説明

二剤混合容器

【課題】二剤混合容器において、二剤を混合させるための操作性に優れ、且つ二剤を混合させる操作に失敗がないようにする(確実に二剤混合が可能なものとする)。
【解決手段】第一容器2と、この上方に設けられる第二容器3と、両容器2,3間に設けられるカッター部材4とを有し、第二容器3の下部には破封予定シール14で封鎖された投下口部13が設けられ、第一容器2の上部には破封予定シール11で封鎖された投入口部10が設けられ、カッター部材4には上シール破封部17及び下シール破封部18が設けられていると共に上下貫通口19が設けられており、第二容器3の投下口部13に対するカッター部材4の上シール破封部17による押し込みと第一容器2の投入口部10に対するカッター部材4の下シール破封部18による押し込みとが生じる状態で第二容器3と第一容器2とが相対接近可能に設けられた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二剤混合容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
未使用状態では二種の内容物(以下「第一剤」及び「第二剤」と言う)を乖離させた状態に保持させ、使用する最初の時点でこれら第一剤と第二剤とを使用者自らが混合させることができるようにした二剤混合容器は公知である(例えば、特許文献1、2等参照)。
この種の二剤混合容器は、第一剤を収納する第一容器と、この第一容器の上方で第二剤を収納する第二容器とを有しており、これら両容器間にシール部材が介設されていると共に、第一容器と第二容器とがネジで連結されたものとなっている。
第一容器がボトル等とされ、第二容器がキャップとされているのが一般的であり、これらを連結するネジを締め付けて両容器を接近させると、両容器間のシール部材が破られて第二容器内から第二剤が落下し、第一容器内で第一剤と第二剤とが混合するというものである。
【0003】
なお、一方の容器にしかシール部材が設けられていないシングルシールタイプ(上記特許文献1参照)と、第一容器の上口部及び第二容器の下口部の両方にシール部材が設けられているダブルシールタイプ(上記特許文献2参照)とが知られている。
ダブルシールタイプにおいて、二重のシール部材を一回の操作で破るための構造として次のものが提案されている(上記特許文献2)。
すなわち、第一容器の容器内(シール部材より下)には上口部の中心部で上方を向いて突部材が設けられており、第一容器と第二容器とを連結するネジを締め込んだとき、第二容器の下口部における外周縁が第一容器のシール部材の外周寄りを全周的に押し、その中心部を突部材へ押し付けるようになる。
【0004】
これで第一容器のシール部材が突き破られると、続いて、この第一容器のシール部材と近接しつつ面平行の状態(二重に重なった状態)となっている第二容器のシール部材に対して、その中心部に突部材が直接又は破れた後の第一容器のシール部材を介して間接的に押し付けられるようになり、この第二容器のシール部材も突き破られることになる、といった構造である。
【特許文献1】特開2003−226334号公報
【特許文献2】実開1993−71136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シングルシールタイプでは、第二容器と第一容器とを連結する前の段階(製造過程)で、シール部材が設けられてない方の容器の内容物(第一剤又は第二剤)につき、衛生面や新鮮度(酸化等)を保たせるために種々の問題が生じている。
しかしながらダブルシールタイプ(上記特許文献2参照)を採用すると、二重のシール部材が互いに近接した面平行状態になっていることに起因して、これら両方のシール部材を連続的又は一気に破る必要が生じ、そのために大きな操作力が必要となる、と言う問題があった。すなわち、第一容器と第二容器とを連結するネジを締め込む操作が非常に硬く、困難となっていたのである。
【0006】
第一容器や第二容器を小径のものとして製作する場合などは、この操作困難性が一層助長され、場合によっては女性や高齢者、子供などにとって操作できないことにもなり兼ねない。
