説明

乳酸菌発酵食品素材及びその製法

【課題】野菜類を、例えば手軽に摂取できるピューレ状食品用素材としたうえ、味覚を改善しフルーツ風味で常用喫食するに優れた味覚となる、アイスクリーム、ヨーグルト、ジャム、ピューレなどの食品に加工できる乳酸菌発酵食品素材及びその製法を提供すること。
【解決手段】炭水化物を8重量%以上含む野菜の破砕物、磨砕物を、少なくともペディオコッカス属菌とエンテロコッカス属菌との組み合わせからなる乳酸菌で発酵させた乳酸菌発酵食品用素材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は乳酸菌発酵食品素材及びその製法に係り、より詳しくは炭水化物を8重量%以上含む野菜類の破砕物、磨砕物を、少なくともペディオコッカス属菌とエンテロコッカス属菌との組み合わせからなる乳酸菌で発酵させて野菜類をフルーツ風味に処理し例えばピューレ状食品用素材としたうえアイスクリーム、ヨーグルト、ジャム、ピューレなどの食品に加工できる乳酸菌発酵食品素材及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に乳酸菌は、発酵乳、乳酸菌飲料、チーズ、漬物等の食品の保存性改善作用、風味改善作用に応用されている。
乳酸菌は、植物由来、動物由来等の種々の菌種が存在する。発酵食品に使用する乳酸菌としては、目的とする食品の風味や味覚により、用いる乳酸菌の種類を変更採用することによって、異なる風味、所望の製品の香味とする良い種類や組み合わせが検討され提案されている。
【0003】
一方、豆類、イモ類、根茎などの穀物野菜類、根菜類野菜類は加熱が必要であるなど調理に手間がかかる。野菜類の種類によれば匂いが青臭い、あるいは全般に味覚に嗜好が強く好き嫌いが大きいなどの問題があるがこれら一般に野菜類はビタミン類、食物繊維、ミネラルなど多くの栄養素が多く含まれて健康的に常用的に喫食することが望まれている。
そこで野菜類の風味改善に乳酸菌発酵処理をすることが提案されている。
特に、子供や老人に常食として喫食しやすい風味や味覚を持ったフルーツ風味を持った食品形態とすることが望まれている。
【0004】
例えば、ラクトバチルス・ブレビス(特公昭58−15109号)は野菜類ミックスジュースの加熱臭の除去と、ジアセチルを産生しない点に重きを置いた飲食品の調製、ラクトバチルス・カゼイ(特開平3−292869号)は酢酸様のにおいを生じさせない発酵食品の調製、ラクトバチルス・ブルガリクスとストレプトコッカス・サーモフィルスとの組み合わせにより(特開昭60−248131号)脱脂粉乳のような動物または植物性乳製品を加えて発酵させて発酵速度を速めるための乳酸菌発酵食品の製法が提案されている。
【0005】
また、エンテロコッカス属菌及び必要に応じこれにラクトバチルス属菌を組み合わせ(特許第3124670号)焦げ臭や酸臭を改善して緑黄色野菜類を摂食できる技術も開示されている。
しかしながら、いまだ野菜類をフルーツのような風味として子供や老人が嗜好的且つ常用的に好適に食する食品素材は完成されておらず提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭58−15109号公報
【特許文献2】特開平3−292869号公報
【特許文献3】特開昭60−248131号公報
