いて、G418耐性胞子が、診断的PCRによって解析されて、対応するPDC遺伝子の正しい欠失を確認し、そして一倍体菌株の交配型を決定した。
【0141】
3個のPDC遺伝子、PDC1,PDC5おいてPDC6について欠失された菌株を得るために、一倍体欠失株が、続いて交雑された。2個の二重欠失株、pdc1::KanSRD pdc6::KanSRDおよびpdc5::KanSRD pdc6::KanSRDを得るために、対応する一倍体株が交雑された。四分子分析後、KanSRDマーカーに関して非親系二型(non−parental ditype)を示す胞子が、続いて、診断的PCRによって解析されて、両遺伝子の正しい欠失を確認し、そして交配型を決定した。得られる二重欠失株が交雑されて、三重欠失株を得た。四分子分析後、診断的PCRによって、3個のPDC遺伝子について欠失された胞子が探された。
【0142】
破壊に成功した遺伝子からKanSRDマーカーを除去するために、一倍体欠失株(単一、二重および三重変異株)が、cre−リコンビナーゼ・プラスミド、pPK−ILV2SMR(SRDによって開発された)により形質転換された。プラスミドpPK−ILV2SMRは、GAL1プロモーター制御下のcre−リコンビナーゼ、および優性選択マーカーとして、プラスミドプラスミドpPK−ILV2SMRにより形質転換された酵母細胞をスルホメツロンメチル(30mg/l)の存在下で増殖可能にさせるILV2耐性遺伝子を含有する。続いて、KanSRDマーカーの正確な切除が、全酵母細胞に関して診断的PCRによって解析された。プラスミドpPK−ILV2SMRを除去するために、酵母細胞は、培地中スルホメツロンメチルなしで適当な時間培養され、続いて、スルホメツロンメチル感受性細胞が探索された。
【0143】
次の表は、得られた酵母菌株を示す。括弧内の数字は、対応する遺伝子の欠失ヌクレオチド(ATG=1)を指す。ネガティブ数字の場合は、最初の数字は、ATGの上流の欠失ヌクレオチドを意味し、そして第2の数字は、終始コドンの下流の欠失ヌクレオチドを意味する。
【0144】
【表4】
【0145】
主として、本発明者らは、得られたデータを総括している表において、またCENPK113△PDC2およびCENPK113△PDC1△PDC5△PDC6と名付けられる菌株CEN.PK112およびCEN.PK182を使用した。
【0146】
同様のアプローチを使用して、PDC2遺伝子に欠失を担持しているS.セレビシエGRF18U株(Mat alpha,his3,leu2,ura3)が構築された(GRF18U△PDC2;Mat alpha,his3,leu2,ura3,pdc2::APT1)。本発明者らは、プラスミドpFA6a−KanMX(Wach et al.前出)から単離された、組み込みのマーカーとしてのG418耐性を付与するAPT1遺伝子を使用した;PDC1,PDC5およびPDC6遺伝子において欠失を担持している菌株では、PDC活性はゼロである。PDC2遺伝子に欠失を担持している菌株では、PDC活性は野生型菌株で測定されるレベルの約20〜40%である。
【0147】
K.ラクチスBM3−12D[pLAZ10]の単離 二重欠失菌株Klpdc1△/Klpda1△は、菌株MW341−5/Klpdc1△(MATα,lac4−8,leu2,lysA1−1,uraA1−1,Klpdc1::URA3;Bianchi et al.,1996,Mol.Microbiol.,19(1)、27−36において既述のように得られた;Destruelle et al.,提供)を、菌株CBS2359/Klpda1△(MATa,URA3−48,Klpda1::Tn5BLE)と交雑することによって得られた二倍体菌株の一倍体分離集団から選択された。ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体E1−alphaサブユニット(EC.1.2.4.1)(DNA配列は、Steensma H.Y.;Faculty of Mathematics and Natural Sciences,Clusius Laboratory,Leiden,The Netherlandによって得られた−DNA配列は,また、the National Center of Biotechnologyによって提供されるGenbank Sequence DatabaseのアクセスナンバーAF023920において利用できる −NCBI− ウェブ・サイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)をコードしているPDA1遺伝子の欠失は、酵母菌株CBS2359において、古典的PCRアプローチおよび本文を通じて記された酵母形質転換にしたがって得られた。本発明者らは、組み込みのマーカーとしてフレオマイシン耐性を付与するマーカーTn5Ble(Gatingnol et al.,Gene,91:35,1990)を使用した。
【0148】
BM1−3C(MATa,leu2,Klpdc1::URA3;Klpda1::Tn5BLE)と呼ばれる二重欠失菌株は、フレオマイシン耐性/アンチマイシン感受性分離菌株として選択された。次いで、ベクターpLAZ10が、遺伝的に、次のように二重欠失菌株に転移された。
【0149】
Klpdc1::URA3菌株のpLAZ10形質転換株PMI/8(MATa,adeT−600,uraA1−1,Klpdc1::URA3;Bianchi et al.,Mol.Microbiol.,19:27−36,1996)が、菌株MW109−8C(MATα,lysA1−1,trpA1−1)と交雑された。得られる二倍体菌株の胞子形成後、菌株7C(MATα,adeT−600,lysA1−1,Klpdc1::URA3,pLAZ10+)と呼ばれるゲネチシン耐性/アンチマイシン感受性菌株が選択された。
【0150】
菌株BM1−3Cおよび菌株7Cが交雑され、そして得られた二倍体菌株の胞子形成後、フレオマイシン耐性/ゲネチシン耐性の一倍体分離菌株が選択された。すべての一倍体分離株はアンチマイシン感受性であった。原栄養株BM3−12D(Klpdc1::URA3;Klpda1::Tn5BLE、pLAZ10+)が、さらなる実験のために選ばれた。
【0151】
ベクターpEPL2およびpEPL4を用いるクルイベロミセス酵母PM6−7AおよびPMI/C1の形質転換 PM6−7AおよびPMI/C1細胞が、YPD培地において濃度0.5x108細胞/mlまで増殖され、収穫され、水中で1回、1Mソルビトール中で2回洗浄され、そして1Mソルビトール中濃度2x109細胞/mlにおいて再懸濁された。細胞は、pEPL2もしくはpEPL45〜10μgの存在下でエレクトロポレーション(7.5KV/cm,25μF,200Ω:GenePulser,Biorad,Hercules,Ca)された。URA+形質転換株の選択は、ウラシルを含まない合成固形培地(0.7%w/v酵母窒素源、2w/v%グルコース、200mg/lアデニン、2w/v%寒天)において実施された。
【0152】
ベクターpLAT−ADHを用いるトルラスポラ酵母の形質転換 CBS817細胞が、YPD培地において濃度6x107細胞/mlまで増殖され、収穫され、水中で1回、1Mソルビトール中で2回洗浄され、そして1Mソルビトール中濃度2x109細胞/mlにおいて再懸濁された。細胞は、pLAT−ADH 1μgの存在下でエレクトロポレーション(1.5kV,7.5KV/cm,25μF,200Ω:GenePulser,Biorad,Hercules,Ca)された。
【0153】
細胞は、YEPD 5ml、ソルビトール1Mを含有する滅菌微生物用チューブにおいて一夜増殖された。G418r形質転換株の選択は、固形培地(2w/v%グルコース、2w/v%ペプトン、1w/v%酵母エキス、2w/v%寒天,200μg/ml G418(Gibco BRL,cat.11811−031))において実施された。
【0154】
ベクターpLAT−ADHを用いるチゴサッカロミセス酵母の形質転換 ATTC36947およびATTC60483細胞が、YPD培地において濃度2x108細胞/mlまで増殖され、収穫され、そして0.1M酢酸リチウム、10mMジチオトレイトール、10mMTris−HCl,pH7,5中濃度4x108細胞/mlにおいて、室温で1時間再懸濁された。細胞は、水中で1回、1Mソルビトール中で2回洗浄され、そして1Mソルビトール中濃度5x109細胞/mlにおいて再懸濁された。細胞は、pLAT−ADH 3μgの存在下でエレクトロポレーション(1.5kV,7.5KV/cm,25μF,200Ω:GenePulser,Biorad,Hercules,Ca)された。
【0155】
細胞は、YEPD 5ml、ソルビトール1Mを含有する滅菌微生物用チューブにおいて一夜増殖された。G418r形質転換株の選択は、固形培地(2w/v%グルコース、2w/v%ペプトン、1w/v%酵母エキス、2w/v%寒天,200μg/ml G418(Gibco BRL,cat.11811−031))において実施された。
【0156】
ベクターpLC5,pLC7,pB1,pBST2,pBME2,pLAT−ADH,pLC5−KanMXおよびpJEN1を用いるサッカロミセス酵母細胞の形質転換 GRF18U(前記)、GRF18U△PDC2(前記)、GRF18U[pLC5](Mat alpha,his3,leu2,ura3::TPI−LDH)、CENPK113(Mat a;CBS8340)、CENPK−1(Mat a,ura3)、CENPK113△PDC1△PDC5△PDC6(前記)およびCENPK113△PDC2(前記)酵母細胞が、富栄養YPD完全培地(2w/v%酵母エキス、1w/v%ペプトン、2w/v%グルコース)において濃度2x107細胞/mlまで増殖され、0.1M酢酸リチウム、1mM EDTA、10mMTris−HCl,pH8中で1回洗浄され、そして0.1M酢酸リチウム、1mM EDTA、10mMTris−HCl,pH8中に濃度2x109細胞/mlにおいて再懸濁された。細胞懸濁液100μlは、ベクター(すなわち、pLC5,pLC7,pB1,pBST2,pBME2,pLC5−KanMX,pJEN1の場合には、栄養要求マーカーにおいて予め直鎖化された)5〜10μgと5分インキュベートされた。PEG4000 280μlの添加後、細胞は、30℃で少なくとも45分間インキュベートされた。DMSO43μlを添加し、そして懸濁液が42℃で5分間インキュベートされた。細胞は、水で2回洗浄され、選択培地上に平板塗布された。CENPK−1菌株(ura3)の単離のために、CENPK113細胞が、5−フルオロオロチン酸を含有する培地(上記参照)で増殖された。
【0157】
単一形質転換細胞は、0.7%w/v酵母窒素源、2w/v%グルコース、2w/v%寒天,プラス指標として適当な補充物質もしくはG418においてスコアーされた。G418R形質転換株の選択では、また細胞は、2w/v%グルコース、2w/v%ペプトン、1w/v%酵母エキス、2w/v%寒天,200μg/ml G418(Gibco BRL,cat.11811−031)においてスコアーされた。
【0158】
形質転換株:補充物質GRF18U[pLAT−ADH]:ウラシル200mg/l、ロイシン200mg/l、ヒスチジン200mg/l、G418 200mg/l。
GRF18U[pB1]:ロイシン200mg/l、ヒスチジン200mg/l。GRF18U[pLC5]:ロイシン200mg/l、ヒスチジン200mg/l。
GRF18U[pLC5][pLC7]:ロイシン200mg/l。
GRF18U[pBME2]:ロイシン200mg/l、ヒスチジン200mg/l。
GRF18U[pBST2]:ロイシン200mg/l、ヒスチジン200mg/l。
GRF18U[pLC5][pJEN1]:ロイシン200mg/l。
GRF18U△PDC2[pLC5]:ロイシン200mg/l、ヒスチジン200mg/l。
CENPK−1[pLC5]:補充物質なしCENPK113[pLC5−KanMX]:G418 200mg/l。
CENPK113△PDC1△PDC5△PDC6[pLC5−KanMX]:G418 200mg/l。
CENPK113△PDC2[pLC5−KanMX]:G418 200mg/l。
【0159】
【表5】
【0160】
KL=K.ラクチスのプロモーターSC=S.セレビシエのプロモーターB.Ste.=バチルス・ステアロサーモフィルス pJEN1は、JEN1遺伝子の発現のために使用された。
【0161】
バッチ試験 クルイベロミセスPM6−7A[pEPL2]、PMI/C1[pEPL2]、PM6−7A[pEPL4]およびPMI/C1[pEPL4]形質転換細胞のバッチ解析 上記形質転換操作によって得られたクローンが、最小合成培地(1.3%w/v酵母窒素源−aa(Difco,Detroit,MI)、アデニン200mg/l、グルコース50g/l)における増殖のバッチ培養において試験された。使用された培地は、200mMリン酸バッファーによりpH5.6に緩衝化されるか、されないか両方であった。
【0162】
細胞は、同じ試験培地において前培養された。対数的に増殖している細胞が、新鮮な培地100mlを含有するフラスコ(容量300ml)中に接種された。フラスコは、振盪浴(Dubnoff,150rpm)中30℃で培養され、発酵が規則的な時点でモニターされた。細胞数濃度は、細胞凝集物を避けるためにサンプルの音波処理(Sonicator Fisher 300,中間点、出力35%、10秒)後、電気コールターカウンター(Coulter Counter ZBI Counter Electronics Harpenden,GB,Porro et al.,Res.Microbiol.(1991)142,535−539)により測定された(図7および8、および表3)。
【0163】
クルイベロミセスBM3−12D[pLAZ10]形質転換細胞のバッチ解析 上記操作によって得られたクローンが、最小合成培地(1.3%w/v酵母窒素源−aa(Difco,Detroit,MI)、グルコース50g/l、エタノール20gr/l、G418 200mg/l)における増殖のバッチ培養において試験された。使用された培地は、200mMリン酸バッファーによりpH5.6に緩衝化された。
【0164】
細胞は、同じ試験培地において前培養された。対数的に増殖している細胞が、新鮮な培地100mlを含有するフラスコ(容量300ml)中に接種された。フラスコは、振盪浴(Dubnoff,150rpm)中30℃で培養され、発酵が規則的間隔でモニターされた。細胞数濃度は、細胞凝集物を避けるためにサンプルの音波処理(Sonicator Fisher 300,中間点、出力35%、10秒)後、電気コールターカウンター(Coulter Counter ZBI Counter Electronics Harpenden,GB,Porro et al.,Res.Microbiol.(1991)142,535−539)により測定された。最初、細胞はエタノールを使用し、次いで、非常に高い収率でグルコースを乳酸に変換した(>0.75;乳酸g/消費グルコースg)(表3)。
【0165】
トルラスポラCBS817[pLAT−ADH]形質転換細胞のバッチ解析 上記形質転換操作によって得られたクローンが、最小合成培地(1.3%w/v酵母窒素源−aa(Difco,Detroit,MI)、グルコース20g/l、G418 200mg/l)における増殖のバッチ培養において試験された。使用された培地は、緩衝化されなかった。
【0166】
細胞は、同じ試験培地において前培養された。対数的に増殖している細胞が、新鮮な培地100mlを含有するフラスコ(容量300ml)中に接種された。フラスコは、振盪浴(Dubnoff,150rpm)中30℃で培養され、発酵が規則的間隔でモニターされた。細胞数濃度は、細胞凝集物を避けるためにサンプルの音波処理(Sonicator Fisher 300,中間点、出力35%、10秒)後、電気コールターカウンター(Coulter Counter ZBI Counter Electronics Harpenden,GB,Porro et al.,Res.Microbiol.(1991)142,535−539)により測定された。(図10および表3)。
【0167】
チゴサッカロミセスATCC36947[pLAT−ADH]およびATCC60483[pLAT−ADH]形質転換細胞のバッチ解析 上記形質転換操作によって得られたクローンが、最小合成培地(1.3%w/v酵母窒素源−aa(Difco,Detroit,MI)、グルコース50g/l、G418 200mg/l)における増殖のバッチ培養において試験された。使用された培地は、緩衝化されなかった。
【0168】
細胞は、同じ試験培地において前培養された。対数的に増殖している細胞が、新鮮な培地100mlを含有するフラスコ(容量300ml)中に接種された。フラスコは、振盪浴(Dubnoff,150rpm)中30℃で培養され、発酵が規則的間隔でモニターされた。細胞数濃度は、細胞凝集物を避けるためにサンプルの音波処理(Sonicator Fisher 300,中間点、出力35%、10秒)後、電気コールターカウンター(Coulter Counter ZBI Counter Electronics Harpenden,GB,Porro et al.,Res.Microbiol.(1991)142,535−539)により測定された(図11および表3)。
【0169】
サッカロミセスGRF18U[pLAT−ADH]、GRF18U[pB1]、GRF18U[pLC5]、GRF18U[pLC5][pLC7]、GRF18U[pBM2]、GRF18U[pBST2]、CENPK−1[pLC5]形質転換細胞のバッチ解析 上記形質転換操作によって得られたクローンが、最小合成培地(1.3%w/v酵母窒素源−aa(Difco,Detroit,MI)、グルコース50g/lおよび適当な補充物質(上記参照))における増殖のバッチ培養において試験された。使用された培地は、緩衝化されなかった。細胞は、同じ試験培地において前培養された。対数的に増殖している細胞が、新鮮な培地100mlを含有するフラスコ(容量300ml)中に接種された。フラスコは、振盪浴(Dubnoff,150rpm)中30℃で培養され、発酵が規則的間隔でモニターされた。細胞数濃度は、細胞凝集物を避けるためにサンプルの音波処理(Sonicator Fisher 300,中間点、出力35%、10秒)後、電気コールターカウンター(Coulter Counter ZBI Counter Electronics Harpenden,GB,Porro et al.,Res.Microbiol.(1991)142,535−539)により測定された(表3)。
【0170】
サッカロミセスGRF18U△PDC2[pLC5]、CENPK113[pLC5−KanMX]、CENPK113△PDC2[pLC5−KanMX]およびCENPK113△PDC1△PDC5△PDC6[pLC5−KanMX]形質転換細胞のバッチ解析−回転フラスコ− 上記操作によって得られたクローンが、富栄養培地(1.0%w/v酵母エキス、2%w/vペプトン、グルコース100g/l)における増殖のバッチ培養において試験された。培地は、緩衝化されなかった。
【0171】
細胞は、酵母エキス−ペプトン+エタノール(5g/l)培地において前培養された。100mlが、回転フラスコ中に接種された(1.5 l作業容量;始発pH=5.7)。回転フラスコは30℃で培養された、撹拌:55rpm。発酵が規則的間隔でモニターされた(表A,B,Cおよび表3)。
【0172】
種々の形質転換株由来のLDH比活性は、5U/総細胞タンパク質mgより高かった。
【0173】
LDH活性用量(dosage)
ウシLDH 約108細胞が回収され、50mMリン酸バッファー、pH7.