また両方のシール部材を破ることができたとしても、その破れ方にも問題が生じていた。すなわち、破れ方が小さいと第二剤の落下に悪影響が出て、二剤混合が不十分になったり不可能になったりするおそれがある。一方で、シール部材の全部又は一部が容器側から千切れてしまうような破れ方をすると、混合した二剤中にシール部材が混入するといった致命的な欠点に繋がる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、二剤を混合させるための操作性に優れ、且つ二剤を混合させる操作に失敗がないようにした(確実に二剤混合が可能とした)二剤混合容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る二剤混合容器では、第一剤を収納する第一容器と、この第一容器の上方で第二剤を収納する第二容器と、これら両容器の上下間に設けられるカッター部材とを有したものとなっている。
第二容器の下部には投下口部が設けられていると共に、この投下口部が破封予定シールで封鎖されている。また第一容器の上部には投入口部が設けられていると共に、この投入口部が破封予定シールで封鎖されている。
【0009】
これらに対し、カッター部材には、第二容器の投下口部へ向く上シール破封部と、第一容器の投入口部へ向く下シール破封部とが設けられている。また、これら上下のシール破封部間に対し、第二剤を通過させる上下貫通口が設けられている。
そして、第二容器の投下口部に対するカッター部材の上シール破封部による押し込みと、第一容器の投入口部に対するカッター部材の下シール破封部による押し込みとが生じる状態で、第二容器と第一容器とが相対接近可能に設けられている。
このような構成であると、第一容器と第二容器との上下間に設けられたカッター部材が、第一容器に設けられた破封予定シールと、第二容器に設けられた破封予定シールとを各別の破封部(上シール破封部及び下シール破封部)で破ることになる。
【0010】
すなわち、本発明に係る二剤混合容器では、第一容器及び第二容器の両方に破封予定シールを設けたダブルシールタイプでありながら、二重に重なった状態のシール部材を破るのとは異なって、各破封予定シールを軽快且つ確実に破ることができるようになる。そのため、二剤を混合させるための操作性に優れ、且つ二剤を混合させる操作に失敗がないという利点が得られるものである。
第一容器の上部に、カッター部材及び第二容器を一緒に覆蓋可能とするキャップ体が第一容器に対して着脱自在の状態で設けられるものとするのが好適である。
【0011】
このようなキャップ体を設けることで、キャップ体により覆った内側(第一容器の投入口部まわりや破封予定シール、カッター部材や第二容器全体)を衛生的に保護できることになる。
殊に、第二容器に収容される第二剤に対しては二重のカバーが施された状態(第二容器に加えキャップ体でもカバーされているという意味)になるので、空気や紫外線などとの接触を確実に遮断でき、また保温性や遮熱性などにも好都合に作用するので、品質安定に好適となる。
【0012】
キャップ体を外して裏返し、内部のカッター部材や第二容器を取り除けば、このキャップ体自体をコップとして使用することができるようになり、混合が済んだ第一容器の内容物(混合した二剤)を小分けして取り出す場合などに便利に利用できる。
第一容器に対してキャップ体が螺合構造で着脱自在となされており、これら第一容器とキャップ体とを螺合により相対接近させることにより、第二容器と第一容器とが相対接近可能になったものとすることができる。
このようにすると、第二容器と第一容器との相対接近、即ち、第一容器の破封予定シール及び第二容器の破封予定シールを破り、二剤を混合させる操作が一層容易となる。また、螺合時の操作力をキャップ体と第一容器とに加えることになるので、第二容器に関しては、この操作力に耐えるほどの強度的配慮(周壁の厚さや外径、高さ等の外形寸法)を施す必要がなくなり、低コスト化などを図ることができる。
【0013】
なお、このような螺合構造の他、スライド構造を採用することも可能である。
第一容器とキャップ体との上下間には、第一容器とキャップ体とを相対接近不能に保持するスペーサ部材が設けられたものとするのが好適である。この場合、このスペーサ部材は、1回のみの取り除きを予定した切り離し予定部を介して第一容器又はキャップ体と連結されたものとするのが好適である。
このようなスペーサ部材は、所謂、バージンシールとしての作用を奏することになり、流通上の意図しない破封を未然に防止できるものである。従って、品質保証や防犯上のメリットとなる。
【0014】
