説明

二次元アレイ超音波プローブ及びプローブ診断装置

【課題】三次元動画像によるリアルタイム診断が可能で、かつ、鮮明な画像を得るために、多チャンネル化した場合であっても、取り扱いを容易にすること。
【解決手段】二次元アレイ状に、かつ、凸曲面状に配列された圧電体70と、表面が圧電体70に沿った凸曲面状に形成され、裏面が平坦面状に形成された基板本体41と、表面41aに形成された表面電極42と、裏面41bに形成された裏面電極43と、表面電極42から裏面電極43にかけて貫通する貫通電極44とを有するインターポーザ基板40と、圧電体70とインターポーザ基板40との間に配置され、表面51aに圧電体70が実装され、裏面51bにインターポーザ基板40の電極が接続されているフレキシブル配線基板50と、インターポーザ基板40の裏面電極に実装され、圧電体70から得られる信号情報を処理するスイッチ80ICとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元アレイ状に配列した圧電体を使用して超音波を出力し、その反射した超音波を受信する二次元アレイ超音波プローブ及びこの二次元アレイ超音波プローブが組み込まれたプローブ診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エコー画像診断に用いるためのプローブ診断装置では、二次元アレイ超音波プローブが用いられている。二次元アレイ超音波プローブは、ヘッドに二次元アレイ状に圧電体を配列し、この圧電体から超音波を出力し、その反射した超音波を受信する装置であり、検出された信号は、ケーブルを介して検査装置本体等に送られ、画像処理されて診断等に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−103397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した二次元アレイ超音波プローブでは、次のような問題があった。すなわち、近年、三次元動画像によるリアルタイム診断が可能で、かつ、鮮明な画像を得るために、ヘッドに搭載される圧電体のチャンネル数を増やす設計が行われている。これに伴い、検査装置本体への接続線の数が増え、これら接続線のケーブルは太くなる。ケーブルが太くなると、二次元アレイ超音波プローブのヘッドが動かしにくくなり、診断に支障が生じるという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、三次元動画像によるリアルタイム診断が可能で、かつ、鮮明な画像を得るために、多チャンネル化した場合であっても、ケーブルを太くすることなく、取り扱いが容易な二次元アレイ超音波プローブ、及び、この二次元アレイ超音波プローブが組み込まれたプローブ診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の二次元アレイ超音波プローブ及びプローブ診断装置は次のように構成されている。
【0007】
(1)二次元アレイ状に配列された圧電体と、前記圧電体から得られる信号情報を処理する処理ICと、前記圧電体と前記処理ICとの間に配置され、表面に前記圧電体が実装され、裏面に前記処理ICが実装されるフレキシブル配線基板とを備えていることを特徴とする。
【0008】
(2)二次元アレイ状に、かつ、凸曲面状に配列された圧電体と、表面が前記圧電体に沿った凸曲面状に形成され、裏面が平坦面状に形成された基板本体と、前記表面に形成された表面電極と、前記裏面に形成された裏面電極と、前記表面電極から前記裏面電極にかけて貫通する貫通電極とを有する中継基板と、前記圧電体と前記中継基板との間に配置され、表面に前記圧電体が実装され、裏面に前記中継基板の電極が接続されているフレキシブル配線基板と、前記中継基板の裏面電極に実装され、前記圧電体から得られる信号情報を処理する処理ICとを備えていることを特徴とする。
【0009】
(3)二次元アレイ状に配列された圧電体と、前記圧電体から得られる信号情報を処理する処理ICと、前記圧電体と前記処理ICとの間に配置され、表面に前記圧電体が実装され、裏面に前記処理ICが実装されるフレキシブル配線基板とを有する超音波プローブと、前記処理ICから送られた信号を処理し、画像を形成する画像処理部と、この画像処理部で画像形成された画像を表示する画像表示装置とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、三次元動画像によるリアルタイム診断が可能で、かつ、鮮明な画像を得るために、多チャンネル化した場合であっても、ケーブルを太くすることなく、取り扱いを容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る超音波プローブが組み込まれたプローブ診断装置を示す斜視図。