5中で洗浄され、そして同じバッファーに懸濁された。細胞は、ガラスの微小ビーズ(直径400μm、SIGMA,G−8772)の存在下の強い渦の5サイクルによって4℃において溶解された。細胞破片は、遠心(Eppendorf,Hamburg,D 5415 C,13600 RCF,10分)によって除去され、そしてタンパク質抽出液の濃度が、Mycro Assay,Biorad,Hercules,Ca(cat.500−0006)によって測定された。
【0174】
抽出液約0.2mgが、SIGMA(St.Louis,MO)キットDG1340−UVを使用して、製造者の指示にしたがってLDH活性を試験された。
【0175】
細菌LDH 約108細胞が回収され、50mMリン酸バッファー、pH7.
5中で洗浄され、そして同じバッファーに懸濁された。細胞は、ガラスの微小ビーズ(直径400μm、SIGMA,G−8772)の存在下の強い渦の5サイクルによって4℃において溶菌された。細胞破片は、遠心(Eppendorf,Hamburg,D 5415 C,13600 RCF,10分)によって除去され、そしてタンパク質抽出液の濃度が、Mycro Assay,Biorad,Hercules,Ca(cat.500−0006)によって測定された。
【0176】
細胞抽出液は、12.8mM NADH0.01ml、2mMフルクトース1,6−二リン酸0.1ml、50mM酢酸バッファー(pH=5.6)0.74ml、適当に希釈された細胞抽出液0.05mlおよび100mMピルビン酸0.1ml:を用いて、LDH活性を試験された。
【0177】
LDH活性は、340nm、25℃において、総細胞抽出液1mg当たりの、1分間に酸化されるNADHミクロモル数としてアッセイされた。
【0178】
増殖培地における代謝物用量 遠心によって細胞を除去した後得られた、増殖培地からのサンプルが、グルコース、エタノール、L(+)−およびD(−)−乳酸の存在に関して、Boehringer Mannheim,Mannheim DEからのキット(それぞれ#.716251,176290および1112821)を用い、製造者の指示にしたがって分析された。
【0179】
クルイベロミセスPM6−7A[pEPL2]およびPMI/C1[pEPL2]形質転換酵母に関する実験バッチ試験は、図7A,7Bおよび図8A,8Bにおいて示される。
【0180】
トルラスポラCBS817[pLAT−ADH]形質転換酵母に関する実験データは、図10に示される。
【0181】
チゴサッカロミセスATCC60483[pLAT−ADH]形質転換酵母に関する実験データは、図11に示される。
【0182】
回転フラスコ中で増殖するサッカロミセスCENPK113[pLC5−KanMX]、CENPK113△PDC2[pLC5−KanMX]およびCENPK113△PDC1△PDC5△PDC6[pLC5−KanMX]形質転換酵母に関する実験データは、表A,B,Cにおいて示される。
【0183】
【表6】
【0184】
【表7】
【0185】
【表8】
【0186】
形質転換クルイベロミセス、トルラスポラ、チゴサッカロミセスおよびサッカロミセス酵母から得られたすべての結果は、表3において総括され、そして比較される。収率は、消費グルコース量(gr/l)によって除された生産乳酸量(gr/l)である。遊離乳酸パーセントは、Henderson−Hasselbalchの式:pH=pKa+log[(乳酸%)/(遊離乳酸%)]から得られ、この場合、乳酸のpKaは3.86である。
【0187】
表3Aと表3Bにおいて報告されたデータの比較により、異なる酵母の属において、グルコースにおいて、より高い収率をもつ乳酸生産は、LDHとPDC活性の相対比率−細胞レベルにおいて−を変化することによって得ることができることが、明らかに分かる。そのような結論は、次のような少なくとも2種の異なるアプローチ:(1)PDC活性を低下させること(形質転換K.ラクチス宿主:PM6−7A対PMI/C1からのデータを比較する;形質転換S.セレビシエ宿主:GRF18U対GRF18U△PDC2、そしてCENPK113対CENPK113△PDC2およびCENPK113△PDC1△PDC5△PDC6からのデータを比較する)、(2)LDH遺伝子コピー数と、したがってLDH活性を増加すること(S.セレビシエ宿主:GRF18U[pLC5]対GRF18U[pLC5][pLC7]からのデータを比較する;2つの菌株におけるLDH非相同の活性は、それぞれ5〜6および7〜8U/総細胞タンパク質mg)、によって得ることができる。
【0188】
さらに、より高い収率は、増殖培地の組成を操作することによって得ることができる。また、この場合には、低いエタノール生産が観察された(また表4参照)。
【0189】
【表9】
【0190】
【表10】
【0191】
【表11】
【0192】
操作された無機質培地において増殖するサッカロミセスGRF18U[pLC5][pLC7]に関する実験データ(表4) サッカロミセスGRF18U[pLC5][pLC7]形質転換細胞による乳酸生産が、また、合成培地において細胞を増殖して実施された(D.Porro et al.,Development of a pH controlled fed−batch system for budding yeast.Res.in Microbiol.,142,535−539,1991)。使用された合成培地において、MgおよびZn塩源は、それぞれMgSO4(5mM)およびZnSO4x7H2O(0.02mM)である。生産は、他の形質転換サッカロミセス細胞のために前述されたような好気的バッチ培養(グルコース濃度50gr/l)において試験された。両MgSO4およびZnSO4x7H2Oの欠落は、より高い収率とより高い乳酸生産性を生じた。事実、これらの無機質は、エタノール生産に導く酵素活性のためのコファクターとして要求されるであろう。データは表4に示される。
【0193】
【表12】
【0194】
注釈: 対照:完全合成培地(Res.in Microbiol.,142,535−539,1991;別記)
−Mg:MgSO4無添加以外は対照と同じ −Zn:ZnSO4x7H2O無添加以外は対照と同じ 全試験では、最終pH値は、3.0以下であり、したがって遊離乳酸%は、88%以上であった。
【0195】
JEN1遺伝子を過剰発現する酵母細胞による乳酸生産 より良好な乳酸生産とより低いエタノール生産は、乳酸輸送体をコードしているJEN1遺伝子の過剰発現によって得られた。
【0196】
GRF18U[pLC5](すなわち、ネガティブコントロール)およびGRF18U[pLC5][pJEN1]が、2%グルコース、0.67%YNBw/vおよび補充物質(すなわち、それぞれ、ロイシン−ヒスチジン100mg/lおよびロイシン100mg/l)を含有する培地において増殖された。
【0197】
細胞は、同じ試験培地において前培養された。対数的に増殖している細胞が、新鮮な培地100mlを含有するフラスコ(容量300ml)中に接種された。フラスコは、振盪浴(Dubnoff,150rpm)中30℃で培養され、発酵が規則的間隔でモニターされた。細胞数濃度は、細胞凝集物を避けるためにサンプルの音波処理(Sonicator Fisher 300,中間点、出力35%、10秒)後、電気コールターカウンター(Coulter Counter ZBI Counter Electronics Harpenden,GB,Porro et al.,Res.Microbiol.(1991)142,535−539)により測定された。
【0198】
【表13】
【0199】
連続乳酸生産 乳酸の連続的で安定な生産が、形質転換K.ラクチスPM6−7A[pEPL2]、PMI/C1[pEPL2]および形質転換S.セレビシエGRF18U[pLC5][pLC7]両菌株を用いる、古典的なケモスタット培養(新鮮培地のバイオリアクターへの連続流入が、範囲0.01〜0.3hr-1の比増殖速度を支持した)の手段によって2週以上にわたって得られた。
【0200】
フィード・バッチ試験 撹拌タンク発酵槽におけるPMI/C1[pEPL2]による乳酸生産 さらに、PMI/C1[pEPL2]による乳酸生産が、栄養培地(30g乾物/L ライトコーンスチープウォーター、A.E.Staley Manufacturing Co.,Decatur,IL;10g/L Difco酵母エキス、Difco、Detroit,MI;200mg/L アデニン、50g/L グルコース)8リッターを含有する14リッター撹拌タンク発酵槽における培養によって試験された。発酵槽は、終始30℃に維持され、400rpmで撹拌され、そして2リッター/minで通気された。消泡剤(Antiform1520,Dow Corning Corp.,Midland,MI)が、発泡を制御するために必要に応じて添加された。グルコースは、発酵培地における残濃度約25〜50g/Lを維持するために必要に応じてフィードされた。制御される場合、pHは、14.8M水酸化アンモニウム水溶液の自動添加によって維持された。酸性pHにおける乳酸生産は、次のように試験された:(1)発酵pHが発酵を通じて4.5に制御された。(2)初期発酵pHが、14.8M水酸化アンモニウム80mLが添加されるまで、4.0に制御された。次いで、pH制御は中止された。(3)初期発酵pHが5.0であり、そして発酵中、中和剤が添加されなかった。結果は表6に示される。経過時間は接種時間以降測定された。濾過により細胞を除去した後得られた発酵からのサンプルは、YSI Model2700 Select Biochemistry Analyzer(Yellow Springs Instrument Co.,Inc.,Yellow Springs,OH)を用いて、グルコースおよびL(+)−乳酸について分析された。ガスクロマトグラフィーによって測定されたエタノールは、いずれの発酵においても検出されなかった。収率および遊離乳酸は、前記のように計算された。発酵のための種菌は、250mL容バッフル付きエルレンマイヤーフラスコ中、最小合成培地(1.3%w/v酵母窒素源−aa(Difco,Detroit,MI)、アデニン200mg/L,硫酸アンモニウム5g/L、グルコース50g/L)50mLにおいて、PMI/C1[pEPL2]を、培養振盪機(Model G−24,New Brunswick Scientific Co.,Inc.,Edison,NJ)において30℃、300rpmで30時間前培養することによって調製された。
【0201】
同様な結果が、細菌LDH遺伝子を用いて得られた(プラスミドpEPL4;データ未掲載)。
【0202】
【表14】
【0203】
撹拌タンク発酵槽におけるBM3−12D[pLAZ10]による乳酸生産 さらに、BM3−12D[pLAZ10]による乳酸生産が、栄養培地(6.7gr/ YNB/酵母窒素源−Difco,Detroit,MI、グルコース45g/L,2%w/vエタノール、G418 200mg/l)0.8リッターを含有する1リッター撹拌タンク発酵槽における培養によって試験された。発酵槽は、終始30℃に維持され、400rpmで撹拌され、そして0.8リッター/minで通気された。消泡剤(Antiform1520,Dow Corning Corp.,Midland,MI)が、発泡を制御するために必要に応じて添加された。形質転換細胞は、最初は、菌体生産のためにエタノールを使用(増殖の最初の50時間)し、次いで、グルコースをL(+)−乳酸に変換した。pHは、2MKOHの自動添加によって4.5に維持された。グルコースは、発酵培地における残濃度約35〜45g/Lを維持するために必要に応じてフィードされた。
【0204】
結果は図9および表7に示される(ケース1)。経過時間は接種時間以降測定された。濾過により細胞を除去した後得られた発酵からのサンプルは、Porro et al.1995(前出)に記載のように標準酵素分析を用いて、グルコース、エタノールおよびL(+)−乳酸について分析された。T=50hr後、エタノールは、サンプル試験のいずれにおいても検出されなかった。収率および遊離乳酸は、前記のように計算された。
【0205】
発酵のための種菌は、250mL容バッフル付きエルレンマイヤーフラスコ中、最小合成培地(1.3%w/v酵母窒素源−aa(Difco,Detroit,MI)、2%w/vエタノール、G418 200mg/l)50mLにおいて、BM3−12D[pLAZ10]を、培養振盪機(Model G−24,New Brunswick Scientific Co.,Inc.,Edison,NJ)において30℃、300rpmで40時間前培養することによって調製された。
【0206】
異なる実験(表7、ケース2)では、始発発酵pHは5.4であり、そして中和剤は、発酵を通じて添加されなかった。
【0207】
【表15】
【0208】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】
乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のクローニングが、解糖の流れを乳酸生産の方向へシフトする。
ピルビン酸分岐点における鍵の酵素反応は、次の酵素:(1):ピルビン酸デカルボキシラーゼ;(2):アルコールデヒドロゲナーゼ;(3):アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ;(4):アセチル−CoAシンテターゼ;(5);サイトゾルからミトコンドリアへのアセチル−CoAシャトル;(6):ミトコンドリアからサイトゾルへのアセチル−CoAシャトル;(7):異種の乳酸デヒドロゲナーゼ;(8):ピルビン酸デヒドロゲナーゼによって触媒される。補充合成に関与する酵素反応は省略された。
【図2】
プラスミドpVC1の図。
【図3A】
プラスミドpKSMD8/7の図。
【図3B】
pKSEXH/16の図。
【図4】
プラスミドpEPL2の図。
【図5】
プラスミドpLC5の図。
【図6】
プラスミドpLAT−ADHの図。
【図7A】
Glu−YNBに基づく培地での増殖における形質転換クルイベロミセス・ラクチスPM6−7a[pEPL2]からのL(+)−乳酸生産。T=49における残グルコース濃度は検出されなかった。D(−)−乳酸の生産も、また検出されなかった。LDH比活性は、全実験に沿って3U/総細胞タンパク質mgより高かった。
同様な結果が、細菌L.カゼイ(L.casei)LDHを用いて得られた(データ未掲載)。
(△)細胞/ml;(−)pH値;(○)エタノール生産、g/l;(■)L(+)−乳酸生産、g/l。
【図7B】
Glu−YNBに基づく培地での増殖における形質転換クルイベロミセス・ラクチスPM6−7a[pEPL2]からのL(+)−乳酸生産。培地は、200mMリン酸バッファーを用いて、時間T=0において緩衝化された(pH=5.6)。このテキストバッチでは、pH値は、図7Aに示したテキストバッチにおけるよりも、ずっと遅く低下する。T=49における残グルコース濃度は検出されなかった。LDH比活性は、全実験に沿って3U/総細胞タンパク質mgより高かった。
同様な結果が、細菌L.カゼイLDHを用いて得られた(データ未掲載)。
(△)細胞/ml;(−)pH値;(○)エタノール生産、g/l;(■)L(+)−乳酸生産、g/l。
【図8A】
Glu−YNBに基づく培地での増殖における形質転換クルイベロミセス・ラクチスPM1/C1[pEPL2]からのL(+)−乳酸生産。T=60における残グルコース濃度は、12,01g/lであった。より長い培養時間は、菌体およびL(+)−乳酸両方のより高い生産をもたらさなかった。LDH比活性は、全実験に沿って3U/総細胞タンパク質mgより高かった。
同様な結果が、細菌L.カゼイ(L.casei)LDHを用いて得られた(データ未掲載)。
(△)細胞/ml;(−)pH値;(○)エタノール生産、g/l;(■)L(+)−乳酸生産、g/l。
【図8B】
Glu−YNBに基づく培地での増殖における形質転換クルイベロミセス・ラクチスPM1/C1[pEPL2]からのL(+)−乳酸生産。培地は、200mMリン酸バッファーを用いて、時間T=0において緩衝化された(pH=5.6)。このテキストバッチでは、pH値は、図8Aに示したテキストバッチにおけるよりも、ずっと遅く低下する。T=87における残グルコース濃度はゼロであった。LDH比活性は、全実験に沿って3U/総細胞タンパク質mgより高かった。
(△)細胞/ml;(−)pH値;(○)エタノール生産、g/l;(■)L(+)−乳酸生産、g/l 同様な結果が、細菌L.カゼイLDHを用いて得られた(データ未掲載)。
【図9A】
撹拌タンクバイオリアクター(またテキスト参照)における形質転換クルイベロミセスBM3−12D[pLAZ10]細胞からのL(+)−乳酸生産。
(△)細胞/ml;(−)pH値;(○)グルコース濃度、g/l;(■)L(+)−乳酸生産、g/l。
【図9B】
撹拌タンクバイオリアクターにおける形質転換クルイベロミセスBM3−12D[pLAZ10]細胞からのL(+)−乳酸収率。
グルコース対乳酸生産。収率(g/g)は85.46%であった。
【図10】
Glu−YNBに基づく培地での増殖における形質転換トルラスポラ(異名チゴサッカロミセス)・デルブルッキイCBS817[pLAT−ADH]からのL(+)−乳酸生産。T=130における残グルコース濃度は、3g/lであった。より長い培養時間は、菌体およびL(+)−乳酸両方のより高い生産をもたらさなかった。LDH比活性は、全実験に沿って0.5U/総細胞タンパク質mgより高かった。
(△)細胞/ml;(−)pH値;(○)エタノール生産、g/l;(■)L(+)−乳酸生産、g/l
【図11】
