説明

乳酸菌培養により得られる抗アレルギー剤

【課題】 安全で、優れた抗アレルギー作用を有する抗アレルギー剤の提供。
【解決手段】 スピルリナ及び/又はクロレラと乳酸菌とを含有する培養液中で、乳酸菌を培養して得られる乳酸菌培養物を有効成分とする抗アレルギー剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の培養液中で乳酸菌を培養した培養物を有効成分とする抗アレルギー剤に関する。
【背景技術】
【0002】
スピルリナ又はクロレラを含む食品は、従来、緑黄色野菜に特有の栄養成分や、固有の栄養成分を豊富に含むことから、通常の食生活において不足しがちな栄養成分を手軽に摂取できる食品として利用されている。
最近、スピルリナ又はクロレラ中で乳酸菌を培養してスピルリナやクロレラの特有の匂いや風味を改善した食品が提案されている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
しかし、スピルリナ、及び/又はクロレラと乳酸菌とからなる混合体を、水の存在下に維持し、乳酸菌培養を行うことにより得られる培養物が健康食品として用いられるものの、抗アレルギー剤として有用であることについてはまったく知られていない。
【特許文献1】特開2004−081206号公報
【特許文献2】特開昭63−157963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、かかる処理方法により得られたスピルリナの乳酸菌培養物の利用方法についてさらに検討を重ねたところ、全く意外にもかかる培養物がアレルギー症状の予防、治療に有効であることを見出した。
ついては、本発明は、スピルリナ及び/又はクロレラの乳酸菌培養物を有効成分として含有するものを抗アレルギー剤として提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、スピルリナ及び/又はクロレラと乳酸菌とを含有する培養液中で、乳酸菌を培養して得られる乳酸菌培養物を有効成分とする抗アレルギー剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の抗アレルギー剤は、スピルリナ及び/又はクロレラの乳酸菌培養物を有効成分として含有するため、安全で、アレルギー症状を有意に低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の内容を詳細に説明する。
本発明で用いられるスピルリナ、クロレラとしては、例えば以下のものが挙げられる。スピルリナ(Spirulina)とは、藍藻類(Cyanobacteria)に包含され、従来一括してスピルリナ属と呼称されていたアルスロスピラ属(Arthrospira)及びスピルリナ属(Spirulina)に属する微細な単細胞微生物であり、例えばアルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)、アルスロスピラ・マキシマ(Arthrospira maxima)、アルスロスピラ・ゲイトレリ(Arthrospira geitleri)、アルスロスピラ・サイアミーゼ(Arthrospira siamese)、スピルリナ・メイヤー(Spirulina major)、スピルリナ・サブサルサ(Spirulina subsalsa)、等が挙げられるが、中でも、人工的に培養でき、入手が容易なことから、アルスロスピラ・プラテンシス、アルスロスピラ・マキシマ、アルスロスピラ・ゲイトレリ、アルスロスピラ・サイアミーゼが好ましい。
【0008】
クロレラ(Chlorella)とは、緑藻類(Chlorophyceae)、クロレラ属(Chlorella)の藻類であり、入手が容易で、安全性に優れている点で、例えば、クロレラ・ブルガリス(C. vulgaris)、クロレラ・レギュラリス(Chlorella regularis)、クロレラ・ピレノイドーサ(C. pyrenoidosa)、クロレラ・エリプソイデア(C. ellipsidea)等が挙げられる。
