説明

乾燥設備の設計支援システム

【課題】 乾燥設備の装置構成を異ならせた場合の、温室効果ガス排出量及びコストの比較を容易に且つ迅速に行うことのできる、新規な乾燥設備の設計支援システムの開発を技術課題とした。
【解決手段】 構成機器及び配置選択工程P1と、被処理物Hの条件及び乾燥品の条件並びに各構成機器の運転条件を入力する条件入力工程P2と、回路図125での各構成機器の運転条件を求める運転条件導出及び機器選択工程P3と、各構成機器のエネルギー使用量を求めるとともに、乾燥設備D全体のエネルギー使用量を求めるエネルギー使用量算出工程P4と、各構成機器からの温室効果ガス排出量を求めるとともに、乾燥設備D全体からの温室効果ガス排出量を求める温室効果ガス排出量算出工程P5と、各構成機器のコストを求めると共に、乾燥設備D全体のコストを求めるコスト算出工程P6とが具えられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒートポンプユニット等を具えて成る乾燥設備の設計支援ツールに関するものであり、特に装置構成や各種運転条件を異ならせた場合の温室効果ガス排出量及びコストの比較を、容易に且つ迅速に行うことのできる乾燥設備の設計支援システムに係るものである。
【背景技術】
【0002】
近時、環境保全の取り組みが盛んになってきており、更に省エネルギー(以下、省エネと称する)の観点から、乾燥設備における熱源としてヒートポンプユニットを適用することが試みられている。
具体的には、例えばバンド乾燥機に対して、フロン系の冷媒を使用したヒートポンプユニットが適用された装置が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで前記乾燥設備の被処理物としては、多種多様なものが取り扱われ、乾燥設備の構成機器である乾燥機やその周辺機器の組み合わせは、被処理物の物性や乾燥の目的等に応じて適宜の構成が選択されることとなる。
もちろん環境保全の観点からは、温室効果ガス排出量が少ない乾燥設備を構築することが望ましいが、乾燥効率やコストを重視する場合も現実には多く存在する。
このため乾燥設備を設計するにあたっては、温室効果ガス排出量、乾燥効率、イニシャルコスト、ランニングコスト、ライフサイクルコスト等の優先度を異ならせた複数の装置構成を比較検討することが行われるが、このための計算は非常に複雑なものであった。
これは、前記ヒートポンプユニット等、乾燥設備の構成機器はカタログ上(仕様上)、単体としての消費電力やCOP等の値は明示されてはいるものの、実際に乾燥設備に組み込まれた際には、他の機器との関係で熱負荷等の運転条件が異なってくるからである。このため、構成が異なる乾燥設備毎に個別の計算が必要になる。特に乾燥機に供給される乾燥気体の昇温に蒸気を用いる構成が採られた場合等、乾燥設備のエネルギー源として電気、石油等の燃料、更には他の機器からの排熱等が混在することとなり、前記計算は更に複雑なものとなってしまう。
【0004】
また乾燥設備の製造業者が顧客に対して乾燥設備の提案を行うにあたっては、温室効果ガス排出量、イニシャルコスト、ランニングコスト、ライフサイクルコスト等の優先度を異ならせた複数の装置構成を提示して、提案する乾燥設備が顧客の要求を満たすものであることを判り易く明示することが望ましい。
しかしながらこのような提案の場においては、各種条件の変更、構成機器の変更等、事前に予測できない要求が生じることもあり、これらも含めて事前に複数の装置構成のデータを用意しておくことは、現実には不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3957652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような背景を認識してなされたものであって、乾燥設備の装置構成を異ならせた場合の、温室効果ガス排出量及びコストの比較を容易に且つ迅速に行うことのできる、新規な乾燥設備の設計支援システムの開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載の乾燥設備の設計支援システムは、乾燥機及びその周辺機器を構成機器として成る乾燥設備のシミュレーションを行うシステムにおいて、前記乾燥設備の回路図を決定する工程と、被処理物の条件及び乾燥品の条件を入力する工程と、各構成機器の運転条件を入力する工程と、前記被処理物の条件及び乾燥品の条件を用い、前記回路図での各構成機器の運転条件を求める工程と、各構成機器のエネルギー使用量を求めるとともに、乾燥設備全体のエネルギー使用量を求める工程と、各構成機器からの温室効果ガス排出量を求めるとともに、乾燥設備全体からの温室効果ガス排出量を求める工程と、各構成機器のコストを求めると共に、乾燥設備全体のコストを求める工程とが具えられていることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載の乾燥設備の設計支援システムは、前記要件に加え、前記乾燥機の周辺機器としてヒートポンプユニットが具えられた乾燥設備の場合には、ヒートポンプユニットの出口熱風温度−風量特性及び出口熱風温度−COP特性を用いて、ヒートポンプユニットの構成を決定することを特徴として成るものである。