カッター部材の上シール破封部は、第一容器と第二容器とを最も相対接近させたとき、第二容器の破封予定シールを半円以上全円以下の開口に破封する上切刃部と、この上切刃部で未破封となる部位において破封後のシール舌片を上方へ押込折曲させる開封促進部とを有したものとするのがよい。
またカッター部材の下シール破封部は、第一容器と第二容器とを最も相対接近させたとき、第一容器の破封予定シールを半円以上全円以下の開口に破封する下切刃部とこの下切刃部で未破封となる部位において破封後のシール舌片を下方へ押込折曲させる開封促進部とを有したものとするのがよい。
【0015】
このようにすると、第一容器と第二容器とを最も相対接近させた後も、第二容器の破封予定シールや第一容器の破封予定シールが完全に千切れてしまうということがない。そのため、混合した二剤中に千切れたシール舌片が混入することはない。
また、カッター部材の上シール破封部に設けられた開封促進部や、下シール破封部に設けられた開封促進部により、第二容器の破封予定シールや第一容器の破封予定シールは確実に、且つ大きな開口で破封されることになるので、第二容器からの第二剤の落下が確実となる利点もある。すなわち、第一容器内において、第一剤と第二剤との混合が所定の混合比で確実に行われることになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る二剤混合容器では、二剤を混合させるための操作性に優れ、且つ二剤を混合させる操作に失敗がない(確実に二剤混合が可能である)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至図10は、本発明に係る二剤混合容器1の第1実施形態を示している。図8及び図9に示すように、この二剤混合容器1は、第一剤を収納する第一容器2と、この第一容器2の上方で第二剤を収納する第二容器3と、これら両容器2,3の上下間に設けられるカッター部材4とを有している。
また、第一容器2の上部にはキャップ体5が着脱自在に設けられていると共に、これら第一容器2とキャップ体5との上下間にはスペーサ部材6が設けられている。このキャップ体5により、カッター部材4及び第二容器3が一緒に覆蓋されるようになっている。
【0018】
第一容器2は、底部2aを有すると共にこの底部2a回りで全周的に立ち上がる周壁2bを有しており、上部が開口した容器形体(図例では有底円筒形)とされ、上部で開口する部分が投入口部10とされている。この投入口部10には開口部全部を覆う状態で破封予定シール11が被着され、容器内部が封鎖されている。
第一容器2の破封予定シール11は、例えばアルミシートや樹脂シート、或いは樹脂含浸紙など、第一剤の特性に合わせてそれの密封性を保てる材質により形成されたものである。また、破封予定シール11や第一容器2の材質に応じて、接着剤、超音波接着(溶接)、熱溶着などの適宜接着方法で接着されている。
【0019】
第二容器3(図10も併せて参照)は、第一容器2よりも一回り径小で且つ高さの低い周壁3aを有すると共にこの周壁3aの上部(天井側)を閉塞する状態で天板3bが設けられ、下部が開口した容器形体(図例では有天短円筒形)とされたものであって、下部で開口する部分が投下口部13とされている。この投下口部13には開口部全部を覆う状態で破封予定シール14が被着され、容器内部が封鎖されている。
第二容器3の破封予定シール14は、例えばアルミシートや樹脂シート、或いは樹脂含浸紙など、第二剤の特性に合わせてそれの密封性を保てる材質により形成されたものである。また、破封予定シール14や第二容器3の材質に応じて、接着剤、超音波接着(溶接)、熱溶着などの適宜接着方法で接着されている。
【0020】
カッター部材4は、中央部が上下に貫通した環状体15(図例では上下方向に高さを持ったリング形)を有したもので、この環状体15の上部側には第二容器3の投下口部13へ向けて上シール破封部17が設けられ、また環状体15の下部側には第一容器2の投入口部10へ向けて下シール破封部18が設けられている。
環状体15の中央で上下に貫通した部分は、このカッター部材4の上部に第二容器3が配置された状態でその破封予定シール14が破られたとき、この第二容器3から落下する第二剤を下方へと通過させるための上下貫通口19として作用する。
【0021】
すなわち、このような環状体15を有して成るカッター部材4は、上シール破封部17と下シール破封部18との上下間が上下貫通口19によって連通された状態にあると言うことができる。
