説明

二成分現像剤

【課題】画像濃度の低下、耐刷の際の転写の中抜け、帯電量低下によるカブリの発生に対して高い抑制効果を有する二成分現像剤を提供すること。
【解決手段】結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母粒子に外添剤が添加されてなるトナーと、キャリアとを含有してなる二成分現像剤であって、前記外添剤が、トナー母粒子100重量部に対して、個数平均粒径が5〜20nmの疎水性シリカAを0.05〜2.0重量部、個数平均粒径が5〜40nmの疎水性チタニアを0.05〜2.0重量部、個数平均粒径が20nmを超えて、70nm以下の疎水性シリカBを1.0〜5.0重量部、重量平均粒径が30〜75nmのチタン酸ストロンチウムを0.1〜1.0重量部、及び体積中位粒径が1.5〜12μmのステアリン酸亜鉛を0.01〜0.1重量部を含有してなる二成分現像剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる二成分現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンターの高画質化に伴い、トナーにも高い性能が要求されている。
【0003】
外添剤による高画質化に関して、例えば、特許文献1には、外添剤として、特定粒径のチタン酸ストロンチウムとアルミナとが用いられ、カブリや画像スジが改善される技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、特定粒径の疎水性シリカや疎水性チタニア等の無機粒子及び個数平均粒径80〜1200nmの無機粒子、さらに脂肪酸金属塩が外添剤として用いられ、固着や感光体磨耗等が改善される技術が開示されている。
【特許文献1】特開2007−3631号公報
【特許文献2】特開2001−100452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トナーとキャリアとを混合した二成分現像剤を使用する二成分現像方式では、キャリアへのスペントにより、得られる画像の画像濃度の低下、耐刷の際の転写の中抜け、帯電量低下によるカブリの発生が生じやすい。特許文献1及び2では、主として一成分現像剤に対して検討されており、キャリアを用いる二成分現像剤に対して検討されていない。
【0006】
本発明の課題は、画像濃度の低下、耐刷の際の転写の中抜け、帯電量低下によるカブリの発生に対して高い抑制効果を有する二成分現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母粒子に外添剤が添加されてなるトナーと、キャリアとを含有してなる二成分現像剤であって、
前記外添剤が、トナー母粒子100重量部に対して、
個数平均粒径が5〜20nmの疎水性シリカAを0.05〜2.0重量部、
個数平均粒径が5〜40nmの疎水性チタニアを0.05〜2.0重量部、
個数平均粒径が20nmを超えて、70nm以下の疎水性シリカBを1.0〜5.0重量部、
重量平均粒径が30〜75nmのチタン酸ストロンチウムを0.1〜1.0重量部、及び
体積中位粒径が1.5〜12μmのステアリン酸亜鉛を0.01〜0.1重量部
を含有してなる二成分現像剤
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の二成分現像剤は、画像濃度の低下、耐刷の際の転写の中抜け、帯電量低下によるカブリの発生に対して高い抑制効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母粒子に外添剤が添加されたトナーと、キャリアとを含有した二成分現像剤において、外添剤として、平均粒径の異なる2種の疎水性シリカと、疎水性チタニアと、チタン酸ストロンチウムと、ステアリン酸亜鉛とを含有しており、それらの外添剤の平均粒径と含有量が、特定の範囲に調整されている点に特徴を有する。なかでも、チタン酸ストロンチウムとステアリン酸亜鉛とチタニアの併用により、カブリの長期抑制と良好な画像濃度の維持に対して、顕著な効果を奏する。本発明におけるトナーは二成分現像方式に対して発明の効果を発揮する。一成分現像方式に対しては、トナーが現像ローラ上ですべり易いため適用は困難である。
【0010】
外添剤としては、前記の如く、少なくとも5種の無機粒子、即ち、トナー母粒子100重量部に対して、
(1) 個数平均粒径が5〜20nmの疎水性シリカAを0.05〜2.0重量部、
(2) 個数平均粒径が5〜40nmの疎水性チタニアを0.05〜2.0重量部、
(3) 個数平均粒径が20nmを超えて、70nm以下の疎水性シリカBを1.0〜5.0重量部、
(4) 重量平均粒径が30〜75nmのチタン酸ストロンチウムを0.1〜1.0重量部、及び
(5) 体積中位粒径が1.5〜12μmのステアリン酸亜鉛を0.01〜0.1重量部
を含有する。
【0011】
疎水性シリカAは、主に、得られる画像のカブリの低減に効果的である。
【0012】
疎水性シリカAの個数平均粒径は、5〜20nmであり、好ましくは7〜18nm、より好ましくは7〜15nmである。疎水性シリカAの個数平均粒径は、BET比表面積から求める。
【0013】
疎水性シリカAの含有量は、トナー母粒子100重量部に対して、0.05〜2.0重量部であり、好ましくは0.05〜1.5重量部、より好ましくは0.1〜1.0重量部である。
