説明

乾燥茶葉の迅速製造方法及び装置

【課題】ティーバッグや、容器詰め飲料製造のための茶原料或いは食品添加物としての茶の需要等に対応し、該茶の需要に即した香味の良いお茶を、単一の製茶機を用い、短時間の処理で迅速に製造する方法及びそのための装置を提供すること。
【解決手段】装置内に設けられたベルトとドラムの少なくとも一方を通気可能な状態とし、該ベルトとドラムの間に茶葉を投入し、加熱手段により加熱して、ベルトと圧接するドラム間で茶葉を熱伝導加熱乾燥を行うオールインワン製茶機を用いた乾燥茶葉の製造方法において、該製茶機に投入する茶葉の前処理として、茶葉の蒸し及び/又は揉み処理する工程を設けることにより、味が濃く、浸出液色、香味に優れた、高香味及び高色度の乾燥茶葉を迅速に製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティーバッグや、容器詰め飲料製造のための茶原料或いは食品添加物としての茶の需要等に対応し、該茶の需要に即した香味の良いお茶を、短時間の処理で迅速に製造する方法及びそのための装置に関する。特に、該茶の需要に対応するために、単一の製茶機を用い、複数の機械を使用する必要が無く、コスト低減や加工時間の短縮により、簡便でかつ短時間で、香味のよいお茶を製造する方法及びそのための装置に関する。更に、具体的には、装置内に設けられたベルトとドラムの少なくとも一方を通気可能な状態とし、該ベルトとドラムの間に茶葉を投入し、加熱手段により加熱して、ベルトと圧接するドラム間で茶葉を熱伝導加熱乾燥を行うオールインワン製茶機を用いた乾燥茶葉の製造方法において、該製茶機に投入する茶葉の前処理を行うことにより味が濃く、浸出液色、香味に優れた、高香味及び高色度の乾燥茶葉を迅速に製造する方法及びそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、煎茶の加工工程は、蒸熱工程、粗揉工程、揉捻工程、中揉工程、精揉工程、乾燥工程の6つの工程からなり、それぞれの工程において異なる機械で、バッチで茶の製造処理を実施している(「茶の化学」村松敬一郎、朝倉書店(1991年)p52−p67)。かかる製茶の機械を備えた製茶施設では、大型化・自動化の進展とともに、高価な機械を複数そろえなければ茶の製造を行うことができず、設備コストがかかり、機械、設備に要する費用も巨額になった。そして、かかる煎茶の製造においては、設備コストがかかるだけではなく、該製茶の機械を用いた煎茶の製造に要する時間も長時間で、かつ、複雑な機械の操作が必要になった。例えば、従来の、煎茶の製造では、蒸熱工程から乾燥工程まで、3時間程度かかり、また、蒸熱処理や揉捻処理の条件の微妙な調整操作が要求された。
【0003】
一方で、近年、煎茶としての利用が主であった茶の消費形態が変化し、ティーバッグや、容器詰め飲料製造のための茶原料或いは食品添加物としての茶の需要が増大した。このような茶の利用形態においては、従来の煎茶の製造において重要であった、製品茶葉の形状を整えるという必要が必ずしも必要でなくなったため、茶の利用形態に即した、従来の煎茶の加工工程にこだわらない新しい製茶機の開発が行われた。例えば、特公平05−70410号公報には、収穫した茶葉類を、適宜の加熱手段によって表面温度150〜250℃に加熱され、同一表面速度で互いに圧接し、互いに反対方向に回転する2個のローラーの系合面間に供給把持せしめ、茶葉類を高温高圧下に、数秒以下の極短時間熱処理を施し、把持圧から解放することによって急冷、乾燥せしめ、次いで、粉砕機で微粉末にすることにより、飲用或いは飲食品等の添加物として利用できる粉末茶類を短時間で製造する方法が開示されている。
【0004】