【0009】
これらのスピルリナ、クロレラとしては、生の藻体、乾燥藻体、及び機械的処理等の方法により処理した藻体処理物等が挙げられる。
生の藻体は、例えば、水中で培養されたスピルリナ、クロレラを遠心分離、濾過等の方法により収穫して得られる。生の藻体は、培養槽から収穫後そのままの状態で使用することもできるが、水もしくは生理食塩水で洗浄するのが好ましい。
乾燥藻体は、例えば、前記方法で得られた生の藻体を凍結乾燥処理やスプレー乾燥処理したもの等が挙げられる。
機械的処理の方法により処理した藻体処理物は、例えば、生の藻体を超音波照射処理や、ホモゲナイズ等の機械処理を行うことにより得られる。藻体の機械的処理物は、その後に乾燥処理を施しても良い。
【0010】
本発明で用いられる藻体としては、生の藻体であることが、スピルリナ、クロレラの有効成分をより保持していることから好ましい。
生の藻体は、通常、収穫する際の水の除去程度により、水に懸濁している懸濁状のものや、懸濁状のものに比べ水の含有量が少ないペースト状のものや、ペースト状のものに比べ水の含有量が少ないケーキ状の状態のものがあるが、いずれの状態のものでも使用できる。スピルリナ、クロレラは、懸濁状にした藻体(以後、懸濁液という場合がある。)を用いるのが好ましい。また、乾燥藻体や藻体処理物を用いる場合は、乾燥している状態でも良いし、水を加えて、生の藻体のように懸濁状やペースト状やケーキ状にしたものでも良い。
【0011】
スピルリナ、クロレラは、それらの有する有効成分を損なわないためには加熱殺菌しない方が好ましいが、必要に応じて加熱殺菌したものを用いることもできる。
ここで、スピルリナ、クロレラは、スピルリナ、又はクロレラを単独で用いても、スピルリナとクロレラの混合物を用いてもどちらでもよい。
【0012】
次に、乳酸菌について説明する。
乳酸菌は、古来から食品の保蔵と調味を目的に発酵乳製品、醸造製品、野菜・果実の漬物など多くの食品の加工に利用されている。本発明で用いる乳酸菌としては、食用として利用できる乳酸菌であれば制限無く用いることができる。乳酸菌としては、由来する生育環境により乳系乳酸菌、植物系乳酸菌、腸管系乳酸菌や、藻類の生育する自然湖に由来する乳酸菌等に分類される。また乳酸菌は、その生育至適条件により中温性菌、高温性菌、耐塩性菌等にも分類されるが、いずれの性質を有する菌でも良い。
【0013】
本発明で用いる乳酸菌としては、分類学上、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、テトラゲノコッカス(Tetragenococcus)属、カルノバクテリウム(Carnobacterium)属、バゴコッカス(Vagococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ワイセラ(Weissella)属、オエノコッカス(Oenococcus)属、アトポビウム(Atopobium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属(正式名はエンテロコッカス属、本明細書においてはエンテロコッカス属に包含する)、エンテロコッカス(Enterococcus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、アエロコッカス(Aerococcus)属、アロイオコッカス(Alloiococcus)属、メリソコッカス(Melissococcus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属等が挙げられ、更に、例えばラクトバチルス デルブルエキ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)、ロイコノストック(Leuconostoc sp)等の種が挙げられる。本発明に用いられる乳酸菌としては、ペディオコッカス属、エンテロコッカス属に属する乳酸菌が好ましい。
