説明

乾燥システム

【課題】流動層乾燥装置から微粉炭供給ホッパへ向かう褐炭を発火させることなく、イナートガスを効率良く使用することが可能な乾燥システムを提供する。
【解決手段】乾燥した褐炭を排出すると共に、褐炭の乾燥時に発生した排出ガスを排出可能な流動層乾燥装置12と、乾燥後の褐炭を、粗粒の褐炭と微粒の褐炭とに分級する分級器13と、粗粒の褐炭を粉砕して、微粒の褐炭とする微粉炭機14と、排出ガスに含まれる微粒の褐炭を集塵する集塵装置15と、分級器13によって分級された微粒の褐炭と、微粉炭機14によって粉砕された微粒の褐炭と、集塵装置15で集塵された微粒の褐炭とを貯留する微粉炭供給ホッパ19と、流動層乾燥装置12から微粉炭供給ホッパ19に至る褐炭の搬送経路の少なくとも一部において、イナートガスを循環させるイナートガス循環装置20と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、褐炭等の湿潤燃料を乾燥させる乾燥システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような乾燥システムとして、石炭を乾燥させて、乾燥後の石炭をコークス炉および高炉で燃焼させる石炭の事前処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この事前処理装置は、石炭を乾燥すると共に粗粒炭と細粒炭とに分級する流動層乾燥装置を有し、分級した粗粒炭をコークス炉に搬送すると共に、分級した細粒炭を高炉用微粉炭製造機を介して高炉に搬送している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−309265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、乾燥後の石炭を、コークス炉および高炉へ向けて搬送する場合、石炭の発火を抑制すべく、窒素等のイナートガス(不活性ガス)を供給する場合がある。しかしながら、石炭の乾燥時において、イナートガスを供給し続けると、供給されるイナートガスの使用量は増大するため、イナートガスを効率良く使用することは困難である。
【0005】
そこで、本発明は、乾燥装置から乾燥燃料貯留部へ向かう乾燥燃料を発火させることなく、イナートガスを効率良く使用することが可能な乾燥システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の乾燥システムは、湿潤燃料を乾燥した乾燥燃料を排出すると共に、湿潤燃料の乾燥時に発生した排出ガスを排出可能な乾燥装置と、乾燥燃料が供給され、供給された乾燥燃料を、粗粒の乾燥燃料と微粒の乾燥燃料とに分級する分級装置と、粗粒の乾燥燃料が供給され、供給された乾燥燃料を粉砕して、微粒の乾燥燃料とする粉砕機と、排出ガスに含まれる微粒の乾燥燃料を集塵する集塵装置と、分級装置によって分級された微粒の乾燥燃料と、粉砕機によって粉砕された微粒の乾燥燃料と、集塵装置で集塵された微粒の乾燥燃料とを貯留する乾燥燃料貯留部と、乾燥装置から乾燥燃料貯留部に至る乾燥燃料の搬送経路の少なくとも一部において、イナートガスを循環させるイナートガス循環装置と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、乾燥装置から乾燥燃料貯留部に至る搬送経路には、イナートガスが供給されるため、微粒の乾燥燃料を発火させることなく、乾燥燃料を乾燥装置から乾燥燃料貯留部へ供給することができる。このとき、イナートガスは、乾燥装置から乾燥燃料貯留部に至る搬送経路において循環されることから、イナートガスの使用量を抑制することができるため、イナートガスを効率良く使用することができる。
【0008】
この場合、イナートガス循環装置は、粉砕機と乾燥燃料貯留部との間に介設され、粉砕機から供給される混合状態の乾燥燃料とイナートガスとを分離し、分離後の乾燥燃料を乾燥燃料貯留部へ向けて供給する第1固気分離装置と、第1固気分離装置によって分離されたイナートガスを、粉砕機へ向けて供給する第1ガス循環ブロアと、を有していることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、第1固気分離装置および第1ガス循環ブロアにより、粉砕機から乾燥燃料貯留部に至る搬送経路において、イナートガスを循環させることができる。これにより、イナートガスから分離された乾燥燃料を乾燥燃料貯留部へ供給することができ、分離後のイナートガスを、第1固気分離装置から粉砕機へ向けて供給することができる。
【0010】