【特許文献4】特許第3124670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような事情に鑑み、本発明者らは、野菜類などを手軽に摂取できるピューレ状食品用素材とすると同時に、味覚を改善しフルーツ風味で常用喫食するに優れた味覚となる、望ましい野菜類の食品用素材加工食品の提供について鋭意検討した結果、ペディオコッカス属菌とエンテロコッカス属菌との組み合わせからなる乳酸菌で炭水化物を8重量%以上含む野菜類を発酵させることが、風味改善なかんずくフルーツ風味として甘味に優れた食品用素材加工食品を提供することに極めて有効であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1にかかる発明は、炭水化物を8重量%以上含む野菜の破砕物、磨砕物を、少なくともペディオコッカス属菌とエンテロコッカス属菌との組み合わせからなる乳酸菌で発酵させた乳酸菌発酵食品素材に関する。
【0009】
請求項2にかかる発明は、ペディオコッカス属菌がペディオコッカス・ペントサシュース及び/又はペディオコッカス・アシドラクティーである請求項1記載の乳酸菌発酵食品素材に関する。
【0010】
請求項3にかかる発明は、エンテロコッカス属菌がエンテロコッカス・フェシーム及び/又はエンテロコッカス・フェカーリスである請求項1又は2記載の乳酸菌発酵食品素材に関する。
【0011】
請求項4にかかる発明は、前記乳酸菌がロイコノストック・メセンテロイデスを含むことを特徴とする請求項1乃至3記載の乳酸菌発酵食品素材に関する。
【0012】
請求項5にかかる発明は、炭水化物を8重量%以上含む野菜が人参、小豆、大豆、ニンニク、とうもろこし、サツマイモ、かぼちゃ、ジャガイモ、サトイモ、枝豆、ソラマメ、ゴマ、ハス、栗などの野菜から少なくとも一種選択されてなる野菜であることを特徴とする請求項1乃至4記載の乳酸菌発酵食品素材に関する。
【0013】
請求項6にかかる発明は、炭水化物を8重量%以上含む野菜を必要に応じて剥皮し蒸煮し、この蒸煮物を破砕または磨砕して加水しゼリー状とし、このゼリー状物に少なくともペディオコッカス属菌とエンテロコッカス属菌との組み合わせからなる乳酸菌を加え加温しながら乳酸菌発酵させ、必要に応じ加熱処理することからなる乳酸菌発酵食品素材の製法に関する。
【0014】
請求項7にかかる発明は、ペディオコッカス属菌がペディオコッカス・ペントサシュース及び/又はペディオコッカス・アシドラクティーである請求項6記載の乳酸菌発酵食品素材の製法に関する。
【0015】
請求項8にかかる発明は、エンテロコッカス属菌がエンテロコッカス・フェシーム及び/又はエンテロコッカス・フェカーリスである請求項6記載の乳酸菌発酵食品素材の製法に関する。
【0016】
請求項9にかかる発明は、前記乳酸菌がロイコノストック・メセンテロイデスを含むことを特徴とする請求項6記載の乳酸菌発酵食品素材の製法に関する。
【0017】
請求項10にかかる発明は、炭水化物を8重量%以上含む野菜が人参、小豆、大豆、ニンニク、とうもろこし、サツマイモ、かぼちゃ、ジャガイモ、サトイモ、枝豆、ソラマメ、ゴマ、ハス、栗などの野菜から少なくとも一種選択されてなる野菜であることを特徴とする請求項6記載の乳酸菌発酵食品素材の製法に関する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1にかかるこの発明は、炭水化物を8重量%以上含む野菜類の破砕物、磨砕物を少なくともペディオコッカス属菌とエンテロコッカス属菌との組み合わせからなる乳酸菌で発酵させた乳酸菌発酵食品素材であるから、炭水化物を8重量%以上含む野菜類を風味に優れた乳酸菌発酵食品素材とすることができる効果を奏する。
【0019】
請求項2にかかる発明は、ペディオコッカス属菌がペディオコッカス・ペントサシュース及び/又はペディオコッカス・アシドラクティーである請求項1記載の乳酸菌発酵食品素材であるから、耐塩性が高くまた発酵食品が炭酸ガスを発生せずしかも生育温度が高く且つ適応pH値が広く従っていろいろな種類の野菜類を乳酸菌発酵食品素材とすることができる効果を奏する。