【0009】
更にまた請求項3記載の乾燥設備の設計支援システムは、前記要件に加え、前記運転条件、エネルギー使用量、温室効果ガス排出量及びコストのいずれか一つまたは複数の導出および/または算出は、データ処理シートデータベースに記憶されたデータシートに記憶された条件式や計算式に基づいて行われることを特徴として成るものである。
【0010】
更にまた請求項4記載の乾燥設備の設計支援システムは、前記要件に加え、前記運転条件、エネルギー使用量、温室効果ガス排出量及びコストのいずれか一つまたは複数は、構成を異ならせた乾燥設備のものが、一覧表として表示されることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0011】
まず請求項1記載の発明によれば、乾燥設備の回路図を決定するとともに、被処理物の条件及び乾燥品の条件更には各構成機器の運転条件を入力することにより、各構成機器及び乾燥設備全体の、運転条件、エネルギー使用量、温室効果ガス排出量及びコストを容易に且つ迅速に求めることができる。
このため回路図や構成機器を異ならせた乾燥設備の比較を迅速に行うことができ、温室効果ガス排出量を優先したり、コストを優先する等、顧客の要望に応じた最適な乾燥設備を提案、提供することができる。
【0012】
また請求項2記載の発明によれば、選択された回路図に組み込まれ、選択された条件の下でのヒートポンプユニットの能力を及び作動状況を、容易に且つ正確に求めることができ、乾燥設備全体の運転条件、エネルギー使用量、温室効果ガス排出量及びコストを迅速且つ正確に求めることができる。
【0013】
また請求項3記載の発明によれば、操作者は、複雑な計算を行うことなく、運転条件、エネルギー使用量、温室効果ガス排出量及びコストのいずれか一つまたは複数を、迅速且つ正確に求めることができる。
【0014】
また請求項4記載の発明によれば、回路図および/または構成機器を異ならせた乾燥設備のパフォーマンスを、視覚を通じて明確に認識することができ、より詳細な比較検討を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ヒートポンプユニットが具えられた乾燥設備を示すブロック図である。
【図2】本発明の乾燥設備の設計支援システムを実現するためのコンピュータを示す斜視図である。
【図3】本発明の乾燥設備の設計支援システムによる処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】記憶装置に記憶されるデータベースを示すブロック図である。
【図5】フロー及びユーティリティ選択画面を示す正面図である。
【図6】回路図選択画面を示す正面図である。
【図7】回路図とともに表示された数値入力画面を示す正面図である。
【図8】数値入力画面を示す正面図である。
【図9】ヒートポンプユニット一台の出口熱風温度−風量特性及び出口熱風温度−COP特性を示すグラフである。
【図10】ヒートポンプユニットが具えられていない乾燥設備を示す回路図である。
【図11】比較表が表示された画面を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の乾燥設備の設計支援システムの最良の形態の一例は以下の実施例に示すとおりであるが、この実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例】
【0017】
本発明の乾燥設備の設計支援システムS(以下、設計支援システムSと称す)は、一例として図1に示すような乾燥設備Dの設計支援を行うためのツールである。ここで前記乾燥設備Dは、乾燥機1並びにこの乾燥機1に乾燥気体A3を供給するためのヒートポンプユニット2や熱交換器3等の外気A0の昇温装置等、複数の周辺機器を構成機器として成るものである。
そして前記設計支援システムSは、乾燥設備Dの構成を変えたときの、運転条件、エネルギー使用量、温室効果ガス排出量及びコストの比較検討を容易に且つ迅速に行うことを可能にするものである。
【0018】
前記設計支援システムSは一例として図2に示すようなコンピュータ100を用いて実現されるものであり、具体的には記憶装置110に対して記憶されたプログラムによって、図3に示すフローチャートに従った処理を行うことにより、結果をディスプレイ120に表示して、乾燥設備Dの設計支援を実現するものである。
また前記記憶装置110には図4に示すように、回路図データベースDB1、機器データベースDB2、環境影響データベースDB3、コスト・エネルギーデータベースDB4及びデータ処理シートデータベースDB5が構築され、これらに各種情報が記憶される。
