説明

二次電池、及びその製造方法

【課題】電解液の熱安定性に優れるとともに高容量である二次電池、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】電池内部に電解液として少なくともイオン液体を有する二次電池であって、電池内部の圧力が、25℃において10−3kPa以上10kPa以下であることを特徴とする、二次電池とし、正極、負極、セパレータ、及び少なくともイオン液体を含む電解液が備えられる二次電池の製造方法であって、正極と負極とセパレータとを一体とする、一体化工程と、一体とされた正極と負極とセパレータとを電解液に含浸させる、含浸工程と、含浸工程の後に電池を密封する、密封工程と、を備えるとともに、密封工程後の電池内部の圧力が負圧となるように、密封工程が意図的に負圧の条件下にて行われることを特徴とする、二次電池の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池、及びその製造方法に関し、より詳しくは安全性に優れ、且つ、十分な電池性能を有する二次電池、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、低公害車としての電気自動車やハイブリッド自動車等に適用するべく、高出力かつ高容量な高性能電源が必要とされている。また、自動車等以外の分野においても、情報関連機器や通信機器等のモバイルツールの世界的な普及によって、当該モバイルツールを高性能化可能な二次電池が必要とされている。
【0003】
二次電池は、例えば、正極層を有する正極電極体及び負極層を有する負極電極体や、当該双方の電極体の間に挟み込まれたセパレータ等から構成され、これらの構成に電解質を含ませることで、イオン伝導性を付与している。電解質として特に電解液を用いる場合は、固体電解質を用いる場合と比較して、電極体の層内に含まれる活物質と電解質との界面を増加させることができるため、イオン伝導性が高く、電池性能に優れた二次電池とすることができる。
【0004】
しかしながら、電解液として有機溶媒を含む二次電池を用いる場合には、電池の過充電時又は高温時において、電池内で発生する酸素等と有機溶媒とが反応し、電池の発熱、引火等につながる虞があり、固体電解質を用いる場合と比べて安全性に劣る場合があった。また、電解液の酸化分解により電池のサイクル特性が低下する場合もあった。
【0005】
電解液を有する二次電池の安全性を高める技術として、特許文献1には、電解液としてリチウム塩と有機溶媒とを含むリチウムイオン二次電池であって、電池外装体内圧>電池外装体外圧の場合に安全弁が作動し、外装体内のガスを外装体外に放出する機構が付与された二次電池が記載されている。
【0006】
また、電解液としてイオン液体を用いることも提案されている。イオン液体は、常温で液体である一方で、高粘度で蒸気圧がない、耐熱性が高く液体温度範囲が広い、不燃性である、化学的に安定である、分解電圧が高い、等の特徴を有しており(特許文献2)、電解液の引火等の虞がなく安全性に優れる二次電池とすることができる。特許文献3には、少なくとも1種の常温溶融塩(イオン液体)と、「沸点が100℃以上かつ引火点を有さない」又は「引火点又は分解開始温度が200℃以上」のいずれかの性質を持つ常温で液体である有機溶媒と、を含有する非水電解質及び当該非水電解質を用いた電気化学デバイスが記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−265699号公報
【特許文献2】WO2004/027789号パンフレット
【特許文献3】特開2005−135777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1にかかる技術によれば、安全弁の作動により電池内部に発生する気体を外部へ逃がすことができるものと考えられる。しかしながら、安全弁の高温時における動作信頼性に問題があるため、電解液の分解、引火を防ぐことができない場合があり、安全性に劣る二次電池であった。また、電解液としてイオン液体を用いた場合は、当該イオン液体が高粘度であるため、電極体内に電解液が均一に行き渡らない場合があり、且つ、イオン導電性も十分でなく、満足する電池特性を示さなかった。一方で、特許文献3のように、イオン液体の粘度を下げるため、所定の条件を満たす有機溶媒とイオン液体とを混合して用いた場合には、従来の二次電池より電解液の熱安定性について改善は見られるものの、イオン液体単独を用いた場合と比較して、やはり電解液の熱安定性に劣り、さらなる向上が望まれていた。すなわち、上記従来技術にあっては、電解液の優れた熱安定性と電池の高容量化とが両立できなかった。
【0009】
