説明

二次電池のセル電圧バランス装置

【課題】単電池の電圧の均等化をより迅速に行えるようにする。
【解決手段】複数の単電池1aを直列接続して構成された組電池1に対して、抵抗3a,3cを有する電流路CPが各単電池1aの夫々と並列に接続され、前記電流路CPに電流を流すことにより各単電池1aの電池電圧を均等化する二次電池のセル電圧バランス装置において、前記電流路CPに流す電流の大小を制御する電流制御手段CCが備えられ、前記電流制御手段CCは、前記単電池1aの電圧が充電目標電圧よりも低い電圧値に設定されているバランス動作開始電圧以上に上昇したときに、前記単電池1aの電圧と前記バランス動作開始電圧との差に応じて、その差が大である程、前記単電池1aと並列に接続されている前記電流路CPに流す電流が大となるように、前記単電池1a毎に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単電池を直列接続して構成された組電池に対して、抵抗を有する電流路が各単電池の夫々と並列に接続され、前記電流路に電流を流すことにより各単電池の電池電圧を均等化する二次電池のセル電圧バランス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の単電池にて構成される組電池を機器等に組み込んで組電池への充電や組電池からの放電を行う場合、組電池を構成する各単電池の特性ばらつきによって、同時に充放電を行っても充電の進行の程度及び劣化の程度が異なって電池電圧や内部抵抗などの電池特性が単電池間でばらついてしまう場合が少なくない。
このような単電池間の電圧のばらつきを放置すると、一部の単電池に負担がかかり劣化が促進されることになるため、下記特許文献1にも記載されているような、各単電池の電圧を均等化する装置を備えて単電池間の電圧ばらつきを抑制することが考えられている。
各単電池の電圧を均等化するための回路構成としては種々のものが考えられるが、下記特許文献1にも記載のような直列接続された抵抗とスイッチ装置との対を各単電池と並列に接続する回路構成をとるものが良く知られている。
単電池と並列に接続する抵抗及びスイッチ装置の対の使用形態としては、下記特許文献1に記載のように、各単電池間のばらつきが大きくなったときに、電圧の高い単電池について、スイッチ装置を閉じ状態に切換えて、抵抗及びスイッチ装置の対を通して充電電流をバイパスさせると共にその単電池を放電させる、という手法が考えられている。
【特許文献1】特開平10−050352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来構成では、各単電池と並列に接続された抵抗の抵抗値を小さくしてたくさんの電流を逃がしてやることで、各単電池の電圧の均等化を急速に進行させることができるようにも考えられるが、実際にはそのようには行かない。
この理由を、単電池と並列に接続された抵抗へ単電池から放電する場合における単電池の電圧変化を概略的に示す図7を用いて簡単に説明する。
抵抗へ逃がす電流の電流値を大きく設定すると、抵抗への通電開始に伴って、電圧均等化のための目標電圧に向かって単電池の電圧は急速に低下する(図7(a)及び(b))。
【0004】
単電池の電圧が電圧均等化の目標電圧まで低下すると、抵抗への通電は停止されるのであるが、このように急速に単電池の電圧を低下させた場合は、抵抗へ通電するのを停止したからと言って単電池の電圧がその時点の電圧で安定するわけではない。
すなわち、抵抗への通電を停止しても、単電池の内部で化学反応が進行し、図7(c)のように単電池の電圧が大きく上昇してしまうのである。
この単電池の電圧上昇に伴って、単電池の電圧を低下させるべく抵抗への通電が再開するので、以降は、抵抗への通電による単電池の電圧低下と抵抗への通電停止による単電池の電圧上昇とを繰り返して、単電池の電圧が振動状態で昇降してしまうことになる。