この場合、乾燥装置と分級装置との間に設けられ、乾燥装置から排出された乾燥燃料を冷却する第1冷却装置と、集塵装置と乾燥燃料貯留部との間に介設され、集塵装置で集塵された乾燥燃料を冷却する第2冷却装置と、をさらに備え、分級装置から乾燥燃料貯留部に至る乾燥燃料の搬送経路の一部は、集塵装置から乾燥燃料貯留部に至る乾燥燃料の搬送経路と合流する合流搬送経路となっており、イナートガス循環装置は、合流搬送経路に介設され、混合状態の乾燥燃料とイナートガスとを分離し、分離後の乾燥燃料を乾燥燃料貯留部へ向けて供給する第2固気分離装置と、第2固気分離装置によって分離されたイナートガスを、第1冷却装置および第2冷却装置へ向けて供給する第2ガス循環ブロアと、を有していることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、第2固気分離装置および第2ガス循環ブロアにより、第1冷却装置から分級装置を介して乾燥燃料貯留部に至る搬送経路と、第2冷却装置から乾燥燃料貯留部に至る搬送経路とにおいて、イナートガスを循環させることができる。これにより、イナートガスから分離された乾燥燃料を乾燥燃料貯留部へ供給することができ、分離後のイナートガスを、第2固気分離装置から第1冷却装置および第2冷却装置へ向けて供給することができる。
【0012】
この場合、第2ガス循環ブロアは、乾燥装置から第1冷却装置に至る乾燥燃料の搬送経路、および集塵装置から第2冷却装置に至る乾燥燃料の搬送経路へ向けて、イナートガスを供給することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第2固気分離装置によって分離されたイナートガスを、乾燥装置から第1冷却装置に至る搬送経路と、集塵装置から第2冷却装置に至る搬送経路とに供給することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の乾燥システムによれば、乾燥装置から乾燥燃料貯留部に至る乾燥燃料の搬送経路においてイナートガスを循環させることができるため、乾燥装置から乾燥燃料貯留部へ向かう乾燥燃料を発火させることなく、イナートガスを効率良く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本実施例に係る乾燥システムを適用した石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る乾燥システムについて説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0017】
図1は、本実施例に係る乾燥システムを適用した石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。本実施例の乾燥システム1が適用された石炭ガス化複合発電設備(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)100は、空気を酸化剤としてガス化炉で石炭ガスを生成する空気燃焼方式を採用し、ガス精製装置で精製した後の石炭ガスを燃料ガスとしてガスタービン設備に供給して発電を行っている。すなわち、本実施例の石炭ガス化複合発電設備100は、空気燃焼方式(空気吹き)の発電設備である。この場合、ガス化炉に供給する湿潤原料として褐炭を使用している。
【0018】
なお、本実施例では、湿潤原料として褐炭を適用したが、水分含量の高いものであれば、亜瀝青炭等を含む低品位炭や、スラッジ等の泥炭を適用してもよく、また、高品位炭であっても適用可能である。また、湿潤原料として、褐炭等の石炭に限らず、再生可能な生物由来の有機性資源として使用されるバイオマスであってもよく、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などを使用することも可能である。
【0019】
本実施例において、図1に示すように、石炭ガス化複合発電設備100は、給炭装置111、乾燥システム1、石炭ガス化炉114、チャー回収装置115、ガス精製装置116、ガスタービン設備117、蒸気タービン設備118、発電機119、排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)120を有している。
【0020】
給炭装置111は、原炭バンカ121と、石炭供給機122と、クラッシャ123とを有している。原炭バンカ121は、褐炭を貯留可能であって、所定量の褐炭を石炭供給機122に投下する。石炭供給機122は、原炭バンカ121から投下された褐炭をコンベアなどにより搬送し、クラッシャ123に投下する。このクラッシャ123は、投下された褐炭を細かく破砕して細粒化する。