そこで本発明は電解液の熱安定性に優れ、安全性が高く、高容量である二次電池、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、発明者は電解液として熱安定性に優れたイオン液体を用いるとともに、電池の内圧を低圧としてイオン液体の粘度をさげることで、電解液の熱安定性に優れるとともに高容量な二次電池とすることができることを見出した。以下本発明の構成について説明する。
【0011】
第1の本発明は、電池内部に電解液として少なくともイオン液体を有する二次電池であって、電池内部の圧力が、25℃において10−3kPa以上10kPa以下であることを特徴とする、二次電池である。
【0012】
第1の本発明、及び以下に示す本発明において、「イオン液体」とは、常温において液体である塩のことであり、二次電池の電解液として使用可能であれば特に限定されない。例えば、陽イオンとしてアンモニウム系イオン、ホスホニウム系イオン、又はハロゲン系イオン等を、陰イオンとしてフッ化物イオン等を有するイオン液体を挙げることができる。この中でも、アンモニウム系イオン−フッ化物イオンを用いることが好ましく、4級アンモニウムイオン−フッ化物イミドを用いることがより好ましく、トリメチルブチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TMBA−TFSI)を用いることが特に好ましい。「電解液として少なくともイオン液体を有する」とは、二次電池の内部に含まれる電解液の構成として、少なくともイオン液体が含まれていることを意味し、イオン液体以外の成分が含まれていてもよい。ただし、電解液の熱安定性の観点からは、電解液中に有機溶媒を含まないことが好ましい。「電池内部の圧力」とは、電池の構成要素である電極やセパレータ等を外装材により密封した後における電池外装材の内側の圧力を意味し、特に電解液にかかる圧力を意味する。
【0013】
第1の本発明において、電解液の25℃、電池の内部圧力下における粘度が、1mPa・s以上100mPa・s以下であることが好ましい。
【0014】
第1の本発明、及び以下に示す本発明において、「粘度」とは、回転式粘度計によって測定された粘度を意味する。「電解液の25℃、電池の内部圧力下における粘度」とは、25℃の一定温度条件とした場合に電池内部において電解液が示す粘度のことである。
【0015】
第2の本発明は、正極、負極、セパレータ、及び少なくともイオン液体を含む電解液が備えられる二次電池の製造方法であって、正極と負極とセパレータとを一体とする、一体化工程と、一体とされた正極と負極とセパレータとを電解液に含浸させる、含浸工程と、含浸工程の後に電池を密封する、密封工程と、を備えるとともに、密封工程後の電池内部の圧力が負圧となるように、密封工程が意図的に負圧の条件下にて行われることを特徴とする、二次電池の製造方法である。
【0016】
ここに、「正極と負極とセパレータとを一体とする」とは、例えば、正極を正極層とセパレータとが接するようにセパレータ上に設置し、次に、負極をセパレータの正極とは反対側に、負極層とセパレータとが接するように負極を設置することで正極、セパレータ、及び負極をこの順に一体とする等、正極と負極との間にセパレータが配置されるように一体化することを意味する。「電解液に含浸させる」とは、正極、セパレータ、及び負極に、電解液を充填することを意味する。「電池を密封する」とは、例えば、一体化されるとともに、電解液に含浸された正極、セパレータ、及び負極を電池ケース等へと配置した後、封口する等、電池内部から電解液が漏れることがないような状態にすることを意味する。「負圧」とは、標準大気圧より低い圧力をいう。「密封工程後の電池内部の圧力が負圧となるように密封工程が意図的に負圧の条件下にて行われる」とは、例えば、上記封口作業等の密封工程が、圧力が負圧となるように意図的に制御された閉鎖空間内で行われ、密封工程後においても電池内部の圧力が負圧を維持するように、密封工程が行われることを意味する。従って、密封工程にて使用される電池ケース等は耐圧性を有する必要がある。
【0017】
第2の本発明において、密封工程において負圧とされた電池内部の圧力が密封工程後に25℃で10−3kPa以上10kPa以下となるように、密封工程が行われることが好ましい。
【0018】
ここに、「電池内部の圧力が密封工程後に10−3kPa以上10kPa以下となるように密封工程が行われる」とは、例えば、電池の封口作業が、25℃、10−3kPa以上10kPa以下の環境下で行われる等、電池外部の圧力に関わらず、密封された電池内部圧力が25℃において10−3kPa以上10kPa以下となるように電池を密封することを意味する。
【0019】
第2の本発明において、電解液の25℃、電池の内部圧力下における粘度が、1mPa・s以上100mPa・s以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
