説明

亀裂のない多結晶シリコンロッドの製造方法

【課題】亀裂及び剥落の低減をブリッジ側のロッド端部でも電極側のロッド端部でも実現し、かつそれによりロッド端部の切断後に亀裂のないロッド長さを向上させる、大直径のシリコンロッドの簡単な製造方法を提供すること。
【解決手段】気相から心棒に析出させることにより多結晶シリコンロッドを製造する方法において、電極の上側及び/又はロッドペアのブリッジの下側に、析出条件下で多結晶シリコンよりも低い比電気抵抗を有する材料からなる1つ又は複数のディスクを取り付けることを特徴とする多結晶シリコンロッドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンロッド中で亀裂及び剥落を回避するために、多結晶シリコンよりも低い比電気抵抗を有する材料からなるディスクを取り付ける、大直径を有する多結晶シリコンロッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シーメンス法による多結晶シリコンの析出の際に、気相から高純度の単体ケイ素がシリコンロッドの表面に析出する。この場合、析出反応器中で、900〜1200℃に加熱されたシリコン心棒の表面に、水素とハロゲンシランとの混合物又は水素含有ケイ素化合物から、単体ケイ素が気相析出される。
【0003】
このシリコンロッドは、この場合、反応器中で一般に高純度の電気黒鉛からなる特別な電極により保持される。電極ホルダで異なる電圧極性を有するそれぞれ2つの心棒は、他方の心棒端部とブリッジにより接続されて閉じた電流回路を形成する。電極及びその電極ホルダを介して電気エネルギーが心棒の加熱のために供給される。析出反応器の底部プレートの入口ノズルを介して、水素とハロゲンシランとの混合物が供給される。その際に、ハロゲンシランは心棒の表面で分解する。その際に、心棒の直径は増大する。同時に、電極は、その先端部に始まり、シリコンロッドのロッド脚部内へ食い込む。シリコンロッドの所望の目標直径に到達した後にこの析出プロセスは完了し、灼熱されたシリコンロッドは冷却され、取り出される。
【0004】
この場合、電極の材料及び形状が特に重要である。この電極は、心棒の支持のため、シリコンロッド中への電流の伝達のため、さらに熱伝達のため及び反応器中で成長するロッドの確実なスタンドとして利用される。より長くかつより重いロッドになる傾向があり、かつこのロッドペアは数百キロの重さになることがあり、この電極だけで反応器中に固定されているため、まさにこの形状及び材料特性の選択が極めて重要である。
【0005】
先行技術による電極は下側部分が円柱状の基体からなり、上側部分は円錐状先端部からなる。この円錐状先端部には心棒を収容するための穿孔が設けられている。電極の下端部は、この場合、金属電極ホルダ中に置かれ、この金属電極ホルダを介して電流が供給される。このような電極は一般に公知であり、例えばUS-5,284,640の場合にケイ素析出のために使用される。
【0006】
この電極のための原材料として市販の黒鉛が使用される、それというのもこの黒鉛は極めて高純度で提供されかつ析出条件で化学的に不活性であるためである。更に、黒鉛は極めて低い比電気抵抗を有する。
【0007】
この析出プロセスの後に、ポリシリコンからなる得られたU字型の電極ペアは、電極側とブリッジ側とで切断される。この得られたロッドは、ロッドの両端部でも及び全体のロッド長さにわたっても、亀裂及び剥落があってはならない。引き続き、こうして得られたロッドをロッド部分に切断し、この場合、ロッド長さ及びロッド重量のような客先の要求を守らなければならない。このロッドの場合も、両側でも及び全体のロッド長さにわたっても、亀裂及び剥離があってはならない。
【0008】
先行技術から公知の全ての電極の欠点は、電極からシリコンロッドへの移行部で、又は電極付近のシリコンロッド中で、程度に差はあるが、材料の亀裂形成又は剥離する傾向があり、従ってこのシリコンロッドは不安定になることである。
【0009】
亀裂のないロッド長さで高い歩留まりを得るために、ポリシリコンからなる得られたU字型のロッドペアの電極側のロッド端部及びブリッジ側のロッド端部はできる限りわずかにかつ理想的には全く亀裂及び剥離がないのが好ましい。亀裂を有するロッド領域は、ロッドの切断の際に多大な費用を意味する、それというのもこのロッド端部は亀裂がなくなることが達成されるまでディスク状に切断されるためである。処理されるポリシリコンロッドの長さ、直径及び重量は、客先の仕様の構成要素である。この客先の要求は、ますます長くかつ太いロッドの方向にシフトしている。他方で、亀裂及び剥落は、製造時に析出直径が増大するとともに増加する。亀裂を回避するための方法は、従って、高い経済的可能性をもたらす。
