説明

乾燥インジケーターを有する修正液

本発明は、(a) 蛍光染料として、ナトリウム8-ヒドロキシ-1,3,6-ピレントリスルホネート、(b) 好ましくは100°C以下の沸点を有し、20°Cにおける蛍光染料の溶解度が0.1 g/l以上である、蛍光染料に対する良好な溶媒、ならびに、(c) 蛍光染料に対する良好な溶媒(b)とミセル化し、20°Cにおける蛍光染料の溶解度が0.01 g/l以下である、蛍光染料に対する弱い溶媒を含む、着色乾燥インジケーターを有する修正液に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥インジケーターとして蛍光染料を含有する修正液に関する。
【背景技術】
【0002】
誤記を隠すため、そしてその上に記述するための、所望であれば乾燥修正フィルム上における水ベースまたは揮発性有機溶媒ベースの修正液は、市販されている。より無害であるために、水ベース修正液が一般的に好まれるものの、それでもやはり欠点を有しており、溶媒ベース修正液と比較すると、後者よりも乾燥するのが遅い。損傷させることなくフィルム上に重ね書きできるようになるまで、一般的に数十秒かかる。急いでおり、乾燥の進行を知らせる指標がない使用者は、被覆フィルム上に書くことを試みるのが早すぎる傾向にある。
【0003】
修正液のように、使用に使用後の乾燥時間が伴う紙製組成物に乾燥または視覚化インジケーターを加えることは、既知の技術である。
【0004】
修正液で使用される乾燥インジケーターにより、使用者は、組成物が十分に乾燥しているとき、すなわち、修正液により形成されるフィルムが、損傷される危険を伴うことなく新たな記入を受け入れることができるときを、視覚的に評価することができるように意図される。
【0005】
乾燥インジケーターは、着色され、そのため組成物の適用時に使用者が見ることができ、徐々にその色が失われ、理想的には組成物が乾燥した時に無色となる。
【0006】
そして、米国特許出願2005/0,075,419号には、乾燥インジケーターとして、着色pHインジケーターを含有する水ベース修正液が開示されている。前記修正液はまた、その蒸発により修正フィルムのpHに変化を生じ、その結果pHインジケーターを脱色する、揮発酸または揮発塩基含む。
【0007】
乾燥インジケーターとして、着色pHインジケーターを含有する組成物の問題点は、組成物の実際の乾燥時間に、脱色時間を正確に調整することである。特に、組成物のpHが速く変化し、組成物が完全に乾燥する前にインジケーターが脱色する場合、使用者は間違って、フィルム上に上書きすることでフィルムを損傷させてしまう。逆に、組成物の全体が乾燥した後のある時間まで、pH変動とインジケーターの脱色がない場合、使用者は必要もなく上書きする時間を遅らせ、そして時間を浪費する。
【0008】
修正液のフィルムの乾燥時間は、
- 溶媒の蒸発(揮発)速度
- 紙に対する溶媒の浸透速度、必然的に液体の表面張力、液体の粘度、および支持体の表面エネルギーに依存する、ならびに
- フィルムの形成速度
のような複数のパラメーターに依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願2005/0,075,419号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この修正液の脱色時間に対する乾燥時間の正確な調整の問題を解決することを目的とした調査の文脈において、出願人は、染料に対する少なくとも1つの「良好な(good)」溶媒、および前記染料に対する少なくとも1つの「弱い(poor)」溶媒から形成される、相互にミセル化する溶媒のケイにおいてある蛍光染料を使用することにより、この蛍光染料の脱色時間を非常に精密に調節することが可能となることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
その結果、本発明の一つの主題は、
(a) 蛍光染料として、ナトリウム8-ヒドロキシ-1,3,6-ピレントリスルホネート
(b) 好ましくは100°C以下の沸点を有する、蛍光染料に対する良好な溶媒、ならびに好ましくは、
(c) 蛍光染料に対する良好な溶媒(b)とミセル化する、蛍光染料に対する弱い溶媒
を含む、着色乾燥インジケーターを有する修正液である。
【0012】
Solvent Green 7またはピラン(CAS 6358-69-6, Color Index No. 59040)としても知られている、ナトリウム8-ヒドロキシ-1,3,6-ピレントリスルホネートは、化粧用組成物のための染料としてFDAにより認可されている黄緑色の染料である。この染料は、着色pHインジケーターには含まれていない。特に、全てのpHの範囲にわたって、その特性があまりにも徐々に変化するため、pHインジケーターとして使用できない蛍光発色を示す。
