説明

二次電池の状態検知装置、二次電池の状態検知装置のための故障診断方法

【課題】故障診断用の電圧が変動した場合でも、精度良くADコンバータの故障診断を実施する二次電池の状態検知装置を提供する。
【解決手段】二次電池の状態検知のために検出されたアナログ値をデジタル値に変換する複数のADコンバータ(18−20)を備えた二次電池の状態検知装置において、前記複数のADコンバータの故障診断時に、故障診断用電圧を同時に前記複数のADコンバータへ入力するための故障診断用電源(15)と、前記複数のADコンバータの出力値を相互に比較して故障の判定を行う演算部(16)と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は充放電可能な電池(以下、二次電池)に流れる充電電流と放電電流、二次電池の端子間の電圧、温度センサが感知した温度により、二次電池の状態を算出する二次電池の状態検知装置、特に前記電流、電圧、温度のアナログ値をデジタル値に変換するADコンバータの故障診断に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二次電池を電圧源とする二次電池の状態検知装置は、充放電可能な二次電池に流れる充電電流と放電電流、二次電池の端子間の電圧、温度センサが感知した温度をADコンバータを介して入力し、前記電流、前記電圧、前記温度を基に二次電池の状態を算出している。
【0003】
通常、二次電池を電圧源とする二次電池の状態検知装置は、二次電池の充電率を検知し、検知した値を基に、制御装置が二次電池の充電率が低い場合には電気負荷の動作を停止あるいは消費電力を低下させることにより二次電池の充電率低下を抑制したり、逆に、発電機あるいは充電機などを動作させることにより二次電池の充電率を増加させる制御を行う。
【0004】
ADコンバータが故障した場合、二次電池を電圧源とする二次電池の状態検知装置は、ADコンバータからの不正出力を基に二次電池の充電率を算出するため、二次電池の充電率を正確に算出できない。そのため二次電池の劣化、自動車に搭載された二次電池であれば充電率低下によりエンジンが始動不可に陥る可能性がある。
【0005】
そこで二次電池を電圧源とする二次電池の状態検知装置に、ADコンバータの故障診断機能を付加したものが提案されている。従来例えば、ADコンバータを故障診断する方法として、故障診断用の電圧をADコンバータでデジタル変換した値と、ADコンバータで故障診断用電圧をデジタル変換した値に対応する予め保存された値を相互に比較し、判定することで故障診断する方法があった(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−198365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし上述の従来の方法の場合、ADコンバータが故障していない状態で、故障診断用の電圧がノイズ等で変動した時、変動の大きさによってはADコンバータが故障と診断されてしまう。このように故障診断時、今までは故障診断用の電圧がノイズ等で変動すると、ADコンバータが故障していない場合でも、ADコンバータが故障と診断されてしまう問題があった。故障診断を誤ると、二次電池の状態検知装置が二次電池の状態を精度良く算出できなくなる。
【0008】
この発明はこのような問題点を解消するもので、故障診断用の電圧が変動した場合でも、精度良くADコンバータの故障診断を実施する二次電池の状態検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、二次電池の状態検知のために検出されたアナログ値をデジタル値に変換する複数のADコンバータを備えた二次電池の状態検知装置において、前記複数のADコンバータの故障診断時に、故障診断用電圧を同時に前記複数のADコンバータへ入力するための故障診断用電源と、前記複数のADコンバータの出力値を相互に比較して故障の判定を行う演算部と、を備えたことを特徴とする二次電池の状態検知装置にある。
【発明の効果】
【0010】
この発明では故障診断用の電圧が変動した場合でも、精度良くADコンバータの故障診断を実施する二次電池の状態検知装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1による二次電池の状態検知装置の特にADコンバータの故障診断に係る部分のブロック図である。