第1の本発明によれば、低粘度なイオン液体が電池内部に存在する二次電池とすることができる。低粘度なイオン液体は、イオン液体特有の熱安定性に加え、高いイオン伝導性を有する。従って、電解液の熱安定性に優れるとともに高容量な二次電池とすることができる。
【0021】
第2の本発明によれば、低粘度なイオン液体が電池内部に存在する二次電池の製造方法とすることができる。従って、電解液の熱安定性に優れるとともに高容量な二次電池を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。以下、コインタイプのリチウムイオン二次電池を中心に説明するが、本発明に適用可能な二次電池はリチウムイオン二次電池に限定されず、電池内部に電解液を有する二次電池全てに適用可能であるものと解される。
【0023】
<1.二次電池>
図1は、本発明に係るリチウムイオン二次電池10(以下、「二次電池10」という。)の構成の一部を示す概略図である。二次電池10は内部に、電解液1と、正極層2と集電体3とを備える正極4と、セパレータ5と、負極層6と集電体7とを備える負極8と、を有しており、外装体9(端子等を含むものとする。)にて密封されている。
【0024】
(1.1.電解液1)
二次電池10においては電解液1としてイオン液体が使用されている。電解液には支持塩としてのリチウム塩が含まれている。イオン液体としては二次電池10に使用可能なイオン液体であれば特に限定されないが、例えば、陽イオンとしてアンモニウム系イオン、ホスホニウム系イオン、又はハロゲン系イオン等を、陰イオンとしてフッ化物イオン等を有するイオン液体を挙げることができる。この中でも、アンモニウム系イオン−フッ化物イオンを用いることが好ましく、4級アンモニウムイオン−フッ化物イミドを用いることがより好ましく、トリメチルブチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TMBA−TFSI)を用いることが特に好ましい。これらイオン液体は、従来から使用されている有機溶媒と比較して、耐熱性が高く液体温度範囲が広い、不燃性である、化学的に安定である、分解電圧が高いといった二次電池電解液としての利点を有する一方で、高粘度でイオン伝導性が低いという不利な点も有している。本発明においては電池の内部圧力を低圧とすることで、イオン液体の粘度を相対的に下げている。
【0025】
二次電池10の内部圧力は外装体9の外部の圧力よりも低圧とされており、具体的には、電解液1であるイオン液体が、10−3kPa以上10kPa以下の圧力を示すことが好ましく、10−2kPa以上10kPa以下の圧力を示すことがより好ましく、10−1kPa以上1kPa以下の圧力を示すことが特に好ましい。電池内部圧力を低圧とすることで、電解液1の粘度を下げることができ、イオン液体の優れた熱安定性を維持しつつ、イオン液体が高粘度であることによるイオン伝導性の低下を防ぐことができるから、安全で高容量な二次電池10とすることができる。
【0026】
このように二次電池10の内部圧力を所定の低圧とすることで、電解液1の粘度は下がる。このときの電解液1の具体的な粘度としては、温度を25℃一定とすると、1mPa・s以上100mPa・s以下であることが好ましく、1mPa・s以上50mPa・s以下であることがより好ましく、1mPa・s以上10mPa・s以下であることが特に好ましい。
【0027】
電解液1にはイオン液体以外にイオン伝導のための支持塩が含まれている。支持塩としては二次電池10に使用可能な支持塩であれば特に限定されないが、例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ホウフッ化リチウム、過塩素酸リチウム等が好ましく使用され、イオン性液体との相性の観点から、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが特に好ましく使用される。
【0028】
電解液1にはさらにその他成分が含まれていてもよい。但し、電解液1の熱安定性の観点からは、有機溶媒等の熱安定性に劣る物質を含まないことが好ましい。電池内部圧力を低圧としているから、有機溶媒等を含まなくても、イオン伝導性が高められているからである。
【0029】
(1.2.正極4)
本発明に係る正極4は正極層2と集電体3とを備えており、正極層2中には正極活物質、導電材、及びその他添加剤等(いずれも不図示)が含まれている。
【0030】
正極層2中に含まれる正極活物質としては、従来から使用されているものであれば、特に限定されずに使用可能である。具体的には、リチウムコバルト酸化物系、リチウムニッケル酸化物系、リチウムマンガン酸化物系等に代表されるリチウム含有複合酸化物系、当該複合酸化物中に異種金属元素をドープしたもの、及び、その他異種金属の酸化物や硫化物、更には、ポリアニリン、ポリピロール等の有機化合物等が挙げられる。この中でも、リチウムコバルト酸化物系のものが好ましく使用される。具体的には、例えば、LiMOで表わされる複合酸化物を用いることができる。ここで、Mは、Coを主体とし、その他、Ni、V、Ti等の遷移金属を含む。また、y、zの値の範囲は、y=0.02〜2.2、z=1.4〜3であることが好ましい。特に、LiCoOが一般的で汎用性が高いため好ましい。正極活物質の形状については、粉末・粒子状(球状、多面体状等)、柱状(円柱状、四角柱状、針状等)等、種々の形状を使用可能である。