【0021】
乾燥システム1は、給炭装置111から投下された破砕後の褐炭を加熱乾燥すると共に、乾燥後の褐炭を、微粒の褐炭(微粉炭)として、石炭ガス化炉114に供給するものである。なお、乾燥システム1の詳細については後述する。
【0022】
石炭ガス化炉114は、乾燥システム1で処理された微粉炭が供給されると共に、チャー回収装置115で回収されたチャー(石炭の未燃分)が供給される。
【0023】
石炭ガス化炉114は、ガスタービン設備117(圧縮機161)から圧縮空気供給ライン141が接続されており、このガスタービン設備117で圧縮された圧縮空気が供給可能となっている。空気分離装置142は、大気中の空気から窒素と酸素を分離生成するものであり、第1窒素供給ライン143が石炭ガス化炉114に接続され、この第1窒素供給ライン143に、後述する乾燥システム1の微粉炭供給ホッパ19からの給炭ライン144が接続されている。また、第2窒素供給ライン145も石炭ガス化炉114に接続され、この第2窒素供給ライン145にチャー回収装置115からのチャー戻しライン146が接続されている。更に、酸素供給ライン147は、圧縮空気供給ライン141に接続されている。この場合、窒素は、石炭やチャーの搬送用ガスとして利用され、酸素は、酸化剤として利用される。
【0024】
石炭ガス化炉114は、例えば、噴流床形式のガス化炉であって、内部に供給された石炭、チャー、空気(酸素)、またはガス化剤としての水蒸気を燃焼・ガス化すると共に、二酸化炭素を主成分とする可燃性ガス(生成ガス、石炭ガス)が発生し、この可燃性ガスをガス化剤としてガス化反応が起こる。なお、石炭ガス化炉114は、微粉炭に混入した異物を除去する異物除去装置148が設けられている。この場合、石炭ガス化炉114は噴流床ガス化炉に限らず、流動床ガス化炉や固定床ガス化炉としてもよい。そして、この石炭ガス化炉114は、チャー回収装置115に向けて可燃性ガスのガス生成ライン149が設けられており、チャーを含む可燃性ガスが排出可能となっている。この場合、ガス生成ライン149にガス冷却器を設けることで、可燃性ガスを所定温度まで冷却してからチャー回収装置115に供給するとよい。
【0025】
チャー回収装置115は、集塵装置151と供給ホッパ152とを有している。この場合、集塵装置151は、1つまたは複数のバグフィルタやサイクロンにより構成され、石炭ガス化炉114で生成された可燃性ガスに含有するチャーを分離することができる。そして、チャーが分離された可燃性ガスは、ガス排出ライン153を通してガス精製装置116に送られる。供給ホッパ152は、集塵装置151で可燃性ガスから分離されたチャーを貯留するものである。なお、集塵装置151と供給ホッパ152との間にビンを配置し、このビンに複数の供給ホッパ152を接続するように構成してもよい。そして、供給ホッパ152からのチャー戻しライン146が第2窒素供給ライン145に接続されている。
【0026】
ガス精製装置116は、チャー回収装置115によりチャーが分離された可燃性ガスに対して、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物を取り除くことで、ガス精製を行うものである。そして、ガス精製装置116は、可燃性ガスを精製して燃料ガスを製造し、これをガスタービン設備117に供給する。なお、このガス精製装置116では、チャーが分離された可燃性ガス中にはまだ硫黄分(HS)が含まれているため、アミン吸収液によって除去することで、硫黄分を最終的には石膏として回収し、有効利用する。
【0027】
ガスタービン設備117は、圧縮機161、燃焼器162、タービン163を有しており、圧縮機161とタービン163は、回転軸164により連結されている。燃焼器162は、圧縮機161から圧縮空気供給ライン165が接続されると共に、ガス精製装置116から燃料ガス供給ライン166が接続され、タービン163に燃焼ガス供給ライン167が接続されている。また、ガスタービン設備117は、圧縮機161から石炭ガス化炉114に延びる圧縮空気供給ライン141が設けられており、圧縮空気供給ライン141に昇圧機168が介設されている。従って、燃焼器162では、圧縮機161から供給された圧縮空気とガス精製装置116から供給された燃料ガスとを混合して燃焼し、タービン163にて、発生した燃焼ガスにより回転軸164を回転することで発電機119を駆動することができる。
【0028】