Glu−YNBに基づく培地での増殖における形質転換チゴサッカロミセス・バイリイATCC60483[pLAT−ADH]からのL(+)−乳酸生産。T=60における残グルコース濃度は、8g/lであった。より長い培養時間は、菌体およびL(+)−乳酸両方のより高い生産をもたらさなかった。LDH比活性は、全実験に沿って0.5U/総細胞タンパク質mgより高かった。同様な結果が、異なる菌株を用いて得られた(ATCC36947,データ未掲載)。
(△)細胞/ml;(−)pH値;(○)エタノール生産、g/l;(■)L(+)−乳酸生産、g/l。
【0001】
【技術分野】
本発明は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)をコードしている遺伝子の少なくとも1個のコピーにより形質転換され、そして高い収率と生産性をもつ乳酸生産のためにさらに改変された酵母菌株に関する。
【0002】
発明の背景 乳酸およびその誘導体の応用は、多くの工業活動分野(すなわち、化学、化粧品および薬学)、ならびに食品製造と使用の重要な範囲を包含する。さらにまた、今日では、生分解性ポリマー材の合成のために直接使用されるそのような有機酸の製造における関心が高まりつつある。
【0003】
乳酸は、化学合成によるか、または微生物を使用する炭水化物の発酵によって製造することができる。後者の方法は、化学合成によって生成されるラセミ混合物に対して、1種の異性体を独占的に生産する微生物が開発されたので、今や商業的に好適である。もっとも重要な工業用微生物。例えば属ラクトバチルス(Lactobacillus)、バチルス(Bacillus)およびリゾープス(Rhizopus)は、L(+)−乳酸を生産する。また、D(−)−乳酸もしくはL(+)−およびD(−)−乳酸の混合物の発酵による生産も知られている。
【0004】
典型的な乳酸発酵においては、生産微生物の代謝活性に対する生産された乳酸によって惹起される阻害効果が存在する。乳酸の存在に加えて、pH値を低下することも、また細胞増殖と代謝活性を阻害する。結果として、一般に、乳酸生産の程度が低下される。
【0005】
それ故、乳酸を中和し、そしてpH低下を防ぐためのCa(OH)2、CaCO3、NaOHもしくはNH4OHの添加は、遊離の乳酸蓄積のネガティブ効果に対抗するための工業的工程における慣用の操作である。
【0006】
これらの工程は、pHを範囲約5〜7の一定値に維持することによって、乳酸塩の生産を可能にする;これは、十分に乳酸のpKa、3.86以上である。
【0007】
主要な欠点は、発酵中の乳酸の中和に関係している。主として、遊離の乳酸をその塩から再生し、そして中和する陽イオンの処理もしくは再利用するために、付加的操作が必要になる;これは、費用のかかる工程である。もし、遊離の乳酸が、低いpH値において増殖する微生物によって蓄積でき、それによって、乳酸塩の生産を最小化することができれば、余分な操作と費用のすべてが排除できるであろう。
【0008】
乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を発現する組み換え酵母の使用によって、解糖の流れを乳酸生産の方向へシフトさせることが提案された。
【0009】
フランス特許出願公開第692 591号(Institut Nationale la Recherche Agronomique)は、乳酸菌由来の乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子であって、酵母においてその発現を調節している配列の制御下にある該遺伝子の少なくとも1個のコピーを含有する酵母菌株、特にサッカロミセス(Saccharomyces)菌株を開示している。
【0010】
該菌株は、アルコールおよび乳酸発酵の両方を行うことができ、そしてこのいわゆる「中間的(intermediate)」もしくは「均衡(balanced)」発酵は、ビール醸造、ワイン醸造およびパン焼きのような領域において利用することができるであろう。
【0011】
また、Porro et al.,(Biotechnol.Prog.11,294−298,1995)は、ウシ乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子を用いるS.セレビシエ(S.cerevisiae)の形質転換を報告した。
【0012】
しかしながら、エタノールの高い生産のために、前記両方法の乳酸生産における収率は、乳酸菌の使用によって得られる収率に匹敵するとは見なされなかった。 過去の10年間において、S.セレビシエ以外の「非慣用酵母」が、異種タンパク質の発現のための宿主としてかなり高い工業的関心を得た。例は、メタノール資化性酵母、例えばハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)およびピヒア・パストリス(Pichia pastoris)、ラクトース資化性酵母、例えばクルイベロミセス ラクチス(Kluyveromyces lactis)である。炭素およびエネルギー源として広範囲な基質の使用を可能にすることに加えて、他の議論は、「非慣用酵母」の工業的使用のために提案された。一般的に言えば、バイオマスおよび生産物収量は、これらの酵母のある種では、細胞環境の苛酷な条件によってもほとんど影響を受けない。高濃度の糖耐性(すなわち、50〜80%w/vグルコース培地;トルラスポラ−異名チゴサッカロミセス−・デルブルッキイ(Torulaspora−syn.Zygosaccharomyces− delbruckii)、チゴサッカロミセス・ルキシイ(Zygosaccharomyces rouxii)およびチゴサッカロミセス・バイリイ(Zygosaccharomyces bailii);Ok T and Hashinaga F.,Journal of General & Applied Microbiology 43(1):39−47,1997)、ならびに酸および乳酸耐性(チゴサッカロミセス・ルキシイおよびチゴサッカロミセス・バイリイ;Houtsma PC,et al.,Jof Food Protection 59(12),1300−1304,1996)の「非慣用酵母」が利用しうる。既に強調されたように、もし発酵法が、前記の1つ以上の「苛酷な条件」下で実施されれば、下流処理の費用は、著しく削減することができるであろう。
【0013】
発明の概要 第1の実施態様によれば、本発明は、エタノール生産能を欠いているか、または低いエタノール生産能をもち、そして酵母において乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)をコードしている遺伝子の発現を可能にするプロモーター配列に、機能的に結合された該遺伝子の少なくとも1個のコピーにより形質転換された酵母菌株を提供する。
【0014】
より具体的には、本発明は、低いピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性と低いピルビン酸デカルボキシラーゼ活性をもち、そして酵母において乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)をコードしている遺伝子の発現を可能にするプロモーター配列に、機能的に結合された該遺伝子の少なくとも1個のコピーにより形質転換された酵母菌株を提供する。
【0015】
その他の実施態様によれば、本発明は、クルイベロミセス、トルラスポラおよびチゴサッカロミセスの種の酵母菌株であって、該酵母において遺伝子の発現を可能にするプロモーター配列に、機能的に結合された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)をコードしている遺伝子の少なくとも1個のコピーにより形質転換された酵母菌株を提供する。
【0016】
さらなる実施態様によれば、本発明は、また、異種LDH遺伝子により形質転換され、そして乳酸輸送体を過剰発現する酵母細胞を提供する。
【0017】
他の実施態様は、酵母プロモーター配列に機能的に結合された乳酸デヒドロゲナーゼをコードしているDNA配列を含有する発現ベクター、および炭素源を含有する発酵培地において前記の代謝的に工作された酵母菌株を培養し、そして発酵培地から乳酸を回収することによるDL−、D−もしくはL−乳酸の製造方法である。
【0018】
さらにまた、本発明は、操作された発酵培地において該酵母菌株を培養し、そして発酵培地から乳酸を回収することによって、乳酸の炭素源における生産性(g/l/hr)、生産量(g/l)および収率(g/g)を改良する方法を提供する。
【0019】
発明の記述 乳酸が、属クルイベロミセス、サッカロミセス、トルラスポラおよびチゴサッカロミセスに属する代謝的に改変された酵母によって生産し得ることが見い出された。
【0020】
より具体的には、乳酸生産における非常に高い収率が、少なくともエタノール発酵を乳酸発酵によって置換するように工作された酵母菌株によって得られることが見い出された。
【0021】
乳酸生産において、なおより高い収率(>80%g/g)は、エタノール発酵とミトコンドリアによるピルビン酸の使用の両方を、乳酸発酵によって置換するように工作された酵母菌株によって得られるかも知れない。
【0022】
この目的のために、また、本発明は、例えば、1細胞当たりの増加されたLDHコピー数、またはLDH発現を制御するより強力なプロモーターの使用の結果として、増強されたLDH活性をもつ形質転換酵母細胞を提供する。
【0023】
1細胞当たりの増加されたLDHコピー数は、乳酸デヒドロゲナーゼタンパク質をコードしている核酸配列の少なくとも1個のコピー、好ましくは少なくとも2個のコピー、より好ましくは4個のコピー、なおより好ましくは、該核酸配列の10〜50個のコピーを意味する。
【0024】
乳酸のもっとも高い生産のためには、本発明により形質転換された酵母細胞は、好ましくは、乳酸輸送体を過剰発現する。これは、乳酸輸送体のために必要な遺伝子の1個以上のコピーにより酵母細胞を形質転換することによって得ることができる。
【0025】
本発明による菌株は、いくつかの方法によって、例えば、乳酸デヒドロゲナーゼ活性の発現を標的とする遺伝子工学技術、およびエタノールの生産に関与する酵素活性、例えばピルビン酸デカルボキシラーゼとアルコールデヒドロゲナーゼ活性の不活性化もしくは抑制、およびミトコンドリアによるピルビン酸の利用に関与する酵素活性の不活性化もしくは抑制によって得ることができる。
【0026】
ピルビン酸デカルボキシラーゼは、アルコール経路における最初の段階を触媒するので、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)活性をもたないか実質的に低い活性をもち、そして異種の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を発現する酵母菌株が好適である。
【0027】
さらに、ピルビン酸デヒドロゲナーゼは、ミトコンドリアによるピルビン酸の利用における最初の段階を触媒するので、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)活性をもたないか実質的に低い活性をもち、そして異種の乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を発現する酵母菌株が、また好適である。
【0028】
乳酸は、乳酸輸送体を介して培地中に分泌されるので、乳酸を生産し、そして乳酸輸送体を過剰発現する細胞が、また好適である。
【0029】
酵母菌株におけるLDH遺伝子の発現は、遊離の酸が直接得られ、そして乳酸塩の面倒な転化と回収が最小化されるような酸性pH値における乳酸の生産を可能にする。本発明において、発酵培地のpHは、最初は4.5を超えていてもよいが、発酵の終了時には、pH4.5以下、好ましくは3以下まで低下するであろう。
【0030】
いかなる種類の酵母菌株も、本発明により使用されてもよいが、クルイベロミセス、サッカロミセス、トルラスポラおよびチゴサッカロミセスの種が好適である。何故なら、これらの菌株は、非常に低いpHにおいて、特にpH4.5以下の範囲において増殖し、そして/または代謝できるからである;これらの菌株のための遺伝子工学法は、よく開発されている;そしてこれらの菌株は、食品関連の応用における使用のために広く受け入れられている。
【0031】
乳酸の良好な収率は、さらに、「野生型」ピルビン酸デカルボキシラーゼおよび/またはピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性をもつ乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子により形質転換されたクルイベロミセス、トルラスポラおよびチゴサッカロミセス菌株によって得ることができる。
【0032】
用語「低いピルビン酸デカルボキシラーゼ活性」は、細胞における減少された酵素濃度、または酵素の低いか全くない比触媒活性、のいずれかを意味する。
【0033】
用語「低いピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性」は、細胞における減少された酵素濃度、または酵素の低いか全くない比触媒活性、のいずれかを意味する。
【0034】
本発明によれば、エタノール生産がゼロであるかそれに近いが、例えば、野生型菌株の正常値よりも少なくとも60%低く、好ましくは少なくとも80%低く、そしてなおより好ましくは少なくとも90%低く、低い生産が受け入れられる菌株の使用が好適である。
【0035】
本発明によれば、ピルビン酸デカルボキシラーゼおよび/またはピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性が、ゼロであるかそれに近いが、例えば、野生型菌株の正常値よりも少なくとも60%低く、好ましくは少なくとも80%低く、そしてさらにより好ましくは少なくとも90%低く、低い活性が認められる菌株の使用が好適である。
【0036】
PDC活性をもたないK.ラクチスの例は、Mol.Microbiol.19(1),27−36,1996において開示された。
【0037】
低いPDC活性をもつサッカロミセス菌株の例は、Acc.No.200027および200028を付してATCCから入手できる。調節PDC2遺伝子の欠失の結果として低いPDC活性をもつサッカロミセス菌株のさらなる例が、Hohmann S (1993)(Mol Gen Genet 241:657−666)において記述された。
【0038】
PDC活性をもたないサッカロミセス菌株の例は、Flikweert M.T.らにより記述された(Yeast,12:247−257,1996)。S.セレビシエにおける、PDC活性の低下は、構造遺伝子(PDC1,PDC5,PDC6)の欠失もしくは調節遺伝子(PDC2)の欠失のいずれかによって得ることができる。
【0039】
PDH活性をもたないクルイベロミセス菌株の例は、Zeemanらにより記述された(Genes involved in pyruvate metabolism in K.lactis;Yeast,vol 13 Special Issue April 1997,Eighteenth International Conference on Yeast Genetics and Molecular Biology,p143)。
【0040】
PDH活性をもたないサッカロミセス菌株の例は、Pronk JT.らにより記述された(Microbiology.140(Pt 3):601−10,1994)。
【0041】
PDC遺伝子は、種々の酵母の属中で高度に保存されている(Bianchi et al.,Molecular Microbiology, 19(1):27−36,1996;Lu P.et al.,Applied & Enviromental Microbiology,64(1):94−7,1998)。それ故、Lu Pら(前出)によって報告されたように、古典的分子アプローチにしたがって、両トルラスポラおよびチゴサッカロミセス酵母種からピルビン酸デカルボキシラーゼ活性に必要な遺伝子を、同定し、クローン化し、そして破壊することが可能であることは、容易に期待できる。さらに、Neveling Uら(1998,Journal of Bacteriology,180(6):1540−8,1998)によって報告されたように、同じ古典的アプローチにしたがって、トルラスポラおよびチゴサッカロミセスの両酵母種においてPDH活性に必要な遺伝子を、単離し、クローン化し、そして破壊することが可能であることは、また容易に期待できる。
【0042】
ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性は、既知の方法、例えばUlbrich J.,Methods in Enzymology,Vol.18,p.109−119,1970,Academic Press, New Yorkによって測定できる。
【0043】
ピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性は、例えばNeveling U.ら(前出)による既知の方法によって測定できる。
【0044】
適当な菌株は、野生型もしくは保存菌株の選択的突然変異および/または遺伝子操作によって得ることができる。数百の変異株が、「高生産性スクリーン」アプローチによって選択できる。種々の解糖系流速を支持する栄養物質を使用することによるピルビン酸デカルボキシラーゼ活性の調節(Biotechnol.Prog.11,294−298,1995)は、満足されないことが証明された。
【0045】