環状体15は、外輪部21と内輪部22とを有していると共に、これら両輪21,22間の下端同士がフランジ部23で連結された形体となっている。外輪部21の外径(環状体15としての外径:図1乃至図7参照)は第一容器2における投入口部10の外径と略同じに形成され、外輪部21の内径は第二容器3の外径と同等(第二容器3にガタツキなく外嵌可能となる寸法)に形成されている。
【0022】
これに対して内輪部22の外径は、第一容器2における投入口部10の内径や、第二容器3における投下口部13の内径に比べ、やや径小となるように形成されている。
本第1実施形態において、上シール破封部17は、突端を尖端として単一的に突出した三角刃状の上切刃部17aと、この上切刃部17aから内輪部22の周方向に沿って両側方へ離れるほどに下り勾配となるカッター刃部17bとを有したものとしてある。これら上切刃部17a及びカッター刃部17bは、いずれも内輪部22自体の上縁部によって形成されたものである。
【0023】
これに対して下シール破封部18は、突端を尖端として単一的に突出した三角刃状の下切刃部18aと、この下切刃部18aを下向きに延出させる刃台部18bとを有したものとしてある。これら下切刃部18a及び刃台部18bは、いずれもフランジ部23の下面から突出形成されたものである。
このようなカッター部材4が第一容器2と第二容器3との上下間に設けられているため、第二容器3と第一容器2とを相対接近させると、第一容器2の投入口部10に対してカッター部材4の下シール破封部18が押し込まれるようになると共に、第二容器3の投下口部13に対してカッター部材4の上シール破封部17が押し込まれるようになる。
【0024】
これにより、第一容器2の破封予定シール11が下シール破封部18で破られ、第二容器3の破封予定シール14が上シール破封部17で破られることになる。
本第1実施形態おいて、第二容器3と第一容器2とを相対接近させるための構造は次のようになっている。すなわち、第一容器2の投入口部10にはその外周面に雄ねじ25が設けられており、キャップ体5の内周面にはこの雄ねじ25に螺合する雌ねじ26が設けられている。
これら雄ねじ25及び雌ねじ26には、互いの螺合によって第一容器2とキャップ体5との相対的な螺進や螺退(上下動)がスムーズに行われ、且つ少ない回転角度(例えば1回転(360°)以内とする等)で十分な螺進や螺退が得られるように、リード角やリード数が決められている。
【0025】
一方、第二容器3の天板3bは周壁3aよりも外周側へ若干、張り出しており、キャップ体5の内部には、その上部側の内周面に沿って、第二容器3の天板3bが外周側へ張り出した部分と係合する周方向リブ30が形成されている。従って、これら天板3bの張り出し部分と周方向リブ30との係合により、第二容器3はキャップ体5の最上位置から脱落することなく保持されるようになっている。
これら天板3bの張り出し部分と周方向リブ30との係合に加え、第二容器3の天板3bがキャップ体5の内部天井面に面接触するようになることから、第二容器3とキャップ体5との組み付け間には、第一容器2に対してキャップ体5を螺合させるときに、第二容器3も一体回転できる程度の摩擦抵抗が生じている。要するに、これらキャップ体5と第二容器3とは、互いに一体的に結合されたように関係付けられている。
【0026】
また、カッター部材4(図9及び図10参照)における外輪21の内周面には、周方向に所定間隔をおいて複数本の軸方向リブ31が設けられ、第二容器3における周壁3aの外周面には、カッター部材4の各軸方向リブ31と係合した状態で軸方向に摺動自在となる軸方向リブ32が設けられている。これら軸方向リブ31,32の係合により互いにガイドされ、カッター部材4は第二容器3と一体回転可能でありながら、この第二容器3のまわりで上下動自在となっている。
キャップ体5の内周面には、第二容器3の下端近傍に対応する高さに周リブ35が設けられ、カッター部材4の上端外周面に、キャップ体5の周リブ35と係合可能な周リブ36が設けられている(図1乃至図4参照)。これら周リブ35,36の係合により、キャップ体5内においてカッター部材4が下降する下限が決められている。
【0027】
このようにカッター部材4の下降下限が決められているため、カッター部材4と第二容器3とが互いの軸方向リブ31,32で係合した状態は常に保証されることになる。またキャップ体5内からカッター部材4が簡単に脱落してしまうようなこともない。