蒸気タービン設備118は、ガスタービン設備117における回転軸164に連結されるタービン169を有しており、発電機119は、この回転軸164の基端部に連結されている。排熱回収ボイラ120は、ガスタービン設備117(タービン163)からの排ガスライン170に設けられており、空気と高温の排ガスとの間で熱交換を行うことで、蒸気を生成するものである。そのため、排熱回収ボイラ120は、蒸気タービン設備118のタービン169との間に蒸気供給ライン171が設けられると共に、蒸気回収ライン172が設けられ、蒸気回収ライン172に復水器173が設けられている。従って、蒸気タービン設備118では、排熱回収ボイラ120から供給された蒸気によりタービン169が駆動し、回転軸164を回転することで発電機119を駆動することができる。
【0029】
そして、排熱回収ボイラ120で熱が回収された排ガスは、ガス浄化装置174により有害物質を除去され、浄化された排ガスは、煙突175から大気へ放出される。
【0030】
ここで、本実施例の石炭ガス化複合発電設備100の作動について説明する。
【0031】
本実施例の石炭ガス化複合発電設備100において、給炭装置111にて、原炭(褐炭)が原炭バンカ121に貯留されており、この原炭バンカ121の褐炭が石炭供給機122によりクラッシャ123に投下され、ここで所定の大きさに破砕される。そして、破砕された褐炭は、乾燥システム1に供給される。乾燥システム1は、粉砕された褐炭を微粉炭とし、微粉炭は、空気分離装置142から供給される窒素により第1窒素供給ライン143を通して石炭ガス化炉114に供給される。また、後述するチャー回収装置115で回収されたチャーが、空気分離装置142から供給される窒素により第2窒素供給ライン145を通して石炭ガス化炉114に供給される。更に、後述するガスタービン設備117から抽気された圧縮空気が昇圧機168で昇圧された後、空気分離装置142から供給される酸素と共に圧縮空気供給ライン141を通して石炭ガス化炉114に供給される。
【0032】
石炭ガス化炉114では、供給された微粉炭及びチャーが圧縮空気(酸素)により燃焼し、微粉炭及びチャーがガス化することで、二酸化炭素を主成分とする可燃性ガス(石炭ガス)を生成することができる。そして、この可燃性ガスは、石炭ガス化炉114からガス生成ライン149を通して排出され、チャー回収装置115に送られる。
【0033】
このチャー回収装置115にて、可燃性ガスは、まず、集塵装置151に供給され、集塵装置151は、可燃性ガスに含まれるチャーを分離する。そして、チャーが分離された可燃性ガスは、ガス排出ライン153を通してガス精製装置116に送られる。一方、可燃性ガスから分離した微粒チャーは、供給ホッパ152に堆積され、チャー戻しライン146を通して石炭ガス化炉114に戻されてリサイクルされる。
【0034】
チャー回収装置115によりチャーが分離された可燃性ガスは、ガス精製装置116にて、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物が取り除かれてガス精製され、燃料ガスが製造される。そして、ガスタービン設備117では、圧縮機161が圧縮空気を生成して燃焼器162に供給すると、この燃焼器162は、圧縮機161から供給される圧縮空気と、ガス精製装置116から供給される燃料ガスとを混合し、燃焼することで燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスによりタービン163を駆動することで、回転軸164を介して発電機119を駆動し、発電を行うことができる。
【0035】
そして、ガスタービン設備117におけるタービン163から排出された排気ガスは、排熱回収ボイラ120にて、空気と熱交換を行うことで蒸気を生成し、この生成した蒸気を蒸気タービン設備118に供給する。蒸気タービン設備118では、排熱回収ボイラ120から供給された蒸気によりタービン169を駆動することで、回転軸164を介して発電機119を駆動し、発電を行うことができる。
【0036】
その後、ガス浄化装置174では、排熱回収ボイラ120から排出された排気ガスの有害物質が除去され、浄化された排ガスが煙突175から大気へ放出される。
【0037】
次に、図1を参照して、上述した石炭ガス化複合発電設備100における乾燥システム1について詳細に説明する。上記したように、乾燥システム1は、給炭装置111から供給された水分含量の高い石炭である褐炭を、加熱乾燥させて微粉炭とし、石炭ガス化炉114へ供給するものである。
【0038】