従って、抵抗に逃がす電流の電流値を大きい値に設定して単電池の電圧の均等化を急速に進行させるようにしたつもりが、単電池の電圧を振動的に変化させてなかなか安定しない状態としてしまうのである。
これに対して、単電池と並列に接続した抵抗に逃がす電流の電流値を小さい値に設定すると、上記のような単電池の電圧の振動的な変化は抑制できるが、単電池の電圧の低下速度自体が遅くなるので、電圧の均等化が遅れることになる。
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、単電池の電圧の均等化をより迅速に行えるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願の第1の発明は、複数の単電池を直列接続して構成された組電池に対して、抵抗を有する電流路が各単電池の夫々と並列に接続され、前記電流路に電流を流すことにより各単電池の電池電圧を均等化する二次電池のセル電圧バランス装置において、前記電流路に流す電流の大小を制御する電流制御手段が備えられ、前記電流制御手段は、前記単電池の電圧が充電目標電圧よりも低い電圧値に設定されているバランス動作開始電圧以上に上昇したときに、前記単電池の電圧と前記バランス動作開始電圧との差に応じて、その差が大である程、前記単電池と並列に接続されている前記電流路に流す電流が大となるように、前記単電池毎に制御するように構成されている。
【0006】
すなわち、組電池を構成する何れかの単電池の電池電圧が前記バランス動作開始電圧以上となったとき、その単電池と並列に接続されている電流路に電流が逃がされる。
このとき、前記電流路に流れる電流の電流値は、単電池の電圧が前記バランス動作開始電圧を超える程度が大きい程、大となる。
従って、単電池を放電させて均等化する場合では、単電池の電圧が前記バランス動作開始電圧から大きくかけ離れているときは、単電池の電圧は高速に前記バランス動作開始電圧へと低下し、単電池の電圧が前記バランス動作開始電圧に近づくと、単電池の電圧が低下するスピードは遅くなって緩やかに前記バランス動作開始電圧に向かうことになる。
この結果、前記バランス動作開始電圧に近づいて、前記電流路への通電を停止しても、その後の単電池の電圧上昇を十分に抑制することができる。
【0007】
又、本出願の第2の発明は、上記第1の発明の構成に加えて、前記電流路の抵抗が複数個の抵抗にて構成されると共に、前記複数の抵抗への通電を個別に入り切りするためのスイッチ装置が前記電流路に備えられ、前記電流制御手段は、前記スイッチ装置の開閉を制御するように構成されている。
すなわち、前記単電池の電圧と前記バランス動作開始電圧との差に応じて、その差が大である程、前記単電池と並列に接続されている前記電流路に流す電流が大となるように制御するための構成として、前記電流路に備えられる複数個の抵抗について個別に通電を入り切りして、前記電流路の実質的な抵抗値を複数段階に変化させる。
【0008】
又、本出願の第3の発明は、上記第1の発明に構成に加えて、前記電流制御手段は、前記単電池の電圧と前記バランス動作開始電圧との差に相当する電圧を出力するアナログ演算回路と、そのアナログ演算回路の出力電圧に相当する電流が前記電流路の前記抵抗に流れるように制御する電圧−電流変換回路とを備えて構成されている。
すなわち、前記単電池の電圧と前記バランス動作開始電圧との差に応じて、その差が大である程、前記単電池と並列に接続されている前記電流路に流す電流が大となるように制御するための構成として、電圧−電流変換回路を備えて、電圧制御にて前記電流路に逃がす電流値を設定すると共に、その電圧−電流変換回路に電流値を指示するための電圧を、単電池の電圧と前記バランス動作開始電圧との差に相当する電圧をアナログ演算回路にて生成する。
従って、前記電流路に流れる電流は、単電池の電圧と前記バランス動作開始電圧との差に対してリニアに且つ連続的に変化する。
【発明の効果】
【0009】