【0010】
多結晶シリコンからなるロッド中での亀裂及び剥離を避けるために、既に多様な刊行物が存在する。
【0011】
US-6,676,916は、例えば、ブリッジの下側の心棒中に、穿孔又はノッチのような欠陥を設けない方法を記載している。他の可能性として、圧縮により心棒が太くなるか又は導線断面の狭窄が言及されている。この欠陥箇所で、析出の際に障害となる結晶成長により断裂平面が形成されるとしている。熱的歪みの場合に、この平面は優先的な破損箇所として作用するとしている。
【0012】
亀裂のない太いポリシリコン棒は、例えばゾーンメルティング法、チョクラルスキー法のリチャージ又は新たな心棒の切断のような製造プロセスで使用される。これらのプロセスは、平滑なロッド表面及び欠陥箇所のない完全なロッド断面及びロッド中で異なる結晶構造を有する領域がないことを前提とする。従って、析出プロセスの間のポリシリコン棒の均質な結晶構築が必要である。US-6,676,916に提案されているような心棒の小さな欠損箇所は、このような析出プロセスの場合に、細いロッド直径で既に完全に回復される。それにより、この領域は太いロッドの場合にもはや優先的な破断箇所として作用しない。
【0013】
特開昭63−074909号公報からは、シリコンロッドを高周波交流で加熱する亀裂及び剥離を抑制する方法が公知である。高周波交流を用いて、電流密度をいわゆる表皮効果によりロッド縁部方向にシフトさせる。ロッド心部とロッド表面との温度差は、これにより小さく維持することができる。周波数を高くすればそれだけ、電流密度はより強くロッド縁部方向にシフトされる。ここに挙げた効果を達成するために、>100kHzの周波数が必要である。この方法の欠点は、ロッドの加熱のために必要な高い電流強度及び電圧との関連で、電力供給装置と析出装置との極めてコストのかかる遮蔽を必要とすることにある。従って、実用的かつ経済的な条件下で、この方法は実施するのが困難である。
【0014】
先行技術から公知の方法を用いて、今日通常の大きなロッド直径で、ロッド脚部及びロッドブリッジへの移行部の領域内で亀裂形成及び剥離の発生が抑制される経済的かつ簡単な方法は提供できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】US-5,284,640
【特許文献2】US-6,676,916
【特許文献3】特開昭63−074909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、この課題は、亀裂及び剥落の低減をブリッジ側のロッド端部でも電極側のロッド端部でも実現し、かつそれによりロッド端部の切断後に亀裂のないロッド長さを向上させる、大直径のシリコンロッドの簡単な製造方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
意外にも、使用される電極の上側と、ロッドペアの両方のロッドの間のブリッジの下側とに、析出条件下で多結晶シリコンよりも低い比電気抵抗を有する材料からなるディスクを取り付けることにより、亀裂及び剥離のないロッド長さを明らかに高めることができることが見出された。
【0018】
本発明の主題は、気相から心棒に析出させることにより多結晶シリコンロッドを製造する方法において、電極の上側及び/又はロッドペアのブリッジの下側に、析出条件下で多結晶シリコンよりも低い比電気抵抗を有する材料からなる1つ又は複数のディスクを取り付けることを特徴とする多結晶シリコンロッドの製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
このディスクの本発明による使用により、ロッド内での電流密度の均質化を達成することができる。このために、シリコンよりも明らかに低いオーム抵抗を有する材料からなるディスクを、電極の上側及びロッドのブリッジの下側に固定する。このディスクは電極側又はブリッジ側だけに使用することも可能である。この場合、亀裂及び剥落の抑制に関するこのディスクの有利な作用は、このディスクが取り付けられたロッド端部だけに縮小される。