【0014】
疎水性チタニアは、主に、得られる画像の画像濃度低下改善に対して効果的である。
【0015】
疎水性チタニアの個数平均粒径は、5〜40nmであり、好ましくは7〜35nm、より好ましくは10〜30nmである。疎水性チタニアの個数平均粒径は、BET比表面積から求める。
【0016】
疎水性チタニアの含有量は、トナー母粒子100重量部に対して、0.05〜2.0重量部であり、好ましくは0.05〜1.5重量部、より好ましくは0.1〜1.5重量部である。
【0017】
疎水性シリカBは、主に、得られる画像の画像濃度の向上及びトナーの転写抜け防止に効果的である。疎水性シリカBの個数平均粒径は、BET比表面積から求める。
【0018】
疎水性シリカBの個数平均粒径は、20nmを超えて、70nm以下であり、好ましくは20nmを超えて、60nm以下、より好ましくは25〜55nmである。
【0019】
疎水性シリカBの含有量は、トナー母粒子100重量部に対して、1.0〜5.0重量部であり、好ましくは1.0〜4.5重量部、より好ましくは1.5〜4.5重量部である。
【0020】
疎水性シリカA、Bと疎水性チタニアの疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン、シリコーンオイル、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。疎水化処理剤の処理量は、無機微粒子の表面積当たり1〜7mg/m2が好ましい。
【0021】
チタン酸ストロンチウムは、主に、耐刷時のカブリ低減に効果的である。
【0022】
チタン酸ストロンチウムの重量平均粒径は、30〜75nmであり、好ましくは35〜75nm、より好ましくは40〜75nmである。チタン酸ストロンチウムの重量平均粒径は、透過型電子顕微鏡写真から等価円直径により重量基準の50%粒子径を求める。
【0023】
トナーの帯電性の観点から、チタン酸ストロンチウムの重量平均粒径は、疎水性シリカBの個数平均粒径よりも大きいことが好ましく、両者の平均粒径の差は、50nm以下が好ましく、15〜45nmがより好ましい。
【0024】
チタン酸ストロンチウムの含有量は、トナー母粒子100重量部に対して、0.1〜1.0重量部であり、好ましくは0.1〜0.8重量部、より好ましくは0.2〜0.7重量部である。
【0025】
トナーの帯電性の観点から、疎水性チタニアとチタン酸ストロンチウムの重量比(疎水性チタニア/チタン酸ストロンチウム)は、1/1〜7/1が好ましく、1/1〜6/1がより好ましく、1/1〜4/1がさらに好ましい。
【0026】
ステアリン酸亜鉛は、主に、耐刷時のカブリ低減に効果的である。
【0027】
ステアリン酸亜鉛の体積中位粒径は、1.5〜12μmであり、好ましくは2.0〜11μm、より好ましくは3.0〜10μmである。ステアリン酸亜鉛の体積中位粒径は、エタノール中に分散させ、レーザ回折式粒度分布測定装置で求める。
【0028】
ステアリン酸亜鉛の含有量は、トナー母粒子100重量部に対して、0.01〜0.1重量部であり、好ましくは0.01〜0.08重量部、より好ましくは0.01〜0.06重量部である。
【0029】
トナーの帯電性の観点から、チタン酸ストロンチウムとステアリン酸亜鉛の重量比(チタン酸ストロンチウム/ステアリン酸亜鉛)は、4/1〜35/1が好ましく、5/1〜30/1がより好ましく、5/1〜15/1がさらに好ましい。
【0030】
トナーの帯電性の観点から、疎水性チタニアとステアリン酸亜鉛の重量比(疎水性チタニア/ステアリン酸亜鉛)は、10/1〜30/1が好ましく、15/1〜30/1がより好ましい。
【0031】
チタン酸ストロンチウム及びステアリン酸亜鉛における疎水化処理の有無は、特に限定されないが、トナーの帯電性に悪影響を及ぼさない程度に、疎水化度は低いことが好ましく、疎水化処理されていないことがより好ましい。疎水化処理としては、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル、ヘキサメチルジシラザン等の疎水化処理剤で、粒子表面を処理したものが挙げられる。
【0032】
外添剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の外添剤が含有されていてもよいが、上記5種の外添剤の総量は、外添剤中、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0033】
トナー母粒子が含有する結着樹脂としては、例えば、ポリエステル等の縮重合系樹脂、スチレン−アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられるが、これらの中では、トナーの定着性及び耐久性の観点から、ポリエステルが好ましい。ポリエステルの含有量は、結着樹脂中、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。
【0034】
ポリエステルは、特に限定されないが、2価以上のアルコールからなるアルコール成分と、2価以上のカルボン酸化合物からなるカルボン酸成分を含む原料モノマーを縮重合させて得られる。
【0035】