【0020】
請求項3にかかる発明は、エンテロコッカス属菌がエンテロコッカス・フェシーム及び/又はエンテロコッカス・フェカーリスである請求項1又は2記載の乳酸菌発酵食品素材であるから、エンテロコッカス属菌が元来人の体内即ち腸内乳酸菌であることより、この乳酸菌発酵食品素材を喫食すると整腸作用など人体に有効であるという効果、及び種々の野菜類をフルーツ風味及びコクのある風味を有する乳酸菌発酵食品素材とすることができる効果を奏する。
【0021】
請求項4にかかる発明は、前記乳酸菌がロイコノストック・メセンテロイデスを含むことを特徴とする請求項1乃至3記載の乳酸菌発酵食品素材であるから、種々の野菜類をフルーツ風味及びコクのある風味がより増した乳酸菌発酵食品素材とすることができる効果を奏する。
【0022】
請求項5にかかる発明は、炭水化物を8重量%以上含む野菜が人参、小豆、大豆、ニンニク、とうもろこし、サツマイモ、かぼちゃ、ジャガイモ、サトイモ、枝豆、ソラマメ、ゴマ、ハス、栗などの野菜から少なくとも一種選択されてなる野菜であることを特徴とする請求項1乃至4記載の乳酸菌発酵食品素材であるから、加熱などの処理を要せずまた糖分を過剰に加えずに、種々の野菜類を風味改善してフルーツ風味を有する乳酸菌発酵食品素材とすることができる効果を奏する。
【0023】
請求項6にかかる発明は、炭水化物を8重量%以上含む野菜を必要に応じて剥皮し蒸煮し、この蒸煮物を破砕または磨砕して加水しゼリー状とし、このゼリー状物に少なくともペディオコッカス属菌とエンテロコッカス属菌との組み合わせからなる乳酸菌を加え加温しながら乳酸菌発酵させ、必要に応じ加熱処理することからなる乳酸菌発酵食品素材の製法であるから、炭水化物を8重量%以上含む野菜類を風味に優れた乳酸菌発酵食品素材として製造できる効果を奏する。
【0024】
請求項7にかかる発明は、ペディオコッカス属菌がペディオコッカス・ペントサシュース及び/又はペディオコッカス・アシドラクティーである請求項6記載の乳酸菌発酵食品素材の製法であるから、耐塩性が高くまた発酵食品が炭酸ガスを発生せずしかも生育温度が高く且つ適応pH値が広く従っていろいろな種類の野菜類を乳酸菌発酵食品素材として製造できる効果を奏する。
【0025】
請求項8にかかる発明は、エンテロコッカス属菌がエンテロコッカス・フェシーム及び/又はエンテロコッカス・フェカーリスである請求項6記載の乳酸菌発酵食品素材の製法であるから、エンテロコッカス属菌が元来人の体内即ち腸内乳酸菌であることより、喫食すると整腸作用など人体に有効である乳酸菌発酵食品素材を製造できる効果、及び種々の野菜類をフルーツ風味及びコクのある風味を有する乳酸菌発酵食品素材とすることができる効果を奏する。
【0026】
請求項9にかかる発明は、前記乳酸菌がロイコノストック・メセンテロイデスを含むことを特徴とする請求項6記載の乳酸菌発酵食品素材の製法であるから、種々の野菜類をフルーツ風味及びコクのある風味がより増した乳酸菌発酵食品素材として製造できる効果を奏する。
【0027】
請求項10にかかる発明は、炭水化物を8重量%以上含む野菜が人参、小豆、大豆、ニンニク、とうもろこし、サツマイモ、かぼちゃ、ジャガイモ、サトイモ、枝豆、ソラマメ、ゴマ、ハス、栗などの野菜から少なくとも一種選択されてなる野菜であることを特徴とする請求項6記載の乳酸菌発酵食品素材の製法であるから、加熱などの処理を要せずまた糖分を過剰に加えずに、種々の野菜類を風味改善してフルーツ風味を有する乳酸菌発酵食品素材として製造することができる効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る乳酸菌発酵食品素材及びその製法の実施例について詳細に説明する。