上記第1の発明によれば、単電池の電圧が前記バランス動作開始電圧から大きくかけ離れているときは、単電池の電圧は高速に前記バランス動作開始電圧へと低下し、前記バランス動作開始電圧に近づいて、前記電流路への通電を停止しても、その後の単電池の電圧上昇を十分に抑制することができる。
これによって、前記電流路へ電流を逃がすことによる単電池の電圧の均等化をより迅速に行えるものとなった。
又、上記第2の発明によれば、前記電流路に備えられる複数個の抵抗について個別に通電を入り切りして、前記電流路の実質的な抵抗値を複数段階に変化させるので、比較的に簡素な構成で迅速な電圧の均等化を図れる。
又、上記第3の発明によれば、前記電流路に流れる電流は、単電池の電圧と前記バランス動作開始電圧との差に対してリニアに且つ連続的に変化するので、例えば単電池と並列に接続する抵抗の抵抗値を段階的に切換え制御するような構成に比べて各単電池毎の電圧のばらつきをより一層抑制できる。
【0010】
すなわち、単電池と並列に接続する抵抗の抵抗値を段階的に切換える手法では、抵抗値を同じ値に設定しても、各単電池毎に内部抵抗が多少ばらつくことに起因して前記電流路に流れる電流の電流値が微妙にばらついてしまう。この電流値のばらつきは、単電池の電圧が前記バランス動作開始電圧に近づいて低い電流値となっている状態においても、最終的に安定する電池電圧を各単電池間でばらつかせてしまう原因となる。
これに対して、単電池の電圧と前記バランス動作開始電圧との差に基づいて前記電流路に流れる電流を設定する回路構成とすることで、各単電池の内部抵抗のばらつきには影響を受けずに前記電流路に流れる電流の電流値が設定されることになり、しかも、その電流値は単電池の電圧と前記バランス動作開始電圧との差に対してリニアに且つ連続的に変化するので、各単電池間の電圧のばらつきがきわめて精度良く抑制されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の二次電池のセル電圧バランス装置の実施の形態を、二次電池の一例であるリチウムイオン電池の充電装置の一部として備える場合について、図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
本第1実施形態において充電の対象となるリチウムイオン電池1は、図1に示すように、複数の単電池1aを直列接続して組電池として構成されたものであり、そのリチウムイオン電池1を充電する充電装置BCは、リチウムイオン電池1へ充電電流を供給する充電電源2と、セル電圧バランス装置3とを備えて構成されている。
本第1実施形態の充電装置BCは、充電対象のリチウムイオン電池1と共に航空機あるいは自動車等の移動体に搭載されて、その移動体の動力機器等に大電流を供給する場合を想定しており、リチウムイオン電池1を構成する単電池1aの個数は図1に示すものよりも多いが、説明の便宜上単電池1aの個数が4個であるとして説明する。
尚、本第1実施形態では、図面等において単電池1aを適宜に「セル」と表現する場合がある。
【0012】
セル電圧バランス装置3は、直列接続された抵抗3a及びスイッチ装置3bの対と、同じく直列接続された抵抗3c及びスイッチ装置3dの対とが、各単電池1aの夫々に対して並列に接続されて構成されており、抵抗3a,3cを有する電流路CPが各単電池1aの夫々と並列に接続されている。
セル電圧バランス装置3の各単電池1aに対応する回路部分には、更に、スイッチ装置3b,3dの開閉(オンオフ)を制御する制御回路3eが備えられている。
スイッチ装置3b,3dは、バイポーラ型のトランジスタにて構成されている。
制御回路3eがスイッチ装置3b,3dの開閉を制御して、電流路CPに電流を流すことにより、各単電池1aの電池電圧を均等化する。
【0013】
本第1実施形態では、抵抗3aを75Ω、抵抗3cを22Ωとして、抵抗3aと抵抗3cとは異なる抵抗値のものを使用している。
このように電流路CPに備える抵抗を複数個の抵抗3a,3cにて構成し、それら複数の抵抗3a,3cへの通電を個別に入り切りするスイッチ装置3b,3dを電流路CPに備えることで、スイッチ装置3b,3dの開閉を適宜に切換えて、電流路CPの実効的なインピーダンスを切換える。