2価以上のアルコールとしては、トナーの保存安定性の観点から、式(I):
【0036】
【化1】

【0037】
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。かかるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
【0038】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、ポリオキシエチレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のRが炭素数2のエチレンオキサイド付加物、ポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のRが炭素数3のプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0039】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物以外のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0040】
また、2価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸(例えば、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸)等の脂肪族カルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、並びにこれらの酸の無水物及び低級アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。なお、上記のような酸、これらの酸の無水物、及び酸のアルキルエステルを、本明細書では総称してカルボン酸化合物と呼ぶ。
【0041】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、分子量調整やトナーの耐オフセット性向上の観点から、適宜含有されていてもよい。
【0042】
アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、180〜250℃の温度で行うことができるが、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下で行うことが好ましい。エステル化触媒としては、ジブチル錫オキシド、チタン化合物、オクチル酸スズ等のSn-C結合を有していない錫(II)化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は両者を併用して用いられる。
【0043】
なお、本発明において、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0044】
ポリエステルの軟化点は、トナーの耐久性の観点から、90〜150℃が好ましく、100〜140℃がより好ましい。
【0045】
ポリエステルのガラス転移点は、トナーの保存性の観点から、50〜85℃が好ましく、55〜80℃がより好ましい。酸価は、トナーの環境安定性の観点から、0.5〜40mgKOH/gが好ましい。
【0046】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、黒色顔料、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾイエロー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、3〜10重量部がより好ましい。
【0047】
結着樹脂及び着色剤以外のトナー原料としては、荷電制御剤、離型剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤等の添加剤が挙げられる。
【0048】
荷電制御剤としては、負帯電性及び正帯電性のいずれのものも使用することができる。負帯電性荷電制御剤としては、例えば、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ニトロイミダゾール誘導体、カリックスアレーン等のフェノール類とアルデヒド類との重合体等が挙げられる。正帯電性荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。また、樹脂等の高分子タイプのものを使用することもできる。荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜8重量部が好ましく、0.2〜5重量部がより好ましい。
【0049】
離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられる。離型剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。離型剤の融点は、トナーの定着性の観点から、60〜120℃が好ましく、70〜100℃がより好ましく、70〜90℃がさらに好ましい。離型剤は2種以上併用することもできる。
【0050】