【0031】
正極層2には、炭素等、一般的に使用され得る導電材が含まれていても良い。導電材が含まれることにより、正極層1の電子伝導性を高めることができる。導電材の形状は特に限定されず、粒子状、柱状等にて含まれ得る。また、導電材は、正極活物質のリチウムイオン吸放出能を低下させすぎない程度に含まれていることが好ましい。具体的には正極層1全体基準で1質量%以上10質量%以下程度含まれていれば、リチウムイオン二次電池の正極層として好適に使用され得る。導電材を構成する材料としては、炭素やPt等の各種金属を挙げることができるが、安価で汎用性が高い観点から、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛等であることが好ましい。但し、正極層2に導電材が含まれなくとも十分な導電性を示す場合は、導電材は特に必要とされない。
【0032】
正極4には集電体3が備えられている。集電体3は、通常正極層2の表面上に配置される。集電体3は、正極層2の集電を行うものであり、その材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、及びチタン等を挙げることができる。集電体3は緻密金属集電体であっても良く、多孔質金属集電体であっても良い。また、PET等の高分子フィルムの表面に上記導電材料を蒸着させたものや、導電性高分子フィルムであってもよい。
【0033】
(1.3.セパレータ5)
二次電池10のセパレータ5としては、リチウムイオン二次電池に使用されるセパレータであれば、特に限定されずに使用可能である。セパレータ5を構成する材料としては、層構成内、又は層内の空隙中をリチウムイオンが移動できるものであればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の無機物粒子、又は、ポリエチレン、ポリプロピレン(以下において「PP」という。)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、セルロース、ポリイミド、及びポリアミド等の有機樹脂、さらには無機物粒子と有機樹脂との混合物及び成形体等を挙げることができる。セパレータ5には上記材料の他、添加材等が含まれていてもよい。
【0034】
(1.4.負極8)
本発明に係る負極8は負極層6と集電体7とを備えており、負極層6中には負極活物質、導電材、及びその他添加剤等(いずれも不図示)が含まれている。
【0035】
負極層6に含まれる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な物質であって、リチウムイオン二次電池の負極活物質として使用されているものであれば、特に限定されずに使用可能である。具体的には、例えば、グラファイトやコークス等の炭素系活物質、金属リチウム、リチウム遷移金属窒化物、その他金属、シリコン等を挙げることができる。また、当該負極活物質の形状は、上記正極活物質と同様、粉末・粒子状、柱状等を適宜選択して使用可能である。
【0036】
負極層6には、上記負極活物質の他に導電材が含まれていても良い。導電材としては、上記正極に用いられた導電材や銅を含む導電材を挙げることができる。但し、負極層6に導電材が含まれなくとも十分な導電性を示す場合は、導電材は特に必要とされない。
【0037】
負極8には集電体7が備えられている。集電体7は、通常負極層6の表面上に配置される。集電体7は、負極層6の集電を行うものであり、その材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、銅、ニッケル等の金属箔、PET等の高分子フィルムの表面に金属を蒸着したものや、導電性高分子フィルム等を用いることができる。この中でも、導電性の観点から、銅箔を用いることが好ましい。
【0038】
正極層4、負極層6やセパレータ5には、結着剤、各種添加剤等を適宜含ませることができる。結着剤は集電体と活物質、活物質同士、又はセパレータ粒子同士を結着するために用いられる。具体的には、例えば、フッ素樹脂、フッ素ゴム、ラテックス、セルロース誘導体等が挙げられる。各種添加剤としては、分散剤、界面活性剤、レオロジー調整材等を挙げることができる。
【0039】
(1.5.外装体9)
二次電池10を形作る容器として外装体9が使用されている。外装体9は端子、シール部材、絶縁体等を備えた容器であり、外装体9内に上記正極4、セパレータ5、負極8、及び電解液1等が備えられている。