【0013】
それゆえ、本発明の組成物における乾燥インジケーターとして作用するこの染料の能力は、プロトン化/脱プロトン化に関係ないが、他の物の中で、組成物の溶媒混合物中における溶媒和の状態に関するソルバクロミズム(solvatochromism)と関係がある。
【0014】
特に、出願人は、ナトリウム8-ヒドロキシ-1,3,6-ピレントリスルホネートが、以下に定義する「良好な」溶媒に溶解されるとき、この良好な溶媒をある比率で以下に定義する染料に対する「弱い」溶媒と混合する際に減少する、高い蛍光強度により特徴づけられることを発見した。
【0015】
出願人はまた、使用される良好な溶媒が水であるとき、蛍光染料に対する弱い溶媒から選択された有機溶媒を添加することは、修正液が適用される紙支持体に対する溶媒相の浸透速度の変化、一般に加速により反映されること、ならびにこの浸透速度の加速は、同様にフィルムの乾燥速度および染料の脱色速度に影響をもたらすこともまた発見した。
【0016】
その後、修正液のフィルムの乾燥時間に、蛍光染料の脱色時間を調整する試みにおいて、染料の溶解状態および/または紙支持体に対する浸透速度を改変するために、これら2つの型の溶媒の混合物を含有する溶媒相においてこの蛍光染料を溶解する考えが浮かんだ。そして出願人は、その揮発性および染料に対する溶媒和力の機能のような、良好なおよび弱い溶媒を明敏に選択することにより、しかしとりわけ本発明の組成物中における良好な溶媒および弱い溶媒の個々の比率の変化により、沈着したフィルムの実際の乾燥時間に対して蛍光染料の脱色時間を非常に詳細に調整することが可能となる。
【0017】
上記の説明により、本発明の組成物中における「弱い」溶媒の存在が、本発明による修正液の本質的な技術的特徴であることが示唆されるが、ある特定の場合において、蛍光染料に対する良好な溶媒のみの蒸発により、組成物の乾燥時間とともにその脱色時間がもたらされる際に、弱い溶媒の添加が余分であることを、当業者は理解するであろう。そして、良好な溶媒と組み合わせる弱い溶媒の存在は、確かに、一般的に望ましいが、しかし本発明の組成物の好ましい光学特性を構成する。
【0018】
本出願において、「良好な溶媒」の語は、20°Cにおける蛍光染料の溶解度が0.1 g/l以上である溶媒を意味する。「弱い溶媒」の語は、20°Cにおける蛍光染料の溶解度が0.01 g/l以下である有機溶媒を示す。
【0019】
上記のとおり、良好な溶媒は、100°C以下の沸点を有している。言うまでもなく、良好な溶媒は好ましくは水であり、全体的な無害性、および非常にコストが低いために選択される。特に脱塩水が好ましい。沸点の上限(100°C) は、単に組成物の乾燥時間により決定される。100°Cの沸点のほかに、良好な溶媒は、組成物の大部分を構成し、蒸発に過度に長い時間がかかり、フィルムの乾燥時間を望ましくない長さにするかもしれない。
【0020】
弱い溶媒は、蛍光染料に対する良好な溶媒とミセル化しなければならない。良好な溶媒および弱い溶媒は、必ずしもあらゆる比率で相互にミセル化する必要はないが、少なくとも適用の前および乾燥工程の間、修正液の良好な溶媒/弱い溶媒比のために確認しなければならない。
【0021】
言及されてよい、好ましい弱い溶媒は、ブチレングリコールおよびヘキシレングリコールのようなC4-C6アルキレングリコール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、およびイソブタノールのようなC2-C4低級アルコール、ならびにジオキサンを含む。
【0022】
上記説明したように、蛍光染料の脱色時間を、相対的に少量の1種類以上の弱い溶媒を、数パーセントのオーダーでのみ添加することにより、本発明の組成物の乾燥時間に調整してよい。本発明の組成物における良好な溶媒の弱い溶媒に対する重量比は、好ましくは99/1と80/20の間、特に98/2と90/10の間である。
【0023】
本発明による組成物は好ましくは塩基性のpH、有利には7と11の間、好ましくは7.5と10の間を有する。このpH範囲において、蛍光染料の蛍光強度は特に高く、適用されるフィルムの乾燥時間における脱色を人の目で検出することができる。このpHを、いずれかの、必ずしも揮発性塩基である必要はない塩基により調整してよい。言及してよいそのような塩基の例は、アンモニア、トリエタノールアミンおよび2-アミノ-1-メチルプロパノール(AMP)を含む。本発明による組成物のpHは、任意に適切なバッファーにより固定してよい。
【0024】
本発明の修正液における蛍光染料の濃度は、組成物の総量に対して、好ましくは0.01重量%と1重量%の間、特に0.1重量%と0.5重量%の間である。
【0025】