【0014】
乳酸菌は、単独種で使用しても良いし、2種類以上の菌を混合して使用しても良い。また、後述する培養工程において、同じ種類の菌を2段階以上に分けて植菌して培養しても良いし、異なった菌種を2段階以上に分けて植菌し培養しても良い。
乳酸菌は、寒天培地や液体培地で培養後、冷蔵保存、凍結保存、乾燥保存等の保存方法により保存しておいたものを用いても良いが、これらの保存しておいた乳酸菌を液体培地に植菌して培養したもの(以下、種培養液と略記する。)を用いるのが乳酸菌の増殖速度が速く、アセトアルデヒド、ジアセチル等のフレーバー類の産生能、有機酸産生能等の活性が高いことから好ましい。種培養液を培養するのに用いる培地は、用いる乳酸菌が生育可能な培地であれば良く制限はないが、一般に乳酸菌を培養する液体培地として例えば、Man、Rogosa、Sharpeの考案したMRS培地(メルク社製)、及び牛乳成分を利用したホエー培地、脱脂乳培地等の培地が挙げられる。
【0015】
種培養液の調製に用いる培地には、他の夾雑成分が混入するのを防ぐために、加熱殺菌したスピルリナ、クロレラの酵素分解物、酸分解物もしくはアルカリ分解物、又はグルコース等の糖類もしくはアミノ酸を添加したスピルリナ、クロレラの分解物等を添加した培地を使用することもできる。種培養液を調製するには、通常、前記の液体培地に、保存してある乳酸菌を添加し、培養する乳酸菌に適応する好気状態または嫌気状態に維持し、静置または攪拌して、培養すれば良い。
【0016】
次に、本発明に用いられる乳酸菌培養物の調製方法について説明する。
乳酸菌培養物は、スピルリナ及び/又はクロレラと乳酸菌とを含有する培養液中で乳酸菌を培養することにより調製される。ここで、スピルリナ及び/又はクロレラと乳酸菌とを含有する培養液は、スピルリナ及び/又はクロレラを含有し、乳酸菌を増殖させ得るものであれば特に制限はないが、例えば、水にスピルリナ、クロレラを懸濁した懸濁液に乳酸菌を加える方法、水にスピルリナ、クロレラを加えた湿潤液、ペースト、ケーキ等に乳酸菌を加える方法、上記懸濁液に上記種培養液を加える方法等により得ることができる。より具体的には、以下に例示する方法により得ることができる。(i)生の藻体や乾燥させた藻体の懸濁液、ペーストに乳酸菌の培養液や乾燥状態の乳酸菌を添加する。(ii)生の藻体や乾燥させた藻体のケーキに、乳酸菌の培養液を添加する。(iii)乾燥させた藻体に湿潤状態になる量の乳酸菌の培養液を添加する。
【0017】
これらの中でも、(i)が好ましく、更に(i)においてスピルリナ及び/又はクロレラとして生の藻体の懸濁液を用い、乳酸菌として培養液、特に種培養液を用いるのが、乳酸菌の培養能とフレーバー産生能が高いことから好ましい。
前記藻体の懸濁液やペーストやケーキ、乳酸菌の培養液は、水を含有しているが、スピルリナ及び/又はクロレラと乳酸菌とを含有する培養液が、水が足りないときは水を加え、湿潤下や水中に維持する状態にしても良い。水は、滅菌水を用いるのが好ましい。
【0018】
スピルリナ及び/又はクロレラと乳酸菌とを含有する培養液中のスピルリナ及び/又はクロレラの含有量は、後述する乳酸菌培養後の収穫工程、乾燥工程で効率を良好にする観点から、乾燥菌体として0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
スピルリナ及び/又はクロレラと乳酸菌とを含有する培養液中での乳酸菌の培養は、静置培養でも良いし、該培養液が液体であればプロペラ攪拌による攪拌培養でも良い。また、用いる乳酸菌の生育に適するように、培養する系を嫌気状態にしても良いし、好気状態にしても良い。
【0019】
乳酸菌の使用量は、乳酸菌が増殖する菌数であれば良いが、夾雑菌の繁殖の抑制を良好にする観点から、乳酸菌の培養を開始する際の乳酸菌数が固形分換算藻類1gあたり10〜1011個であるのが好ましく、10〜1010個であるのがより好ましい。