【図2】この発明による二次電池の状態検知装置における動作フローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2による二次電池の状態検知装置の特にADコンバータの故障診断に係る部分のブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態3による二次電池の状態検知装置におけるADコンバータの故障診断のタイミングを説明するための図である。
【図5】この発明の実施の形態4による二次電池の状態検知装置におけるADコンバータの故障診断時の動作フローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態4による二次電池の状態検知装置におけるADコンバータの故障診断のタイミングを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明による二次電池の状態検知装置を各実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、各実施の形態において、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による二次電池の状態検知装置の特にADコンバータの故障診断に係る部分のブロック図である。図1に示すように二次電池11を電圧源とする二次電池の状態検知装置12は、例えば集積回路13として構成された電流用ADコンバータ18と電圧用ADコンバータ19と温度用ADコンバータ20とこれらのADコンバータのそれぞれに設けられたマルチプレクサ17、また、温度センサ14、故障診断用電源15、演算部16、電流検出用抵抗R1を備えている。なお図1の二次電池の状態検知装置は車両に搭載された場合を示している。
【0014】
電流用ADコンバータ18は、二次電池11の電流値を二次電池11の状態検知装置12および車両への電源ラインに挿入された電流検出用抵抗R1の両端の電圧として得たアナログ信号値の電圧値をデジタル信号値に変換して検出する役割として設けられている。
電圧用ADコンバータ19は、充放電可能な二次電池11の端子間の電圧を二次電池11の状態検知装置12および車両への電源ラインのアナログ信号値の電圧値をデジタル信号値に変換して検出する役割として設けられている。
温度用ADコンバータ20は、二次電池11の温度変化を検出するために状態検知装置12または状態検知装置12外部に備えられた温度センサ14が出力した温度に対応するアナログ信号値の電圧値をデジタル信号値に変換して検出する役割として設けられている。
【0015】
故障診断用電源15は電流用ADコンバータ18、電圧用ADコンバータ19、温度用ADコンバータ20の故障診断時に、故障診断用電圧を前記各ADコンバータに同時に供給するために設けられている。マルチプレクサ17は所定のタイミングで通常の検出電圧から、故障診断用電圧に切り替える役割の入力切換部として設けられている。
【0016】
なお、電流用ADコンバータ18および電圧用ADコンバータ19のマルチプレクサ17の入力側には二次電池11の電源ラインからの入力電圧レベルを所望のレベルに変換する変換器(図示省略)を設けてもよい。
【0017】
例えばマイクロプロセッサからの演算部16は通常時は、例えば電流用ADコンバータ18、電圧用ADコンバータ19、温度用ADコンバータ20からの検出された二次電池11の電流、電圧、温度の出力値を基に二次電池11の状態を算出し、故障診断時にはマルチプレクサ17の切り換え制御を行って、同一の故障診断用電源15から同時に入力された故障診断用電圧による電流用ADコンバータ18、電圧用ADコンバータ19、温度用ADコンバータ21からの出力値を相互に比較、判定することで、電流用ADコンバータ18、電圧用ADコンバータ19、温度用ADコンバータ21の故障診断を行う。
【0018】
図2に示す演算部16の動作フローチャートに従って制御手順を説明する。演算部16は通常、電流用ADコンバータ18から充放電可能な二次電池11に流れる充電電流と放電電流を電流検出用抵抗(電流−電圧変換器)R1で変換した電圧値、電圧用ADコンバータ19から充放電可能な二次電池11の端子間の電圧値、温度用ADコンバータ20から温度センサ14が感知した温度に対応した電圧値をそれぞれデジタル値として検出する(ステップS10)。
【0019】