なお前記記憶装置110としては、コンピュータ100に内蔵されるハードディスクドライブ(以下HDD111と称する。)あるいはCD、DVD、BD等のディスクメディア及びこれらメディアの読み書きを行うディスクドライブ更にはUSBメモリ等のリムーバルメディアが適用される。
【0019】
ここで前記回路図データベースDB1に記憶される情報は、乾燥設備Dの機器構成及び接続形態についての情報である。この実施例では一例として、乾燥機1の排気Gを循環使用する構成(「循環」)であるか、あるいは排気Gを循環使用しない構成(「ワンパス」)であるかの選択肢と、外気A0を昇温するためのエネルギー源が、「蒸気」、「ガス」、「液体燃料」のうちの何れであるかの選択肢とで分類される、六種類の回路構成が図7、10に示すような回路図125として選択可能とされている(図5、6参照)。
またこの実施例では、前記回路図データベースDB1に、各回路図125中の構成機器の運転条件等を入力するためのフォームが図8に示すような数値入力画面123として記憶されるようにした。
【0020】
次に前記機器データベースDB2に記憶される情報は、乾燥設備Dの構成機器となる機器の情報であり、この実施例では、乾燥機1、ヒートポンプユニット2、熱交換器3、排熱回収装置5等の機器の情報が該当する。
具体的には乾燥機1の情報としては、処理能力を算出するための計算式(乾燥機1に投入前の被処理物Hの投入量、水分及び温度並びに乾燥機1から排出される乾燥品の排出量、水分及び温度により算出される水蒸気蒸発量、エンタルピー)、消費電力、エアリーク量、乾燥気体A3が乾燥機1を通過する時に生ずる圧力損失値等が挙げられる。
【0021】
またヒートポンプユニット2の情報としては、昇温能力(性能グラフ)、消費電力、成績係数(COP)、冷却能力、凝縮器21における外気入口と熱風出口との間の圧力損失値等が挙げられる。
更にまた熱交換器3の情報としては、熱伝導係数、受熱側入口出口間の圧力損失値、外形寸法、補正係数が挙げられる。
更にまた排熱回収装置5の情報としては、熱伝導係数、放熱側入口出口間の圧力損失値、外形寸法、補正係数が挙げられる。
【0022】
なお回路図データベースDB1には、上記機器以外にも電力を消費する機器の情報を記憶しておくことが好ましく、吹込ファン16及び排気ファン17の情報として、風量データ、ファン静圧データ、消費電力データ等を記憶するようにした。更にまた、ポンプ61及びポンプ62の情報として、送液量データ、吸引圧データ、吐出圧データ、消費電力データを記憶するようにした。
【0023】
次に前記環境影響データベースDB3に記憶される情報は、機器を接続する管に流体が流れるときに生ずる圧力損失値、乾き空気物性値、湿り空気物性値、蒸気の温度、蒸気の使用量、電気の使用量、用水の使用量と温室効果ガス発生量との関係式、各構成機器の運転時の消費電力に対する温室効果ガス発生量のデータ、蒸気発生源用各種燃料物性値、各種燃料使用量と温室効果ガス発生量の情報、等が挙げられる。
【0024】
次に前記コスト・エネルギーデータベースDB4に記憶される情報は、イニシャルコスト情報とランニングコスト情報とに大別される。
まずイニシャルコスト情報としては、乾燥機1、ヒートポンプユニット2、熱交換器3、排熱回収装置5、吹込ファン16、排気ファン17、作用水タンク6、ポンプ61、ポンプ62等、乾燥設備Sを構成する機器の単価及び配管等の周辺部材の単価等が挙げられる。
一方、ランニングコスト情報としては、燃料単価、用水単価、電気料金、更に保守費用、各機器の耐用年数等が挙げられる。
【0025】
次に前記データ処理シートデータベースDB5には、表計算機能を有するデータ処理シートが記憶されるものであり、このデータ処理シートには、図8に示す数値入力画面123に入力されたデータを処理するための表データ及び計算式が記憶される。
【0026】
ここで図1に示した乾燥設備Dの構成機器について詳しく説明する。
まず前記乾燥機1は、一例として連続式乾燥機が適用されるものであり、この実施例ではいわゆるバンド型(低温除湿)乾燥装置が適用される。
この装置は、筐体10内を乾燥のための処理空間とするものであり、筐体10内に一例として三段に設けられた通気性のネットコンベヤ11によって移送される被処理物Hに対し、乾燥気体A3を接触させることにより乾燥を行うものである。
このため筐体10の上部には給気口12及び投入口13が形成され、更に筐体10の下部には排気口14及び排出口15が形成される。
また乾燥機1の周辺機器として、吹込ファン16及び排気ファン17が具えられる。
【0027】
次に前記ヒートポンプユニット2について説明すると、このものは、凝縮器21と、膨張弁22と、蒸発器23と、圧縮機24とを具えてヒートポンプサイクルを形成するものであり、外気A0を昇温して昇温外気A1とする装置である。この実施例では一例として二酸化炭素を冷媒とするものが採用される。
【0028】
次に前記昇温装置3について説明すると、このものは前記ヒートポンプユニット2によって昇温された昇温外気A1または後述する混合気A2を、更に昇温するための装置であり、一例として、パイプ31の側周に複数の放熱フィン32が具えられたフィン付熱交換器が適用される。