【0040】
外装体9に用いられる材質・材料、及び外装体9の形状は、特に限定されない。但し、外装体9の内部(電池内部)は上記のように負圧とされている。そのため外装体9は耐圧性を有する必要がある。従って、外装体9にはステンレス鋼、ニッケルめっきされた鋼、アルミニウム合金等が用いられることが好ましい。図においてはコインタイプの外装体9を示しているが、外装体9の形状は、二次電池の使用目的に応じて、耐圧性を有する範囲内で、例えば円筒形状、角形四角柱形状等であってもよい。
【0041】
二次電池10は、正極4、セパレータ5、及び負極8をこの順に積層一体化し、一体とされた積層体を外装体9内へ配置し、セパレータ5を中心に外装体9内へと電解液1を注入した後、封口されることで製造される。以下、二次電池10の製造方法について説明する。
【0042】
<2.二次電池の製造方法>
図2に示すように、本発明にかかる二次電池の製造方法20(以下、「製造方法20」という。)は、正極と負極とセパレータとを一体とする、一体化工程(工程S1)と、一体とされた正極と負極とセパレータとを電解液に含浸させる、含浸工程(工程S2)と、工程S2の後に電池を密封する、密封工程(工程S3)と、を備えている。
【0043】
(2.1.工程S1)
工程S1は、正極4と負極8とセパレータ5とを一体とする工程である。一体化方法としては特に限定されない。例えば、シート状の正極4、セパレータ5、及び負極8を作製し、それぞれのシートを所定の寸法に切断したのち、正極4と負極8とがセパレータ5を挟みこむように、正極4、セパレータ5、及び負極8をこの順に重ね合わせ、各種結着剤等を用いて、又は押圧装置等により、これらを積層一体化する工程とすることができる。または、正極層2(又は負極層7)成分を有するコーティング液をフォワードロール、リバースロール、グラビア、ドクターブレード、スロットダイやスプレーコート装置等を用いて、セパレータ5に塗布、又は吹き付け、乾燥機により乾燥させることによって、セパレータ5の表面に正極層2(又は負極層7)を積層してもよい。工程S1において一体とされた積層体は次工程にて電解液1で含浸される。
【0044】
(2.2.工程S2)
工程S2は、工程S1にて作製された積層体を外装体9内に設置したのち、電解液1を外装体9内に注入することで、積層体を電解液1で含浸する工程である。外装体9内には、正極−負極間をリチウムイオンが移動可能とされる必要量の電解液1が注入される。電解液1の注入は大気圧下にて行ってもよく、負圧下にて行ってもよい。
【0045】
(2.3.工程S3)
工程S3は、積層体及び電解液1を内部に有する外装体9を封口し、密封する工程である。但し、工程S3後の外装体9内部において、電解液1の25℃の圧力が負圧、好ましくは10−3kPa以上10kPa以下となるように、工程S3を行う必要がある。具体的には、外装体9の封口作業を、25℃、10−3kPa以上10kPa以下の環境下で行う工程とすることができる。外装体9は耐圧性を有しているため、工程S3の後、内部圧力と外部圧力との差によって変形することがなく、電池内部の圧力は負圧のまま維持される。そのため、電池内部における電解液1の粘度は外部における粘度よりも小さくなる。このときの具体的な粘度としては、25℃において、1mPa・s以上100mPa・s以下であることが好ましい。電解液1には常温、大気圧下にて高粘度であるイオン液体が含まれていても、電池内部においては電解液1の粘度が低粘度とされているため、イオン液体が積層体の隅々に行き渡るとともに、高伝導性を有するイオン液体とすることもできる。
【0046】
従って、工程S1〜S3を備える製造方法20によって製造された二次電池10は、イオン液体特有の熱安定性に加え、高いイオン伝導性を有する電解液1を備えているから、安全性が高められるとともに高容量である二次電池とすることができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を示す。ただし、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示す一形態であり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下に示した実施例に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0048】
実施例においては、コインタイプのリチウムイオン二次電池を使用した。以下に、各構成について説明する。
【0049】
<実施例1>
(正極作製)
正極活物質としてのLiCoOと、導電材としてのカーボンブラックとを、質量%で正極活物質:導電材=80:15となるように乳鉢にて混合した。その後、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)を溶解したN−メチル−ピロリドン(NMP)を加えスラリーとした。このスラリーをアルミニウム箔に塗布し、正極を作製した。