本発明により酵母菌株におけるピルビン酸デカルボキシラーゼ活性および/またはピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性を低下もしくは消滅する好適な方法は、対応する遺伝子もしくは遺伝子群の欠失にある。
【0046】
これらの欠失は、Bianchiら(Molecular Microbiol.19(1),27−36,1996;Flikweert M.T.et al.,Yeast,12:247−257,1996およびPronk JT.et al.,Microbiology,140(Pt 3):601−10,1994)によって開示されたような既知の方法によって、選択マーカー、例えばURA3マーカー、好ましくはサッカロミセス・セレビシエ由来のURA3マーカーの手段による欠失もしくは挿入によって実施される。あるいはまた、欠失、点変異および/またはフレーム・シフト変異が、機能性プロモーターおよびPDCおよび/またはPDH活性に必要な遺伝子中に導入できる。これらの技術は、例えば、Nature,305,391−397,1983において開示されている。これらの活性を低下する付加法は、PDCおよびPDHmRNAの翻訳を阻害するための、遺伝子配列中の終止コドンの導入もしくはアンチセンスmRNAの発現であってもよい。
【0047】
PDC遺伝子が、S.セレビシエのURA3遺伝子によって置換されたクルイベロミセス・ラクチス菌株は、既に、Molecular Microbiology 19(1),27−36,1996において記述された。
【0048】
乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子は、いかなる種(例えば、ウシのような哺乳類もしくは細菌類)のものであってもよく、そしてそれは、L(+)−LDHもしくはD(−)−LDHをコードしていてもよい。あるいはまた、両タイプのLDH遺伝子が、同時に発現されてもよい。さらに、LDH DNA配列をもついかなる天然もしくは合成変異体、野生型LDH遺伝子と高い同一性をもついかなるDNA配列、正常なLDH活性を補足するいかなるDNA配列が、使用されてもよい。
【0049】
輸送体遺伝子として、例えば、S.セレビシエの乳酸輸送体をコードしているJEN1遺伝子が使用できる。
【0050】
酵母菌株の形質転換は、組み込みもしくは複製ベクター、直鎖状もしくはプラスミド状のいずれを用いても実施することができる。
【0051】
本発明の組み換え細胞は、外来DNAを細胞中に導入させるすべての方法(Spencer Jf,et al.,Journal of Basic Microbiology 28(5):321−333,1988)、例えば、形質転換、エレクトロポレーション、接合、プロトプラスト融合もしくはすべての他の既知技術によって得ることができる。形質転換に関して、種々の方法が記述された:特に、それは、Ito H.ら(J.Bacteriol.,153:163,1983)による酢酸リチウムおよびポリエチレングリコールの存在下、またはDurrens P.ら(Curr.Genet.,18:7,1990)によるエチレングリコールおよびジメチルスルホキシドの存在下で、全細胞を処理することによって実施することができる。また別の方法は、欧州特許第361991号において記述されている。エレクトロポレーションは、Becker D.M.およびGuarente L.(Methods in Enzymology,194:18,1991)により実施することができる。
【0052】
非細菌性組み込みベクターの使用は、酵母菌体が、発酵法の終了時点で、保存飼料として、または他の繁殖用、農業用もしくは食用目的に使用される場合には好適であろう。
【0053】
本発明の特定の実施態様では、組み換えDNAは、自律もしくは組み込み複製できる発現プラスミドの一部分である。
【0054】
特に、両S.セレビシエおよびK.ラクチスでは、自律複製ベクターは、選ばれた宿主における自律複製配列を使用することによって得ることができる。特に、酵母においては、それらは、プラスミド(2μ,pKD1など)もしくは染色体配列(ARS)さえから得られる複製開始点であってもよい。
【0055】
組み込みベクターは、相同組み換えによりベクターの組み込みを可能にする、宿主ゲノムのある領域における相同DNA配列を使用することによって得ることができる。
【0056】
遺伝子発現のための遺伝道具は、S.セレビシエに関して非常に良く開発されており、そしてRomanos,M.A.et al.,Yeast,8:423,1992に記述されている。遺伝道具は、また、組み換えタンパク質生産のための宿主細胞として酵母クルイベロミセスおよびトルラスポラ種の使用を可能にするためにも開発されてきた(Spencer Jf,et al.,前出;Reiser J.et al.,Advances in Biochemical Engineering−Biotechnology.43,75−102,1990)。K.ラクチスにおいて自律的に複製するベクターの若干の例は、K.ラクチスの直鎖状プラスミドpKG1(de Lovencourt L. et al.,J.Bacteriol.,154:737,1982)に基づくか、または自己複製と正しい分離能をベクターに付与するK.ラクチスそれ自体の染色体配列(KARS)(Das S.,Hollenberg C.P.,Curr.Genet.,6:123,1982)を含有しているかいずれかであると報告されている。さらにまた、K.ドロソフィラルム(K.drosophilarum)に固有の2μ−様プラスミド(プラスミドpKD1−米国特許第5 166 070号)の認識が、組み換えタンパク質の生産のための非常に有効な宿主/ベクター系を確立させた(欧州特許出願公開第361 991号)。組み換え体pKD1に基づくベクターは、適当な酵母および細菌マーカーに融合された完全な元の配列を含有する。あるいはまた、pKD1の一部を、共通のS.セレビシエ発現ベクターと組み合わせることができる(Romanos,M.A.et al.Yeast,8:423,1992)(Chen et al.,Curr.Genet.,16:95,1989)。
【0057】
S.セレビシエ由来の2μプラスミドが、トルラスポラにおいて複製し、そして安定に維持されることが知られている。この酵母において、異種タンパク質の発現は、同時形質転換操作、すなわち、S.セレビシエのための発現ベクターと全2μプラスミドの同時存在によって得られた(Compagno C.et al.,Mol.Microb.,3:1003−1010,1989)。分子間および分子内組み換えの結果として、完全な2μ配列と異種遺伝子を担持しているハイブリッドプラスミドを単離することができる;そのようなプラスミドは、原則的には、トルラスポラを直接形質転換することができる。
【0058】
さらに、S.セレビシエARS1配列に基づくエピソームプラスミドも記述されているが、このプラスミドの安定性は非常に低い、Compagnoら(前出)。
【0059】
近年、pTD1と名付けられた内因性の2μ−様プラスミドが、トルラスポラにおいて単離された(Blaisonneau J.et al.,Plasmid,38:202−209,1997);現在S.セレビシエのために利用できる遺伝道具は、新規プラスミドに転移することができ、かくしてトルラスポラ酵母種に与えられる発現ベクターを得る。
【0060】
トルラスポラ酵母のための遺伝マーカーは、例えば、URA3(Watanabe Y.et al.,FEMS Microb.Letters,145:415−420,1996),G418耐性(Compagno C.et al.,Mol.Microb.,3:1003−1010,1989)およびシクロヘキシミド耐性(Nakata K.et Okamura k.,Biosc.Biotechnol.Biochem.,60:1686−1689,1996)を含む。
【0061】
チゴサッカロミセス種からの2μ−様プラスミドが知られており、そしてZ.ルキシイ(pSR1)、Z.ビスポラス(Z.bisporus)(pSB3)、Z.フェルメンタチ(Z.fermentati)(pSM1)およびZ.バイリイ(pSB2)において単離された(Spencer Jf.et al.,前出)。
【0062】
プラスミドpSR1は、もっともよく知られている:それはS.セレビシエにおいて複製されるが、2μARSは、Z.ルキシイにおいて認識されない(Araki H.and Hoshima Y.,J.Mol.Biol.,207:757−769,1989)。
【0063】
S.セレビシエARS1に基づくエピソームベクターは、Z.ルキシイのために記述されている(Araki et al.,Mol.Gen.Genet.,238:120−128,1993)。
【0064】
チゴサッカロミセスのための選択マーカーは、G418を含有する培地において増殖を可能にする遺伝子APT1である(Ogawa et al.,Agric.Biol.Chem.,54:2521−2529,1990)。
【0065】
誘導的であれ構成的であれ、いかなる酵母プロモーターが、本発明により使用されてもよい。今日まで、S.セレビシエにおけるタンパク質の発現に使用されたプロモーターは、Romanosら(前出)によってよく記述されている。K.ラクチスにおいて外来タンパク質発現に普通に使用されるプロモーターは、S.セレビシエPGKおよびPHO5であるか(Romanosら、前出)、または相同プロモーター、例えばLAC4(van den Berg J.A.et al.,BioTechnology,8:135,1990)およびKlPDC(米国特許第5 631 143号)である。K.ラクチスのピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子のプロモーター(KlPDC)が特に好適である。
【0066】
クルイベロミセス・ラクチス株の形質転換に特に有効である異種遺伝子発現のためのベクターは、米国特許第5 166 070号に記述されており、引用によって本明細書に組み入れられる。
【0067】
Molecular Microbiol.19(1),27−36,1996に開示されている、好ましくはクルイベロミセス種からの、なおより好ましくはクルイベロミセス・ラクチスからのピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子プロモーターが、特に好適である。また、好ましくはサッカロミセス種、なおより好ましくはサッカロミセス・セレビシエからのトリオースリン酸イソメラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼプロモーターが好適である(Romanosら、前出)。
【0068】
乳酸の生産のために、本発明の酵母菌株は、炭素源および他の必須栄養素を含有する培地において培養され、そして乳酸が、pH7以下、好ましくはpH4.5以下、なおより好ましくはpH3以下において回収される。培地のpHが低下されるので、比較的少量の中和剤が必要である。乳酸塩の形成は、対応して減じられ、そして乳酸を回収するためには遊離酸の比例的に少ない再生が必要になる。回収工程は、既知の方法のいずれを用いてもよい(T.B.Vickroy,Volume3,Chaper38 of ”Comprehensive Biotechnology,”(editor:M.MooYoung),Pergamon,Oxford,1985)(R.Datta et al.,FEMS Microbiology Reviews 16,221−231,1995)。典型的には、乳酸を回収する前に、微生物が濾過もしくは遠心によって除去される。乳酸回収の既知の方法は、例えば、非混和性溶媒相への乳酸の抽出、または乳酸もしくはそのエステルの蒸留を含む。炭素源に対するより高い収率(乳酸g/消費グルコースg)およびより高い生産性(乳酸g/l/h)が、Mg++およびZn++を欠くか、または該イオンの低い利用能をもつ培地において増殖する酵母菌株、特にサッカロミセス菌株によって得られる。好ましくは、培地は、Mg++5mM未満および/またはZn++0.02mM未満を含有するであろう。
【0069】
本発明は、乳酸の生産において次の利点を提供する:1. 発酵が、pH4.5以下で実施される場合、慣用の方法と比較して、外来の微生物による汚染の危険性が低い。さらに、発酵設備は単純化でき、そして発酵制御が容易に行うことができる。
2. より少ない中和剤が、中和のために培地中に添加されるので、対応して、乳酸塩を遊離乳酸へ転化するための鉱酸もしくは他の再生薬剤を使用する必要性が低い。したがって、生産コストが低減できる。
3. より少ない中和剤が培地に添加されるので、培養液の粘度が低下される。その結果、培養液は処理が容易である。
4. 本発明により分離された細胞は、新鮮な乳酸発酵のための種菌微生物として再び利用できる。
5. 細胞は、本発明にしたがって、乳酸発酵中に連続的に分離され、そして回収することができ、それ故、発酵が連続的に実施できる。
6. 組み換え酵母菌株は、エタノール生産能とピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性を欠くか、または両低いエタノール生産と低いピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性をもつので、乳酸の生産は、野生型のエタノール生産能と野生型のミトコンドリアによるピルビン酸利用能の両方をもつ酵母菌株に比較して、より高い収率で実施することができる。
7. クルイベロミセス、トルラスポラおよびチゴサッカロミセスの種に属する代謝的に工作された非慣用酵母による乳酸の生産は、非慣用炭素源(すなわち、若干の例を示せば、ガラクトース−ラクトース−スクロース−ラフィノース−マルトース−セロビオース−アラビノース−キシロース)から、高糖濃度培地中で細胞を増殖させ、そして高濃度の乳酸の存在下で細胞を増殖させて得ることができる。
【0070】
【発明の詳細な記述】
定義 次の定義は、本発明の詳細な記述を理解する際、当業者を助けるために提供される。
【0071】
「増幅」は、所望の核酸分子のコピー数を増加することを指す。
【0072】
「コドン」は、特定のアミノ酸配列を指定する3個のヌクレオチド配列を指す。
【0073】
「欠失」は、核酸配列から1個以上のヌクレオチドを除去する変異を指す。
【0074】
「DNAリガーゼ」は、2つの二本鎖DNA片を共有結合する酵素を指す。
【0075】
「エレクトロポレーション」は、宿主細胞を透過性にするよう短時間高電圧のdc電荷を使用して、そこに染色体外DNAを取り込ませる、細胞中に外来DNAを導入する方法を指す。
【0076】
用語「内因性」は、生物体もしくは細胞内から生じる物質を指す。
【0077】
用語「エンドヌクレアーゼ」は、内部の位置において二本鎖DNAを加水分解する酵素を指す。
【0078】
用語「発現」は、対応するmRNAを生産するための遺伝子の転写、および対応する遺伝子産物、すなわちペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質を生産するためのこのmRNAの翻訳を指す。
【0079】
用語「アンチセンスRNAの発現」は、遺伝子産物、例えばタンパク質をコードしている第2のRNA分子にハイブリダイズできる第1のRNA分子を生産するためのDNAの転写を指す。RNA−RNAハイブリッドの形成は、遺伝子産物を生産する第2のRNA分子の翻訳を阻害する。
【0080】
句「機能的に結合された」は、コーディングもしくは構造配列の転写が、プロモーターもしくはプロモーター領域によって命令できるような方向および距離における、プロモーターもしくはプロモーター領域およびコーディングもしくは構造配列を指す。
【0081】
用語「遺伝子」は、染色体DNA、プラスミドDNA、cDNA、合成DNA、またはペプチド、ポリペプチド、タンパク質もしくはRNA分子をコードしている他のDNA、ならびに発現の制御に関与するコーディング配列に隣接している領域を指す。
【0082】
用語「ゲノム」は、宿主細胞内の染色体およびプラスミドの両方を包含する。したがって、宿主細胞中に導入された本発明のコーディングDNAは、染色体に組み込まれていても、またプラスミドに局在されていてもよい。
【0083】
「異種DNA」は、受容細胞のDNAとは異なる起源からのDNAを指す。
【0084】
「相同DNA」は、受容細胞のDNAと同じ起源からのDNAを指す。
【0085】
「ハイブリダイゼーション」は、塩基対を介して相補的な鎖と結合する核酸鎖の機能を指す。ハイブリダイゼーションは、2本の核酸鎖における相補的配列が互いに結合する場合に起きる。
【0086】
「乳酸デヒドロゲナーゼ」(LDH)は、ピルビン酸およびNADHの、乳酸およびNAD+への転化を触媒するタンパク質を指す。L(+)−LDHは、L(+)−乳酸を生成し;D(−)−LDHは、D(−)−乳酸を生成する。
【0087】
用語「乳酸輸送体」は、細胞の内側から外側への乳酸の輸送を可能にするタンパク質を指す。
【0088】
「変異」は、核酸配列におけるすべての変化もしくは変更を指す。ある種のタイプは、ポイント、フレームシフトおよびスプライシングを含んで存在する。変更は、特異的に(例えば部位特異的変異誘発)もしくはランダムに(例えば化学薬剤により、修復マイナス細菌株を通過して)遂行されてもよい。
【0089】
核酸コード:A=アデノシン;C=シトシン;G=グアノシン;T=チミジン;N=等モルのA,C,GおよびT;I=デオキシイノシン;K=等モルのGおよびT;R=等モルのAおよびG;S=等モルのCおよびG;W=等モルのAおよびT;Y=等モルのCおよびT.