【図2】同超音波プローブを示す斜視図。
【図3】同超音波プローブに組み込まれた検出部を示す説明図。
【図4】同検出部に組み込まれたインタポーザ基板の要部を示す断面図。
【図5】同検出部に組み込まれたフレキシブル配線基板の要部を示す断面図。
【図6】同検出部に組み込まれたスイッチICを示す平面図。
【図7】同超音波プローブの製造工程を示すフローチャート。
【図8】同製造工程を示す説明図。
【図9A】同製造工程を示す説明図。
【図9B】同製造工程を示す説明図。
【図9C】同製造工程を示す説明図。
【図10】同製造工程を示す説明図。
【図11A】同製造工程を示す説明図。
【図11B】同製造工程を示す説明図。
【図12A】同製造工程を示す説明図。
【図12B】同製造工程を示す説明図。
【図12C】同製造工程を示す縦断面図。
【図12D】同製造工程を示す縦断面図。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る超音波プローブに組み込まれた検出部を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明の第1の実施の形態に係るプローブ診断装置10を示す斜視図、図2はプローブ診断装置10に組み込まれた超音波プローブ20を示す斜視図、図3は超音波プローブ20に組み込まれた検出部30の構成を示す断面図である。なお、図中Rは超音波照射方向を示している。
【0013】
図1に示すように、プローブ診断装置10は、診断装置本体11と、この診断装置本体11に取り付けられた画像モニタ12と、診断装置本体11からケーブル13を介して取り付けられた超音波プローブ(コンベックス型二次元アレイ超音波プローブ)20を備えている。
【0014】
診断装置本体11内部には、超音波プローブ20から送られた信号を処理し、画像を形成する画像処理部100を備えている。また、画像モニタ12は、画像処理部100で画像形成された画像を表示する機能を有している。
【0015】
図2に示すように、超音波プローブ20は、作業者が掴む持ち手部21と、検出部30を収容するヘッド22と、診断装置本体11に信号を送受信するためのケーブル23を備えている。なお、ヘッド22は、超音波照射方向(図2中矢印R)が凸面を形成している。
【0016】
図3に示すように、検出部30は、凸状(コンベックス型)のインターポーザ基板(中継基板)40と、このインターポーザ基板40の凸側に裏面側を向けて配置されたフレキシブル配線基板50と、フレキシブル配線基板50の表面側に接着剤層60を介して実装された二次元アレイ型の圧電体70と、インターポーザ基板40の平板側に接着剤層90を介して実装されたスイッチIC(処理IC)80とを備えている。
【0017】
インターポーザ基板40の要部を示す断面図である。図4に示すように、インターポーザ基板40は、樹脂材により形成されたべース材41と、このベース材41の表面41a側に設けられた第1の電極42と、裏面41b側に設けられた第2の電極43と、ベース材41を貫通し、第1の電極42と第2の電極43とを接続する貫通電極44とを有している。べース材41の表面41aは凸面状、裏面41bは平坦面状に形成されている。
【0018】
第1の電極42は、フレキシブル配線基板50の第2の電極53と接続され、第2の電極53を介して電気配線を取りだすためのものである。第2の電極43は、第1の電極42とは反対側の面に設けられ、スイッチIC80と電気的に接続される。
【0019】
図5は、フレキシブル配線基板50の要部を示す断面図である。フレキシブル配線基板50は、柔軟性を有するポリイミド等の樹脂材により形成されたべース材51と、このベース材51の表面側に設けられた第1の電極52と、裏面側に設けられた第2の電極53と、ベース材51を貫通し、第1の電極52と第2の電極53とを接続する貫通電極54と、銅箔等の配線部55とを有している。
【0020】
第1の電極52は、圧電体70と接続され、圧電体70の下側電極(不図示)から電気配線を取り出すものである。第2の電極53は、インターポーザ基板40の第1の電極42と接続される。配線部55は圧電体70及びインターポーザ基板40との接続領域の外側に引き出され、ケーブル23を介して画像処理部100に接続される。
【0021】
第1の電極52の配列ピッチは、例えば400μmであり、隣り合う第1の電極52の間隔は80μmである。べース材は屈曲性を要する点から薄い方が好ましい。また、第1の電極52には高さ約40μmのバンプ52a(Cuコア、表面処理:Ni/Auメッキ)が形成されている。