この発明で使用する炭水化物を8重量%以上含む野菜類とは、原料野菜類中の栄養成分として炭水化物を8重量%以上含んでいれば良く、例えば生であれば人参、小豆、大豆、ニンニク、とうもろこし、サツマイモ、かぼちゃ、ジャガイモ、サトイモ、枝豆、ソラマメ、ゴマ、ハス、栗などの野菜類、果実、種子などを挙げることができ、これらの野菜類からから少なくとも一種選択して使用すればよい。この発明においては、例えば、生の状態なら炭水化物が8重量%以下の野菜類でも、乾燥物あるいは漬物とした野菜類で炭水化物8重量%以上含むものも採用できる。この発明において、原料とする野菜類を炭水化物を8重量%以上含有する野菜類とする理由は、乳酸菌発酵に際して糖類の添加量をできるだけ減少させて摂食者の糖分摂取過多を防止するためである。
この発明においては係る特定の野菜類を原料とすることにより、砂糖などの糖類の添加量が、定法では15〜25%であるのに比べ、5〜15%とすることができる。
【0029】
この発明においては、これら野菜類を常法に従って、生のものを洗浄後、必要に応じて剥皮し、適宜のサイズに切断、スライス等処理をし、その後蒸煮する。蒸煮時間は野菜類などの種類、蒸気温度、圧力などによって異なるが、例えばカボチャを1気圧、100℃で蒸煮する場合は15分から30分程度処理するのが望ましい。
【0030】
この発明においては、蒸煮後の野菜類を、野菜類と同量程度80〜100%の重量の水分を加えながらあるいは破砕、摩砕し、または処理後加えゼリー状とする。破砕、摩砕工程はクラッシャー、ミキサー、マスコロイダー、パルパーフィニシャーなどを用いて行う。加えて遠心分離、フィルタープレス等で搾汁して使用してもよく、搾汁を減圧濃縮などの公知の方法で濃縮して使用してもよい。発酵工程時に加水してゼリー状としても良い。
尚、これらは微生物汚染や成分の変質を受けやすいため、冷凍保存するのが好ましい。
野菜類のゼリーに濃縮物を混合して用いる場合は、これらの処理前に混合しても、また、処理後に混合してもよく、発酵の際に混合することもできる。
【0031】
このゼリー状の破砕物、磨砕物に、糖を5〜15%加え、少なくともペディオコッカス属菌とエンテロコッカス属菌との組み合わせからなる乳酸菌を植え付け発酵させる。
スターターとなる乳酸菌は、それぞれ酵母エキス、ペプトン等を添加した10〜15%還元脱脂乳培地等の公知の培地を用いて常法どおりに培養し、スターターを調製する。
発酵は、例えば、スターターをゼリー状の野菜類に対し0.1〜2.0重量%接種して行えばよい。
【0032】
この発明においては、乳酸菌発酵食品素材の発酵条件は、攪拌しながら菌を植え付け次いで15〜40℃で36〜72時間望ましくは48時間程度静置させて行う。
【0033】
この発明で使用するペディオコッカス属菌は、耐塩性が高くまた発酵食品が炭酸ガスを発生せずしかも生育温度が高く且つ適応pH値が広いものである。従っていろいろな種類の野菜類を乳酸菌発酵食品素材としたときに保存性が高くしかも風味に優れる。
【0034】
この発明においては、ペディオコッカス属菌のうちペディオコッカス・ペントサシュース及び/又はペディオコッカス・アシドラクティーを使用するのが好ましい。その理由は、ペディオコッカス属菌の中でも特に耐塩性が高くまた発酵食品が炭酸ガスを発生せずしかも生育温度が高く且つ適応pH値が広いからであり、従っていろいろな種類の野菜類を乳酸菌発酵食品素材とすることができる効果を奏する。
【0035】