「オープンリーディングフレーム(ORF)」は、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質をコードしているDNAもしくはRNAの領域を指す。
【0090】
「ピルビン酸デカルボキシラーゼ」(PDC)は、ピルビン酸のアセトアルデヒドへの転化を触媒するタンパク質を指す。
【0091】
「ピルビン酸デヒドロゲナーゼ」(PDH)は、ピルビン酸のアセチル−CoAへの転化を触媒するタンパク質複合体を指す。
【0092】
「プラスミド」は、環状の、染色体外の、自己複製するDNA片を指す。
【0093】
「点変異」は、核酸配列において単一ヌクレオチドの変更を指す。
【0094】
「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)」は、1つの核酸配列の多数のコピーを作成するための酵素的技術を指す。DNA配列のコピーは、2つのアンプリマー(amplimer)間でDNAポリメラーゼを往復させることによって製造される。この増幅法の基礎は、変性し、次にアンプリマーを再アニールし、続いて伸長して、側面を接するアンプリマー間に位置する領域に新しいDNA鎖を合成するための多周期の温度変化である。
【0095】
用語「プロモーター」もしくは「プロモーター領域」は、RNAポリメラーゼに対する認識部位を提供することによってメッセンジャーRNA(mRNA)の生産を調節する要素および/または正しい部位における転写の開始に必須な他の因子を指す。
【0096】
「組み換え細胞」もしくは「形質転換細胞」は、そのDNAが、外因性核酸分子のその細胞への導入によって変えられた細胞を指す。
【0097】
用語「組み換えDNA構築物」は、1種以上のDNA配列が機能的作動方式において結合されたDNA分子を含む、ゲノム組み込みもしくは自律複製できる、プラスミド、コスミド、ウイルス、自律的に複製する配列、ファージ、または直鎖状もしくは環状一本鎖もしくは二本鎖DNAもしくはRNAヌクレオチド配列を指す。そのような組み換えDNA構築物もしくはベクターは、DNA配列が、翻訳され、したがって発現される機能的mRNAに転写されるような様式で、細胞中に、5’調節配列もしくはプロモーター領域および選択される遺伝子産物のためのDNA配列を導入できる。組み換えDNA構築物もしくは組み換えベクターは、あるいはまた、興味ある特定のRNAの翻訳を阻害するために、アンチセンスRNAを発現できるように構築されてもよい。
【0098】
「低い(酵素)活性」は、同種の野生型菌株から単離される測定酵素活性に較べて、形質転換もしくは変異菌株から単離されるより低い測定酵素活性を指す。低い酵素活性は、低い酵素濃度、酵素の低い比活性もしくはそれらの組み合わせの結果であろう。
【0099】
「修復マイナス」もしくは「修復欠失」菌株は、低いか、または除去されたDNA修復経路をもつ生物体を指す。そのような菌株は、同種の野生型菌株の率に較べて、増大される変異率を現す。修復マイナス菌株を通しての核酸配列の伝播は、核酸配列を通したランダム変異の導入をもたらす。
【0100】
「制限酵素」は、二本鎖DNA中のヌクレオチドの特定のパリンドローム配列を認識し、そして両鎖を切断する酵素を指す;また、制限エンドヌクレアーゼと呼ばれる。切断は、典型的には、制限部位内で起きる。
【0101】
「選択性マーカー」は、その発現が、核酸配列を含有する細胞の同定を容易にする表現型を与える核酸配列を指す。選択性マーカーは、毒性化学物質に対する耐性(例えばアンピシリン耐性、カナマイシン耐性)を示すか、栄養欠乏(例えばウラシル、ヒスチジン、ロイシン)を補足するか、または肉眼的に区別しうる特徴(例えば色彩変化、蛍光)を与えるものを含む。
【0102】
「転写」は、DNA鋳型からRNAコピー生産する方法を指す。
【0103】
「形質転換」は、外因性核酸配列(例えばベクター、プラスミド、組み換え核酸分子)を、外因性核酸配列が染色体に組み込まれるか、または自律複製できる細胞中に導入する方法を指す。
【0104】
「翻訳」は、メッセンジャーRNAからのタンパク質生産を指す。
【0105】
用語「収率」は、消費されたグルコース量(gr/l)で除した生産された乳酸量(gr/l)を指す。
【0106】
酵素の「単位」は、酵素活性を指し、そして1分間当たりの総細胞タンパク質1mg当たり変換された基質ミクロモル量を示す。
【0107】
「ベクター」は、核酸配列を宿主生物中に運搬するプラスミド、コスミド、バクテリオファージもしくはウイルスを指す。
【0108】
ウシ乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(LDH−A)の部位特異的変異誘発 ウシ酵素LDH−A(EC1.1.1.27)のコーディング配列を完全な長さのcDNAから単離するために、古典的な部位特異的変異誘発(J.Biol.Chem.253:6551,1978,Meth.Enzymol.154:329,1987)が遂行された。オリゴヌクレオチドによる部位特異的変異誘発は、合成オリゴヌクレオチドと一本鎖DNA断片とのイン・ビトロのハイブリダイゼーションに基づき、このオリゴヌクレオチドは、変異誘発されるべきDNA配列と一致する、中心のミスマッチ領域を除くDNA断片と相補的である。
【0109】
ATGコドン11bp前にXbaI制限酵素部位を導入するために、1743bpウシLDHcDNAが、プラスミドpLDH12(Ishiguro et al.,Gene,91 281−285,1991)から、EcoRIおよびHindIII制限酵素(New England Biolabs,Beverly,MA)による消化によってクローン化された。単離されたDNA断片は、次いで、pALTER−1(Promega,cat#96210;lot#48645,1996)発現ベクターに挿入された。
【0110】
そのようなベクターは、M13およびR408バクテリオファージ複製開始点および抗生物質耐性の2つの遺伝子を含有する。これらの遺伝子の1つ、テトラサイクリン耐性は機能性である。他(すなわちアンピシリン耐性)は、不活性化されていた。変異誘発反応の間に、変異鎖に対してアンピシリン耐性を回復するオリゴヌクレオチドが提供される(oligoAMP;Promega,Madison,WI Tab.1)。このオリゴヌクレオチドは、一本鎖DNA(ssDNA)鋳型にアニーリングされる。同時に、変異原性オリゴヌクレオチド(oligoLDH,Madison WI)は、同様にアニーリングされた。DNA合成および連結反応に続いて、DNAが、E.コリ(E.coli)の修復マイナス菌株(BMH71−18mutS;kit Promega)中に形質転換される。選択は、LB+アンピシリンにおいて行われた(Molecular Cloning a laboratory manual,edited by Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press)。JM109(kit Promega)E.コリ菌株における形質転換の第2ラウンドが、変異および野生型プラスミドの適当な分離を確実にした。
【0111】
【表1】
【0112】
表1: 部位特異的変異誘発のために使用された合成オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列。oligoLDHにおける下線の配列は、変異誘発によって導入されたXbaI制限部位を示す。
【0113】
使用された技術および材料(oligoLDH以外の)のさらなる詳細は、キットのデータシートにおいて見い出すことができる。
【0114】
ウシLDHについて変異されたcDNAを含有する、得られたプラスミドは、pVC1と命名された(図2)。
【0115】
ラクトバチルス・カゼイ、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)およびバチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophylus)からの細菌乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(LDH)のPCR変異誘発 ラクトバチルス・カゼイLDH遺伝子(GTG)の元の開始(starting)コドン(GTG)(LDH配列は,the National Center of Biotechnologyによって提供されるGenbank Sequence DatabaseのアクセスナンバーM76708において利用できる −NCBI− ウェブ・サイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)は、S.セレビシエによって正しく認識されない。本発明者らは、プラスミドpST2およびLDH配列を、Hutkins Robert(University of Nebraska,USA)から得た。pST2は、pUC19ベクター(Boehringer Mannheim GmbH,Mannheim、Germany,cat.885827)に基づいており、そしてL.カゼイ686(Culture collection of the University of Nebraska)から増幅されたBamHI−SphI LDH−cDNA断片を含有する。
【0116】
普通の真核生物の最初のコドン(すなわち、ATG)により開始するコーディング配列を得るために、LDH配列が、PCRを介して変異誘発された。
【0117】
LDH配列(GenBAnk Sequence DatabaseのアクセスナンバーM76708、前出)の位置163におけるNcoI制限酵素部位の導入は、元のGTGコドンのATGへの付随変化を与える。PCR反応(Mastercycler 5330,Eppendorf,Hamburg,Germany)は、pGEM7Z f(+)(Promega Corporation,Madison WI,USA,cat.P2251)ベクターに基づくプラスミドpLC1から出発して遂行し、そしてL.カゼイの遺伝子(pST2から切り取られた断片BamHI−SphI)を含有する。反応のプライマーとして使用されたオリゴヌクレオチドの配列は表2に報告される。
増幅サイクル:94°;1’ (変性段階)
94°30” (変性段階)
56°30” 4回 (プライマーアニーリング段階)
68°3’ (伸長段階)
94°30” (変性段階)
60°30” 23回 (プライマーアニーリング段階)
68°3’ (伸長段階)
68°3’ (最終伸長段階)
反応の最後に、増幅され、そして変異された遺伝子に対応する単一バンドが単離された。次いで、DNA断片は、平滑末端連結によりpMOSBlue(Amersham Life Science,Buckingamshire,England;cod.RPN5110)クローニングベクターのEcoRV部位において挿入され、pLC3プラスミドが生じた。
【0118】
すべての他の変異誘発法が、同様に使用できる。
【0119】
【表2】
【0120】
表2: PCR増幅のために使用された合成オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列。oligoATGにおける下線の配列は、変異誘発によって導入されたNcoI制限部位、および結果として得られたATG開始コドンを示す。
【0121】
また、本発明者らは、古典的なPCRアプローチにしたがって、細菌バチルス・メガテリウムおよびバチルス・ステアロサーモフィルス(Biol.Chem.Hoppe−Seyler,1987,368:1391)(Biol.Chem.Hoppe−Seyler,1987,368:1167)からのL(+)LDH遺伝子(DNA配列は,また、the National Center of Biotechnologyによって提供されるGenbank Sequence DatabaseのアクセスナンバーM22305およびM19396において利用できる −NCBI− ウェブ・サイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を、酵母S.セレビシエのための発現ベクター(すなわち、それぞれpBME2およびpBST2、下記参照)中にクローン化した。
【0122】
KlPDCAプロモーターおよびウシLDHcDNAを含有するpEPL2複製ベクターの構築 KlPDCAプロモーターおよびコーディング配列は、K.ラクチスのrag6変異を相補するK.ラクチス・ゲノムライブラリークローン(Bianchi et al.,Mol.Microbiol.,19:27−36,1996)から4KbpHindIII断片としてサブクローン化された。プロモーター領域が、ベクターpBleuscript II KS(Stratagene,LaJolla,Ca#212205)のSalIおよびXbaI部位中に、分子クローニング標準操作(Sambrook et al.,Molecular Cloning,前出)を用いるT4 DNAリガーゼによりサブクローン化された。pVC1ベクターから1675bpをもつXbaI−HindIII断片として単離されたウシLDH配列は、ベクターpBleuscript II KSの対応するクローニング部位においてクローン化された。GM82 E.コリ菌株(dam- dcm-)(ATCCもしくはCGSCコレクションから得られる)は、それぞれpKSMD8/7およびpKSEXH/16(図3Aおよび3B)と呼ばれる2種の新ベクターにより形質転換された。
【0123】
それぞれpKSMD8/7およびpKSEXH/16からSalI−XbaI断片として単離された、KlPDCAプロモーターおよびウシLDH配列は、SalIエンドヌクレアーゼの存在下、室温で、T4 DNAリガーゼによりイン・ビトロで連結されて、XbaI末端において連結された。連結反応産物は、pE1ベクター(Bianchi M.et al.,Curr.Genet.12:185−192,1987;Chen X. J.et al.,Curr.Genet.16:95−98,1989およびUS#5166070)のSalIクローニング部位においてクローン化された。このプラスミドは、サッカロミセス・セレビシエ遺伝マーカーURA3を含有するYIp5組み込みプラスミド、およびクルイベロミセス・ドロソフィラルムから単離されたpKD1プラスミド(US#5166070)に基づいている。プラスミドpE1は、S.セレビシエ2μ DNAに類似する機能的構成をもち、そしてクルイベロミセス・ラクチス細胞(Chen X. J.et al.,前出)において安定な進行で複製することができる。プラスミド上のURA3マーカーは、K.ラクチスuraA1−1変異を相補(de Louvencourt et al.,J.Bacteriol.154:737−742(1982))させ、したがって、ウラシルを含まない選択培地における形質転換細胞の増殖を可能にする。
【0124】
得られたベクターは、pEPL2(図4)と呼ばれ、そしてE.コリDH5−alfa菌株(Life Technologies Inc.,Gaitherburg,MA)を形質転換するために使用された。
【0125】
KlPDCAプロモーターおよび細菌LDH遺伝子を含有するpEPL4複製ベクターの構築 pEPL2プラスミドに関して記述されたウシLDH遺伝子が、本文を通して記述された古典的分子アプローチにしたがって、細菌ラクトバチルス・カゼイ遺伝子(前記参照)からのLDH DNA配列と置き換えられて、プラスミドpEPL4を得た。ウシもしくは細菌LDHを担持する形質転換K.ラクチス酵母細胞は、類似の結果を与えた。
【0126】
KlPDCAプロモーターおよびウシLDHcDNAを含有するpLAZ10複製ベクターの構築 ベクターpLAZ10は、KlPDC1プロモーターとウシLDHコーディング配列を担持するpEPL2のSalI断片を、ベクターp3K31のユニークSalI部位中にクローニングすることによって得られた。ベクターp3K31は、市販ベクターpUC19およびプラスミドpKD1のユニークSphI部位に挿入されたベクターpKan707(Fleer et al.,Bio/tchnology 9:968−974,1991)のG418耐性カセットからなる。
【0127】
pLC5,pLC7,pB1,pBM2,pBST2,pLC5−KanMXおよびpJEN1組み込みベクターの構築 L.カゼイLDH遺伝子は、NcoI−SalI消化によってpLC3(前記)から切り取られ、そしてpYX012もしくはpYX022組み込みベクター(R&D System Europe Ltd,Abingdon,England)中に連結された。
【0128】
TPIプロモーターの制御下の細菌LDH遺伝子について変異されたDNAを含有し、そして栄養素要求性マーカーURA3もしくはHIS3を担持する、得られた2種のプラスミドは、pLC5(図5)およびpLC7とそれぞれ命名された。pB1、pBM2およびpBST2の構築では、本発明者らは、pLC5の構築について記述されたものと類似のアプローチを使用した;しかしながら、ウシLDH、B.メガテリウムLDHおよびB.ステアロサーモフィルスLDH(Biol.Chem.Hoppe−Seyler,1987,368:1391)(Biol.Chem.Hoppe−Seyler,1987,368:1167)をそれぞれ使用した。最後に、プラスミドpFA6a−KanMX(Wach et al.,Yeast,1994,10:1793−1808)が、SacIとSmaIにより消化され、そして生じる断片が、同じ酵素で切断されたpLC5中に連結されて、プラスミドpLC5−KanMXを生成した。このプラスミドでは、LDH遺伝子は、TPIプロモーターの制御下にある。
【0129】
S.セレビシエの乳酸輸送体をコードしているJEN1(Davis E.S.,Thesis,1994−Laboratory of Eukaryotic Gene Expression,Advanced Bioscience Laboratories)(Davis,E.S.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89(23),11169,1992)(Andre,B.Yeast(11),1575,1995)のDNA配列(DNA配列は,また、the National Center of Biotechnologyによって提供されるGenbank Sequence DatabaseのアクセスナンバーU24155において利用できる −NCBI− ウェブ・サイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)は、E.S.Davis(University of Marryland,USA)から得られた。JEN1コーディング配列は、本文を通して記述された古典的PCRアプローチによって増幅され、そしてプラスミドpYX022(前記)中にクローン化された。組み込みプラスミドでは、JEN1過剰発現は、TPIプロモーターの制御下にある。
【0130】