以上の説明から明かなように、本第1実施形態では、第一容器2における投入口部10(雄ねじ25)のまわりでキャップ体5(雌ねじ26)を螺合させ、螺進させてゆく(ねじ込んでゆく)と、第一容器2とキャップ体5とが相対接近してゆくのに伴い、キャップ体5と一体的な結合関係とされている第二容器3も、第一容器2と相対接近することになる。
【0028】
かくして、第一容器2と第二容器3との上下間に挟まれたカッター部材4は、第一容器2の投入口部10に対し、その破封予定シール11を破封しながら下シール破封部18が押し込まれ、第二容器3の投下口部13に対し、その破封予定シール14を破封しながら上シール破封部17が押し込まれることになる。これらの破封の作用については後述する。
ところで、本第1実施形態においては、第一容器2と第二容器3とを最も相対接近させたとき、すなわち、第一容器2とキャップ体5との相対回転で雄ねじ25と雌ねじ26とが締まりきるまで螺進させたとき、第二容器3の破封予定シール14及び第一容器2の破封予定シール11は、半円以上全円以下の開口に破封されるが、完全には切り離されないように対策されている。
【0029】
これにより、千切れたシール舌片が第一容器2内や第二容器3内に混入するのを防止してある。
このための構造として、カッター部材4の上シール破封部17では、内輪部22の上周部のうち、カッター刃部17bの最も低位となる部位に刃を形成せず、好ましくは略水平状態を保持するようにさせた領域を残してある。
この領域が、第二容器3の破封予定シール14に未破封部を生じさせ、破封後のシール舌片を上方(第二容器3内)へ押込折曲させるための開封促進部17c(図4に示す)となる。
【0030】
またカッター部材4の下シール破封部18に関しては、第一容器2とキャップ体5との相対回転(下切刃部18aの円周移動量)が360°未満で完了するように雄ねじ25と雌ねじ26とのリード角及びリード数を設定してある。
ここにおいて下シール破封部18の下切刃部18aが、刃台部18bの突出量及び突出幅をもってを下方位置に保持させていることは、当該刃台部18bが、第一容器2の破封予定シール11に未破封領域を生じさせ、破封後のシール舌片を下方(第一容器2内)へ押込折曲させるための開封促進部として作用することを意味している。
【0031】
スペーサ部材6は、第一容器2とキャップ体5とを相対接近不能に保持するためのもので、1回のみの取り除きを予定した切り離し予定部40を介してキャップ体5と連結されている。
切り離し予定部40は、キャップ体5とスペーサ部材6との連結部分にVノッチ状の溝を形成させ、薄皮一枚で繋がった状態にするもので、この薄皮一枚の部分を引き裂くようにして、キャップ体5からスペーサ部材6の取り除きを行うようにする。
スペーサ部材6は、キャップ体5の下端周部を略一周する(完全に一周してはいない)リング状に形成されており、その一端部には径方向外方へ向けてクランク折れ状に形成したツマミ部41が設けられている。
【0032】
またスペーサ部材6の下端内周面と第一容器2の投入口部10の下端外周面とには、互いに係合する周リブ44,45が設けられている。これら周リブ44,45は、いずれも切れ目の無い円環形に突出したものである。
また、第一容器2の投入口部10に対してキャップ体5を被せる動作のときには、周リブ44,45が比較的容易に乗り越えあって係合状態になるが、一旦、この係合状態になった後、第一容器2の投入口部10からキャップ体5を外す動作のときには、周リブ44,45の係合が外れ難くなるように、周リブ44,45の断面形状には上下方向で偏りのある勾配が付与されている。
【0033】
このようなスペーサ部材6は、キャップ体5から取り除かない限り、キャップ体5と第一容器2とを相対的に螺進させることも、反対に螺退させることもできないものであり、所謂、バージンシールとしての作用を奏することになる。従って、流通上の意図しない破封を未然に防止できることになり、第一剤や第二剤はもとより、キャップ体5の内面などに対する品質保証や防犯上のメリットとなる。
次に、上記構成を具備して成る本発明の二剤混合容器1について、その使用状態を説明する。
【0034】
図1及び図6に示すように、使用前では、キャップ体5とスペーサ部材6とが連結されたまま、これらが第一容器2の投入口部10に対して螺合され、投入口部10とスペーサ部材6との間で互いの周リブ44,45が係合した状態にある。