トナー母粒子の製造方法は、混練粉砕法、乳化転相法、重合法等の公知のいずれの方法であってもよいが、製造が容易なことから、混練粉砕法が好ましい。例えば、混練粉砕法による粉砕トナーの場合、結着樹脂、荷電制御剤、着色剤、ワックス等をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー又は1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。得られたトナー母粒子に、少なくとも前記5種の外添剤を添加することにより、トナーが得られる。
【0051】
トナー母粒子と外添剤を混合する際に用いられる混合機としては、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機、V型ブレンダー等の乾式混合に用いる攪拌装置が好ましい。外添剤は、あらかじめ混合して高速攪拌機やV型ブレンダーに添加してもよく、また別々に添加してもよい。
【0052】
本発明に係る外添剤をトナー母粒子と混合する順序として、これらの外添剤のトナー母粒子への付着を良好にし、カブリの発生を抑制する観点から、疎水性シリカB、チタン酸ストロンチウム及びステアリン酸亜鉛をトナー母粒子と混合した後に、疎水性シリカA及び疎水性チタニアを混合するのが好ましい。
【0053】
トナーの体積中位粒径(D50)は、3〜15μmが好ましく、4〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0054】
キャリアとしては、画像特性の観点から、磁気ブラシのあたりが弱くなる飽和磁化の低いキャリアが好ましい。キャリアの飽和磁化は、40〜100Am2/kgが好ましく、50〜90Am2/kgがより好ましい。飽和磁化は、磁気ブラシの固さを調節し、階調再現性を保持する観点から、100Am2/kg以下が好ましく、キャリア付着を防止する観点から、40Am2/kg以上が好ましい。
【0055】
キャリアのコア材としては、公知の材料からなるものを特に限定することなく用いることができ、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト、銅-亜鉛-マグネシウムフェライト、マンガンフェライト、マグネシウムフェライト等の合金や化合物、ガラスビーズ等が挙げられ、これらの中では、帯電性の観点から、鉄粉、マグネタイト、フェライト、銅-亜鉛-マグネシウムフェライト、マンガンフェライト及びマグネシウムフェライトが好ましく、画質の観点から、フェライト、銅-亜鉛-マグネシウムフェライト、マンガンフェライト及びマグネシウムフェライトがより好ましい。
【0056】
キャリアの表面は、スペント防止の観点から、樹脂で被覆されているのが好ましい。キャリア表面を被覆する樹脂としては、トナー材料により異なるが、例えばポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂、ポリエステル、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂などが挙げられ、これらは単独であるいは2種以上を併用して用いることができるが、トナーが負帯電性である場合には、帯電性及び表面エネルギーの観点から、シリコーン樹脂が好ましい。樹脂によるコア材の被覆方法は、例えば、樹脂等の被覆材を溶剤中に溶解もしくは懸濁させて塗布し、コア材に付着させる方法、単に粉体で混合する方法等、特に限定されない。
【0057】
トナーとキャリアとを混合して得られる二成分現像剤において、トナーとキャリアの重量比(トナー/キャリア)は、1/99〜15/85が好ましく、2/98〜10/90がより好ましい。
【実施例】
【0058】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出する温度を軟化点とする。
【0059】
〔樹脂のガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、降温速度10℃/minで0℃まで冷却した試料を昇温速度10℃/minで測定を開始する。ガラス転移点以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間の最大傾斜を示す接線との交点の温度を、ガラス転移点とする。
【0060】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0061】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0062】
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
本明細書において、トナーの体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になるトナーの粒径を意味する。
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5重量%電解液
分散条件:分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個のトナー粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0063】
〔疎水性シリカ、疎水性チタニア及びアルミナの個数平均粒径〕
