説明

乾海苔製造装置及び乾海苔

【課題】保水袋の内面の汚れを汚染除去部材で確実に除去することにより保菌数が少ない衛生状態が良好な乾海苔を製造可能とするとともに、真水等の洗浄水を用いることなく、また、製造ラインを長時間中断する必要がない乾海苔製造装置を提供する。
【解決手段】乾海苔製造装置の抄き部11に設けられた保水袋22の内面に接触しながら回転又は上下動する汚染除去部材1を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾海苔製造装置に関し、特に、抄き部の保水袋の汚れを除去する汚染除去部材を備えた乾海苔製造装置及び当該乾海苔製造装置により製造された乾海苔に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乾海苔製造装置を図6により説明する。
乾海苔製造装置は、簀16に液状の海苔を供給し、吸水機構を有する抄き部11と、海苔の水分を脱水する脱水部12と、海苔を乾燥させる乾燥部13と、乾燥した海苔を簀から剥離する剥離部14とより構成されている。簀16は、無端ベルト15により搬送される。
【0003】
シート状の乾海苔は、材料の生海苔を簀に供給する抄き工程、脱水工程、乾燥工程、剥離工程を順次実施することにより製造される。
【0004】
図7は、従来の乾海苔製造装置における抄き部11の断面図であり、(a)は保水袋22の底部が上昇位置にある状態を示し、(b)は保水袋22の底部が下降位置にある状態を示している。図8は、図7(b)のA−A断面図である。
【0005】
抄き部11は、簀枠17に保持される簀16の上方に、簀16の上面に海苔調合液を供給する供給孔18が設けられている抄き箱19と、4角形の抄き枠20と、無端ベルトにより搬送された簀が上部に載置されるスノコ21と、内部に保水袋22等からなる給水機構を有する保水枠23とを備えている。
【0006】
スノコ21には海苔調合液を吸引脱水するための脱水孔21aが設けられている。可撓性の保水袋22は、底部に取り付けられた板状部材22aを介して底部中央の上下移動機構24により上下動自在に構成されている。また、図8に示すように、保水袋22の底部には排水孔26aとそれを開閉する板状の開閉弁26が設けられている。開閉弁26は上下移動機構24によって所定角度回転し、排水孔26aを開閉する。
【0007】
上記のように構成された乾海苔製造装置において、無端ベルト15により抄き部11に簀16が搬送され、抄き部11に間欠停止されている間に抄き枠20が下降し簀16に当接する。次に、簀16上に一定量の海苔調合液が供給孔18から供給される。そのとき保水袋22の底部は上下移動機構24により上昇位置にあり、保水袋22内の水面は簀16の上方に位置している(図7(a))。
【0008】
その後、保水袋22の底部は上下移動機構24によって下方に移動することによって保水袋内の水面も下降する。それにともない簀16上の生海苔25から水分が強制的に除去され、生海苔25を簀16上に展着させる。次に、開閉弁26を回転させて排水孔26aを開とし、保水袋内の水は排水される(図7(b))。
【0009】
ところで、抄き部11を長期にわたって繰り返し使用すると、抄き部11が生海苔の屑や水垢等により汚染されたり、汚染物によってスノコが目詰まりを引き起こす場合がある。そのため、従来から、抄き部に洗浄装置を取り付け、定期的又は汚染度に応じて抄き部の洗浄を行っていた。
【0010】
その例として、スノコを取り外し自在として、抄き部を洗浄する技術(特許文献1)、スノコと保水袋を真水等の洗浄水で噴射することにより洗浄する技術(特許文献2)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実用新案登録第2589774号公報
【特許文献2】特許第4324505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した従来の洗浄装置において、スノコと保水袋を洗浄水で噴射することにより抄き部の洗浄を行う技術が提案されている。しかしながら、このような洗浄装置を用いても、製造された乾海苔の菌汚染度は高く、本発明者等はこの原因が主に保水袋の汚れに原因があることを突き止めた。すなわち、保水袋は長期にわたる使用によって、汚染物が保水袋内面に強固に付着し、洗浄水による噴射洗浄等ではこの汚れを除去することができないことを新たに知見した。
【0013】
また、洗浄水による洗浄では、多量の洗浄水を使用することになるとともに、別途洗浄水タンク及び給水装置が必要となり、装置の大型化、水の大量使用による高コスト化を招くという課題があった。
【0014】
さらに、上述した従来の洗浄装置は、洗浄のために乾海苔製造ラインを長時間中断する必要があり、乾海苔の製造効率が下がるという課題があった。