【0020】
このディスクは、ロッド軸に対して45〜90°の角度で使用することができ、有利にロッド軸に対して60〜90°、特に有利にロッド軸に対して90°で使用することができる。
【0021】
本発明によるディスクは、所望のロッド直径に応じて、30〜250mm、有利に50〜220mm、特に有利に90〜200mmの直径を有する。理想的には、ブリッジ側のディスクのためのディスク直径は、所望のロッド直径に一致する。電極側のディスク直径は、電極先端部にこのディスクが載置される限り、いくらか小さくてもよい。この場合、この理想的なディスク直径は、ロッドの平均直径の約80%である。
【0022】
このディスクの厚さは、0.5〜100mm、有利に1〜20mm、特に有利に2〜10mmである。
【0023】
本発明によるディスクのための原材料として、析出条件下で多結晶シリコンよりも低い比電気抵抗を有する、つまりこのディスク材料の比抵抗は900〜1200℃の温度範囲で100μOhm・m未満の、高融点の、1300℃までの温度範囲の熱いシリコンに対して耐性の全ての材料が適しておりこれは、ディスク材料として黒鉛の場合に、20℃で、130μOhm・m未満の比電気抵抗に相当する。適した材料は、タングステン及びタンタルのような高融点金属又は黒鉛である。他の適した材料は、ドープされた多結晶又は単結晶のシリコン、シリコンカーバイド又はCFC(カーボンファイバ強化カーボン)複合材料、有利に単結晶シリコンである。純度の理由から、高純度の電気黒鉛が特に有利である。シリコン、シリコンカーバイド、熱分解炭素、シリコンナイトライド、ガラス炭素又はシリセン(Silicene)、つまりナノシリコンを用いた黒鉛部材の被覆も、同様に可能である。この場合、100μmより薄い層厚が有利である。
【0024】
使用したディスクの、表面粗さの算術平均粗さRa(DIN EN ISO 4287により測定)は、10〜200μm、有利に10〜150μm、特に有利に10〜100μmの粗さ曲線の全体の高さRt及び8〜160μm、有利に8〜120μm、特に有利に8〜80μmの平均粗さ深さRzで、1〜20μm、有利に1〜15μm、特に有利に1〜10μmである。
【0025】
熱歪みを最適に回避するために、析出温度でのこのディスクの比電気抵抗は、ディスク平面において特に等方性材料の場合に、高純度シリコンよりも明らかに低くなければならない。このディスクの比抵抗は、20℃で(DIN 51911により測定)、130μOhm・m未満、有利に75μOhm・m未満、特に有利に30μOhm・m未満であるのが好ましい。
【0026】
本発明によるディスクは、先行技術から公知の全ての電極との関連で使用することができる。これらの電極は、有利に、高純度シリコンよりも低い比電気抵抗を有する電気黒鉛からなる。この電極の形状は、心棒を支える中央の先端部を備え、シリコンロッド方向に向かって円錐状である。
【0027】
電極側のディスクの最適な位置は、電極の直上でロッド脚部に接している。有利に、ディスクは電極先端部から測定して0〜1000mmの間隔で取り付けられている。電極先端部にディスクを載置するのが特に有利である。このために、ディスク中央に、単に円錐状の穿孔を設けることができ、この穿孔を用いてディスクは電極先端部に適合して取り付けることができ、かつ前記先端部により支持ロッド(心棒)は電極に差し込まれる。このディスクは、電極先端部より下側の20mmの範囲にまで位置することもでき、この場合、このディスクの有利な作用は電極先端部より下側の距離が増大するとともに低下する。ディスクの低い比抵抗に基づいて、ロッド脚部中への電流供給は、ロッド脚部中へ中央の電極先端部を介してだけではなく、ディスク断面を介しても均等に行われる。ロッド脚部でのロッド中心からロッド表面への温度勾配は、それにより明らかに低減される。
【0028】
更に、このディスクは、ディスクの領域内でロッドでの円錐形の亀裂の形成により残留応力を緩和する規定破断箇所と同様に作用する。このディスクの上側及び下側の100mmまでの領域内で、冷却時に、円錐状の亀裂が生じるため、残りのロッド端部はわずかにとがった形を有する。このロッドは、円錐状の亀裂の端部の、電極側のディスクの上側の約100mm及びブリッジ側のディスクの下側の100mmで、既に亀裂及び剥落が存在しない。
【0029】