そして、デジタル値に基づいて二次電池11の状態を算出を行う(ステップS11)。
【0020】
そして、ADコンバータの故障診断が必要か否かを判定し(ステップS12)、必要ならステップS13へ、不要ならステップS10へ移行する。
【0021】
ステップS13で演算部16は、各マルチプレクサ17を制御して、ADコンバータ18−20へ入力する電圧を通常の検出電圧から故障診断用電源15により供給される故障診断用電圧に切り変え、同時に該故障診断用電圧を電流用ADコンバータ18、電圧用ADコンバータ19、温度用ADコンバータ20に入力する。そして電流用ADコンバータ18、電圧用ADコンバータ19、温度用ADコンバータ20からのデジタル値を相互に比較して故障の判定を行う。デジタル値を相互に比較することにより故障診断用電圧のノイズの影響を受けない故障の判定が行える。
【0022】
そしてステップS14で、演算部16が電流用ADコンバータ18、電圧用ADコンバータ19、温度用ADコンバータ20の故障診断をし、故障と診断した場合はステップS15へ移行し、正常と診断した場合はステップS16へ移行する。
【0023】
ステップS15では、二次電池の状態検知装置12のADコンバータが故障であることを示す故障信号S1を出力する。ステップS16では、二次電池の状態検知装置12のADコンバータが正常であることを示す正常信号S1を出力する。
【0024】
なお、ステップS10,S11が二次電池状態検知手段、ステップS12−16がADコンバータ故障診断手段、の機能を構成する。
【0025】
このように通常時は二次電池の状態(検知)算出のための検出用として使用している電流用ADコンバータ18、電圧用ADコンバータ19、温度用ADコンバータ20に、故障診断時、同時に同じ故障診断用電圧を入力し、得られたデジタル値を相互に比較することで、故障診断用電圧がノイズなどで変動しても精度良く故障診断する状態検知装置を実現することができる。
【0026】
また、二次電池の状態(検知)算出、故障診断時の判定を状態検知装置12の外部の演算部等(図示省略)で行ってもよい。
【0027】
またこの実施の形態は、図1に示すように二次電池に流れる電流値を電流−電圧変換器で電圧値に変換し、この電圧値をデジタル値として検出するADコンバータ、更に別の物理量をデジタル値として検出する少なくとも1つのADコンバータの計2つ以上のADコンバータを備える二次電池の状態検知装置12にも適用される。またこの実施の形態は、故障診断用電源および温度センサが状態検知装置12の外部にある場合、またはさらに二次電池11とは別の電源を電圧源とする場合にも適用される。
【0028】
以上のようにこの発明によれば、複数のADコンバータの故障診断時に、同一の故障診断用電源から故障診断用電圧を同時に複数のADコンバータへ入力し、複数のADコンバータの出力値を相互に比較し、判定することで、ADコンバータの故障診断精度を向上させることができる。
【0029】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2による二次電池の状態検知装置の特にADコンバータの故障診断に係る部分のブロック図である。この実施の形態2は、実施の形態1の故障診断用電源を、ADコンバータを内部に備えた集積回路13内に備えられた回路を駆動するための既存電源である内部電源22とし、ADコンバータの故障診断時、内部電源22の出力電圧を分圧した電圧を、故障診断用電圧としたものである。
【0030】
図3を参照して実施の形態2での故障診断方法について説明する。ADコンバータの故障診断時、内部電源22から供給される電圧を図3の位置に備えられた分圧回路21で分圧した電圧を故障診断用電圧として、同時にADコンバータ18−20に入力する。そして出力されたデジタル値の比較より、ADコンバータの故障診断を行う。内部電源22には例えばADコンバータ18−20のためのADコンバータ用電源23、演算部16(二次電池状態検知用のみの演算部(図示書略)でもよい)のためのマイクロプロセッサ電源24、ADコンバータ18−20が後述するΣΔ型ADコンバータである場合のADコンバータ基準電源25などがある。図3はADコンバータ用電源23からの出力を故障診断用電圧とした場合の構成を示す。
【0031】