また、最近、従来の複数の工程を複数の機械を用いて行なわれた緑茶等の加工を一台の機械で行うオールインワン製茶機の開発がおこなわれている(農業機械学会、第57回大会、講演要旨集、p195−196、平成10年4月;特開平11−169076号公報;図1参照)。この製茶機は、その少なくとも一方を通気可能な状態として張設したベルトと該ベルトの一部に圧接するドラムと、前記ベルトとドラムを駆動するための駆動手段と、前記ベルトとドラムを加熱する加熱手段とより構成され、ベルトとドラムの間に茶葉を投入し、加熱、圧接することにより、ベルトと圧接するドラム間で茶葉を熱伝導加熱乾燥を行い、短時間の機械の操作で乾燥茶葉を製造する製茶装置となっている。この茶製造装置を用いた方法により、単一の装置にて短時間で茶を製造することができ、その操作も簡便であることから、茶製造におけるコストダウンをはかることができるというメリットがある。しかしながら、この製茶機で得られた茶は乾燥むらや乾燥不足が発生する場合があり、更に、製品に青臭さが残り、香味上満足することができる茶製品を製造するまでには至っていなかった。
【0005】
そこで、オールインワン製茶機を用いた茶製造における上記問題を解決するために、オールインワン製茶機の実用改良試作機が開発されている(農業機械学会、第58回大会、講演要旨集、p309−310、平成11年4月;茶研報87、p150−151、1998;図2参照)。この改良機は、上記オールインワン製茶機における、茶芽の葉と茎の厚みや含水率差に起因する乾燥むらなどの問題点を解決するために、(1)茎を加熱部に圧着させるドラムを設け、(2)加熱ドラムをもう1つ追加して乾燥不足を補い、(3)大型化に対応して水分排出用の穴をドラムからベルトに移した構造のものとなっている。この改良機では、茶の乾燥むらや乾燥不足がほとんど発生することはなく、排出用穴をドラムからベルトに配置変えしたことにより、茶葉乾燥時の水分排出効果を高くすることが可能となった。更に、ドラムを1段から2段としたことで、乾燥茶葉の香味バリエーションが付与され、改良前よりも青臭さが少なく香味をある程度は改善することができた。しかしながら、該改良機を用いた茶の製造においても、まだ茶葉の青臭さが残っており、香味上満足する茶製品の製造結果が得られず、実用化にはいたっていなかった。
【0006】
更に、オールインワン製茶機を用いた茶製造における問題を解決するために、オールインワン製茶機の改良試作機が開発されている(農業機械学会、第59回大会、講演要旨集、p127−128、平成12年4月;図3参照)。この改良機は、上記オールインワン製茶機の実用改良試作機において、茶葉材料の供給と加熱方法を改良するために、(1)メイン加熱ドラムにガスバーナが一本追加され、(2)生葉を供給するベルトコンベヤが追加された。しかしながら、この改良機を用いた茶の製造においても、まだ香味上満足する茶製品の製造結果が得られず、実用化にはまだ問題が残されていた。
【0007】
上記のとおり、ティーバッグや、容器詰め飲料製造のための茶原料或いは食品添加物としての茶の需要等、茶の消費形態の変化に伴い、製品茶葉の形状を整えるという従来の煎茶の製造における要件が変化し、新しい茶の利用形態に即した新しい製茶機の開発として、緑茶加工の全てを一台の製茶機で、短時間に連続的に行うことができるオールインワン製茶機の開発が行われた。しかしながら、該製茶機を用いた茶製造においては、依然として従来から問題となっていた青臭さの問題が残されており、容器詰め飲料製造のための茶原料或いは食品添加物としての茶の需要に答えるべく、原料茶葉としての品質を満足しえる香味に優れた茶葉を、短時間の処理で迅速に製造するまでには至っていない。したがって、オールインワン製茶機を用いた製茶技術は、依然として実用化に至っていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−169076号公報。
【特許文献2】特公平05−70410号公報。
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「茶の化学」村松敬一郎、朝倉書店(1991年)p52−p67。
【非特許文献2】農業機械学会、第57回大会、講演要旨集、p195−196、平成10年4月。