ADH1プロモーターおよびウシLDHcDNAを含有するpLAT−ADH複製ベクターの構築 第1に、pLDH−Kanプラスミドが、pFA6−KanMX4ベクター(Wach et al.,Yeast 10:1793−1808(1994))のSmaI/EcoRV消化から誘導されたゲネチシン(G418)耐性を付与するAPT1遺伝子を、pBluescript II KS(Promega Corporation,Madison WI,USA,cat.212208)クローニングベクターのEcoRV部位にクローニングして構築された。
【0131】
第2に、ウシLDH遺伝子のコーディング領域が、前述のpVC1プラスミドからのXbaI/HindIII断片をpVT102−Uベクター(Vernet et al.Gene 52:225−233(1987))中にサブクローニングすることによって、S.セレビシエのADH1プロモーターとターミネーター配列の制御下でクローン化された。
【0132】
最後に、全発現カセット(ADH1プロモーター−LDH遺伝子−ADH1ターミネーター)が、SphI消化によって切り取られ、pLDH−Kanと連結され、SphIで直鎖状にされて、pLAT−ADHベクター(図6)を得た。
【0133】
K.ラクチスPMI/C1菌株の単離 PM6−7A酵母菌株(MAT a,adeT−600,uraA1−1)(Wesolowski et al.,Yeast 1992,8:711)におけるKlPDCA遺伝子の欠失が、菌株PMIを生じた。欠失は、S.セレビシエのURA3マーカーの挿入によって実施された。菌株PMIは、グルコース含有培地で増殖する;PDC活性は検出されず、そして菌株はエタノールを生産しない(Bianchi M.M.,et al.,(1996)、前出)。いかなる検出しうるPDC活性ももたないS.セレビシエ細胞は、グルコース無機質培地では増殖しない(Flikweert M.T.et al.Yeast,12:247−257,1996)ということを強調することが重要である。
【0134】
PMI酵母細胞の定常期の培養からの1x107〜3x107細胞が、5−フルオロオロチン酸を含有する合成培地上に平板塗布された。5−フルオロオロチン酸含有培地における酵母細胞の増殖は、ウラシル合成において損傷された細胞の選択を可能にする(McCusker and Davis,Yeast 7:607−608(1991))。28℃で5日培養後、数株のura−変異株が単離された。得られたこれらの変異株の1株は、PMI/C1と呼ばれ、組み込み形質転換によって予め導入されたURA3遺伝子における変異を生じたが、それは、URA3遺伝子を含有するプラスミド(Kep6ベクター;Chen et al.,J.Basic Microbiol.28:211−220(1988))を用いる形質転換による相補試験から証明された。PMI/C1の遺伝子型は、次のとおりである:MATa,adeT−600,uraA1−1,pdcA::ura3。
【0135】
CENPK113△PDC1△PDC5△PDC6、CENPK113△PDC2およびGRF18U△PDC2菌株の単離 一般的戦略は、最初に、各PDC遺伝子(PDC1、PDC2、PDC5およびPDC6)の単一欠失変異株を作成することであった。遺伝子欠失は、Wachら(1994;Yeast 10、1793−1808)およびGueldenerら(1996;Nucleic acids Res.24,2519−2524)によって記述されたショートフランキングホモロジー(SFH)PCR法を用いて、対応するPDC遺伝子の座における相同性組み換えによりloxP−KanSRD−loxPカセットの組み込みによって行われた。続いて、欠失カセットは、欠失座におけるloxP部位の単一コピーをリーディング ビハインド(leading behind)するcre−リコンビナーゼを発現することによって除かれた。pdc1 pdc5 pdc6三重欠失変異株は、続いて、単一の一倍体欠失株を交雑することによって作成された。
【0136】
PCR反応は、ある種のシュワニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)遺伝子(機密)の調節配列(プロモーター/ターミネーター)に融合されたカナマイシン耐性(E.コリ トランスポゾンTn903のオープンリーディングフレーム)の遺伝子を含有するDNA鋳型において実施された。この選択カセットは、loxP配列(loxP−KanSRD−loxP)によって両端において隣接されており、SRD(Scientific Reseach and Development)によって開発された。loxP−KanSRD−loxPカセットを増幅するために使用されるプライマーは、センスプライマーのDNA配列が、選択カセット配列の5’末端と相同であるように、そしてプライマーが、ある種のサッカロミセス・セレビシエPDC遺伝子の5’末端配列に対応する、その5’末端領域40ヌクレオチドにおける付加において存在するように、設計される。アンチセンスプライマーは、類似の方法で構築され、それは、選択カセットの3’末端と相補的であり、この場合、このプライマーは、ある種のサッカロミセス・セレビシエPDC遺伝子の3’末端配列に対応する、また好ましくは40ヌクレオチドをその5’末端領域において含有する。
【0137】
次の表は、SFH PCR法による対応するPDC遺伝子の遺伝子欠失のために使用されるプライマーを示す。下線の配列は、対応するPDC遺伝子と相同性であり、そしてloxP−KanSRD−loxPカセットに相補的な配列は、太字で存在する。
【0138】
【表3】
【0139】
PCR増幅された欠失カセットは、SRDによって開発された原栄養性二倍体サッカロミセス・セレビシエ菌株CEN.PK112の形質転換のために使用された。
【0140】
CEN.PK112(Mata,alpha,URA3,URA3,HIS3,HIS3,LEU2,LEU2,TRP1,TRP1,MAL2−8C,MAL2−8C,SUC2,SUC2)
形質転換株の選択のために、ゲネチシン(硫酸G−418,Life Technologies)が、最終濃度200mg/lにおいて添加された。四分子分析後、続いて、G418耐性胞子が、診断的PCRによって解析されて、対応するPDC遺伝子の正しい欠失を確認し、そして一倍体菌株の交配型を決定した。
【0141】
3個のPDC遺伝子、PDC1,PDC5おいてPDC6について欠失された菌株を得るために、一倍体欠失株が、続いて交雑された。2個の二重欠失株、pdc1::KanSRD pdc6::KanSRDおよびpdc5::KanSRD pdc6::KanSRDを得るために、対応する一倍体株が交雑された。四分子分析後、KanSRDマーカーに関して非親系二型(non−parental ditype)を示す胞子が、続いて、診断的PCRによって解析されて、両遺伝子の正しい欠失を確認し、そして交配型を決定した。得られる二重欠失株が交雑されて、三重欠失株を得た。四分子分析後、診断的PCRによって、3個のPDC遺伝子について欠失された胞子が探された。
【0142】
破壊に成功した遺伝子からKanSRDマーカーを除去するために、一倍体欠失株(単一、二重および三重変異株)が、cre−リコンビナーゼ・プラスミド、pPK−ILV2SMR(SRDによって開発された)により形質転換された。プラスミドpPK−ILV2SMRは、GAL1プロモーター制御下のcre−リコンビナーゼ、および優性選択マーカーとして、プラスミドプラスミドpPK−ILV2SMRにより形質転換された酵母細胞をスルホメツロンメチル(30mg/l)の存在下で増殖可能にさせるILV2耐性遺伝子を含有する。続いて、KanSRDマーカーの正確な切除が、全酵母細胞に関して診断的PCRによって解析された。プラスミドpPK−ILV2SMRを除去するために、酵母細胞は、培地中スルホメツロンメチルなしで適当な時間培養され、続いて、スルホメツロンメチル感受性細胞が探索された。
【0143】
次の表は、得られた酵母菌株を示す。括弧内の数字は、対応する遺伝子の欠失ヌクレオチド(ATG=1)を指す。ネガティブ数字の場合は、最初の数字は、ATGの上流の欠失ヌクレオチドを意味し、そして第2の数字は、終始コドンの下流の欠失ヌクレオチドを意味する。
【0144】
【表4】
【0145】
主として、本発明者らは、得られたデータを総括している表において、またCENPK113△PDC2およびCENPK113△PDC1△PDC5△PDC6と名付けられる菌株CEN.PK112およびCEN.PK182を使用した。
【0146】
同様のアプローチを使用して、PDC2遺伝子に欠失を担持しているS.セレビシエGRF18U株(Mat alpha,his3,leu2,ura3)が構築された(GRF18U△PDC2;Mat alpha,his3,leu2,ura3,pdc2::APT1)。本発明者らは、プラスミドpFA6a−KanMX(Wach et al.前出)から単離された、組み込みのマーカーとしてのG418耐性を付与するAPT1遺伝子を使用した;PDC1,PDC5およびPDC6遺伝子において欠失を担持している菌株では、PDC活性はゼロである。PDC2遺伝子に欠失を担持している菌株では、PDC活性は野生型菌株で測定されるレベルの約20〜40%である。
【0147】
K.ラクチスBM3−12D[pLAZ10]の単離 二重欠失菌株Klpdc1△/Klpda1△は、菌株MW341−5/Klpdc1△(MATα,lac4−8,leu2,lysA1−1,uraA1−1,Klpdc1::URA3;Bianchi et al.,1996,Mol.Microbiol.,19(1)、27−36において既述のように得られた;Destruelle et al.,提供)を、菌株CBS2359/Klpda1△(MATa,URA3−48,Klpda1::Tn5BLE)と交雑することによって得られた二倍体菌株の一倍体分離集団から選択された。ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体E1−alphaサブユニット(EC.1.2.4.1)(DNA配列は、Steensma H.Y.;Faculty of Mathematics and Natural Sciences,Clusius Laboratory,Leiden,The Netherlandによって得られた−DNA配列は,また、the National Center of Biotechnologyによって提供されるGenbank Sequence DatabaseのアクセスナンバーAF023920において利用できる −NCBI− ウェブ・サイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)をコードしているPDA1遺伝子の欠失は、酵母菌株CBS2359において、古典的PCRアプローチおよび本文を通じて記された酵母形質転換にしたがって得られた。本発明者らは、組み込みのマーカーとしてフレオマイシン耐性を付与するマーカーTn5Ble(Gatingnol et al.,Gene,91:35,1990)を使用した。
【0148】
BM1−3C(MATa,leu2,Klpdc1::URA3;Klpda1::Tn5BLE)と呼ばれる二重欠失菌株は、フレオマイシン耐性/アンチマイシン感受性分離菌株として選択された。次いで、ベクターpLAZ10が、遺伝的に、次のように二重欠失菌株に転移された。
【0149】
Klpdc1::URA3菌株のpLAZ10形質転換株PMI/8(MATa,adeT−600,uraA1−1,Klpdc1::URA3;Bianchi et al.,Mol.Microbiol.,19:27−36,1996)が、菌株MW109−8C(MATα,lysA1−1,trpA1−1)と交雑された。得られる二倍体菌株の胞子形成後、菌株7C(MATα,adeT−600,lysA1−1,Klpdc1::URA3,pLAZ10+)と呼ばれるゲネチシン耐性/アンチマイシン感受性菌株が選択された。
【0150】
菌株BM1−3Cおよび菌株7Cが交雑され、そして得られた二倍体菌株の胞子形成後、フレオマイシン耐性/ゲネチシン耐性の一倍体分離菌株が選択された。すべての一倍体分離株はアンチマイシン感受性であった。原栄養株BM3−12D(Klpdc1::URA3;Klpda1::Tn5BLE、pLAZ10+)が、さらなる実験のために選ばれた。
【0151】
ベクターpEPL2およびpEPL4を用いるクルイベロミセス酵母PM6−7AおよびPMI/C1の形質転換 PM6−7AおよびPMI/C1細胞が、YPD培地において濃度0.5x108細胞/mlまで増殖され、収穫され、水中で1回、1Mソルビトール中で2回洗浄され、そして1Mソルビトール中濃度2x109細胞/mlにおいて再懸濁された。細胞は、pEPL2もしくはpEPL45〜10μgの存在下でエレクトロポレーション(7.5KV/cm,25μF,200Ω:GenePulser,Biorad,Hercules,Ca)された。URA+形質転換株の選択は、ウラシルを含まない合成固形培地(0.7%w/v酵母窒素源、2w/v%グルコース、200mg/lアデニン、2w/v%寒天)において実施された。
【0152】
ベクターpLAT−ADHを用いるトルラスポラ酵母の形質転換 CBS817細胞が、YPD培地において濃度6x107細胞/mlまで増殖され、収穫され、水中で1回、1Mソルビトール中で2回洗浄され、そして1Mソルビトール中濃度2x109細胞/mlにおいて再懸濁された。細胞は、pLAT−ADH 1μgの存在下でエレクトロポレーション(1.5kV,7.5KV/cm,25μF,200Ω:GenePulser,Biorad,Hercules,Ca)された。
【0153】
細胞は、YEPD 5ml、ソルビトール1Mを含有する滅菌微生物用チューブにおいて一夜増殖された。G418r形質転換株の選択は、固形培地(2w/v%グルコース、2w/v%ペプトン、1w/v%酵母エキス、2w/v%寒天,200μg/ml G418(Gibco BRL,cat.11811−031))において実施された。
【0154】
ベクターpLAT−ADHを用いるチゴサッカロミセス酵母の形質転換 ATTC36947およびATTC60483細胞が、YPD培地において濃度2x108細胞/mlまで増殖され、収穫され、そして0.1M酢酸リチウム、10mMジチオトレイトール、10mMTris−HCl,pH7,5中濃度4x108細胞/mlにおいて、室温で1時間再懸濁された。細胞は、水中で1回、1Mソルビトール中で2回洗浄され、そして1Mソルビトール中濃度5x109細胞/mlにおいて再懸濁された。細胞は、pLAT−ADH 3μgの存在下でエレクトロポレーション(1.5kV,7.5KV/cm,25μF,200Ω:GenePulser,Biorad,Hercules,Ca)された。
【0155】
細胞は、YEPD 5ml、ソルビトール1Mを含有する滅菌微生物用チューブにおいて一夜増殖された。G418r形質転換株の選択は、固形培地(2w/v%グルコース、2w/v%ペプトン、1w/v%酵母エキス、2w/v%寒天,200μg/ml G418(Gibco BRL,cat.11811−031))において実施された。
【0156】
ベクターpLC5,pLC7,pB1,pBST2,pBME2,pLAT−ADH,pLC5−KanMXおよびpJEN1を用いるサッカロミセス酵母細胞の形質転換 GRF18U(前記)、GRF18U△PDC2(前記)、GRF18U[pLC5](Mat alpha,his3,leu2,ura3::TPI−LDH)、CENPK113(Mat a;CBS8340)、CENPK−1(Mat a,ura3)、CENPK113△PDC1△PDC5△PDC6(前記)およびCENPK113△PDC2(前記)酵母細胞が、富栄養YPD完全培地(2w/v%酵母エキス、1w/v%ペプトン、2w/v%グルコース)において濃度2x107細胞/mlまで増殖され、0.1M酢酸リチウム、1mM EDTA、10mMTris−HCl,pH8中で1回洗浄され、そして0.1M酢酸リチウム、1mM EDTA、10mMTris−HCl,pH8中に濃度2x109細胞/mlにおいて再懸濁された。細胞懸濁液100μlは、ベクター(すなわち、pLC5,pLC7,pB1,pBST2,pBME2,pLC5−KanMX,pJEN1の場合には、栄養要求マーカーにおいて予め直鎖化された)5〜10μgと5分インキュベートされた。PEG4000 280μlの添加後、細胞は、30℃で少なくとも45分間インキュベートされた。DMSO43μlを添加し、そして懸濁液が42℃で5分間インキュベートされた。細胞は、水で2回洗浄され、選択培地上に平板塗布された。CENPK−1菌株(ura3)の単離のために、CENPK113細胞が、5−フルオロオロチン酸を含有する培地(上記参照)で増殖された。
【0157】
単一形質転換細胞は、0.7%w/v酵母窒素源、2w/v%グルコース、2w/v%寒天,プラス指標として適当な補充物質もしくはG418においてスコアーされた。G418R形質転換株の選択では、また細胞は、2w/v%グルコース、2w/v%ペプトン、1w/v%酵母エキス、2w/v%寒天,200μg/ml G418(Gibco BRL,cat.11811−031)においてスコアーされた。
【0158】
形質転換株:補充物質GRF18U[pLAT−ADH]:ウラシル200mg/l、ロイシン200mg/l、ヒスチジン200mg/l、G418 200mg/l。
GRF18U[pB1]:ロイシン200mg/l、ヒスチジン200mg/l。GRF18U[pLC5]:ロイシン200mg/l、ヒスチジン200mg/l。
GRF18U[pLC5][pLC7]:ロイシン200mg/l。
GRF18U[pBME2]:ロイシン200mg/l、ヒスチジン200mg/l。
GRF18U[pBST2]:ロイシン200mg/l、ヒスチジン200mg/l。
GRF18U[pLC5][pJEN1]:ロイシン200mg/l。
GRF18U△PDC2[pLC5]:ロイシン200mg/l、ヒスチジン200mg/l。
CENPK−1[pLC5]:補充物質なしCENPK113[pLC5−KanMX]:G418 200mg/l。
CENPK113△PDC1△PDC5△PDC6[pLC5−KanMX]:G418 200mg/l。
CENPK113△PDC2[pLC5−KanMX]:G418 200mg/l。
【0159】
【表5】
【0160】
KL=K.ラクチスのプロモーターSC=S.セレビシエのプロモーターB.Ste.=バチルス・ステアロサーモフィルス pJEN1は、JEN1遺伝子の発現のために使用された。
【0161】
バッチ試験 クルイベロミセスPM6−7A[pEPL2]、PMI/C1[pEPL2]、PM6−7A[pEPL4]およびPMI/C1[pEPL4]形質転換細胞のバッチ解析 上記形質転換操作によって得られたクローンが、最小合成培地(1.3%w/v酵母窒素源−aa(Difco,Detroit,MI)、アデニン200mg/l、グルコース50g/l)における増殖のバッチ培養において試験された。使用された培地は、200mMリン酸バッファーによりpH5.6に緩衝化されるか、されないか両方であった。
【0162】