カッター部材4は、第一容器2と第二容器3との上下間に設けられているが、キャップ体5の内部天井に保持された第二容器3に対しては、上シール破封部17を干渉させない下方位置で待機しており、また第一容器2に対しては、下シール破封部18を干渉させない上方位置で待機している。
【0035】
図5に示すように、まず、スペーサ部材6のツマミ41に指をかけて引き出すようにし、切り離し予定部40を引き裂くようにして、キャップ体5からスペーサ部材6を取り除く。そして、第一容器2とキャップ体5とを相対回転させることで、雄ねじ25と雌ねじ26とを螺進させてゆく。
これにより、図2に示すように、キャップ体5が回転しながら第一容器2へ接近するが、このキャップ体5に対し、周リブ35,36の係合を介して吊り下げ状態とされているカッター部材4も一緒に第一容器2へと接近することになる。
【0036】
キャップ体5が第一容器2へ接近し続けるなかにあって、カッター部材4の下シール破封部18が第一容器2の破封予定シール11に当接したとき、カッター部材4には第一容器2に接近するのを制止する作用(持ち上げ力)が生じるが、カッター部材4は、第二容器3との間で軸方向リブ31,32の係合を介して一体回転する関係にある。
そのため、カッター部材4の下シール破封部18は円周移動をしていることになり、これによって第一容器2の破封予定シール11に突き刺さり、破封するようになる。但し、この段階ではまだ、カッター部材4に対して下方へ向けた強制的な負荷はまだ作用していないため、場合によっては下シール破封部18が破封予定シール11に当接したまま、カッター部材4が制止される(即ち、破封予定シール11の破封に至らない)こともあり得る。
【0037】
キャップ体5と第一容器2との螺進を続け、それらが更に相対接近すると、図3に示すように、カッター部材4の外輪部21やフランジ部23が第一容器2の投入口部10上に接触して当て止めされる状態となり、且つ、第二容器3の破封予定シール14がカッター部材4の内輪部22上に押し付けられるようになる。
そのため、第一容器2の投入口部10に対してカッター部材4の下シール破封部18が押し込まれ、第二容器3の投下口部13に対してカッター部材4の上シール破封部17が押し込まれることになる。
【0038】
このときもカッター部材4は第二容器3と一体回転しているので、カッター部材4の下シール破封部18の円周移動に伴い、この段階で第一容器2における破封予定シール11の破封は確実なものとなる。
なお、カッター部材4と第二容器3との間では互いの軸方向リブ31,32が係合しているために相対回転は生じないが、カッター部材4の上シール破封部17は上記したように、上切刃部17aとこの両側方で下り勾配となるカッター刃部17bとを有している。そのため、第二容器3の破封予定シール14は、最初に上切刃部17aで突き破られた箇所をきっかけとして、カッター刃部17bで亀裂が延長拡大されるようにして、確実に破封されることになる。
【0039】
かくして、図4及び図7に示すように、第一容器2の破封予定シール11及び第二容器3の破封予定シール14が共に破られ、第二容器3内に収納されていた第二剤がカッター部材4の上下貫通口19を通過して第一容器2内へと落下し、第一容器2内に収納された第一剤と混合されることになる。
この状態で、必要に応じて二剤混合容器1全体を軽くシェイクして、第一剤と第二剤の混合を促進させる。混合が済んだ第一容器2の内容物(混合した二剤)はコップなどへ取り出せばよい。
【0040】
なお、キャップ体5を外して裏返し、内部のカッター部材4や第二容器3を取り除けば、このキャップ体5自体をコップとして使用することができるようになり、混合が済んだ第一容器2の内容物(混合した二剤)を小分けして取り出す場合などに便利に利用できる。
なお、カッター部材4の上シール破封部17は、第一容器2と第二容器3とを最も相対接近させても、第二容器3の破封予定シール14を半円以上全円以下でしか破封させないものであり、のみならず、開封促進部17cが破封後のシール舌片を上方(第二容器3内)へ押込折曲させるようになっている。
【0041】
また、カッター部材4の下シール破封部18は、第一容器2と第二容器3とを最も相対接近させても、第一容器2の破封予定シール11を半円以上全円以下でしか破封させないものであり、のみならず、開封促進部(刃台部18b)が破封後のシール舌片を下方(第一容器2内)へ押込折曲させるようになっている。