個数平均粒径(nm)=6/(ρ×比表面積(m2/g))×1000
式中、ρはシリカの比重(2.2)、チタニアの比重(4.2)又はアルミナの比重(4.0)であり、比表面積は疎水化処理前の原体の、窒素吸着法により求められたBET比表面積である。
なお、上記式は、粒径Rの球と仮定して、
BET比表面積=S×(1/m)
m(粒子の重さ)=4/3×π×(R/2)3×比重
S(表面積)=4π(R/2)2
から得られる式である。
【0064】
〔チタン酸ストロンチウムの重量平均粒径〕
チタン酸ストロンチウムの重量平均粒径は、透過型電子顕微鏡写真を用いて等価円直径により測定される重量基準の50%粒子径を求める。
【0065】
〔ステアリン酸亜鉛の体積中位粒径(D50)〕
スパチュラ1杯程度(5〜10mg)の試料を、メタノール20ml中に添加し、超音波にて300秒間攪拌した後、レーザ回折式粒度分布測定装置(LA-920、堀場製作所社製)で該測定装置の屈折率のパラメータに「112a000I」を入力して粒度分布を測定し、体積中位粒径(D50)を求める。この屈折率のパラメータは、ステアリン酸亜鉛の屈折率1.49とメタノールの屈折率1.33から求めた相対屈折率1.12に基づくものである。
【0066】
〔キャリアの飽和磁化〕
(1) 外径7mm(内径6mm)、高さ5mmの蓋付プラスティックケースにキャリアをタッピングしながら充填し、プラスティックケースの重量とキャリアを充填したプラスティックケースの重量の差から、キャリアの質量を求める。
(2) 理研電子(株)の磁気特性測定装置「BHV-50H」(V.S.MAGNETOMETER)のサンプルホルダーにキャリアを充填したプラスティックケースをセットし、バイブレーション機能を使用して、プラスティックケースを加振しながら、79.6kA/mの磁場を印加して飽和磁化を測定する。得られた値は充填されたキャリアの質量を考慮し、単位質量当たりの飽和磁化に換算する。
【0067】
樹脂製造例1
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン1750g、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン1625g、テレフタル酸1145g、ドデセニルコハク酸172g、及びオクチル酸スズ25gを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、8kPaにて1時間反応を行った。その後、210℃に冷却し、無水トリメリット酸480gを投入し、1時間常圧で反応させた後、40kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行い、ポリエステルを得た。得られたポリエステルを樹脂Aとする。樹脂Aの軟化点は121.2℃、ガラス転移点は64.3℃、酸価は21.9mgKOH/gであった。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
【0068】
実施例1〜4及び比較例1〜13
樹脂A 88.0重量部、荷電制御剤「T-77」(保土ヶ谷化学工業社製)1.0重量部、離型剤「カルナウバワックス C1」(加藤洋行社製、融点:83℃)4.0重量部、離型剤「HNP−9」(日本精鑞社製、パラフィンワックス、融点:79℃)2.0重量部及びカーボンブラック「Mougul-L」(キャボット社製)5.0重量部を、予めヘンシェルミキサーを用いて混合後、得られた混合物を連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山(株)製)により混練し、混練物を得た。
【0069】
なお、使用した連続式二本オープンロール型混練機は、ロール外径が0.14m、有効ロール長が0.8mのものであり、運転条件は、高回転側ロール(前ロール)の回転数が75r/min、低回転側ロール(後ロール)の回転数が50r/min、ロール間隙が0.1mmであった。ロール内の加熱及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側の温度を150℃、混練物排出側の温度を100℃、低回転側ロールの原料投入側の温度を35℃及び混練物排出側の温度を35℃に設定した。また、原料混合物の供給速度は10kg/hrであった。ついで、得られた混練物を空気中で冷却したのち、ロートプレックス(ホソカワミクロン社製)にて粗粉砕し、最大径2mmの粗粉砕物を得た。その粗粉砕物を、衝突板式粉砕機、ディスパージョンセパレーターを用いて、粉砕・分級を行い、体積中位粒径(D50)が8.5μmの未処理トナーを得た。未処理トナー中の5μm以下の粒子の含有量は2.9体積%であった。
【0070】
この未処理トナー100重量部に、表1に示すシリカB、チタン酸ストロンチウム及びステアリン酸亜鉛(又はアルミナ)を添加し、ヘンシェルミキサーで混合後、さらにシリカA及びチタニアを添加し、ヘンシェルミキサーで混合して、黒トナーを得た。
【0071】
実施例5