【非特許文献3】農業機械学会、第58回大会、講演要旨集、p309−310、平成11年4月。
【非特許文献4】茶研報87、p150−151、1998。
【非特許文献5】農業機械学会、第59回大会、講演要旨集、p127−128、平成12年4月。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、ティーバッグや、容器詰め飲料製造のための茶原料或いは食品添加物としての茶の需要等に対応し、該茶の需要に即した香味の良いお茶を、短時間の処理で迅速に製造する方法及びそのための装置を提供すること、特に、該茶の需要に対応するために、単一の製茶機を用い、複数の機械を使用する必要が無く、コスト低減や加工時間の短縮により、簡便でかつ短時間で、香味のよいお茶を製造する方法及びそのための装置を提供することにある。更に、具体的には、装置内に設けられたベルトとドラムの少なくとも一方を通気可能な状態とし、該ベルトとドラムの間に茶葉を投入し、加熱手段により加熱して、ベルトと圧接するドラム間で茶葉を熱伝導加熱乾燥を行うオールインワン製茶機を用いた乾燥茶葉の製造方法において、該製茶機に投入する茶葉の前処理を行うことにより、味が濃く、浸出液色、香味に優れた、高香味及び高色度の乾燥茶葉を迅速に製造する方法及びそのための装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、ティーバッグや、容器詰め飲料製造のための茶原料或いは食品添加物としての茶の需要等に対応し、かかる茶の需要に即した香味の良いお茶を、短時間の処理で迅速に製造する方法について、鋭意検討する中で、単一の製茶機を用い、ベルトと圧接するドラム間で茶葉に熱伝導加熱を行い、短時間で茶葉の乾燥を行うオールインワン製茶機を用いた乾燥茶葉の製造方法において、該製茶機に投入する茶葉の前処理として、茶葉の蒸し及び/又は揉み処理する工程を設けることにより、従来のオールインワン製茶機による茶の製造において問題となっていた茶葉の青臭さを解消することができ、味が濃く、浸出液色、香味に優れた、高香味及び高色度の乾燥茶葉を、短時間で迅速に製造することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、装置内に設けられたベルトとドラムの少なくとも一方を通気可能な状態とし、該ベルトとドラムの間に茶葉を投入し、加熱手段により加熱して、ベルトと圧接するドラム間で茶葉を熱伝導加熱乾燥を行うオールインワン製茶機を用いた乾燥茶葉の製造方法において、該製茶機に投入する茶葉の前処理として、茶葉の蒸し及び/又は揉み処理する工程を設けたことを特徴とする高香味及び高色度乾燥茶葉の迅速製造方法及び該乾燥茶葉の迅速製造装置からなる。
【0013】
本発明の高香味及び高色度乾燥茶葉の迅速製造方法は、好ましくは、緑茶の乾燥茶葉の迅速製造方法として適用され、特に好ましくは、該茶葉を使用した容器詰茶飲料製造用の原料乾燥茶葉の製造に適用することができる。
【0014】
すなわち、具体的には本発明は、[1]装置内に設けられたベルトとドラムの少なくとも一方を通気可能な状態とし、該ベルトとドラムの間に茶葉を投入し、加熱手段により加熱して、ベルトと圧接するドラム間で茶葉を熱伝導加熱乾燥を行うオールインワン製茶機を用いた乾燥茶葉の製造方法において、該製茶機に投入する茶葉の前処理として、茶葉の蒸し及び/又は揉み処理する工程を設けたことを特徴とする高香味及び高色度乾燥茶葉の迅速製造方法や、[2]茶が、緑茶であることを特徴とする上記[1]記載の高香味及び高色度乾燥茶葉の迅速製造方法からなる。
【0015】