また、内部電源22を、単独のADコンバータ用電源23とし、ADコンバータ用電源23の出力電圧を分圧した電圧を故障診断用電圧としてもよい。また内部電源22を、単独のマイクロプロセッサ電源24とし、マイクロプロセッサ電源24の出力電圧を分圧した電圧を故障診断用電圧としてもよい。またADコンバータ18−20が集積回路13に搭載された、ΣΔ型のΣΔ型ADコンバータであって、複数のΣΔ型ADコンバータでのデジタル変換の基準電圧となるADコンバータ基準電圧を供給する単独のADコンバータ基準電源25を備え、内部電源22を、単独のADコンバータ基準電源25とし、ADコンバータ基準電圧を分圧した電圧を故障診断用電圧としてもよい。
【0032】
また、内部電源22は、例えば二次電池の状態検知のための回路に給電する既存の内部電源であればよく、また集積回路13内に備えられた回路を駆動するためのものであるか否かは問わない。
【0033】
また上記説明では、内部電源22の出力電圧をADコンバータの故障診断に適した電圧にするために分圧しているが、分圧以外の手段で降圧してもよく、分圧回路21は電圧を降圧または分圧する変圧部の一例である。内部電源22の出力電圧がADコンバータの故障診断に適した電圧であれば変圧部は不要である。
【0034】
このように実施の形態2では、既存の内部電源を利用することで、故障診断に必要な故障診断用電源を新たに設ける必要がないため安価に、ADコンバータの故障診断をする二次電池の状態検知装置を実現できる。
【0035】
以上のようにこの発明によれば、複数のADコンバータの故障診断時、複数の内部電源すなわち既存の電源(ADコンバータ用電源、マイクロプロセッサ電源、ADコンバータがΣΔ型ADコンバータの場合のADコンバータ基準電源等)の1つを故障診断用電源とし、さらに必要に応じて出力電圧を分圧、降圧した電圧を、故障診断用電圧とすることにより、新たに故障診断用電圧の電圧源を追加する必要がないため安価に、故障診断する二次電池の状態検知装置を実現できる。
【0036】
実施の形態3.
この発明のさらに別の実施の形態による二次電池の状態検知装置では、ADコンバータの故障診断のタイミングを定めた。二次電池の状態検知装置の構成は基本的に上記各実施の形態のものと同じである。図4を参照して、ADコンバータの故障診断のタイミングを説明する。図4は車両におけるキーオフ状態、キースイッチオン状態、スタータ起動状態の二次電池11を流れる充放電電流の電流Iの大きさを示す。キーオフ状態はキースイッチがオフされたキーオフ期間である。一般的にキーオフ状態では二次電池11を流れる充放電電流Iが微少であり、二次電池11への放電電流、充電電流または両者の合成電流、充放電可能な二次電池11の端子間の電圧、状態検知装置12または状態検知装置12外部に設置された温度センサ14が感知した温度をデジタル変換できない期間があっても、状態算出精度の低下は軽微であり、問題とならない場合が多い。
【0037】
またキースイッチオン状態はキースイッチが入ってからスタータ起動電流が流れるまでのキースイッチオン期間である。この期間に複数のADコンバータ18−20の故障診断を行うことで、発電機、電気負荷による二次電池への電流の出入りの大きいエンジン作動前にADコンバータの故障診断を行える。
【0038】
演算部16は図4に示す二次電池11を流れる充放電電流の電流Iを電流用ADコンバータ18の出力から得ることができ、例えば図2のステップS12でこの出力に基づき上述のキーオフ期間、キースイッチオン期間を判断してADコンバータ18−20の故障診断のタイミングを決定する。より具体的には、演算部16は例えば、キーオフ期間、キースイッチオン期間を判断するための閾値(共通の閾値でもそれぞれの閾値でもよい)を予め記憶部に格納しておき、二次電池11の充放電電流Iが該閾値以下、または所定時間の間、該閾値以下の場合にキーオフ期間またはキースイッチオン期間と判定する。
【0039】
なお、キーオフ期間、キースイッチオン期間、スタータ起動期間を判断するために演算部16は、車両の例えばECU(図示省略)からのキーの上記状態を示すキー状態信号S2を入力し、この入力、またはこの入力と上述の電流用ADコンバータ18の出力の組み合せから故障診断のタイミングを決定するようにしてもよい。
【0040】
以上のようにこの発明によれば、キースイッチがオフされたキーオフ期間中、またはキースイッチが入ってからスタータ起動電流が流れるまでのキースイッチオン期間中に、複数のADコンバータの故障診断を行うことにより、二次電池の状態算出精度の軽微な低下で故障診断を実施できる。
【0041】
実施の形態4.