この発明で使用するエンテロコッカス属に属する細菌は、人の腸内に常在しているグラム陽性球菌である。このエンテロコッカス属に属する乳酸菌は、6.5%塩化ナトリウムを含む液体培地、pH9.6の液体培地で増殖開始できる点で、他のストレプトコッカス属菌やラクトコッカス属菌と区別され、現在ストレプトコッカスとは独立した属として分類されている。エンテロコッカス・フェカーリスは整腸作用があるため、その凍結乾燥物は整腸剤として広く販売されている。
この発明において、エンテロコッカス・フェカーリス、エンテロコッカス・フェシームは野菜類の発酵風味を改善しフルーツ風味及びコクのある風味をつくり好ましい。
【0036】
この発明において乳酸菌としてはペディオコッカス属菌とエンテロコッカス属菌の組み合わせにロイコノストック・メセンテロイデスを組み合わせる。
ロイコノストック・メセンテロイデスは糖やたんぱく質を分解してうまみ、コクのある風味及びフルーツ風味を出す効果を奏する。
【0037】
この発明において発酵温度は30〜40℃、好ましくは35〜38℃で行うのが望ましい。発酵時間は豆類、イモ類などの野菜類の種類により勘案すればよく、通常12〜36時間で、pH値、生成した乳酸菌量を目安に、所望の最終製品に適した発酵の終点を定め決定する。
【0038】
この発明において発酵の終点は発酵物がpH4.0〜4.5、生菌数が10となった段階で発酵終点とするのが好ましい。発酵物の性状はクリーム状あるいはピューレ状の乳酸菌発酵食品素材となる。この終点後必要に応じて130℃、3分間程度の加熱処理により殺菌し、ソフトタイプとし加工食品の素材とする。最終食品としては、例えば濃縮、希釈などを経てあるいはそのままでヨーグルト、ジャム、ピューレなどの調味料とすることができる。添加物をできるだけ加えないことがこの発明においては望ましいが、場合によっては従来公知の賦形剤、増量剤、着色剤、防腐剤などの添加物を加えても良い。
この発明においては乳酸発酵食品素材の最終物に対し加熱処理を行わない場合には冷凍し生菌の活動を停止させるのが望ましい。
この冷凍食品はハードタイプとなり生菌のまま人体に喫食されるので整腸作用が好ましく発揮できるため、アイスクリーム食品などの冷果に加工するのが望ましい。
【0039】
得られた本発明の乳酸菌発酵食品素材は、そのまま飲食用に供することもでき、また、常法に従い、各種の飲食品、例えばヨーグルト、ピューレ、ゼリー、パン用のスプレッド類、調味料、アイスクリームとすることができる。
【0040】
(実施例)
以下、実施例および比較例の試験を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。「%」は重量%を意味する。
実験例及び比較例:以下に示す種々の炭水化物8%以上と以下の野菜類について、種々の乳酸菌を用いて発酵試験を行った。
【0041】
(1)ジャガイモ(炭水化物16.9%)、サツマイモ(炭水化物31.53%)、とうもろこし(炭水化物16.83%)、にんにく(炭水化物26.3%)、ソラマメ(炭水化物 55.93%)、小豆(炭水化物58.73%)、かぼちゃ(炭水化物10.93%)、にんじん(炭水化物9.13%)、栗(炭水化物36.9%)、サトイモ(炭水化物13.1%)の炭水化物8%以上の野菜類と、ブロッコリー(炭水化物5.1%)を炭水化物8%以下の比較例にかかる野菜類として試験した。
【0042】
(2)野菜類を100℃で20分間蒸煮し、家庭用ミキサーで粉砕し等量の水を加えクリーム状にした。
このクリーム状のものに10%の砂糖又は果糖を加え、下記表に示す乳酸菌を0.3%攪拌しながら添加した。発酵温度28℃で36時間乃至48時間培養した。pH4.0付近を終点として、発酵を終了した。終了時にpH値、香り、風味、味を試験した。