【0022】
接着剤層60は、後述する圧電体70のダイシング工程において、圧電体70が剥がれ落ちないようにするだけでなく、ダイシングの深さを十分にする役割があり、ブレードにより厚さ方向について途中まで切断される(すなわち、完全に切断されない)。
【0023】
二次元アレイ型の圧電体70は、二次元アレイ状に、かつ、凸曲面状に配列され、圧電振動子71、音響整合層72、バッキング材73を積層して形成されている(図8参照)。圧電体70の寸法は例えば60mm×10mmである。
【0024】
圧電振動子71は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)のような圧電セラミックス等に上側電極、下側電極(それぞれ図示せず)が設けられている。この圧電振動子71は、パルサからの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する機能を有している。
【0025】
音響整合層72は、音速、厚み、音響インピーダンス等の物理的パラメータを調整することで、被検体と圧電振動子71との音響インピーダンスの整合を図ることができる。
【0026】
バッキング材73は、圧電振動子71を機械的に支持し、超音波パルスを短くするために圧電振動子71を制動する機能を有している。このバッキング材73の厚さは、音響特性を良好に維持するため、使用する超音波の波長に対して十分な厚さ(すなわち、背面方向の超音波が十分に減衰される厚さ)に設定される。
【0027】
スイッチIC80は、図6に示すように、IC本体81と、圧電体70から受信した電気信号を入力するためのエリア電極82と、信号処理した電気信号を出力するための外部電極83とを備えている。スイッチIC80は、多数の圧電振動子71から受信した電気信号がそれぞれ入力されるが、画像生成のための信号に変換した上で出力するため、出力信号の数を大幅に減らすことになる。
【0028】
次に、このような超音波プローブ20の製造工程について、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、図8に示すように、圧電振動子71に電圧印加のための上側電極及び下側電極を形成し、上側電極上に音響整合層12を、下側電極上にバッキング材73を形成する(ST1)。
【0029】
次に、図9Aに示すように、フレキシブル配線基板50の表面51a側に、接着剤層60の基材となる異方性導電フィルムFを貼りあわせる。そして、図9Bに示すように、所定の位置に圧電体70を位置合わせし、熱圧着装置(不図示)を用いて接合する(ST2)。次に、図9Cに示すように、フレキシブル配線基板50に接合した圧電体70を力ッティングべースに仮固定し、400μm間隔にて50μmブレードでダイシングする(ST3)。このとき、切り込みの深さは接着剤層60を20μm程度まで切り込み、確実に圧電体70を切削するようにして実行される。その後、仮固定した(圧電体70が接合された)フレキシブル配線基板50をカッティングベースから取り外す。図10はダイシング後の圧電体70及び接着剤層60を示す斜視図である。
【0030】
一方、インターポーザ基板40は、図11A及び図11Bのようにして形成する。すなわち、図11Aに示すように、貫通電極に該当する配線パターンを形成した基材を36枚貼り合わせた、36層プリント配線基板を準備する。次に、外形を研削加工し、図11Bに示すようなインターポーザ基板40を形成する。その後、第1の電極42及び第2の電極43の表面処理として、全面メッキ(例えばNi/Au)とパターニング(露光・現像またはカッティング)を施してもよい。
【0031】
次に、図12Aに示すように、凸曲面を有する治具J1と凹曲面を有する冶具J2を用いて圧電体70の配列が超音波照射面に対して凸形状になるように配置する。
【0032】
次に、図12Bに示すように、インターポーザ基板40の第1の電極42に予めはんだ42aを形成しておき、フレキシブル配線基板50の第2の電極53とインターポーザ基板40の第1の電極42とをはんだ接続する(ST4)。
【0033】
次に、図12C及び図12Dに示すように、インターポーザ基板40に異方性導電フィルムFを貼り合わせ、予め電極にAuバンプを形成したスイッチIC80を位置合わせ、熱圧着装置Nを用いてインターポーザ基板40とスイッチIC80とを接続する(ST5)。
【0034】
その後、これを筺体に組み込み(ST6)、超音波プローブ20が完成する。
【0035】