この発明のさらに別の実施の形態による二次電池の状態検知装置では、ADコンバータの故障診断のタイミングを別の構成により定めた。二次電池の状態検知装置の構成は基本的に上記各実施の形態のものと同じである。この実施の形態4では、前記複数のADコンバータ18−20の温度または集積回路13の温度を基に、ADコンバータの故障診断が必要か否かを判断する。
【0042】
図5にはこの実施の形態における演算部16での、ADコンバータの故障診断を行うタイミングの判断手順の動作フローチャートを示す。演算部16は複数のADコンバータ18−20の温度または集積回路13の温度を検出する(ステップS20)。
【0043】
演算部16は、温度センサ14が例えば状態検知装置12内部に設けられ、複数のADコンバータ18−20の温度または集積回路13の温度、すなわち複数のADコンバータ18−20付近の温度を検出している場合には、温度センサ14をADコンバータ用温度センサとし、温度用ADコンバータ20の出力から温度を得ることができる。また温度センサ14からの信号S3は直接、演算部16へ入力してもよい。また、複数のADコンバータ18−20および集積回路13の温度を検出するための温度センサ(図示省略)を別途状態検知装置12内部に設けてもよく、この場合、温度センサからの信号S3は直接、演算部16へ入力する。一方、温度センサ14が例えば状態検知装置12外部に設けられ、複数のADコンバータ18−20および集積回路13の温度が直接反映されない温度を検出している場合には、ADコンバータ18−20の温度または集積回路13の温度を検出する別のADコンバータ用温度センサ(図示省略)からの信号S3を入力する。この温度センサ信号S3の出力は直接、演算部16で入力してもよいし、温度センサ14と同様にマルチプレクサと温度用A/Dコンバータからなる入力回路を介して入力するようにしてもよい。
このようにして上記いずれかのように構成されたADコンバータ用温度センサにより、複数のADコンバータ18−20または集積回路13、すなわち複数のADコンバータ18−20付近の温度検出値を得る。
【0044】
図5に戻り、演算部16には予め所定の温度診断値「TTHn」(n=1、2、・・・)が設定(例えば記憶部に格納)されている。そしてADコンバータ18−20の温度または集積回路13の温度が前記温度診断値「TTHn」を通過または前記温度診断値「TTHn」になった時点で(ステップS21)、ステップS22に移行する。一方、ステップS21にて、ADコンバータ18−20の温度または集積回路13の温度が前記温度診断値TTHnを通過または前記温度診断値「TTHn」になっていないと判断した場合にはステップS23に移行する。
【0045】
ステップS22では、故障診断すると判断するため、図2のステップS12で、ADコンバータの故障診断が必要となる。ステップS23では、故障診断しないと判断するため、図2のステップS12で、故障診断不要と判断し、ステップS10に移行する。
【0046】
図6に前記温度診断値「TTHn」の設定の具体例を示す。演算部16はADコンバータまたは集積回路の温度がTTH1を通過したと判断すると、複数のADコンバータ18−20の故障診断を実施する。そして検出温度がTTH2(TTH1<TTH2)通過すると、再度、故障診断を実施する。以上の手順を以降も継続し、ADコンバータの温度または集積回路の温度に応じて故障診断を実施する。一般に電子部品の寿命は、使用される温度環境に因るところが大きい。従って、ADコンバータの温度または集積回路の温度に応じてADコンバータの故障有無を診断することにより、二次電池の状態算出精度の軽微な低下で、故障診断をすることができる。
【0047】
なお、演算部16は通常時は二次電池11の状態の算出、故障診断時にはADコンバータ18−20の故障診断を行っているが、二次電池11の状態算出(検知)は行わずに(二次電池の状態算出用の演算部が別に接続されている)、上述のいずれかのタイミングでADコンバータ18−20の故障診断を行うADコンバータの故障診断専用のものであってもよい。
【0048】
また、各ADコンバータ18−20は集積回路として構成されたものに限られるものではない。
【0049】
また、上記各実施の形態の二次電池の状態検知装置は、故障診断用電源および温度センサが状態検知装置の外部にある場合、またはさらに二次電池とは別の電源を電圧源とする場合、さらには状態検知装置が二次電池を電圧源としない場合にも適用可能である。
【0050】
また、上記各実施の形態では同一の故障診断用電源から故障診断用電圧を同時に複数のADコンバータに送っているが、同一の故障診断用電源から同一の故障診断用電圧を同時に送ることでさらに故障診断精度が向上する。
【0051】