先行技術による電極は、本発明によるディスクの形を補って、ひとつのまとまりで構成することも可能であり、かつこれは同じ作用を有する。このひとまとまりの形の製造は、しかしながら、電極直径と比較して大きなディスク直径のために、個々の部分からなる電極及びディスクの別個の製造よりも不利である。
【0030】
ロッド脚部でのディスクの他に、場合により、ロッドの上端部で、ロッドペアのブリッジへの移行部に、ディスクを取り付けることもできる。本発明によるディスクは、有利に心棒ブリッジに対してそれぞれ、ブリッジの下側の200〜1000mm、有利に200〜800mm、特に有利に300〜600mmに取り付けられる。
【0031】
このディスクはロッド軸に対して直角に取り付けられるのが有利である。ロッド軸に対して90°とは異なる角度も可能であるが、このディスクの効果は減少する。
【0032】
このディスクは、心棒中に直接取り付けられるか又はアダプタを用いて固定することができる。このために、これらのディスクはディスク中心に有利に円柱状の穿孔を有する。このディスクの垂直方向の位置は、ロッドの端部直径に依存する。この位置は、所望のロッド直径が達成された後にこのディスクがなおブリッジ湾曲部の下側にあるように選択される。ブリッジ側のディスクがなおロッド脚のまっすぐな部分にある最も高い位置は、細いロッドの場合が、太いロッドの場合よりもよりブリッジ方向に近くなる。より深い、かつそれによりブリッジから離れた位置が可能であるが、この場合、後に達成される亀裂のないロッド長さが減少する。
【0033】
ブリッジ付近での本発明によるディスクの下側で電流密度は均質化され、かつシリコンの比電気抵抗の温度依存性及び相対的熱伝導率に基づいて、ロッド表面からロッド中心に向かって同心円の形でわずかな程度で増大するだけである。このロッドは、ブリッジ側のディスクの下側の約100mmで、亀裂及び剥落なしに切断可能である。
【0034】
細い支持ロッドはガス流に基づき反応器中で揺動することがあるため、隣り合う支持ロッドのブリッジ側のディスクはわずかに異なる高さで固定するのが有利である。試験において、この場合、20〜50mmの高さの相違が有効であると実証された。より大きな高さの相違が可能であるが、より低いディスク位置によってロッドの利用可能なロッド長さは短くなる。この場合、隣り合う支持ロッドのディスクは異なる高さに位置する。このようにして、揺動する支持ロッドによる隣り合うロッドペアのディスクの短時間の接触は抑制される。隣り合うディスクの衝突により、析出装置の故障を伴うディスク及び支持ロッドの破損が生じることがある。
【0035】
本発明によるディスクの固定は、電極上への簡単な載置によるか又は適切なアダプタ又はスリーブを用いて行われる。簡単なアダプタは、例えば、それぞれ端部に中空部、例えば穿孔を有する縦長の結合体であることができる。このアダプタを用いて、2つの細い支持ロッドを簡単な接続により結合して長い支持ロッドにすることができる。このアダプタは、更に本発明によるディスクの収容のための装置を有する。これは例えば、ディスクを載置するエッジ又はカラーであることができる。
【0036】
アダプタ用の原材料として、900℃より高い温度範囲で導電性であり、高融点の、1300℃までの温度範囲の熱いシリコンに対して耐性の全ての材料が適している。適切な材料は、タングステン及びタンタルのような高融点金属又は黒鉛である。他の適した材料は、ドープされた多結晶又は単結晶のシリコン、シリコンカーバイド又はCFC(カーボンファイバ強化カーボン)複合材料、有利に単結晶シリコンである。純度の理由から、高純度の電気黒鉛が特に有利である。シリコン、シリコンカーバイド、熱分解炭素、シリコンナイトライド、ガラス炭素又はシリセン(Silicene)、つまりナノシリコンを用いた黒鉛部材の被覆も、同様に可能である。この場合、100μmより薄い層厚が有利である。
【0037】
アダプタ及びディスクは、異なる材料から又は同じ材料から製造することができる。有利に両方の部材について高純度電気黒鉛が使用される。アダプタ及びディスクは、2つの別個の部材からなるか又は1つの部材からなることができる。この機能は、両方の実施態様の場合に損なわれない。アダプタ直径と比較して大きなディスク直径及びアダプタ長さに対してわずかなディスク厚さに基づいて、経済的理由から2つの別個の部材が有利である。
【0038】