【0043】
(味覚試験)
味覚試験は官能評価で行った。10名に喫食させ味覚を5段階官能評価で行い、そのトータルスコアで表した。
5:非常に良い、4:良い、3:普通、2:悪い、1:非常に悪い
以下結果をまとめて表1、表2に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
以上の結果から明らかなように、炭水化物を8重量%以上含む野菜類の破砕物、磨砕物を少なくともペディオコッカス属菌とエンテロコッカス属菌との組み合わせ更にはロイコノストック・メセンテロイデスを組み合わせて発酵させた乳酸菌発酵食品素材は、いずれも野菜類でありながら味覚、風味、香りに優れフルーツ風味の食品素材となる効果を奏している。これに比して、炭水化物を8重量%以下の野菜類例えばブロッコリーは、食品素材として劣ることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、炭水化物を8重量%以上含む野菜類の破砕物、磨砕物を、少なくともペディオコッカス属菌とエンテロコッカス属菌との組み合わせからなる乳酸菌で発酵させて野菜類をフルーツ風味に処理し例えばピューレ状食品用素材としたうえアイスクリーム、ヨーグルト、ジャム、ピューレなどの食品に加工できる乳酸菌発酵食品素材及びその製法として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭水化物を8重量%以上含む野菜の破砕物、磨砕物を、少なくともペディオコッカス属菌とエンテロコッカス属菌との組み合わせからなる乳酸菌で発酵させた乳酸菌発酵食品素材。
【請求項2】
ペディオコッカス属菌がペディオコッカス・ペントサシュース及び/又はペディオコッカス・アシドラクティーである請求項1記載の乳酸菌発酵食品素材。
【請求項3】
エンテロコッカス属菌がエンテロコッカス・フェシーム及び/又はエンテロコッカス・フェカーリスである請求項1又は2記載の乳酸菌発酵食品素材。
【請求項4】
前記乳酸菌がロイコノストック・メセンテロイデスを含むことを特徴とする請求項1乃至3記載の乳酸菌発酵食品素材。
【請求項5】
炭水化物を8重量%以上含む野菜が人参、小豆、大豆、ニンニク、とうもろこし、サツマイモ、かぼちゃ、ジャガイモ、サトイモ、枝豆、ソラマメ、ゴマ、ハス、栗などの野菜から少なくとも一種選択されてなる野菜であることを特徴とする請求項1乃至4記載の乳酸菌発酵食品素材。
【請求項6】
炭水化物を8重量%以上含む野菜を必要に応じて剥皮し蒸煮し、この蒸煮物を破砕または磨砕して加水しゼリー状とし、このゼリー状物に少なくともペディオコッカス属菌とエンテロコッカス属菌との組み合わせからなる乳酸菌を加え加温しながら乳酸菌発酵させ、必要に応じ加熱処理することからなる乳酸菌発酵食品素材の製法。
【請求項7】
ペディオコッカス属菌がペディオコッカス・ペントサシュース及び/又はペディオコッカス・アシドラクティーである請求項6記載の乳酸菌発酵食品素材の製法。
【請求項8】
エンテロコッカス属菌がエンテロコッカス・フェシーム及び/又はエンテロコッカス・フェカーリスである請求項6記載の乳酸菌発酵食品素材の製法。
【請求項9】
前記乳酸菌がロイコノストック・メセンテロイデスを含むことを特徴とする請求項6記載の乳酸菌発酵食品素材の製法。
【請求項10】
炭水化物を8重量%以上含む野菜が人参、小豆、大豆、ニンニク、とうもろこし、サツマイモ、かぼちゃ、ジャガイモ、サトイモ、枝豆、ソラマメ、ゴマ、ハス、栗などの野菜から少なくとも一種選択されてなる野菜であることを特徴とする請求項6記載の乳酸菌発酵食品素材の製法。