原料として、樹脂A 88.0重量部、荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット社製)1.0重量部、離型剤「カルナウバワックス C1」(加藤洋行社製、融点:83℃)4.0重量部、パラフィンワックス「HNP−9」(日本精鑞社製、融点:79℃)2.0重量部及びシアン顔料「ECB-301」(大日精化社製)5.0重量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、体積中位粒径(D50)が8.5μmの未処理トナーを得た。未処理トナー中の5μm以下の粒子の含有量は2.7体積%であった。
【0072】
この未処理トナー100重量部に、表1に示す外添剤を添加し、ヘンシェルミキサーで混合して、シアントナーを得た。
【0073】
各トナー6重量部と、フェライトキャリア(シリコーン樹脂被覆、体積平均粒径:60μm、飽和磁化:68Am2/kg)94重量部とを混合し、二成分現像剤を得た。
【0074】
【表1】

【0075】
試験例1〔カブリ〕
二成分現像剤を、印刷速度を38ppmに改造した複写機「AR-S330」(シャープ社製)に実装し、印字率5%の文字画像を、A4サイズ(210mm×297mm)の用紙に3万枚連続印刷した。3万枚印刷後(耐刷後)に、白紙(印字率:0%)を3枚印刷して、一旦マシンを止め、感光体表面に透明なメンディングテープ(Scotch(登録商標)メンディングテープ810、3M社製、幅:18mm)を貼付けた。剥離したテープを未使用の白紙に貼付し、テープを貼付した紙の下に白色の厚紙を重ねた。テープ部分の濃度を、測色計(Gretag-Macbeth社製、Spectroeye)により、光射条件を標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DIN NBにおいて絶対白基準で測定し、リファレンスとして未使用のメンディングテープとの差を求めた。結果を表2に示す。
【0076】
〔カブリの評価基準〕
SA:濃度差が、0.02未満
A:濃度差が、0.02以上、0.03未満
B:濃度差が、0.03以上、0.05未満
C:濃度差が、0.05以上
【0077】
試験例2〔画像濃度〕
二成分現像剤を、印刷速度を38ppmに改造した複写機「AR-S330」(シャープ社製)に実装し、印字率5%の文字画像を、A4サイズ(210mm×297mm)の用紙に1000枚連続印刷した後、印字率0%の白紙、A4サイズ(210mm×297mm)の用紙に2000枚連続印刷した。途中、20枚以内の印刷時点(初期)でベタ画像を印刷し、その画像濃度を、測色計(Gretag-Macbeth社製、Spectroeye)により、光射条件を標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DIN NBにおいて絶対白基準で測定した。3000枚印刷後も同様にベタ画像を印刷して、画像濃度を測定し、以下の評価基準に従って評価した。結果を表2に示す。
【0078】
〔画像濃度の評価基準〕
(A) 黒トナー
A:1.40以上
B:1.20以上、1.40未満
C:1.20未満
【0079】
(B) シアントナー
A:1.30以上
B:1.10以上、1.30未満
C:1.10未満
【0080】
試験例3〔転写抜け〕
試験例1の耐刷後、文字を印字し、顕微鏡(倍率:50倍)で転写抜けを確認した。
A:ほとんど転写抜けが見られない
B:転写抜けが見られる
【0081】
【表2】

【0082】
以上の結果より、比較例1〜13と対比して、実施例1〜5は耐刷後も良好な画像濃度を維持することができ、転写抜け及びカブリのいずれもが抑制されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の二成分現像剤は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母粒子に外添剤が添加されてなるトナーと、キャリアとを含有してなる二成分現像剤であって、
前記外添剤が、トナー母粒子100重量部に対して、
個数平均粒径が5〜20nmの疎水性シリカAを0.05〜2.0重量部、
個数平均粒径が5〜40nmの疎水性チタニアを0.05〜2.0重量部、
個数平均粒径が20nmを超えて、70nm以下の疎水性シリカBを1.0〜5.0重量部、
重量平均粒径が30〜75nmのチタン酸ストロンチウムを0.1〜1.0重量部、及び
体積中位粒径が1.5〜12μmのステアリン酸亜鉛を0.01〜0.1重量部
を含有してなる二成分現像剤。
【請求項2】
チタン酸ストロンチウムの重量平均粒径が疎水性シリカBの個数平均粒径より大きい、請求項1記載の二成分現像剤。
【請求項3】
チタン酸ストロンチウムとステアリン酸亜鉛の重量比(チタン酸ストロンチウム/ステアリン酸亜鉛)が、4/1〜35/1である、請求項1又は2記載の二成分現像剤。
【請求項4】
疎水性チタニアとチタン酸ストロンチウムの重量比(疎水性チタニア/チタン酸ストロンチウム)が、1/1〜7/1である、請求項1〜3いずれか記載の二成分現像剤。
【請求項5】
疎水性チタニアとステアリン酸亜鉛の重量比(疎水性チタニア/ステアリン酸亜鉛)が、10/1〜30/1である、請求項1〜4いずれか記載の二成分現像剤。

【公開番号】特開2010−44113(P2010−44113A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206201(P2008−206201)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】