【0014】
この電流路CPでの実効的なインピーダンスの切換えについて、便宜上、スイッチ装置3b,3dの双方を閉じ状態(オン状態)として、抵抗3a,3cの双方に通電する場合を「モード1」、スイッチ装置3bを開き状態(オフ状態),スイッチ装置3dを閉じ状態(オン状態)として、抵抗3aには通電せずに抵抗3cのみに通電する場合を「モード2」、スイッチ装置3bを閉じ状態(オン状態),スイッチ装置3dを開き状態(オフ状態)として、抵抗3aのみに通電し抵抗3cには通電しない場合を「モード3」、スイッチ装置3b,3dの双方を開き状態(オフ状態)として、抵抗3a,3cの双方に通電しない場合を「モード4」として説明する。
【0015】
仮に、単電池1aの電圧が4.0Vであるとすると、「モード1」では電流路CPには262mA、「モード2」では電流路CPには182mA、「モード3」では電流路CPには53mA、「モード4」では電流路CPには0mAの電流が流れ、充電電源2から供給される電流あるいは単電池1aからの放電電流を電流路CPに逃がすことになる。
【0016】
制御回路3eは、上記のようにスイッチ装置3b,3dのオンオフを切換えて、「モード1」,「モード2」,「モード3」及び「モード4」の夫々に設定するために図2に示す回路を備えている。
図2に示す制御回路3eは、1つの単電池1aに対応する制御回路3eを抜き出して示すものであり、回路の接続状態を分り易くするために、単電池1a,抵抗3a,3c及びスイッチ装置3b,3dも併せて図示している。
【0017】
制御回路3eは、単電池1aの電圧によって上記の4つのモードを切換える。
具体的には、制御回路3eは、図3に縦軸で示す単電池1aの電圧(セル電圧)が、「Vb」未満では「モード4」に、「Vb」以上「Vm」未満では「モード3」に、「Vm」以上「Vt」未満では「モード2」に、「Vt」以上では「モード1」に設定するように、スイッチ装置3b,3dの開閉を制御する。
ここで、Vt>Vm>Vb>0であり、「Vt」は、充電装置BCによる各単電池1aの充電目標電圧であり、「Vb」は、その充電目標電圧よりも低い電圧に設定されているバランス動作開始電圧である。
「Vm」は、ここでは、「Vb」と「Vt」との中間位置に設定している。
具体的な数値例で示すと、「Vt」は4.025V、「Vm」は4.013V、「Vb」は4.000Vのように設定できる。
【0018】
制御回路3eには、「Vb」に相当する基準電圧を出力するツェナーダイオード41、「Vm」に相当する基準電圧を出力するツェナーダイオード42、及び、「Vt」に相当する基準電圧を出力するツェナーダイオード43が備えられており、これらのツェナーダイオード41,42,43が出力する基準電圧と、単電池1aの電圧(セル電圧)とをコンパレータ44,45,46,47にて比較して、その比較結果の出力によって上記の各モードの切換えを行う。
尚、これらの基準電圧の生成するための電源としては、一対の端子T1,T2から例えば15Vの電圧が別途供給されている。
【0019】
上記のようにモードを切換える場合において、スイッチ装置3dは、「モード1」及び「モード2」で閉じ状態(オン状態)、「モード3」及び「モード4」で開き状態(オフ状態)であるので電圧「Vm」との比較のみで良く、「Vm」に相当する基準電圧を出力するツェナーダイオード42の出力と単電池1aの電圧(セル電圧)とを比較するコンパレータ47の出力でスイッチ装置3dを直接駆動している。
一方、スイッチ装置3bは、「モード1」から「モード4」へあるいはその逆に順次に移行するとき、閉じ状態(オン状態)と開き状態(オフ状態)とに交互に切り替わることになる。
【0020】