細胞は、同じ試験培地において前培養された。対数的に増殖している細胞が、新鮮な培地100mlを含有するフラスコ(容量300ml)中に接種された。フラスコは、振盪浴(Dubnoff,150rpm)中30℃で培養され、発酵が規則的な時点でモニターされた。細胞数濃度は、細胞凝集物を避けるためにサンプルの音波処理(Sonicator Fisher 300,中間点、出力35%、10秒)後、電気コールターカウンター(Coulter Counter ZBI Counter Electronics Harpenden,GB,Porro et al.,Res.Microbiol.(1991)142,535−539)により測定された(図7および8、および表3)。
【0163】
クルイベロミセスBM3−12D[pLAZ10]形質転換細胞のバッチ解析 上記操作によって得られたクローンが、最小合成培地(1.3%w/v酵母窒素源−aa(Difco,Detroit,MI)、グルコース50g/l、エタノール20gr/l、G418 200mg/l)における増殖のバッチ培養において試験された。使用された培地は、200mMリン酸バッファーによりpH5.6に緩衝化された。
【0164】
細胞は、同じ試験培地において前培養された。対数的に増殖している細胞が、新鮮な培地100mlを含有するフラスコ(容量300ml)中に接種された。フラスコは、振盪浴(Dubnoff,150rpm)中30℃で培養され、発酵が規則的間隔でモニターされた。細胞数濃度は、細胞凝集物を避けるためにサンプルの音波処理(Sonicator Fisher 300,中間点、出力35%、10秒)後、電気コールターカウンター(Coulter Counter ZBI Counter Electronics Harpenden,GB,Porro et al.,Res.Microbiol.(1991)142,535−539)により測定された。最初、細胞はエタノールを使用し、次いで、非常に高い収率でグルコースを乳酸に変換した(>0.75;乳酸g/消費グルコースg)(表3)。
【0165】
トルラスポラCBS817[pLAT−ADH]形質転換細胞のバッチ解析 上記形質転換操作によって得られたクローンが、最小合成培地(1.3%w/v酵母窒素源−aa(Difco,Detroit,MI)、グルコース20g/l、G418 200mg/l)における増殖のバッチ培養において試験された。使用された培地は、緩衝化されなかった。
【0166】
細胞は、同じ試験培地において前培養された。対数的に増殖している細胞が、新鮮な培地100mlを含有するフラスコ(容量300ml)中に接種された。フラスコは、振盪浴(Dubnoff,150rpm)中30℃で培養され、発酵が規則的間隔でモニターされた。細胞数濃度は、細胞凝集物を避けるためにサンプルの音波処理(Sonicator Fisher 300,中間点、出力35%、10秒)後、電気コールターカウンター(Coulter Counter ZBI Counter Electronics Harpenden,GB,Porro et al.,Res.Microbiol.(1991)142,535−539)により測定された。(図10および表3)。
【0167】
チゴサッカロミセスATCC36947[pLAT−ADH]およびATCC60483[pLAT−ADH]形質転換細胞のバッチ解析 上記形質転換操作によって得られたクローンが、最小合成培地(1.3%w/v酵母窒素源−aa(Difco,Detroit,MI)、グルコース50g/l、G418 200mg/l)における増殖のバッチ培養において試験された。使用された培地は、緩衝化されなかった。
【0168】
細胞は、同じ試験培地において前培養された。対数的に増殖している細胞が、新鮮な培地100mlを含有するフラスコ(容量300ml)中に接種された。フラスコは、振盪浴(Dubnoff,150rpm)中30℃で培養され、発酵が規則的間隔でモニターされた。細胞数濃度は、細胞凝集物を避けるためにサンプルの音波処理(Sonicator Fisher 300,中間点、出力35%、10秒)後、電気コールターカウンター(Coulter Counter ZBI Counter Electronics Harpenden,GB,Porro et al.,Res.Microbiol.(1991)142,535−539)により測定された(図11および表3)。
【0169】
サッカロミセスGRF18U[pLAT−ADH]、GRF18U[pB1]、GRF18U[pLC5]、GRF18U[pLC5][pLC7]、GRF18U[pBM2]、GRF18U[pBST2]、CENPK−1[pLC5]形質転換細胞のバッチ解析 上記形質転換操作によって得られたクローンが、最小合成培地(1.3%w/v酵母窒素源−aa(Difco,Detroit,MI)、グルコース50g/lおよび適当な補充物質(上記参照))における増殖のバッチ培養において試験された。使用された培地は、緩衝化されなかった。細胞は、同じ試験培地において前培養された。対数的に増殖している細胞が、新鮮な培地100mlを含有するフラスコ(容量300ml)中に接種された。フラスコは、振盪浴(Dubnoff,150rpm)中30℃で培養され、発酵が規則的間隔でモニターされた。細胞数濃度は、細胞凝集物を避けるためにサンプルの音波処理(Sonicator Fisher 300,中間点、出力35%、10秒)後、電気コールターカウンター(Coulter Counter ZBI Counter Electronics Harpenden,GB,Porro et al.,Res.Microbiol.(1991)142,535−539)により測定された(表3)。
【0170】
サッカロミセスGRF18U△PDC2[pLC5]、CENPK113[pLC5−KanMX]、CENPK113△PDC2[pLC5−KanMX]およびCENPK113△PDC1△PDC5△PDC6[pLC5−KanMX]形質転換細胞のバッチ解析−回転フラスコ− 上記操作によって得られたクローンが、富栄養培地(1.0%w/v酵母エキス、2%w/vペプトン、グルコース100g/l)における増殖のバッチ培養において試験された。培地は、緩衝化されなかった。
【0171】
細胞は、酵母エキス−ペプトン+エタノール(5g/l)培地において前培養された。100mlが、回転フラスコ中に接種された(1.5 l作業容量;始発pH=5.7)。回転フラスコは30℃で培養された、撹拌:55rpm。発酵が規則的間隔でモニターされた(表A,B,Cおよび表3)。
【0172】
種々の形質転換株由来のLDH比活性は、5U/総細胞タンパク質mgより高かった。
【0173】
LDH活性用量(dosage)
ウシLDH 約108細胞が回収され、50mMリン酸バッファー、pH7.
5中で洗浄され、そして同じバッファーに懸濁された。細胞は、ガラスの微小ビーズ(直径400μm、SIGMA,G−8772)の存在下の強い渦の5サイクルによって4℃において溶解された。細胞破片は、遠心(Eppendorf,Hamburg,D 5415 C,13600 RCF,10分)によって除去され、そしてタンパク質抽出液の濃度が、Mycro Assay,Biorad,Hercules,Ca(cat.500−0006)によって測定された。
【0174】
抽出液約0.2mgが、SIGMA(St.Louis,MO)キットDG1340−UVを使用して、製造者の指示にしたがってLDH活性を試験された。
【0175】
細菌LDH 約108細胞が回収され、50mMリン酸バッファー、pH7.
5中で洗浄され、そして同じバッファーに懸濁された。細胞は、ガラスの微小ビーズ(直径400μm、SIGMA,G−8772)の存在下の強い渦の5サイクルによって4℃において溶菌された。細胞破片は、遠心(Eppendorf,Hamburg,D 5415 C,13600 RCF,10分)によって除去され、そしてタンパク質抽出液の濃度が、Mycro Assay,Biorad,Hercules,Ca(cat.500−0006)によって測定された。
【0176】
細胞抽出液は、12.8mM NADH0.01ml、2mMフルクトース1,6−二リン酸0.1ml、50mM酢酸バッファー(pH=5.6)0.74ml、適当に希釈された細胞抽出液0.05mlおよび100mMピルビン酸0.1ml:を用いて、LDH活性を試験された。
【0177】
LDH活性は、340nm、25℃において、総細胞抽出液1mg当たりの、1分間に酸化されるNADHミクロモル数としてアッセイされた。
【0178】
増殖培地における代謝物用量 遠心によって細胞を除去した後得られた、増殖培地からのサンプルが、グルコース、エタノール、L(+)−およびD(−)−乳酸の存在に関して、Boehringer Mannheim,Mannheim DEからのキット(それぞれ#.716251,176290および1112821)を用い、製造者の指示にしたがって分析された。
【0179】
クルイベロミセスPM6−7A[pEPL2]およびPMI/C1[pEPL2]形質転換酵母に関する実験バッチ試験は、図7A,7Bおよび図8A,8Bにおいて示される。
【0180】
トルラスポラCBS817[pLAT−ADH]形質転換酵母に関する実験データは、図10に示される。
【0181】
チゴサッカロミセスATCC60483[pLAT−ADH]形質転換酵母に関する実験データは、図11に示される。
【0182】
回転フラスコ中で増殖するサッカロミセスCENPK113[pLC5−KanMX]、CENPK113△PDC2[pLC5−KanMX]およびCENPK113△PDC1△PDC5△PDC6[pLC5−KanMX]形質転換酵母に関する実験データは、表A,B,Cにおいて示される。
【0183】
【表6】
【0184】
【表7】
【0185】
【表8】
【0186】
形質転換クルイベロミセス、トルラスポラ、チゴサッカロミセスおよびサッカロミセス酵母から得られたすべての結果は、表3において総括され、そして比較される。収率は、消費グルコース量(gr/l)によって除された生産乳酸量(gr/l)である。遊離乳酸パーセントは、Henderson−Hasselbalchの式:pH=pKa+log[(乳酸%)/(遊離乳酸%)]から得られ、この場合、乳酸のpKaは3.86である。
【0187】
表3Aと表3Bにおいて報告されたデータの比較により、異なる酵母の属において、グルコースにおいて、より高い収率をもつ乳酸生産は、LDHとPDC活性の相対比率−細胞レベルにおいて−を変化することによって得ることができることが、明らかに分かる。そのような結論は、次のような少なくとも2種の異なるアプローチ:(1)PDC活性を低下させること(形質転換K.ラクチス宿主:PM6−7A対PMI/C1からのデータを比較する;形質転換S.セレビシエ宿主:GRF18U対GRF18U△PDC2、そしてCENPK113対CENPK113△PDC2およびCENPK113△PDC1△PDC5△PDC6からのデータを比較する)、(2)LDH遺伝子コピー数と、したがってLDH活性を増加すること(S.セレビシエ宿主:GRF18U[pLC5]対GRF18U[pLC5][pLC7]からのデータを比較する;2つの菌株におけるLDH非相同の活性は、それぞれ5〜6および7〜8U/総細胞タンパク質mg)、によって得ることができる。
【0188】
さらに、より高い収率は、増殖培地の組成を操作することによって得ることができる。また、この場合には、低いエタノール生産が観察された(また表4参照)。
【0189】
【表9】
【0190】
【表10】
【0191】
【表11】
【0192】
操作された無機質培地において増殖するサッカロミセスGRF18U[pLC5][pLC7]に関する実験データ(表4) サッカロミセスGRF18U[pLC5][pLC7]形質転換細胞による乳酸生産が、また、合成培地において細胞を増殖して実施された(D.Porro et al.,Development of a pH controlled fed−batch system for budding yeast.Res.in Microbiol.,142,535−539,1991)。使用された合成培地において、MgおよびZn塩源は、それぞれMgSO4(5mM)およびZnSO4x7H2O(0.02mM)である。生産は、他の形質転換サッカロミセス細胞のために前述されたような好気的バッチ培養(グルコース濃度50gr/l)において試験された。両MgSO4およびZnSO4x7H2Oの欠落は、より高い収率とより高い乳酸生産性を生じた。事実、これらの無機質は、エタノール生産に導く酵素活性のためのコファクターとして要求されるであろう。データは表4に示される。
【0193】
【表12】
【0194】
注釈: 対照:完全合成培地(Res.in Microbiol.,142,535−539,1991;別記)
−Mg:MgSO4無添加以外は対照と同じ −Zn:ZnSO4x7H2O無添加以外は対照と同じ 全試験では、最終pH値は、3.0以下であり、したがって遊離乳酸%は、88%以上であった。
【0195】
JEN1遺伝子を過剰発現する酵母細胞による乳酸生産 より良好な乳酸生産とより低いエタノール生産は、乳酸輸送体をコードしているJEN1遺伝子の過剰発現によって得られた。
【0196】
GRF18U[pLC5](すなわち、ネガティブコントロール)およびGRF18U[pLC5][pJEN1]が、2%グルコース、0.67%YNBw/vおよび補充物質(すなわち、それぞれ、ロイシン−ヒスチジン100mg/lおよびロイシン100mg/l)を含有する培地において増殖された。
【0197】
細胞は、同じ試験培地において前培養された。対数的に増殖している細胞が、新鮮な培地100mlを含有するフラスコ(容量300ml)中に接種された。フラスコは、振盪浴(Dubnoff,150rpm)中30℃で培養され、発酵が規則的間隔でモニターされた。細胞数濃度は、細胞凝集物を避けるためにサンプルの音波処理(Sonicator Fisher 300,中間点、出力35%、10秒)後、電気コールターカウンター(Coulter Counter ZBI Counter Electronics Harpenden,GB,Porro et al.,Res.Microbiol.(1991)142,535−539)により測定された。
【0198】
【表13】
【0199】
連続乳酸生産 乳酸の連続的で安定な生産が、形質転換K.ラクチスPM6−7A[pEPL2]、PMI/C1[pEPL2]および形質転換S.セレビシエGRF18U[pLC5][pLC7]両菌株を用いる、古典的なケモスタット培養(新鮮培地のバイオリアクターへの連続流入が、範囲0.01〜0.3hr-1の比増殖速度を支持した)の手段によって2週以上にわたって得られた。
【0200】
フィード・バッチ試験 撹拌タンク発酵槽におけるPMI/C1[pEPL2]による乳酸生産 さらに、PMI/C1[pEPL2]による乳酸生産が、栄養培地(30g乾物/L ライトコーンスチープウォーター、A.E.Staley Manufacturing Co.,Decatur,IL;10g/L Difco酵母エキス、Difco、Detroit,MI;200mg/L アデニン、50g/L グルコース)8リッターを含有する14リッター撹拌タンク発酵槽における培養によって試験された。発酵槽は、終始30℃に維持され、400rpmで撹拌され、そして2リッター/minで通気された。消泡剤(Antiform1520,Dow Corning Corp.,Midland,MI)が、発泡を制御するために必要に応じて添加された。グルコースは、発酵培地における残濃度約25〜50g/Lを維持するために必要に応じてフィードされた。制御される場合、pHは、14.8M水酸化アンモニウム水溶液の自動添加によって維持された。酸性pHにおける乳酸生産は、次のように試験された:(1)発酵pHが発酵を通じて4.5に制御された。(2)初期発酵pHが、14.8M水酸化アンモニウム80mLが添加されるまで、4.0に制御された。次いで、pH制御は中止された。(3)初期発酵pHが5.0であり、そして発酵中、中和剤が添加されなかった。結果は表6に示される。経過時間は接種時間以降測定された。濾過により細胞を除去した後得られた発酵からのサンプルは、YSI Model2700 Select Biochemistry Analyzer(Yellow Springs Instrument Co.,Inc.,Yellow Springs,OH)を用いて、グルコースおよびL(+)−乳酸について分析された。ガスクロマトグラフィーによって測定されたエタノールは、いずれの発酵においても検出されなかった。収率および遊離乳酸は、前記のように計算された。発酵のための種菌は、250mL容バッフル付きエルレンマイヤーフラスコ中、最小合成培地(1.3%w/v酵母窒素源−aa(Difco,Detroit,MI)、アデニン200mg/L,硫酸アンモニウム5g/L、グルコース50g/L)50mLにおいて、PMI/C1[pEPL2]を、培養振盪機(Model G−24,New Brunswick Scientific Co.,Inc.,Edison,NJ)において30℃、300rpmで30時間前培養することによって調製された。
【0201】
同様な結果が、細菌LDH遺伝子を用いて得られた(プラスミドpEPL4;データ未掲載)。
【0202】
【表14】
【0203】
撹拌タンク発酵槽におけるBM3−12D[pLAZ10]による乳酸生産 さらに、BM3−12D[pLAZ10]による乳酸生産が、栄養培地(6.7gr/ YNB/酵母窒素源−Difco,Detroit,MI、グルコース45g/L,2%w/vエタノール、G418 200mg/l)0.8リッターを含有する1リッター撹拌タンク発酵槽における培養によって試験された。発酵槽は、終始30℃に維持され、400rpmで撹拌され、そして0.8リッター/minで通気された。消泡剤(Antiform1520,Dow Corning Corp.,Midland,MI)が、発泡を制御するために必要に応じて添加された。形質転換細胞は、最初は、菌体生産のためにエタノールを使用(増殖の最初の50時間)し、次いで、グルコースをL(+)−乳酸に変換した。pHは、2MKOHの自動添加によって4.5に維持された。グルコースは、発酵培地における残濃度約35〜45g/Lを維持するために必要に応じてフィードされた。
【0204】
結果は図9および表7に示される(ケース1)。経過時間は接種時間以降測定された。濾過により細胞を除去した後得られた発酵からのサンプルは、Porro et al.1995(前出)に記載のように標準酵素分析を用いて、グルコース、エタノールおよびL(+)−乳酸について分析された。T=50hr後、エタノールは、サンプル試験のいずれにおいても検出されなかった。収率および遊離乳酸は、前記のように計算された。
【0205】
発酵のための種菌は、250mL容バッフル付きエルレンマイヤーフラスコ中、最小合成培地(1.3%w/v酵母窒素源−aa(Difco,Detroit,MI)、2%w/vエタノール、G418 200mg/l)50mLにおいて、BM3−12D[pLAZ10]を、培養振盪機(Model G−24,New Brunswick Scientific Co.,Inc.,Edison,NJ)において30℃、300rpmで40時間前培養することによって調製された。
【0206】
異なる実験(表7、ケース2)では、始発発酵pHは5.4であり、そして中和剤は、発酵を通じて添加されなかった。