また、本発明は、[3]乾燥茶葉の製造が、該茶葉を使用した容器詰茶飲料製造用の原料乾燥茶葉の製造であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の高香味及び高色度乾燥茶葉の迅速製造方法や、[4]装置内に、少なくとも一方を通気可能な状態として設けたベルト及びドラムと、該ベルトとドラムの間に茶葉を投入するための投入シュートと、該ベルトとドラムの間に投入された茶葉をベルトと圧接するドラム間で熱伝導加熱乾燥を行うための加熱手段とを設けたオールインワン製茶機に、該製茶機に投入する茶葉の前処理手段として、茶葉の蒸し及び/又は揉み処理を行なう茶葉の蒸し手段及び/又は揉み処理手段を設けたことを特徴とする上記[1]記載の高香味及び高色度乾燥茶葉の迅速製造装置からなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、ティーバッグや、容器詰め飲料製造のための茶原料或いは食品添加物としての茶の需要等に対応し、かかる茶の需要に即した香味の良いお茶を、短時間の処理で迅速に製造する方法を提供する。本発明により、従来開発された、単一の製茶機を用い、ベルトと圧接するドラム間で茶葉に熱伝導加熱を行い、短時間で茶葉の乾燥を行うオールインワン製茶機を用いた乾燥茶の製造における利点をそのまま保持し、しかも、従来のオールインワン製茶機による茶の製造において問題となっていた茶葉の青臭さを解消して、味が濃く、浸出液色、香味に優れた、高香味及び高色度の乾燥茶葉を、短時間で迅速に製造することが可能な実用化に即した乾燥茶葉の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、ベルトと圧接するドラム間で茶葉に熱伝導加熱を行い、短時間で茶葉の乾燥を行うオールインワン製茶機の構造を示した図である。
【図2】図2は、オールインワン製茶機において、(1)茎を加熱部に圧着するドラムの設置、(2)加熱ドラムの追加、(3)ベルトに水分排出用の穴を設ける、等の改良を行った改良試作機の構造を示した図である。
【図3】図3は、オールインワン製茶機において、(1)メイン加熱ドラムにガスバーナーの追加、(2)生葉を供給するベルトコンベヤの追加、の点について改良を行った改良試作機の構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、装置内に設けられたベルトとドラムの少なくとも一方を通気可能な状態とし、該ベルトとドラムの間に茶葉を投入し、加熱手段により加熱して、ベルトと圧接するドラム間で茶葉を熱伝導加熱乾燥を行うオールインワン製茶機を用いた乾燥茶葉の製造方法において、該製茶機に投入する茶葉の前処理として、茶葉の蒸し及び/又は揉み処理する工程を設けたことを特徴とする高香味及び高色度乾燥茶葉の迅速製造方法及び該乾燥茶葉の迅速製造装置からなる。
【0019】
本発明において用いられるオールインワン製茶機としては、既に、改良試作機を含めていくつかのものが開示されており、かかる公知の製茶機を用いて、本発明を実施することができる。
【0020】
例えば、特開平11−169076号公報には、1つの装置内に、装置内に設けられたベルトとドラムの少なくとも一方を通気可能な状態とし、該ベルトとドラムの間に茶葉を投入し、加熱手段により加熱して、ベルトと圧接するドラム間で茶葉を熱伝導加熱乾燥を行う、基本構造を備えたオールインワン製茶機が開示されている(図1参照)。図1の符号中、1はベルト;2はドラム;3はモータ;4はバーナ;5はバネ;6はドラム;7は投入シュート;8は茶葉;9,10はスクレーパー;11は水分計;12は受箱;13は機枠;14は茶葉を示す。
【0021】
また、「農業機械学会第58回大会講演要旨集」(農業機械学会、第58回大会、講演要旨集、p309−310)及び、「茶研報87」(茶研報87、p150−151、1998)には、上記基本構造のオールインワン製茶機における、茶芽の葉と茎の厚みや含水率差に起因する乾燥むらなどの問題点を解決するために、(1)茎を加熱部に圧着させるドラムを設け、(2)加熱ドラムをもう1つ追加して乾燥不足を補い、(3)大型化に対応して水分排出用の穴をドラムからベルトに移した構造について改良した改良試作機が開示されている(図2参照)。