このアダプタの比電気抵抗は、ケイ素の比電気抵抗よりも大きいこともでき、それぞれの場合にこのアダプタは導電性でなければならない。理想的な場合には、このアダプタは、ドープされていない多結晶シリコンより低いか又は同じ比電気抵抗を有する。
【0039】
電極側のディスクとブリッジ側のディスクとの間の位置の他の付加的ディスクも同様に可能である。この付加的ディスクは、後に必要な長さにロッドを切断するために計画された切断位置に取り付けるのが有利である。この付加的ディスクは、しかしながら必須ではない、それというのもブリッジ側のディスクと電極側のディスクとの間のロッドは熱歪みがわずかであるためである。この付加的ディスクは、しかしながら後の切断を容易にする。
【0040】
このディスクは、析出温度で、シリコンよりも明らかに低い比電気抵抗を有しなければならない。シリコンと比較してこのディスクの低い比電気抵抗に基づいて、ブリッジ側のディスクと電極側のディスクとの間でシリコンロッド中へロッド横断面にわたり均質化された電流密度が生じ、この電流密度はロッドに関する垂直方向の位置とは無関係である(電極側、ロッド中央、ブリッジ側)。
【0041】
本発明による他の実施態様の場合には、付加的ディスクは後の規定破断箇所としてU字型のロッドペアの任意の箇所で、有利にブリッジ中に取り付けることができる。亀裂及び熱歪みの回避に関するこのディスクの作用は、電流密度の均質化に基づくものではなく、単に規定破断箇所として作用する。このロッドの冷却時に、ディスクの領域内で熱歪みはディスクのすぐ近くでの亀裂形成により緩和されるため残りのロッドはあまり損傷されない。このディスクの位置決めは、同様にアダプタを用いてブリッジの下側又はブリッジ中にも行われる。
【0042】
規定破断箇所としてだけの機能を有するブリッジ側のディスクは、シリコンよりも低い導電性を有する材料からなることができる。この比電気抵抗は、この場合、少なくとも電流の流れがこのディスクを通して可能である程度に大きくなければならない。適当な材料は、高融点材料、例えばタングステン及びタンタル、ドープされた又はドープされていない多結晶又は単結晶のシリコン、黒鉛、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド、CFC複合材料、有利にドープされていない単結晶又は多結晶のシリコンである。シリコン、シリコンカーバイド、熱分解炭素、シリコンナイトライド、ガラス炭素又はシリセン(Silicene)、つまりナノシリコンを用いた黒鉛部材の被覆も、同様に可能である。この場合、100μmより薄い層厚が有利である。
【0043】
本発明の実施態様において、少なくとも1つのディスクがブリッジ中に取り付けられている。この取り付けは既に記載されたアダプタを用いて行われるか、又はブリッジ上でこのディスクが横方向に滑ることを抑制するために、ブリッジに対して横断する方向の溝中に掛着することにより簡単に行うことができる。このディスクは、その中心点に関して、中心でも、偏心でもブリッジ中に取り付けることができる。このディスクの穿孔は、この実施態様の場合には、ディスクの中心点と、0.8xディスク半径との間の領域内、有利に0.2×ディスク半径と0.6×ディスク半径との間の領域内、特に有利に0.2×ディスク半径と0.4×ディスク半径の間の領域内にあるのが好ましい。
【0044】
この穿孔は、ちょうどブリッジをウェハに差し通すことができる程度の大きさである。最も簡単な場合には、この穿孔は円形であるか又は楕円形であり、理想的には、この穿孔はブリッジの横断面のサイズ及び形状に一致する。このディスクは、所望のロッド直径に応じて、30〜250mm、有利に50〜220mm、特に有利に90〜200mmの直径を有する。理想的には、ブリッジ側のディスクのためのディスク直径は、所望のロッド直径に一致する。
【0045】
ブリッジ中のディスクは特に電気的機能がないため、このディスクは極めて薄い厚さを有することができる。この厚さは、0.5〜10mm、有利に1〜5mm、特に有利に1〜3mmの範囲内にある。
【0046】
電極側のディスク及びブリッジ側のディスクの使用の場合、3000mmの支持ロッド長さで、切断後に1400mmより長い、有利に1850mmより長い、特に有利に2000mmより長い亀裂及び剥落のない長さを有する多結晶シリコンロッドを得ることができる。本発明による方法を用いて、130〜250mm、有利に160〜220mm、特に有利に180〜220mmの直径を有する亀裂及び剥落のない多結晶シリコンロッドを製造できる。