【0029】
次に前記排熱回収装置5について説明すると、このものは被処理物Hに作用した後、乾燥機1から排出された排気Gの熱(排熱)を回収するための装置である。なおこの実施例では、詳しくは後述するが前記排熱は作用水Wに取り込まれてヒートポンプユニット2の熱源として供されるようにした。
前記排熱回収装置5としては一例として、パイプ51の側周に複数の放熱フィン52が具えられたフィン付熱交換器が適用される。
【0030】
そして図1に示すように、前記乾燥機1、ヒートポンプユニット2、昇温装置3及び排熱回収装置5を組み合わせて乾燥設備Dが構成される。
具体的には、まずヒートポンプユニット2における凝縮器21の出力側に吹込ファン16が管路を用いて接続され、この吹込ファン16と乾燥機1における給気口12との間に昇温装置3が設けられる。そして昇温装置3におけるパイプ31には、図示しない蒸気発生装置が接続されるものであり、このような構成が採られることにより、ヒートポンプユニット2から送られてくる昇温外気A1は、排気Gの一部と混合されて混合気A2となり、更に昇温装置3において蒸気の熱を受けて昇温され、所望の温度となった乾燥気体A3として乾燥機1に供給されることとなる。
またヒートポンプユニット2における蒸発器23の入力側及び出力側は、管路によって作用水タンク6に接続されるものであり、更に蒸発器23の入力側と作用水タンク6との間にポンプ61が具えられる。
【0031】
また乾燥機1における排気口14と、排熱回収装置5との間が管路によって接続される。そして前記排熱回収装置5におけるパイプ51の両端が管路によって作用水タンク6に接続されるものであり、パイプ51の入力側と作用水タンク6との間にポンプ62が具えられる。
そしてこのような構成が採られることにより、排気Gから排熱回収装置5によって回収された熱を、作用水Wに取り込むとともに、この作用水Wをヒートポンプ2における蒸発器23に供給することにより、排気Gの熱を外気A0の昇温のためのエネルギーとして有効利用することが可能となる。
【0032】
この実施例で示す乾燥設備Dは、一例として上述したように構成されるものであり、以下、本発明の設計支援システムSによって、図1(図7)に示す乾燥設備Dと、図10に示す装置構成を異ならせた乾燥設備D1との、運転条件、エネルギー使用量、温室効果ガス排出量及びコストの比較を行う態様について説明する。
なお前記乾燥設備D1は、乾燥設備Dの構成機器のうち、ピートポンプユニット2、排熱回収装置5、作用水タンク6、ポンプ61及びポンプ62を削除した構成となっている。
そして操作者がコンピュータ100を操作することにより、記憶装置110に対して記憶されたプログラムによる、図3に示すフローチャートに従ったデータ処理が行われる。
【0033】
〔構成機器及び配置選択工程〕(図3P1)
まずコンピュータ100を起動して設計支援システムSのプログラムを実行することにより、図5に示すようにディスプレイ120に対してフロー・ユーティリティ選択画面121が表示される。この実施例では、フロー・ユーティリティ選択画面121中において、フロー(排気Gの流れ)として「ワンパス」または「循環」が選択可能とされており、またユーティリティ(蒸気発生の熱源)として「蒸気」、「ガス」または「液体燃料」が選択可能とされている。
そして操作者は検討対象となる乾燥設備Dの構成を画面上で選択するものであり、この実施例では図1に示す乾燥設備Dの構成に合致したフローとして「循環」、ユーティリティとして「蒸気」を選択するようにした。
なお図示は省略するが、前記ユーティリティとして「液体燃料」を選択した場合には別画面が表示され、「A重油」または「灯油」等が選択可能とされるものとする。
次いで操作者は決定ボタン121aをクリックして、図6に示す回路図選択画面122を表示させる。この回路図選択画面122は、前記フロー・ユーティリティ選択画面121での入力事項に適合した回路図情報が、回路図データベースDB1より呼び出されて表示されるものであり、操作者は、対象となる乾燥設備Dの構成が示された選択ボタン122aをクリックする。
なおこの実施例では、回路図選択画面122に対し、回路図番号が付された選択ボタン122aのみが表示されるようにしたが、回路図125を適宜縮小したり図案化するなどして表示するようにしてもよい。またこの実施例では、図6中において選択ボタン122aが二個所に表示されるものであり、このように、選択可能な回路図125の数に応じた数の選択ボタン122aが表示されるものである。
【0034】
〔条件入力工程〕(図3P2)
次いでディスプレィ120には図7、8に示すように、前記回路図選択画面122での入力事項に適合した回路図125及びこの回路図125における各種条件の数値を入力するための数値入力画面123が、回路図データベースDB1より呼び出されて表示される。
そして操作者は、数値入力画面123の各カーソルに対して数値を入力してゆくものであり、この実施例では一例として以下の項目の入力が行われるものとした。