このような切換え動作をさせるために、「Vb」に相当する基準電圧を出力するツェナーダイオード41の出力と単電池1aの電圧(セル電圧)とを比較するコンパレータ44の出力と、「Vm」に相当する基準電圧を出力するツェナーダイオード42の出力と単電池1aの電圧(セル電圧)とを比較するコンパレータ45の出力とを、排他的論理和ゲート48へ入力させ、更に、「Vt」に相当する基準電圧を出力するツェナーダイオード43の出力と単電池1aの電圧(セル電圧)とを比較するコンパレータ46の出力と、排他的論理和ゲート48の出力とを、ORゲート49へ入力させて、ORゲート49の出力にてスイッチ装置3bを駆動している。
図2では、論理値「1」をHレベルに対応させて、排他的論理和ゲート48は「モード3」の電圧範囲のときにおいてのみ「1」を出力し、コンパレータ46は「モード1」の電圧範囲のときにおいてのみ「1」を出力し、ORゲート49によってそれらの論理和で駆動されるスイッチ装置3bは、「モード1」及び「モード3」の電圧範囲のときに閉じ状態(オン状態)となる。
【0021】
以上のような回路動作で、各制御回路3eは、対応する単電池1aの電圧が、4.000V未満であればスイッチ装置3b,3dの双方を開き状態とし(モード4)、4.000V以上で4.013V未満であればスイッチ装置3bを閉じ状態で且つスイッチ装置3dを開き状態とし(モード3)、4.013V以上で4.025V未満であればスイッチ装置3bを開き状態で且つスイッチ装置3dを閉じ状態とし(モード2)、4.025V以上であればスイッチ装置3b,3dの双方を閉じ状態とする(モード1)。
これによって、電流制御手段CCである制御回路3eが、スイッチ装置3b,3dの開閉を制御して、単電池1aの電圧が「Vt」(充電目標電圧)よりも低い電圧値に設定されている「Vb」(バランス動作開始電圧)以上に上昇したときに、単電池1aの電圧と「Vb」(バランス動作開始電圧)との差に応じて、その差が大である程、単電池1aと並列に接続されている電流路CPに流す電流が大となるように、単電池1a毎に電流路CPに流す電流の大小を制御していることになっている。
【0022】
例えば、新しいリチウムイオン電池1を充電装置BCに組み込んだときに、各単電池1aの電圧が図3に示すような状態となっていると、充電電源2からの電流が供給されていない状態では、各単電池1aに並列に接続されている電流路CPでの電流は図4に示す状態となる。
直列接続された4つの単電池1aを、電圧の高い側から「#1」,「#2」,「#3」,「#4」と表記して、「Vm」以上で且つ「Vt」未満となっている「#1」の単電池1aは「モード2」となって抵抗3cを経て電流が流れ、「Vt」以上となっている「#2」の単電池1aは「モード1」となって抵抗3a,3cの双方を経て電流が流れ、「Vb」以上で且つ「Vm」未満となっている「#3」の単電池1aは「モード3」となって抵抗3aを経て電流が流れ、「Vb」未満となっている「#4」の単電池1aは「モード4」となって抵抗3a,3cの何れにも通電されない。
尚、図4においては、スイッチ装置3b,3dの設定状態を見易く表示するために、一般的なスイッチの記号にて開閉状態を表記している。
【0023】
このように電流路CPに流す電流が制御されることで、単電池1aの電圧と前記バランス動作開始電圧との差が大きい程、単電池1aから放電される電流、あるいは、充電電源2からの供給電流を単電池1aを通過させずに電流路CPに逃がす電流が大となり、単電池1aの電圧と前記バランス動作開始電圧との差が大きい程、単電池1aの電圧が前記バランス動作開始電圧に近づく速度、あるいは、単電池1aの電圧上昇を抑制する程度が大となる。
これによって、各単電池1aの電圧は効率良く均等化されていく。
【0024】
<第2実施形態>
本第2実施形態において充電の対象となるリチウムイオン電池1は、上記第1実施形態と同一のものであり、図5に示すように、複数の単電池1aを直列接続して組電池として構成されている。
そのリチウムイオン電池1を充電する充電装置BCが、リチウムイオン電池1へ充電電流を供給する充電電源2と、セル電圧バランス装置3とを備えて構成されている点も上記第1実施形態と同様である。