スピルリナ及び/又はクロレラと乳酸菌とを含有する培養液のpHは、乳酸菌の培養により生成する乳酸などの酸により培養の過程で変化するが、培養開始時のpHが、5.0〜9.0であるのが好ましく、6.0〜8.0がより好ましい。
培養温度は、乳酸菌が増殖可能な温度ならば何れでもよいが、乳酸菌の増殖に好適なこと、スピルリナ及び/又はクロレラの有効成分が損なわれないことから、4〜45℃が好ましく、20〜40℃がより好ましい。
【0020】
培養時間は、乳酸菌を十分増殖させ、優れた抗アレルギー作用を発揮させるため、例えば、10〜100時間が好ましい。
【0021】
培養後の乳酸菌数は、優れた抗アレルギー作用を発揮させ、他の夾雑菌の増加抑制が十分で、スピルリナ及び/又はクロレラに特有の味と匂いを良好に減少させるとともに抗アレルギー作用を発揮させるため、培養開始時の乳酸菌の数の100〜1000倍に増加していることが好ましい。さらに、これらの増加した乳酸菌の数を維持して継続培養することが好ましい。
また、乳酸菌の増殖至適pHを維持するため、培養中に水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の塩基性化合物を添加してpHを調整してもよいが、乳酸菌が生成する乳酸等により、スピルリナ及び/又はクロレラと乳酸菌とを含有する培養液のpHが5.0付近まで低下していることが、夾雑菌を低下させるとともに抗アレルギー作用を発揮させるために好ましい。
【0022】
本発明においては、スピルリナ及び/又はクロレラと乳酸菌とを含有する培養液中に糖を加えておくことが、夾雑菌の生育を抑制することができ、また、スピルリナ及び/又はクロレラ特有の臭いと味をより減少させることができるので好ましい。この夾雑菌の生育の抑制効果は、スピルリナ及び/又はクロレラとして夾雑菌が繁殖しやすい乾燥藻体を用いた時に特に顕著である。
前記糖類としては、例えば、単糖類、オリゴ糖類、多糖類等が挙げられる。単糖類としては、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース等が挙げられる。オリゴ糖類としては、例えば、スクロース、マルトース等の二糖類やガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、ラフィノース等が挙げられる。多糖類としては、例えば、アミロース、アミロペクチン、セルロース、グリコーゲン、β−グルカン、ムコ多糖等が挙げられる。糖類としては、オリゴ糖が好ましく、中でも、ガラクトオリゴ糖が好ましい。
【0023】
糖類の添加方法には特に制限は無く、例えば、スピルリナ及び/又はクロレラと乳酸菌と糖類とを混合しても良いし、予め糖類を添加したスピルリナ及び/又はクロレラと乳酸菌とを混合しても良いし、予め糖類を添加した乳酸菌とスピルリナ及び/又はクロレラとを混合しても良い。また、糖類は固形のものを使用しても良いが、予め、水等に溶解して水溶液としたものを用いるのが好ましい。
糖類の使用量としては、スピルリナ及び/又はクロレラと乳酸菌とを含有する培養液と糖類の合計100質量部に対して0.5〜20質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましく、1.5〜10質量部が特に好ましい。
【0024】
かかる乳酸菌培養物の調製過程で生成する乳酸、酢酸等の有機酸類、バクテリオシン類等の抗菌作用により、他の夾雑細菌は減少し、乳酸菌が優越種となる。さらに乳酸菌の生成するアセトアルデヒド、ジアセチル等のフレーバー類により、スピルリナ、クロレラ特有の臭いと味が低下し、食品に利用し易い香味となる。
【0025】
上記で得られた乳酸菌培養物は、そのまま乳酸菌飲料、乳酸菌添加食品として使用することも出来る。
上記で得られた乳酸菌培養物は、培養前のスピルリナ、或いはクロレラ原末とは異なる成分組成を有する特徴がある。例えば、24時間培養後の培養物の遊離アミノ酸量に関しては、プロリン、システイン、バリン、ロイシン、イソロイシン、γ−アミノ酪酸(GABA)、リジン、ヒスチジン等が、培養前に比べて、藻体100gあたりの含有量が10倍以上となり、遊離アミノ酸総量も2倍以上に増加する特徴を有する。