・被処理物:処理量〔kg/h〕、水分値〔%W.B.〕、温度〔℃〕

・運転時間:平均運転時間〔h/D〕、稼働日数〔D/y〕

・ヒートポンプユニット:熱源水入口温度〔℃〕、熱源水出口温度〔℃〕、外気温度〔℃〕、外気湿度〔kg/kg′〕、外気風量〔kg′/h〕
(上記熱源水入口温度とは、作用水Wが蒸発器23に入るときの温度であり、また熱源水出口温度とは、作用水Wが蒸発器23から出るときの温度である。)

・乾燥気体:温度〔℃〕、湿度〔kg/kg′〕、流量〔kg′/h〕

・乾燥品:水分値〔%W.B.〕、温度〔℃〕

・蒸気:圧力〔MPaG〕

・乾燥機:放熱量〔kJ/(m2 ・h)〕、面積〔m2 〕、エアリーク〔%〕
(上記面積とは、放熱に関する表面積のことである。)

・排熱回収クーラ(排熱回収装置5):台数〔台〕、湿り補正係数

・排気条件:温度〔℃〕、湿度〔kg/kg′〕

そして数値入力画面123の各カーソルに入力された数値は、記憶装置110内の適宜の領域に記憶され、更に図7に示すように回路図125中の該当個所に表示された枠内に表示される。
このとき外気A0の風量については、数値入力画面123において単位:〔kg′/h〕での数値入力が行われるものであり、この値と適宜単位換算された値(一例として〔m3 /min〕と〔Nm3 /min〕と〔Nm3 /h〕)が回路図125中に表示されるようにした。
【0035】
〔運転条件導出及び機器選択工程〕(図3P3)
次いで操作者が計算実行ボタン123aをクリックすると、コンピュータ100は、前記入力データをデータ処理シートデータベースDB5に記憶されたデータ処理シートの該当個所に読み込み、各データ処理シートに記憶されている条件や計算式に基づいて、乾燥設備Dを構成する各機器の運転条件のうち、未決定となっている項目の決定を行う。
例えば、ヒートポンプ2によって昇温された昇温外気A1の温度及び湿度と、乾燥機1に供給される乾燥気体A3の温度及び湿度とを用いて、昇温装置3の能力及びこの昇温装置3に供給される蒸気の温度、流量等が決定される。
【0036】
またこの実施例では、数値入力画面123への入力値に応じて、ヒートポンプユニット2の周辺環境が設定されるものであり、数値入力画面123に入力された外気条件の各値と、環境影響データベースDB3及び機器データベースDB2に記憶されたヒートポンプユニット2の特性データとを照らし合わせて設定される。
具体的には、ヒートポンプユニット2の特性データの一つであるヒートポンプ出口熱風温度と風量との特性の関係式に外気条件の各値を当てはめて、ヒートポンプ出口熱風温度が決定される。ここでは、説明上の便宜のために、図9(a)に、各外気温度におけるヒートポンプユニット2の、ヒートポンプ出口熱風温度と風量の関係をグラフ化して説明する。
図9(a)中の上側の3本の太い曲線は、一例として示した各外気温度におけるヒートポンプユニット2の風量の上限能力を示す線である。また図9(a)中の下側の3本の細い曲線は、一例として示した各外気温度におけるヒートポンプユニット2の風量の下限能力を示す線である。そしてこの上限と下限の間が、ヒートポンプユニット2が送風できる能力範囲である。