本第2実施形態の充電装置BCも、充電対象のリチウムイオン電池1と共に航空機あるいは自動車等の移動体に搭載されて、その移動体の動力機器等に大電流を供給する場合を想定しており、本実施形態においても、説明の便宜上単電池1aの個数が4個であるとして説明する。
【0025】
本実施形態のセル電圧バランス装置3では、上記第1実施形態における抵抗3a,3c、スイッチ装置3b,3d及び制御回路3eに対応する機能を有する電圧均等化回路10が各単電池1a毎に備えられている。
各単電池1aに対応する電圧均等化回路10の回路構成は全て同一であり、図6に示す回路で構成されている。
【0026】
図6に示す電圧均等化回路10は、抵抗11,12及びバイポーラ型のトランジスタ13を有して構成される電流路CPが単電池1aと並列に接続され、その電流路CPを流れる電流を制御するためにアナログ演算回路14と電圧−電流変換回路15とが備えられている。
アナログ演算回路14及び電圧−電流変換回路15の制御下で、電流路CPに電流を流すことにより各単電池1aの電池電圧を均等化していく。
【0027】
アナログ演算回路14は、単電池1aの電圧と上記第1実施形態と同様のバランス動作開始電圧との差に相当する電圧を出力する回路であり、抵抗21,22,23,24及びオペアンプ25とによって差動増幅器を構成している。
このアナログ演算回路14の2入力のうちの一方の電圧は、直列接続の抵抗26,27の接続点から入力され、他方の電圧は、直列接続の抵抗28及びツェナーダイオード29の接続点から入力される。
【0028】
抵抗26と抵抗27との抵抗値の比率は、上記第1実施形態と同様にバランス動作開始電圧を4.000Vに設定したとすると、直列接続された抵抗26及び抵抗27の両端電圧が4.0Vであるときに、オペアンプ25に入力される抵抗27の両端電圧がツェナーダイオード29が出力する基準電圧に一致するように設定されている。
従って、アナログ演算回路14の出力電圧(オペアンプ25の出力電圧)は、単電池1aの電圧と前記バランス動作開始電圧との差を設定倍(抵抗21,22,23,24,26,27の抵抗値等で決まる倍率)した電圧を出力し、単電池1aの電圧が4.0Vであるとき、アナログ演算回路14の出力電圧は0Vとなる。
【0029】
電圧−電流変換回路15は、オペアンプ31と、FET型のトランジスタ32とを備えて構成されている。
オペアンプ31の反転入力には抵抗12での発生電圧が入力されるように帰還回路が構成されており、オペアンプ31は、アナログ演算回路14の出力電圧(オペアンプ25の出力電圧)と抵抗12の両端電圧が一致するようにトランジスタ32及びトランジスタ13を制御する。
従って、アナログ演算回路14の出力電圧に相当する電圧が電流路CPの抵抗11,12に流れるように制御される。
【0030】
以上をまとめると、単電池1aの電圧を「Vc」、バランス動作開始電圧を「Vb」としたとき、電流路CPの抵抗11,12に流れる電流「I」は、I=β×(Vc−Vb)となる。ここで「β」は比例係数である。
例えば、Vb=4.000Vの条件下で、β=1.3となるように、抵抗12,21,22,23,24,26,27の抵抗値を定めると、Vc=4.0V,4.05V,4.10V,4.15V,4.20Vのとき、電流路CPに流れる電流値は、夫々、I=0mA,65.0mA,130mA,195mA,260mAとなる。
【0031】
これは、アナログ演算回路14及び電圧−電流変換回路15を備えて構成される電流制御手段CCが、単電池1aの電圧が充電目標電圧(「Vt」:第1実施形態と同様)よりも低い電圧値に設定されているバランス動作開始電圧(「Vb」)以上に上昇したときに、単電池1aの電圧と前記バランス動作開始電圧との差に応じて、その差が大である程、単電池1aと並列に接続されている電流路CPに流す電流が大となるように、単電池1a毎に制御していることになる。
【0032】