【0022】
また、農業機械学会第59回大会、講演要旨集(農業機械学会、第59回大会、講演要旨集、p127−128、平成12年4月)には、改良試作機に更に(1)メイン加熱ドラムにガスバーナを一本追加し、(2)生葉を供給するベルトコンベヤを追加した改良機が開示されている(図3参照)。本発明の高香味及び高色度乾燥茶葉の迅速製造方法においては、これら公知のオールインワン製茶機を用いることができる。
【0023】
本発明の高香味及び高色度乾燥茶葉の迅速製造方法においては、該オールインワン製茶機を用いた乾燥茶葉の製造方法において、該製茶機に投入する茶葉の前処理として、茶葉の蒸し及び/又は揉み処理する工程を設ける。かかる製茶機に投入する茶葉の前処理としての茶葉の蒸し及び/又は揉み処理する工程において用いる装置としては、適宜公知の茶葉の蒸し処理装置或いは揉み処理装置を用いることができる。例えば、茶葉の蒸し処理のための装置としては、従来の煎茶製造の蒸熱工程で用いられている茶葉の蒸熱装置を、また、茶葉の揉み処理装置としては、従来の煎茶製造の粗揉工程で用いられている製茶用粗揉機を用いることができる。
【0024】
本発明における乾燥茶葉の製造の基本的処理としては、生茶葉を一定の条件下で「蒸し」及び/又は「揉み」処理した後に、オールインワン製茶機を使用し、茶葉の加熱、乾燥を行う。オールインワン製茶機では、好ましくは、生茶葉は上部の振動コンベヤ式フィーダで、メイン加熱ドラム上に供給され、ベルトのプーリを兼ねた圧着ドラムで強く加熱ドラムに押し付けられた後、穴あきスチールベルトと加熱ドラムに挟まれた状態で、加熱ドラムを約半周する。この間、加熱ドラムによる伝導加熱で、茶葉内の酸化酵素は不活性化され、同時に茶葉の水分も蒸発してベルトの穴から排出される。この後、茶葉はサブ加熱ドラムを通って再度乾燥され、押し花に似たフレーク状の製品となる。
【0025】
本発明のオールインワン製茶機を用いた乾燥茶葉の製造方法において、該製茶機に投入する茶葉の前処理としての茶葉の蒸し処理或いは揉み処理の条件としては、採摘した茶葉の性状によって相違するが、茶葉の蒸し処理の条件としては、80℃〜100℃の温度で、約1分間の蒸熱処理を、揉み処理の条件としては、製茶用粗揉機を用いて、約5分間の揉み処理を行うのが好ましい。
【0026】
本発明のオールインワン製茶機を用いた乾燥茶葉の製造方法は、特に、緑茶(荒茶)の製造に最も好適に適用することができる。すなわち、茶には、発酵の方法・程度により、緑茶(不発酵茶)、白茶(弱発酵茶)、青茶(半発酵茶;ウーロン茶)、紅茶(完全発酵茶・全発酵茶)、黄茶(弱後発酵茶)、黒茶(後発酵茶)などがあり、本発明の乾燥茶葉の製造方法は、どの茶原料(生茶葉)にも適用することが可能であるが、緑茶(荒茶)の製造に最も好適に使用することができる。
【0027】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
[実験1]
<試験方法>
原料茶葉としては、試験当日に摘採した緑茶「つゆひかり品種」の生葉を用いた。
【0029】
<サンプルの調製方法>
(1)蒸し:家庭用の蒸籠を用いた。内蓋の上に生葉を薄く広げて、常圧にて生葉を蒸した。蒸し時間は、0.5、1.0、2.0、4.0分間で検討した。
(2)手揉み:生葉もしくは蒸した生葉を、圧力をかけながら5分間手で揉んだ。
(3)ブランチング:家庭用電子レンジ(750ワット)を用いて1.5分間加熱処理した。
(4)オールインワン製茶機(株式会社寺田製作所製 型番:TY−01):前ドラム、後ドラムの設定温度をそれぞれ130〜160℃、110〜130℃に設定した。茶葉のオールインワン製茶機の処理時間は3分に設定した。
【0030】
<評価方法>
(1)官能評価は香味に敏感なパネリスト5名を選定し実施した。
(2)浸出液色、香気、呈味の濃さ:ミキサーで粉砕した茶葉を3g計量し検茶杯にて入れ、熱湯(容量200ml)で3分間抽出したものを官能評価した。