また、分子量10,000の分離膜で処理を行った培養前の原末、並びに乳酸菌培養物の含有するタンパク質量を、タンパク質量の一般的な測定法であるBCA(Bicinchoninic Acid)法により測定した。その結果、例えば、藻体としてスピルリナ原末を用いた場合、分子量10,000以下の成分が、24時間培養後では、培養開始前に比べて約2倍に増加し、高分子量のタンパクが低分子化され、吸収性に優れた成分となっていることが判明した。本発明の抗アレルギー剤による抗アレルギー作用は、それを引き起こす活性成分は、ただ一つに特定されるものではなく、乳酸菌培養により、原末とは異なる成分組成となり、これらの成分が相まってもたらす効果と考えられる。
【0026】
本発明の抗アレルギー剤は、上記で得られた乳酸菌培養物を有効成分とするものである。本発明の抗アレルギー剤は、裸錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、腸溶錠、多層錠等の錠剤、顆粒剤、粉末剤、液剤等の形態に調製することができる。これらの形態への調製は、乳酸菌培養物を、形態に応じて常法に従い、懸濁、乾燥、粉砕、成型等を行えばよい。各形態への調製にあたっては、その形態に調製するために一般的に用いられる結着剤、界面活性剤、増粘剤、充填剤、崩壊剤、賦型剤等を用いることができる。また、かかる乳酸菌培養物をそのまま乳酸菌飲料、乳酸菌添加物とすることもできるし、乳酸菌培養物を他の食品に添加することもできる。
【0027】
例えば、乾燥処理を行う場合、通常、藻体の水分含有率が4〜7質量%になるように行うが、乳酸菌の菌数が保持できる処理が好ましい。好ましい乾燥方法としては、例えば、凍結乾燥法、噴霧乾燥法等が挙げられるが、経済的であることから、噴霧乾燥法がより好ましい。乾燥処理する際の乾燥温度は、排風温度が高温な程、生産効率は上がるが、スピルリナ、クロレラの品質が良好で、乳酸菌数も低下しないことから、品温が30〜70℃となる範囲で乾燥処理するのが好ましく、より好ましくは40〜60℃となる範囲である。尚、本発明において品温とは、乾燥後の試料温度をいうものとする。
【0028】
好ましい打錠法としては、例えば乳酸菌培養物にナタネ硬化油を0.1〜4.0質量%、微細シリカを0.1〜2.0質量%、ホタテ末を0.5〜5.0質量%、及び結晶セルロースを1.0〜40質量%加え、打錠圧0.5〜2.0トンで打錠する方法が挙げられる。
液剤にする場合は、例えば上記で得られた粉末を水に分散させてもよいし、培養の終了した乳酸菌培養物を、そのままあるいは水等で希釈して調製することができる。
【0029】
本発明の抗アレルギー剤の患者の摂取量は、患者の性別、年齢、症状等を考慮して決定することが好ましいが、一般的に、乳酸菌培養物換算で、0.2〜10g/日、特に0.5〜8g/日が好ましい。これらは、1度にまとめて摂取してもよいし、1日摂取量を数度に分けて摂取してもよい。
【0030】
次に、得られた乳酸菌培養物の抗アレルギー作用について説明する。
本発明者らは、本発明の培養物の抗アレルギー作用を明らかにするため、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用の測定を行った(試験例1)。ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸を加水分解する酵素であり、動物細胞に広く分布している。基質であるヒアルロン酸は、皮膚・関節液などの組織に多く存在するムコ多糖であり、皮膚細胞の水分保持や柔軟性の維持や、関節液として組織構造・機能維持等に重要な役割を果たしている。また、ヒアルロニダーゼ阻害剤は、ヒアルロニダーゼに起因する抗炎症・抗アレルギー剤にも利用できる。これは、ヒアルロニダーゼが炎症時に活性化され、結合組織のマトリックスを破壊し、炎症系への組織浸潤、血管の透過性の亢進により、I型アレルギーにおける肥満細胞のヒスタミン遊離の過程に介在している可能性が考えられている。ヒアルロニダーゼ阻害剤は、近年患者数が増加しつつあり、社会問題化しているアトピー性皮膚炎、花粉症、気管支喘息、食物アレルギー等のアレルギー性疾患の予防や改善効果が期待されている。そこで、本発明の乳酸菌培養を行ったスピルリナ、クロレラのヒアルロニダーゼ阻害活性の測定を行ったところ、乳酸菌培養前の藻体に比べ、60〜70%の増強が確認された。