【0047】
本発明により製造された多結晶シリコンロッドは、フローティングゾーン法(FZ)を用いた単結晶シリコンの製造のために使用することができる。このロッドは、この場合、成長プロセスの間に、この成長プロセスを終わらせかねずかつFZ歩留まりを劇的に低減しかねない付加的な剥離は生じないという特性を有する。更に、本発明により製造されたロッドの使用は、FZ法の場合に転移についての確率を更に低減させる。このロッドは、成長段階で無転移で成長させることができる。更に、このポリシリコンロッドは、剥落なしで、CZ引き上げプロセスのために坩堝中で、坩堝の充填度の向上のために溶融させることができる。他の適用の場合は、CZ引き上げプロセスの場合に、ロッド断片の隙間について異なる破砕物サイズのポリチップとの関連で、坩堝の密な充填のための亀裂及び剥落のない短い多結晶シリコンロッドである。
【0048】
本発明を次の実施例に基づき詳説する。
【実施例】
【0049】
析出反応器中で、多結晶シリコンロッドをシーメンス法により気相から析出させた。先行技術による黒鉛電極(形状はUS-5,593,465特許を参照)、つまり細長い形状を有し、上端に円錐状の先端部を有する黒鉛電極を取り付けた。この黒鉛電極は、先端部に長軸方向に穿孔を有し、その穿孔中に細い支持ロッドが差し込まれた。それぞれ2つの隣り合う支持ロッドを、その上端部で細い支持ロッドでU字型に橋渡しして接続した。この析出反応器の外側の電極ホルダの両端部は、電源と閉じた電流回路を形成するように接続した。直接電流を通すことにより、この支持ロッドを電気的に900〜1200℃に加熱した。この析出プロセスの間に、式SiHnCl4-n(n=0〜4)の1種以上の塩素含有シラン化合物とキャリアガスとしての水素とからなる供給物を添加した。この心棒の表面でこのハロゲン含有シラン化合物は分解され、この心棒上に多結晶シリコンが成長する。130〜220mmの所望の直径が達成された後にこの反応を完了させ、このロッドを冷却して、析出反応器から取り出した。
【0050】
実施例1:
黒鉛電極の先端部に、それぞれ、適合する中央の穿孔を備えた高純度の電気黒鉛からなるディスクを差し嵌めた。この黒鉛電極の先端部はディスク表面と面が揃うように閉じられた。このディスクは130mmの直径及び4mmの厚さを有していた。この黒鉛電極中に、常にロッドペアが長い支持ロッドと短い支持ロットとを有し、かつ隣り合うロッドが異なる長さを有するように、2500mm及び2550mmの長さの支持ロッドを差し込んだ。この支持ロッドの端部に、2つの支持ロッドを結合するためのアダプタ及びスリーブを差し込み長い支持ロッドにした。このアダプタは高純度電気黒鉛からなっていた。他方のアダプタ端部中へ、全ての支持ロッドが3000mmの全長を有するように、500mm及び450mmの長さを有する短い支持ロッドを差し込んだ。このアダプタは、同時に、ブリッジの下側でそれぞれの高純度黒鉛ディスクの固定のために用いられた。このディスクは中央の穿孔によってアダプタに差し込まれ、載置せられた。このアダプタ上のディスクは、180mmの直径及び4mmの厚さを有していた。電極側のディスクとブリッジ側のディスクとは心棒に対してそれぞれ90℃の角度をなしていた。これらのディスクは、DIN51911により室温で測定して30μOhm・m未満の比電気抵抗を有していた。こうして組み立てられた支持ロッド上に、多結晶シリコンを180mmの直径に達するまで析出させた。仕上げられた多結晶シリコン棒は、電極側のディスクとブリッジ側のディスクとの間で、両端部のわずかな切断損失で、亀裂及び剥落なしで切断することができるため、この仕上げられた加工されたロッドはその全長にわたり亀裂及び剥落がなかった。
【0051】
こうして製造された本発明による多結晶シリコンロッドの90%は、2100mmを超える長さを有し、残りのロッドは1900mm〜2100mmの間であった。これらのロッドは、後にゾーンメルティング法を用いた成長において、無転移で単結晶に成長させることができた。亀裂のない多結晶ロッドの高い重量に基づいて、このロッドは、大直径を有する、この場合に8Zollを有する単結晶の成長に使用するために特に適している。
【0052】
比較例1:
実施例1と同様に行った。比較グループのロッドは、一体式の3000mmの長さの心棒を用いて、つまり上側のディスクなしでかつアダプタなしで、その他は同じパラメータで析出させた。本発明によるディスクは電極上にだけ使用した。
【0053】
ブリッジ側のロッド端部での著しい亀裂形成により、亀裂及び剥落のないロッドを達成するまでこのロッドはブリッジ側で著しく短くしなければならなかったので、加工されたロッドの20%が2100mmより長く、ロッドの70%は180mm〜2100mmの間の長さを有していた。残りのロッドは、1800mmより短い長さを有していただけであった。この亀裂のないロッドは、同様に、ゾーンメルティング法により無転移で8Zollで成長可能であったが、短いロッド長さのために、低い成長歩留まり及び低い装置生産量であった。
【0054】
比較例2:
比較例1と同様に行うが、更に電極側のディスクも取り付けなかった。このロッドペアは、従ってディスクを有しておらず、先行技術と同様に析出させた。ブリッジ側の亀裂に加えて更に、電極側のロッド端部にも著しく亀裂があった。ブリッジ側の切断損失に加えて、亀裂のないロッドを達成するまでロッドを切断する際に電極側のロッド端部での著しい切断損失も生じた。1800mmを超える長さを有する亀裂のないロッドは存在しなかった。得られたロッドの15%は、1500mm〜1800mmの長さを有していた。ロッドの55%は、1200mm〜1500mmの範囲内であり、14%は1000mm〜1200mmの間にあった。残りのロッドは、短すぎる亀裂のないロッド長さのため、ゾーンメルティング法では使用できなかった。この多結晶シリコンロッドは、この場合でも、ゾーンメルティング法を用いて無転移で成長可能であった。この低い重量に基づき、これらのロッドは8Zoll単結晶の成長のための原料ロッドとしては適しておらず、6Zollの直径以下の単結晶のために適しているだけであった。
【0055】
実施例2:
黒鉛電極の先端部に、それぞれ、適合する中央の穿孔を備えた高純度の電気黒鉛からなるディスクを差し嵌めた。この黒鉛電極の先端部はディスク表面と面が揃うように閉じられた。このディスクはそれぞれ120mmの直径及び4mmの厚さを有していた。この黒鉛電極に2400mmの長さを有する支持ロッドが差し込まれた。このロッドペアのブリッジ中に、それぞれ多結晶シリコンからなるディスクを掛着した。ブリッジ中のこのディスクの直径は150mmで、ディスク厚さは2mmであった。ブリッジ中にディスクを掛着するための穿孔は、中心点から0.3×ディスク半径の距離で偏心していた。このディスクは、ブリッジ中でのノッチによって滑りに対して保証されていた。こうして組み立てられた支持ロッド上に、多結晶シリコンを気相から160mmの直径に達するまで析出させた。
【0056】
析出装置からのロッドペアの取り出しの後に、このロッドペアの80%はブリッジ中のディスクの箇所で破断した。このブリッジ側のロッド端部はわずかな亀裂を有するだけであるので、ブリッジ部分の切断の後で、亀裂及び剥落のないロッド端部を達成するまでブリッジ側のロッド端部でわずかな付加的な切断部が生じただけであった。このブリッジ側のロッド端部は、ブリッジを含めてそれぞれ300〜500mmを短縮しなければならなかった。電極側のロッド端部は、電極側のディスクの上側の100mm〜200mmの長さから亀裂及び剥落がなかった。この亀裂及び剥落のないロッド長さは、従って、1700mm〜2100mmの間であった。この亀裂のないロッドから、チョクラルスキー引き上げプロセス用の石英坩堝のチャージのために、1つのロッド当たり8〜10個の200mmのロッド断片を切断できた。
【0057】
比較例3:
実施例2と同様に行った。しかしながら、比較グループとしてブリッジ中のディスクなしで析出させた。析出工程の終了時に、このロッドペアは反応器から取り出す前にブリッジ箇所で分離しなければならなかった。この場合、歪みが解放され、切断の間に剥落が生じた。ブリッジ側の亀裂のないロッド端部が達成されるまでのブリッジ側の切断損失は、400〜700mmであった。100〜200mmの電極側の切断を含めて、この亀裂のないロッド長さは1つのシリコンロッド当たり1500〜1800mmであった。このロッドから、チョクラルスキー引き上げプロセス用の石英坩堝のチャージのために、7〜9個の短いロッド断片を切断することができた。
【0058】
比較例4:
比較例3と同様に行った。更に、電極側の黒鉛ディスクも設けず、従って先行技術によって作業した。残りのプロセスパラメータは同じであった。ブリッジ及び亀裂のあるブリッジ側のロッド端部の切断により生じる高められたブリッジ側の切断部に加えて、電極側のロッド端部で亀裂及び剥離の理由から高められた切断の発生が生じた。亀裂及び剥落のないロッドを達成するまでの切断の後に、このロッドは1100mm〜1500mmの長さにすぎなかった。このロッドから、チョクラルスキー引き上げプロセス用の石英坩堝のチャージのために、5〜7個の短いロッド断片を切断できるだけであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相から心棒に析出させることにより多結晶シリコンロッドを製造する方法において、電極の上側及び/又はロッドペアのブリッジの下側に、析出条件下で多結晶シリコンよりも低い比電気抵抗を有する材料からなる1つ又は複数のディスクを取り付けることを特徴とする多結晶シリコンロッドの製造方法。
【請求項2】
使用されるディスクは30〜200mmの直径を有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
使用されるディスクの直径は、析出されるロッドの直径に相当することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
電極側に取り付けられたディスクのディスク直径は、ブリッジ側のディスクの直径よりも小さいことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ディスクの厚さは0.5〜100mmの間にあることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ディスクは、ロッド軸に対して45〜90度の角度で取り付けられることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ディスクは、タングステン、タンタル、黒鉛、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド又はカーボンファイバ強化カーボン複合材料からなることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ディスクの比抵抗は、20℃で、130μOhm・m未満であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
使用されるディスクの表面粗さの算術平均粗さRaは、10〜200μmの粗さ曲線の全体の高さRt及び8〜160μmの平均粗さ深さRzで、1〜20μmであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
電極側のディスクは電極に対して0〜1000mmの間隔で取り付けられ、ブリッジ側のディスクはブリッジに対して200〜1000mmの間隔で取り付けられることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記電極側のディスクは前記電極上に直接載置されることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ディスクはアダプタによって前記心棒に固定されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
更に1つ又は複数のディスクが前記ロッドペアのブリッジ中に取り付けられることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
130mm以上の直径を有しかつ1400mm以上の長さを有する心棒上に気相から純粋なシリコンを析出させることにより得られた多結晶シリコンロッドにおいて、前記シリコンロッドの全長にわたり亀裂及び剥落がないことを特徴とする多結晶シリコンロッド。
【請求項15】
ゾーンメルティング法(フロートゾーン法)及びチョクラルスキー法で使用するための、請求項14記載の多結晶ロッド。

【公開番号】特開2011−195441(P2011−195441A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62070(P2011−62070)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】