図9(a)によれば、外気温度が10℃の場合、外気風量6600kg′/h、すなわち単位換算すると5150Nm3 /hに相等する風量は、上限能力を示す曲線のヒートポンプ出口熱風温度75℃に相等するので、ヒートポンプユニット2は75℃の熱風を5150Nm3 /hで送風する能力で選定されたことになる。
また、本図9(a)に例示される風量特性は、ヒートポンプユニット2の1台に相等する能力であり、数値入力画面123で入力した外気風量6600kg′/hは、この例示された本図9(a)中の風量の上限能力と下限能力の間に該当するため、ヒートポンプユニット2は1台で入力条件を満たし、すなわち必要台数が1台であることも選定されたことになる。
【0037】
一方、ヒートポンプユニット2の特性データの一つである出口熱風温度とCOPとの特性も関係式となって機器データベースDB2に記憶されている。ここでは、説明上の便宜のために、図9(b)に、各外気温度におけるヒートポンプユニット2の、ヒートポンプ出口熱風温度とCOPの関係をグラフ化して説明する。
図9(b)中の3本の曲線は、一例として示した各外気温度におけるヒートポンプユニット2のCOPを示す線である。そして図9(a)によりヒートポンプユニット2の選定された75℃におけるCOPは、本図9(b)の、外気温度10℃での曲線により、COPが4.8であることになる。
これらにより、ヒートポンプユニット2の構成(この実施例では、必要となるヒートポンプユニット2の風量、必要となるヒートポンプユニット2の台数、ヒートポンプ出口熱風温度及び消費電力)が選択されるものである。
ここで、例えば、乾燥気体の温度が150℃ではなく70℃で入力されている場合は、ヒートポンプユニット2の風量は5150Nm3 /hで、ヒートポンプ出口熱風温度は70℃が選定される。
また、例えば、入力した外気風量がヒートポンプユニット2の1台に相等する能力を超えた値である場合、ヒートポンプユニット2の台数、ヒートポンプユニット2の1台当りに換算された風量、及び、ヒーポンプ出口熱風温度が演算により変更され、入力した外気風量を満たす、すなわち乾燥機1が必要とする風量が満たされる条件が選定され、以下上記と同様にしてCOPも選定される。
【0038】
なお前記数値入力画面123において、「乾燥気体」の「温度」、「熱源水」の「入口温度」、「出口温度」の値を変更することにより、ヒートポンプユニット2の作動状態を異ならせた際の、乾燥設備D全体での運転条件を求めることができるため、効率の良い運転条件を選択することが可能となる。
【0039】
〔エネルギー使用量算出工程〕(図3P4)
次いでコンピュータ100は、機器データベースDB2及び環境影響データベースDB3に記憶されている条件、計算式に基づいて、乾燥設備Dを構成する各機器のエネルギー使用量を求める。
例えばユーティリティとして蒸気を使用する場合には、蒸気の使用量と、蒸気圧より求められた蒸発潜熱とを乗じることにより、エネルギー使用量が算出される。
エネルギー使用量=蒸気の使用量×蒸発潜熱
【0040】
また、ヒートポンプユニット2の圧縮機24と各構成機器の消費電力は、使用量(図7に示された乾燥設備Dの構成機器が定常運転されている状態で、各構成機器が消費する電力量の合計量)に、電気を作る際に発生するロス(発電所における排ガスとして損失するロス、蒸気タービンの排気の凝縮器ロス、機械的ロス、及び送電ロス)を考慮した係数を乗じることにより、エネルギー使用量が算出される。