【0015】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、保水袋の汚れを確実に除去することにより製造された乾海苔の菌汚染を大幅に改善するとともに、真水等の洗浄水を用いることなく、さらに乾海苔製造ラインを長時間中断する必要がない乾海苔製造装置及び当該乾海苔製造装置によって製造された菌汚染の少ない乾海苔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の乾海苔製造装置は、乾海苔製造装置の抄き部に設けられた保水袋の内面に接触しながら回転又は上下動する汚染除去部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、保水袋内面の汚れを汚染除去部材で確実に除去することにより、製造された乾海苔の菌汚染を大幅に改善することができるとともに、節水効果及び製造効率が高い乾海苔製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態1に係る乾海苔製造装置における汚染除去部材を有する抄き部の断面図。
【図2】汚染除去部材の変形例を示す断面図。
【図3】保水袋の変形例を示す断面図。
【図4】(a)は図3のA−A断面図、(b)は図3のB−B断面図。
【図5】本発明の実施形態2に係る汚染除去部材の断面図。
【図6】従来の乾海苔製造装置の概略構成図。
【図7】従来の乾海苔製造装置における抄き部の断面図、(a)は保水袋の底部が上昇位置にある状態図で、(b)は保水袋の底部が下降位置にある状態図。
【図8】図7(b)のA−A断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明するが、従来の乾海苔製造装置の抄き部と共通する個所には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0020】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る乾海苔製造装置における汚染除去部材を有する抄き部の断面図である。
本実施形態1に係る抄き部11において、保水袋22の底部の上下移動機構24及び開閉弁26については、従来の装置と同様である。
【0021】
本実施形態1の乾海苔製造装置は、保水袋22の内部に設けられた駆動軸2によって、保水袋22の内面に接触しながら回転又は上下動し、保水袋22の内面の汚れを除去する汚染除去部材1を備えている。駆動軸2は、上下動移動機構24と同軸又は平行に設けられ、図示しない駆動装置によって汚染除去部材1を回転駆動又は上下に駆動する。
【0022】
汚染除去部材1は、例えば弾性を有する樹脂又は硬質ゴムからなるスクレーパ(図1、図3)、図2に示すようなブラシ、又はスポンジ、メッシュ等が用いられる。スポンジ又はメッシュを用いる場合は、図2に示す汚染除去部材1のブラシ毛の代わりにスポンジ又はメッシュが付設される。なお、汚染除去部材1はこれに限定されず、面接触による摩擦で汚れを除去する汚染除去部材等を用いてもよい。
【0023】
また、汚染除去部材1の材質としては、弾性を有する樹脂又は硬質ゴム(スクレーパ)、動物繊維又は樹脂毛材(ブラシ)、金属又は樹脂メッシュ(メッシュ)、メラミン、ポリエステ又はPVA等の樹脂(スポンジ)等が用いられるが、これに限定されず、他の公知の材料を用いてもよいことはもちろんである。
【0024】
次に、汚染除去部材1の洗浄動作を説明する。海苔調合液が供給孔18から簀16に供給され、その後、保水袋22は底部が下降したとき、保水袋22内には抄き水が保持されている。保水袋22に抄き水が入っている間に、汚染除去部材1を駆動軸2によって回転させ、保水袋22の底部と側部の内面に接して生海苔の屑や水垢等の汚れを除去する。また、駆動軸2を上下動させることにより汚染除去部材1を高さの異なる位置で回転させ、保水袋22内面全体の汚れを除去する。なお、汚染除去部材1は、回転しながら上下動することもできる。
【0025】
さらに、汚染除去部材1が最上部に位置するときは、汚染除去部材1の上部がスノコ21の下面に接触するように調整し、汚れが付着しているスノコ21の下面を洗浄するようにしてもよい。
【0026】
汚染の除去が終了した後、開閉弁26を作動させ、抄き水と共に汚染物を排出する。この洗浄動作は、原則、海苔を抄く動作ごとに行われるが、定期的に又は汚染度に応じて適宜実施してもよい。
【0027】
また、実施形態1では、保水袋22に抄き水を保持した状態で汚染除去部材1を回転・上下動させ洗浄動作を行っているが、洗浄動作と抄き水の排出を同時に行ってもよい。これにより乾海苔製造ラインを中断することなく保水袋を洗浄することができる。
【0028】
上記実施形態1の汚染除去部材1を用いた効果確認試験結果を表1に示す。
【表1】

【0029】
表1によれば、本実施形態1の汚染除去部材1を用いた場合、乾海苔の汚染度を示す菌数(CFU/g)が大幅に減少したことが確認された。これにより、保菌数の少ない衛生状態の良い乾海苔を製造すること可能となることが確認された。
【0030】
なお、上記実施形態1では、汚染除去部材1を駆動軸2に1つ設けた例を示したが、駆動軸2の周囲に複数設けてもよいことはもちろんである。