上記の蛍光染料および溶媒相に加えて、本発明の修正液は、この型の組成物に一般に使用され、例えばフィルム形成ポリマー、フィラー、不透明顔料、好ましくは二酸化チタンのような白色顔料、光学的増白剤、染料、グリセロールのような不凍剤、界面活性剤および保存料から選択される1種類以上のアジュバントを含む。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施例
組成物A(弱い溶媒なし)
Colorey社によりJaune Pyracide Gの名で販売されている、0.15重量%のSolvent Green 7を、以下の組成物を有する標準修正液(ベース液)に添加した:
蒸留水 10%
レジン (アクリルラテックス 35% 固体) 25%
TiO2 37%
CaCO3 13%
塩基 pH 8-8.5となるように
他の添加物 12%
(保存料、消泡剤、界面活性剤、光学的増白剤)
【0027】
厚さ約75 μmのフィルムを、ハンド塗布器を使用して標準紙(Baumgartner紙 ISO 12757)に塗布した。フィルムを温度20°Cで乾燥させ、その後ボールペンで乾燥したフィルム上に上書きできるようになる時間(=乾燥時間)を記録した。
【0028】
蛍光染料の脱色時間を、視覚評価、あるいは比色分析(L*a*b* システム)により見積もった。
【0029】
そして、組成物Aに対して約1分のフィルム乾燥時間と約3分の脱色時間が測定された。この結果は満足できるものではなく、なぜなら、上書きする前に完全にフィルムが脱色するまで使用者が待つとしたら、使用者は必要もなく2分間浪費する。
【0030】
組成物BおよびC(弱い溶媒あり)
99.85%のベース液と0.15%のSolvent Green 7を含む組成物Aに、4.00% のヘキシレングリコール(組成物B)および4.00%のn-プロパノール(組成物C)をそれぞれ添加した。
【0031】
組成物Aと同じ条件でこれら2つの組成物の乾燥時間および脱色時間を測定したところ、以下の結果が得られた:
組成物B
乾燥時間:1分
脱色時間:1分10秒
組成物C
乾燥時間:50秒
脱色時間:1分10秒
【0032】
2つの組成物に対して、乾燥時間と脱色時間の違いは、第二の溶媒(「弱い」溶媒)がない組成物Aに対して観察された違いに比べて実質的に減少していることが見出された。さらに、水ベースの組成物に少量(4%)のヘキシレングリコール(沸点197°C)を添加しても、最終組成物の乾燥時間を増大させないことが観察されるであろう。一方、水よりも相対的に揮発性の弱い溶媒4%(n-プロパノール、沸点97°C)の添加により、有利には水ベースの配合物の乾燥時間は約20%減少する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 蛍光染料として、ナトリウム8-ヒドロキシ-1,3,6-ピレントリスルホネート、
(b) 好ましくは100°C以下の沸点を有し、20°Cにおける蛍光染料の溶解度が0.1 g/l以上である、蛍光染料に対する良好な溶媒、ならびに、
(c) 蛍光染料に対する良好な溶媒(b)とミセル化し、20°Cにおける蛍光染料の溶解度が0.01 g/l以下である、蛍光染料に対する弱い溶媒
を含む、着色乾燥インジケーターを有する修正液。
【請求項2】
組成物の総重量に対する蛍光染料の濃度が、0.01重量%と1重量%の間、好ましくは0.1重量%と0.5重量%の間であることに特徴づけられる、請求項1に記載の修正液。
【請求項3】
前記良好な溶媒が水であることに特徴づけられる、請求項1または2に記載の修正液。
【請求項4】
前記弱い溶媒が、C4-C6アルキレングリコール、C2-C4低級アルコール、およびジオキサンより選択されることに特徴づけられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の修正液。
【請求項5】
前記弱い溶媒に対する前記良好な溶媒の重量比が、99/1と80/20の間、好ましくは98/2と90/10の間であることに特徴づけられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の修正液。
【請求項6】
前記組成物が、7と11の間、好ましくは7.5と10の間のpHを有することに特徴づけられる、請求項1から5のいずれか一項に記載の修正液。

【公表番号】特表2010−512443(P2010−512443A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540818(P2009−540818)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【国際出願番号】PCT/FR2007/052433
【国際公開番号】WO2008/074956
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(501325048)ソシエテ・ビック (24)
【Fターム(参考)】