【0031】
なお、乳酸菌培養物の安全性確認のため、マウスによる急性毒性を調べた。マウスは、生後5週令のddY−N系マウス(体重20〜26g)を雄、雌各10頭使用した。投与方法は、培養物を微粉砕し、CMC1%溶液に懸濁して胃ゾンデによる投与可能最高濃度10質量%懸濁液を1回、経口強制投与した。培養物を投与後、1週間観察した。雄、雌ともLD50は、6,000mg/kg以上であり、食品としての安全性が確認された。
【0032】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0033】
(スピルリナを用いた乳酸菌培養物の調製と乳酸菌数の測定)
2500L容量培養槽にガラクトオリゴ糖25kg、水道水825kgを仕込み、加熱殺菌後、スピルリナ原末100kgを仕込み、乳酸菌ペディオコッカス ペントサセウスの種培養液50kgを接種した。37℃、72時間、通気プロペラ撹拌して乳酸菌を培養した。培養時間0、9、12、15、18、24、48、及び72時間に培養液をサンプリングし、乳酸菌数を測定した。サンプリングした培養液の一部は、噴霧乾燥して乾燥物を得、熱水にて抽出を行った。乳酸菌測定は、以下の手順で行った。乳酸菌培養液1.0mlをリン酸緩衝生理食塩水19mlに懸濁し懸濁液を調整した。懸濁液をさらにリン酸緩衝生理食塩水により、10倍、10倍、10倍、10倍、10倍、10倍、及び10倍になるように希釈して試料希釈液を得た。1000mlのMRS培地(メルク社製 Cat.No.10661)に15gの寒天を添加して作製したMRS寒天培地に、0.1mlの希釈液を塗沫し、35℃、48時間培養した。乳酸菌のコロニーが30〜300個確認できた寒天培地を用い、該寒天培地のコロニー数を測定し、この数に希釈倍率を掛けて得られた数を乳酸菌のコロニー数とした。各培養時間の乳酸菌数を表1に示す。
【0034】
【表1】

【実施例2】
【0035】
実施例1において、スピルリナの代わりにクロレラを用いた以外は、実施例1と同様にして乳酸菌培養物を調製し、乳酸菌数を測定した。各培養時間の乳酸菌数を表1に示す。
【0036】
(試験例1)
(抗アレルギー作用の確認)
上記で得られた乳酸菌培養物の抗アレルギー作用を明らかにするため、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用を測定した。
(試薬の調整)
酢酸緩衝液の調整:0.1mol/L酢酸溶液:酢酸3.0025gを蒸留水にて500mLに定容した。
0.1mol/L酢酸ナトリウム溶液:酢酸ナトリウム1.2305gを蒸留水にて150mLに定容した。
次いで、0.1mol/L酢酸溶液に0.1mol/L酢酸ナトリウム溶液を徐々に加えpH4.0に調整した。
ヒアルロニダーゼ酵素の調整:ヒアルロニダーゼ(シグマ社、IV-S型、牛睾丸由来)279mgに0.1mol/L酢酸緩衝液(pH4.0)5mLを添加し溶解した。溶解後、マイクロチューブに500μL分注し冷凍保存した(最終濃度が400unit/mLになるように調整した)。
酵素活性剤:Compound48/80(シグマ社)50mgに0.1mol/L酢酸緩衝液(pH4.0)50mLを添加し、溶解した。溶解した酵素活性剤をマイクロチューブに100μL分注し、使用時に900μL分注し使用した。
ヒアルロン酸カルシウム溶液:ヒアルロン酸カルシウム溶液100mgに0.1mol/L酢酸緩衝液(pH4.0)にて16.89mLに定容する(最終濃度が0.4mL/mLになるように調整した)。
【0037】
0.4mol/L水酸化ナトリウム溶液:水酸化ナトリウム8gを蒸留水にて500mLに定容した。