上述したように、本実施の形態に係る超音波プローブ20では、片面が凸曲面であり貫通電極を有するインターポーザ基板40を用いることで、圧電体から得られる膨大な信号情報を処理するためのスイッチIC80を圧電体70の近傍に接続することができる。このため、三次元動画像によるリアルタイム診断が可能で、かつ、鮮明な画像を得るために圧電体の数を増やした場合であっても、画像処理部100への信号ケーブルの数を減らすことができる。したがって、ケーブル23の太さを細くすることができ、ヘッド22の取り扱いが容易となる。
【0036】
図13は、本発明の第2の実施の形態に係る超音波プローブ20Aの構成を示す説明図である。なお、図13において図3と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。超音波プローブ20Aは、検出部30Aを備えている。
【0037】
検出部30Aは、平板状に配列された二次元アレイ型の圧電体70Aと、この圧電体70Aが表面側に接着剤層Eを介して実装されたフレキシブル配線基板50Aと、フレキシブル配線基板50Aの裏面側に接着剤層Eを介して接続されたスイッチIC80Aとを備えている。
【0038】
このように二次元アレイ型の圧電体70Aが平板状に配列された場合には、インターポーザ基板を省略して検出部30Aを構成することができる。このような検出部30Aにおいても、圧電体70で得られた信号をスイッチIC80Aを介して画像処理部100に信号を送ることができるので、信号ケーブルの数を減らすことができ、ケーブル23の太さを細くすることができる。
【0039】
なお、上述した例では、接続材料として金バンプ及び異方性導電フィルムを用いたが、例えば導電性接着剤やはんだ等を用いても良く、また適宜、アンダーフィル材等を用いても良い。また、圧電体に形成された溝に例えばエポキシ樹脂等を充填しても良い。さらに、処理ICとしてスイッチICを例示したが、制御IC等の他の処理ICでも良い。
【0040】
なお、本発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
三次元動画像によるリアルタイム診断が可能で、かつ、鮮明な画像を得るために、多チャンネル化した場合であっても、ケーブルを太くすることなく、取り扱いが容易な二次元アレイ超音波プローブ及びプローブ診断装置を提供できる。
【符号の説明】
【0042】
10…プローブ診断装置、20…超音波プローブ、22…ヘッド、30…検出部、40…インターポーザ基板(中継基板)、50…フレキシブル配線基板、60,90…接着剤層、70…圧電体、80…スイッチIC(処理IC)、80…スイッチIC(処理IC)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元アレイ状に配列された圧電体と、
前記圧電体から得られる信号情報を処理する処理ICと、
前記圧電体と前記処理ICとの間に配置され、表面に前記圧電体が実装され、裏面に前記処理ICが実装されるフレキシブル配線基板とを備えていることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
二次元アレイ状に、かつ、凸曲面状に配列された圧電体と、
表面が前記圧電体に沿った凸曲面状に形成され、裏面が平坦面状に形成された基板本体と、前記表面に形成された表面電極と、前記裏面に形成された裏面電極と、前記表面電極から前記裏面電極にかけて貫通する貫通電極とを有する中継基板と、
前記圧電体と前記中継基板との間に配置され、表面に前記圧電体が実装され、裏面に前記中継基板の電極が接続されているフレキシブル配線基板と、
前記中継基板の裏面電極に実装され、前記圧電体から得られる信号情報を処理する処理ICとを備えていることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項3】
二次元アレイ状に配列された圧電体と、前記圧電体から得られる信号情報を処理する処理ICと、前記圧電体と前記処理ICとの間に配置され、表面に前記圧電体が実装され、裏面に前記処理ICが実装されるフレキシブル配線基板とを有する超音波プローブと、
前記処理ICから送られた信号を処理し、画像を形成する画像処理部と、
この画像処理部で画像形成された画像を表示する画像表示装置とを備えていることを特徴とするプローブ診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−200332(P2011−200332A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68683(P2010−68683)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】