また、この発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の特徴の可能な組み合わせを全て含むことは云うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
11 二次電池、12 状態検知装置、13 集積回路、14 温度センサ、15 故障診断用電源、16 演算部、17 マルチプレクサ、18 電流用A/Dコンバータ、19 電圧用A/Dコンバータ、20 温度用A/Dコンバータ、21 分圧回路(変圧部)、22 内部電源、23 ADコンバータ用電源、24 マイクロプロセッサ電源、25 ADコンバータ基準電源、R1 電流検出用抵抗、S1 故障信号(正常信号)、S2 キー状態信号、S3 温度センサ信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の状態検知のために検出されたアナログ値をデジタル値に変換する複数のADコンバータを備えた二次電池の状態検知装置において、前記複数のADコンバータの故障診断時に、故障診断用電圧を同時に前記複数のADコンバータへ入力するための故障診断用電源と、前記複数のADコンバータの出力値を相互に比較して故障の判定を行う演算部と、を備えたことを特徴とする二次電池の状態検知装置。
【請求項2】
前記二次電池の状態検知装置が二次電池の状態検知のための既存の内部電源を備え、前記内部電源を前記故障診断用電源とし、前記内部電源の出力電圧を前記故障診断用電圧とすることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の状態検知装置。
【請求項3】
前記内部電源が、前記複数のADコンバータを駆動するADコンバータ用電源からなることを特徴とする請求項2に記載の二次電池の状態検知装置。
【請求項4】
前記内部電源が、前記二次電池の状態検知装置に設けられたマイクロプロセッサを駆動するマイクロプロセッサ電源からなることを特徴とする請求項2に記載の二次電池の状態検知装置。
【請求項5】
前記複数のADコンバータがΣΔ型ADコンバータであって、前記内部電源がΣΔ型ADコンバータのためのADコンバータ基準電源からなることを特徴とする請求項2に記載の二次電池の状態検知装置。
【請求項6】
前記各ADコンバータの入力側で入力を二次電池の状態検知のためのそれぞれのアナログ値と前記故障診断用電源からの前記故障診断用電圧との間で切り換える入力切換部を備え、前記演算部が前記ADコンバータから得られる前記二次電池の電流値に従って、キースイッチがオフされたキーオフ期間中、またはキースイッチがオンしてからスタータ起動電流が流れるまでのキースイッチオン期間中に前記複数のADコンバータの故障診断を行うように前記入力切換部を切り換えることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の二次電池の状態検知装置。
【請求項7】
前記複数のADコンバータ付近の温度を検出するADコンバータ用温度センサを備えると共に、前記各ADコンバータの入力側で入力を二次電池の状態検知のためのそれぞれのアナログ値と前記故障診断用電源からの前記故障診断用電圧との間で切り換える入力切換部を備え、前記演算部が前記ADコンバータ用温度センサでの温度検出値に基づいて前記入力切換部を切り換え制御して、前記複数のADコンバータの故障診断のタイミングを決定することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の二次電池の状態検知装置。
【請求項8】
前記故障診断用電源を含めて前記二次電池の状態検知装置が前記二次電池を電圧源とすることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の二次電池の状態検知装置。
【請求項9】
前記内部電源の出力電圧を変圧部で分圧または分圧以外の方法で降圧して前記故障診断用電圧とすることを特徴とする請求項2から5までのいずれか1項に記載の二次電池の状態検知装置。
【請求項10】
二次電池の状態検知のために検出されたアナログ値をデジタル値に変換する複数のADコンバータを備えた二次電池の状態検知装置において、前記複数のADコンバータの故障診断時に、同一の故障診断用電源から故障診断用電圧を同時に前記複数のADコンバータへ入力し、前記複数のADコンバータの出力値を相互に比較して故障の判定を行うことを特徴とする二次電池の状態検知装置のための故障診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−102318(P2013−102318A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244240(P2011−244240)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】