1mol/L水酸化ナトリウム溶液:水酸化ナトリウム20gを蒸留水にて500mLに定容した。
ホウ酸溶液(pH9.1):ホウ酸24.75gに蒸留水250mLを加え、1mol/L水酸化ナトリウム溶液にてpH9.1に調整後、500mLに定容した。
発色試薬:p−ジメチルアミノベンズアルデヒド(p−DAB)10gを10mol/L塩酸、酢酸87.5mLにて溶解した。使用時に10倍希釈して使用した。
【0038】
(測定方法)
以下の対象液(A)、対象液ブランク(B)、試験物質(C)、及び試験物質ブランク(D)を図1に示すように順次調整を行い、最後にそれぞれの紫外吸収度測定を行った。なお、試験物質は、スピルリナ原末、クロレラ原末、スピルリナ乳酸菌培養物、クロレラ乳酸菌培養物の熱水抽出物を使用し、100mg/mLとなる濃度で試験を行った。
阻害率の算出は以下の式に従って算出した。
阻害率(%)={(A−B)−(C−D)/(A−B)}×100。
各試験物質の阻害率を表2に示す。乳酸菌培養物抽出液については、阻害率の測定値を各々相当する原末に換算して評価した。
【0039】
【表2】

【0040】
本実施例より、スピルリナ乳酸菌培養物、及びクロレラ乳酸菌培養物は、各々相当する培養前のスピルリナ原末、及びクロレラ原末に比較して、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用が増強され、抗アレルギー作用が増強されたことが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、医薬品産業等の分野で利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】紫外吸収度測定のための、対象液(A)、対象液ブランク(B)、試験物質(C)、及び試験物質ブランク(D)の調整手順を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピルリナ及び/又はクロレラと乳酸菌とを含有する培養液中で、乳酸菌を培養して得られる乳酸菌培養物を有効成分とする抗アレルギー剤。
【請求項2】
スピルリナ及び/又はクロレラが、スピルリナである請求項1記載の抗アレルギー剤。
【請求項3】
スピルリナ及び/又はクロレラが、クロレラである請求項1記載の抗アレルギー剤。
【請求項4】
乳酸菌が、ペディオコッカス属(Pediococcus)に属する乳酸菌である請求項1〜3のいずれか1項記載の抗アレルギー剤。
【請求項5】
乳酸菌が、エンテロコッカス属(Enterococcus)に属する乳酸菌である請求項1〜3のいずれか1項記載の抗アレルギー剤。
【請求項6】
乳酸菌の培養を、10〜100時間行うものである請求項1〜5のいずれか1項記載の抗アレルギー剤。
【請求項7】
乳酸菌の培養開始時の乳酸菌数が、固形分換算スピルリナ及び/又はクロレラ1gあたり1×10〜1011個であり、乳酸菌が培養開始時の乳酸菌数の100〜1000倍になるまで、培養を継続するものである請求項1〜6記載の抗アレルギー剤。
【請求項8】
培養液が、糖類をさらに含有するものである請求項1〜7のいずれか1項記載の抗アレルギー剤。
【請求項9】
アレルギーが、アトピー性皮膚炎、花粉症、気管支喘息又は食物アレルギーである請求項1〜8のいずれか1項記載の抗アレルギー剤。


【図1】
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【公開番号】特開2006−298779(P2006−298779A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118834(P2005−118834)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(397040993)金秀バイオ株式会社 (11)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】