エネルギー使用量=使用量×係数

そして乾燥設備Dを構成する各機器のエネルギー使用量を加算することにより、乾燥設備D全体のエネルギー使用量が算出される。
【0041】
〔温室効果ガス排出量算出工程〕(図3P5)
次いでコンピュータ100は機器データベースDB2及び環境影響データベースDB3に記憶されている条件、計算式に基づいて、乾燥設備Dを構成する各機器の温室効果ガス排出量を算出する。
例えば、使用する燃料の種類に応じて、燃料の種類ごとの発熱量と、燃料の種類ごとの炭素排出量係数とを乗じ、二酸化炭素排出量に換算するため二酸化炭素の分子量を炭素の分子量で除したものを乗じることにより、温室効果ガス排出量が算出される。

温室効果ガス排出量=(発熱量×炭素排出量係数)×(二酸化炭素分子量/炭素分子量)

また、ポンプユニット2の圧縮機24と各構成機器の温室効果ガス排出量は、使用量(図7に示された乾燥設備Dの構成機器が定常運転されている状態で、各構成機器が消費する電力量の合計量)に電力会社毎の二酸化炭素排出係数を乗じることにより算出される。

温室効果ガス排出量=使用量×二酸化炭素排出係数

そして乾燥設備Dを構成する各機器の温室効果ガス排出量を加算することにより、乾燥設備D全体の温室効果ガス排出量が算出される。
【0042】
〔コスト算出工程〕(図3P6)
次いでコンピュータ100は、乾燥設備Dの各構成機器のイニシャルコストをコスト・エネルギーデータベースDB4から読み込んで、データ処理シートデータベースDB5に記憶された計算式を用いて、選定された各構成機器の単価を積算して乾燥設備D全体のイニシャルコストを算出する。
またコンピュータ100は、データ処理シートデータベースDB5に記憶された計算式を用いてランニングコストを算出するものであり、燃料及び電力の使用量に個々の単価を乗じて積算し、ランニングコストを算出する。
【0043】
〔データ保存〕
次いでコンピュータ100は、ここまでの入力値、導出事項、算出値等を、例えば「A工場Bライン構成1」等とタイトルが付与された状態で記憶装置110内の適宜の領域に記憶する。
【0044】
〔結果表示工程〕(図3P7)
次いでコンピュータ100は、前記「A工場Bライン構成1」のデータのうち、比較検討の対象となるものや重要なものを、図11(a)に示すような比較表126の所定欄に当てはめて、これをディスプレィ120に表示する。
またこの実施例では、経過年数−ライフサイクルコスト特性のグラフ127と、生産量1t当りのランニングコストのグラフ128を、比較表126とともにディスプレイ120に表示するようにした。
ここで図11(a)中、変動費〔円/t〕とは、水分蒸発量1ton当りにかかる費用を意味するものである。
【0045】
〔比較検討工程〕(図3P8)
そして乾燥設備Dとは構成を異ならせた乾燥設備D1についても、同様にP1〜P6の操作が行われるものであり、例えば図10に示した乾燥設備D1についての入力値、導出事項、算出値等を「A工場Bライン構成2」とタイトルが付与された状態で記憶する。つまり、「A工場Bライン構成1」とタイトルが付与された情報は乾燥設備Dについての情報であり、「A工場Bライン構成2」とタイトルが付与された情報は乾燥設備D1についての情報である。
次いでコンピュータ100は、前記「A工場Bライン構成2」のデータを、図11(a)に示した比較表126の所定欄に当てはめた状態でディスプレイ120に表示する。またグラフ127中に経年変化ーライフサイクルコスト特性を描画し、グラフ128中に変動費積算グラブを描画する。
コンピュータ100によって上述のような処理が行われることにより、操作者は、比較表126を見ることによって、「A工場Bライン構成1」と「A工場Bライン構成2」とのコスト(イニシャルコスト、ランニングコスト)及び温室効果ガス(二酸化炭素)排出量を容易に比較して、乾燥設備Dの設計に反映させることができる。そして再度条件を変えて比較検討を行う場合には図3に示すフローチャートの構成機器及び配置選択工程P1に戻る。
【0046】
また、例えばヒートポンプユニット2は初期費用が高価であることが気になる顧客に対して、乾燥設備Dは乾燥設備D1に比べて温室効果ガス(二酸化炭素)排出量が少ないことを、比較表126の形で明示することができる。