そのため、第一容器2と第二容器3とを最も相対接近させた後も、第二容器3の破封予定シール14や第一容器2の破封予定シール11が完全に千切れてしまうということがなく、混合した二剤中に千切れたシール舌片が混入することはない。
【0042】
以上詳説したように、本発明に係る二剤混合容器1では、第一容器2及び第二容器3の両方に破封予定シール11,14を設けたダブルシールタイプでありながら、二重に重なった状態のシール部材を破るのとは異なって、各破封予定シール11,14をカッター部材4の各別の刃(上シール破封部17及び下シール破封部18)で別々に破封させるので、いずれも軽快且つ確実に破ることができるのである。
そのため、二剤を混合させるための操作性に優れ、且つ二剤を混合させる操作に失敗がないという利点が得られる。
【0043】
図11及び図12は、本発明に係る二剤混合容器1の第2実施形態を示している。本第2実施形態の二剤混合容器1が上記した第1実施形態と最も異なっているところは、未使用状態にあるとき、カッター部材4と第一容器2の投入口部10との上下間に、弾性材製のスペーサリング50が介設されている点にある。
このスペーサリング50が設けられていると、二剤混合容器1の組み立て時において、第一容器2の投入口部10へキャップ体5を螺合する際、キャップ体5の下降衝撃を吸収出来ると共に、キャップ体5の螺合度を一定に揃えることができる(螺合の下限を制限できる)という利点がある。
【0044】
しかも、スペーサ部材6を取り除いた後、第一容器2とキャップ体5とを相対回転させてゆく際に、第一容器2の投入口部10上でスペーサリング50を介してカッター部材4が支持された状態となり、その結果、投入口部10とカッター部材4との上下距離が保持されることになる。
そのため、第二容器3とカッター部材4とが必ず先行して相対近接するようになる。すなわち、カッター部材4の上シール破封部17によって第二容器3の破封予定シール14が破封され、それから更にキャップ体5と第一容器2との螺進を続けることで、スペーサリング50の縦圧縮を経て、カッター部材4の下シール破封部18によって第一容器2の破封予定シール11が破封されることになる。
【0045】
その他の構成、作用効果は第1実施形態と略同様である。
ところで、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
例えば、第二容器3と第一容器2とを相対接近させるための構造は、第一容器2の投入口部10外周面に設けた雄ねじ25とキャップ体5の内周面に設けた雌ねじ26とによる螺合構造とする他、第一容器2の投入口部10外周面とキャップ体5の内周面とを摺動自在にすることによるスライド構造とさせることも可能である。
【0046】
この構造の選択に伴い、カッター部材4に設ける上シール破封部17や下シール破封部18の刃形状も、適宜変更可能となる。例えば、三角刃状のものが複数、連続して突出されたノコ刃状のものとしたり、突端が周方向に沿って傾斜した状態で半周又は全周的に設けられた傾斜刃状(カッター刃状)のもの、或いは針状や角ノミ状に突出したものなどとしてもよい。
また、キャップ体5は必須不可欠なものではなく、省略することも可能である。
第一容器2に収納される第一剤や、第二容器3に収納される第二剤は、液体、粉体、顆粒、錠剤、粘性体(ゼリー状のもの)など、特に限定されるものではない。
【0047】
カッター部材4において、上シール破封部17に設ける開封促進部や、下シール破封部18に設ける開封促進部は、それぞれ、上切刃部17aや下切刃部18aとは別個独立して突出するものとして形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る二剤混合容器の第1実施形態について使用する最初の手順を示した側断面図である。
【図2】図1に続く使用手順を示した側断面図である。
【図3】図2に続く使用手順を示した側断面図である。
【図4】図3に続く使用手順を示した側断面図である。
【図5】図1に対応させた斜視図である。
【図6】図5の状況を半断面にして示した斜視図である。
【図7】図4に対応させた斜視図である。
【図8】本発明に係る二剤混合容器の第1実施形態を示した斜視図である。
【図9】図8の一部(キャップ体の内部)を分解して示した斜視図である。
【図10】図8中のカッター部材及び第二容器を下から見た状態にして示した斜視図である。
【図11】本発明に係る二剤混合容器の第2実施形態について使用する最初の手順を示した側断面図である。