(3)官能評価基準:
「香気」:0点:不快;1点:やや不快;2点:普通;3点:やや良好;4点:良好;5点:とても良好。
「呈味の濃さ」:0点:味がない;1点:薄い味;2点:味がある;3点:普通;4点:やや濃い味;5点:味が濃い。
【0031】
<結果>
結果を、表1に示す。表1に示されるように、浸出液色、香気、呈味の濃さを改善するには、「蒸し」および/又は「揉み」工程が重要であることが判明した。
【0032】
【表1】

【0033】
[実験2]
<容器詰茶飲料の製造と官能評価試験>
比較例3で得られた茶葉と実施例5で得られた茶葉を使用し、パイロットプラントにおいて容器詰緑茶飲料(スチール缶飲料とPET飲料)を通常の方法(最新・ソフトドリンクスp487−p495参照(平成15年発行;(株)光琳))により製造した。尚、茶葉の使用比率は実験1と同じ比率とした。尚、缶飲料ではレトルト殺菌、PET飲料ではUHT殺菌を実施した。実験1と同様に5人で官能評価を行った結果、明らかに実施例5の茶葉を使用した容器詰飲料(スチール缶飲料とPET飲料)の方が比較例3で得られた茶葉の場合よりも香味が良いことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、ティーバッグや、容器詰め飲料製造のための茶原料或いは食品添加物としての茶の需要等に対応し、かかる茶の需要に即した香味の良いお茶を、短時間の処理で迅速に製造することが可能であり、かかる茶の需要を満足する高香味及び高色度の乾燥茶葉を、短時間で迅速に製造することが可能な実用化に即した乾燥茶葉の製造方法を提供する。
【符号の説明】
【0035】
図1の符号中、1はベルト;2はドラム;3はモータ;4はバーナ;5はバネ;6はドラム;7は投入シュート;8は茶葉;9,10はスクレーパー;11は水分計;12は受箱;13は機枠;14は茶葉を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置内に設けられたベルトとドラムの少なくとも一方を通気可能な状態とし、該ベルトとドラムの間に茶葉を投入し、加熱手段により加熱して、ベルトと圧接するドラム間で茶葉を熱伝導加熱乾燥を行うオールインワン製茶機を用いた乾燥茶葉の製造方法において、該製茶機に投入する茶葉の前処理として、茶葉の蒸し及び/又は揉み処理する工程を設けたことを特徴とする高香味及び高色度乾燥茶葉の迅速製造方法。
【請求項2】
茶が、緑茶であることを特徴とする請求項1記載の高香味及び高色度乾燥茶葉の迅速製造方法。
【請求項3】
乾燥茶葉の製造が、該茶葉を使用した容器詰茶飲料製造用の原料乾燥茶葉の製造であることを特徴とする請求項1又は2記載の高香味及び高色度乾燥茶葉の迅速製造方法。
【請求項4】
装置内に、少なくとも一方を通気可能な状態として設けたベルト及びドラムと、該ベルトとドラムの間に茶葉を投入するための投入シュートと、該ベルトとドラムの間に投入された茶葉をベルトと圧接するドラム間で熱伝導加熱乾燥を行うための加熱手段とを設けたオールインワン製茶機に、該製茶機に投入する茶葉の前処理手段として、茶葉の蒸し及び/又は揉み処理を行なう茶葉の蒸し手段及び/又は揉み処理手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の高香味及び高色度乾燥茶葉の迅速製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−259387(P2010−259387A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113574(P2009−113574)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(391058381)キリンビバレッジ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】