乾燥システム1は、流動層乾燥装置(乾燥装置)12と、分級器(分級装置)13と、微粉炭機(粉砕機)14と、集塵装置15と、第1冷却器(第1冷却装置)16と、第2冷却器(第2冷却装置)17と、微粉炭バグフィルタ18と、微粉炭供給ホッパ(乾燥燃料貯留部)19と、イナートガス循環装置20とを有している。
【0039】
流動層乾燥装置12は、給炭装置111により投入された褐炭に対して過熱蒸気等の乾燥用蒸気を供給することで、褐炭を流動させながら加熱乾燥し、褐炭が含有する水分を除去するものである。流動層乾燥装置12は、乾燥後の褐炭を乾燥炭として排出すると共に、褐炭の乾燥時に発生した排出ガスを排出している。
【0040】
第1冷却器16は、第1冷却ライン81を介して流動層乾燥装置12に接続されており、流動層乾燥装置12から排出された褐炭(乾燥炭)を冷却している。第1冷却ライン81および第1冷却器16には、イナートガス循環装置20により、イナートガスが供給されている。なお、イナートガスとは、不活性ガスであり、本実施例では窒素が用いられている。これにより、第1冷却ライン81および第1冷却器16では、褐炭の発火を抑制している。また、第1冷却器16は、冷却後の褐炭を、イナートガスと共に排出する。
【0041】
分級器13は、第1冷却器16に接続されており、第1冷却器16から供給された冷却後の褐炭を分級している。分級器13としては、例えば、サイクロン式のものが用いられており、供給された褐炭を、粗粒の褐炭と微粒の褐炭(微粉炭)とに分級している。そして、分級器13は、粗粒の褐炭を微粉炭機14に供給する一方で、微粒の褐炭を微粉炭バグフィルタ18に供給する。
【0042】
微粉炭機14は、ミル等の石炭粉砕機であって、分級器13から供給された粗粒の褐炭を細かい粒子状に粉砕して微粉炭を製造するものである。すなわち、微粉炭機14は、分級器13から粗粒の褐炭が供給されると、この粗粒の褐炭を粉砕して微粒の褐炭とする。そして、粉砕後の微粉炭は、微粉炭バグフィルタ18へ供給される。また、この微粉炭機14には、イナートガス循環装置20により、イナートガスが供給されている。これにより、微粉炭機14では、褐炭の発火を抑制している。また、微粉炭機14は、粉砕後の褐炭を、イナートガスと共に排出する。
【0043】
集塵装置15は、乾燥炭サイクロン133と、乾燥炭電気集塵機134とを有している。乾燥炭サイクロン133は、流動層乾燥装置12に接続されており、流動層乾燥装置12から排出された排出ガス中に含まれる微粒の褐炭を分離する。乾燥炭サイクロン133は、分離後の褐炭を第2冷却器17へ向けて供給する一方で、褐炭分離後の排出ガスを乾燥炭電機集塵機134へ向けて供給する。
【0044】
乾燥炭電気集塵機134は、乾燥炭サイクロン133に接続されており、乾燥炭電気集塵機134から排出された排出ガス中に含まれる微粒の褐炭をさらに分離する。乾燥炭電気集塵機134は、分離後の褐炭を第2冷却器17へ向けて供給する。なお、乾燥炭電気集塵機134で褐炭が分離された排出ガスは、蒸気圧縮機135で圧縮されてから流動層乾燥装置12に乾燥用蒸気として供給してもよい。
【0045】
第2冷却器17は、第2冷却ライン86を介して乾燥炭サイクロン133および乾燥炭電気集塵機134にそれぞれ接続されており、乾燥炭サイクロン133および乾燥炭電気集塵機134から排出された褐炭(微粉炭)を冷却している。第2冷却ライン86および第2冷却器17には、イナートガス循環装置20により、イナートガスが供給されている。これにより、第2冷却ライン86および第2冷却器17では、褐炭の発火を抑制している。また、第2冷却器17は、冷却後の褐炭を、イナートガスと共に微粉炭バグフィルタ18へ向けて排出する。
【0046】
微粉炭バグフィルタ18は、第1微粉炭供給ライン82を介して微粉炭機14に接続され、また、第2微粉炭供給ライン83を介して第2冷却器17に接続されている。さらに、第2微粉炭供給ライン83は、第3微粉炭供給ライン84を介して分級器13に接続されている。つまり、第2微粉炭供給ライン83の搬送方向における下流側の一部は、第2冷却器17から微粉炭バグフィルタ18へ微粉炭を搬送する搬送経路と、分級器13から微粉炭バグフィルタ18へ微粉炭を搬送する搬送経路とが合流する合流搬送経路83aとなっている。微粉炭バグフィルタ18は、分級器13、微粉炭機14および第2冷却器17から供給された微粉炭を分離し、微粉炭供給ホッパ19へ向けて供給する。そして、微粉炭供給ホッパ19は、微粉炭バグフィルタ18により分離された微粉炭を貯留する。
【0047】