【0031】
また、実施形態1の保水袋22は断面が略角形の筒状体であるが、図3,4に示すように、底面に向けて断面が次第に角形状から円形状になるように筒状体を構成してもよい。これにより、汚染除去部材1は保水袋22の内面により密に接触することが可能となり、汚染除去効率がより高くなる。
さらに、上下移動機構24と駆動軸2を、ギア又はクラッチを用いることより単一の駆動軸としてもよい。これにより、装置の簡素化を図ることができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態1によれば、保水袋の内面の汚れを汚染除去部材で確実に除去することができるので衛生状態が良好な乾海苔を製造することが可能となるとともに、真水等の洗浄水を用いることなく、また、製造ラインを長時間中断する必要がない節水効果及び製造効率の高い乾海苔製造装置を提供することができる。
【0033】
(実施形態2)
図5は、本発明の実施形態2に係る汚染除去部材の断面図である。
実施形態1と共通する点については、説明を省略する。
【0034】
実施形態1では、汚染除去部材1の先端が保水袋22の内面に接触してその汚れを除去するが、保水袋22の形状又は長期使用による保水袋22の変形によって、汚染除去部材1が保水袋22の内面に密に接触できなくなる可能性がある。
【0035】
本実施形態2では汚染除去部材と駆動軸2との間に例えばバネ等の弾性部材3からなる付勢手段を配置する。汚染除去部材1は、この弾性部材3により保水袋22の内面側に付勢され、保水袋22の内面に定常的に密に接触することが可能となる。
【0036】
本実施形態2によれば、汚染除去部材1が保水袋22の内面側に付勢されながら回転・上下動するので、種々の形状の保水袋及び変形した保水袋22にも追随することが可能となり、その結果、保水袋内面の汚れをさらに確実に除去することができる。
なお、付勢手段として弾性部材の代わりに電磁力による付勢手段を用いてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…汚染除去部材、2…駆動軸、3…弾性部材、11…抄き部、12…脱水部、13…乾燥部、14…剥離部、15…無端ベルト、16…簀、17…簀枠、18…供給孔、19…抄き箱、20…抄き枠、21…スノコ、21a…脱水孔、22…保水袋、22a…板状部材、23…保水枠、24…上下移動機構、25…生海苔、26…開閉弁、26a…排水孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾海苔製造装置の抄き部に設けられた保水袋の内面に接触しながら回転又は上下動する汚染除去部材を有することを特徴とする乾海苔製造装置。
【請求項2】
前記汚染除去部材は、回転しながら上下動することを特徴とする請求項1に記載の乾海苔製造装置。
【請求項3】
前記汚染除去部材を回転又は上下動させる駆動軸を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の乾海苔製造装置。
【請求項4】
前記汚染除去部材を1つ又は複数設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の乾海苔製造装置。
【請求項5】
前記汚染除去部材は、スクレーパ、ブラシ又はメッシュからなることを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載の乾海苔製造装置。
【請求項6】
前記保水袋に抄き水を保持した状態で、又は前記保水袋から抄き水を排出しながら前記汚染除去部材を回転又は上下動させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の乾海苔製造装置。
【請求項7】
前記保水袋の断面形状は、上部が角形状であり、底面に向けて次第に円形状としたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の乾海苔製造装置。
【請求項8】
前記汚染除去部材と前記駆動軸との間に、前記汚染除去部材を前記保水袋の内面に押圧する付勢手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の乾海苔製造装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の乾海苔製造装置により製造された乾海苔。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−34664(P2012−34664A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180328(P2010−180328)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(391017986)株式会社白子 (14)
【Fターム(参考)】