【図12】図11に続く使用手順を示した側断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 二剤混合容器
2 第一容器
3 第二容器
4 カッター部材
5 キャップ体
6 スペーサ部材
10 投入口部
11 破封予定シール
13 投下口部
14 破封予定シール
17 上シール破封部
17a 上切刃部
17c 開封促進部
18 下シール破封部
18a 下切刃部
19 上下貫通口
40 切り離し予定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一剤を収納する第一容器(2)と、この第一容器(2)の上方で第二剤を収納する第二容器(3)と、これら両容器(2,3)の上下間に設けられるカッター部材(4)とを有し、
第二容器(3)の下部には投下口部(13)が設けられていると共にこの投下口部(13)が破封予定シール(14)で封鎖されており、
第一容器(2)の上部には投入口部(10)が設けられていると共にこの投入口部(10)が破封予定シール(11)で封鎖されており、
カッター部材(4)には第二容器(3)の投下口部(13)へ向く上シール破封部(17)及び第一容器(2)の投入口部(10)へ向く下シール破封部(18)が設けられていると共にこれら上下のシール破封部(17,18)間で第二剤を通過させる上下貫通口(19)が設けられており、
第二容器(3)の投下口部(13)に対するカッター部材(4)の上シール破封部(17)による押し込みと第一容器(2)の投入口部(10)に対するカッター部材(4)の下シール破封部(18)による押し込みとが生じる状態で第二容器(3)と第一容器(2)とが相対接近可能に設けられている
ことを特徴とする二剤混合容器。
【請求項2】
前記第一容器(2)の上部に、カッター部材(4)及び第二容器(3)を一緒に覆蓋可能とするキャップ体(5)が第一容器(2)に対して着脱自在の状態で設けられていることを特徴とする請求項1記載の二剤混合容器。
【請求項3】
前記第一容器(2)に対してキャップ体(5)が螺合構造で着脱自在となされており、これら第一容器(2)とキャップ体(5)とを螺合により相対接近させることによって第二容器(3)と第一容器(2)とが相対接近可能になっていることを特徴とする請求項2記載の二剤混合容器。
【請求項4】
前記第一容器(2)とキャップ体(5)との上下間には第一容器(2)とキャップ体(5)とを相対接近不能に保持するスペーサ部材(6)が設けられており、このスペーサ部材(6)は1回のみの取り除きを予定した切り離し予定部(40)を介して第一容器(2)又はキャップ体(5)と連結されていることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の二剤混合容器。
【請求項5】
前記カッター部材(4)の上シール破封部(17)は、第一容器(2)と第二容器(3)とを最も相対接近させた状態で第二容器(3)の破封予定シール(14)を半円以上全円以下の開口に破封する上切刃部(17a)とこの上切刃部(17a)で未破封となる部位において破封後のシール舌片を上方へ押込折曲させる開封促進部(17c)とを有しており、
カッター部材(4)の下シール破封部(18)は、第一容器(2)と第二容器(3)とを最も相対接近させた状態で第一容器(2)の破封予定シール(11)を半円以上全円以下の開口に破封する下切刃部(18a)とこの下切刃部(18a)で未破封となる部位において破封後のシール舌片を下方へ押込折曲させる開封促進部とを有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の二剤混合容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−67412(P2009−67412A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235539(P2007−235539)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【特許番号】特許第4094048号(P4094048)
【特許公報発行日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(501082082)
【Fターム(参考)】