従って、流動層乾燥装置12で乾燥された褐炭は、第1冷却器16へ供給されて冷却された後、第1冷却器16から分級器13へ供給される。分級器13へ供給された褐炭は、粗粒の褐炭と微粒の褐炭とに分級され、分級された粗粒の褐炭は、微粉炭機14へ供給される一方で、分級された微粒の褐炭は、微粉炭バグフィルタ18へ向けて供給される。微粉炭機14へ供給された粗粒の褐炭は、微粉炭機14により微粒の褐炭に粉砕された後、微粉炭バグフィルタ18へ向けて供給される。
【0048】
一方で、流動層乾燥装置12から排出される排出ガス中の微粒の褐炭は、乾燥炭サイクロン133および乾燥炭電気集塵機134へ供給されて集塵された後、第2冷却器17へ供給されて冷却される。冷却された微粒の褐炭は、微粉炭バグフィルタ18へ向けて供給される。
【0049】
イナートガス循環装置20は、流動層乾燥装置12から微粉炭バグフィルタ18に至る褐炭の搬送経路において、イナートガスを循環させている。イナートガス循環装置20は、第1固気分離装置31と、第2固気分離装置32と、第1ガス循環ブロア33と、第2ガス循環ブロア34と、を有している。
【0050】
第1固気分離装置31は、いわゆる、サイクロン式の集塵装置であり、乾燥炭サイクロン133と同様の構成となっている。第1固気分離装置31は、第1微粉炭供給ライン82に介設されており、第1微粉炭供給ライン82を通過する混合状態の褐炭およびイナートガスをそれぞれ分離している。第1固気分離装置31は、分離後の褐炭を微粉炭バグフィルタ18へ向けて供給する。一方で、第1固気分離装置31は、褐炭分離後のイナートガスを、第1ガス供給ライン91を介して微粉炭機14へ向けて供給する。
【0051】
第1ガス循環ブロア33は、第1ガス供給ライン91に介設されており、第1固気分離装置31から排出されたイナートガスを、微粉炭機14へ向けて供給している。これにより、イナートガスは、微粉炭機14から第1微粉炭供給ライン82を通って第1固気分離装置31に流入し、第1固気分離装置31から第1ガス供給ライン91を通って微粉炭機14に流入する。つまり、イナートガスは、微粉炭機14と第1固気分離装置31との間で循環する。
【0052】
第2固気分離装置32は、第1固気分離装置31と同様に、サイクロン式の集塵装置となっている。第2固気分離装置32は、第2微粉炭供給ライン83の合流搬送経路83aに介設されている。第2固気分離装置32は、合流搬送経路83aを通過する混合状態の褐炭およびイナートガスをそれぞれ分離している。第2固気分離装置32は、分離後の褐炭を微粉炭バグフィルタ18へ向けて供給する。一方で、第2固気分離装置32は、褐炭分離後のイナートガスを、第2ガス供給ライン92を介して、第1冷却器16、第2冷却器17、第1冷却ライン81および第2冷却ライン86へ向けて供給する。
【0053】
第2ガス循環ブロア34は、第2ガス供給ライン92に介設されており、第2固気分離装置32から排出されたイナートガスを、第1冷却器16、第2冷却器17、第1冷却ライン81および第2冷却ライン86へ向けて供給している。これにより、イナートガスは、第1冷却器16から分級器13へ向かった後、分級器13から第3微粉炭供給ライン84に流入する。この後、イナートガスは、第3微粉炭供給ライン84から第2微粉炭供給ライン83に合流した後、第2固気分離装置32に流入する。一方で、イナートガスは、第2冷却器17から第2微粉炭供給ライン83へ向かった後、第2固気分離装置32に流入する。第2固気分離装置32に流入したイナートガスは、第2固気分離装置32から第1冷却器16、第2冷却器17、第1冷却ライン81および第2冷却ライン86へ向けて供給する。つまり、イナートガスは、第1冷却器16、第2冷却器17、第1冷却ライン81および第2冷却ライン86と、第2固気分離装置32との間で循環する。
【0054】
以上のように、本実施例の構成によれば、イナートガス循環装置20により、イナートガスを、流動層乾燥装置12から微粉炭供給ホッパ19に至る搬送経路の少なくとも一部において循環させることができるため、微粒の褐炭を発火させることなく、流動層乾燥装置12から微粉炭供給ホッパ19へ褐炭を供給することができる。このとき、イナートガスは、イナートガス循環装置20によって循環させられることから、イナートガスの使用量を抑制することができるため、イナートガスを効率良く使用することができる。
【0055】
また、本実施例の構成によれば、第1固気分離装置31および第1ガス循環ブロア33により、微粉炭機14と第1固気分離装置31との間において、イナートガスを循環させることができる。これにより、イナートガスから分離された褐炭を微粉炭供給ホッパ19へ向けて供給することができ、分離後のイナートガスを、第1固気分離装置31から微粉炭機14へ向けて供給することができる。