上記第1実施形態と同様に、このように電流路CPに流す電流が制御されることで、単電池1aの電圧と前記バランス動作開始電圧との差が大きい程、単電池1aから放電される電流、あるいは、充電電源2からの供給電流を単電池1aを通過させずに電流路CPに逃がす電流が大となり、単電池1aの電圧と前記バランス動作開始電圧との差が大きい程、単電池1aの電圧が前記バランス動作開始電圧に近づく速度、あるいは、単電池1aの電圧上昇を抑制する程度が大となる。
これによって、各単電池1aの電圧は効率良く均等化されていく。
【0033】
<その他の実施形態>
以下、本発明の別実施形態を列記する。
(1)上記第1実施形態では、並列に接続された抵抗3a,3c夫々の通電・非通電を切換えて電流路CPの実効的なインピーダンスを合計4段階に切換えることで、電流路CPに流す電流の大小を制御しているが、電流路CPにおける複数の抵抗の接続形態は直列接続又は並列接続を組合わせて多様に変更可能である。
(2)上記第1実施形態では、並列に接続された抵抗3a,3c夫々の通電・非通電を切換えて電流路CPの実効的なインピーダンスを合計4段階に切換えることで、電流路CPに流す電流の大小を制御しているが、例えばデジタル制御ポテンショメータ等を利用して多段階に抵抗値を切換えて、電流の大小を制御するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる回路の全体構成図
【図2】本発明の第1実施形態にかかる要部回路図
【図3】本発明の第1実施形態にかかる単電池の電圧ばらつきを示す図
【図4】本発明の第1実施形態にかかる電流路の通電経路の状態を示す図
【図5】本発明の第2実施形態にかかる回路の全体構成図
【図6】本発明の第2実施形態にかかる要部回路図
【図7】大電流で一律に均等化したときの変化状態を説明するための図
【符号の説明】
【0035】
1 組電池
1a 単電池
3a,3c,11,12 抵抗
3b,3d スイッチ装置
14 アナログ演算回路
15 電圧−電流変換回路
CC 電流制御手段
CP 電流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単電池を直列接続して構成された組電池に対して、抵抗を有する電流路が各単電池の夫々と並列に接続され、前記電流路に電流を流すことにより各単電池の電池電圧を均等化する二次電池のセル電圧バランス装置であって、
前記電流路に流す電流の大小を制御する電流制御手段が備えられ、
前記電流制御手段は、前記単電池の電圧が充電目標電圧よりも低い電圧値に設定されているバランス動作開始電圧以上に上昇したときに、前記単電池の電圧と前記バランス動作開始電圧との差に応じて、その差が大である程、前記単電池と並列に接続されている前記電流路に流す電流が大となるように、前記単電池毎に制御するように構成されている二次電池のセル電圧バランス装置。
【請求項2】
前記電流路の抵抗が複数個の抵抗にて構成されると共に、前記複数の抵抗への通電を個別に入り切りするためのスイッチ装置が前記電流路に備えられ、
前記電流制御手段は、前記スイッチ装置の開閉を制御するように構成されている請求項1記載の二次電池のセル電圧バランス装置。
【請求項3】
前記電流制御手段は、前記単電池の電圧と前記バランス動作開始電圧との差に相当する電圧を出力するアナログ演算回路と、そのアナログ演算回路の出力電圧に相当する電流が前記電流路の前記抵抗に流れるように制御する電圧−電流変換回路とを備えて構成されている請求項1記載の二次電池のセル電圧バランス装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−123868(P2008−123868A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307287(P2006−307287)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(304021440)株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション (461)
【Fターム(参考)】