【0050】
(負極作製)
負極活物質としてのグラファイトと、結着剤を分散させた水とを混合し、スラリーとした。このとき、スラリー中に含まれる負極活物質と結着剤とは質量%で負極活物質:結着剤=95:5となるようにした。このスラリーを、銅箔上に塗布し、負極を作成した。
【0051】
(電池作製)
上記の正極、負極、及びPP製多孔質セパレータを、正極、セパレータ、負極の順となるように積層し、コインタイプの外装体内に設置したのち、トリメチルブチルアンモニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TMBA−TFSI)に、支持塩としてリチウムトリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)を濃度1mol/Lで溶解させた電解液を外装体内に注入したのち、50kPaの圧力下にて封管し、実施例1にかかるコインタイプのリチウムイオン二次電池を作製した。
【0052】
(比較例1)
封管を大気圧にて行った以外は、実施例1と同様にコインタイプのリチウムイオン二次電池を作製した。
【0053】
(電池評価)
作製したリチウムイオン二次電池について、それぞれ4.3Vまで充電を行った後、3.0Vまで1Cにて放電した。その際の各放電容量について表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1の結果から、実施例1にかかるリチウムイオン二次電池は、比較例1にかかるリチウムイオン二次電池と比べて放電容量が大きかった。従って、低圧下にて封管を行うことで、電池内部のイオン液体の粘度が下がり、イオン伝導性が向上し、二次電池が高容量となることが確認された。
【0056】
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う二次電池、及び二次電池の製造方法もまた本発明の技術範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】コインタイプのリチウムイオン二次電池10の内部構成を示す概略図である。
【図2】製造方法20を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
1 電解液(イオン液体を含む)
2 正極層
3 集電体
4 正極
5 セパレータ
6 負極層
7 集電体
8 負極
9 外装体
10 コインタイプのリチウムイオン二次電池
20 二次電池の製造方法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池内部に電解液として少なくともイオン液体を有する二次電池であって、前記電池内部の圧力が、25℃において10−3kPa以上10kPa以下であることを特徴とする、二次電池。
【請求項2】
前記電解液の25℃、前記電池の内部圧力下における粘度が、1mPa・s以上100mPa・s以下であることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
正極、負極、セパレータ、及び少なくともイオン液体を含む電解液が備えられる二次電池の製造方法であって、
前記正極と前記負極と前記セパレータとを一体とする、一体化工程と、
一体とされた前記正極と負極とセパレータとを電解液に含浸させる、含浸工程と、
前記含浸工程の後に電池を密封する、密封工程と、
を備えるとともに、
前記密封工程後の電池内部の圧力が負圧となるように、前記密封工程が意図的に負圧の条件下にて行われることを特徴とする、二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記密封工程において負圧とされた前記電池内部の圧力が前記密封工程後に25℃で10−3kPa以上10kPa以下となるように、前記密封工程が行われることを特徴とする、請求項3に記載の二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記電解液の25℃、負圧とされた前記電池の内部圧力下における粘度が、1mPa・s以上100mPa・s以下であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の二次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−218160(P2009−218160A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62741(P2008−62741)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】