【0056】
また、本実施例の構成によれば、第2固気分離装置32および第2ガス循環ブロア34により、第1冷却器16、第2冷却器17、第1冷却ライン81および第2冷却ライン86と、第2固気分離装置32との間において、イナートガスを循環させることができる。これにより、イナートガスから分離された褐炭を微粉炭供給ホッパ19へ向けて供給することができ、分離後のイナートガスを、第2固気分離装置32から第1冷却器16、第2冷却器17、第1冷却ライン81および第2冷却ライン86へ向けて供給することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 乾燥システム
12 流動層乾燥装置
13 分級器
14 微粉炭機
15 集塵装置
16 第1冷却器
17 第2冷却器
18 微粉炭バグフィルタ
19 微粉炭供給ホッパ
20 イナートガス循環装置
31 第1固気分離装置
32 第2固気分離装置
33 第1ガス循環ブロア
34 第2ガス循環ブロア
81 第1冷却ライン
82 第1微粉炭供給ライン
83 第2微粉炭供給ライン
83a 合流搬送経路
84 第3微粉炭供給ライン
86 第2冷却ライン
91 第1ガス供給ライン
92 第2ガス供給ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤燃料を乾燥した乾燥燃料を排出すると共に、前記湿潤燃料の乾燥時に発生した排出ガスを排出可能な乾燥装置と、
前記乾燥燃料が供給され、供給された前記乾燥燃料を、粗粒の前記乾燥燃料と微粒の前記乾燥燃料とに分級する分級装置と、
粗粒の前記乾燥燃料が供給され、供給された前記乾燥燃料を粉砕して、微粒の前記乾燥燃料とする粉砕機と、
前記排出ガスに含まれる微粒の前記乾燥燃料を集塵する集塵装置と、
前記分級装置によって分級された微粒の前記乾燥燃料と、前記粉砕機によって粉砕された微粒の前記乾燥燃料と、前記集塵装置で集塵された微粒の前記乾燥燃料とを貯留する乾燥燃料貯留部と、
前記乾燥装置から前記乾燥燃料貯留部に至る前記乾燥燃料の搬送経路の少なくとも一部において、イナートガスを循環させるイナートガス循環装置と、を備えたことを特徴とする乾燥システム。
【請求項2】
前記イナートガス循環装置は、
前記粉砕機と前記乾燥燃料貯留部との間に介設され、前記粉砕機から供給される混合状態の前記乾燥燃料と前記イナートガスとを分離し、分離後の前記乾燥燃料を前記乾燥燃料貯留部へ向けて供給する第1固気分離装置と、
前記第1固気分離装置によって分離された前記イナートガスを、前記粉砕機へ向けて供給する第1ガス循環ブロアと、を有していることを特徴とする請求項1に記載の乾燥システム。
【請求項3】
前記乾燥装置と前記分級装置との間に設けられ、前記乾燥装置から排出された前記乾燥燃料を冷却する第1冷却装置と、
前記集塵装置と前記乾燥燃料貯留部との間に介設され、前記集塵装置で集塵された前記乾燥燃料を冷却する第2冷却装置と、をさらに備え、
前記分級装置から前記乾燥燃料貯留部に至る前記乾燥燃料の搬送経路の一部は、前記集塵装置から前記乾燥燃料貯留部に至る前記乾燥燃料の搬送経路と合流する合流搬送経路となっており、
前記イナートガス循環装置は、
前記合流搬送経路に介設され、混合状態の前記乾燥燃料と前記イナートガスとを分離し、分離後の前記乾燥燃料を前記乾燥燃料貯留部へ向けて供給する第2固気分離装置と、
前記第2固気分離装置によって分離された前記イナートガスを、前記第1冷却装置および前記第2冷却装置へ向けて供給する第2ガス循環ブロアと、を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の乾燥システム。
【請求項4】
前記第2ガス循環ブロアは、
前記乾燥装置から前記第1冷却装置に至る前記乾燥燃料の搬送経路、および前記集塵装置から前記第2冷却装置に至る前記乾燥燃料の搬送経路へ向けて、前記イナートガスを供給することを特徴とする請求項3に記載の乾燥システム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−241992(P2012−241992A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113330(P2011−113330)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】