またいわゆるライフサイクルコストについては、ヒートポンプユニット2が具えられた乾燥設備Dの方が、ある経過年数を過ぎると乾燥設備D1よりも安価となることを、グラフ127の形で明示することができる。因みにグラフ127では、約3.0年を経過すると、乾燥設備Dのライフサイクルコストが乾燥設備D1のライフサイクルコストよりも安価になることが確認できる。
このように、上記のイニシャルコスト、ランニングコスト、温室効果ガス(二酸化炭素)排出量及びライフサイクルコストについて、ヒートポンプユニット2を有する乾燥設備Dのものと、ヒートポンプユニット2を有しない乾燥設備D1のものとを、同一画面上で比較することができるため、操作者は説得力のあるプレゼンテーションを行うことができる。一方、顧客は、乾燥設備Dの導入の判断指標を容易に得ることができる。
【符号の説明】
【0047】
S 設計支援システム
D 乾燥設備
D1 乾燥設備
1 乾燥機
10 筐体
11 ネットコンベヤ
12 給気口
13 投入口
14 排気口
15 排出口
16 吹込ファン
17 排気ファン
2 ヒートポンプユニット
21 凝縮器
22 膨張弁
23 蒸発器
24 圧縮機
3 昇温装置(熱交換器)
31 パイプ
32 放熱フィン
5 排熱回収装置
51 パイプ
52 放熱フィン
6 作用水タンク
61 ポンプ
62 ポンプ
100 コンピュータ
110 記憶装置
111 HDD
120 ディスプレイ
121 フロー・ユーティリティ選択画面
121a 決定ボタン
122 回路図選択画面
122a 選択ボタン
123 数値入力画面
123a 計算実行ボタン
125 回路図
126 比較表
127 グラフ
128 グラフ
A0 外気
A1 昇温外気
A2 混合気
A3 乾燥気体
DB1 回路図データベース
DB2 機器データベース
DB3 環境影響データベース
DB4 コスト・エネルギーデータベース
DB5 データ処理シートデータベース
G 排気
H 被処理物
P1 構成機器及び配置選択工程
P2 条件入力工程
P3 運転条件導出及び機器選択工程
P4 エネルギー使用量算出工程
P5 温室効果ガス排出量算出工程
P6 コスト算出工程
P7 結果表示工程
P8 比較検討工程
W 作用水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥機及びその周辺機器を構成機器として成る乾燥設備のシミュレーションを行うシステムにおいて、前記乾燥設備の回路図を決定する工程と、被処理物の条件及び乾燥品の条件を入力する工程と、各構成機器の運転条件を入力する工程と、前記被処理物の条件及び乾燥品の条件を用い、前記回路図での各構成機器の運転条件を求める工程と、各構成機器のエネルギー使用量を求めるとともに、乾燥設備全体のエネルギー使用量を求める工程と、各構成機器からの温室効果ガス排出量を求めるとともに、乾燥設備全体からの温室効果ガス排出量を求める工程と、各構成機器のコストを求めると共に、乾燥設備全体のコストを求める工程とが具えられていることを特徴とする乾燥設備の設計支援システム。
【請求項2】
前記乾燥機の周辺機器としてヒートポンプユニットが具えられた乾燥設備の場合には、ヒートポンプユニットの出口熱風温度−風量特性及び出口熱風温度−COP特性を用いて、ヒートポンプユニットの構成を決定することを特徴とする請求項1記載の乾燥設備の設計支援システム。
【請求項3】
前記運転条件、エネルギー使用量、温室効果ガス排出量及びコストのいずれか一つまたは複数の導出および/または算出は、データ処理シートデータベースに記憶されたデータシートに記憶された条件式や計算式に基づいて行われることを特徴とする請求項1または2記載の乾燥設備の設計支援システム。
【請求項4】
前記運転条件、エネルギー使用量、温室効果ガス排出量及びコストのいずれか一つまたは複数は、構成を異ならせた乾燥設備のものが、一覧表として表示されることを特徴とする請求項1、2または3記載の乾燥設備の設計支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−59103(P2012−59103A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202825(P2010−202825)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000149310)株式会社大川原製作所 (64)
【Fターム(参考)】