【0207】
【表15】
【0208】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】
乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のクローニングが、解糖の流れを乳酸生産の方向へシフトする。
ピルビン酸分岐点における鍵の酵素反応は、次の酵素:(1):ピルビン酸デカルボキシラーゼ;(2):アルコールデヒドロゲナーゼ;(3):アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ;(4):アセチル−CoAシンテターゼ;(5);サイトゾルからミトコンドリアへのアセチル−CoAシャトル;(6):ミトコンドリアからサイトゾルへのアセチル−CoAシャトル;(7):異種の乳酸デヒドロゲナーゼ;(8):ピルビン酸デヒドロゲナーゼによって触媒される。補充合成に関与する酵素反応は省略された。
【図2】
プラスミドpVC1の図。
【図3A】
プラスミドpKSMD8/7の図。
【図3B】
pKSEXH/16の図。
【図4】
プラスミドpEPL2の図。
【図5】
プラスミドpLC5の図。
【図6】
プラスミドpLAT−ADHの図。
【図7A】
Glu−YNBに基づく培地での増殖における形質転換クルイベロミセス・ラクチスPM6−7a[pEPL2]からのL(+)−乳酸生産。T=49における残グルコース濃度は検出されなかった。D(−)−乳酸の生産も、また検出されなかった。LDH比活性は、全実験に沿って3U/総細胞タンパク質mgより高かった。
同様な結果が、細菌L.カゼイ(L.casei)LDHを用いて得られた(データ未掲載)。
(△)細胞/ml;(−)pH値;(○)エタノール生産、g/l;(■)L(+)−乳酸生産、g/l。
【図7B】
Glu−YNBに基づく培地での増殖における形質転換クルイベロミセス・ラクチスPM6−7a[pEPL2]からのL(+)−乳酸生産。培地は、200mMリン酸バッファーを用いて、時間T=0において緩衝化された(pH=5.6)。このテキストバッチでは、pH値は、図7Aに示したテキストバッチにおけるよりも、ずっと遅く低下する。T=49における残グルコース濃度は検出されなかった。LDH比活性は、全実験に沿って3U/総細胞タンパク質mgより高かった。
同様な結果が、細菌L.カゼイLDHを用いて得られた(データ未掲載)。
(△)細胞/ml;(−)pH値;(○)エタノール生産、g/l;(■)L(+)−乳酸生産、g/l。
【図8A】
Glu−YNBに基づく培地での増殖における形質転換クルイベロミセス・ラクチスPM1/C1[pEPL2]からのL(+)−乳酸生産。T=60における残グルコース濃度は、12,01g/lであった。より長い培養時間は、菌体およびL(+)−乳酸両方のより高い生産をもたらさなかった。LDH比活性は、全実験に沿って3U/総細胞タンパク質mgより高かった。
同様な結果が、細菌L.カゼイ(L.casei)LDHを用いて得られた(データ未掲載)。
(△)細胞/ml;(−)pH値;(○)エタノール生産、g/l;(■)L(+)−乳酸生産、g/l。
【図8B】
Glu−YNBに基づく培地での増殖における形質転換クルイベロミセス・ラクチスPM1/C1[pEPL2]からのL(+)−乳酸生産。培地は、200mMリン酸バッファーを用いて、時間T=0において緩衝化された(pH=5.6)。このテキストバッチでは、pH値は、図8Aに示したテキストバッチにおけるよりも、ずっと遅く低下する。T=87における残グルコース濃度はゼロであった。LDH比活性は、全実験に沿って3U/総細胞タンパク質mgより高かった。
(△)細胞/ml;(−)pH値;(○)エタノール生産、g/l;(■)L(+)−乳酸生産、g/l 同様な結果が、細菌L.カゼイLDHを用いて得られた(データ未掲載)。
【図9A】
撹拌タンクバイオリアクター(またテキスト参照)における形質転換クルイベロミセスBM3−12D[pLAZ10]細胞からのL(+)−乳酸生産。
(△)細胞/ml;(−)pH値;(○)グルコース濃度、g/l;(■)L(+)−乳酸生産、g/l。
【図9B】
撹拌タンクバイオリアクターにおける形質転換クルイベロミセスBM3−12D[pLAZ10]細胞からのL(+)−乳酸収率。
グルコース対乳酸生産。収率(g/g)は85.46%であった。
【図10】
Glu−YNBに基づく培地での増殖における形質転換トルラスポラ(異名チゴサッカロミセス)・デルブルッキイCBS817[pLAT−ADH]からのL(+)−乳酸生産。T=130における残グルコース濃度は、3g/lであった。より長い培養時間は、菌体およびL(+)−乳酸両方のより高い生産をもたらさなかった。LDH比活性は、全実験に沿って0.5U/総細胞タンパク質mgより高かった。
(△)細胞/ml;(−)pH値;(○)エタノール生産、g/l;(■)L(+)−乳酸生産、g/l
【図11】
Glu−YNBに基づく培地での増殖における形質転換チゴサッカロミセス・バイリイATCC60483[pLAT−ADH]からのL(+)−乳酸生産。T=60における残グルコース濃度は、8g/lであった。より長い培養時間は、菌体およびL(+)−乳酸両方のより高い生産をもたらさなかった。LDH比活性は、全実験に沿って0.5U/総細胞タンパク質mgより高かった。同様な結果が、異なる菌株を用いて得られた(ATCC36947,データ未掲載)。
(△)細胞/ml;(−)pH値;(○)エタノール生産、g/l;(■)L(+)−乳酸生産、g/l。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エタノール生産能を欠いているか、または同じ菌株の野生型酵母に較べて低いエタノール生産能をもち、そして酵母において乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子の発現を可能にするプロモーター配列が機能的に結合した該遺伝子の少なくとも1個のコピーにより形質転換された酵母菌株。
【請求項2】 同じ菌株の野生型酵母に較べて約60%未満であるエタノール生産能をもつ、請求項1記載の酵母菌株。
【請求項3】 低いピルビン酸デカルボキシラーゼおよび/または低いピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性、ならびに乳酸デヒドロゲナーゼタンパク質をコードしている核酸配列の少なくとも1個のコピーをもつ、請求項1もしくは2記載の酵母菌株。
【請求項4】 低いピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性をもつ、請求項3記載の酵母菌株。
【請求項5】 低いピルビン酸デカルボキシラーゼ活性をもつ、請求項3記載の酵母菌株。
【請求項6】 低いピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性と低いピルビン酸デカルボキシラーゼ活性とももつ、請求項3記載の酵母菌株。
【請求項7】 ピルビン酸デカルボキシラーゼもしくはピルビン酸デヒドロゲナーゼ、または両方をコードしている遺伝子もしくは遺伝子群が、選択マーカーによる欠失もしくは挿入によって破壊されている、請求項1〜6のいずれか1つに記載の酵母菌株。
【請求項8】 選択マーカーがURA3マーカーである、請求項7記載の酵母菌株。
【請求項9】 選択マーカーが、サッカロミセス・セレビシエ由来のURA3マーカーである、請求項8記載の酵母菌株。
【請求項10】 選択マーカーが、毒性化合物に対する耐性をコードしている優性マーカーである、請求項7記載の酵母菌株。
【請求項11】 サッカロミセス、クルイベロミセス、トルラスポラおよびチゴサッカロミセスの種から選ばれる、請求項1〜10のいずれか1つに記載の酵母菌株。
【請求項12】 サッカロミセス・セレビシエの菌株である、請求項11記載の酵母菌株。
【請求項13】 クルイベロミセス・ラクチスの菌株である、請求項11記載の酵母菌株。
【請求項14】 トルラスポラ・デルブルッキイの菌株である、請求項11記載の酵母菌株。
【請求項15】 チゴサッカロミセス・バイリイの菌株である、請求項11記載の酵母菌株。
【請求項16】 クルイベロミセス、トルラスポラおよびチゴサッカロミセスの種から選ばれる酵母菌株であって、該酵母において乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子の発現を可能にするプロモーター配列に、機能的に結合された該遺伝子の少なくとも1個のコピーにより形質転換された酵母菌株。
【請求項17】 ウシ乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子により形質転換された、請求項1〜16のいずれか1つに記載の酵母菌株。
【請求項18】 細菌乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子により形質転換された、請求項1〜16のいずれか1つに記載の酵母菌株。
【請求項19】 乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子が酵母ゲノムに組み込まれる、請求項1〜17のいずれか1つに記載の酵母菌株。
【請求項20】 プロモーター配列および該プロモーター配列の制御下の乳酸デヒドロゲナーゼをコードしているDNA配列を含有する発現ベクターによって形質転換された、請求項1〜19のいずれか1つに記載の酵母菌株。
【請求項21】 プロモーター配列がピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子プロモーターである、請求項20記載の酵母菌株。
【請求項22】 プロモーター配列が、クルイベロミセス・ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子プロモーターである、請求項21記載の酵母菌株。
【請求項23】 乳酸輸送体を過剰発現する、上記請求項のいずれか1つに記載の酵母菌株。
【請求項24】 乳酸輸送体がJEN1である、請求項23記載の酵母菌株。
【請求項25】 ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子プロモーターに機能的に結合された乳酸デヒドロゲナーゼをコードしているDNA配列を含有するベクター。
【請求項26】 プロモーター配列が、クルイベロミセス・ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子プロモーターである、請求項25記載のベクター。
【請求項27】 プロモーター配列が、クルイベロミセス・ラクチス・ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子プロモーターである、請求項26記載のベクター。
【請求項28】 炭素源を含有する発酵培地における請求項1〜24の組み換え酵母菌株の増殖、および発酵培地からの乳酸の回収を含む、乳酸の製造方法。
【請求項29】 炭素源が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、スクロース、ラフィノース、マルトース、セロビオース、アラビノース、キシロースの1種以上から選ばれる、請求項28記載の方法。
【請求項30】 発酵培地が、Mg++5mM未満および/またはZn++0.02mM未満を含有する、請求項28もしくは29記載の乳酸の製造方法。
【請求項31】 発酵培地がpH7以下をもつ、請求項28〜30記載の方法。
【請求項32】 pHが4.5以下である、請求項31記載の方法。
【請求項33】 pHが3以下である、請求項32記載の方法。
【請求項34】 D−もしくはL−乳酸または2種の混合物の製造のための請求項28記載の方法。
【請求項1】 エタノール生産能を欠いているか、または同じ菌株の野生型酵母に較べて低いエタノール生産能をもち、そして酵母において乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子の発現を可能にするプロモーター配列が機能的に結合した該遺伝子の少なくとも1個のコピーにより形質転換された酵母菌株。
【請求項2】 同じ菌株の野生型酵母に較べて約60%未満であるエタノール生産能をもつ、請求項1記載の酵母菌株。
【請求項3】 低いピルビン酸デカルボキシラーゼおよび/または低いピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性、ならびに乳酸デヒドロゲナーゼタンパク質をコードしている核酸配列の少なくとも1個のコピーをもつ、請求項1もしくは2記載の酵母菌株。
【請求項4】 低いピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性をもつ、請求項3記載の酵母菌株。
【請求項5】 低いピルビン酸デカルボキシラーゼ活性をもつ、請求項3記載の酵母菌株。
【請求項6】 低いピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性と低いピルビン酸デカルボキシラーゼ活性とももつ、請求項3記載の酵母菌株。
【請求項7】 ピルビン酸デカルボキシラーゼもしくはピルビン酸デヒドロゲナーゼ、または両方をコードしている遺伝子もしくは遺伝子群が、選択マーカーによる欠失もしくは挿入によって破壊されている、請求項1〜6のいずれか1つに記載の酵母菌株。
【請求項8】 選択マーカーがURA3マーカーである、請求項7記載の酵母菌株。
【請求項9】 選択マーカーが、サッカロミセス・セレビシエ由来のURA3マーカーである、請求項8記載の酵母菌株。
【請求項10】 選択マーカーが、毒性化合物に対する耐性をコードしている優性マーカーである、請求項7記載の酵母菌株。
【請求項11】 サッカロミセス、クルイベロミセス、トルラスポラおよびチゴサッカロミセスの種から選ばれる、請求項1〜10のいずれか1つに記載の酵母菌株。
【請求項12】 サッカロミセス・セレビシエの菌株である、請求項11記載の酵母菌株。
【請求項13】 クルイベロミセス・ラクチスの菌株である、請求項11記載の酵母菌株。
【請求項14】 トルラスポラ・デルブルッキイの菌株である、請求項11記載の酵母菌株。
【請求項15】 チゴサッカロミセス・バイリイの菌株である、請求項11記載の酵母菌株。
【請求項16】 クルイベロミセス、トルラスポラおよびチゴサッカロミセスの種から選ばれる酵母菌株であって、該酵母において乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子の発現を可能にするプロモーター配列に、機能的に結合された該遺伝子の少なくとも1個のコピーにより形質転換された酵母菌株。
【請求項17】 ウシ乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子により形質転換された、請求項1〜16のいずれか1つに記載の酵母菌株。
【請求項18】 細菌乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子により形質転換された、請求項1〜16のいずれか1つに記載の酵母菌株。
【請求項19】 乳酸デヒドロゲナーゼをコードしている遺伝子が酵母ゲノムに組み込まれる、請求項1〜17のいずれか1つに記載の酵母菌株。
【請求項20】 プロモーター配列および該プロモーター配列の制御下の乳酸デヒドロゲナーゼをコードしているDNA配列を含有する発現ベクターによって形質転換された、請求項1〜19のいずれか1つに記載の酵母菌株。
【請求項21】 プロモーター配列がピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子プロモーターである、請求項20記載の酵母菌株。
【請求項22】 プロモーター配列が、クルイベロミセス・ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子プロモーターである、請求項21記載の酵母菌株。
【請求項23】 乳酸輸送体を過剰発現する、上記請求項のいずれか1つに記載の酵母菌株。
【請求項24】 乳酸輸送体がJEN1である、請求項23記載の酵母菌株。
【請求項25】 ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子プロモーターに機能的に結合された乳酸デヒドロゲナーゼをコードしているDNA配列を含有するベクター。
【請求項26】 プロモーター配列が、クルイベロミセス・ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子プロモーターである、請求項25記載のベクター。
【請求項27】 プロモーター配列が、クルイベロミセス・ラクチス・ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子プロモーターである、請求項26記載のベクター。
【請求項28】 炭素源を含有する発酵培地における請求項1〜24の組み換え酵母菌株の増殖、および発酵培地からの乳酸の回収を含む、乳酸の製造方法。
【請求項29】 炭素源が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、スクロース、ラフィノース、マルトース、セロビオース、アラビノース、キシロースの1種以上から選ばれる、請求項28記載の方法。
【請求項30】 発酵培地が、Mg++5mM未満および/またはZn++0.02mM未満を含有する、請求項28もしくは29記載の乳酸の製造方法。
【請求項31】 発酵培地がpH7以下をもつ、請求項28〜30記載の方法。
【請求項32】 pHが4.5以下である、請求項31記載の方法。
【請求項33】 pHが3以下である、請求項32記載の方法。
【請求項34】 D−もしくはL−乳酸または2種の混合物の製造のための請求項28記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2001−516584(P2001−516584A)
【公表日】平成13年10月2日(2001.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−511873(P2000−511873)
【出願日】平成10年9月11日(1998.9.11)
【国際出願番号】PCT/EP98/05758
【国際公開番号】WO99/14335
【国際公開日】平成11年3月25日(1999.3.25)
【出願人】
【氏名又は名称】エイ・イー・スタリー・マニユフアクチヤリング・カンパニー
【Fターム(参考)】
【公表日】平成13年10月2日(2001.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成10年9月11日(1998.9.11)
【国際出願番号】PCT/EP98/05758
【国際公開番号】WO99/14335
【国際公開日】平成11年3月25日(1999.3.25)
【出願人】
【氏名又は名称】エイ・イー・スタリー・マニユフアクチヤリング・カンパニー
【Fターム(参考)】
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